説明

生物活性剤の粒子およびその製造方法

【課題】難水溶性生物活性剤を経口投与等するための送達系の提供。
【解決手段】難水溶性生物活性剤を溶融させ;分散媒を加熱し;燐脂質、スフィンゴリピドおよびグリコスフィンゴリピド、胆汁酸塩、脂肪酸、脂肪族アルコール、脂肪酸と脂肪族アルコールとのエステル等の分散性安定化剤の存在下、分散媒と混合し;その分散液を高圧均質化により乳化させ、再結晶により固体粒子が形成されるまで放冷することにより生物活性剤粒子(PBA)の懸濁液を調製する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、難水溶性医薬またはその他の生物活性剤の担体として使用できる室温で固体の生物分解性脂質、好ましくはトリグリセライド、の粒子の懸濁液、および生物活性剤、例えば医薬、殺虫剤、殺カビ剤、殺有害生物剤(pesticide)、殺草剤および肥料、などにより構成される粒子の懸濁液のほか、それらの凍結乾燥物に関する。いずれの系も溶融乳化法により調製することができる。
【0002】
固体脂質粒子(SLP)の性質には、生物分解性、生産プロセスからの毒物学的に活性な残留物の回避、コアレッセンスおよび薬品漏れに関する高められた物理化学的安定性、改変された表面特性、取り込まれた物質のコントロールされた放出および改変された生物内分布が包含される。それら粒子は冷却時に結晶性非等軸(anisometrical)粒子を形成する小液滴を生じる溶融物質乳化法により調製することができる。この非等軸粒子はミクロンおよびサブミクロンの大きさで、主として50〜500nmの範囲の大きさである。前述の懸濁液は、固体生分解性マトリックスが無定形またはα−結晶性状態としてでなく主としてβ−多形態(polymorphic modification)(例えばβ′、β1、β2)として存在することから、他の薬物担体系に比べいくつかの点で有利である。
【0003】
難水溶性生物活性剤より成るミクロンおよびサブミクロン粒子(PBA)の溶融物質乳化による調製は、粒度を小さくするための、および/または粉末状物質の表面特性を改変するための新しい方法を提供し、またそれは低廉な方法によりそして生理学的に許容される添加剤だけを用いることにより行うことができる。この粒子懸濁液はセキュリティーの観点から取り扱い易い生産物である。生物活性剤の粒子は、製剤化された医薬またはその他の生物活性物質の改変された生物内分布および生物学的利用能(バイオアベイラビリティ)を規定するが、これは、該医薬または他の生物活性物質の溶解および吸収の度合および速度、循環時間、作用部位および排泄様式が改変されることを示唆している。マイクロメーター範囲を下回る粒度低下により、担体ビヒクルを必要とせずに、難水溶性医薬から作った粒子を直接静脈内投与することができる。
【0004】
本発明は、医薬、ワクチンおよびその他の生物活性剤例えば殺虫剤、殺カビ剤、殺有害生物剤、殺草剤および肥料のための投与形態および送達系(delivery system)の分野に入る。より詳細には、本発明は、その脂質マトリックスが安定な多形態にあるコロイド状固体脂質粒子(SLP)の懸濁液および生物活性剤のミクロンおよびサブミクロン粒子(PBA)の懸濁液の調製のほか、主として、好ましくは難水溶性の生物活性物質、特に医薬、を非経腸投与するだけでなく、経口、経鼻、経肺、経直腸、経皮およびバッカル投与するための、かかる懸濁液またはその凍結乾燥物の送達系としての使用、および化粧品、食品および農産物へのそれらの使用に関する。これらの懸濁液系は、取り込まれたまたは構成している物質のコントロールされた放出を与えるほか、取り込まれたまたは構成している医薬の改変された生物内分布および生物学的利用能を与えるが、このことは該医薬の溶解および吸収の度合および速度、循環時間、作用部位および排泄様式が改変されることを示唆している。
【背景技術】
【0005】
非水溶性または難水溶性の物質例えば医薬またはその他の生物学的物質の非経腸、特に静脈内投与は、しばしば調合者にとって問題となる。最小の毛細血管の直径はほんの数ミクロンにしかすぎないので、それより大きい粒子を静脈内投与すると毛細血管が閉塞してしまう。しかしながら、固体薬品物質は通常、摩砕および粉砕により崩壊され、それによって数ミリメートルからマイクロメートル粒度範囲の粒子が生じるが、それらは大きすぎて水性懸濁液として直接注射することはできない。その結果、非水溶性医薬の懸濁粒子を含む、静脈内投与系は塞栓症の危険があるため商業的に入手できない。更なる粒度減少は常法によっては高くつき、効果がなく、あるいは不可能でさえある。加えて、固体をサブミクロン粒度粉末まで小さくするとこれら乾燥品を取り扱う上で大変な問題、例えば、工場環境における粉塵爆発および交叉汚染問題のリスク増大、が生じる。更にまた、そのような系は、可能性があると思われる強力生物活性物質の吸入および吸収にさらされる人々に対し健康上の危険をもたらす。今日まで、静脈内経路により難水溶性物質を投与する唯一の可能性は、共存溶媒(cosolvent)の使用、またはかかる物質を親水性表面を有するビヒクルに取り込む担体系の開発である。
【0006】
理想的医薬担体系の基体的要件には生物分解性、非毒性、および非免疫原性が含まれる。更に、担体は、例えば粒度に関し、意図される投与経路に適しているべきである。例えば一定血清レベルを長時間にわたって維持すべき場合やその医薬が低治療指数しか示さない場合には、しばしば取り込まれた生物活性物質のコントロールされた放出が望ましい。
【0007】
更にまた、生物学的環境で速やかに酵素的または水解的に分解してしまうため不安定であるある種の物質の半減期を延ばすために、担体系を用いることができる。他方、担体物質への医薬の取り込みは、例えば抗腫瘍剤など非選択的毒性物質の場合に、その医薬から宿主を保護する機会をも提供する。
【0008】
多くの場合に、医薬担体系は細網内皮系(RES)による取り込みをかわしながら部位特異的標的に医薬を送達する目的をもって開発される。このような医薬ターゲティングの合理性は、標的部位では医薬濃度が高まると同時に非標的部位では低くなるために投与用量を減らすことができることから、その医薬の治療効能が高まることにある。すなわち、例えば抗癌剤などの医薬の毒性を減ずることができ、副作用が低下する。
【0009】
部位特異的送達に成功するための前提要件には、標的組織に対する担体系の一定の選択性および所望の標的部位のアクセシビリティが含まれる。静脈内投与経路によるターゲティングは、RES細胞への直接ターゲティングが所望される場合を除き、一般にはRESによる担体取り込みの回避あるいは少なくとも低下につながる。RESによるコロイド粒子のクリアランスは粒度並びに粒子表面特性、例えば表面電荷および表面疎水性、に依存するものとして記述されてきている。一般に小粒子は大粒子よりも血流からのクリアランスが遅いのに対し、荷電粒子は親水性非荷電粒子よりも速やかに取り込まれる。これらの事実の故に、医薬ターゲティングに対するアプローチとして表面特性の改変および粒度の縮小がとられている。
【0010】
更に、脈管外部位に医薬をターゲティングするにも小さい粒度が必要となる。何故ならば管外溢出は食作用/飲作用による受容体介在取り込みを通してか、あるいは内皮壁に窓がある場合にのみ可能であるからである。このような窓は例えば肝臓、脾臓および骨髄の洞様構造(sinusoid)などにみることができ、また約150nmまでの直径を示す。
【0011】
製造上の観点からは、理想的医薬担体系は取り扱い易い方法により複雑さを伴うことなく、再現性よくそしてできれば低生産コストで調製できるのがよい。製剤は調製中も貯蔵中も十分な安定性を示すのがよい。
【0012】
近年、いくつかのコロイド系が医薬担体として通用できる可能性があるために特に興味をそそっているが、その中にリポソーム、脂質乳濁液、マイクロスフェアおよびナノ粒子がある。しかしながらそれらの系はすべて、一定数の欠点を有するため、これまで、いずれのそのような系についても、広範にいきわたる商業的に利用される医薬担体として使用する突破口が開かれていない。
【0013】
マイクロメートル粒度範囲の医薬担体系は、固体ポリマーマトリックスより成るマイクロスフェア、および液相または固相がポリマーフィルムにより囲繞されそして被包されているマイクロカプセルによって代表される。ナノ粒子は、マイクロスフェア同様、固体ポリマーマトリックスより成る。しかしながら、それらの平均粒度はナノメートル範囲にある。マイクロ−およびナノ粒子はいずれも一般に、乳化重合または溶媒蒸発法により調製される。これらの生産方法故に、マイクロ−およびナノ粒子には生産プロセスからの残渣混入、例えば塩素化炭化水素などの有機溶媒のほか有毒モノマー、界面活性剤および架橋剤などの混入を受ける危険があり、その結果毒物学的問題を生じうる。更に、一部のポリマー材料、例えばポリ乳酸およびポリ乳酸−グリコール酸、は生体内で極めてゆっくり分解するため、多重投与すると有害な副作用を伴ったポリマー蓄積を生ずる。その他のポリマー、例えばポリアルキルシアノアクリレートは体内で分解すると有毒なホルムアルデヒドを遊離する。
【0014】
脂質をベースとする非経腸投与用医薬担体系はリポソームおよびサブミクロン脂質乳濁液である。このような系は生理学的成分だけから構成され、従って毒物学的問題は軽減するが、これら脂質担体に関連する多くの欠点がある。
【0015】
リポソームは内部水性相が一つまたはそれ以上の燐脂質二重層により囲繞された球状コロイド構造物である。リポソームを薬物送達系として用いる可能性は、就中、米国特許No.3,993,754(Rahmann および Cernyに対し1976年11月12日に交付)、同No.4,235,871 (Papahadjopoulos および Szoka に対し1980年11月25日に交付)および同No.4,356,167 (L.Kelly に対し1982年10月26日に交付)に開示されている。従来のリポソームの主な欠点は、貯蔵時に不安定であること、製造再現性が低いこと、捕捉効率が低いことそして医薬が漏れることである。
【0016】
IUPACの定義によれば、乳濁液においては液体または液晶が液体に分散される。非経腸投与用脂質乳濁液は、就中、水性相中に分散されそして乳化剤の界面フィルムにより安定化されている、主としてサブミクロン粒度範囲の、液状油小滴で構成される。典型的製剤はOkamoto、TsudaおよびYokoyamaに対し1979年5月7日に交付された日本特許No.55,476/79に開示されている。医薬含有脂質乳濁液の調製はDavisおよびWashingtonに対して1991年3月7日に交付されたWO 91/02517に記載されている。これら脂質乳濁液の医薬の取り込みやすさは内部油相内での医薬分子の易動性の故に比較的高い。何故ならば、拡散分子は乳化剤フィルム中に容易に突出することができコアレッセンスにつながる不安定さを引き起こすからである。更にまた、脂質乳濁液からの取り込まれた医薬放出が比較的速いため持続的医薬放出の可能性は限られてしまう。
【0017】
Fountain et al(1986年9月9日に交付された米国特許No.4,610,868)は約500nm〜約100,000nmの直径を有する疎水性化合物と両親媒性化合物(amphiphatic compound)との球状構造物として記述される脂質マトリックス担体を開発した。その疎水性化合物は液体または固体であってよい。しかしながら、その調製法は、有機溶媒を用いるものであり、従って完全な溶媒除去という問題を伴う。
【0018】
Domb et al(1989年11月13日出願の米国特許出願No.435,546; 1990年11月8日出願の国際出願No.PCT/US90/06519)により開示されたいわゆるリポスフェアは、燐脂質層により囲繞された固体疎水性コアより成る固体、非水溶性マイクロスフェアの懸濁液として記述されている。リポスフェアは燐脂質層によりコントロールされる捕捉物質の持続的放出を与えると主張されている。それらは溶融法または溶媒法により調製できるが、後者はその溶媒が完全には除かれない場合、毒物学的問題を生じる。
【0019】
脂肪またはろうと生物活性タンパク質、ペプチドまたはポリペプチドとの動物への非経腸投与に適した徐放性組成物がStaber、FishbeinおよびCadyが1986年8月11日に出願した米国特許出願No.895,608 (EP-A-0 257 368)に開示されている。それらの系は噴霧乾燥により調製され、そして1,000ミクロンまでのマイクロメートル粒度範囲の球状粒子から構成されるため、静脈内投与は可能でない。
【0020】
非水溶性または難水溶性物質の製剤化に伴う問題は非経腸投与経路に限られたものではない。すなわち、医薬の経口生物学的利用能はそれらの胃腸管(GIT)での溶解度と関係があり、そして一般に難水溶性医薬が生物学的利用能が低いことがわかっている。更に、GITにおける医薬溶解はそれらの湿潤性により影響される。非極性表面を有する物質は媒質中でほとん湿潤しないため、それらの溶解速度は極めて遅い。
【0021】
親油性医薬の超吸収を向上させようとしてEldem et al (Pharm. Res.8, 1991, 47〜54)は噴霧乾燥法および噴霧凝結法により脂質マイクロペレットを調製した。それらマイクロペレットは滑面を有する球状粒子として記述されている。しかしながら、脂質は不安定多形態で存在し、そして多形相転移が貯蔵中に生じるため製品特性が常に変化する(T.Eldem et al, Pharm. Res. 8, 1991, 178〜184)。従って一定した品質を保証し得ない。
【0022】
生物学的利用能の悪い医薬を経口投与するための脂質ナノペレットがEP 0 167 825(1990年8月8日、P. Speiser)に開示されている。それらナノペレットは、室温で固体であってパーソープション(persorption)を受けるのに十分な程度に小さい医薬搭載脂肪粒子である。パーソープションとは腸粘膜を通してのリンパおよび血液区画への完全粒子の輸送である。脂質ナノペレットは、高速撹拌により溶融脂質を水性相中で乳化することにより調製される。室温まで冷却後にペレットは音波処理によって分散される。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0023】
以上において概説したリポソーム、脂質乳濁液、ナノ粒子およびマイクロスフェアなどの従来の医薬担体の制約を考慮すると、とりわけ調製、安定性、毒性および生物内分布の改変に関し伝統的系の欠点を回避すべく、難水溶性生物活性物質のコントロールされた送達のための担体系が明らかに必要とされている。
