説明

生物脱硫装置及び方法

【課題】生物脱硫装置及び方法において、吸収液を加温することなく吸収液の再生を可能とする。
【解決手段】チオバチルス属の硫黄酸化細菌により吸収液を再生処理する第1再生手段6と、チオバチルス属の硫黄酸化細菌よりも至適温度が低いチオプローカ属の硫黄酸化細菌により第1再生手段6から排出された吸収液を更に再生処理する第2再生手段10とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生物脱硫装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、被処理ガスに含まれる硫化水素を吸収液に吸収させ、硫化水素を吸収した吸収液を硫黄酸化細菌によって再生処理する生物脱硫方法が提案されている。
ところで、吸収液の再生に用いられる硫黄酸化細菌は、最も活性化する温度である至適温度が約30℃以上である。
吸収液の循環による温度低下や冬季等の外気温の低下により、何も対策を講じることなく吸収液を30℃に保つことは難しい。このため、特許文献2や特許文献3には、硫黄酸化細菌の存在する生物反応塔を加温して、吸収液を硫黄酸化細菌の至適温度に保つ技術が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3890804号公報
【特許文献2】特開2008−29983号公報
【特許文献3】特開2003−62421号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、生物反応塔を加温するためには、当然ながらその分のエネルギが常に必要となると共に、生物反応塔を断熱材で覆ったり、熱交換器が必要になったりと付帯設備が多く必要となる。また、吸収液の温度が高い場合には、吸収液に対する被処理ガスの溶解度が低下する。
【0005】
本発明は、上述する問題点に鑑みてなされたもので、生物脱硫装置及び方法において、吸収液を加温することなく吸収液の再生を可能とすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明では、生物脱硫装置に係る第1の解決手段として、被処理ガスに含まれる硫化水素を吸収液に吸収させると共に、上記硫化水素を含む吸収液を細菌により再生処理する生物脱硫装置であって、チオバチルス属の硫黄酸化細菌により上記吸収液を再生処理する第1再生手段と、上記チオバチルス属の硫黄酸化細菌よりも至適温度が低いチオプローカ属の硫黄酸化細菌により上記第1再生手段から排出された上記吸収液を更に再生処理する第2再生手段とを備える、という手段を採用する。
【0007】
生物脱硫装置に係る第2の解決手段として、上記第1の解決手段において、上記第2再生手段は、チオプローカ属の硫黄酸化細菌の移動を可能とする砂層を備える、という手段を採用する。
【0008】
生物脱硫装置に係る第3の解決手段として、上記第2の解決手段において、上記第2再生手段は、上記チオプローカ属の硫黄酸化細菌の培地と、当該培地と上記砂層との間に配置される多孔質体とを備える、という手段を採用する。
【0009】
生物脱硫装置に係る第4の解決手段として、上記第1〜第3いずれかの手段において、上記第1再生手段でのみ上記吸収液を曝気する、という手段を採用する。
【0010】
生物脱硫装置に係る第5の解決手段として、上記第1〜第4いずれかの手段において、上記第2再生手段によって再生処理された上記吸収液のpHを再び上記硫化水素を吸収可能に調整するpH調整手段と、当該pH調整手段によってpHが調整された上記吸収液を循環させる循環ポンプとを備える、という手段を採用する。
【0011】
また、本発明では、生物脱硫方法に係る第1の解決手段として、被処理ガスに含まれる硫化水素を吸収液に吸収させると共に、上記硫化水素を含む吸収液を細菌により再生処理する生物脱硫方法であって、チオバチルス属の硫黄酸化細菌により上記吸収液を再生処理する第1再生工程と、上記チオバチルス属の硫黄酸化細菌よりも至適温度が低いチオプローカ属の硫黄酸化細菌により上記第1再生工程が終了した上記吸収液を更に再生処理する第2再生工程とを有する、という手段を採用する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、まずチオバチルス属の硫黄酸化細菌によって吸収液を再生処理する。
