生物活性ガラス組成物、その使用、およびその製造方法
本発明は、SiO2、Na2O、CaO、K2O、MgO、P2O5、B2O3を含む生物活性ガラス組成物に関する。本発明によれば、SiO2の量は出発酸化物の51〜56wt%であり、Na2Oの量は出発酸化物の7〜9wt%であり、CaOの量は出発酸化物の21〜23wt%であり、K2Oの量は出発酸化物の10〜12wt%であり、MgOの量は出発酸化物の1〜4wt%であり、P2O5の量は出発酸化物の0.5〜1.5wt%であり、B2O3の量は出発酸化物の0〜1wt%であるが、Na2OとK2Oの合計量は出発酸化物の17〜20wt%になっていなければならない。本発明はさらに、この生物活性ガラス組成物の使用と、生物活性ガラス組成物の製造方法にも関する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、SiO2、Na2O、CaO、K2O、MgO、P2O5、およびB2O3を含む生物活性ガラス組成物に関する。本発明はさらに、この組成物の使用と、この組成物から製造したデバイスにも関する。本発明は、本発明による生物活性ガラス組成物の製造方法にも関する。
【背景技術】
【0002】
本発明の背景を明らかにするのにこの明細書で用いる出版物その他の材料、中でも実施に関する補足的な詳細を与えるケースは、参考としてこの明細書に組み込まれているものとする。
【0003】
この明細書では、生物活性ガラスとは、体内組織において特別な生物活性を誘導するように設計された材料のことを意味する。この文脈における生物分解性という用語は、生物活性ガラスを哺乳動物の体内に挿入したとき、埋め込んだ期間が長くなると分解することを意味する。バイオマテリアルとは、生物系と相互作用させることを目的として医用デバイスで用いられる生きていない材料のことを意味する。
【0004】
ガラスは、医学や歯学で手術やインプラントに応用するために広範に研究されてきた。医用デバイスは、ヒトや動物の組織に埋め込むことができる。そうすると、生物学的に活性な薬剤の放出部位が標的となるように活性成分を局所的に投与することができる。結晶化していない生物活性ガラス組成物だけが最良の生物活性を示すため、また生物活性ガラス組成物は相分離に近い領域にあるため、熱処理を繰り返す間に結晶化しないガラス組成物、すなわち生物活性を維持するガラス組成物を作ることは非常に難しい。
【0005】
生物活性ガラスはその表面に反応層を形成し、デバイスと宿主組織の間に結合を形成する。生物活性ガラスの化学反応は、他のほとんどの生物活性材料とは異なり、ガラスの化学組成を変化させることによって容易に制御することができる。したがって生物活性ガラスは特に臨床への応用において興味深く、実際に、例えば顔面に怪我をした後に損傷した部分を交換したり、中耳の小さな骨(小骨)を置換したり、外科手術で骨の欠陥を埋めたりするのに用いられている。
【0006】
残念なことに、従来から知られている生物活性ガラス組成物は熱処理の繰り返しに耐えることができない。というのも再度加熱すると生物活性が低下するからである。そのためそのような組成物からデバイスを製造するときには、ガラスの製造ステップですでに最終形状に成形するか、あるいはあらかじめ形成したガラス粒子を粉砕することによってだけデバイスの形状を決めることができるため、大きな問題が生じる。堅固な非多孔性デバイスは、成形プロセスによってのみ製造できる。
【0007】
熱処理特性に関して改良された生物活性ガラス組成物がBrinkらによってWO 96/21628に提示されている。この文書には、以下の組成:
SiO2 53〜60wt%、
Na2O 0〜34wt%、
K2O 1〜20wt%、
MgO 0〜5wt%、
CaO 5〜25wt%、
B2O3 0〜4wt%、
P2O5 0.5〜6wt%
を有するが、ただし
Na2O + K2O =16〜35wt%、
K2O + MgO =5〜20wt%、
MgO + CaO =10〜25wt%
である生物活性ガラスが開示されている。
【0008】
しかしこのガラスの熱処理特性は、生物活性ガラスを用いて技術的に難しい用途のデバイス(例えばファイバー、焼結ファイバー・ファブリックなど)を製造するときに繰り返して加熱するのに最適であるとは言えない。
【0009】
ItaIaらの論文(Journal of Biomedical Materials Research、第56巻(2)、282〜288ページ、2001年)には、以下の組成:
SiO2の量が出発酸化物の53wt%であり、
Na2Oの量が出発酸化物の6wt%であり、
CaOの量が出発酸化物の22wt%であり、
K2Oの量が出発酸化物の11wt%であり、
MgOの量が出発酸化物の5wt%であり、
P2O5の量が出発酸化物の2wt%であり、
B2O3の量が出発酸化物の1wt%
を有する生物活性ガラスが開示されている。
【0010】
しかしこの文献にはこのガラス組成物を繰り返して加熱したときの特性が記載されていない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の目的は、繰り返して加熱してもガラスが結晶化することがなく、その生物活性を失うことがない生物活性ガラス組成物を提供することである。本発明の別の目的は、生物活性ガラスを用いて技術的に難しい用途のデバイスを製造するのに適した生物活性ガラス組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、添付の請求項に開示されている。
【0013】
本発明による生物活性ガラス組成物は、
SiO2の量が出発酸化物の51〜56wt%であり、
Na2Oの量が出発酸化物の7〜9wt%であり、
CaOの量が出発酸化物の21〜23wt%であり、
K2Oの量が出発酸化物の10〜12wt%であり、
MgOの量が出発酸化物の1〜4wt%であり、
P2O5の量が出発酸化物の0.5〜1.5wt%であり、
B2O3の量が出発酸化物の0〜1wt%であるが、
Na2OとK2Oの合計量は出発酸化物の17〜20wt%であることを特徴とする。
【0014】
したがって本発明は、繰り返して熱処理することさえ可能な生物活性ガラス組成物に関する。
【0015】
出願人は、実際に、上記の組成を有する生物活性ガラスが、予想に反して驚くほど優れた熱処理特性を有することを見いだした。したがって本発明は、WO 96/21628に開示されている上記発明の中から選択した発明である。実際、選択した範囲はWO 96/21628に開示されている範囲よりも狭く、WO 96/21628に開示されている範囲の両端の点からははるかに離れている。この範囲は、予期しない技術的効果があったためにわざとそのように選択した。
【0016】
さまざまな酸化物の量は、出発酸化物に対するwt%で示している。というのも、いくつかの元素(例えばナトリウム)は加熱中に蒸発するからである。しかし最終酸化物の量は出発酸化物の量に近く、いずれの場合にも出発量と最終量の差は5%未満、好ましくは3%未満である。
【0017】
酸化物の量を上記の範囲の中で自由に選択できることは当業者には明らかである。実際、SiO2の量は出発酸化物の例えば51.5、52、53.5、55、56wt%のいずれかにすることができ、Na2Oの量は出発酸化物の例えば7、7.3、7.7、8、8.5、9wt%のいずれかにすることができ、CaOの量は出発酸化物の例えば21、21.4、21.7、22、22.6、23wt%のいずれかにすることができ、K2Oの量は出発酸化物の例えば10、10.5、10.6、11、11.3、11.7、12wt%のいずれかにすることができ、MgOの量は出発酸化物の例えば1、1.3、1.9、2.4、2.7、3.5、4wt%のいずれかにすることができ、P2O5の量は出発酸化物の例えば0.5、0.7、1、1.2、1.5wt%のいずれかにすることができ、B2O3の量は出発酸化物の例えば0、0.4、0.6、0.9、1wt%のいずれかにすることができる。
【0018】
本発明の一実施態様によると、SiO2の量は出発酸化物の54〜56wt%である。
【0019】
本発明の別の実施態様によると、本発明のガラス組成物はさらにAl2O3を出発酸化物の1wt%まで含むが、B2O3とAl2O3の合計量は出発酸化物の0.5〜2.5wt%である。本発明のさらに別の実施態様によれば、本発明のガラス組成物はさらにAl2O3を出発酸化物の0.3〜1.0wt%まで含んでいる。アルミニウムは生物活性ガラス組成物の力学的特性を向上させると考えられている。