【0024】
本発明は、結晶性脂質、好ましくはトリグリセライド、および生理学的に許容し得る添加剤より構成される非球状粒子として特徴付けられる新しいタイプの担体系、およびその製造方法を提供するものである。これらの担体は主として非経腸であるが、また鼻、肺、直腸、皮膚およびバッカル投与経路にもよる難水溶性の物質、例えば医薬または他の生物学的物質、のコントロールされた送達を提供し、以下、固体脂質粒子(SLP)と記す。
【0025】
SLPはマイクロ−、そして主としてナノメートル粒度範囲にある固体の物理的状態の脂質粒子として特徴付けられる。粒子形状は主として非等軸であるが、これはマトリックスを形成する脂質がβ−多形態(例えばβ′、β1、β2)で存在しそして無定形またはα−結晶状態としては存在しないことの結果である。SLPの特性には次のものが含まれる:(1)生物分解性および無毒性;(2)難水溶性物質取り込み能;(3)改善された化学的および物理的安定性;(4)乾燥貯蔵製剤の調製の可能性;(5)取り込まれた物質の放出特性コントロール;および(6)改変された表面特性。これらの性質の結果、SLPは従来の医薬担体系の場合に遭遇する多くの問題を克服する。
【0026】
本発明は前述のSLPの諸特徴に由来する次の長所をもたらすものと思われる:
(1) SLPは生物分解性で薬理学的に許容し得る化合物だけで調製することができ、従って無毒性である。更に、SLPの調製は有機溶媒または他のいかなる潜在的に有毒な添加剤の使用をも避けるものであり、従って製品への残留不純物混入が回避される。
(2) SLPは固体トリグリセライドの不飽和脂肪酸度が低いために、液状トリグリセライド油ベースの従来の脂質乳濁液に比べ高い化学的安定性を有している。更に、SLPは予測どおりコアレッセンスに対し流動性乳濁液小滴よりも強い抵抗性を示す脂質マトリックスの固体性質の故に、より優れた物理的安定性を示す。更に、脂質マトリックスは安定なβ−多形態(例えばβ′、β1、β2)で存在する。すなわち、製品特性は、多形変形の故に長期貯蔵中も有意に変化することはない。
(3) SLPの懸濁液は凍結乾燥することができ、それによって良好な長期安定性を示す水分不含貯蔵系が得られる。その凍結乾燥粉末は、使用直前に、水、緩衝液またはアミノ酸や炭水化物の溶液および他の注入溶液に再分散させることができ、あるいは他の医薬製剤に加工することができる。
【0027】
(4) SLPはそれらの親油性の故に、脂質マトリックスへの捕捉による親油性および難水溶性物質の可溶化に適している。SLPは脂質乳濁液に比べ、その固体性質の故に、医薬またはその他の生物活性物質の取り込みに対し感受性が少ないと考えられる。乳化剤フィルム中に拡散したり、あるいは表面近くで再結晶化する医薬または他の生物活性物質は乳濁液小滴の安定化フィルムを乱し、コアレッセンスを伴うフィルム破断のリスクを高める。これに対し、フィルム弾性およびフィルム粘性は固体懸濁液粒子の場合には重要性が低い。何故ならばそれらは脂質の剛性の故に合体し得ないからである。
(5) 脂質担体からの医薬放出は例えば、脂質マトリックスの組成、安定化剤の選択並びにSLPの粒度によりコントロールすることができる。医薬漏れは担体の固体状態により医薬拡散が制限されるために妨げられる。
(6) 酵素または水解分解の故に短い半減期を示す医薬または生物活性物質は、脂質担体内に取り込むことにより急速な分解から保護することができる。何故ならば、その疎水性マトリックスが貯蔵中だけでなく体液中においても取り込まれた医薬への水のアクセスを妨げるからである。
【0028】
(7) 胃腸管(GIT)での難溶性故に生物学的利用能が低い医薬または他の生物活性物質をSLPへ取り込むことによりかかる物質の生物学的利用能を高めることができる。何故ならばこれらは生物分解性脂質マトリックス中で可溶化され、従って溶解状態で存在するからである。
(8) SLPの形状が非等軸であるため、その比表面積は等容の球状粒子のそれよりも大きい。経口による低い生物学的利用能を有する物質は非等軸SLPに取り込まれると、等容の球状脂質粒子中にあるよりも、SLPの表面積が大きいために、GITにおいて速やかにかつ高度に吸収され得る。何故ならば脂肪分解酵素に対する潜在的作用部位が大きいからである。
(9) SLPの表面特性は、脂質組成の変更、異なる安定化剤の使用、界面活性剤の交換および/またはポリマー化合物の吸着により改変することができる。この表面特性の改変は、担体および取り込まれた物質の生体内分布を改変する可能性を生じる。静脈内投与の場合、このことはRESにより取り込みが改変されて医薬ターゲティングの可能性が生じることを意味する。
(10) SLPの粒度がサブミクロンであるため、非経腸投与による塞栓症の危険は無い。SLPは約50nmの粒度まで調製することができるので、それらは内皮壁の窓を通って溢出する機会を有している。それによって医薬を、例えば骨髄などの脈管外部位にターゲティングすることができる。
【0029】
更に、本発明は、医薬または他の生物活性物質の非経腸、経口、経鼻、経肺、経直腸、経皮およびバッカル投与のための新しいタイプの送達系、およびその製造方法を提供する。これらの処方物は、粉末状物質に比べ改変された表面特性および/または縮小した粒度を有する生物活性物質により形成される粒子の懸濁液であり、以下生物活性剤の粒子(PBA)と記す。PBAの調製はいかなる毒物学的に活性な添加剤、例えば有機溶媒または有毒モノマー、の使用をも回避することができ、また取り扱い易い方法で行うことができる。
【0030】
PBAは次の応用分野に用いることができる:
a) 難水溶性生物活性物質に対する生物内分布が改変される、担体ビヒクルを必要としない非経腸送達系として;
b) 経口、経鼻、経肺、経直腸、経皮およびバッカル投与のためのa)記載の送達系として;
c) 胃腸管での溶解速度が低いために生物学的利用能が悪い医薬を経口投与するための処方物として;
d) 農業的応用に用いるための送達系として;
e) 貯蔵安定性が高められた再構成自在粉末としての処方物a)〜d)の凍結乾燥物。
【0031】
本発明の特別な特徴によって、PBAは従来の薬学的送達系に対し次の利点をもたらすものと考えられる:
1) 難水溶性医薬または他の生物活性物質のミクロンおよびサブミクロン粒子としての組成物はそれらの非経腸投与するのに担体系を必要としないので、従来の医薬担体、例えばリポソーム、脂質乳濁剤、ナノ粒子およびマイクロスフェアの欠点を回避できる。
2) PBAは取り扱い易い方法で再現性よく調製することができる。製造方法のスケールアップについても何の問題も予見されない。
3) 粒子は純粋な生物活性化合物と極く少量の安定化剤から構成されるので医薬粒子の医薬搭載能が大きい。
【0032】
4) 医薬または他の生物活性化合物の製剤からの放出は、粒子を安定化させるために用いられる両親媒性化合物の選択によりコントロールすることができる。
5) PBAの調製は毒物学的に活性な添加剤の使用を回避することができる。
6) 例えばPBA分散液の凍結乾燥により、安定性が高まった水分不含貯蔵系を生産することができる。
7) PBAの表面特性は、安定化剤として用いられる両親媒性化合物の選択により、そしてまた医薬をターゲティングするためのいわゆるホーミング(homing)デバイス、例えばモノクローナル抗体または炭水化物部分、を付着することにより改変することができる。その表面の改変により、生物学的利用能および生物内分布が吸収の度合および速度、循環時間、作用部位および生物活性物質の排泄様式に関して改変される。表面特性の改変は静脈内投与された粒子のRES細胞により取り込みを回避あるいは少なくとも軽減する機会を与える。
【0033】
8) 100nm〜200nmを下回る粒度の粒子を調製できるので、それらは、内皮壁の窓からの溢出の機会を有している。これにより、医薬は、脈管外部位、例えば骨髄にターゲティングすることができる。
9) 摩砕や粉砕によっては一般に達成し得ないナノメートル粒度範囲に粒度が縮小するので粒子の比表面積が途方もなく増大する。医薬またはその他の生物活性物質の経口生物学的利用能は、胃腸管における物質の溶解速度により比表面積に関係するので、サブミクロン粒度粒子はGITで難溶の医薬の生物学的利用能を高める。
10) 疎水性物質を親水性表面を有するPBAとして製剤化することができる。親水性表面は、例えばGITにおいて、粒子の良湿潤性を与え、化合物の溶解を容易にする。すなわち、生物学的利用能を高めることができる。
11) PBAの製造方法は、経費のかからない取り扱い易い方法だけを含み、そして取り扱いが安全な製品を与える。粒子が液体分散液中に存在することから、極めて微細な粉末の生産の際に遭遇するような生物活性物質の粉塵爆発、交叉汚染または吸入といった危険は無い。
【課題を解決するための手段】
【0034】
本発明は、室温で固体の生物分解性脂質のミクロンおよびサブミクロン粒子(固体脂質粒子、SLP)の懸濁液、可溶融生物活性物質の粒子(PBA)の懸濁液、その凍結乾燥物およびそれらの製造方法に関する。
固体脂質粒子(SLP)は主に非等軸形状を有するが、これは、脂質マトリックスがβ−多形態(例えばβ′、β1、β2)で、またはトリグリセライドのβ−結晶のそれに類似した多形状態で存在し、無定形またはα−結晶様状態では存在しないことの結果である。SLPは難水溶性の物質、例えば医薬またはその他の生物活性物質を主として非経腸投与するためのものであるがそれだけでなく経口、経鼻、経肺、経直腸、直皮およびバッカル投与するための担体系として用いることができる。しかしながら、SLPの適用は、ヒトまたは動物への医薬投与に限定されてはいない。SLPは化粧品、食品および農産物にも用いることができる。SLPは従来から記述されている担体系に伴う多くの問題を克服する特性を有する新しい脂質構造物である。
【0035】
SLPのマトリックスは室温で固体であって約30〜120℃の範囲の融点を有する生物学的適合性のある(バイオコンパチブル)疎水性物質によって構成される。好ましいマトリックス構成分は固体脂質(脂肪)例えば長鎖脂肪酸のモノ−、ジ−およびトリグリセライド;水素化植物油;脂肪酸およびそれらのエステル;脂肪アルコールおよびそれらのエステルおよびエーテル;天然または合成ろう例えば蜜ろうおよびカルナウバろう;ろうアルコールおよびそれらのエステル、ステロール例えばコレステロールおよびそのエステル、固形パラフィン、およびそれらの混合物である。担体物質は取り込まれるべき剤と相容性がなくてはならない。
【0036】
脂質は顕著な多形性を示すことが知られている。これは、様々な分子配座および分子充填から来る、結晶中の異なる単位格子構造の顕現能として定義できる。条件にもよるが、例えばグリセライドは、Larssonの分類(K. Larsson, 1966, Acta Chem. Scand. 20, 2255〜2260)に従えば、アルファ(α)、ベータプライム(β′)およびベータ(β)と呼ばれる三つの異なる多形形態で結晶し得る。特定の炭素鎖充填により特徴付けられるこれらの多形変態は、それらの性質例えば溶解度、融点および熱安定性において有意に相違し得る。変態はα→β′→βというように生じ、そのトランジションはモノトロピックである。熱的条件によるが、β−型は熱力学的に最も安定した多形であるのに対し、αは最も安定していなくそして程度の差はあれ速やかにより安定した多形であるβ′およびβに変態する。この変態は物理化学的性質の変化を伴う。
【0037】
前述のSLPの懸濁液において、脂質マトリックスは主として安定な多形変態で存在する。冷却すると、分散溶融準安定多形例えばα−型が直ちに生成し得るが、分散液調製後、数時間または数日間内に安定な多形が形成される。
【0038】
SLPの懸濁液は両親媒性化合物例えばイオン性および非イオン性界面活性剤により安定化させることができる。適切な安定化剤には次の例が含まれるがそれらに限定されるものではない:天然および合成燐脂質、それらの水素化誘導体およびそれらの混合物、スフィンゴリピドおよびグリコスフィンゴリピド;生理学的胆汁酸塩例えばコール酸ナトリウム、デヒドロコール酸ナトリウム、デオキシコール酸ナトリウム、グリココール酸ナトリウムおよびタウロコール酸ナトリウム;飽和および不飽和脂肪酸または脂肪アルコール;エトキシ化脂肪酸または脂肪アルコールおよびそれらのエステルおよびエーテル;アルキルアリール−ポリエーテルアルコール例えばチロキサポール;糖または糖アルコールと脂肪酸または脂肪アルコールとのエステルおよびエーテル;アセチル化またはエトキシ化モノ−およびジグリセライド;合成生物分解性ポリマー例えばポリオキシエチレンおよびポリオキシプロピレンオキサイドのブロック共重合体;エトキシ化ソルビタンエステルまたはソルビタンエーテル;アミノ酸、ポリペプチドおよびタンパク質例えばゼラチンおよびアルブミン;または前述のものの二つまたはそれ以上の組合せ。
【0039】
SLPが中に分散される水性相は、水溶性または分散性の安定化剤;等張剤例えばグリセロールまたはキシリトール;凍結保護物質例えばスクロース、グルコース、トレハロースなど;電解質;緩衝剤;凝集防止剤例えばクエン酸ナトリウム、ピロ燐酸ナトリウムまたはドデシル硫酸ナトリウム;防腐剤を含むことができる。
【0040】
使用した安定化剤の特質にもよるが、他のコロイド構造物例えばミセルおよびベジクルをSLPsの懸濁液中に共存させることもありうる。
SLPへの捕捉に特に適した物質は、難水溶性であり、低い生物学的利用能を示し、腸内からの吸収が悪い、および/または生物学的環境において化学的または酵素的プロセスにより速やかに分解されることになる医薬またはその他の生物活性化合物、および非標的部位において極めて有毒な低特異活性物質である。比較的水溶性のある化合物をSLP中に取り込みたい場合には、この化合物の水溶解度を低める必要があるが、これは例えばその化合物の非水溶性誘導体、例えば酸または塩基、複合体、または親油性前駆体、などを用いて達成することができる。
【0041】