チオバチルス属の硫黄酸化細菌は、従来から生物脱硫に用いられている硫黄酸化細菌であり、至適温度が25℃〜30℃で、吸収液に含まれる硫化水素の濃度が高い場合であっても再生処理が可能な細菌である。このチオバチルス属の硫黄酸化細菌は、加温しないがために吸収液の温度が上記至適温度よりも低い場合には、吸収液の再生率(溶存硫化物の除去率)は80%程度となる。つまり、本発明において、吸収液を加温しない場合には、チオバチルス属の硫黄酸化細菌によって再生処理された吸収液の再生率は80%程度となる。
【0013】
また、本発明によれば、チオバチルス属の硫黄酸化細菌によって再生処理された吸収液を更に、チオプローカ属の硫黄酸化細菌によって再生処理する。
チオプローカ属の硫黄酸化細菌は、至適温度が10℃程度あるいはそれ以下の硫黄酸化細菌である。このチオバチルス属の硫黄酸化細菌は、吸収液に含まれる硫化水素の濃度が高い場合には好適に増殖し難いが、硫化水素濃度が20%程度であれば好適に増殖する。
通常、吸収液の温度はチオプローカ属の硫黄酸化細菌の至適温度に収まっている。このため、本発明によれば、上述のチオバチルス属の硫黄酸化細菌によって再生処理された吸収液が次にチオプローカ属の硫黄酸化細菌で再生処理されることによって、吸収液に残存する硫化水素が除去される。
【0014】
つまり、本発明によれば、吸収液を加温しなくとも、先にチオバチルス属の硫黄酸化細菌によって吸収液を再生処理し、続いてチオプローカ属の硫黄酸化細菌によって吸収液を再生処理することによって、吸収液から硫化水素を取り除き、確実に吸収液を再生処理することができる。
したがって、本発明によれば、生物脱硫装置及び方法において、吸収液を加温することなく吸収液の再生することが可能となる。
【0015】
なお、本発明によれば、吸収液を加温しないために、通常、吸収液の温度が10〜25℃程度である。このため、被処理ガスの吸収液に対する溶解度が、吸収液を加温する場合よりも高まり、硫化水素の除去効率を従来よりも向上させることができる。
また、外気温の上昇等により、吸収液の温度がチオプローカ属の硫黄酸化細菌の至適温度以上に上昇した場合であっても、この場合にはチオバチルス属の硫黄酸化細菌の活性が高まるため、十分に吸収液に含まれる硫化水素を除去することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の一実施形態に係る生物脱硫装置の概略構成を示す機能ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照して、本発明に係る生物脱硫装置及び方法の一実施形態について説明する。
本実施形態に係る生物脱硫装置及び方法は、被処理ガスに含まれる硫化水素を吸収液に吸収させて浄化すると共に、硫化水素を含む吸収液を細菌により再生処理するものである。
なお、本実施形態に係る生物脱硫装置及び方法において浄化する被処理ガスは、硫化水素を含有してなるものであれば特に限定されるものではなく、例えば、有機性廃棄物等のバイオマスを分解して得られるバイオガスや、石炭をガス化して得られる石炭ガス化ガスである。
【0018】
図1に示すように、本実施形態に係る生物脱硫装置1は、吸収塔2、給気管3、浄化ガス管4、第1流路5、第1生物反応塔6(第1再生手段)、エア供給管7、エア排気管8、第2流路9、第2生物反応塔10(第2再生手段)、第3流路11、pH調整槽12(pH調整手段)、pH調整剤供給管13、第4流路14、循環ポンプ15、及び第5流路16を備えている。
【0019】
吸収塔2は、吸収液と被処理ガスとを接触させることにより、被処理ガスに含まれる硫化水素を吸収液に吸収させるものである。この吸収塔2は、内部に、被処理ガスと吸収液とを効率的に接触させるための例えば多孔質体等からなる充填材2aと、上部から吸収液を散布するノズルヘッド2bとを備えている。
【0020】
給気管3は、吸収塔2の内部に被処理ガスを供給するための配管であり、吸収塔2の下部に接続されている。