【0020】
本発明のさらに別の実施態様によれば、Na2Oおよび/またはK2Oの量の減少を、Al2O3および/またはB2O3の量の増加で相殺する。
【0021】
骨形成における生物活性ガラスの役割は2つあり、Ca2+を供給することと、ガラス表面にシリカゲル層を形成することであると考えられている。このシリカゲルは拡散の障壁として機能するため、イオンがガラスから浸出するのを遅くし、したがって新しい反応層と新しい体内組織の形成を遅くする。このシリカゲルは酸性でもあるため、組織を刺激する可能性がある。
【0022】
本発明による生物活性ガラス組成物のさらに別の利点は、本発明のガラス組成物から製造したデバイスと体内組織の一次反応が“穏やか”であること、すなわち従来のいくつかの生物活性ガラスほど攻撃的ではないことである。実際、まず最初に、一般に約6時間ほどでガラス表面のシリカゲルの中にリン酸カルシウムが比較的薄い層となって形成され、次に、一般に約48〜72時間ほどでリン酸カルシウム層がシリカゲル層の上に形成される。一次リン酸カルシウム層が形成されている間、本発明によるガラス組成物の表面上のシリカゲル層は、従来の生物活性ガラス(例えば上記のもの)の表面にある対応する層よりも実質的に薄い。
【0023】
言い換えるならば、本発明の生物活性ガラス組成物は、適切な程度まで反応し、過度に溶けることはない。これは、生体内の状況において明らかに利点である。その一方で、本発明の組成物で作ったデバイスは、長期にわたって生物活性を維持する。
【0024】
この組成物にはこのような利点があるため、非常に敏感な角膜などの標的器官で使用することができる。本発明のガラス組成物は、組織と穏やかに反応するため、例えばシリカゲル層が形成されることに起因する化学的な刺激が少なくなる。本発明のガラス組成物にはこのような性質があるため、従来の組成物よりも小さな粒子を含む粉末として使用することができる。したがってこの組成物による刺激がさらに少なくなる。
【0025】
標的となる他の適切な器官は、例えば血液の循環が少ない器官であり、具体的には高齢者の洞または骨などである。本発明の生物活性ガラス組成物は、感染によって消失した組織の再生に使用することもできる。
【0026】
したがって本発明の生物活性ガラス組成物は、制御された望むやり方で反応をさせる能力が向上している。さらに、従来の製造方法で本発明の生物活性ガラス組成物を望む任意のデバイスにし、特に正確なデバイスと正確な条件を必要とする用途で使用することができる。
【0027】
実際、本発明の組成物を含む生物活性ガラスは、従来の任意の方法で加工することができる。例えばまず最初に固体ガラスにしてそれをさらに粉砕することができる。本発明の組成物は、粒径分布が特によく制御された顆粒にできるという利点も持っている。顆粒をさらに加熱して球にし、それをさらに焼結して望む形状の多孔性デバイスにすることができる。また、生物活性ガラスの球または粒子をいろいろな鋳造プロセス(例えば加圧鋳造)で利用したり、窓ガラスの製造と似た方法による薄いガラス板の鋳造で利用したりすることもできる。
【0028】
本発明の生物活性ガラス組成物を処理するための特に好ましい方法は、レーザー加熱である。というのも、レーザーを用いるとガラスを溶かすための高温を局所的に実現できるからである。
【0029】
本発明のデバイスは、さまざまな形状にすることが可能である。例えば、粒子、円板、フィルム、膜、チューブ、中空粒子、コーティング、球、半球、モノリスなどが挙げられる。本発明のデバイスにはさまざまな用途がある。
【0030】
ファイバー、顆粒、織ったマット、織っていないマット、組織ガイド・デバイス、フィルムを製造することもできる。組織ガイド・デバイスとは、患者の体内に一旦設置されるとそのデバイスのいろいろな部分の表面にさまざまなタイプの組織が形成されるのをガイドするような性質を持ったデバイスを意味する。組織ガイド・デバイスとしては、本体内にさまざまなチャネルを有する望む形状のデバイスも可能である。そうするとチャネルに静脈が形成されるのをガイドすることができる。
【0031】
本発明による生物活性ガラス組成物の特に興味深い形態は、ファイバーからなる粗糸、穿孔プレート、穿孔シート、正確な輪郭を有する織布である。穿孔プレートまたは穿孔シートは、鋳造または織ることによって製造でき、孔の直径は一般に10〜500μmである。正確な輪郭を有する織布とは、ファイバーの位置がミクロンの精度で決まっている布を意味する。
【0032】
本発明の生物活性ガラス組成物は、デバイスのコーティングに用いることもできる。コーティングは、鋳造または浸漬によって実現することができる。あるいは生物活性ガラスを粉砕してできた粒子でデバイスをコーティングした後、焼結することもできる。本発明の生物活性ガラス組成物は、セラミック材料のコーティングに用いるのが特に好ましい。というのもこのガラスとセラミックの熱膨張係数は互いに大きく違ってはいないからである。この生物活性ガラス組成物を用いてチタンなどの金属をコーティングすることもできる。本発明による組成物のさらに別の利点は、処理中に結晶化しないことである。
【0033】
歯のインプラント、臀部のインプラント、膝のインプラント、ミニプレート、外部固定ピン、ステント(例えば血管の修復に用いるもの)、あるいは他の任意のインプラントを本発明のガラス組成物でコーティングすることができる。
【0034】
本発明のガラスは、大気圧のもとで約1360℃の温度にて製造することが望ましい。ガラスを溶かすための加熱時間は一般に3時間である。保護ガスは不要である。本発明のガラス組成物を製造するとき、構成成分をまず最初に一斉に溶かした後、冷却する。次に、得られた固体材料を粉砕した後、再び溶かして均一な材料を得る。
【0035】
例えばガラスを鋳造している間に加圧ガスをガラス溶融物の中に注入することによって多孔性デバイスを製造することもできる。加圧空気を用いる場合には、空気の温度が低いために従来のガラスだと結晶化する。しかし本発明のガラス組成物だとこの問題は起こらないため、開放セル構造と閉鎖セル構造の両方を形成することができる。空孔は、何らかの活性成分で埋めることもできる。生物活性ガラスの空孔は、このガラスの全反応面積を顕著に増大させるだけでなく、治癒中の骨組織が三次元的に形成されることも可能にする。
【0036】
本発明のガラス組成物を用いると、さまざまな複合体や、少なくとも2つの材料(例えば生物活性ガラスと金属またはセラミック材料の組み合わせ)からなるデバイスを製造することもできる。
【0037】
生物活性ガラス複合体は、さまざまな材料(例えばポリマー、金属、セラミック)を含むことができる。デバイスが溶ける必要のある用途では、例えばバイオポリマーを用いることが好ましい。“バイオポリマー”とは、再生可能な原料(例えばセルロース)をベースとしたポリマーまたは生物分解性合成ポリマー(例えばポリラクチド)を意味する。
【0038】
複合体は、本発明による生物活性ガラス組成物をマトリックスとし、セラミック材料を補強成分として用いて形成することができる。本発明の組成物は、その結晶化特性のためにマトリックスとして特に適している。本発明の組成物は、補強用の粒子またはファイバーを互いに強く接着させもする。このような複合体で作ったインプラントは、体内組織と接触すると素早く多孔性になる。これは、組織工学用のデバイスなどの用途には望ましい性質である。
【0039】
複合体で用いる添加剤または補強剤はさまざまな形態が可能である。例えばファイバー、織ったマット、織ってないマット、粒子、中空粒子などの形態が挙げられる。添加剤または補強剤は多孔性材料や稠密な材料でもよく、生態適合性があることが好ましいのは明らかである。
【0040】
本発明による組成物の特に望ましい利用形態は、ファイバーの形態である。実際、公知の生物活性ガラス組成物よりも高温で本発明の組成物を引っ張ってファイバーにすることができる。一般に、製造温度は、従来の生物活性ガラス組成物よりも100℃高い温度にすることさえできる。溶融ガラスの粘度は温度が高くなるにつれて小さくなるため、製造温度をより高くすると、より小さな直径のファイバーが得られる。製造温度は、得られるファイバー製品にとって極めて重要である。というのも、製造温度はガラスの軟化温度に近いため、結晶化温度にも近いからである。その後、本発明の組成物から製造したファイバーを3回熱処理しても上記の性質を相変わらず持っていた。