SLPに取り込むのに特に適した医薬または生物活性剤は、抗生物質例えばフォスフォマイシン(fosfomycin)、フォスミドマイシン(fosmidomycin)およびリファペンチン(rifapentin);抗高血圧薬例えばミノキシジル(minoxidil)、ジヒドロエルゴトキシン(dihydro-ergotoxine)およびエンドララジン(endralazine);抗低血圧薬例えばジヒドロエルゴタミン;全身性(systemic)抗真菌薬例えばケトコナゾール(ketoconazole)およびグリセオフルビン(griseofulvin);消炎薬例えばインドメタシン(indomethacin)、ジクロフェナック(diclo-fenac)、イブプロフェン(ibuprofen)、ケトプロフェン(kotoprofen)およびピルプロフェン(pirprofen);抗ウイルス薬例えばアシクロビル(aciclovir)、ビダラビン(vidarabin)および免疫グロブリン;ACE阻害剤例えばカプトプリル(captopril)およびエナラプリル(enalapril);ベータブロッカー例えばプロプラノロール(proprano-lol)、アテノロール(atenolol)、メトプロロール(metoprolol)、ピンドロール(pindolol)、オクスプレノロール(oxprenolol)およびラベタロール(labetalol);気管支拡張薬例えばイプラトロピウムブロマイド(ipratropiumbromide)およびソブレロール(sobrerol);カルシウム拮抗薬例えばジルチアゼム(diltiazem)、フルナリジン(flunarizin)、ベラパミル(verapamil)、ニフェジピン(nifedipin)、ニモジピン(nimodipin)およびニトレンジピン(nitrendipin);強心配糖体例えばジギトキシン(digitoxin)、ジゴキシン(digoxin)、メチルジゴキシン(methyldigoxin)およびアセチルジゴキシン(acetyl-digoxin);セファロスポリン類例えばセフチゾキシム(ceftizoxim)、セファレキシン(cefalexin)、セファロチン(cefalotin)およびセフォタキシム(cefotaxim);細胞静止薬例えばクロルメチン(chlormethin)、シクロホスファミド(cyclophosphamid)、クロラムブシル(chlorambucil)、シタラビン(cytarabin)、ビンクリスチン(vincristin)、マイトマイシンC(mitomycin C)、ドキソルビシン(doxorubicin)、ブレオマイシン(bleomycin)、シスプラチン(cisplatin)、タキソール(taxol)、ペンクロメジン(penclomedine)およびエストラムスチン(estramustin);催眠薬例えばフルラゼパム(flurazepam)、ニトラゼパム(nitrazepam)およびロルアゼパム(lorazepam);向精神薬例えばオキサゼパム(oxazepam)、ジアゼパム(diazepam)およびブロムアゼパム(bram-azepam);ステロイドホルモン例えばコルチゾン、ハイドロコルチゾン、プレドニゾン、プドニゾロン、デキサメタゾン(dexamethasone)、プロゲステロン、プレグナノロン、テストステロンおよびテストステロンウンデカノエート;血管拡張薬例えばモルシドミン(molsidomin)、ヒドララジン(hydralazin)およびジヒドララジン(dihydralazin);脳血管拡張薬例えばジヒドロエルゴトキシン、シクロニカート(ciclonicat)およびビンカミン(vincamin);親油性ビタミン例えばビタミンA、D、E、Kおよびそれらの誘導体である。
【0042】
生物活性物質はそれらがマトリックスに溶解、可溶化または分散されるSLPのコアに、および/または粒子マトリックスを囲繞する安定化剤層に位置することができ、および/またはSLPsの表面に吸着することができる。生物活性物質は、溶解されるかまたは結晶性または無定形の状態、またはこれら結晶学的状態の混合であってよい。
【0043】
SLPは水中脂質(油)乳濁液の調製にある程度類似しているが、以下に概説されるようにその基本的相違により主として特徴付けられる乳化法により調製することができる。その方法は次のとおり記述される:
(1) 固体脂質または脂質混合物を溶融する。
(2) 安定化剤をその脂質と分散媒へ、あるいは分散媒だけに、それらの物理化学的特性に応じて添加する。安定化剤の選択と混合レジームは水中脂質(油)乳濁液に適用されるものと比較できないが、このことは後述する実施例から明白である。安定化剤は、例えばポリマーの吸着によりまたは水溶性界面活性剤の透析により、均質化後に添加または交換することもできる。
(3) SLP内に取り込むべき医薬または他の生物活性物質は該物質の物理化学的特性が許せば脂質と一緒に溶融してもよく、あるいは均質化前に脂質溶融物に、溶解、可溶化または分散してもよい。
【0044】
(4) 分散媒は混合前に溶融物の温度まで加熱され、また例えば安定化剤、等張剤、緩衝物質、凍結保護物質および/または防腐剤を含んでもよい。
(5) 溶融された脂質化合物は、好ましくは高圧均質化により、分散媒に乳化されるが、乳化は音波処理、高速撹拌、ボルテキシング(vortexing)および激しい手振りによっても可能である。均質化の方法によってSLPsの粒度が決定される。
安定化剤の選択および混合レジーム以外の水中脂質乳濁液に対する基本的相違は以下の工程に関係する:
(6) 均質化後に、分散液は標準的方法、例えばオートクレーブ処理により、あるいは粒子がフィルターにより保持されない程十分小さいものであれば0.2μm滅菌フィルターを通す濾過により滅菌することができる。これらの工程は、系を再結晶温度より低温まで冷却する前に行われなければならない。更に、不均一核形成を生じかねない汚染は回避されるべきである。従って、再結晶温度より低温まで冷却する前に微粒状混入物質を分散液から濾過により除去しておいた方がよい。フィルターの細孔径は脂質粒子を保留しないように十分大きいものを選択すべきである。
【0045】
(7) その分散液を室温で放冷しておくと、分散された脂質の再結晶によりSLPが形成される。冷却中、その分散液を例えば磁気撹拌機で撹拌してもよい。
(8) 次の工程で、分散媒の量を例えば蒸発によって少なくするか、あるいは分散媒を標準的方法、例えば濾過、限外濾過または凍結乾燥により除去することもでき、それによって使用前に再構成され得る水分不含貯蔵系が得られる。またその凍結乾燥粉末は、その他の医薬用、化粧用、食品用または農業用の剤形、例えば粉末、錠剤、カプセルなどに加工することもできる。
【0046】
実施例1のSLPの凍結割断標本の透過型電子顕微鏡写真を示す図1により実証されるように、SLPsは典型的には、非等軸形状の固体粒子である。非等軸粒子形状は脂質マトリックスがβ−多形型として結晶することからくる。無定形脂肪の固体化または不安定α−多形の結晶化は球状粒子を一般的に顕現する。安定β−型の存在は示差走査熱量測定法(図2)およびシンクロトロン放射広角X線回折(図3)により検出できた。
【0047】
SLPの粒度は、乳化剤の種類と量、および乳化の方法と条件に依存する(後記参照)。
均質化前の溶融脂質の再固化は避けるべきである。何故ならば、この工程中に粒子が固体である場合には、均質化による径小化が実質的に妨げられるからである。均質化前に、すなわち径小粒子が形成され得る前に、溶融脂質が確実に固化しないようにするために、分散媒を溶融物と大体同温度まで加熱してからそれら二相が混合されるため、溶融物は分散媒の添加により冷却されることはない。
【0048】
ナノメートル粒度範囲のSLPは高圧均質化によって得られる。それら粒子は光子相関分光分析(PCS)により測定した場合に約50〜300nmの数による平均粒度の比較的狭い粒度分布を示す。SLPの分散液は18ケ月以上にわたる貯蔵に安定である。すなわち、長期安定性は非経腸栄養目的に用いられるサブミクロンo/w乳濁液のそれに類似している。リポスフェア(A. Domb et al, 国際出願No.PCT/US90/06519, 1990年11月8日)および脂質ナノペレット(P. Speiser, 欧州特許No.0167825, 1990年8月8日交付)など特許文献記載の他の固体脂質ベース担体分散液の長期安定性データは発見し得なかった。Dombは7日間安定性を有する燐脂質安定化トリステアレートリポスフェアを“非常に安定(exceptionally stable)”と記述している。
【0049】
SLP懸濁液を安定化させるには、分散媒中の高易動性安定化剤量が、乳化後に、新たに生じた表面を再結晶の間安定化させるのに十分なものとなるように、高易動性安定化剤を分散媒中に存在させる必要があることがわかった(後記参照)。胆汁酸塩が、特に血液等張を達成するのに用いられる濃度のグリセロールなどの非電解質化合物と組合せると、この点で極めて効率のよいことがわかった。燐脂質単独でか、あるいは血液等張を達成するのに用いられる濃度のグリセロールなどの非電解質化合物と組合せることにより安定化されたSLPは図4の透過型電子顕微鏡写真に示されているように半固体状、軟膏様ゲルを形成する傾向にあるのに対し、グリココール酸ナトリウムを水性相に添加するとこのゲル形成が妨げられる(B. Siekmann および K. Westesen, 1992, Pharm.Pharmacol. Lett. 1, 123〜126)。
【0050】
2:1〜4:1の燐脂質:胆汁酸塩モル比が均質化中の初期安定化に関してもまたSLP分散液の長期貯蔵安定性に関しても極めて効果的であることがわかった。これらの燐脂質/胆汁酸塩化は混合ミセル形成比より高く、またレシチン/胆汁酸塩/水系の三元相図における混合レシチン/胆汁酸塩層の膨潤層状相に一致する。従ってデータは、その胆汁酸塩が混合ミセルに結合していないときに安定化が極めて効果的であること、そしてSLPの安定化中は胆汁酸塩分子が粒子表面の燐脂質層に挿入されていることを示唆している。
SLPはまた非イオン性界面活性剤により立体的に安定化され得る。しかしながらSLPの立体的安定化には、1:1以下の脂質/界面活性剤比となる比較的多量の界面活性剤が必要である。一般に、SLPの安定性は脂質/界面活性剤比が大きくなるにつれて低下していくものと認めることができる。
【0051】
分散粒子の表面安定化に必要とされる乳化剤の量は、例えば非経腸栄養に用いられるような従来の脂質乳濁液におけるよりも多い。この効果は均質化後の溶融脂質結晶化に帰することができる。脂質は典型的には理想球体の形ではなく非等軸粒子として再結晶しまたは(貯蔵時に)存在することから、乳化溶融脂質または従来の脂質乳濁液それぞれの小滴に比べ表面積が大きく増加する。分散脂質の再結晶または多形トランジション中に新生する付加的表面は、粒子凝集を回避するために、形成後直ちに安定化させる必要がある。従って、安定なSLP分散液の調製には乳化後に安定化剤の貯蔵所(reservoir)の存在が必要である。
【0052】
安定化剤の選択は水中油乳濁液の組成および安定化メカニズムから推論することはできず、非等軸粒子の形成メカニズム故に高易動性安定化剤の存在に依存する。コロイドおよび表面の科学において、“高易動性"とは一般に分散媒における高拡散速度での自由拡散
のことをいう。コロイド状固体脂質粒子の安定化に関していえば、脂質/水界面で安定化作用を及ぼして粒子凝集を防止するために、拡散速度は、粒子凝集が生起し得る前に(特に脂質の再結晶中に)新生粒子表面に達する程に十分高くすべきである。十分高い拡散速度は、典型的には、Gibbsにより設定された相律に従って分散媒中に分相を形成しない物質の場合に認められる。高易動性安定化剤はイオン性または非イオン性のものであってよい。典型的には、これらの安定化剤は分散媒に分子的に溶解しおよび/またはミセルを形成する。ミセルは、ミセル凝集物と分散媒との間の高速分子交換により特徴付けられる極めて動的な構造体であることが知られている。分散媒中のモノマーは表面安定化に直ちに利用可能である。これに対し、分散媒中に分相を形成する傾向のある安定化剤は、粒子凝集が生起し得る前に新生表面を安定化する程に十分な易動性がない。従って、これらの安定化剤はSLP分散液の単独安定化剤として適していない。燐脂質は分散媒中に分相を形成する安定化剤の一例である。燐脂質が水性媒質中で閉じられた層状構造、いわゆるベシクル、を形成すること、そしてベシクルと水性相との間の燐脂質分子の交換速度がミセルのそれに比べ極めて小さいことはよく知られている。従って、燐脂質分子はベシクル構造に結合され、また脂質粒子の再結晶中に新生表面を安定化するために直ちに利用可能とならない。従って、実施例5および13から明らかなように、燐脂質単独は、脂質乳濁液の効果的安定化剤としては適していても、SLP懸濁液を効率的に安定化させることはできない。実際、脂質乳濁液の標準的組成物、例えば10%脂肪および1.2%燐脂質、を用いてSLPを調製すると不安定なSLP分散液が生じる。脂肪相に対し例えば20%または60%レシチンといった一般と高濃度の燐脂質でさえ、実施例5に実証されているように、SLP分散液を安定化には十分でない。
【0053】
特許文献(例えばDomb et al、1989年11月13日に出願の米国特許出願No.435,546および1990年11月8日出願の国際出願No.PCT/US90/06519)に記述されているが、固体脂質の微細懸濁液は、その内側相が液状のものではなく固体脂肪によってのみ置換される点で、サブミクロン脂質乳濁液と等価でない。SLPなどの脂質懸濁液の物理化学的性質は脂質乳濁液のそれとは実質的に相違している。これらの相違点の故に、脂質懸濁液は脂質乳濁液と同様には調製処理し得ない。SLPの一つの基本的相違点は、既に概説したようにそれらの粒子表面積がはるかに大きいことであり、それ故SLPsはより多くの量の界面活性剤を必要とし、また該界面活性剤は更に、溶融脂質が再結晶しあるいは安定なβ−多形に変態する際に新生表面を直ちに安定化させるために、高易動性であることが必要である。第二の基本的相違点は、一旦溶融脂質の再結晶によりSLPが形成されると、それが固定されるところの粒子表面に吸着されない過剰の易動性安定化剤が水性相中に無いときには、小粒子溶融を更新すると分散液が不安定となる点である。水中油乳濁液とは対照的なSLPの物理化学的安定性のためのもう一つの要件は、不均一核形成を促進しかねない微粒状不純物が存在しないことである。それ故に、再結晶温度より低温まで冷却する前に微粒状混入物を濾過により分散液から除去しておいた方がよい。更に、グリセロールなど血液等張を達成させるのに用いられる非電解質化合物はSLP分散液の安定性を促進することがわかった。
本発明はまた、生物活性剤粒子(PBA)の懸濁液にも関する。約30〜120℃の温度範囲で溶融可能な難水溶性物質例えば医薬、殺虫剤、抗カビ剤、殺有害生物剤、殺草剤、肥料、栄養素、化粧品などは、前述のSLPの調製に類した手順によってPBAとして製剤化することができる。PBAのマトリックスは生物活性剤自体によって構成される。
【0054】
