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生理活性ペプチド及びその用途
説明

生理活性ペプチド及びその用途

【課題】エネルギー代謝調節活性または循環調節活性を有する新規なペプチドを提供する。
【解決手段】特定のアミノ酸配列からなるペプチドまたはその薬理学的に許容される塩、および該ペプチド等を有効成分として含むエネルギー代謝調節剤または循環調節剤。また該ペプチドまたはその塩を利用する、該ペプチドの活性を促進または抑制する物質あるいは該ペプチドの受容体に対するアゴニストまたはアンタゴニストのスクリーニング方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生理活性ペプチド、該ペプチドをコードするポリヌクレオチド、該ペプチドの製造方法、該ペプチドを含む医薬、該ペプチドの活性を阻害または促進する物質のスクリーニング方法、および該ペプチドの受容体に対するアゴニストまたはアンタゴニストのスクリーニング方法等に関する。
【背景技術】
【0002】
生体内におけるエネルギー代謝調節の異常は、肥満症、拒食症などの摂食障害や摂水障害、代謝障害、睡眠障害を引き起こす。また生体内における血液循環調節の異常は、高血圧症などを引き起こし、心筋梗塞、虚血性心疾患、脳梗塞などの重篤な疾患の発症につながり得る。したがって、生体の恒常性維持に関わるこれらの調節機能における異常は、日常生活に支障を来たすのみならず、死につながる場合もあるため、社会的に大きな問題となっている。
【0003】
視床下部や下垂体は、ホルモンや神経伝達物質などの生理活性ペプチドを産生、受容する組織である。視床下部や下垂体で産生、受容される生理活性ペプチドにより、生体の恒常性の調節が行われている。
視床下部や下垂体で産生される生理活性ペプチドとしては、例えば甲状腺刺激ホルモン放出ホルモン(TRH)、ゴナドトロピン放出ホルモン(GnRH)、コルチコトロピン放出ホルモン(CRH)、成長ホルモン放出ホルモン(GRH)、ソマトスタチン(成長ホルモン抑制ホルモン)、プロラクチン抑制ホルモン(PIH)、プロラクチン放出ホルモン(PRH)、ニューロペプチドY(NPY)、オレキシン(OX)、メラニン凝集ホルモン(MCH)、アグーチ関連蛋白質(AGRP)、色素細胞刺激ホルモン(MSH)、コカインアンフェタミン調節転写産物(CART)などが知られている。
【0004】
視床下部や下垂体に発現が確認されている生理活性ペプチドの受容体としては、1型ニューロメジンU受容体(NMU1R)、2型ニューロメジンU受容体(NMU2R)、グレリン受容体、1型オレキシン受容体(OX1R)、2型オレキシン受容体(OX2R)、1型ニューロペプチドY受容体(NPY1R)、5型ニューロペプチドY受容体(NPY5R)、4型メラノコルチン受容体(MC4R)、1型コルチコトロピン放出ホルモン受容体(CRHR−1)、2型コルチコトロピン放出ホルモン受容体(CRHR−2)などがある。
【0005】
このような生理活性ペプチド受容体とリガンドである生理活性ペプチドが相互作用することにより種々の細胞内シグナル伝達反応が引き起こされるが、特に細胞内カルシウム濃度の上昇を介するシグナル伝達反応が著名な反応である。
【0006】
視床下部や下垂体においては、例えば1型ニューロメジンU受容体(NMU1R)、2型ニューロメジンU受容体(NMU2R)、グレリン受容体、1型オレキシン受容体(OX1R)、2型オレキシン受容体(OX2R)などがリガンドである個々の生理活性ペプチドと結合すると、細胞内カルシウム濃度の上昇が引き起こされる。この細胞内カルシウム濃度の上昇がセカンドメッセンジャーとなって、さらに生体の恒常性調節のための反応が引き起こされる。例えば、1型ニューロメジンU受容体(NMU1R)、2型ニューロメジンU受容体(NMU2R)、グレリン受容体は摂食反応の調節を行い、また1型オレキシン受容体(OX1R)、2型オレキシン受容体(OX2R)は摂食反応や覚醒、動機付け反応の調節を行うことが知られている。
【0007】
一方、心筋、骨格筋、平滑筋での筋収縮はアクチンフィラメントとミオシンフィラメントの相互作用により引き起こされるが、その相互作用は細胞内のカルシウム濃度の上昇が引き金となっている。したがって筋細胞内でのカルシウム濃度の上昇を引き起こす物質は筋収縮剤として利用される。特に心筋や血管平滑筋などの循環組織でカルシウム濃度の上昇をもたらす物質は、筋収縮亢進に伴う血圧上昇などの循環調節作用を有する。
例えばエンドセリンやアンジオテンシンIIなどの生理活性ペプチドは、腎臓を含む循環組織に発現されている各受容体と相互作用することにより細胞内カルシウム濃度の上昇を引き起こし、血圧上昇などをもたらすことが知られている。
また副腎は、糖質ステロイドや鉱質ステロイドの産生、およびカテコラミンの産生・分泌などを制御し、このような作用を通して体液量、電解質濃度、心拍数や血圧などが制御される。このように副腎も循環調節に関与する組織の一つである。
【0008】
CCDC80(coiled−coil domain containing 80)遺伝子は、未分化のヒト骨髄ストローマ細胞で高発現している遺伝子として同定された(非特許文献1)。本遺伝子は、白色脂肪組織、肺、骨髄ストローマや心線維芽細胞などで発現が高い(非特許文献2)。ヒトCCDC80遺伝子がコードするタンパク質は、950アミノ酸残基からなり、分子量およそ150kDaの分泌糖タンパク質である。
【0009】
脂肪前駆細胞3T3−L1細胞の脂肪細胞への分化過程では、分化直前および分化成熟後にCCDC80遺伝子の発現が高いことが報告されており、また本遺伝子をノックダウンすると脂肪分化が抑制されることから、CCDC80は脂肪分化をコントロールすると考えられている(非特許文献3)。
しかしCCDC80タンパク質から派生する生理活性ペプチドの存在は知られておらず、もちろん派生するペプチドの機能に関する報告も存在しない。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】ジャーナル・オブ・セリュラー・バイオケミストリー(Journal of Cellular Biochemistry),(米国),2004年,第92巻,第4号,p.733−744
【非特許文献2】バイオケミカル・アンド・バイオフィジカル・リサーチ・コミュニケーションズ(Biochemical and Biophysical Research Communications),(米国),2008年,第367巻,第2号,p.370−376
【非特許文献3】ザ・ジャーナル・オブ・バイオロジカル・ケミストリー(The Journal of Biological Chemistry),(米国),2009年,第284巻,第12号,p.8136−8147
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、摂食亢進、摂食抑制、飲水亢進、飲水抑制、睡眠誘起、覚醒亢進、代謝亢進、もしくは代謝抑制などのエネルギー代謝調節または循環調節に有用な化合物、及び該化合物を含む医薬を提供することを目的とする。さらに、本発明は、それらの化合物の作用を調節する物質のスクリーニング方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討したところ、ラット非心筋初代培養細胞においてCCDC80に由来するペプチドが培地中に分泌されていることを見出した。それらのペプチドの生理活性を詳細に解析したところ、エネルギー代謝調節系に関与する臓器である視床下部または下垂体、循環器系に関与する臓器である副腎、腎臓、心臓または血管の細胞において、細胞内のカルシウムイオンの濃度を上昇させる活性を有していることが判明した。本発明者らは、これらの知見に基づき更に検討を進め、本発明を完成するに到った。
【0013】
即ち、本発明は以下の通りである。
[1]以下の(a)〜(d)から選択されるいずれかのペプチドまたはその薬理学的に許容される塩:
(a)配列番号1〜7のいずれかで表されるアミノ酸配列からなるペプチド;
(b)配列番号1〜7のいずれかで表されるアミノ酸配列を含み、かつ長さが80アミノ酸以下であるペプチド;
