説明

生物由来の石灰質物質からのタンパク質の除去方法および該方法により得られる固体状の炭酸カルシウムを含む樹脂組成物

【課題】低コストで完全に生物由来の石灰質物質に含まれるタンパク質を除去でき、工業原料として用いることが可能な固体状の炭酸カルシウムを得ることができる生物由来の石灰質物質からのタンパク質の除去方法および該方法により得られる固体状の炭酸カルシウムを含む樹脂組成物を提供する。
【解決手段】炭酸カルシウムを主成分とする生物由来の石灰質物質を2.5mol/L以上の水酸化アルカリ水溶液中に浸漬し、該生物由来の石灰質物質中のタンパク質を加水分解し除去することを特徴とする生物由来の石灰質物質からのタンパク質の除去方法、および熱可塑性樹脂および熱硬化性樹脂の一方または双方からなる樹脂マトリックスと、上述の方法により得られる固体状の炭酸カルシウムとを含み、固体状の炭酸カルシウムの含有率が樹脂組成物全体の1〜70重量%であることを特徴とする樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鳥類の卵殻、貝殻等の生物由来の石灰質物質からタンパク質を除去する方法の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
生物は、硬組織等として種々の固体無機物質を形成することが知られている。このような生物由来の固体無機物質の代表例としては、骨や歯等のヒドロキシアパタイトを主成分とするもの、および貝殻、卵殻等の炭酸カルシウムを主成分とするもの(以下、本発明において「生物由来の石灰質物質」という。)が挙げられる。
【0003】
生物由来の石灰質物質のうち、鳥類の卵殻は、炭酸カルシウムを主成分とし、その内側は卵殻膜と呼ばれる厚さ70μm程度の皮膜で覆われている。卵殻膜は、主にタンパク質からなる格子状に組まれた繊維により構成されている。また、卵殻中の最外層に位置するクチクラ層にもタンパク質が含まれている。
【0004】
貝殻は、炭酸カルシウムを主成分とする殻本体と、キチン質からなる殻皮からなる。このうち殻本体は、多数の炭酸カルシウムの結晶(三方晶系の方解石(カルサイト:calcite)または斜方晶系のアラレ石(アラゴナイト:aragonite))がタンパク質で結合された構造を有する。
【0005】
卵殻や貝殻は、加工食品の製造現場において大量に発生するが、廃棄コストの削減および資源の有効活用の観点から、それらの有効活用に関する検討が、近年盛んに行われている。これらの生物由来の石灰質物質の有効活用に際し、加熱処理によりタンパク質を分解除去して固体状の炭酸カルシウムのみを得たり、酸処理して分解および/または可溶化することにより、カルシウム塩およびアミノ酸またはペプチドを含む混合液を調製することもできるが、両者を分離して、それぞれカルシウム源およびタンパク質源として用いることが必要な場合も多い。
【0006】
例えば、卵殻膜を卵殻から分離し、その加水分解物を得るための方法の一例として、例えば、下記の方法が知られている。(1)鳥類の卵殻膜を濃酸類もしくは濃アルカリ類水溶液中で分解処理し、生成する分解生成物液を中和後ろ過もしくはろ過後中和し、溶液相を採取することを特徴とする卵殻膜有用成分含有物の製法(特許文献1参照)。(2)卵殻膜をアルカリ性含水有機溶媒中で分解処理した後、得られた分解液を中和およびろ過することを特徴とする可溶性卵殻膜の製法(特許文献2参照)。(3)卵殻膜を溶液中で超音波を照射することにより、卵殻膜からコラーゲンを含む加水分解タンパク質を抽出することを特徴とする、超音波を用いた卵殻膜からのコラーゲンを含む卵殻膜加水分解タンパク質の抽出方法(特許文献3参照)。
【0007】
また、樹脂組成物には、物理的性質の向上、紫外線、オゾン等に対する耐久性の改善、熱伝導率や導電性の付与等を目的として各種充填材(フィラー)が添加される。例えば、ポリプロピレンやポリ塩化ビニル等のポリオレフィン系樹脂に、耐久性を向上させる目的で炭酸カルシウムが添加されることが周知である。
【0008】