【0041】
本発明によるガラス組成物のさらに別の利点は、保管中の安定性が向上していることである。実際、このガラス組成物は保管中に大気中の水分と反応する可能性がある。均一な構造を持つ本発明によるガラス組成物は一様に反応するため、保管後の製品は相変わらず予測可能な性質を持つことになる。
【0042】
最終酸化物の量が出発酸化物の量に近いことを上に述べた。一例を挙げると、最終的に得られるガラスの理論的組成が、
SiO2 53wt%、
P2O5 2wt%、
CaO 22wt%、
Na2O 6wt%、
K2O 11wt%、
MgO 5wt%、
B2O3 1wt%である場合には、
最終的に得られる生物活性ガラス組成物に含まれる酸化物の量は、EDX(エネルギー分散型X線分析)での分析によると、
SiO2 55.17wt%、
P2O5 2.11wt%、
CaO 21.53wt%、
Na2O 5.64wt%、
K2O 9.46wt%、
MgO 5.09wt%、
B2O3 1.00wt%であった。
【0043】
本発明はさらに、本発明による繰り返し処理可能な生物活性ガラス組成物を製造する方法にも関係しており、この方法は、
a)出発材料の混合物を実質的に3時間にわたって1350〜1450℃の温度に加熱するステップと、
b)得られた溶融物を少なくとも12時間かけて周囲温度に冷却するステップと、
c)得られた固体ガラスを粉砕して断片にするステップと、
d)粉砕したガラス材料を実質的に3時間にわたって1350〜1450℃の温度に再び加熱するステップと、
e)得られた生物活性ガラス組成物を成形して望む形状にした後、それを周囲温度まで冷却するステップを含むことを特徴としている。
【0044】
したがって本発明の方法は、均一な混合物を得ることを目的とした溶融または加熱のための2つのステップを含んでいる。最終的に得られる生物活性ガラス組成物は、鋳造または成形によって任意の形状(例えば直接シートまたはロッドの形態)にすることができる。そのシートまたはロッドは、さらにファイバーまたは固体ブロックにして従来法で利用すること、すなわち粉砕して断片にし、再び加熱して成形することができる。
【0045】
この明細書では、特に断らない限り、“含む”という用語は“備える”ことを意味する。すなわち本発明が特定の特徴を含むと書いてある場合には、その発明のさまざまな実施態様が別の特徴を備えていてもよい。
【0046】
例示としての具体例を示した図面によって本発明を以下にさらに詳しく説明する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0047】
図1は、本発明のガラス組成物を含む組織工学用デバイスの一例である。デバイス1は、本発明の生物活性ガラス組成物から製造したガラス粒子または短いファイバー2と、バイオポリマー3で形成したマトリックスとを含んでいる。バイオポリマーの分解速度は、生物活性ガラスの溶解速度よりも大きいことが好ましい。したがってバイオポリマー3が分解すると、体内組織(例えば血管)の形成が可能になる一方で、生物活性ガラスは実質的に一定の形状とサイズを維持する。このタイプの組織工学用デバイスだと、望む速度と形状で新しい組織が形成される一方で、このデバイスを埋め込んだ空洞は変化しない。バイオポリマーは、成長ホルモンなどの生物分子を含むこともできる。
【0048】
図2は、本発明のガラス組成物を含む生物活性ファブリックの断面図である。この実施態様のファブリックは3層のファイバーからなる。ファイバーは織られていても織られていなくてもよい。それぞれの層4、5、6は、異なる少なくとも2つの生物活性ガラス組成物で製造する。そのときそれぞれの組成物は、生物活性が異なっている。層4は、ファブリックの製造中に生物活性が変化しない本発明のガラス組成物から製造することができる。次に層5と6は、生物活性がファブリックの製造プロセスによって変化するガラス組成物か、まったく生物活性のないガラス組成物から製造するとよい。
【0049】
図3aは、従来の生物活性ガラスから製造したファイバー7が体液と接触したときの反応を示している。この図は、一部が結晶化した部分8とアモルファスな部分9とからなるヘテロ構造を有するファイバーを示している。アモルファスな部分9は一部が結晶化した部分8よりも速く溶けるため、ファイバー表面の反応層の断面は不規則な形をしている。
【0050】
図3bは、本発明の生物活性ガラスから製造したファイバーが体液と接触したときの反応を示している。本発明の材料が一様な構造であることが、体液と反応した後にファイバー表面の反応層の断面が実質的に規則的な形になることにはっきりと現われている。
【0051】
図4a〜図5bについては以下に説明する。
【実施例】
【0052】
実施例1
SiO2を165.00g、
CaH(PO4)・2H2Oを7.27g、
CaCO3を108.21g、
Na2CO3を41.04g、
K2CO3を48.42g、
MgOを9.00g、
H3BO3を5.33g
からなる組成物を1360℃の温度に加熱し、この温度を3時間にわたって維持した。炭酸塩が反応して酸化物を形成した溶融組成物を一晩かけて周囲温度まで冷却した後、得られた固体ガラスを粉砕して断片にした。
【0053】
粉砕したガラス材料を再び1360℃に加熱し、この温度を3時間にわたって維持した。得られた軟化したガラス組成物を鋳型に入れ、一晩かけて周囲温度まで冷却した。すると本発明の生物活性ガラスが300g得られた。このガラスの組成は以下の通りであった:
SiO2 55wt%、
Na2O 8wt%、
CaO 21wt%、
K2O 11wt%、
MgO 3wt%、
P2O5 1wt%、
B2O3 1wt%。
【0054】
得られた生物活性ガラス組成物を用い、標準的な方法でファイバーを作った後、不織法で生物活性ガラス・ファブリックを製造した。この不織法では、デンプン水溶液の薄い層を用いてファイバーを互いに結合させた。この溶液は、サイジング剤としても機能するため、ファブリックの強度が増大する。
【0055】
得られたファブリックをそれぞれ3日間、5日間、7日間にわたってトリスの中に浸すテストを行なった。リン酸カルシウムの沈殿が5〜7日目に起こった。光とX線による分析の結果、ファイバーの表面または内部には結晶が存在していないことがわかった。
【0056】
図4a〜図5bは、テスト結果を示している。図4aは、本発明の生物活性ガラス・ファイバーを100倍の倍率で見た走査電子顕微鏡(SEM)写真であり、図4bは、同じサンプルを500倍の倍率で見た写真、すなわち比較のための清浄な表面の写真である。
【0057】
図5aは、本発明の生物活性ガラス・ファイバーを7日間トリスに浸した後に100倍の倍率で見た走査電子顕微鏡写真であり、図5bは、同じサンプルを500倍の倍率で見た写真である。図5aと図5bには、反応によって不規則な表面ができていることが明瞭に見られる。この表面の無機物を分析したところ、リン酸カルシウム(CaP)とケイ素(Si)が含まれていることがわかった。したがって、本発明の生物活性ガラスは一様に反応するためにガラスの組成が均一になることがわかる。
【0058】
実施例2
以下の組成:
SiO2 54wt%、
Na2O 6wt%、
CaO 22wt%、
K2O 11wt%、
MgO 4wt%、
P2O5 1.5wt%、
B2O3 1wt%、
Al2O3 0.5wt%
を有する生物活性ガラスを作ってスピンニングによりファイバーにした。その際、以下の処理を段階的に行なった。
ステップI 加熱速度15℃/分
最終温度340℃
継続時間10分
ステップII 加熱速度12.5℃/分
最終温度850℃
継続時間10分
ステップIII 加熱速度10℃/分
最終温度900℃
継続時間10分
ステップIV 加熱速度10℃/分
最終温度960℃
継続時間180分
ステップV 冷却
【0059】
このプロセスに問題はなかった。ファイバーの直径は0.3mmであった。
【0060】
ファイバーを太くしてよりよいSEM画像を得られるようにするため、落下する液滴から加水分解を調べるためのサンプルをこのプロセスの最初に調製した。