(c)配列番号1〜7のいずれかで表されるアミノ酸配列において、1〜5個のアミノ酸が置換、欠失もしくは付加されたアミノ酸配列を含み、哺乳動物の視床下部、下垂体、副腎、腎臓、心臓、血管または脳組織内の細胞の細胞内カルシウムイオン濃度を上昇させる活性を有し、かつ長さが80アミノ酸以下であるペプチド;および
(d)配列番号1〜7のいずれかで表されるアミノ酸配列と54%以上の同一性を有するアミノ酸配列を含み、哺乳動物の視床下部、下垂体、副腎、腎臓、心臓、血管または脳組織内の細胞の細胞内カルシウムイオン濃度を上昇させる活性を有し、かつ長さが80アミノ酸以下であるペプチド。
[2]下記式(I):
【0014】
【化1】

【0015】
(式中、R1は水素原子、置換もしくは非置換のアルカノイル、置換もしくは非置換のアロイル、置換もしくは非置換のヘテロアリールカルボニル、置換もしくは非置換のアルコキシカルボニル、置換もしくは非置換のアリールオキシカルボニル、または置換もしくは非置換のヘテロアリールオキシカルボニルを表し、R2はヒドロキシ、置換もしくは非置換のアルコキシ、または置換もしくは非置換のアミノを表し、Aは請求項1(a)〜(d)のいずれかに記載のペプチドのペプチド残基を表す。)
で表されるペプチドまたはその薬理学的に許容される塩。
[3][1]に記載のペプチドをコードするヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチド。
[4][3]に記載のポリヌクレオチドを含むベクター。
[5][4]に記載のベクターが導入された形質転換体。
[6][5]に記載の形質転換体を培養し、培養物中に[1]に記載のペプチドを生成蓄積させ、該培養物から該ペプチドを単離することを含む、[1]に記載のペプチドの製造方法。
[7]以下の(a)〜(d)のいずれかのペプチドまたはその薬理学的に許容される塩を含む医薬:
(a)配列番号1〜7のいずれかで表されるアミノ酸配列からなるペプチド;
(b)配列番号1〜7のいずれかで表されるアミノ酸配列を含むペプチド;
(c)配列番号1〜7のいずれかで表されるアミノ酸配列において、1〜5個のアミノ酸が置換、欠失もしくは付加されたアミノ酸配列を含み、かつ、哺乳動物の視床下部、下垂体、副腎、腎臓、心臓、血管または脳組織内の細胞の細胞内カルシウムイオン濃度を上昇させる活性を有するペプチド;および
(d)配列番号1〜7のいずれかで表されるアミノ酸配列と54%以上の同一性を有するアミノ酸配列を含み、かつ、哺乳動物の視床下部、下垂体、副腎、腎臓、心臓、血管または脳組織内の細胞の細胞内カルシウムイオン濃度を上昇させる活性を有するペプチド。
[8]下記式(II):
【0016】
【化2】

【0017】
(式中、R3は水素原子、置換もしくは非置換のアルカノイル、置換もしくは非置換のアロイル、置換もしくは非置換のヘテロアリールカルボニル、置換もしくは非置換のアルコキシカルボニル、置換もしくは非置換のアリールオキシカルボニル、または置換もしくは非置換のヘテロアリールオキシカルボニルを表し、R4はヒドロキシ、置換もしくは非置換のアルコキシ、または置換もしくは非置換のアミノを表し、Bは[7](a)〜(d)のいずれかのペプチドのペプチド残基を表す。)
で表されるペプチドまたはその薬理学的に許容される塩を含む、医薬。
[9]エネルギー代謝調節剤である、[7]に記載の医薬。
[10]循環調節剤である、[7]に記載の医薬。
[11]以下の(a)〜(d)のいずれかのペプチドまたはその薬理学的に許容される塩および被験物質を、哺乳動物の視床下部、下垂体、副腎、腎臓、心臓、血管または脳組織内の細胞に接触させた場合の細胞応答を測定する工程、該ペプチドまたはその薬理学的に許容される塩を該被験物質の非存在下で該細胞に接触させた場合の細胞応答と比較して、細胞応答が抑制される場合の該被験物質を該ペプチドによる哺乳動物の視床下部、下垂体、副腎、腎臓、心臓、血管または脳組織内の細胞の細胞内カルシウムイオン濃度の上昇を阻害する物質として特定する工程を含む、該ペプチドまたはその薬理学的に許容される塩による哺乳動物の視床下部、下垂体、副腎、腎臓、心臓、血管または脳組織内の細胞の細胞内カルシウムイオン濃度の上昇を阻害する物質のスクリーニング方法:
(a)配列番号1〜7のいずれかで表されるアミノ酸配列からなるペプチド;
(b)配列番号1〜7のいずれかで表されるアミノ酸配列を含むペプチド;
(c)配列番号1〜7のいずれかで表されるアミノ酸配列において、1〜5個のアミノ酸が置換、欠失もしくは付加されたアミノ酸配列を含み、かつ、哺乳動物の視床下部、下垂体、副腎、腎臓、心臓、血管または脳組織内の細胞の細胞内カルシウムイオン濃度を上昇させる活性を有するペプチド;および
(d)配列番号1〜7のいずれかで表されるアミノ酸配列と54%以上の同一性を有するアミノ酸配列を含み、かつ、哺乳動物の視床下部、下垂体、副腎、腎臓、心臓、血管または脳組織内の細胞の細胞内カルシウムイオン濃度を上昇させる活性を有するペプチド。
[12]以下の(a)〜(d)のいずれかのペプチドまたはその薬理学的に許容される塩および被験物質を、哺乳動物の視床下部、下垂体、副腎、腎臓、心臓、血管または脳組織内の細胞に接触させた場合の細胞応答を測定する工程、該ペプチドまたはその薬理学的に許容される塩を該被験物質の非存在下で該細胞に接触させた場合の細胞応答と比較して、細胞応答が促進される場合の該被験物質を該ペプチドによる哺乳動物の視床下部、下垂体、副腎、腎臓、心臓、血管または脳組織内の細胞の細胞内カルシウムイオン濃度の上昇を促進する物質として特定する工程を含む、該ペプチドまたはその薬理学的に許容される塩による哺乳動物の視床下部、下垂体、副腎、腎臓、心臓、血管または脳組織内の細胞の細胞内カルシウムイオン濃度の上昇を促進する物質のスクリーニング方法:
(a)配列番号1〜7のいずれかで表されるアミノ酸配列からなるペプチド;
(b)配列番号1〜7のいずれかで表されるアミノ酸配列を含むペプチド;
(c)配列番号1〜7のいずれかで表されるアミノ酸配列において、1〜5個のアミノ酸が置換、欠失もしくは付加されたアミノ酸配列を含み、かつ、哺乳動物の視床下部、下垂体、副腎、腎臓、心臓、血管または脳組織内の細胞の細胞内カルシウムイオン濃度を上昇させる活性を有するペプチド;および
(d)配列番号1〜7のいずれかで表されるアミノ酸配列と54%以上の同一性を有するアミノ酸配列を含み、かつ、哺乳動物の視床下部、下垂体、副腎、腎臓、心臓、血管または脳組織内の細胞の細胞内カルシウムイオン濃度を上昇させる活性を有するペプチド。
[13]以下の(a)〜(d)のいずれかのペプチドまたはその薬理学的に許容される塩および被験物質を、哺乳動物の視床下部、下垂体、副腎、腎臓、心臓、血管もしくは脳組織内の細胞、または該細胞の膜画分に接触させた場合の該細胞または該細胞の膜画分に対する、該ペプチドまたはその薬理学的に許容される塩の結合量を測定する工程、該ペプチドまたはその薬理学的に許容される塩を該被験物質の非存在下で該細胞または該細胞の膜画分に接触させた場合の該ペプチドまたはその薬理学的に許容される塩の結合量と比較して、結合量が低下する場合の該被験物質を該ペプチドの受容体に対するアゴニストまたはアンタゴニストとして特定する工程を含む、該ペプチドの受容体に対するアゴニストまたはアンタゴニストのスクリーニング方法:
(a)配列番号1〜7のいずれかで表されるアミノ酸配列からなるペプチド;
(b)配列番号1〜7のいずれかで表されるアミノ酸配列を含むペプチド;
(c)配列番号1〜7のいずれかで表されるアミノ酸配列において、1〜5個のアミノ酸が置換、欠失もしくは付加されたアミノ酸配列を含み、かつ、哺乳動物の視床下部、下垂体、副腎、腎臓、心臓、血管または脳組織内の細胞の細胞内カルシウムイオン濃度を上昇させる活性を有するペプチド;
(d)配列番号1〜7のいずれかで表されるアミノ酸配列と54%以上の同一性を有するアミノ酸配列を含み、かつ、哺乳動物の視床下部、下垂体、副腎、腎臓、心臓、血管または脳組織内の細胞の細胞内カルシウムイオン濃度を上昇させる活性を有するペプチド。
[14]以下の(a)〜(d)のいずれかのペプチドを特異的に認識する抗体:
(a)配列番号1〜7のいずれかで表されるアミノ酸配列からなるペプチド;
(b)配列番号1〜7のいずれかで表されるアミノ酸配列を含み、かつ長さが80アミノ酸以下であるペプチド;