樹脂組成物には、質感の改善を目的として充填材が添加される場合もある。例えば、特許文献4には、メタクリレート系樹脂30〜60重量%に卵殻粉末40〜70重量%を主成分とする人工象牙材料が開示されている。卵殻等の生物由来の石灰質物質の充填剤としての使用は、廃棄物の有効利用の観点からも好ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特公昭54−23975号公報
【特許文献2】特開平1−275512号公報
【特許文献3】特開2006−358460号公報
【特許文献4】特開平4−202344号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
一方、生物由来の石灰質物質を樹脂の充填剤等の用途に用いる場合、タンパク質を十分に除去しておく必要がある。しかしながら、特許文献1〜3記載の方法において、目的物は卵殻膜の加水分解物であるため、卵殻は事前に酸処理により可溶化を受け、あるいは不要物として分離除去される。後者の場合であっても、ろ過された卵殻にどの程度卵殻膜が残存しているかについては必ずしも明らかではなかった。例えば、特許文献1には、90℃で2%(約0.5mol/L)水酸化ナトリウム水溶液を用いて卵殻膜を分解処理する場合には、約50分で溶液状態となるまで分解可溶化することが可能である旨記載されている。
【0011】
しかしながら、後述するように、この条件下では、卵殻に付着した状態にある卵殻膜を完全に分解することはできず、クチクラ層に含まれるタンパク質が完全に除去されるか否かについても必ずしも明らかではない。このような状態の卵殻を樹脂の充填剤等として用いた場合、残存したタンパク質の熱分解生成物が副生成物として生じ、硫化水素等の硫黄化合物に由来する不快臭を有する。そのため、卵殻膜がわずかでも残存した卵殻は、工業製品の原料として好適に用いることができない。しかしながら、卵殻膜およびクチクラタンパク質を卵殻から完全に除去するための方法は知られていない。
【0012】
また、特許文献4記載のように、生物由来の石灰質物質を樹脂の充填剤等の用途に用いる場合、含まれているタンパク質の除去が不十分であると、残存したタンパク質の熱分解生成物である硫化水素等の硫黄化合物に由来する不快臭を生じ、工業製品としての使用に適しないという問題がある。
【0013】
本発明はかかる事情に鑑みてなされたもので、低コストで完全に生物由来の石灰質物質に含まれるタンパク質を除去でき、工業原料として用いることが可能な固体状の炭酸カルシウムを得ることができる生物由来の石灰質物質からのタンパク質の除去方法および該方法により得られる固体状の炭酸カルシウムを含む樹脂組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者らは、上記課題に関して検討を行った結果、卵殻膜の付着した卵殻等の生物由来の石灰質物質を高濃度の水酸化アルカリ水溶液中で処理することにより、含まれるタンパク質を完全に可溶化除去することができることを見いだし、本発明を完成するに至った。
【0015】
すなわち、前記目的に沿う本発明の第1の態様は、下記の(1)および(2)に記載の生物由来の石灰質物質からのタンパク質の除去方法を提供することにより、上記課題を解決するものである。
(1)炭酸カルシウムを主成分とする生物由来の石灰質物質を2.5mol/L以上の水酸化アルカリ水溶液中に浸漬し、該生物由来の石灰質物質中のタンパク質を加水分解し除去する生物由来の石灰質物質からのタンパク質の除去方法
(2)前記生物由来の石灰質物質が鳥類の卵殻である(1)記載の生物由来の石灰質物質からのタンパク質の除去方法。
【0016】
また、本発明の第2の態様は、下記の(3)から(5)に記載の樹脂組成物を提供することにより、上記課題を解決するものである。
(3)熱可塑性樹脂および熱硬化性樹脂の一方または双方からなる樹脂マトリックスと、(1)および(2)のいずれか1項記載の方法により得られる固体状の炭酸カルシウムとを含み、前記固体状の炭酸カルシウムの含有率が樹脂組成物全体の1〜70重量%である樹脂組成物。
(4)前記固体状の炭酸カルシウムに含まれるタンパク質の量が1重量%以下である(3)記載の樹脂組成物。
(5)前記樹脂マトリックスが、ポリプロピレン、ポリスチレンおよびABS樹脂からなる群より選択される1または複数である(3)および(4)のいずれか1項記載の樹脂組成物。