PBAは新しいタイプの送達系を提供し、そして両親媒性化合物により安定化される水性媒質中に懸濁された生物活性剤の主としてサブミクロンおよび/またはミクロンの粒子として特徴付けることができる。PBAは、両親媒剤の選択によりコントロールできる改変された表面特性、および/または粒状物質に比べ径小化された粒度のマトリックス構成化合物を有する。これらの特性は、製剤化された医薬またはその他の生物活性物質の生物内分布および生物学的利用能を改変するが、このことはその医薬またはその他の生物活性物質の溶解および吸収の度合および速度、循環時間、作用部位および排泄様式が改変されることを意味する。PBAの物理化学的性質は、PBAに組成成分である生物活性剤の特性、安定化剤の種類および量および乳化方法に大きく依存する。PBAの懸濁液および凍結乾燥物は、難水溶性の医薬またはその他の生物活性化合物を経口、経鼻、経肺、経直腸、経皮、バッカル投与するために、また粒度によっては非経腸投与するためにも用いることができる。更に、PBAは、特に難水溶性の殺草剤および殺有害生物剤を組成するために、化粧品、食品および農産物に用いることもできる。
【0055】
PBAのマトリックスは、好ましくは100℃を下回る融点を有するか、あるいはその融点をある種の補助剤の添加により100℃より低い温度まで下げることができる、実際上不溶性のあるいは難水溶性の剤によって構成される。PBAとして組成するのに特に適した物質は、難水溶性であり、低生物学的利用能を示し、および/または腸内からの吸収が悪い医薬またはその他の生物活性物質である。そのような物質の例には次のものが含まれるがそれらに限定されない:
麻酔薬および麻薬例えばブタニリカイン(butanilicaine)、フォモカイン(fomocaine)、イソブタムベン(isobutambene)、リドカイン(lidocaine)、リゾカイン(risocaine)、プリロカイン(prilocaine)、プソイドコカイン(pseudococaine)、テトラカイン(tetracaine)、トリメカイン(trimecaine)、トロパコカイン(tropacocaine)およびエトミデート(etomidate);抗コリン作用薬例えばメチキセン(metixen)およびプロフェナミン(profenamine);抗うつ薬、精神刺激薬および神経遮断薬例えばアリメナジン(alimenazine)、ビネダリン(binedaline)、ペラジン(perazine)、クロルプロマジン(chlorpromazine)、フェンペンタジオール(fenpentadiol)、フェナニソール(fenanisol)、フルアニソール(fluanisol)、メベナジン(mebenazine)、メチルフェニデート(methylphenidate)、チオリダジン(thioridazine)、トロキサトン(toloxaton)およびトリミプラミン(trimipramine);抗てんかん薬例えばジメタジオン(dimethadion)およびニセタミド(nicethamide);抗真菌薬例えばブトコナゾール(butoconazole)、クロルフェネシン(chlorphenesin)、エチサゾール(etisazole)、エクサラミド(exalamid)、ペシロシン(pecilocine)およびミコナゾール(miconazole);消炎薬例えばブチブフェン(butibufen)およびイブプロフェン;気管支拡張薬例えばバミフィリン(bamifylline);心血管薬例えばアルプレノロール(alprenolol)、ブトベンジン(butobendine)、クロリダゾール(chloridazole)、ヘキソベンジン(hexobendine)、ニコフィブレート(nicofibrate)、ペンブトロール(penbutolol)、ピルメノール(pirmenol)、プレニルアミン(prenylamine)、プロカインアミド(procaine amide)、プロパチルナイトレート(propatylnitrate)、スロクチジル(suloctidil)、トリプロロール(toliprolol)、キシベンドール(xibendol)およびビキジル(viquidile);細胞静止薬例えばアスペルリン(asperline)、クロラムブシル、クロルナファジン(chlornaphazine)、ミトテン(mitotane)、エストラムスチン、タキソール、ペンクロメジンおよびトロフォスファミド(trofosfamide);充血薬例えばカプサイチンおよびメチルニコチネート;脂質低下薬例えばニコクロネート(nicoclonate)、オクスプレノロール(oxprenolol)、ピリフィブレート(pirifibrate)、シムフィブレート(simfibrate)およびチアデノール(thiadenol);鎮痛薬例えばアミノプロマジン(aminopromazine)、カロネリン(caronerine)、ジフェメリン(difamerine)、フェンカルバミド(fencarbamide)、チロプラミド(tiropramide)およびモキサベリン(moxaverine);テストステロン誘導体例えばテストステロンエナンテートおよびテストステロン−(4−メチルペンタノエート);精神安定薬例えばアザペロン(azaperone)およびブラメート(buramate);ウイルス静止薬例えばアリルドン(arildon);ビタミンA誘導体、例えばレチノール、レチノールアセテートおよびレチノールパルミテート;ビタミンE誘導体例えばトコフェロールアセテート、トコフェロールスクシネートおよびトコフェロールニコチネート;メナジオン(menadione);コレカルシフェロール;殺虫剤、殺有害生物剤および殺草剤例えばアセフェート(acephate)、サイフルトリン(cyfluthrin)、アジンホスホメチル(azinphosphomethyl)、サイペルメトリン(cypermethrine)、置換フェニルチオホスフェート、フェンクロフォス(fenclophos)、ペルメ
トリン(permethrine)、ピペロナール(piperonal)、テトラメトリン(tetramethrine)およびトリフルラリン(trifluraline)。
【0056】
SLPの場合と同様、PBAの懸濁液を両親媒性化合物により安定化させることができる。原則として、SLPの安定化に用いることができるものと同じイオン性および非イオン性界面活性剤はPBA懸濁液の調製にも適している。安定化剤の選択は、生物活性物質および分散媒の両方の物理化学的性質、および粒子の所望の表面特性に依存する。
【0057】
PBAが分散される水性相は水溶性(または分散性)安定化剤:等張剤例えばグリセロールまたはキシリトール;凍結保護物質例えばスクロース、グルコース、トレハロースなど;電解質;緩衝剤;凝集防止剤例えばクエン酸ナトリウム、ピロ燐酸ナトリウムまたはドデシル硫酸ナトリウム;防腐剤を含むべきである。水は好ましい分散媒ではあるが、本発明は水性分散液だけに限定されるものではなく、任意の他の薬理学的に許容し得る液体例えばエタノール、プロピレングリコールおよびメチル−イソブチル−ケトンまたはそれらの混合物に広げることができる。
【0058】
使用安定化剤の特性によっては、他のコロイド構造例えばミセルおよびベシクルをPBAの懸濁液に共存させることもありうる。
PBAの懸濁液は典型的にはSLPの場合と同様の乳化方法により調製される。溶融された医薬または生物活性物質またはかかる化合物の混合物は、好ましくは高圧均質化により、その溶融物と混和し得ない薬理学的に許容し得る液体中で乳化される。乳化はまた音波処理、高速撹拌、ボルテキシングおよび激しい手振りによっても可能である。その液体は混合前に溶融物の温度まで加熱され、また例えば等張剤、緩衝物質、凍結保護物質および/または防腐剤を含有してもよい。
【0059】
安定化両親媒性化合物は、それらの物理化学的特性に応じて、溶融物におよび液体に、あるいは液体だけに添加される。安定化剤は、例えばポリマーの吸着によりまたは透析により、均質化後に添加しあるいは交換することもできる。
前述の方法により製造されるPBAは二つの区別できるグループに分けることができる。
第1グループのPBAの特徴は、乳濁液調製温度において非水溶性でありそして過剰の安定化剤によって可溶化されたりあるいはそれら自体でミセルを形成したりすることはなく、PBAの粒度が室温にまで冷却する前も冷却した後も不変のままでいることにある。
第2グループのPBAの特徴は、乳濁液調製温度において部分的に水溶性であり、および/または過剰の安定化剤により混合ミセルを形成しうる、および/またはそれら自体でミセルを形成することができ、その結果、例えば過飽和溶液からの溶存生物活性剤の結晶成長および/または沈殿によって、および/または例えばミセルとしてのおよび/またはOstwald熟成などの方法による径小粒子から径大粒子への物質輸送によって、室温にまで冷却した後に粒度が大きくなることにある。
【0060】
次の工程で液相を例えば凍結乾燥により除去することができ、それによって、他の医薬製剤に加工することもできる再構成自在粉末が生産される。
PBAは界面活性剤に富む一つまたはそれ以上の層により囲繞された生物活性物質のマトリックスで構成される微細に分散された粒子である。その粒度および粒度分布、および粒子形状および界面活性剤コーティングはマトリックス形成生物活性物質および安定化剤の性質および量、生物活性物質対両親媒性化合物比、および乳化方法に依存する。
【実施例】
【0061】
実施例1:トリパルミテートSLPの調製方法
恒温ガラスびん内で、4.0gのトリパルミテート(トリパルミチン、99%純度、Fluka)を75℃に加熱して脂質を溶融する。その脂質溶融物に0.48gの大豆レシチン(Lipoid S 100、Lipoid KG)をプローブ音波処理(MSE Soniprep 150)により分散液が光学的に透明となるまで分散させる。0.16gのグリココール酸ナトリウム(グリココール酸、ナトリウム塩99%、Sigma)および4mgのチオメルサール(thiomersal)(Synopharm)を36mlの二回蒸留水に溶解する。その水性相を75℃に加熱しそして脂質溶融物に添加する。約2分間のプローブ音波処理により粗分散液を生成させる。その粗分散液を恒温高圧ホモジナイザー(APV Gaulin Micron Lab 40)に移しそして500バールの圧力でそのホモジナイザーに5回通す。この装置による均質化は、小さいリング状オリフィスを通して押し出すことにより行われる。その均質化された分散液を室温で放冷する。この分散液の示す微量の視認し得る脂肪粒子は分散液からそれを0.45μm滅菌フィルターを通して濾過することにより分離される。
【0062】
粒度分布およびSLP分散液の安定性に関する高易動性界面活性剤例えば胆汁酸塩の混合の重要性は、後記において、例えば実施例2、5〜7および13〜15において実証される。
光子相関分光分析(PCS、Malvern Zetasizer 3)により測定されたトリパルミテートSLPの(数による)調製後の平均粒度は205nmである。15ケ月貯蔵後も、粒子は視認できる凝集、クリーム化、沈降または相分離の徴候を全く示さない。PCS多角測定(Malvern Zetasizer 3、五つの異なる角度、すなわち50、 70、 90、 110および130°で検出)は250nmにピークのある一並数型(monomodal)の(数による)粒度分布を示す(図5)。
脂質マトリックスの融点より低い温度では、実施例1のトリパルミテートSLPの凍結割断標本の透過型電子顕微鏡写真である図1に実証されているように、主として非等軸粒子である。その標本の調製の前に、そのサンプルを室温で5ケ月貯蔵する。そのサンプルを凍結割断装置BAF 400(Balzers AG、CH-Liechtenstein)で、173Kで凍結割断する。高速凍結は溶融プロパン中にスラッシュ(slush)することにより行われる。サンプルのシャドウイングは45°で白金/炭素(層厚2nm)を用い、また90°で純粋炭素を用いて行いレプリカを調製する。レプリカは1:1(v/v)クロロホルム/エタノール混合物で清浄化する。未被覆グリッド上のレプリカを電子顕微鏡EM 300(Philips、D-Kassel)を用いて観察する。
【0063】
非等軸トリパルミテート粒子において、グリセライドは、熱分析研究により示される安定なβ−結晶多形として存在する。図2は、実施例1のSLPの、および純粋のトリパルミテートの示差走査熱量測定法(DSC)サーモグラムを示す。それらサンプルは標準アルミ鍋内に正確に秤量する。サーモグラムはPerkin ElmerカロリメーターDSC-7を用い20℃から90℃まで10℃/分の走査速度で記録する。検出されたトランジションピークはトリパルミテートβ−結晶の溶融に対応する。トリパルミテートSLPの融点は、燐脂質が存在するために、また結晶子サイズが小さいために、純粋トリパルミテートのそれよりも低い温度に移る。
【0064】
実施例2:等張トリパルミテートSLPの調製方法
75℃で恒温化されたガラスびん内で7.0gのトリパルミテート(トリパルミチン、Fluka)を溶融する。実施例1の記載と同様にして840mgの大豆レシチン(Lipoid S 100、 Lipoid KG)をトリパルミテート溶融物に分散させる。1.575gのグリセロール、280mgのグリココール酸ナトリウムおよび4mgのチオメルサールを含む水性相を75℃に加熱し、そして脂質溶融物に70gの重量となるように添加する。約2分間の音波処理により粗分散液が生成する。その粗分散液を恒温高圧ホモジナイザー(APVGaulin Micron Lab 40)に移しそして800バールの圧力でそのホモジナイザーに10回通す。その均質化された分散液を室温で放冷する。
PCSにより測定された等張トリパルミテートSLPの数による平均粒度は、調製後は125.9nmであり、また50日間の貯蔵後は116.2nmである、すなわち実際上、粒子成長は無い。数値のわずかな偏差は粒度測定法の精度範囲に入る。図6において、そのPCS粒度分布を非経腸栄養用の商業的に入手可能な脂質乳濁液であるIntralipidTMのそれと比較する。IntralipidTMは10%の大豆油、1.2%の分画された燐脂質および2.25%のグリセロールを注射用水に分散させて成るものである。実施例2のトリパルミテートSLPの粒度分布はIntralipidTMのそれよりも著しく小さくかつ狭いことがわかる。実施例1とは対照的に、グリセロールを添加すると粒度分布に著しい差が生じる。実施例1のSLP分散液は熱乳濁液から室温まで冷却された後微量の視認し得る懸濁液粒子を含むのに対し、実施例2の分散液においては巨視的に視認し得る懸濁液粒子は全くみられない。
シンクロトロン放射広角X線回折(図3)および示差走査熱量測定法による調査から、SLP中のトリパルミテートは室温で、安定β−多形型として存在することがわかる。
【0065】