(c)配列番号1〜7のいずれかで表されるアミノ酸配列において、1〜5個のアミノ酸が置換、欠失もしくは付加されたアミノ酸配列を含み、哺乳動物の視床下部、下垂体、副腎、腎臓、心臓、血管または脳組織内の細胞の細胞内カルシウムイオン濃度を上昇させる活性を有し、かつ長さが80アミノ酸以下であるペプチド;および
(d)配列番号1〜7のいずれかで表されるアミノ酸配列と54%以上の同一性を有するアミノ酸配列を含み、哺乳動物の視床下部、下垂体、副腎、腎臓、心臓、血管または脳組織内の細胞の細胞内カルシウムイオン濃度を上昇させる活性を有し、かつ長さが80アミノ酸以下であるペプチド。
【発明の効果】
【0018】
本発明により、視床下部、下垂体、副腎、腎臓、心臓、血管または脳組織内の細胞の細胞内カルシウムイオン濃度を上昇させる活性を有する新規ペプチド、該ペプチドをコードするDNA、該ペプチドの製造方法、該ペプチドを含む医薬が提供される。本発明のペプチドは、エネルギー代謝調節活性または循環調節活性を有するので、肥満症、拒食症などの摂食障害や摂水障害、代謝障害、睡眠障害などのエネルギー代謝調節系の疾患、または心筋梗塞、虚血性心疾患、脳梗塞等の循環器系疾患の治療に有用である。また本発明により、上記本発明のペプチドの活性を促進または抑制する物質や、該ペプチドの受容体に対するアゴニスト又はアンタゴニストのスクリーニング方法が提供される。本発明のスクリーニング方法により得られる物質は、摂食調節剤、摂水調節剤、代謝調節剤、循環調節剤、昇圧剤、エネルギー代謝調節系の疾患の治療薬、循環器系疾患の治療薬、または降圧剤の候補物質として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】図1は、1μmol/Lのペプチド2(配列番号2)による、アポエクオリン発現マウスの脾臓の細胞の細胞内カルシウム濃度の上昇を示す。横軸は、培地添加後の時間(秒)、縦軸は毎秒の相対発光量(RLU)である。25秒でペプチド2を添加した。
【図2】図2は、1μmol/Lのペプチド2による、アポエクオリン発現マウスの下垂体の細胞の細胞内カルシウム濃度の上昇を示す。横軸は、培地添加後の時間(秒)、縦軸は毎秒の相対発光量(RLU)である。25秒でペプチド2を添加した。
【図3】図3は、1μmol/Lのペプチド5(配列番号5)による、アポエクオリン発現マウスの心臓の細胞の細胞内カルシウム濃度の上昇を示す。横軸は、培地添加後の時間(秒)、縦軸は毎秒の相対発光量(RLU)である。25秒でペプチド5を添加した。
【図4】図4は、1μmol/Lのペプチド5による、アポエクオリン発現マウスの腎臓の細胞の細胞内カルシウム濃度の上昇を示す。横軸は、培地添加後の時間(秒)、縦軸は毎秒の相対発光量(RLU)である。25秒でペプチド5を添加した。
【図5】図5は、1μmol/Lのペプチド5による、アポエクオリン発現マウスの視床下部の細胞の細胞内カルシウム濃度の上昇を示す。横軸は、培地添加後の時間(秒)、縦軸は毎秒の相対発光量(RLU)である。25秒でペプチド5を添加した。
【図6】図6は、1μmol/Lのペプチド5による、アポエクオリン発現マウスの副腎の細胞の細胞内カルシウム濃度の上昇を示す。横軸は、培地添加後の時間(秒)、縦軸は毎秒の相対発光量(RLU)である。25秒でペプチド5を添加した。
【図7】図7は、1μmol/Lのペプチド7(配列番号7)による、アポエクオリン発現マウスの心臓の細胞の細胞内カルシウム濃度の上昇を示す。横軸は、培地添加後の時間(秒)、縦軸は毎秒の相対発光量(RLU)である。25秒でペプチド7を添加した。
【図8】図8は、1μmol/Lのペプチド7による、アポエクオリン発現マウスの大動脈の細胞の細胞内カルシウム濃度の上昇を示す。横軸は、培地添加後の時間(秒)、縦軸は毎秒の相対発光量(RLU)である。25秒でペプチド7を添加した。
【図9】図9は、1μmol/Lのペプチド7による、アポエクオリン発現マウスの大静脈の細胞の細胞内カルシウム濃度の上昇を示す。横軸は、培地添加後の時間(秒)、縦軸は毎秒の相対発光量(RLU)である。25秒でペプチド7を添加した。
【図10】図10は、1μmol/Lのペプチド7による、アポエクオリン発現マウスの視床下部の細胞の細胞内カルシウム濃度の上昇を示す。横軸は、培地添加後の時間(秒)、縦軸は毎秒の相対発光量(RLU)である。25秒でペプチド7を添加した。
【図11】図11は、1μmol/Lのペプチド7による、アポエクオリン発現マウスの副腎の細胞の細胞内カルシウム濃度の上昇を示す。横軸は、培地添加後の時間(秒)、縦軸は毎秒の相対発光量(RLU)である。25秒でペプチド7を添加した。
【発明を実施するための形態】
【0020】
<1.本発明のペプチドおよびその薬理学的に許容される塩>
本発明は、以下の(a)〜(d)のいずれかのペプチドまたはその薬理学的に許容される塩を提供するものである。本明細書において、以下の(a)〜(d)のいずれかのペプチドを「本発明のペプチド」ともよぶ。
【0021】
(a)配列番号1〜7のいずれかで表されるアミノ酸配列からなるペプチド;
(b)配列番号1〜7のいずれかで表されるアミノ酸配列を含むペプチド;
(c)配列番号1〜7のいずれかで表されるアミノ酸配列において、1〜5個のアミノ酸が置換、欠失もしくは付加されたアミノ酸配列を含み、かつ哺乳動物の視床下部、下垂体、副腎、腎臓、心臓、血管または脳組織内の細胞の細胞内カルシウムイオン濃度を上昇させる活性を有するペプチド;および
(d)配列番号1〜7のいずれかで表されるアミノ酸配列と54%以上の同一性を有するアミノ酸配列を含み、かつ哺乳動物の視床下部、下垂体、副腎、腎臓、心臓、血管または脳組織内の細胞の細胞内カルシウムイオン濃度を上昇させる活性を有するペプチド。
【0022】
上記(a)のペプチドとしては、以下のいずれかのペプチドを挙げることができる:
配列番号1で表されるアミノ酸配列で、ヒトCCDC80のアミノ酸配列(NCBIアクセション番号:NP_955805)(配列番号9)の28−52番目の部分アミノ酸配列からなるペプチド、配列番号2で表されるアミノ酸配列で、ラットCCDC80のアミノ酸配列(NCBIアクセション番号:NP_071988)(配列番号10)において配列番号1で表されるアミノ酸配列に相当する配列であって、ラットCCDC80のアミノ酸配列の28−52番目の部分アミノ酸配列からなるペプチド、配列番号3で表されるアミノ酸配列で、マウスCCDC80のアミノ酸配列(NCBIアクセション番号:NP_08715)(配列番号11)において配列番号1で表されるアミノ酸配列に相当する配列であって、マウスCCDC80のアミノ酸配列の28−52番目の部分アミノ酸配列からなるペプチド、配列番号4で表されるアミノ酸配列で、ヒトCCDC80のアミノ酸配列の54−75番目の部分アミノ酸配列からなるペプチド、配列番号5で表されるアミノ酸配列で、ラットCCDC80のアミノ酸配列において配列番号4で表されるアミノ酸配列に相当する配列であって、ラットCCDC80のアミノ酸配列の54−75番目の部分アミノ酸配列からなるペプチド、配列番号6で表されるアミノ酸配列で、マウスCCDC80のアミノ酸配列において配列番号4で表されるアミノ酸配列に相当する配列であって、マウスCCDC80のアミノ酸配列の54−75番目の部分アミノ酸配列からなるペプチド、配列番号7で表されるアミノ酸配列で、配列番号9で表されるアミノ酸配列の940−950番目、配列番号10で表されるアミノ酸配列の939−949番目、および配列番号11で表されるアミノ酸配列の939−949番目の部分アミノ酸配列からなるペプチド。
【0023】
CCDC80は、Coiled−coilドメインを有し、ヒトにおいては950アミノ酸残基、ラット及びマウスにおいては949アミノ酸残基からなる、公知の分泌糖タンパク質である。
【0024】
本明細書において、哺乳動物には、マウス、ラット、ハムスター、モルモット等のげっ歯類やウサギ等の実験動物、ブタ、ウシ、ヤギ、ウマ、ヒツジ、ミンク等の家畜、イヌ、ネコ等のペット、ヒト、サル、カニクイザル、アカゲザル、マーモセット、オランウータン、チンパンジーなどの霊長類等が包含されるが、これらに限定されるものではない。哺乳動物は、好ましくは、霊長類(ヒト等)又はげっ歯類(ラット等)である。
【0025】
上記(b)のペプチドとしては、以下の(b−1)および(b−2)のいずれかのペプチドを挙げることができる:
(b−1)配列番号1で表されるアミノ酸配列を含み、かつ配列番号9で表されるアミノ酸配列の部分配列からなるペプチド、配列番号2で表されるアミノ酸配列を含み、かつ配列番号10で表されるアミノ酸配列の部分配列からなるペプチド、配列番号3で表されるアミノ酸配列を含み、かつ配列番号11で表されるアミノ酸配列の部分配列からなるペプチド、配列番号4で表されるアミノ酸配列を含み、かつ配列番号9で表されるアミノ酸配列の部分配列からなるペプチド、配列番号5で表されるアミノ酸配列を含み、かつ配列番号10で表されるアミノ酸配列の部分配列からなるペプチド、配列番号6で表されるアミノ酸配列を含み、かつ配列番号11で表されるアミノ酸配列の部分配列からなるペプチド、配列番号7で表されるアミノ酸配列を含み、かつ配列番号9、10、又は11で表されるアミノ酸配列の部分配列からなるペプチド、;及び
(b−2)配列番号1で表されるアミノ酸配列を含むペプチドであって、該ペプチドは、配列番号1で表されるアミノ酸配列のN末端及び/C末端に付加アミノ酸配列を有していてもよく、該付加アミノ酸配列は、配列番号9で表されるアミノ酸配列の部分配列(但し、N末端付加の場合には該部分配列のC末端が、配列番号9で表されるアミノ酸配列における第27番目のアミノ酸であり、C末端付加の場合には、該部分配列のN末端が配列番号9で表されるアミノ酸配列における第53番目のアミノ酸である)と60%以上、好ましくは80%以上、より好ましくは90%以上、最も好ましくは95%以上の同一性を有するアミノ酸配列からなり、哺乳動物の視床下部、下垂体、副腎、腎臓、心臓、血管または脳組織内の細胞の細胞内カルシウムイオン濃度を上昇させる活性を有するペプチド;
配列番号2で表されるアミノ酸配列を含むペプチドであって、該ペプチドは、配列番号2で表されるアミノ酸配列のN末端及び/C末端に付加アミノ酸配列を有していてもよく、該付加アミノ酸配列は、配列番号10で表されるアミノ酸配列の部分配列(但し、N末端付加の場合には該部分配列のC末端が、配列番号10で表されるアミノ酸配列における第27番目のアミノ酸であり、C末端付加の場合には、該部分配列のN末端が配列番号10で表されるアミノ酸配列における第53番目のアミノ酸である)と60%以上、好ましくは80%以上、より好ましくは90%以上、最も好ましくは95%以上の同一性を有するアミノ酸配列からなり、哺乳動物の視床下部、下垂体、副腎、腎臓、心臓、血管または脳組織内の細胞の細胞内カルシウムイオン濃度を上昇させる活性を有するペプチド;
配列番号3で表されるアミノ酸配列を含むペプチドであって、該ペプチドは、配列番号3で表されるアミノ酸配列のN末端及び/C末端に付加アミノ酸配列を有していてもよく、該付加アミノ酸配列は、配列番号11で表されるアミノ酸配列の部分配列(但し、N末端付加の場合には該部分配列のC末端が、配列番号11で表されるアミノ酸配列における第27番目のアミノ酸であり、C末端付加の場合には、該部分配列のN末端が配列番号11で表されるアミノ酸配列における第53番目のアミノ酸である)と60%以上、好ましくは80%以上、より好ましくは90%以上、最も好ましくは95%以上の同一性を有するアミノ酸配列からなり、哺乳動物の視床下部、下垂体、副腎、腎臓、心臓、血管または脳組織内の細胞の細胞内カルシウムイオン濃度を上昇させる活性を有するペプチド;
配列番号4で表されるアミノ酸配列を含むペプチドであって、該ペプチドは、配列番号4で表されるアミノ酸配列のN末端及び/C末端に付加アミノ酸配列を有していてもよく、該付加アミノ酸配列は、配列番号9で表されるアミノ酸配列の部分配列(但し、N末端付加の場合には該部分配列のC末端が、配列番号9で表されるアミノ酸配列における第53番目のアミノ酸であり、C末端付加の場合には、該部分配列のN末端が配列番号9で表されるアミノ酸配列における第76番目のアミノ酸である)と60%以上、好ましくは80%以上、より好ましくは90%以上、最も好ましくは95%以上の同一性を有するアミノ酸配列からなり、哺乳動物の視床下部、下垂体、副腎、腎臓、心臓、血管または脳組織内の細胞の細胞内カルシウムイオン濃度を上昇させる活性を有するペプチド;
配列番号5で表されるアミノ酸配列を含むペプチドであって、該ペプチドは、配列番号5で表されるアミノ酸配列のN末端及び/C末端に付加アミノ酸配列を有していてもよく、該付加アミノ酸配列は、配列番号10で表されるアミノ酸配列の部分配列(但し、N末端付加の場合には該部分配列のC末端が、配列番号10で表されるアミノ酸配列における第53番目のアミノ酸であり、C末端付加の場合には、該部分配列のN末端が配列番号10で表されるアミノ酸配列における第76番目のアミノ酸である)と60%以上、好ましくは80%以上、より好ましくは90%以上、最も好ましくは95%以上の同一性を有するアミノ酸配列からなり、哺乳動物の視床下部、下垂体、副腎、腎臓、心臓、血管または脳組織内の細胞の細胞内カルシウムイオン濃度を上昇させる活性を有するペプチド;
配列番号6で表されるアミノ酸配列を含むペプチドであって、該ペプチドは、配列番号6で表されるアミノ酸配列のN末端及び/C末端に付加アミノ酸配列を有していてもよく、該付加アミノ酸配列は、配列番号11で表されるアミノ酸配列の部分配列(但し、N末端付加の場合には該部分配列のC末端が、配列番号11で表されるアミノ酸配列における第53番目のアミノ酸であり、C末端付加の場合には、該部分配列のN末端が配列番号11で表されるアミノ酸配列における第76番目のアミノ酸である)と60%以上、好ましくは80%以上、より好ましくは90%以上、最も好ましくは95%以上の同一性を有するアミノ酸配列からなり、哺乳動物の視床下部、下垂体、副腎、腎臓、心臓、血管または脳組織内の細胞の細胞内カルシウムイオン濃度を上昇させる活性を有するペプチド;又は
配列番号7で表されるアミノ酸配列を含むペプチドであって、該ペプチドは、配列番号7で表されるアミノ酸配列のN末端に付加アミノ酸配列を有していてもよく、該付加アミノ酸配列は、配列番号9、10又は11で表されるアミノ酸配列の部分配列(但し、該部分配列のC末端が、配列番号9で表されるアミノ酸配列における第939番目のアミノ酸、或いは配列番号10又は11で表されるアミノ酸配列における第938番目のアミノ酸である)と60%以上、好ましくは80%以上、より好ましくは90%以上、最も好ましくは95%以上の同一性を有するアミノ酸配列からなり、哺乳動物の視床下部、下垂体、副腎、腎臓、心臓、血管または脳組織内の細胞の細胞内カルシウムイオン濃度を上昇させる活性を有するペプチド。
【0026】
上記(c)のペプチドとしては、配列番号1〜7のいずれかで表されるアミノ酸配列において、1〜5個のアミノ酸残基が置換、欠失もしくは付加されたとは、同一配列中の任意かつ一もしくは複数のアミノ酸配列中の位置において、1〜5個(好ましくは1〜3個、より好ましくは1又は2個)のアミノ酸残基の置換、欠失もしくは付加があることを意味し、置換、欠失もしくは付加が同時に生じてもよい。配列番号1〜7のいずれかで表されるアミノ酸配列において、1〜5個のアミノ酸残基が置換、欠失もしくは付加されたアミノ酸配列としては、例えば、(1)配列番号1〜7のいずれかで表されるアミノ酸配列中の1〜5個(好ましくは1〜3個、より好ましくは1又は2個)のアミノ酸が欠失したアミノ酸配列、(2)配列番号1〜7のいずれかで表されるアミノ酸配列に1〜5個(好ましくは1〜3個、より好ましくは1又は2個)のアミノ酸が付加されたアミノ酸配列、(3)配列番号1〜7のいずれかで表されるアミノ酸配列中の1〜5個(好ましくは1〜3個、より好ましくは1又は2個)のアミノ酸が他のアミノ酸で置換されたアミノ酸配列、または(4)上記(1)〜(3)の変異が組み合わされたアミノ酸配列(この場合、変異したアミノ酸の総和が1〜5個(好ましくは1〜3個、より好ましくは1又は2個))が挙げられる。
【0027】
置換または付加されるアミノ酸としては、例えば、蛋白質を構成するアミノ酸として知られる20種類のL-アミノ酸、即ちL−アラニン、L−アスパラギン、L−アスパラギン酸、L−アルギニン、L−グルタミン、L−グルタミン酸、グリシン、L−ヒスチジン、L−イソロイシン、L−ロイシン、L−リジン、L−メチオニン、L−フェニルアラニン、L−プロリン、L−セリン、L−スレオニン、L−トリプトファン、L−チロシン、L−バリンおよびL−システインが挙げられるが、これに限定されるものではなく、例えば、tert-ロイシン、ノルロイシン、ノルバリン、2−アミノブタン酸、O−メチルセリン、t−ブチルグリシン、t−ブチルアラニン、シクロヘキシルアラニン、イソアスパラギン酸、イソグルタミン酸、2−アミノアジピン酸、2−アミノスベリン酸、オルニチン、2,4−ジアミノブタン酸、2,3−ジアミノプロピオン酸、3−ヒドロキシプロリン、4−ヒドロキシプロリン、ホモセリン等の他のアミノ酸でもよく、またD−アミノ酸あるいはβ−アミノ酸でもよい。