【発明の効果】
【0017】
2.5mol/L以上の高濃度の水酸化アルカリ水溶液を用いることにより、タンパク質を生物由来の石灰質物質からほぼ完全に除去することができる。そのため、本発明により得られる固体状の炭酸カルシウムは、加熱してもタンパク質の熱分解物に由来する不快臭を生じることがなく、樹脂の充填剤等として好適に用いることができる。
【0018】
また、安価な水酸化アルカリと水以外の化学薬品を必要としないため、低コストで生物由来の石灰質物質からのタンパク質の除去を行うことができる。
【0019】
また、生物由来の石灰質物質からタンパク質を除去することにより、樹脂マトリックスに配合後成型や効果の際に必要な熱処理等を行っても、タンパク質の分解生成物を生じないため、それに含まれる硫黄化合物等に由来する不快臭が発生しない。そのため、本発明によると、生物由来の石灰質物質を樹脂組成物の充填材の原料として有効活用できる。
【0020】
以上述べたように、本発明によると、生物由来の石灰質物質に含まれるタンパク質を低コストで完全に除去でき、工業原料として用いることが可能な固体状の炭酸カルシウムを得ることができる、生物由来の石灰質物質からのタンパク質の除去方法および該方法により得られる固体状の炭酸カルシウムを含む樹脂組成物が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の第1の実施の形態に係る卵殻(生物由来の石灰質物質の一例)からのタンパク質の除去方法(以下「本方法」と略称する場合がある。)の対象となる鳥類の卵(以下、単に「卵」と略称する場合がある。)としては、任意の鳥類のものを特に制限なく用いることができるが、コストや入手の容易さの観点から家禽類の卵が好ましく用いられる。家禽類の具体例としては、ニワトリ、カモ、アヒル、ガチョウ、シチメンチョウ、ウズラ等が挙げられる。割卵後内容物を除去して得られる卵殻膜が付着した卵殻は、そのまま本方法に供してもよいが、残留する卵白や卵殻に付着した不純物や汚れ等を除去するために水で洗浄したものを用いることが好ましく、本方法に供する前に適宜粉砕処理を行うことも好ましい。また、必要に応じて酵素処理、加熱処理、遠心分離等の前処理を行ってもよい。
【0022】
次いで、卵殻膜が付着した卵殻を2.5mol/L以上の水酸化アルカリ水溶液中に浸漬し、卵殻および卵殻膜中のタンパク質を加水分解することにより除去する。水酸化アルカリとしては任意のアルカリ金属の水酸化物を用いることができるが、コストの点で水酸化ナトリウムおよび水酸化カリウムが好ましく、水酸化ナトリウムが特に好ましい。水酸化アルカリの濃度が2.5mol/Lを下回ると、卵殻に付着した状態の卵殻膜を完全に除去することはきわめて困難である。
【0023】
水酸化アルカリの濃度が高いほど卵殻膜の加水分解はより迅速に進行するが、廃液処理に要するコスト等の観点からは、2.5〜3.0mol/L程度の下限値付近の濃度とすることが好ましい。なお、浸漬に用いる容器の材質は、高濃度の水酸化アルカリ水溶液により腐食を受けないステンレス鋼等であることが好ましい。
【0024】
卵殻膜の付着した卵殻と水酸化アルカリ水溶液の重量比は特に制限されないが、卵殻膜の分解効率および廃液の処理コスト等の観点から、1:5〜1:20程度であることが好ましい。浸漬は、大気圧下室温で行ってもよいが、反応時間短縮のために、必要に応じて加熱および加圧を行ってもよく、撹拌や超音波照射を行ってもよい。卵殻膜を間に除去するために要する時間は、室温で2.5mol/L水酸化ナトリウム水溶液を用いた場合、12〜36時間程度、例えば24時間である。
【0025】
卵殻膜を除去した卵殻を所定の大きさに粉砕し、乾燥する。粉砕は、湿式ボールミル型粉砕器等を用いて行うことができる。粉砕物の大きさは、卵殻の用途に応じて適当な値とすることができるが、例えば、平均粒径10〜500μm程度の球状または略球状とする。乾燥は、スプレードライヤー等の任意の手段を用いて行うことができる。
【0026】
このようにして得られた固体状の炭酸カルシウムからはタンパク質がほぼ完全に除去されており、炭酸カルシウムを主成分とする無機粉体として、樹脂やゴムの充填材、消しゴムや練り歯磨きの研磨剤等の用途に用いることができる。