【0061】
ファイバーをそれぞれ3日間、5日間、7日間にわたってトリスに浸してテストした。リン酸カルシウムの明らかな沈殿が3〜7日目に起こった。大きなフレークとして沈殿が起こり、7日目にはすでに分解が始まっていた。
【0062】
図6a〜図9bは、浸漬テストの結果である。これらの図はSEM(走査電子顕微鏡)写真であり、図6a、図7a、図8a、図9aは小倍率での撮影、図6b、図7b、図8b、図9bはより大きな倍率での撮影である。図6aと図6bからは、時刻0においてリン酸カルシウムの沈殿がないことがわかる。図7a〜図9bからは、3日目(図7aと図7b)、5日目(図8aと図8b)、7日目(図9aと図9b)に沈殿が起こっていることがわかる。沈殿物は、ファイバーの表面に均等に分布しており、そのことがこの材料の高い一様性を示している。
【0063】
比較例
以下の組成:
SiO2 53wt%、
Na2O 6wt%、
CaO 20wt%、
K2O 12wt%、
MgO 5wt%、
P2O5 4wt%、
B2O3 0wt%、
Al2O3 0wt%
を有する生物活性ガラスに対して実施例2と同じ処理を施すことによってファイバーにした。加水分解を調べるためのサンプルを実施例2と同様にして調製し、実施例2と同様にして加水分解を調べた。3日目、2つあるサンプルのうちの一方でリン酸カルシウムの沈殿が見られたが、他方のサンプルでは見られなかった。5日目にはリン酸カルシウムの沈殿は見られず、7日目には両方のサンプルでリン酸カルシウムの沈殿がはっきりと見られた。小さなフレークとして沈殿し、実施例2のものより明らかに小さかった。沈殿の形成が一定しなかったのは、ファイバー製造プロセスの間にガラスが一部結晶化したためであると考えられる。
【0064】
図10a〜図14bは、浸漬テストの結果である。これらの図はSEM(走査電子顕微鏡)写真であり、図10a、図11a、図12a、図13a、図14aは小倍率での撮影、図10b、図11b、図12b、図13b、図14bはより大きな倍率での撮影である。
【0065】
図10aと図10bからは、時刻0においてリン酸カルシウムの沈殿がないことがわかる。図11a、図11bと、図12a、図12bは、2つの異なるサンプルの3日目におけるSEM写真である。図11aと図11bに示したサンプルでは、実質的に沈殿が起こっていないのに対し、図12aと図12bに示したサンプルでは沈殿が起こっていることがわかる。このような違いは、実施例2に従って調製したサンプルでは生じなかった。図13aと図13bは、両方のサンプルで5日目に沈殿が起こっていないことを示しており、図14aと図14bは、7日目に沈殿が起こったことを示している。
【0066】
この結果は、比較例に従って製造したファイバーが一様な構造を持っていないことをはっきりと示している。その原因は、すでに述べたように加熱の間に起こるガラスの部分的結晶化にあると考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】本発明のガラス組成物を含む組織工学用デバイスの一例である。
【図2】本発明のガラス組成物を含む生物活性ファブリックの断面図である。
【図3a】従来の生物活性ガラスから製造したファイバーが体液と接触したときの反応を示している。
【図3b】本発明の生物活性ガラスから製造したファイバーが体液と接触したときの反応を示している。
【図4a】本発明の生物活性ガラス・ファイバーを100倍の倍率で見た走査電子顕微鏡写真である。
【図4b】本発明の生物活性ガラス・ファイバーを500倍の倍率で見た走査電子顕微鏡写真である。
【図5a】本発明の生物活性ガラス・ファイバーを7日間トリスに浸した後に100倍の倍率で見た走査電子顕微鏡写真である。
【図5b】本発明の生物活性ガラス・ファイバーを7日間トリスに浸した後に500倍の倍率で見た走査電子顕微鏡写真である。
【図6】実施例2に従って製造した生物活性ガラス・ファイバーの走査電子顕微鏡写真である。
【図7】実施例2に従って製造した生物活性ガラス・ファイバーを3日間トリスに浸した後の走査電子顕微鏡写真である。
【図8】実施例2に従って製造した生物活性ガラス・ファイバーを5日間トリスに浸した後の走査電子顕微鏡写真である。
【図9】実施例2に従って製造した生物活性ガラス・ファイバーを7日間トリスに浸した後の走査電子顕微鏡写真である。
【図10】比較例に従って製造した生物活性ガラス・ファイバーの走査電子顕微鏡写真である。
【図11】比較例に従って製造した生物活性ガラス・ファイバーを3日間トリスに浸した後の走査電子顕微鏡写真である。
【図12】比較例に従って製造した生物活性ガラス・ファイバーを3日間トリスに浸した後の走査電子顕微鏡写真である。
【図13】比較例に従って製造した生物活性ガラス・ファイバーを5日間トリスに浸した後の走査電子顕微鏡写真である。
【図14】比較例に従って製造した生物活性ガラス・ファイバーを7日間トリスに浸した後の走査電子顕微鏡写真である。
【技術分野】
【0001】
本発明は、SiO2、Na2O、CaO、K2O、MgO、P2O5、およびB2O3を含む生物活性ガラス組成物に関する。本発明はさらに、この組成物の使用と、この組成物から製造したデバイスにも関する。本発明は、本発明による生物活性ガラス組成物の製造方法にも関する。
【背景技術】
【0002】
本発明の背景を明らかにするのにこの明細書で用いる出版物その他の材料、中でも実施に関する補足的な詳細を与えるケースは、参考としてこの明細書に組み込まれているものとする。
【0003】
この明細書では、生物活性ガラスとは、体内組織において特別な生物活性を誘導するように設計された材料のことを意味する。この文脈における生物分解性という用語は、生物活性ガラスを哺乳動物の体内に挿入したとき、埋め込んだ期間が長くなると分解することを意味する。バイオマテリアルとは、生物系と相互作用させることを目的として医用デバイスで用いられる生きていない材料のことを意味する。
【0004】
ガラスは、医学や歯学で手術やインプラントに応用するために広範に研究されてきた。医用デバイスは、ヒトや動物の組織に埋め込むことができる。そうすると、生物学的に活性な薬剤の放出部位が標的となるように活性成分を局所的に投与することができる。結晶化していない生物活性ガラス組成物だけが最良の生物活性を示すため、また生物活性ガラス組成物は相分離に近い領域にあるため、熱処理を繰り返す間に結晶化しないガラス組成物、すなわち生物活性を維持するガラス組成物を作ることは非常に難しい。
【0005】
生物活性ガラスはその表面に反応層を形成し、デバイスと宿主組織の間に結合を形成する。生物活性ガラスの化学反応は、他のほとんどの生物活性材料とは異なり、ガラスの化学組成を変化させることによって容易に制御することができる。したがって生物活性ガラスは特に臨床への応用において興味深く、実際に、例えば顔面に怪我をした後に損傷した部分を交換したり、中耳の小さな骨(小骨)を置換したり、外科手術で骨の欠陥を埋めたりするのに用いられている。
【0006】
残念なことに、従来から知られている生物活性ガラス組成物は熱処理の繰り返しに耐えることができない。というのも再度加熱すると生物活性が低下するからである。そのためそのような組成物からデバイスを製造するときには、ガラスの製造ステップですでに最終形状に成形するか、あるいはあらかじめ形成したガラス粒子を粉砕することによってだけデバイスの形状を決めることができるため、大きな問題が生じる。堅固な非多孔性デバイスは、成形プロセスによってのみ製造できる。
【0007】
熱処理特性に関して改良された生物活性ガラス組成物がBrinkらによってWO 96/21628に提示されている。この文書には、以下の組成:
SiO2 53〜60wt%、
Na2O 0〜34wt%、
K2O 1〜20wt%、
MgO 0〜5wt%、
CaO 5〜25wt%、
B2O3 0〜4wt%、
P2O5 0.5〜6wt%
を有するが、ただし
Na2O + K2O =16〜35wt%、
K2O + MgO =5〜20wt%、
MgO + CaO =10〜25wt%
である生物活性ガラスが開示されている。
【0008】
しかしこのガラスの熱処理特性は、生物活性ガラスを用いて技術的に難しい用途のデバイス(例えばファイバー、焼結ファイバー・ファブリックなど)を製造するときに繰り返して加熱するのに最適であるとは言えない。