【0028】
以下に、相互に置換可能なアミノ酸残基の例を示す。同一群に含まれるアミノ酸残基は相互に置換可能である。
A群:ロイシン、イソロイシン、ノルロイシン、バリン、ノルバリン、アラニン、2−アミノブタン酸、メチオニン、O−メチルセリン、t−ブチルグリシン、t−ブチルアラニン、シクロヘキシルアラニン、tert-ロイシン
B群:アスパラギン酸、グルタミン酸、イソアスパラギン酸、イソグルタミン酸、2−アミノアジピン酸、2−アミノスベリン酸
C群:アスパラギン、グルタミン
D群:リジン、アルギニン、オルニチン、2,4−ジアミノブタン酸、2,3−ジアミノプロピオン酸
E群:プロリン、3−ヒドロキシプロリン、4−ヒドロキシプロリン
F群: セリン、スレオニン、ホモセリン
G群:フェニルアラニン、チロシン
【0029】
上記(d)のペプチドに関して、配列番号1〜7のいずれかで表されるアミノ酸配列と54%以上の同一性を有するアミノ酸配列とは、相同性解析プログラムBLAST 2 Sequences〔FEMS Microbiol Lett. 174, 247 (1999)〕を用いてデフォルトの条件(program: blastp、matrix: BLOSUM62、open gap: 11 penalties、extension gap: 1 penalty、gap x_dropoff: 50、expect: 10.0、word size: 3)で計算し、アラインメントをしたときに、同一性(対象の配列と配列番号1〜7のうちの相同性解析を行った配列との間で同一のアミノ酸数/配列番号1〜7のうちの相同性解析を行った配列の全体のアミノ酸数+アラインメント時に挿入されたギャップの数)が54%以上(好ましくは、63%以上、72%以上、77%以上、80%以上、81%以上、84%以上、86%以上、88%以上、90%以上、92%以上、または95%以上)であるアミノ酸配列をいう。アミノ酸配列の同一性はより高いほうが好ましいが、本発明のペプチドまたはその薬理学的に許容される塩が哺乳動物の視床下部、下垂体、副腎、腎臓、心臓、血管または脳組織内の細胞の細胞内カルシウムイオン濃度を上昇させる活性を有する限り同一性は低くてもよい。
【0030】
本発明のペプチドとしては、下記式(I):
【0031】
【化3】

【0032】
(式中、R1は水素原子、置換もしくは非置換のアルカノイル、置換もしくは非置換のアロイル、置換もしくは非置換のヘテロアリールカルボニル、置換もしくは非置換のアルコキシカルボニル、置換もしくは非置換のアリールオキシカルボニル、または置換もしくは非置換のヘテロアリールオキシカルボニルを表し、R2はヒドロキシ、置換もしくは非置換のアルコキシ、または置換もしくは非置換のアミノを表し、Aは上記(a)〜(d)のいずれかのペプチドのペプチド残基を表す)で表されるペプチドを用いてもよい。
【0033】
式(I)において、Rは上記(a)〜(d)のいずれかのペプチドのN末端のアミノ基に、Rは上記(a)〜(d)のいずれかのペプチドのC末端のカルボキシル基に、それぞれ配置される。具体的には、RはN末端のアミノ基における一方または両方の水素原子と置換され、RはC末端のカルボキシル基におけるヒドロキシ基と置換される。
【0034】
上記式(I)の各基の定義において、アルカノイルとしては、例えば直鎖または分枝状の炭素数1〜20のアルカノイル、例えばホルミル、アセチル、プロピオニル、ブチリル、イソブチリル、バレリル、イソバレリル、ピバロイル、ヘキサノイル、ヘプタノイル、ラウロイル、エイコサノイル等が挙げられる。
アロイルおよびアリールオキシカルボニルのアリール部分としては、例えば炭素数6〜15のアリール、例えばフェニル、ナフチル等が挙げられる。
【0035】
ヘテロアリールカルボニルおよびヘテロアリールオキシカルボニルのヘテロアリール部分としては、例えばフリル、チエニル、ピロリル、ピラゾリル、イミダゾリル、オキサゾリル、チアゾリル、ピリジル、ピリダジニル、ピリミジニル、ピラジニル、インドリル、インダゾリル、ベンズイミダゾリル、キノリル、イソキノリル、シンノリニル、キナゾリニル、キノキサリニル、ナフチリジニル等が挙げられる。
【0036】
アルコキシカルボニルおよびアルコキシのアルキル部分としては、例えば直鎖または分枝状の炭素数1〜20のアルキル、例えばメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、デシル、ドデシル、エイコシル等が挙げられる。
置換アルカノイル、置換アルコキシカルボニルおよび置換アルコキシにおける置換基としては、同一または異なって置換数1〜3の、例えばヒドロキシ、カルボキシ、炭素数3〜8の、例えばシクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル等の脂環式アルキル、置換もしくは非置換のフェニル、フルオレニル等が挙げられる。置換フェニルの置換基としては、同一または異なって置換数1〜3の、例えばアルキル、アルコキシ、ヒドロキシ、ニトロ、スルホ、シアノ、ハロゲン等があげられ、ハロゲンとしては、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素の各原子が挙げられる。置換フェニルの置換基としてのアルキル、アルコキシのアルキル部分は、前記アルコキシカルボニルおよびアルコキシのアルキル部分と同義である。
【0037】
置換アロイル、置換アリールオキシカルボニル、置換ヘテロアリールカルボニルおよび置換ヘテロアリールオキシカルボニルにおける置換基は、同一または異なって置換数1〜3であり、上記の置換フェニルの置換基と同義である。
置換アミノにおける置換基としては、同一または異なって置換数1〜2の、例えば置換もしくは非置換のアルキル、置換もしくは非置換のアリール等が挙げられる。アルキルは、前記アルコキシ等のアルキル部分と同義であり、置換アルキルの置換基は、前記置換アルコキシ等の置換基と同義である。アリールは、前記アロイルまたはアリールオキシカルボニルのアリール部分と同義であり、置換アリールの置換基は、前記アロイルまたはアリールオキシカルボニルの置換基と同義である。
【0038】
また、AおよびBのペプチド残基を構成するアミノ酸残基の側鎖の官能基が化学的に修飾または保護されたものであってもかまわない。そのように側鎖官能基が化学的に修飾または保護されたアミノ酸残基としては、例えば、側鎖カルボキシ基がベンジルエステルで保護されたアスパラギン酸残基もしくはグルタミン酸残基、側鎖チオール基がカルボキシメチル化されたシステイン残基等が挙げられる。
【0039】
本発明のペプチドは修飾されていてもよい。該修飾としては、脂質鎖の付加(脂肪族アシル化(パルミトイル化、ミリストイル化等)、プレニル化(ファルネシル化、ゲラニルゲラニル化等)等)、リン酸化(セリン残基、スレオニン残基、チロシン残基等におけるリン酸化)、アセチル化、糖鎖の付加(Nグリコシル化、Oグリコシル化)等を挙げることができる。
【0040】
本発明のペプチドは、適当な標識剤、例えば、放射性同位元素(例:125I、131I、3H、14C等)、酵素(例:β−ガラクトシダーゼ、β−グルコシダーゼ、アルカリフォスファターゼ、パーオキシダーゼ、リンゴ酸脱水素酵素等)、蛍光物質(例:フルオレスカミン、フルオレッセンイソチオシアネート等)、発光物質(例:ルミノール、ルミノール誘導体、ルシフェリン、ルシゲニン等)、アフィニティタグ(例:ビオチン等)などで標識されていてもよい。
【0041】