【0027】
本実施の形態では卵殻を例にとって説明したが、貝殻、サンゴの外骨格等の生物由来の石灰質物質を用いて同様の処理を行うことによっても、含まれるタンパク質がほぼ完全に除去された固体状の炭酸カルシウムを得ることができる。貝殻を用いる場合、2.5mol/L以上の高濃度の水酸化アルカリ水溶液で処理することにより、殻皮を構成するキチン質を可溶化し除去することも同時に行うことができる。
【0028】
本発明の第2の実施の形態に係る樹脂組成物(以下、単に「樹脂組成物」という。)は、熱可塑性樹脂および熱硬化性樹脂の一方または双方からなる樹脂マトリックスと、生物由来の石灰質物質中のタンパク質を除去することにより得られる固体状の炭酸カルシウムとを含んでおり、固体状の炭酸カルシウムの含有率は樹脂組成物全体の1〜70重量である。樹脂組成物は、生物由来の石灰質物質からタンパク質を除去後、所望の大きさおよび形状となるよう粉砕等の処理を行い、得られた固体状の炭酸カルシウムを樹脂マトリックスに配合することにより製造される。
【0029】
本発明の第1の態様に係る卵殻からのタンパク質の除去方法により得られる固体状の卵殻由来の炭酸カルシウム(以下、「固体状の炭酸カルシウム」という。)を所定の大きさに粉砕し、乾燥する。粉砕は、湿式ボールミル型粉砕器等を用いて行うことができる。粉砕物の大きさは、卵殻の用途に応じて適当な値とすることができるが、例えば、平均粒径1〜500μm程度、好ましくは1〜10μm程度の球状または略球状とする。乾燥は、スプレードライヤー等の任意の手段を用いて行うことができる。必要に応じて、高級脂肪酸等の添加剤を適量配合してもよい。
【0030】
このようにして得られた固体状の炭酸カルシウムからはタンパク質がほぼ完全に除去されており、炭酸カルシウムを主成分とする無機粉体として、樹脂やゴムの充填材、消しゴムや練り歯磨きの研磨剤等の用途に用いることができる。タンパク質の含有量は、固体状の炭酸カルシウム全体の1重量%以下、好ましくは0.1重量%以下であり、さらに好ましくは公知の分析法による検出限界以下である。
【0031】
本実施の形態では卵殻を例にとって説明したが、貝殻、サンゴの外骨格等の生物由来の石灰質物質を用いて同様の処理を行うことによっても、含まれるタンパク質がほぼ完全に除去された固体状の炭酸カルシウムを得ることができる。貝殻を用いる場合、2.5mol/L以上の高濃度の水酸化アルカリ水溶液で処理することにより、殻皮を構成するキチン質を可溶化し除去することも同時に行うことができる。
【0032】
樹脂マトリックスに含まれる樹脂は熱可塑性樹脂および熱硬化性樹脂のいずれであってもよい。これらの樹脂のうち1種のみを単独で用いてもよく、任意の2種以上を任意の割合で混合して用いてもよい。熱可塑性樹脂の具体例としては、ポリエチレン(LDPEおよびHDPEのいずれでもよい)、ポリプロピレン、ポリエチレン−ポリプロピレン共重合体、ポリスチレン、ポリアクリロニトリル、ポリ酢酸メチル、ポリ塩化ビニル、ポリメチルメタクリレート、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、AS樹脂、ABS樹脂、熱可塑性エラストマー等が挙げられる。また、熱硬化性樹脂の具体例としては、フェノール樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、ポリウレタン、エポキシ樹脂、ポリイミド等が挙げられる。あるいは、樹脂マトリックスは、天然ゴムまたは各種合成ゴムであってもよい。
【0033】
樹脂マトリックスと固体状の炭酸カルシウムとの混合は、単軸または二軸式エキストルーダー、ニーダー、二本ロール式混練機等の任意の公知の手段を用いて行うことができる。樹脂マトリックスへの添加および混合は、樹脂マトリックスに直接添加することにより行ってもよく、予め作製したマスターバッチを添加することにより行ってもよい。
【実施例】
【0034】
次に、本発明の作用効果を確認するために行った実施例について説明する。
実施例1:卵殻からのタンパク質の除去