実施例3:マイクロ流動化(microfluidization)による硬脂肪(hard fat)SLPの調製
3.0gの硬脂肪(WitepsolTM W35, Huels AG)を恒温ガラスびん中、75℃で溶融する。1.8gの大豆レシチン(Phospholipon 100、Natterman)を実施例1の記載と同様にしてトリパルミテート溶融物に分散させる。375mgのグリココール酸ナトリウム、2.25gのグリセロールおよび10mgのチオメルサールを含む水性相を75℃に加熱し、そして脂質溶融物に100gの重量となるように添加する。約2分間のultra-turraxボルテキシングにより粗分散液を生成させる。その粗分散液を、恒温水浴(70℃)に浸漬されたジェット流原理の高圧ホモジナイザーであるマイクロフルイダイザー(Microfluidics Microfluidizer M-110T)に移す。分散液をそのマイクロフルイダイザーを通して10分間循環させ、そして室温で放冷する。
PCSに測定される調製後の硬脂肪SLPの平均粒度は45.9nmである。
均質化の経時的過程を監視するために、均質化中、粒度測定用サンプルを1分毎に採取する。図7は均質化時間に対して平均粒度を示している。平均粒度は時間と共に小さくなり、そして均質化終了時には変化しなくなる。
【0066】
実施例4:マイクロ流動化により調製された硬脂肪SLPの長期安定性
硬脂肪SLPの安定性を1年間にわたって監視する。この期間中、サンプルは冷蔵庫中、約+4℃で貯蔵する。一定の時間間隔をおいてサンプルの粒度分布をPCSにより測定する。図8は硬脂肪SLPの平均粒度が1年間の監視期間にわたり実際上一定していることを実証している。
【0067】
実施例5:不安定SLP分散液の調製
恒温ガラスびん中、4.0gのトリパルミテート(Dynasan 116、HuelsAG)を75℃に加熱してその脂質を溶融する。その脂質溶融物に0.48gの大豆レシチン(Lipoid S 100、Lipoid KG)をプローブ音波処理(MSESoniprep 150)により、分散液が光学的に透明となるまで分散させる。4mgのチオメルサールおよび0.9gのグリセロールを35.6mlの二回蒸留水に溶解する。その水性相を75℃に加熱しそして脂質溶融物に添加する。約2分間のプローブ音波処理により粗分散液を生成させる。その粗分散液を恒温高圧ホモジナイザー(APV Gaulin Micron Lab 40)に移し、そして500バールの圧力でそのホモジナイザーに5回通す。均質化された分散液を室温で放冷する。貯蔵するとそのSLP分散液はミルク状、半固体状、軟骨状のゲルとなる。
3.0gの硬脂肪(WitepsolTM W35、Huels AG)を恒温ガラスびん中75℃で溶融する。1.8gの大豆レシチン(Phospholipon 100, Natterman)を実施例1の記載と同様にしてトリパルミテート溶融物に分散させる。10mgのチオメルサールを含む水性相を75℃に加熱しそして脂質溶融物に100gの重量となるように添加する。約2分間のultra-turraxボルテキシングにより粗分散液を生成させる。その粗分散液を恒温水浴(70℃)に浸漬されたマイクロフルイダイザー(Microfluidics Microfluidizer M-110T)に移す。その分散液をそのマイクロフルイダイザーを通して10分間循環させ、そして室温で放冷する。貯蔵するとSLP分散液は濁った半固体状、軟膏状のゲルとなる。このゲルの透過型電子顕微鏡写真を図4に示す。
恒温ガラスびん中で、4.0gのトリパルミテート(Dynasan 116、Huels AG)を80℃に加熱してその脂質を溶融する。その脂質溶融物に0.8gの大豆レシチン混合物(Lipoid S 75、Lipoid KG)をプローブ音波処理(MSE Soniprep 150)により、分散液が光学的に透明となるまで分散させる。4mgのチオメルサールを35.6mlの二回蒸留水に溶解する。その水性相を80℃に加熱しそして脂質溶融物に添加する。約2分間のプローブ音波処理により粗分散液を生成させる。その粗分散液を恒温高圧ホモジナイザー(APV Gaulin Micron Lab 40)に移し、そして800バールの圧力でそのホモジナイザーに5回通す。均質化された分散液をガラスびんに充填しそして室温で放冷する。この分散液は室温まで冷却するとガラスびんの壁上に半固体を呈する脂肪凝集物を形成する。この分散液は、例えばそれを皮下注射器に通すなどしてせん断力を加えるとゲルする。
市販の非経腸油中水乳濁液にみられるような燐脂質単独の安定化剤としての使用は、SLP懸濁液の場合には明らかに安定な系を生じない。相当に高い負の正味荷電を誘導するLipoid S 75などの燐脂質を用いてさえも充分な安定化を与え得ない。実施例6、7および13で更に概説されるように、静電反発だけではSLPの基本的安定化メカニズムたり得ない。
【0068】
実施例6:チロキサポールにより立体的に安定化されたトリパルミテートSLPの調製
脂質/界面活性剤比を変化させながら、チロキサポール(EastmanKodak)により安定化した一連のトリパルミテートSLP分散液を調製する。それらSLP分散液は次の手順に従って製造される:
温度をチロキサポールの曇点(約90〜95℃)より低く保ちながらチロキサポールを加熱された二回蒸留水に溶解する。80℃の温度のチロキサポール溶液を、同じ温度の溶融トリパルミテートまたはトリパルミテート/レシチン分散液にそれぞれ添加する。約2分間のプローブ音波処理により粗乳濁液を生成させる。次にその粗乳濁液を1200バールの圧力で高圧ホモジナイザーに5回通す。均質化された分散液を室温で放冷する。すべての分散液が2.5%のグリセロールおよび0.01%のチオメルサールを含有する。
表1は、調製されたSLP分散液の組成とPCSによって測定されたそれらの調製後の(数による)平均粒度を示している。粒度欄の星印(★)は、それら分散液が平均粒度により示されるよりも相当に大きい粒度を有する二並数型(bimodal)粒度分布を示すことを示している。均一粒度のSLPを得るには、立体的に安定化されるSLP分散液が多量の界面活性剤を必要とすることがわかる。チロキサポールと燐脂質により安定化されるSLPの場合には、界面活性剤比を最適化する必要がある。このシリーズにおいては、少なくとも1:1のチロキサポール/レシチン比が均一粒度のSLPを与えることがわかった。その比が大きくなるにつれて平均粒度が小さくなる。実施例1〜3の場合と同様に、安定な分散液を得るには、ミセルを形成できる高易動性界面活性剤の添加が必要となる。溶融脂質が再結晶しそして大きな比表面積を有する非等軸粒子を形成する時に十分な界面活性剤分子を提供できる界面活性剤だめを分散媒中に作るために、多量の界面活性剤が必要となる。
【0069】
【表1】

【0070】
実施例7:ポロキサマーにより立体的に安定化されたトリパルミテートSLPの調製
1.2gの大豆レシチン(Lipoid S 100、Lipoid KG)を80℃の温度でプローブ音波処理により4.0gの溶融トリパルミテート(Dynasan 116、Huels AG)中に分散させる。1.8gのポロキサマー(PluronicTM F68、BASF)、0.9gのグリセロールおよび4mgのチオメルサールを80℃に加熱された32.1gの二回蒸留水に溶解する。その加熱された溶液を脂質溶融物に添加し、そして2分間のプローブ音波処理により粗分散液を調製する。その粗分散液を恒温高圧ホモジナイザー(APV Gaulin Micron Lab 40)に移しそして1200バールの圧力でそのホモジナイザーに5回通す。その均質化した分散液を室温で放冷する。
このポロキサマーで安定化されたSLPは、77.9nmのPCSにより測定される調製後の(数による)平均粒度を有する一並数型粒度分布を示す。水性相中に過剰の高易動性界面活性剤が存在するので、この系は溶融脂質の再結晶時に安定化され、また燐脂質のみにより安定化された系の場合にみられるようなゲル化は起こらない。
【0071】
実施例8:均質化圧がSLPの平均粒度に及ぼす影響
次の組成を有するSLPを様々な均質化圧で調製する。それらSLP分散液は、3%のトリパルミテート(Dynasan 116、Huels AG)、1.5%のチロキサポール、1%の大豆レシチン(Lipoid S 100、Lipoid KG)、0.01%のチオメルサールおよび全量を100%とする二回蒸留水で構成される(%は重量)。前記レシチンは溶融トリパルミテート(80℃)中にプローブ音波処理により分散液が光学的に透明になるまで分散させる。チロキサポールはチオメルサール含有温水(80℃)に溶解させる。SLP分散液は実施例6の記載と同様にして調製される。
図9はSLPの平均粒度に対する均質化圧の影響を示している。圧力が高まると共に粒度は小さくなりまた粒度分布は狭くなる。
【0072】
実施例9:均質化への通し回数がSLPの平均粒度に及ぼす影響
3%のトリパルミテート(Dynasan 116、Huels AG)、1.5%のチロキサポール、1%の大豆レシチン(Lipoid S 100、Lipoid KG)、0.01%のチオメルサールおよび全量を100%とする二回蒸留水(%は重量)で構成されるトリパルミテートSLPを実施例6の記載と同様にして800バールの圧力で調製する。粒度測定用サンプルは粗乳濁液の調製後に、およびホモジナイザーに通すごとにその後に採取する。
図10はSLPの平均粒度に対する均質化への通し回数の影響を示しており、通し回数が増すごとに平均粒度は小さくなる。
【0073】
実施例10:プローブ音波処理によるSLPの調製−音波処理時間がSLPの平均粒度に及ぼす影響
80℃で恒温化された音波処理用ガラスびん内で、1.20gのトリパルミテートを溶融する。その脂質溶融物に0.40gの大豆レシチン(LipoidS 100)をプローブ音波処理により分散液が光学的に透明となるまで分散させる。0.60gのチロキサポールおよび4mgのチオメルサールを80℃に加熱された二回蒸留水に溶解する。その水性相を脂質溶融物に添加しそしてSLP分散液を80℃でプローブ音波処理により調製する。その音波処理はその最大パワーの50%で動作させる。一定の時間間隔をおいて(1、5、10および15分)、粒度測定用にサンプルを分散液から採取する。30分後にプローブ音波処理を止めそして分散液を室温で放冷する。
SLPの平均粒度に対する音波処理時間の影響を図11にら示す。音波処理時間が増すにつれて平均粒度は小さくなりまた粒度分布は狭くなる。
【0074】
実施例11:撹拌によるSLPの調製
実施例9および10におけると同様の組成のSLP分散液を加熱された磁気撹拌機(Pyro-Magnestir、Lab-Line)の使用により調製する。レシチンを前述の如くトリパルミテート中に分散させる。加熱された水性相を溶融物に添加する。その混合物を80℃の温度で30分間撹拌することにより分散液を生成させる。その分散液を室温で放冷する。
レーザー回折計測(Malvern Master-sizer MS20)により測定されるSLP分散液の(容量による)調製後の平均粒度は59.5μmである。最大粒度測定値は250μmである。高圧均質化およびプローブ音波処理とは対照的に、撹拌はマイクロメートル粒度範囲の比較的径大の粒子を生成する。
【0075】
実施例12:マトリックス構成分がSLPの平均粒度に及ぼす影響
10%のマトリックス構成分、1.2%の大豆レシチン(Lipoid S 100)、0.4%のグリココール酸、2.25%のグリセロールおよび0.01%のチオメルサールを全体を100%とする二回蒸留水中に含んで成るSLP分散液を実施例1の記載と同様にして調製する。五種類の異なるマトリックス構成分、すなわち、ワックスであるセチルパルミテートおよび白蜜ろうとトリグリセライドであるトリラウレート、トリミリステートおよびトリパルミテート、を用いる。
表2は様々なSLP分散液のPCS平均粒度およびマトリックス構成分の融点を示す。
【表2】

マトリックス構成分の融点が高くなるにつれてSLPの平均粒度が大きくなる。
【0076】
実施例13:乳化剤の種類および量がSLPの平均粒度および安定性に及ぼす影響
様々な種類および量の乳化剤を用いたトリパルミテートSLP分散液を実施例2の記載と同様にして調製する。様々なバッチの組成を表3に示す。すべての分散液は2.25%のグリセロールおよび0.01%のチオメルサールを含有する。
SLPの様々なバッチの平均粒度を図12に示す。平均粒度は乳化剤の種類および量に依存する。
【0077】
【表3】

【0078】
燐脂質と胆汁酸塩の組合せが平均粒度および安定性に関して極めて効率的である。燐脂質だけで安定化させた系は貯蔵するとゲル化しそして軟膏様の半固体状ゲルを形成する。Pluronic F68により安定化させた系は、せん断力を加えると、すなわち粒子同士を強制的に接近させると、ゲル化傾向を示す。明らかにこの場合にはポロキサマーによる立体的安定化が十分でない。その結果、脂質側に存在しかつ脂質側から作用する乳化剤(例えば燐脂質)および分散媒中にあって高易動性界面活性剤分子のためを構成する乳化剤(例えば胆汁酸塩、チロキサポールおよびポロキサマー)の界面活性剤組合せによるものが最適な安定化である。反発力は長期安定性のための重要な要因ではあるが、SLP安定化の基本的メカニズムは、溶融脂質の再結晶中に新生する表面を即座に表面被覆する過剰分の界面活性剤の高易動性である。
【0079】
実施例14:共存乳化剤としての胆汁酸塩が燐脂質で安定化されたSLPに及ぼす効果
実施例1に記載の方法に従って、胆汁酸塩(グリココール酸ナトリウム)を水性相に添加し、または添加することなく、様々なマトリックス(トリパルミテート、硬脂肪)を用いる燐脂質で安定化されたSLP分散液を調製する。すべての分散液が2.25%のグリセロールおよび0.01%のチオメルサールを含有する。粗分散液の乳化は様々な均質化条件下での高圧均質化(APV Gaulin Micron Lab 40)により行う。次の分散液が調製された。
【表4】

調製後にPCSにより測定された分散液の平均粒度を図13に示す。この実施例は、水性相中の共存乳化剤としての胆汁酸塩の燐脂質により安定化されたSLPに対する効果を実証するものである。胆汁酸塩を添加するとSLPの平均粒度を最高57%も下げることが明らかに示される。すなわち、胆汁酸塩を共存乳化剤として用いることにより、極めて微細な分散液を得ることができる。この胆汁酸塩の効果は、均質化過程で新たに生じる表面を界面活性剤分子が直ちに覆うことを可能にするミセル形成イオン性界面活性剤の高易動性に帰することができる。水性相中で液晶構造を形成する傾向のある燐脂質は新生分子を直ちに安定化される程易動性が十分でなく、そのため水性相中に高易動性の共存界面活性剤が存在しないと即座にコアレッセンスが起きてしまう。