浄化ガス管4は、被処理ガスが吸収液に硫化水素を吸収されて浄化された浄化ガスを吸収塔2の外部に排気するための配管であり、吸収塔2の上部に接続されている。
【0021】
第1流路5は、吸収塔2から第1生物反応塔6に吸収液を供給するための流路であり、吸収塔2の底部と第1生物反応塔6の底部とを接続している。
【0022】
第1生物反応塔6は、チオバチルス(Thiobacillus)属の硫黄酸化細菌により吸収液を再生処理するものであり、内部にチオバチルス属の硫黄酸化細菌を含む吸収液を貯留している。
なお、チオバチルス属の硫黄酸化細菌は、従来から生物脱硫に用いられている硫黄酸化細菌であり、至適温度が25℃〜30℃で、吸収液に含まれる硫化水素の濃度が高い場合であっても再生処理が可能な細菌である。このチオバチルス属の硫黄酸化細菌は、加温しないがために吸収液の温度が上記至適温度よりも低い場合には、吸収液の再生率(溶存硫化物の除去率)は80%程度となる。
そして、本実施形態の生物脱硫装置1では、吸収液の加温を行わないため、第1生物反応塔では、吸収液の再生率は80%程度となる。
【0023】
エア供給管7は、第1生物反応塔6の内部を曝気するための空気を第1生物反応塔6の内部に送り込む配管であり、第1生物反応塔6の底部に接続されている。
なお、第1生物反応塔6の内部に存在するチオバチルス属の硫黄酸化細菌は、吸収液の溶存酸素濃度が1〜2mg/L程度で活性化する。このため、エア供給管7から供給する空気の流量は、第1生物反応塔6の内部の吸収液の溶存酸素濃度が1〜2mg/L程度となるように設定されている。
また、本実施形態の生物脱硫装置1において、エア供給管7は、第1生物反応塔6のみに接続されている。つまり、本実施形態の生物脱硫装置1においては、第1生物反応塔6でのみ吸収液を曝気している。
【0024】
エア排気管8は、第1生物反応塔6内部の空気を外部に排気するための配管であり、第1生物反応塔6の上部と接続されている。
【0025】
第2流路9は、第1生物反応塔6から第2生物反応塔10に吸収液を供給するための配管であり、第1生物反応塔6の底部と第2生物反応塔10の底部とに接続されている。
【0026】
第2生物反応塔10は、第1生物反応塔6のチオバチルス属の硫黄酸化細菌よりも至適温度が低いチオプローカ(Thioploca)属の硫黄酸化細菌により、第1生物反応塔6から排出された吸収液を更に再生処理するものである。
【0027】
なお、チオプローカ属の硫黄酸化細菌は、至適温度が10℃程度あるいはそれ以下の硫黄酸化細菌である。このチオバチルス属の硫黄酸化細菌は、吸収液に含まれる硫化水素の濃度が高い場合には好適に増殖し難いが、硫化水素濃度が20%程度であれば好適に増殖する。
本実施形態においては、上述のように、第1生物反応塔6にて、吸収液に含まれる硫化水素が80%程度除去される。このため、第2生物反応塔10に供給される吸収液に含まれる硫化水素濃度が20%程度であり、第2生物反応塔10内部の環境は、チオプローカ属の硫黄酸化細菌が好適に増殖可能な環境となっている。
【0028】
また、チオプローカ属の硫黄酸化細菌は、微好気性の細菌である。これに対して、本実施形態の生物脱硫装置1においては、第1生物反応塔6においてのみ吸収液の曝気を行っている。このため、吸収液に含まれる溶存酸素は、第1生物反応塔6のチオバチルス属の硫黄酸化細菌で多くが消費される。したがって、第2生物反応塔10に供給される吸収液の溶存酸素濃度が低くなり、第2生物反応塔10内部の環境は、チオプローカ属の硫黄酸化細菌がより好適に増殖可能な環境となっている。
より詳細には、チオプローカ属の硫黄酸化細菌が必要とする溶存酸素濃度は、0.16mg/L以下である。そして、上述のように、第1生物反応塔6において、吸収液の溶存酸素濃度を1〜2mg/L程度とすることにより、第2生物反応塔10における吸収液の溶存酸素濃度は、0.16mg/L以下となる。
【0029】
具体的には、このチオプローカ属の硫黄酸化細菌として、Thioploca schumidlei、Thioploca ingrica、Thioploca minima等を用いることができる。