粉砕後加熱処理した卵殻粉末1重量部に、水道水、アルカリイオン水(pH12.5)、水酸化ナトリウム水溶液(0.02、0.05、0.1、0.5,1.0、1.5、2.0、2.5mol/L)10重量部を加え、室温で所定時間撹拌後、最大24時間静置後卵殻粉末をろ過後乾燥して、ろ液および乾燥後の卵殻粉末の状態変化(外観および臭気)を観察した。以下にそれらの結果を示す。
【0035】
(1)水道水
卵殻粉末を水道水に加えた直後は、気泡が発生し、卵殻粉末が水に馴染むまでは撹拌が困難であった。10分間撹拌後卵殻粉末をろ過したところ、ろ液および乾燥後の卵殻粉末の両者からタンパク質の熱分解物に由来する不快臭がした。この結果から、水洗を行うだけでは、卵殻および卵殻膜に含まれるタンパク質の分解および除去は困難であることがわかった。
【0036】
(2)アルカリイオン水
10分間撹拌後卵殻粉末をろ過したところ、ろ液は無臭であったが、ろ過後乾燥した卵殻粉末からは、水道水で処理した場合に比べ弱いものの、タンパク質の熱分解物に由来する不快臭がした。この結果から、アルカリイオン水による処理では、卵殻および卵殻膜に含まれるタンパク質の分解および除去は困難であることがわかった。
【0037】
(3)0.2〜1.0mol/L水酸化ナトリウム水溶液
卵殻粉末を加えて1分間撹拌後、目視では卵殻膜の顕著な減少は認められなかった。静置開始から5〜20時間経過後に、卵殻膜の減少が目視で確認されたが、その後24時間経過するまで顕著な変化は認められず、卵殻膜の分解が十分に進まないことが確認された。
【0038】
(4)1.5、2.0mol/L水酸化ナトリウム水溶液
卵殻粉末を加えた直後から1分間撹拌後卵殻膜の顕著な減少が目視で認められた。静置開始から5〜20時間経過後に、卵殻膜の減少および断片化が目視で確認されたが、その後24時間経過するまで顕著な変化は認められず、卵殻膜の分解が完全には進まないことが確認された。
【0039】
(5)2.5mol/L水酸化ナトリウム水溶液
卵殻粉末を加えた直後から1分間撹拌後卵殻膜の顕著な減少が目視で認められた。静置開始から5〜20時間経過後に、卵殻膜の減少および断片化の進行が目視で確認され、24時間後には卵殻表面に付着した卵殻膜が完全に消失した。
【0040】
実施例2:樹脂成形物の製造
実施例1の(5)にしたがって得られた、炭酸カルシウムを主成分とする卵殻粉末(平均流径約5μm程度)を、ポリプロピレン、ポリスチレンおよびABS樹脂に配合し、樹脂成形物を製造した。得られた樹脂成形物は、タンパク質の熱分解物に由来する不快臭を有しておらず、市販の炭酸カルシウムを配合し、同様の条件下で製造した樹脂成形物と同等の性能を示した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭酸カルシウムを主成分とする生物由来の石灰質物質を2.5mol/L以上の水酸化アルカリ水溶液中に浸漬し、該生物由来の石灰質物質中のタンパク質を加水分解し除去することを特徴とする生物由来の石灰質物質からのタンパク質の除去方法。
【請求項2】
前記生物由来の石灰質物質が鳥類の卵殻であることを特徴とする請求項1記載の生物由来の石灰質物質からのタンパク質の除去方法。
【請求項3】
熱可塑性樹脂および熱硬化性樹脂の一方または双方からなる樹脂マトリックスと、請求項1および2のいずれか1項記載の方法により得られる固体状の炭酸カルシウムとを含み、前記固体状の炭酸カルシウムの含有率が樹脂組成物全体の1〜70重量%であることを特徴とする樹脂組成物。
【請求項4】
前記固体状の炭酸カルシウムに含まれるタンパク質の量が1重量%以下であることを特徴とする請求項3記載の樹脂組成物。
【請求項5】
前記樹脂マトリックスが、ポリプロピレン、ポリスチレンおよびABS樹脂からなる群より選択される1または複数であることを特徴とする請求項3および4のいずれか1項記載の樹脂組成物。

【公開番号】特開2011−184269(P2011−184269A)
【公開日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−53882(P2010−53882)
【出願日】平成22年3月10日(2010.3.10)
【出願人】(510066835)株式会社和田木型製作所 (2)
【出願人】(802000031)財団法人北九州産業学術推進機構 (187)
【Fターム(参考)】