【0080】
実施例15:レシチン/胆汁酸塩ブレンドにより安定化されたトリミリステートSLPの調製
恒温ガラスびん内で7.0gのトリミリステート(Dynasan 114、Huels AG)を70℃で溶融する。0.96%の燐脂質(Lipoid S 100)をその溶融物中にプローブ音波処理により分散させる。280mgのグリココール酸ナトリウム、1.6gのグリセロールおよび7mgのチオメルサールの二回蒸留水61ml中の溶液を70℃に加熱しそして前記溶融物に添加する。約2分間のプローブ音波処理により粗分散液を調製する。その粗分散液を約90℃で恒温化した高圧ホモジナイザー(APV Gaulin Micron Lab 40)に移し、そしてそのホモジナイザーに500バールの圧力で5回通す。均質化された分散液を室温で放冷する。
PCSにより測定された調製後の平均粒度は155.7nmである。レーザー回折測定(Malvern Mastersizer MS20)では1μmを超える粒子は全く検出できない。レーザー回折測定による粒度分布を図14に示す。この実施例は、燐脂質により安定化されるSLPの共存乳化剤として胆汁酸塩を用いると、均質化中の新生表面を速やかに被覆することによって1μmより径大の粒子形成が効率的に妨げられそれによって即座のコアレッセンスが最小限に抑えられることを実証している。
【0081】
実施例16:超音波処理によらないトリパルミテートSLPの調製(方法A)
恒温ガラスびん内で4.0gのトリパルミテート(Dynasan 116、Huels AG)を85℃で溶融する。0.96gのレシチン(Lipoid S 100)をエタノールに溶解する。そのレシチン溶液を溶融物に添加する。エタノールを85℃で蒸発させる。160mgのグリココール酸ナトリウム、0.9gのグリセロールおよび4mgのチオメルサールを35mlの二回蒸留水に溶解する。その溶液を85℃に加熱しそして溶融物に添加する。約2分間のultra-turraxボルテキシングにより粗分散液を調製する。その粗分散液を約90℃で恒温化した高圧ホモジナイザー(APV Gaulin Micron Lab 40)に移しそしてそのホモジナイザーに800バールの圧力で10回通す。均質化された分散液を室温で放冷する。
【0082】
実施例17:超音波処理によらないトリパルミテートSLPの調製(方法B)
恒温ガラスびん内で4.0gのトリパルミテート(Dynasan 116、Huels AG)を85℃で溶融する。0.96gのレシチン(Lipoid S 100)をその溶融物に添加する。そのレシチンが溶融物に完全に分散されその分散液が等方性となるまで混合物を振盪する。160mgのグリココール酸ナトリウム、0.9gのグリセロールおよび4mgのチオメルサールを35mlの二回蒸留水に溶解する。その溶液を85℃に加熱しそして溶融物に添加する。約2分間のultra-turraxボルテキシングにより粗分散液を調製する。その粗製分散液を約90℃で恒温化された高圧ホモジナイザー(APV Gaulin MicronLab 40)に移しそしてそのホモジナイザーに800バールの圧力で10回通す。その均質化された分散液を室温で放冷する。
【0083】
実施例18:水相中に燐脂質を分散させることによるトリパルミテートSLPの調製
恒温ガラスびん内に4.0gのトリパルミテート(Dynasan 116)を80℃で溶融する。0.96gの燐脂質(Lipoid S 100)を160mgのグリココール酸ナトリウム、0.9gのグリセロールおよび4mgのチオメルサールの水性溶液35mlに約1時間撹拌することにより分散させる。その燐脂質分散液を80℃に加熱し、そしてトリパルミテート溶融物に添加する。約2分間のプローブ音波処理により粗分散液を調製する。その粗分散液を約90℃で恒温化した高圧ホモジナイザー(APV Gaulin Micron Lab 40)に移し、そしてそのホモジナイザーに800バールの圧力で10回通す。均質化された分散液を室温で放冷する。
【0084】
実施例19:高易動性界面活性剤により安定化されたトリパルミテートSLPの調製
恒温ガラスびん内で、5.0gのトリパルミテートを80℃で溶融する。600mgのグリココール酸ナトリウムを1.13gのグリセロールおよび0.01%のチオメルサールを含む44.4gの二回蒸留水に溶解する。その水性水溶液を80℃に加熱しそして溶融物に添加する。約5分間の音波処理により粗分散液を調製する。その粗分散液を恒温化高圧ホモジナイザー(APV Gaulin Micron Lab 40)に移し、そしてそのホモジナイザーに800バールの圧力で8回通す。その分散液を室温で放冷する。
PCSで測定された調製後のSLP分散液の(数による)平均粒度は96.8nmである。粒度分布は狭くまた一並類型である。
この実施例は、その界面活性剤が高易動性でありしかもSLPマトリックスの再結晶中に新生表面を安定化させるべく水性性中の安定化剤だめを構成するものであれば、一種類の界面活性剤、例えば胆汁酸塩であるグリココール酸ナトリウム、だけを用いることにより径小の均一粒度のSLPを調製できることを実証している。
【0085】
実施例20:各種SLP分散液の長期安定性
いくつかの異なるSLP分散液を実施例2に記載の方法に従って調製する。すべての分散液は2.25%のグリセロールを等張剤として、そして0.01%のチオメルサールを防腐剤として含有する。それら分散液の長期安定性を18ケ月の期間にわたって(PCSによる)粒度測定を繰り返して判定する。それら分散液は冷蔵温度で貯蔵される。比較のために、大豆油乳濁液系を含める。それら分散液の組成およびそれらの貯蔵中の平均粒度を表4にまとめる。
【表5】

これら分散液の平均粒度が18ケ月間の貯蔵の間、実際上不変のままであることがわかる。すなわち、これらの結果は、医薬不含のおよび医薬搭載SLP分散液が脂質乳濁液のそれに類似した長期安定性を示すことを実証している。
【0086】
実施例21:トリパルミテートSLPの滅菌濾過
3%のトリパルミテート(Dynasan 116、Huels AG)、1.5%のチロキサポール、1%のレシチン(Lipoid S 100)、2.25%のグリセロールおよび0.01%のチオメルサールを全体を100%とする二回蒸留水中に含んで成る粗SLP分散液40mlを実施例6に記載の方法に従って調製する。その粗分散液を恒温ホモジナイザー(APV Micron Lab 40)に1200バールの圧力で5回通す。バッチ量の半分を室温で放冷する一方、残りを滅菌シリンジフィルター(Nalgene SFCA、0.2μm細孔径)に通して濾過してから溶融脂質の再結晶温度まで冷却する。
両サンプルの粒度分布をPCSにより測定する。濾過されないサンプルの平均粒度は56.7nmであり、また滅菌濾過されたSLP分散液のそれは53.2nmである、すなわちいずれのサンプルも実際上同じ粒度を有する。
【0087】
実施例22:オートクレーブ処理によるトリパルミテートSLPの滅菌
3%のトリパルミテート(Dynasan 116、Huels AG)、1.8%のレシチン(Lipoid S 100)、0.6%のグリココール酸ナトリウム、2.25%のグリセロールおよび0.01%のチオメルサールを全体を100%とする二回蒸留水中に含んで成る粗製SLP分散液40mlを実施例2に記載の方法に従って調製する。その粗製分散液を恒温ホモジナイザー(APV Micron Lab 40)に1200バールの圧力で10回通す。
そのSLP分散液を、溶融脂質の再結晶温度に冷却する前に、注射用ガラスびんに充填しそして121℃/2気圧で45分間オートクレーブ処理することにより滅菌する。オートクレーブ処理した分散液を室温で放冷する。それは凝集または相分離の徴候を全く示さず、また65.9nmのPCS測定平均粒度を有する。
【0088】
実施例23:SLPの凍結乾燥
恒温ガラスびん内で、3.5gのトリパルミテート(Dynasan 116、Huels AG)を75℃で溶融し、そして1.05gのレシチン(Lipoid S 100、Lipoid KG)をその溶融物中にプローブ音波処理により分散させる。1.58gのチロキサポール、14gのスクロースおよび7mgのチオメルサールを75℃に加熱された50mlの二回蒸留水に溶解し、そしてその水性相を脂質溶融物に添加する。プローブ音波処理により粗分散液を調製し、次いで恒温ホモジナイザー(APV Gaulin Micron Lab 40)に900バールの圧力で5回通す。その均質化された分散液を0.2μm滅菌フィルターに通す。
凍結乾燥のために、その分散液を平底ガラスびんに充填し、それらびんを液体窒素に1分間浸漬しそして凍結乾燥チャンバーに移す。サンプルを−40℃の受容体(recipient)温度で真空下に36時間凍結乾燥する。
凍結乾燥により容易に再分散し得る微粉末が生じる。SLP分散液の粒度を凍結乾燥の前に、および二回蒸留水による凍結乾燥粉末の再構成の後でPCSにより測定する。凍結乾燥前の平均粒度は79nm、再構成分散液のそれは87nmである、すなわち凍結乾燥後に平均粒度の変化は実際上無い。
【0089】
実施例24:ポリマーの吸着による表面改変
恒温ガラスびん内で4.0gのトリパルミテート(Dynasan 116、Huels AG)を80℃で溶融しそして1.6gの大豆レシチン(Lipoid S 100)をその溶融物中にプローブ音波処理により分散させる。35.25gの0.01%チオメルサールの水性溶液を80℃に加熱しそして溶融物に添加する。プローブ音波処理により粗分散液を生成させた後、高圧ホモジナイザーに1200バールの圧力で5回通す。その分散液を0.2μmシリンジフィルターに通して濾過する。そのバッチを等容の三つのパートに分割する。一つのパートは同量の水で希釈しそして90℃で貯蔵して再結晶温度より低温に冷却された場合の燐脂質安定化分散液のゲル化を防止する。バッチの他の二つのパートはそれぞれ等容の6%(w/w)ポロキサマー407(Pluronic F127、BASF)および6%(w/w)ポロキサミン908(Tetronic 908、BASF)溶液と共に一夜インキュベートするが、その際ポリマー溶液はSLPの再結晶温度より低温に冷却される前にSLP分散液に添加して再結晶のために新しい表面が作られるや否や即座にポリマー分子を利用できるようにしておく。いずれのポリマーも静脈内投与コロイド粒子の生物内分布を改変するものとして文献に記述されている。
トリパルミテートSLPの表面性質の改変は、ゼータ電位差により実証される。ゼータ電位は微小電気泳動セル(Malvern Zetasizer 3)でレーザードップラーアネモメトリー(laser Doppler anemometry)により測定した。結果を表5にまとめる。
【0090】
【表6】

SLPをポロキサマーおよびポロキサミン型のブロック共重合体とインキュベーションするとゼータ電位が減少する。ポリマーの吸着により表面はより疎水性となる。表面の疎水性は、RES(細網内皮系)活性およびコロイド粒子の生物内分布を支配する要因の一つであるとして記述されている。
【0091】
実施例25:心臓保護薬コビデカレノンを搭載したSLPの調製
心臓保護薬コビデカレノンを含有する三種類の異なるSLPを調製する。SLPの組成は表6にまとめられているとおりである。すべての分散液が2.25%グリセロールと0.01%チオメルサールを含有する。
バッチ1および2は、レシチンを溶融マトリックス構成分中に前述の如くに分散することにより調製される。この溶融物にコビデカレノンを溶解する。グリココール酸ナトリウム、グリセロールおよびチオメルサールを含有する水性相を添加した後、プローブ音波処理により粗分散液を調製する。それを恒温ホモジナイザー(APV Micron Lab 40)に移しそしてそのホモジナイザーに800バールの圧力で10回通す。それら分散液を室温で放冷する。
バッチ3は、レシチンを溶融マトリックス構成分中に前述の如くに分散させることにより調製される。この溶融物にユビデカレノンを溶解する。チロキサポール、グリセロールおよびチオメルサールを含有する水性相を添加後、プローブ音波処理により粗分散液を調製する。それを恒温ホモジナイザー(APV Micron Lab 40)に移し、そしてそのホモジナイザーに1200バールの圧力で5回通す。その分散液を室温で放冷する。
【0092】
【表7】

【0093】
実施例26:オキサゼパム搭載SLPの調製
恒温ガラスびん内で、7.0gのトリパルミテートを80℃で溶融する。1.68gのレシチンおよび140mgのオキサゼパムをその溶融物中にプローブ音波処理により分散させる。280mgのグリココール酸ナトリウム、1.58gのグリセロールおよび7mgのチオメルサールを含有する60mlの加熱水性相をその溶融物に添加し、そしてプローブ音波処理により粗分散液を調製する。その粗分散液を、恒温高圧ホモジナイザーに800バールの圧力で10回通すことにより均質化する。その分散液を室温で放冷する。オキサゼパム搭載SLPの分散液は調製後122.7nmの平均粒度を有する。
【0094】
実施例27:ジアゼパム搭載SLPの調製および長期安定性
恒温ガラスびん内で、4.0gのトリパルミテートを80℃で溶融する。0.96gのレシチンおよび120mgのジアゼパムをその溶融物中にプローブ音波処理を分散させる。160mgのグリココール酸ナトリウム、0.9gのグリセロールおよび4mgのチオメルサールを含有する35mlの加熱水性相をその溶融物に添加し、そしてプローブ音波処理により粗分散液を調製する。その粗分散液を恒温高圧ホモジナイザーに800バールの圧力で10回通すことにより均質化する。その分散液を室温で放冷する。
このジアゼパム搭載SLPの分散液は104.6nmの調製後平均粒度を有する。12ケ月貯蔵後、PCSにより測定される平均粒度は113.9nmである。貯蔵中医薬物質の沈殿は巨視的に検出されない。12ケ月の監視期間にわたり偏光顕微鏡法により分散液を調査しても医薬結晶の存在はみられない。
【0095】
実施例28:リドカイン搭載SLPの調製
恒温ガラスびん内で、4.0gのトリパルミテートを80℃で溶融する。0.96gのレシチンおよび60mgのリドカインをその溶融物中にプローブ音波処理により分散させる。320mgのグリココール酸ナトリウム、0.9gのグリセロールおよび4mgのチオメルサールを含有する35mlの加熱水性相を溶融物に添加し、そしてプローブ音波処理により粗分散液を調製する。その粗分散液を恒温高圧ホモジナイザーに800バールの圧力で10回通すことにより均質化する。その分散液を室温で放冷する。
このリドカイン搭載SLPの分散液は90.4nmの調製後平均粒度を有する。