なお、チオプローカ属の硫黄酸化細菌のより詳細な説明については、下記文献1,2に記載されている。
文献1:琵琶湖研究所記念誌(所報22号)197−200,2005、第4部 湖内の研究、13章 湖の生物現象、「13.3 チオプローカ研究」、中島拓男
文献2:琵琶湖研究所所報第19号、p.18−35、北湖深底部の低酸素化に伴う生態系変化の解明、西野真知子 他4名
【0030】
なお、チオプローカ属の硫黄酸化細菌の単離培養が難しい場合には、第2生物反応塔10にチオプローカ属の硫黄酸化細菌の生存を助ける他の細菌を共存させるようにしても良い。
【0031】
図1に示すように、第2生物反応塔10は、内部に、砂層10aと、培地10bと、仕切り板10c(多孔質体)とを備えている。
【0032】
砂層10aは、チオプローカ属の硫黄酸化細菌の移動を可能とするものであり、第1生物反応塔10の下部に設けられている。チオプローカ属の硫黄酸化細菌は、砂層を移動しながら最も好適に増殖可能な領域を探す性質を有している。このため、砂層10aを設置することによって、第2生物反応塔10に供給される吸収液の硫化水素濃度が変動する場合であっても、第2生物反応塔10のチオプローカ属の硫黄酸化細菌は、最も好適に増殖できる領域に自ら移動する。よって、第2生物反応塔10におけるチオプローカ属の硫黄酸化細菌の個体数を十分に確保することができ、吸収液の硫化水素濃度の変動に関わらず、常に良好に再生処理を行うことができる。
【0033】
培地10bは、チオプローカ属の硫黄酸化細菌の栄養素を含むものであり、第2生物反応塔10の上部に設けられている。
仕切り板10cは、多孔質体からなる板であり、砂層10aと培地10bとの間に配置されている。この仕切り板10cによって、砂層10aと培地10bとが混合することを抑止しつつ、第2生物反応塔10内において吸収液を自由に移動させることができる。
【0034】
第3流路11は、第2生物反応塔10からpH調整槽12に吸収液を供給するための流路であり、第2生物反応塔10からオーバフローした吸収液をpH調整槽12に供給すべく、第1生物反応塔10の上部とpH調整槽12の上部とに接続されている。
【0035】
pH調整槽12は、第2生物反応塔10から供給された吸収液のpHを再び吸収液が硫化水素を吸収可能に調整するためのものである。具体的には吸収液をpH7に調整する。
pH調整剤供給管13は、pH調整槽12の内部にpH調整剤を供給するための配管であり、pH調整槽12の上部に接続されている。具体的には、例えば、pH調整剤として水酸化ナトリウム溶液(NaOH溶液)を供給する。
【0036】
第4流路14は、pH調整槽12と循環ポンプ15とを接続する流路であり、pH調整槽12の下部に接続されている。
循環ポンプ15は、pH調整槽12においてpH調整された吸収液を第4流路14を介して取り込み、循環させるために圧送するものである。
第5流路16は、循環ポンプ15と、吸収塔2のノズルヘッド2bとを接続する流路である。
【0037】
なお、吸収液としては、被処理ガス中の硫化水素を吸収可能な液体であれば特に限定されるものではなく、水を主体とする液体である。この吸収液は、チオバチルス属の硫黄酸化細菌あるいはチオプローカ属の硫黄酸化細菌の栄養源を含んでいてもよい。
【0038】
次に、このように構成された本実施形態の生物脱硫装置1の動作(生物脱硫方法)について説明する。
【0039】
まず吸収塔2のノズルヘッド2bに吸収液が供給されると、ノズルヘッド2bから吸収液が散布され、給気管3から供給された被処理ガスが吸収液と接触し、被処理ガスに含まれる硫化水素が吸収液に吸収される。
そして、硫化水素が吸収されることによって被処理ガスである浄化ガスは、浄化ガス管4を介して外部に排出される。
【0040】
一方、被処理ガスに含まれる硫化水素を吸収した吸収液は、第1流路5を介して吸収塔2から第1生物反応塔6に供給され、チオバチルス属の硫黄酸化細菌により吸収液の再生処理が行われる(第1再生工程)。