【0009】
ItaIaらの論文(Journal of Biomedical Materials Research、第56巻(2)、282〜288ページ、2001年)には、以下の組成:
SiO2の量が出発酸化物の53wt%であり、
Na2Oの量が出発酸化物の6wt%であり、
CaOの量が出発酸化物の22wt%であり、
K2Oの量が出発酸化物の11wt%であり、
MgOの量が出発酸化物の5wt%であり、
P2O5の量が出発酸化物の2wt%であり、
B2O3の量が出発酸化物の1wt%
を有する生物活性ガラスが開示されている。
【0010】
しかしこの文献にはこのガラス組成物を繰り返して加熱したときの特性が記載されていない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の目的は、繰り返して加熱してもガラスが結晶化することがなく、その生物活性を失うことがない生物活性ガラス組成物を提供することである。本発明の別の目的は、生物活性ガラスを用いて技術的に難しい用途のデバイスを製造するのに適した生物活性ガラス組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、添付の請求項に開示されている。
【0013】
本発明による生物活性ガラス組成物は、
SiO2の量が出発酸化物の51〜56wt%であり、
Na2Oの量が出発酸化物の7〜9wt%であり、
CaOの量が出発酸化物の21〜23wt%であり、
K2Oの量が出発酸化物の10〜12wt%であり、
MgOの量が出発酸化物の1〜4wt%であり、
P2O5の量が出発酸化物の0.5〜1.5wt%であり、
B2O3の量が出発酸化物の0〜1wt%であるが、
Na2OとK2Oの合計量は出発酸化物の17〜20wt%であることを特徴とする。
【0014】
したがって本発明は、繰り返して熱処理することさえ可能な生物活性ガラス組成物に関する。
【0015】
出願人は、実際に、上記の組成を有する生物活性ガラスが、予想に反して驚くほど優れた熱処理特性を有することを見いだした。したがって本発明は、WO 96/21628に開示されている上記発明の中から選択した発明である。実際、選択した範囲はWO 96/21628に開示されている範囲よりも狭く、WO 96/21628に開示されている範囲の両端の点からははるかに離れている。この範囲は、予期しない技術的効果があったためにわざとそのように選択した。
【0016】
さまざまな酸化物の量は、出発酸化物に対するwt%で示している。というのも、いくつかの元素(例えばナトリウム)は加熱中に蒸発するからである。しかし最終酸化物の量は出発酸化物の量に近く、いずれの場合にも出発量と最終量の差は5%未満、好ましくは3%未満である。
【0017】
酸化物の量を上記の範囲の中で自由に選択できることは当業者には明らかである。実際、SiO2の量は出発酸化物の例えば51.5、52、53.5、55、56wt%のいずれかにすることができ、Na2Oの量は出発酸化物の例えば7、7.3、7.7、8、8.5、9wt%のいずれかにすることができ、CaOの量は出発酸化物の例えば21、21.4、21.7、22、22.6、23wt%のいずれかにすることができ、K2Oの量は出発酸化物の例えば10、10.5、10.6、11、11.3、11.7、12wt%のいずれかにすることができ、MgOの量は出発酸化物の例えば1、1.3、1.9、2.4、2.7、3.5、4wt%のいずれかにすることができ、P2O5の量は出発酸化物の例えば0.5、0.7、1、1.2、1.5wt%のいずれかにすることができ、B2O3の量は出発酸化物の例えば0、0.4、0.6、0.9、1wt%のいずれかにすることができる。
【0018】
本発明の一実施態様によると、SiO2の量は出発酸化物の54〜56wt%である。
【0019】
本発明の別の実施態様によると、本発明のガラス組成物はさらにAl2O3を出発酸化物の1wt%まで含むが、B2O3とAl2O3の合計量は出発酸化物の0.5〜2.5wt%である。本発明のさらに別の実施態様によれば、本発明のガラス組成物はさらにAl2O3を出発酸化物の0.3〜1.0wt%まで含んでいる。アルミニウムは生物活性ガラス組成物の力学的特性を向上させると考えられている。
【0020】
本発明のさらに別の実施態様によれば、Na2Oおよび/またはK2Oの量の減少を、Al2O3および/またはB2O3の量の増加で相殺する。
【0021】
骨形成における生物活性ガラスの役割は2つあり、Ca2+を供給することと、ガラス表面にシリカゲル層を形成することであると考えられている。このシリカゲルは拡散の障壁として機能するため、イオンがガラスから浸出するのを遅くし、したがって新しい反応層と新しい体内組織の形成を遅くする。このシリカゲルは酸性でもあるため、組織を刺激する可能性がある。
【0022】
本発明による生物活性ガラス組成物のさらに別の利点は、本発明のガラス組成物から製造したデバイスと体内組織の一次反応が“穏やか”であること、すなわち従来のいくつかの生物活性ガラスほど攻撃的ではないことである。実際、まず最初に、一般に約6時間ほどでガラス表面のシリカゲルの中にリン酸カルシウムが比較的薄い層となって形成され、次に、一般に約48〜72時間ほどでリン酸カルシウム層がシリカゲル層の上に形成される。一次リン酸カルシウム層が形成されている間、本発明によるガラス組成物の表面上のシリカゲル層は、従来の生物活性ガラス(例えば上記のもの)の表面にある対応する層よりも実質的に薄い。
【0023】
言い換えるならば、本発明の生物活性ガラス組成物は、適切な程度まで反応し、過度に溶けることはない。これは、生体内の状況において明らかに利点である。その一方で、本発明の組成物で作ったデバイスは、長期にわたって生物活性を維持する。
【0024】
この組成物にはこのような利点があるため、非常に敏感な角膜などの標的器官で使用することができる。本発明のガラス組成物は、組織と穏やかに反応するため、例えばシリカゲル層が形成されることに起因する化学的な刺激が少なくなる。本発明のガラス組成物にはこのような性質があるため、従来の組成物よりも小さな粒子を含む粉末として使用することができる。したがってこの組成物による刺激がさらに少なくなる。
【0025】
標的となる他の適切な器官は、例えば血液の循環が少ない器官であり、具体的には高齢者の洞または骨などである。本発明の生物活性ガラス組成物は、感染によって消失した組織の再生に使用することもできる。
【0026】
したがって本発明の生物活性ガラス組成物は、制御された望むやり方で反応をさせる能力が向上している。さらに、従来の製造方法で本発明の生物活性ガラス組成物を望む任意のデバイスにし、特に正確なデバイスと正確な条件を必要とする用途で使用することができる。
【0027】
実際、本発明の組成物を含む生物活性ガラスは、従来の任意の方法で加工することができる。例えばまず最初に固体ガラスにしてそれをさらに粉砕することができる。本発明の組成物は、粒径分布が特によく制御された顆粒にできるという利点も持っている。顆粒をさらに加熱して球にし、それをさらに焼結して望む形状の多孔性デバイスにすることができる。また、生物活性ガラスの球または粒子をいろいろな鋳造プロセス(例えば加圧鋳造)で利用したり、窓ガラスの製造と似た方法による薄いガラス板の鋳造で利用したりすることもできる。
【0028】
本発明の生物活性ガラス組成物を処理するための特に好ましい方法は、レーザー加熱である。というのも、レーザーを用いるとガラスを溶かすための高温を局所的に実現できるからである。
【0029】
本発明のデバイスは、さまざまな形状にすることが可能である。例えば、粒子、円板、フィルム、膜、チューブ、中空粒子、コーティング、球、半球、モノリスなどが挙げられる。本発明のデバイスにはさまざまな用途がある。
【0030】
ファイバー、顆粒、織ったマット、織っていないマット、組織ガイド・デバイス、フィルムを製造することもできる。組織ガイド・デバイスとは、患者の体内に一旦設置されるとそのデバイスのいろいろな部分の表面にさまざまなタイプの組織が形成されるのをガイドするような性質を持ったデバイスを意味する。組織ガイド・デバイスとしては、本体内にさまざまなチャネルを有する望む形状のデバイスも可能である。そうするとチャネルに静脈が形成されるのをガイドすることができる。