【0096】
実施例29:プレドニゾロン搭載SLPの調製および長期安定性
恒温ガラスびん内で4.0gのトリパルミテートを80℃で溶融する。0.48gのレシチンおよび80mgのプレドニゾロンをその溶融物中にプローブ音波処理により分散させる。160mgのグリココール酸ナトリウム、0.9gのグリセロールおよび4mgのチオメルサールを含有する36mlの加熱水性相を溶融物に添加しそしてプローブ音波処理により粗分散液を調製する。その粗分散液を恒温高圧ホモジナイザーに800バールの圧力で10回通すことにより均質化する。その分散液を室温で放冷する。
プレドニゾロン搭載SLPの分散液は118.3nmの調製後平均粒度を有する。12ケ月貯蔵後のPCS測定による平均粒度は124.2nmである。貯蔵中の物質沈殿は巨視的に検出されない。12ケ月の監視期間にわたって分散液を偏光顕微鏡法により調査しても医薬結晶の存在はみられない。
【0097】
実施例30:コルチゾン搭載SLPの調製
コルチゾンを含有する四種類の異なるSLPを調製する。それらSLPの組成は表7にまとめられているとおりである。すべての分散液が2.25%グリセロールおよび0.01%チオメルサールを含有する。
バッチ1および2は、レシチンを溶融マトリックス構成分中に前述の如くに分散させることにより調製される。この溶融物にコルチゾンを溶解する。グリココール酸ナトリウム、クリセロールおよびチオメルサールを含有する水性相の添加後、プローブ音波処理により粗分散液を調製する。それを恒温ホモジナイザー(APV Micron Lab 40)に移し、そしてそのホモジナイザーに10回通す。それら分散液を室温で放冷する。
バッチ3は、レシチンを溶融マトリックス構成分中に前述の如くに分散させることにより調製する。この溶融物中にコルチゾンを溶解する。ポロキサマー(Pluronic F 68)、グリセロールおよびチオメルサールを含有する水性相の添加後、プローブ音波処理により粗分散液を調製する。それを恒温ホモジナイザー(APV Micron Lab 40)に移しそしてそのホモジナイザーに1200バールの圧力で5回通す。その分散液を室温で放冷する。
バッチ4は、レシチンを溶融マトリックス構成分中に前述の如くに分散させることにより調製する。この溶融物中にコルチゾンを溶解する。チロキサポール、グリセロールおよびチオメルサールを含有する水性相の添加後、プローブ音波処理により粗分散液を調製する。それを恒温ホモジナイザー(APV Micron Lab 40)に移し、そしてそのホモジナイザーに1200バールの圧力で5回通す。その分散液を室温で放冷する。
【0098】
【表8】

【0099】
実施例31:レチノール(ビタミンA)搭載トリパルミテートSLP
恒温グラスびん内で、1.0gのトリパルミテート(Dynasan 116、Huels AG)を80℃で溶融する。60mgのレチノール(ビタミンA−アルコール>99%、Fluka)をその溶融物に溶解する。300mgの大豆レシチン(Lipoid S 100)をその溶融物中にプローブ音波処理によりその分散液が光学的に透明になるまで分散させる。450mgのポロキサマー407(PluronicTM F127、BASF)を29.0gの二回蒸留水に溶解する。その水性相を80℃に加熱しそしてその溶融物に添加する。20分間のプローブ音波処理により微細分散液を調製する。その分散液を0.2μmシリンジフィルターに通して濾過して超音波プローブからこぼれた金属を除去する。その分散液を室温で放冷する。
PCSによって測定されるビタミンA搭載トリパルミテートSLPの調製後の数による平均粒度は98.5nmである。
【0100】
実施例32:フィチルメナジオン(ビタミンK3)搭載トリパルミテートSLP
恒温ガラスびん内で1.0gのトリパルミテート(Dynasan 116、Huels AG)を80℃で溶融する。60mgのフィチルメナジオン(ビタミンK3、Sigma)および300mgの大豆レシチン(Lipoid S 100)をその溶融物中にプローブ音波処理により分散液が光学的に透明になるまで分散させる。450mgのポロキサマー407(PluronicTM F127、BASF)を28.7gの二回蒸留水に溶解する。その水性相を80℃に加熱しそして溶融物に添加する。20分間のプローブ音波処理により微細分散液を調製する。その分散液を0.2μmシリンジフィルターに通して濾過して超音波プローブからこぼれる金属を除去する。その分散液を室温で放冷する。PCSによって測定されるビタミンK3−搭載トリパルミテートSLPの調製後の数による平均粒度は86.8nmである。
【0101】
実施例33:エストラムスチン搭載トリパルミテートSLPの調製
恒温ガラスびん内で7.0gのトリパルミテート(Dynasan 116、Huels AG)を80℃で溶融する。その溶融物中に1.68gの大豆レシチン(Lipoid S100)をプローブ音波処理により分散液が光学的に透明になるまで分散させる。40mgのエストラムスチンをトリパルミテート/レシチン分散液に溶解させる。0.42gのグリココール酸ナトリウムおよび1.58gのグリセロールを60gの二回蒸留水に溶解する。その水性相を80℃に加熱しそして溶融物に添加する。約2分間のプローブ音波処理により粗乳濁液を調製する。その粗乳濁液を恒温高圧ホモジナイザー(APV Gaulin Micron Lab 40)に移しそしてそのホモジナイザーに800バールの圧力で10回通す。その分散液を室温で放冷する。
【0102】
実施例34:体温における各種SLPの物理的状態
異なるマトリックス構成分からのSLPの二つのバッチを実施例2に記載の方法に従って調製する。バッチ1は10%のトリパルミテート、0.5%のユビデカレノン、1.2%の大豆レシチン(Lipoid S 100、Lipoid KG)、0.4%のグリココール酸ナトリウム、2.25%のグリセロール、0.01%のチオメルサールおよび全体を100%にする二回蒸留水から構成される(%は重量)。バッチ2は10%の硬脂肪(WitepsolTM W35、Huels AG)、0.5%のユビデカレノン、1.2%の大豆レシチン(Lipoid S 100、Lipoid KG)、0.4%のグリココール酸ナトリウム、2.25%のグリセロール、0.01%のチオメルサールおよび全体を100%にする二回蒸留水から構成される(%は重量)。
それらマトリックス構成分の物理的状態をシンクロトロン放射X−線回折により20℃および38℃で測定する。サンプルを恒温化されたサンプルホルダーに入れる。回折パターンを各々180秒間記録する。図15aは、室温(20℃)ではいずれもバッチのSLPも結晶性であることを実証している。スペーシングはβ−結晶多形に相当する。体温(38℃)では、トリパルミテートSLPは依然として結晶性であるのに対し、硬脂肪SLPについては何の反射も検出できない、すなわちそれらは無定形で溶融されている(図15b)。これらSLPの体温における異なる物理的状態は、取り込まれた医薬または生物活性剤の放出に関し異なった生物薬学的挙動を生じさせる。体温で溶融したSLPは、従来の脂質乳濁液に典型の放出特性を基本的に示す。液状脂質中では医薬分子が自由拡散するため、医薬はビヒクルから比較的高速で放出され得る。これに対し、体温で固体のSLPは取り込まれた医薬の持続的放出を生じる。医薬分子が固体マトリックス中に不動化されることから、医薬放出は拡散によりコントロールされるのではなく体内での固体脂質マトリックスの分解に依存しそれ故に遅延する。
【0103】
実施例35:ミコナゾールからのPBAの調製
恒温ガラスびん内で0.4gのミコナゾールを90℃で溶融させる。0.24gのレシチン(Lipoid S 100)をその溶融物にプローブ音波処理により分散液が光学的に透明になるまで分散させる。0.9gのグリセロール、80mgのグリココール酸ナトリウムおよび4mgのチオメルサールを38.5mlの二回蒸留水に溶解しそして90℃に加熱する。その水性相をミコナゾール/レシチン溶融物に添加しそして5分間のプローブ音波処理により粗分散液を生成させる。その粗分散液を恒温高圧ホモジナイザー(APVGaulin Micron Lab 40)に移し、そしてそのホモジナイザーに800バールの圧力で10回通す。そのPBA分散液を室温で放冷する。
冷却すると、溶融ミコナゾールが再結晶しそしてミコナゾール微粒子の懸濁液を形成する。レーザー回折測定により測定されるミコナゾールPBAの(容量による)平均粒度は21.8μmである。ミコナゾールPBAの沈降物は軽い撹拌により容易に再分散させることができる。
【0104】
実施例36:イブプロフェンからのPBAの調製
恒温ガラスびん内で、1.2gのイブプロフェンを85℃で溶融する。0.72gのレシチン(Lipoid S 100)をその溶融物にプローブ音波処理により分散液が光学的に透明になるまで分散させる。0.9gのグリセロール、240mgのグリココール酸ナトリウムおよび4mgのチオメルサールを37mlの二回蒸留水に溶解しそして85℃に加熱する。その水性相をイブプロフェン/レシチン溶融物に添加し、そして5分間のプローブ音波処理により粗分散液を生成させる。その粗分散液を恒温高圧ホモジナイザー(APV Gaulin Micron Lab 40)に移しそしてそのホモジナイザーに800バールの圧力で6回通す。そのPBA分散液を室温で放冷する。
冷却すると、溶融イブプロフェンが再結晶しそしてイブプロフェン微粒子の懸濁液を形成する。レーザー回折測定により測定されるイブプロフェンPBAの(容量による)平均粒度は61.4μmである。イブプロフェンPBAの沈降物は軽い撹拌により容易に再分散させることができる。
【0105】
実施例37:イブプロフェンPBAの溶解速度
実施例36のイブプロフェンPBAの溶解速度を、10分間にわたっていわゆる不鮮明化度(obscuration)の減衰を監視することにより、レーザー回折計(Malvern Mastersizer MS20)で測定する。その不鮮明化度はサンプルによる未散乱レーザー光強度低下の尺度であり、そしてレーザービーム内の粒子濃度と関係する。並行して粒度を測定することができる。測定のために、イブプロフェンPBAサンプルを水で希釈しそしてレーザービームライン中に置かれた測定セル中で磁気撹拌により分散させる。図16はイブプロフェンPBAのサンプルの不鮮明化度減衰および粒度を示している。10分以内に不鮮明化度は零まで減衰した、すなわち検出可能な量の粒子は存在せずPBAが完全に溶解したことを示唆する。未処理原料物質イブプロフェンの溶解は、その物質の水中での湿潤性が低いので、この方法によっては測定し得ない。
【0106】
実施例38:リドカインからのPBAの調製
恒温ガラスびん内で1.2gのリドカインを80℃で溶融する。1.2gのチロキサポールを37.6mlの二回蒸留水に溶解しそして80℃に加熱する。その水性相をリドカイン溶融物に添加しそして2分間のプローブ音波処理により粗分散液を生成させる。その粗分散液を恒温高圧ホモジナイザー(APV Gaulin Micron Lab 40)に移しそしてそのホモジナイザーに1200バールの圧力で5回通す。そのPBA分散液を室温で放冷する。
冷却すると、溶融リドカインが微細針状晶に再結晶しそしてリドカイン微粒子の懸濁液を形成する。図17はその懸濁されたリドカイン針状晶の偏光顕微鏡写真を示す。図18の偏光顕微鏡写真により実証されているように、原料のリドカイン−塩基(Synopharm)の粒子形状はリドカインPBAのそれとは異なる。
レーザー回折測定により測定されるリドカインPBAの(容量による)平均粒度は174.2μmである。最大検出粒度は400μmである。リドカインPBAの沈降物は軽い撹拌により容易に再分散させることができる。PBAに水を添加すると粒子が速やかに溶解する。これに対し原料リドカインは水に難溶でありそして溶解速度ははるかに遅い。このリドカインPBAの高い溶解速度は改変された表面性質および粒子の微細分散状態の結果である。溶解が速いために、実施例37に記載の方法による溶解速度の測定は可能でない。
【0107】
実施例39:コレカルシフェロール(ビタミンD3)からのPBAの調製
恒温ガラスびん内で0.8gのコレカルシフェロールを95℃で溶融する。120mgの大豆レシチン(Lipoid S 100)を溶融物中にプローブ音波処理により分散液が光学的に透明になるまで分散させる。40mgのグリココール酸ナトリウムおよび0.9gのグリセロールを37.92mlの二回蒸留水に溶解しそして95℃に加熱する。その水性相をコレカルシフェロール/レシチン分散液に添加しそして5分間のプローブ音波処理により粗分散液を生成させる。その粗分散液を恒温高圧ホモジナイザー(APV Gaulin Micron Lab 40)に移し、そしてそのホモジナイザーに1200バールの圧力で8回通す。そのPBA分散液を室温で放冷する。
PCSにより測定されるコレカルシフェロールPBAの数による調製後平均粒度は325.1nmである。
【0108】
実施例40:エストラムスチンからのPBAの調製
恒温ガラスびん内で2gのエストラムスチンを105℃で溶融する。その溶融物中に0.8gの大豆レシチン(Lipoid S 100)をプローブ音波処理により分散液が光学的に透明になるまで分散させる。0.2gのグリココール酸ナトリウムおよび0.9gのグリセロールを36.1gのの二回蒸留水に溶解する。その水性相を95℃に加熱しそして溶融物に添加する。約5分間のプローブ音波処理により粗乳濁液を調製する。その粗乳濁液を恒温高圧ホモジナイザー(APV Gaulin Micron Lab 40)に移し、そしてそのホモジナイザーに1200バールの圧力で5回通す。その分散液を室温で放冷する。
【図面の簡単な説明】
【0109】
【図1】室温で5ケ月貯蔵後の実施例1のトリパルミテートSLPの透過型電子顕微鏡写真。棒線は400nmを表す。
【図2】a)純粋トリパルミテートの、およびb)実施例1のトリパルミテートSLPの示差走査熱量測定(DSC)サーモグラム。トランジションピークはβ−結晶多形の溶融に相当する。
【図3】実施例2のトリパルミテートSLPのシンクロトロン放射広角X線回折パターン。反射はβ−結晶多形に相当する。
【図4】実施例5の不安定硬脂肪SLPの透過型電子顕微鏡写真。SLP分散液は貯蔵時に三次元ネットワークを形成することによりゲル化した。棒線は1000nmに相当する。
【図5】15ケ月貯蔵後の実施例1のトリパルミテートSLPの粒度分布。グラフは多角PCS測定結果を表す。
【図6】10%トリパルミテートSLP分散液のPCS粒度分布と市販脂質乳濁液Intraliped(R) 10%のそれとの比較。
【図7】実施例3の硬脂肪SLPの平均粒度に対するマイクロ流動化時間の影響。