本発明のペプチドの長さは、哺乳動物の視床下部、下垂体、副腎、腎臓、心臓、血管または脳組織内の細胞の細胞内カルシウムイオン濃度を上昇させる活性を有する限り特に限定されず、使用目的に応じて所望の長さのペプチドを選択することができる。その全長としては、好ましくは80アミノ酸以下、さらに好ましくは60アミノ酸以下、特に好ましくは40アミノ酸以下(例えば、30アミノ酸以下、29アミノ酸以下、28アミノ酸以下、27アミノ酸以下、26アミノ酸以下、25アミノ酸以下、24アミノ酸以下、23アミノ酸以下、22アミノ酸以下、21アミノ酸以下、20アミノ酸以下、19アミノ酸以下、18アミノ酸以下、17アミノ酸以下、16アミノ酸以下、15アミノ酸以下、14アミノ酸以下、13アミノ酸以下、12アミノ酸以下)のもの等を適宜選択することができる。
【0042】
本発明のペプチドの薬理学的に許容される塩としては、例えば、酸付加塩、金属塩、有機塩基付加塩等が挙げられる。酸付加塩としては、例えば、塩酸塩、硫酸塩、リン酸塩等の無機酸塩および酢酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩、酒石酸塩、クエン酸塩等の有機酸塩が挙げられる。金属塩としては、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩、マグネシウム塩、カルシウム塩等のアルカリ土類金属塩、アルミニウム塩、亜鉛塩等が挙げられる。有機塩基付加塩としては、例えば、メチルアミン、エチルアミン、アニリン等の一級アミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ピロリジン、ピペリジン、モルホリン、ピペラジン等の二級アミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、N,N−ジメチルアニリン、ピリジン等の三級アミン等とで形成される塩、アンモニウム塩等が挙げられる。
【0043】
本発明のペプチドまたはその薬理学的に許容される塩は単離又は精製されていることが好ましい。「単離又は精製」とは、目的とする成分以外の成分を除去する操作が施されていることを意味する。単離又は精製された本発明のペプチドまたはその薬理学的に許容される塩の純度(ペプチドまたはその薬理学的に許容される塩の全重量に対する、本発明のペプチドまたはその薬理学的に許容される塩の重量の割合)は、通常50%以上、好ましくは70%以上、より好ましくは90%以上、最も好ましくは95%以上(例えば100%)である。
【0044】
本発明のペプチドまたはその薬理学的に許容される塩は、哺乳動物の視床下部、下垂体、副腎、腎臓、心臓、血管または脳組織内の細胞の細胞内カルシウムイオン濃度を上昇させる活性を有する。ここで脳組織とは、大脳、中脳、小脳、間脳、延髄など、脳に包含される組織をいう。
【0045】
本発明のペプチドまたはその薬理学的に許容される塩が哺乳動物の視床下部、下垂体、副腎、腎臓、心臓、血管または脳組織内の細胞の細胞内カルシウムイオン濃度を上昇させる活性を有していることは、以下の(i)又は(ii)に示した方法により確認することができる。
【0046】
(i)アポエクオリン発現トランスジェニックマウスの利用
アポエクオリン遺伝子の発現ベクターを受精卵に導入して作製した、全身にアポエクオリンを発現するトランスジェニックマウス(国際公開第02/010371号パンフレット)から、視床下部、下垂体、副腎、腎臓、心臓、血管または脳の一部の組織を採取する。得られた視床下部、下垂体、副腎、腎臓、心臓、血管または脳組織を細断し、セレンテラジンを含む培地に懸濁して培養し、細胞内にセレンテラジンを取り込ませてエクオリン(アポエクオリンとセレンテラジンの複合体)を形成させる。エクオリンは、細胞内カルシウムイオンと結合して発光するので、ペプチドまたはその薬理学的に許容される塩を含む培地を添加する前と添加後の細胞の毎秒の相対発光量をルミノメーターで経時的に測定し、細胞内カルシウムイオン濃度の指標とする。ペプチドまたはその薬理学的に許容される塩の添加により、相対発光量が増加する場合に、該ペプチドまたはその薬理学的に許容される塩が細胞内カルシウムイオン濃度を上昇させる活性を有することが確認できる。一般にセカンドメッセンジャーとしてのカルシウムイオンの細胞内濃度は、上昇した後に、速やかにあるいは徐々に下降していく。一方、細胞膜傷害による細胞外からのカルシウムイオンの細胞内への非特異的な流入では、細胞内カルシウムイオン濃度は上昇した状態を一定時間持続する。この細胞内カルシウムイオン濃度の時間変化、つまり相対発光量の時間変化により、それが生理的な作用によるセカンドメッセンジャーとしてのカルシウムイオン濃度の上昇か、あるいは単なる細胞膜傷害による非特異的なカルシウムイオン濃度の上昇かを区別することが可能である。
【0047】
(ii)カルシウム結合性蛍光試薬の利用
動物個体から採取した視床下部、下垂体、副腎、腎臓、心臓、血管または脳組織を細断したもの、あるいは視床下部、下垂体、副腎、腎臓、心臓、血管または脳組織内の細胞に由来する細胞株を、カルシウムイオンの有無で、励起波長、蛍光波長あるいは蛍光強度が変化するようなFura−2、Indo−1、Fluo−3等のカルシウムイオン結合性の蛍光試薬を含む緩衝液に懸濁して培養し、細胞内に取り込ませる。Fura−2はカルシウムイオンと結合することにより、蛍光励起波長のピークが380nmから340nmにシフトするので、ペプチドまたはその薬理学的に許容される塩を含む緩衝液を添加する前と添加後に、380nmの波長で励起した時の蛍光強度に対する340nmの波長で励起した時の蛍光強度の比を蛍光測定装置で測定し、細胞内カルシウムイオン濃度の指標とする。ペプチドまたはその薬理学的に許容される塩の添加により、蛍光強度の比が増加する場合に、該ペプチドまたはその薬理学的に許容される塩が細胞内カルシウムイオン濃度を上昇させる活性を有することが確認できる。Indo−1はカルシウムイオンと結合することにより、蛍光波長が480nmから400nmにシフトするので、ペプチドまたはその薬理学的に許容される塩を含む緩衝液を添加する前と添加後に、480nmの波長の蛍光強度に対する400nmの波長の蛍光強度の比を蛍光測定装置で測定し、細胞内カルシウムイオン濃度の指標とする。ペプチドまたはその薬理学的に許容される塩の添加により、蛍光強度の比が増加する場合に、該ペプチドまたはその薬理学的に許容される塩が細胞内カルシウムイオン濃度を上昇させる活性を有することが確認できる。Fluo−3はカルシウムイオンと結合することにより、520nmの波長における蛍光強度が大きく増加するので、ペプチドまたはその薬理学的に許容される塩を含む緩衝液を添加する前と添加後に、520nmの波長の蛍光強度の比を蛍光測定装置で測定し、細胞内カルシウムイオン濃度の指標とする。ペプチドまたはその薬理学的に許容される塩の添加により、蛍光強度の比が増加する場合に、該ペプチドまたはその薬理学的に許容される塩が細胞内カルシウムイオン濃度を上昇させる活性を有することが確認できる。
【0048】
本発明のペプチドおよびその薬理学的に許容される塩は、哺乳動物の副腎、腎臓、血管または心臓の細胞の細胞内カルシウム濃度を上昇させる活性を有するので、好ましい態様において、本発明のペプチドおよびその薬理学的に許容される塩は、哺乳動物の血圧や血流量を調節(亢進又は抑制)する活性(循環調節活性)を有する。循環調節活性には、血圧や血流を調節することにより変動する種々のパラメーター(例えば体液量、体液中の電解質濃度、心拍数など)を調節(亢進又は抑制)する活性も含まれる。
【0049】
本発明のペプチドまたはその薬理学的に許容される塩が循環調節活性を有していることは、例えば以下の測定法により血圧を変動させる活性を測定することで確認できる。
【0050】
麻酔下にあるラット等の動物の外頸静脈と内頸動脈にカテーテルを挿入し、内頸動脈のカテーテルを圧モニターに接続して動脈圧を連続的に測定する。外頸静脈から生理食塩水に溶解したペプチドまたはその薬理学的に許容される塩を投与し、ペプチドまたはその薬理学的に許容される塩の投与前と投与後の動脈圧を比較して、ペプチドまたはその薬理学的に許容される塩の投与により、動脈圧が変動(上昇又は降下)する場合に、該ペプチドまたはその薬理学的に許容される塩が循環調節活性(特に、血圧を上昇又は降下させる活性)を有することが確認できる。
【0051】