ここで、第1生物反応塔6には、チオバチルス属の硫黄酸化細菌が存在し、チオバチルス属の硫黄酸化細菌が活性化する溶存酸素量を確保するために、エア供給管7から空気が供給されて曝気されている。ただし、本実施形態の生物脱硫装置1及び方法においては、吸収液の加温を行わないため、第1生物反応塔6の内部の温度は、チオバチルス属の硫黄酸化細菌の至適温度よりも低い温度となる。この結果、第1生物反応塔6においては、吸収液に含まれる硫化水素の80%程度が除去されることとなり、吸収液が完全ではないものの再生される。
なお、第1生物反応塔6に供給された空気のうち、吸収液に溶け込まなかった分は、エア排気管8を介して外部に排気される。
【0041】
第1生物反応塔6にて硫化水素が80%程度除去された吸収液は、第2流路9を介して第2生物反応塔10に供給され、チオプローカ属の硫黄酸化細菌により吸収液の再生処理が行われる(第2再生工程)。
ここで、第2生物反応塔6には、チオプローカ属の硫黄酸化細菌が存在している。このチオプローカ属の硫黄酸化細菌は、上述のように、チオバチルス属の硫黄酸化細菌よりも至適温度が低く、通常、供給される吸収液の温度で活性化する。そして、硫化水素濃度が20%程度の吸収液に含まれる硫化水素を除去する能力を有している。このため、第2生物反応塔10において、吸収液に含まれる硫化水素は全て除去され、吸収液が再生される。
【0042】
第2生物反応塔6にて再生された吸収液は、第3流路11を介して第2生物反応塔10からpH調整槽12に供給される。
ここで、吸収液は、pH調整剤供給管13を介して供給されたpH調整剤と混合されてpH7に調整される。
【0043】
そして、pHが調整された吸収液は、第4流路14を介して循環ポンプ15に取り込まれ、第5流路16を介して吸収塔2のノズルヘッド2bに圧送されて循環される。
【0044】
以上のような本実施形態の生物脱硫装置1及び方法によれば、吸収液を加温しなくとも、先にチオバチルス属の硫黄酸化細菌によって吸収液を再生処理し、続いてチオプローカ属の硫黄酸化細菌によって吸収液を再生処理することによって、吸収液から硫化水素を取り除き、確実に吸収液を再生処理することができる。
したがって、本実施形態の生物脱硫装置1及び方法によれば、吸収液を加温することなく吸収液を再生することが可能となる。
【0045】
また、本実施形態の生物脱硫装置1及び方法によれば、吸収液を加温しないために、通常、吸収液の温度が10〜25℃程度である。このため、被処理ガスの吸収液に対する溶解度が、吸収液を加温する場合よりも高まり、硫化水素の除去効率を従来よりも向上させることができる。
また、外気温の上昇等により、吸収液の温度がチオプローカ属の硫黄酸化細菌の至適温度以上に上昇した場合であっても、この場合にはチオバチルス属の硫黄酸化細菌の活性が高まるため、吸収液に含まれる硫化水素を十分に除去することができる。
【0046】
また、本実施形態の生物脱硫装置1では、第2生物反応塔10が、チオプローカ属の硫黄酸化細菌の移動を可能とする砂層10aを備えている。
このため、第2生物反応塔10に供給される吸収液の硫化水素濃度が変動する場合であっても、硫化水素の除去に最適な位置にチオプローカ属の硫黄酸化細菌が移動し、常に安定して吸収液の再生を行うことができる。
したがって、第1生物反応塔6から第2生物反応塔10に供給する吸収液の硫化水素濃度を調節する装置を別途設ける必要はない。
【0047】
また、本実施形態の生物脱硫装置1では、第2生物反応塔10が、チオプローカ属の硫黄酸化細菌の培地10bと、培地10bと砂層10aとの間に配置される仕切り板10cとを備えている。
このため、砂層10aと培地10bとが混合されることなく、チオプローカ属の硫黄酸化細菌を増殖させることが可能となる。
【0048】
また、本実施形態の生物脱硫装置1では、第1生物反応塔6においてのみ吸収液を曝気した。
このため、第2生物反応塔10において、吸収液の溶存酸素濃度を微好気性のチオプローカ属の硫黄酸化細菌に適した濃度にすることができる。
【0049】
また、本実施形態の生物脱硫装置1では、第2生物反応塔10で再生処理された吸収液のpHを再び硫化水素を吸収可能に調整するpH調整槽12と、当該pH調整槽12によってpHが調整された吸収液を循環させる循環ポンプ15とを備える。
このため、再生した吸収液を繰り返し、被処理ガスに含まれる硫化水素の吸収に使用することが可能となる。