【0031】
本発明による生物活性ガラス組成物の特に興味深い形態は、ファイバーからなる粗糸、穿孔プレート、穿孔シート、正確な輪郭を有する織布である。穿孔プレートまたは穿孔シートは、鋳造または織ることによって製造でき、孔の直径は一般に10〜500μmである。正確な輪郭を有する織布とは、ファイバーの位置がミクロンの精度で決まっている布を意味する。
【0032】
本発明の生物活性ガラス組成物は、デバイスのコーティングに用いることもできる。コーティングは、鋳造または浸漬によって実現することができる。あるいは生物活性ガラスを粉砕してできた粒子でデバイスをコーティングした後、焼結することもできる。本発明の生物活性ガラス組成物は、セラミック材料のコーティングに用いるのが特に好ましい。というのもこのガラスとセラミックの熱膨張係数は互いに大きく違ってはいないからである。この生物活性ガラス組成物を用いてチタンなどの金属をコーティングすることもできる。本発明による組成物のさらに別の利点は、処理中に結晶化しないことである。
【0033】
歯のインプラント、臀部のインプラント、膝のインプラント、ミニプレート、外部固定ピン、ステント(例えば血管の修復に用いるもの)、あるいは他の任意のインプラントを本発明のガラス組成物でコーティングすることができる。
【0034】
本発明のガラスは、大気圧のもとで約1360℃の温度にて製造することが望ましい。ガラスを溶かすための加熱時間は一般に3時間である。保護ガスは不要である。本発明のガラス組成物を製造するとき、構成成分をまず最初に一斉に溶かした後、冷却する。次に、得られた固体材料を粉砕した後、再び溶かして均一な材料を得る。
【0035】
例えばガラスを鋳造している間に加圧ガスをガラス溶融物の中に注入することによって多孔性デバイスを製造することもできる。加圧空気を用いる場合には、空気の温度が低いために従来のガラスだと結晶化する。しかし本発明のガラス組成物だとこの問題は起こらないため、開放セル構造と閉鎖セル構造の両方を形成することができる。空孔は、何らかの活性成分で埋めることもできる。生物活性ガラスの空孔は、このガラスの全反応面積を顕著に増大させるだけでなく、治癒中の骨組織が三次元的に形成されることも可能にする。
【0036】
本発明のガラス組成物を用いると、さまざまな複合体や、少なくとも2つの材料(例えば生物活性ガラスと金属またはセラミック材料の組み合わせ)からなるデバイスを製造することもできる。
【0037】
生物活性ガラス複合体は、さまざまな材料(例えばポリマー、金属、セラミック)を含むことができる。デバイスが溶ける必要のある用途では、例えばバイオポリマーを用いることが好ましい。“バイオポリマー”とは、再生可能な原料(例えばセルロース)をベースとしたポリマーまたは生物分解性合成ポリマー(例えばポリラクチド)を意味する。
【0038】
複合体は、本発明による生物活性ガラス組成物をマトリックスとし、セラミック材料を補強成分として用いて形成することができる。本発明の組成物は、その結晶化特性のためにマトリックスとして特に適している。本発明の組成物は、補強用の粒子またはファイバーを互いに強く接着させもする。このような複合体で作ったインプラントは、体内組織と接触すると素早く多孔性になる。これは、組織工学用のデバイスなどの用途には望ましい性質である。
【0039】
複合体で用いる添加剤または補強剤はさまざまな形態が可能である。例えばファイバー、織ったマット、織ってないマット、粒子、中空粒子などの形態が挙げられる。添加剤または補強剤は多孔性材料や稠密な材料でもよく、生態適合性があることが好ましいのは明らかである。
【0040】
本発明による組成物の特に望ましい利用形態は、ファイバーの形態である。実際、公知の生物活性ガラス組成物よりも高温で本発明の組成物を引っ張ってファイバーにすることができる。一般に、製造温度は、従来の生物活性ガラス組成物よりも100℃高い温度にすることさえできる。溶融ガラスの粘度は温度が高くなるにつれて小さくなるため、製造温度をより高くすると、より小さな直径のファイバーが得られる。製造温度は、得られるファイバー製品にとって極めて重要である。というのも、製造温度はガラスの軟化温度に近いため、結晶化温度にも近いからである。その後、本発明の組成物から製造したファイバーを3回熱処理しても上記の性質を相変わらず持っていた。
【0041】
本発明によるガラス組成物のさらに別の利点は、保管中の安定性が向上していることである。実際、このガラス組成物は保管中に大気中の水分と反応する可能性がある。均一な構造を持つ本発明によるガラス組成物は一様に反応するため、保管後の製品は相変わらず予測可能な性質を持つことになる。
【0042】
最終酸化物の量が出発酸化物の量に近いことを上に述べた。一例を挙げると、最終的に得られるガラスの理論的組成が、
SiO2 53wt%、
P2O5 2wt%、
CaO 22wt%、
Na2O 6wt%、
K2O 11wt%、
MgO 5wt%、
B2O3 1wt%である場合には、
最終的に得られる生物活性ガラス組成物に含まれる酸化物の量は、EDX(エネルギー分散型X線分析)での分析によると、
SiO2 55.17wt%、
P2O5 2.11wt%、
CaO 21.53wt%、
Na2O 5.64wt%、
K2O 9.46wt%、
MgO 5.09wt%、
B2O3 1.00wt%であった。
【0043】
本発明はさらに、本発明による繰り返し処理可能な生物活性ガラス組成物を製造する方法にも関係しており、この方法は、
a)出発材料の混合物を実質的に3時間にわたって1350〜1450℃の温度に加熱するステップと、
b)得られた溶融物を少なくとも12時間かけて周囲温度に冷却するステップと、
c)得られた固体ガラスを粉砕して断片にするステップと、
d)粉砕したガラス材料を実質的に3時間にわたって1350〜1450℃の温度に再び加熱するステップと、
e)得られた生物活性ガラス組成物を成形して望む形状にした後、それを周囲温度まで冷却するステップを含むことを特徴としている。
【0044】
したがって本発明の方法は、均一な混合物を得ることを目的とした溶融または加熱のための2つのステップを含んでいる。最終的に得られる生物活性ガラス組成物は、鋳造または成形によって任意の形状(例えば直接シートまたはロッドの形態)にすることができる。そのシートまたはロッドは、さらにファイバーまたは固体ブロックにして従来法で利用すること、すなわち粉砕して断片にし、再び加熱して成形することができる。
【0045】
この明細書では、特に断らない限り、“含む”という用語は“備える”ことを意味する。すなわち本発明が特定の特徴を含むと書いてある場合には、その発明のさまざまな実施態様が別の特徴を備えていてもよい。
【0046】
例示としての具体例を示した図面によって本発明を以下にさらに詳しく説明する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0047】
図1は、本発明のガラス組成物を含む組織工学用デバイスの一例である。デバイス1は、本発明の生物活性ガラス組成物から製造したガラス粒子または短いファイバー2と、バイオポリマー3で形成したマトリックスとを含んでいる。バイオポリマーの分解速度は、生物活性ガラスの溶解速度よりも大きいことが好ましい。したがってバイオポリマー3が分解すると、体内組織(例えば血管)の形成が可能になる一方で、生物活性ガラスは実質的に一定の形状とサイズを維持する。このタイプの組織工学用デバイスだと、望む速度と形状で新しい組織が形成される一方で、このデバイスを埋め込んだ空洞は変化しない。バイオポリマーは、成長ホルモンなどの生物分子を含むこともできる。
【0048】
図2は、本発明のガラス組成物を含む生物活性ファブリックの断面図である。この実施態様のファブリックは3層のファイバーからなる。ファイバーは織られていても織られていなくてもよい。それぞれの層4、5、6は、異なる少なくとも2つの生物活性ガラス組成物で製造する。そのときそれぞれの組成物は、生物活性が異なっている。層4は、ファブリックの製造中に生物活性が変化しない本発明のガラス組成物から製造することができる。次に層5と6は、生物活性がファブリックの製造プロセスによって変化するガラス組成物か、まったく生物活性のないガラス組成物から製造するとよい。