また、本発明のペプチドおよびその薬理学的に許容される塩は、哺乳動物の視床下部または下垂体、あるいは脳組織内の細胞の細胞内カルシウム濃度を上昇させる活性を有するので、別の好ましい態様において、本発明のペプチドおよびその薬理学的に許容される塩は、哺乳動物の摂食量や摂水量、エネルギー代謝を調節(亢進又は抑制)する活性(エネルギー代謝調節活性)を有する。エネルギー代謝調節活性には、摂食量や摂水量、エネルギー代謝を調節することにより変動する種々のパラメーター(例えば体重、体脂肪量、運動量、覚醒時間、体温、精神活動など)を調節(亢進又は抑制)する活性も含まれる。
【0052】
本発明のペプチドまたはその薬理学的に許容される塩がエネルギー代謝調節活性を有していることは、以下の測定法により確認できる。
【0053】
麻酔下にあるラット等の動物の側脳室にカテーテルを挿入し、カテーテルを通して生理食塩水に溶解したペプチドまたはその薬理学的に許容される塩を側脳室に一過性に、あるいは適当な期間で複数回投与し、投与後の自由行動下での体重、飲水量、摂食量、運動量、覚醒時間、体脂肪量、体温などを測定する。あるいは麻酔下にあるラット等の動物の外頸静脈等にカテーテルを挿入し、カテーテルを通して外頸静脈等から生理食塩水に溶解したペプチドまたはその薬理学的に許容される塩を一過性に、あるいは適当な期間で複数回投与し、投与後の自由行動下での体重、飲水量、摂食量、運動量、覚醒時間、体脂肪量、体温などを測定する。当該ペプチドの非投与群と比較してこれらの測定項目が変動する場合に、該ペプチドまたはその薬理学的に許容される塩がエネルギー代謝を調節する活性を有することが確認できる。
【0054】
<2.ポリヌクレオチド>
本発明は、上記本発明のペプチドをコードするヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチドを提供するものである。該ポリヌクレオチドは、DNAであってもRNAであってもよく、あるいはDNA/RNAキメラであってもよいが、好ましくはDNAが挙げられる。また、該ポリヌクレオチドは二本鎖であっても、一本鎖であってもよい。二本鎖の場合は、二本鎖DNA、二本鎖RNAまたはDNA:RNAのハイブリッドでもよい。
【0055】
本発明のペプチドをコードするヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチドとしては、ヒトまたはラット等の哺乳動物由来のゲノムDNA、cDNA、合成DNAなどが挙げられる。本発明のペプチドをコードするヌクレオチド配列を含むゲノムDNAおよびcDNAは、該哺乳動物より調製したゲノムDNA画分および全RNAもしくはmRNA画分をそれぞれ鋳型として用い、Polymerase Chain Reaction(以下、「PCR法」と略称する)およびReverse Transcriptase-PCRによって直接増幅することもできる。あるいは、本発明のペプチドをコードするヌクレオチド配列を含むゲノムDNAおよびcDNAは、該哺乳動物より調製したゲノムDNAおよび全RNAもしくはmRNAの断片を適当なベクター中に挿入して調製されるゲノムDNAライブラリーおよびcDNAライブラリーから、コロニーもしくはプラークハイブリダイゼーション法またはPCR法などにより、それぞれクローニングすることもできる。ライブラリーに使用するベクターは、バクテリオファージ、プラスミド、コスミド、ファージミドなどいずれであってもよい。
【0056】
本発明のペプチドをコードするヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチドとしては、例えば、配列番号8で表されるヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチドを挙げることができる。配列番号8で表されるヌクレオチド配列は、配列番号1で表されるアミノ酸配列からなる本発明のペプチドをコードする。
【0057】
本発明のポリヌクレオチドは、本発明のペプチドをコードするヌクレオチド配列の部分配列を有する合成DNAプライマーを用いてPCR法によって増幅するか、または適当なベクターに組み込んだDNAを本発明のペプチドの一部あるいは全領域をコードするヌクレオチドもしくは合成DNA標識したものとハイブリダイゼーションさせることによってクローニングすることができる。ハイブリダイゼーションは、例えば、モレキュラー・クローニング(Molecular Cloning)2nd(J. Sambrook et al., Cold Spring Harbor Lab. Press, 1989)に記載の方法等に従って行うことができる。また、市販のライブラリーを使用する場合、ハイブリダイゼーションは、該ライブラリーに添付された使用説明書に記載の方法に従って行うことができる。
【0058】
クローン化されたDNAは、目的によりそのまま、または所望により制限酵素で消化するか、リンカーを付加した後に、使用することができる。該DNAはその5’末端側に翻訳開始コドンとしてのATGを有し、また3’末端側には翻訳終止コドンとしてのTAA、TGAまたはTAGを有していてもよい。これらの翻訳開始コドンや翻訳終止コドンは、適当な合成DNAアダプターを用いて付加することができる。
【0059】
本発明のポリヌクレオチドは単離又は精製されていることが好ましい。「単離又は精製」とは、目的とする成分以外の成分を除去する操作が施されていることを意味する。単離又は精製された本発明のポリヌクレオチドの純度(全ポリヌクレオチド重量に対する、本発明のポリヌクレオチドの重量の割合)は、通常50%以上、好ましくは70%以上、より好ましくは90%以上、最も好ましくは95%以上(例えば100%)である。
【0060】
<3.本発明のポリヌクレオチドを含むベクター>
本発明は、上記本発明のポリヌクレオチドを含むベクターを提供するものである。本発明のベクターは、例えば、本発明のペプチドをコードするヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチドを適当な発現ベクター中のプロモーターの下流に機能的に連結することにより製造することができる。発現ベクターは、用いる宿主に応じて適切なベクター(プラスミドベクター、ウイルスベクター、レトロウイルスベクター、バキュロウイルスベクター、アデノウイルスベクター等)を選択することができる。
【0061】
細菌等の原核生物を宿主細胞として用いる場合は、本発明のペプチドをコードするDNAを含有してなる組換えベクターは原核生物中で自立複製可能であると同時に、プロモーター、リボソーム結合配列、および転写終結配列を含めて構成されたベクターであることが好ましい。プロモーターを制御する遺伝子が含まれていてもよい。
【0062】
発現ベクターとしては、例えば、pSE420(インビトロジェン社製)、pGEMEX-1(プロメガ社製)、pQE-30(キアジェン社製)、pKYP10(特開昭58-110600号公報)、pKYP200〔Agric. Biol. Chem., 48, 669 (1984)〕、pLSA1〔Agric. Biol. Chem., 53, 277 (1989)〕、pGEL1〔Proc. Natl. Acad. Sci., USA, 82, 4306 (1985)〕、pBluescript II SK(-)(ストラタジーン社)、pTrs30〔形質転換大腸菌株(FERM BP-5407)より調製〕、pTrs32〔形質転換大腸菌株(FERM BP-5408)より調製〕、pGHA2〔形質転換大腸菌株(FERM BP-400)より調製〕、pGKA2〔形質転換大腸菌株(FERM P-6798)より調製〕、pTerm2(特開平3-22979号公報)、pGEX-2T(GEヘルスケア社製)、pET(ノバジェン社製)、pKK223-2(GEヘルスケア社製)、pMAL-c2X(ニュー・イングランド・バイオラブズ社製)等を挙げることができる。
【0063】
プロモーターとしては、宿主細胞中で機能するものであればいかなるものでもよい。例えば、trpプロモーター(Ptrp)、lacプロモーター、PLプロモーター、PRプロモーター、T7プロモーター等の、大腸菌やファージ等に由来するプロモーターを挙げることができる。またPtrpを2つ直列させたプロモーター(Ptrp×2)、tacプロモーター、lacT7プロモーター、let Iプロモーターのように人為的に設計改変されたプロモーター等も用いることができる。
【0064】
リボソーム結合配列であるシャイン−ダルガノ(Shine-Dalgarno)配列と開始コドンとの間を適当な距離(例えば6〜18塩基)に調節したプラスミドを用いることが好ましい。