【0050】
以上、図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。上述した実施形態において示した各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本発明の主旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。
【0051】
例えば、上記実施形態においては、第2生物反応塔10が、砂層10a、培地10b及び仕切り板10cを備える構成について説明した。
しかしながら、本発明はこれに限定されるものではなく、第2生物反応塔10が他の構成を有していても良く。例えば、吸収液中にチオプローカ属の硫黄酸化細菌が存在するだけの構成や、担持体にてチオプローカ属の硫黄酸化細菌を担持する構成を採用することもできる。
【0052】
また、上記実施形態においては、第1生物反応塔6においてのみ吸収液を曝気する構成について説明した。
しかしながら、本発明はこれに限定されるものではなく、第2生物反応塔10における溶存酸素濃度があまりにも低い場合には、第2生物反応塔10あるいは第2流路9において吸収液を曝気するようにしても良い。
【符号の説明】
【0053】
1……生物脱硫装置、2……吸収塔、3……給気管、4……浄化ガス管、5……第1流路、6……第1生物反応塔(第1再生手段)、7……エア供給管、8……エア排気管、9……第2流路、10……第2生物反応塔(第2再生手段)、10a……砂槽、10b……培地、10c……仕切り板(多孔質体)、11……第3流路、12……pH調整槽(pH調整手段)、13……pH調整剤供給管、14……第4流路、15……循環ポンプ、16……第5流路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被処理ガスに含まれる硫化水素を吸収液に吸収させると共に、前記硫化水素を含む吸収液を細菌により再生処理する生物脱硫装置であって、
チオバチルス属の硫黄酸化細菌により前記吸収液を再生処理する第1再生手段と、
前記チオバチルス属の硫黄酸化細菌よりも至適温度が低いチオプローカ属の硫黄酸化細菌により前記第1再生手段から排出された前記吸収液を更に再生処理する第2再生手段と
を備えることを特徴とする生物脱硫装置。
【請求項2】
前記第2再生手段は、
チオプローカ属の硫黄酸化細菌の移動を可能とする砂層を備えることを特徴とする請求項1記載の生物脱硫装置。
【請求項3】
前記第2再生手段は、
前記チオプローカ属の硫黄酸化細菌の培地と、
当該培地と前記砂層との間に配置される多孔質体とを備えることを特徴とする請求項2記載の生物脱硫装置。
【請求項4】
前記第1再生手段でのみ前記吸収液を曝気することを特徴とする請求項1〜3いずれかに記載の生物脱硫装置。
【請求項5】
前記第2再生手段によって再生処理された前記吸収液のpHを再び前記硫化水素を吸収可能に調整するpH調整手段と、
当該pH調整手段によってpHが調整された前記吸収液を循環させる循環ポンプと
を備えることを特徴とする請求項1〜4いずれかに記載の生物脱硫装置。
【請求項6】
被処理ガスに含まれる硫化水素を吸収液に吸収させると共に、前記硫化水素を含む吸収液を細菌により再生処理する生物脱硫方法であって、
チオバチルス属の硫黄酸化細菌により前記吸収液を再生処理する第1再生工程と、
前記チオバチルス属の硫黄酸化細菌よりも至適温度が低いチオプローカ属の硫黄酸化細菌により前記第1再生工程が終了した前記吸収液を更に再生処理する第2再生工程と
を有することを特徴とする生物脱硫方法。

【図1】
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【公開番号】特開2012−35212(P2012−35212A)
【公開日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−178687(P2010−178687)
【出願日】平成22年8月9日(2010.8.9)
【出願人】(000000099)株式会社IHI (5,014)
【Fターム(参考)】