【0049】
図3aは、従来の生物活性ガラスから製造したファイバー7が体液と接触したときの反応を示している。この図は、一部が結晶化した部分8とアモルファスな部分9とからなるヘテロ構造を有するファイバーを示している。アモルファスな部分9は一部が結晶化した部分8よりも速く溶けるため、ファイバー表面の反応層の断面は不規則な形をしている。
【0050】
図3bは、本発明の生物活性ガラスから製造したファイバーが体液と接触したときの反応を示している。本発明の材料が一様な構造であることが、体液と反応した後にファイバー表面の反応層の断面が実質的に規則的な形になることにはっきりと現われている。
【0051】
図4a〜図5bについては以下に説明する。
【実施例】
【0052】
実施例1
SiO2を165.00g、
CaH(PO4)・2H2Oを7.27g、
CaCO3を108.21g、
Na2CO3を41.04g、
K2CO3を48.42g、
MgOを9.00g、
H3BO3を5.33g
からなる組成物を1360℃の温度に加熱し、この温度を3時間にわたって維持した。炭酸塩が反応して酸化物を形成した溶融組成物を一晩かけて周囲温度まで冷却した後、得られた固体ガラスを粉砕して断片にした。
【0053】
粉砕したガラス材料を再び1360℃に加熱し、この温度を3時間にわたって維持した。得られた軟化したガラス組成物を鋳型に入れ、一晩かけて周囲温度まで冷却した。すると本発明の生物活性ガラスが300g得られた。このガラスの組成は以下の通りであった:
SiO2 55wt%、
Na2O 8wt%、
CaO 21wt%、
K2O 11wt%、
MgO 3wt%、
P2O5 1wt%、
B2O3 1wt%。
【0054】
得られた生物活性ガラス組成物を用い、標準的な方法でファイバーを作った後、不織法で生物活性ガラス・ファブリックを製造した。この不織法では、デンプン水溶液の薄い層を用いてファイバーを互いに結合させた。この溶液は、サイジング剤としても機能するため、ファブリックの強度が増大する。
【0055】
得られたファブリックをそれぞれ3日間、5日間、7日間にわたってトリスの中に浸すテストを行なった。リン酸カルシウムの沈殿が5〜7日目に起こった。光とX線による分析の結果、ファイバーの表面または内部には結晶が存在していないことがわかった。
【0056】
図4a〜図5bは、テスト結果を示している。図4aは、本発明の生物活性ガラス・ファイバーを100倍の倍率で見た走査電子顕微鏡(SEM)写真であり、図4bは、同じサンプルを500倍の倍率で見た写真、すなわち比較のための清浄な表面の写真である。
【0057】
図5aは、本発明の生物活性ガラス・ファイバーを7日間トリスに浸した後に100倍の倍率で見た走査電子顕微鏡写真であり、図5bは、同じサンプルを500倍の倍率で見た写真である。図5aと図5bには、反応によって不規則な表面ができていることが明瞭に見られる。この表面の無機物を分析したところ、リン酸カルシウム(CaP)とケイ素(Si)が含まれていることがわかった。したがって、本発明の生物活性ガラスは一様に反応するためにガラスの組成が均一になることがわかる。
【0058】
実施例2
以下の組成:
SiO2 54wt%、
Na2O 6wt%、
CaO 22wt%、
K2O 11wt%、
MgO 4wt%、
P2O5 1.5wt%、
B2O3 1wt%、
Al2O3 0.5wt%
を有する生物活性ガラスを作ってスピンニングによりファイバーにした。その際、以下の処理を段階的に行なった。
ステップI 加熱速度15℃/分
最終温度340℃
継続時間10分
ステップII 加熱速度12.5℃/分
最終温度850℃
継続時間10分
ステップIII 加熱速度10℃/分
最終温度900℃
継続時間10分
ステップIV 加熱速度10℃/分
最終温度960℃
継続時間180分
ステップV 冷却
【0059】
このプロセスに問題はなかった。ファイバーの直径は0.3mmであった。
【0060】
ファイバーを太くしてよりよいSEM画像を得られるようにするため、落下する液滴から加水分解を調べるためのサンプルをこのプロセスの最初に調製した。
【0061】
ファイバーをそれぞれ3日間、5日間、7日間にわたってトリスに浸してテストした。リン酸カルシウムの明らかな沈殿が3〜7日目に起こった。大きなフレークとして沈殿が起こり、7日目にはすでに分解が始まっていた。
【0062】
図6a〜図9bは、浸漬テストの結果である。これらの図はSEM(走査電子顕微鏡)写真であり、図6a、図7a、図8a、図9aは小倍率での撮影、図6b、図7b、図8b、図9bはより大きな倍率での撮影である。図6aと図6bからは、時刻0においてリン酸カルシウムの沈殿がないことがわかる。図7a〜図9bからは、3日目(図7aと図7b)、5日目(図8aと図8b)、7日目(図9aと図9b)に沈殿が起こっていることがわかる。沈殿物は、ファイバーの表面に均等に分布しており、そのことがこの材料の高い一様性を示している。
【0063】
比較例
以下の組成:
SiO2 53wt%、
Na2O 6wt%、
CaO 20wt%、
K2O 12wt%、
MgO 5wt%、
P2O5 4wt%、
B2O3 0wt%、
Al2O3 0wt%
を有する生物活性ガラスに対して実施例2と同じ処理を施すことによってファイバーにした。加水分解を調べるためのサンプルを実施例2と同様にして調製し、実施例2と同様にして加水分解を調べた。3日目、2つあるサンプルのうちの一方でリン酸カルシウムの沈殿が見られたが、他方のサンプルでは見られなかった。5日目にはリン酸カルシウムの沈殿は見られず、7日目には両方のサンプルでリン酸カルシウムの沈殿がはっきりと見られた。小さなフレークとして沈殿し、実施例2のものより明らかに小さかった。沈殿の形成が一定しなかったのは、ファイバー製造プロセスの間にガラスが一部結晶化したためであると考えられる。
【0064】
図10a〜図14bは、浸漬テストの結果である。これらの図はSEM(走査電子顕微鏡)写真であり、図10a、図11a、図12a、図13a、図14aは小倍率での撮影、図10b、図11b、図12b、図13b、図14bはより大きな倍率での撮影である。
【0065】
図10aと図10bからは、時刻0においてリン酸カルシウムの沈殿がないことがわかる。図11a、図11bと、図12a、図12bは、2つの異なるサンプルの3日目におけるSEM写真である。図11aと図11bに示したサンプルでは、実質的に沈殿が起こっていないのに対し、図12aと図12bに示したサンプルでは沈殿が起こっていることがわかる。このような違いは、実施例2に従って調製したサンプルでは生じなかった。図13aと図13bは、両方のサンプルで5日目に沈殿が起こっていないことを示しており、図14aと図14bは、7日目に沈殿が起こったことを示している。
【0066】
この結果は、比較例に従って製造したファイバーが一様な構造を持っていないことをはっきりと示している。その原因は、すでに述べたように加熱の間に起こるガラスの部分的結晶化にあると考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】本発明のガラス組成物を含む組織工学用デバイスの一例である。
【図2】本発明のガラス組成物を含む生物活性ファブリックの断面図である。
【図3a】従来の生物活性ガラスから製造したファイバーが体液と接触したときの反応を示している。
【図3b】本発明の生物活性ガラスから製造したファイバーが体液と接触したときの反応を示している。
【図4a】本発明の生物活性ガラス・ファイバーを100倍の倍率で見た走査電子顕微鏡写真である。
【図4b】本発明の生物活性ガラス・ファイバーを500倍の倍率で見た走査電子顕微鏡写真である。
【図5a】本発明の生物活性ガラス・ファイバーを7日間トリスに浸した後に100倍の倍率で見た走査電子顕微鏡写真である。
【図5b】本発明の生物活性ガラス・ファイバーを7日間トリスに浸した後に500倍の倍率で見た走査電子顕微鏡写真である。
【図6】実施例2に従って製造した生物活性ガラス・ファイバーの走査電子顕微鏡写真である。
【図7】実施例2に従って製造した生物活性ガラス・ファイバーを3日間トリスに浸した後の走査電子顕微鏡写真である。
【図8】実施例2に従って製造した生物活性ガラス・ファイバーを5日間トリスに浸した後の走査電子顕微鏡写真である。