【図8】貯蔵時間の経過に伴う平均粒度の展開によって示される実施例3の硬脂肪SLPの貯蔵安定性(監視期間:12ケ月)。
【図9】トリパルミテートSLPの平均粒度に対する均質化圧の影響。
【図10】トリパルミテートSLPの平均粒度に対する均質化への通し回数の影響(0回は音波処理により調製された粗分散液に相当する)。
【図11】プローブ音波処理により調製されたトリパルミテートSLPの平均粒度に対する音波処理時間の影響。
【図12】実施例13により調製されたトリパルミテートSLPの平均粒度に対する乳化剤の種類および量の影響。
【図13】実施例14の各種燐脂質安定化SLP分散液の平均粒度に対する共存乳化剤としての胆汁酸塩の効果。
【図14】レーザー回折測定により測定された実施例15のトリミリステートSLPの粒度分布。
【図15】シンクロトロン放射広角X線回折により測定されたa)20℃およびb)38℃における各種医薬搭載SLPの物理的状態。
【図16】実施例37のイブプロフェンPBAの溶解速度。
【図17】実施例38のリドカインPBAの偏光顕微鏡写真(倍率:150x)。
【図18】リドカインPBAの生産に用いられたリドカイン原料の偏光顕微鏡写真(倍率:150x)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
生物活性剤または医薬から選ばれる室温で固体である、不溶性若しくは難水溶性の剤の乳化方法であって、
a.前記剤を溶融させる、
b.前記溶融された剤と同一の温度に分散媒を加熱する、
c.前記分散媒中で分相を形成しない一以上の水溶性または分散性安定化剤を該分散媒に、前記安定化剤の量が、乳化後に、粒子凝集を防止するのに十分となるように添加し、
d.前記溶融された剤と分散媒を液相中で音波処理、高速撹拌および/または手振りにより粗分散液を生成させ、該分散液を高圧均質化により均質化する、
e.前記均質化された分散液を溶融された剤の再結晶により固体粒子が形成されるまで放冷し、
ここで、
前記安定化剤が
天然および合成燐脂質、それらの水素化誘導体およびそれらの混合物、スフィンゴリピドおよびグリコスフィンゴリピド;生理学的胆汁酸塩;飽和および不飽和脂肪酸または脂肪アルコール;エトキシル化脂肪酸または脂肪アルコール、およびそれらのエステルおよびエーテル;アルキルアリール−ポリエーテルアルコール;糖または糖アルコールと脂肪酸または脂肪アルコールとのエステルおよびエーテル;アセチル化またはエトキシル化モノ−およびジグリセライド;合成生 物分解性ポリマー;エトキシル化ソルビタンエステルまたはソルビタンエーテル;およびアミノ酸、ポリペプチドおよびタンパク質;からなる群より選択されるイオン性および非イオン性界面活性剤である、両親媒性化合物である、
以上a〜eの工程を行うことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記c工程において脂質に可溶性または分散性の一以上の安定化剤を溶融された剤に付加的に添加することを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項3】
固体粒子を保持しないよう十分大きくフィルター細孔径を選択するようにして、均質化された分散液を、再結晶温度より低温に冷却される前に、そのフィルターを通過させて微粒状混入物質を除去することを特徴とする請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
剤が、低生物利用可能性を示す、および/または腸からの吸収が悪い、100℃より低い融点を有するまたはその融点を補助剤の添加により100℃より低い温度まで下げることができる生物活性剤または医薬であり、ブタニリカイン、フォモカイン、イソブタムベン、リドカイン、リゾカイン、プリロカイン、プソイドコカイン、テトラカイン、トリメカイン、トロパコカインおよびエトミデートからなる群より選択される麻酔薬および麻薬;メチキセンおよびプロフェナミンからなる群より選択される抗コリン作用薬;アリメナジン、ビネダリン、ペラジン、クロルプロマジン、フェンペンタジオール、フェナニソール、フルアニソール、メベナジン、メチルフェニデート、チオリダジン、トロキサトンおよびトリミプラミンからなる群より選択される抗うつ薬、精神刺激薬および神経遮断薬;ジメタジオンおよびニセタミドからなる群より選択される抗てんかん薬;ブトコナゾール、クロルフェネシン、エチサゾール、エクサラミド、ペシロシンおよびミコナゾールからなる群より選択される抗真菌薬;ブチブフェンおよびイブプロフェンからなる群より選択される消炎薬;バミフィリンである気管支拡張薬;アルプレノロール、ブトベンジン、クロリタゾール、ヘキソベンジン、ニコフィブレート、ペンブトロール、ピルメノール、プレニルアミン、プロカインアミド、プロパチルナイトレート、スロクチジル、トリプロロール、キシベンドールおよびビ キジルからなる群より選択される心血管薬;アスペルリン、クロラムブシル、クロルナファジン、ミトテン、エストラムスチン、タキソール、ペンクロメジンおよびトロフォスファミドからなる群より選択される細胞静止薬;カプサイチンおよびメチルニコチネートからなる群より選択される充血薬;ニコクロネート、オクスプレノロール、ピリフィブレート、シムフィブレートおよびチアデノールからなる群より選択される脂質低下薬;アミノプロマジン、カロネリン、ジフェメリン、フェンカルバミド、チロプラミドおよびモキサベリンからなる群より選択される鎮痙薬;テストステロンエナンテートおよびテストステロン−(4−メチルペンタノエート)からなる群より選択されるテストステロン誘導体;アザペロンおよびブラメートからなる群より選択される向精神薬;アリルドンであるウイルス静止薬;レチノール、レチノールアセテートおよびレチノールパルミテートからなる群より選択されるビタミンA誘導体;トコフェロールアセテート、トコフェロールスクシネートおよびトコフェロールニコチネートからなる群より選択されるビタミンE誘導体;メナジオン;コレカルシフェロール;およびアセフェート、サイフルトリン、アジンホスホメチル、サイペルメトリン、置換フェニルチオホスフェート、フェンクロフォス、ペルメトリン、ピペロナール、テトラメトリンおよびトリフルラリンからなる群より選択される殺虫剤、殺有害生物剤および殺草剤であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
生理学的胆汁酸塩がコール酸ナトリウム、デヒドロコール酸ナトリウム、デオキシコール酸ナトリウム、グリココール酸ナトリウムおよびタウロコール酸ナトリウムからなる群より選択されることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項6】
アルキルアリール−ポリエーテルアルコールがチロキサポールであることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項7】
合成生物分解性ポリマーが、ポリオキシエチレンおよびポリオキシプロピレンオキサイドのブロック共重合体であることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項8】
タンパク質がゼラチンまたはアルブミンであることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項9】
安定化剤が燐脂質と生理学的胆汁酸塩との組合せであることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
燐脂質:生理学的胆汁酸塩モル比が2:1以上であることを特徴とする請求項9記載の方法。
【請求項11】
安定化剤が2:1〜4:1のモル比の燐脂質とグリココール酸ナトリウムの組合せであることを特徴とする請求項9または10に記載の方法。
【請求項12】
粒子の表面特性を、均質化後に、該粒子の生体内分布をコントロールするために、ポリマーの吸着によりまたは水溶性界面活性剤の透析により、改変することを特徴とする請求項1〜11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
冷却中に分散液を、磁気撹拌機により、撹拌することを特徴とする請求項1〜12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
分散媒が剤を溶解しない、水、エタノール、プロピレングリコール、ジメチルスルホキシドまたはメチルイソブチルケトン、またはそれらの混合物から選択される薬理学的に許容される液体であることを特徴とする請求項1〜13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
分散媒が等張剤、および/または凍結保護物質を含有することを特徴とする請求項1〜14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
分散媒が、水溶性または分散性安定化剤;等張剤のグリセロールまたはキシリトール;凍結保護物質のスクロース、グルコース、マルトースまたはトレハロース;電解質;緩衝剤;凝集防止剤のクエン酸ナトリウム、ピロ燐酸ナトリウムまたはドデシル硫酸ナトリウム;および防腐剤のうちの一以上を含有することを特徴とする請求項1〜15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
分散液を、溶融された脂質の再結晶温度より低い温度まで冷却する前に、オートクレーブ処理または滅菌濾過により、滅菌することを特徴とする請求項1〜16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
続く工程で、分散媒の量を蒸発により少なくするか、または濾過、限外濾過または凍結乾燥により除去して使用前に再構成され得る液体不含粒子とすることを特徴とする請求項1〜17のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
請求項1〜19のいずれか1項に記載の方法により製造される生物活性剤の粒子(PBA)の懸濁液であって、PBAが低生物利用可能性を示す、および/または腸からの吸収が悪い、100℃より低い融点を有するまたはその融点を補助剤の添加により100℃より低い温度まで下げることができる生物活性剤または医薬であり、ブタニリカイン、フォモカイン、イソブタムベン、リドカイン、リゾカイン、プリロカイン、プソイドコカイン、テトラカイン、トリメカイン、トロパコカインおよびエトミデートからなる群より選択される麻酔薬および麻薬;メチキセンおよびプロフェナミンからなる群より選択される抗コリン作用薬;アリメナジン、ビネダリン、ペラジン、クロルプロマジン、フェンペンタジオール、フェナニソール、フルアニソール、メベナジン、メチルフェニデート、チオリダジン、トロキサトンおよびトリミプラミンからなる群より選択される抗うつ薬、精神刺激薬および神経遮断薬;ジメタジオンおよびニセタミドからなる群より選択される抗てんかん薬;ブトコナゾール、クロルフェネシン、エチサゾール、エクサラミド、ペシロシンおよびミコナゾールからなる群より選択される抗真菌薬;ブチブフェンおよびイブプロフェンからなる群より選択される消炎薬;気管支拡張薬であるバミフィリン;アルプレノロール、ブトベンジン、クロリダゾール、ヘキソベンジン、ニコフィブレート、ペンブトロール、ピルメノール、プレニルアミン、プロカインアミド、プロパチルナイトレート、スロクチシジル、トリプロロール、キシベンドールおよびビキジルからなる群より選択される心血管薬;アスペルリン、クロラムブシル、クロルナフハジン、ミトテン、エストラムスチン、タキソール、ペンクロメジンおよびトロフォスファミドからなる群より選択される細胞静止薬;カプサイチンおよびメチルニコチネートからなる群より選択される充血薬;ニコクロネート、オクスプレノロール、ピリフィブレート、シムフィブレートおよびチアデノール脂質低下薬;アミノプロマジン、カロネリン、ジフェメリン、フェンカルバミド、チロプラミドおよびモキサベリンからなる群より選択される鎮痙薬;テストステロンエナンテートおよびテストステロン−(4−メチルペンタノエート)からなる群より選択されるテストステロン誘導体;アザペロンおよびブラメートからなる群より選択される向精神薬;ウイルス静止薬であるアリルドン;レチノール、レチノールアセテートおよびレチノールパルミテートからなる群より選択されるビタミンA誘導体;トコフェロールアセテート、トコフェロールスクシネートおよびトコフェロールニコチネートからなる群より選択されるビタミンE誘導体;メナジオン;コレカルシフェロール;またはアセフェート、サイフルトリン、アジンホスホメチル、サイペルメトリン、置換フェニルチオホスフェート、フェンクロフォス、ペルメトリン、ピペロナール、テトラメトリンおよびトリフルラリンからなる群より選択される殺虫剤、殺有害生物剤および殺草剤であることを特徴とする懸濁液。
【請求項20】
PBAが乳濁液調製温度において非水溶性であり、そして過剰の安定化剤によって可溶化されるか、あるいはそれら自体でミセルを形成することはなく、PBAの粒度が室温にまで冷却する前も冷却した後も不変のままでいることを特徴とする請求項19に記載の生物活性剤の粒子(PBA)の懸濁液。
【請求項21】
PBAが乳濁液調製温度において部分的に水溶性であり、および/または過剰の安定化剤により混合ミセルを形成すること、および/またはそれら自体でミセルを形成することができ、その結果溶存生物活性剤の結晶成長および/または沈殿によっておよび/または径小粒子から径大粒子への質量移動によって、室温にまで冷却した後に粒度が大きくなることを特徴とする請求項19記載の生物活性剤の粒子(PBA)の懸濁液。
【請求項22】
請求項19〜21のいずれか1項に記載の生物活性剤の粒子(PBA)の懸濁液から分散媒を、濾過、限外濾過または凍結乾燥により、除去することにより製造される液体不含粒子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2007−23051(P2007−23051A)
【公開日】平成19年2月1日(2007.2.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−261728(P2006−261728)
【出願日】平成18年9月27日(2006.9.27)
【分割の表示】特願平6−519887の分割
【原出願日】平成6年3月4日(1994.3.4)
【出願人】(505275262)ファイザー・ヘルス・アクティエボラーグ (7)
【Fターム(参考)】