【図9】実施例2に従って製造した生物活性ガラス・ファイバーを7日間トリスに浸した後の走査電子顕微鏡写真である。
【図10】比較例に従って製造した生物活性ガラス・ファイバーの走査電子顕微鏡写真である。
【図11】比較例に従って製造した生物活性ガラス・ファイバーを3日間トリスに浸した後の走査電子顕微鏡写真である。
【図12】比較例に従って製造した生物活性ガラス・ファイバーを3日間トリスに浸した後の走査電子顕微鏡写真である。
【図13】比較例に従って製造した生物活性ガラス・ファイバーを5日間トリスに浸した後の走査電子顕微鏡写真である。
【図14】比較例に従って製造した生物活性ガラス・ファイバーを7日間トリスに浸した後の走査電子顕微鏡写真である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
SiO2、Na2O、CaO、K2O、MgO、P2O5、およびB2O3を含む生物活性ガラス組成物であって、
SiO2の量が出発酸化物の51〜56wt%であり、
Na2Oの量が出発酸化物の7〜9wt%であり、
CaOの量が出発酸化物の21〜23wt%であり、
K2Oの量が出発酸化物の10〜12wt%であり、
MgOの量が出発酸化物の1〜4wt%であり、
P2O5の量が出発酸化物の0.5〜1.5wt%であり、
B2O3の量が出発酸化物の0〜1wt%であるが、
Na2OとK2Oの合計量は出発酸化物の17〜20wt%であることを特徴とする生物活性ガラス組成物。
【請求項2】
SiO2の量が出発酸化物の54〜56wt%であることを特徴とする、請求項1に記載の生物活性ガラス組成物。
【請求項3】
さらにAl2O3を出発酸化物の1wt%まで含むが、B2O3とAl2O3の合計量は出発酸化物の0.5〜2.5wt%であることを特徴とする、請求項1または2に記載の生物活性ガラス組成物。
【請求項4】
Na2Oおよび/またはK2Oの量の減少を、Al2O3および/またはB2O3の量の増加で相殺することを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の生物活性ガラス組成物。
【請求項5】
デバイスのコーティングにおける、請求項1〜4のいずれか1項に記載の生物活性ガラス組成物の使用。
【請求項6】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の生物活性ガラス組成物から製造したことを特徴とする埋め込み可能なデバイス。
【請求項7】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の生物活性ガラス組成物から製造したことを特徴とするファイバー。
【請求項8】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の生物活性ガラス組成物から製造したことを特徴とするシート。
【請求項9】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の生物活性ガラス組成物を溶融させたものの中に加圧ガスを注入することによって製造したことを特徴とする多孔性デバイス。
【請求項10】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の生物活性ガラス組成物から製造したことを特徴とする組織工学用デバイス。
【請求項11】
繰り返して熱処理することが可能な請求項1〜4のいずれか1項に記載の生物活性ガラス組成物を製造する方法であって、
a)出発材料の混合物を実質的に3時間にわたって1350〜1450℃の温度に加熱するステップと、
b)得られた溶融物を少なくとも12時間かけて周囲温度に冷却するステップと、
c)得られた固体ガラスを粉砕して断片にするステップと、
d)粉砕したガラス材料を実質的に3時間にわたって1350〜1450℃の温度に再び加熱するステップと、
e)得られた生物活性ガラス組成物を成形して望む形状にした後、それを周囲温度まで冷却するステップを含む方法。
【請求項1】
SiO2、Na2O、CaO、K2O、MgO、P2O5、およびB2O3を含む生物活性ガラス組成物であって、
SiO2の量が出発酸化物の51〜56wt%であり、
Na2Oの量が出発酸化物の7〜9wt%であり、
CaOの量が出発酸化物の21〜23wt%であり、
K2Oの量が出発酸化物の10〜12wt%であり、
MgOの量が出発酸化物の1〜4wt%であり、
P2O5の量が出発酸化物の0.5〜1.5wt%であり、
B2O3の量が出発酸化物の0〜1wt%であるが、
Na2OとK2Oの合計量は出発酸化物の17〜20wt%であることを特徴とする生物活性ガラス組成物。
【請求項2】
SiO2の量が出発酸化物の54〜56wt%であることを特徴とする、請求項1に記載の生物活性ガラス組成物。
【請求項3】
さらにAl2O3を出発酸化物の1wt%まで含むが、B2O3とAl2O3の合計量は出発酸化物の0.5〜2.5wt%であることを特徴とする、請求項1または2に記載の生物活性ガラス組成物。
【請求項4】
Na2Oおよび/またはK2Oの量の減少を、Al2O3および/またはB2O3の量の増加で相殺することを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の生物活性ガラス組成物。
【請求項5】
デバイスのコーティングにおける、請求項1〜4のいずれか1項に記載の生物活性ガラス組成物の使用。
【請求項6】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の生物活性ガラス組成物から製造したことを特徴とする埋め込み可能なデバイス。
【請求項7】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の生物活性ガラス組成物から製造したことを特徴とするファイバー。
【請求項8】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の生物活性ガラス組成物から製造したことを特徴とするシート。
【請求項9】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の生物活性ガラス組成物を溶融させたものの中に加圧ガスを注入することによって製造したことを特徴とする多孔性デバイス。
【請求項10】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の生物活性ガラス組成物から製造したことを特徴とする組織工学用デバイス。
【請求項11】
繰り返して熱処理することが可能な請求項1〜4のいずれか1項に記載の生物活性ガラス組成物を製造する方法であって、
a)出発材料の混合物を実質的に3時間にわたって1350〜1450℃の温度に加熱するステップと、
b)得られた溶融物を少なくとも12時間かけて周囲温度に冷却するステップと、
c)得られた固体ガラスを粉砕して断片にするステップと、
d)粉砕したガラス材料を実質的に3時間にわたって1350〜1450℃の温度に再び加熱するステップと、
e)得られた生物活性ガラス組成物を成形して望む形状にした後、それを周囲温度まで冷却するステップを含む方法。
【図1】
【図2】
【図2】
【公表番号】特表2006−501125(P2006−501125A)
【公表日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−540837(P2004−540837)
【出願日】平成15年10月2日(2003.10.2)
【国際出願番号】PCT/FI2003/000715
【国際公開番号】WO2004/031086
【国際公開日】平成16年4月15日(2004.4.15)
【出願人】(503115906)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成15年10月2日(2003.10.2)
【国際出願番号】PCT/FI2003/000715
【国際公開番号】WO2004/031086
【国際公開日】平成16年4月15日(2004.4.15)
【出願人】(503115906)
【Fターム(参考)】
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