本発明の組換えベクターにおいては、本発明のDNAの発現には転写終結配列は必ずしも必要ではないが、構造遺伝子の直下に転写終結配列を配置することが好ましい。
【0065】
酵母を宿主細胞として用いる場合には、発現ベクターとして、例えば、YEP13(ATCC37115)、YEp24(ATCC37051)、YCp50(ATCC37419)、pHS19、pHS15等を挙げることができる。
【0066】
プロモーターとしては、酵母菌株中で発現できるものであればいずれのものを用いてもよく、例えば、ヘキソースキナーゼ等の解糖系の遺伝子のプロモーター、PHO5プロモーター、PGKプロモーター、GAPプロモーター、ADHプロモーター、gal 1プロモーター、gal 10プロモーター、ヒートショックポリペプチドプロモーター、MFα1 プロモーター、CUP 1プロモーター等を挙げることができる。
【0067】
動物細胞を宿主として用いる場合には、発現ベクターとして、例えば、pcDNA3.1(+)(インビトロジェン社製)、pAGE107〔特開平3-22979号公報、Cytotechnology, 3, 133 (1990)〕、pAS3-3(特開平2-227075号公報)、pCDM8〔Nature, 329, 840 (1987)〕、pREP4(インビトロジェン社製)、pAGE103〔J. Biochem., 101, 1307 (1987)〕等を挙げることができる。
【0068】
プロモーターとしては、動物細胞中で機能するものであればいずれも用いることができ、例えば、サイトメガロウイルス(CMV)のIE(immediate early)遺伝子のプロモーター、SV40の初期プロモーター、レトロウイルスのプロモーター、メタロチオネインプロモーター、ヒートショックプロモーター、SRαプロモーター等を挙げることができる。また、ヒトCMVのIE遺伝子のエンハンサーをプロモーターと共に用いてもよい。
【0069】
昆虫細胞を宿主として用いる場合には、例えばカレント・プロトコールズ・イン・モレキュラー・バイオロジー、Baculovirus Expression Vectors, A Laboratory Manual, W. H. Freeman and Company, New York(1992)、Bio/Technology, 6, 47 (1988)等に記載された方法によって、ペプチドを発現することができる。
即ち、組換え遺伝子導入ベクターおよび欠損型バキュロウイルスゲノムを昆虫細胞に共導入して昆虫細胞培養上清中に組換えウイルスを得た後、さらに組換えウイルスを昆虫細胞に感染させ、ペプチドを発現させることができる。
【0070】
該方法において用いられる遺伝子導入ベクターとしては、例えば、pVL1392、pVL1393(ベクトン・ディッキンソン社製)、pBlueBac4.5(インビトロジェン社製)等を挙げることができる。
【0071】
植物細胞を宿主細胞として用いる場合には、発現ベクターとして、例えば、Tiプラスミド、タバコモザイクウイルスベクター等を挙げることができる。
【0072】
プロモーターとしては、植物細胞中で発現できるものであればいずれのものを用いてもよく、例えば、カリフラワーモザイクウイルスの35Sプロモーター、イネアクチン1プロモーター等を挙げることができる。
【0073】
<4.本発明のペプチドを発現可能な形質転換体>
本発明のペプチドをコードするヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチドを含有するベクターを、リポフェクション法、リン酸カルシウム法、マイクロインジェクション法、プロプラスト融合法、エレクトロポレーション法、DEAEデキストラン法、Gene Gunによる遺伝子導入など公知の方法に従って上記宿主へ導入することにより、本発明のペプチドを発現可能な形質転換体を製造することができる。
【0074】
細菌等の原核生物を宿主細胞として用いる場合は、本発明のポリヌクレオチドを含むベクターを宿主細胞へ導入する方法であればいずれも用いることができ、例えば、カルシウムイオンを用いる方法〔Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 69, 2110 (1972)〕、プロトプラスト法(特開昭63-248394号公報)、またはGene, 17, 107 (1982)やMolecular & General Genetics, 168, 111 (1979)に記載の方法等を挙げることができる。
【0075】
宿主細胞としては、エシェリヒア(Escherichia)属、セラチア(Serratia)属、バチルス(Bacillus)属、ブレビバクテリウム(Brevibacterium)属、コリネバクテリウム(Corynebacterium)属、ミクロバクテリウム(Microbacterium)属、シュードモナス(Pseudomonas)属等に属する微生物、例えば、Escherichia coli XL1-Blue、Escherichia coli XL2-Blue、Escherichia coli DH1、Escherichia coli MC1000、Escherichia coli KY3276、Escherichia coli W1485、Escherichia coli JM109、Escherichia coli HB101、Escherichia coli No.49、Escherichia coli W3110、Escherichia coli TB1、Serratia ficariaSerratia fonticolaSerratia liquefaciensSerratia marcescensBacillus subtilisBacillus amyloliquefacinesBrevibacterium ammoniagenesBrevibacterium immariophilum ATCC14068、Brevibacterium saccharolyticum ATCC14066、Brevibacterium flavum ATCC14067、Brevibacterium lactofermentum ATCC13869、Corynebacterium glutamicum ATCC13032、Corynebacterium glutamicum ATCC13869、Corynebacterium acetoacidophilum ATCC13870、Microbacterium ammoniaphilum ATCC15354、Pseudomonas putidaPseudomonas sp. D-0110等を挙げることができる。
【0076】
酵母を宿主細胞として用いる場合には、本発明のポリヌクレオチドを含むベクターを宿主細胞へ導入する方法であればいずれも用いることができ、例えば、エレクトロポレーション法〔Methods Enzymol., 194, 182 (1990)〕、スフェロプラスト法〔Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 75, 1929 (1978)〕、酢酸リチウム法〔J. Bacteriology, 153, 163 (1983)〕、Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 75, 1929 (1978)記載の方法等を挙げることができる。
【0077】
宿主細胞としては、サッカロミセス(Saccharomyces)属、シゾサッカロミセス(Schizosaccharomyces)属、クルイベロミセス(Kluyveromyces)属、トリコスポロン(Trichosporon)属、シュワニオミセス(Schwanniomyces)属、ピキア(Pichia)属、カンディダ(Candida)属等に属する微生物、例えば、Saccharomyces cerevisiaeSchizosaccharomyces pombeKluyveromyces lactisTrichosporon pullulansSchwanniomyces alluviusCandida utilis等を挙げることができる。
【0078】
動物細胞を宿主として用いる場合には、本発明のポリヌクレオチドを含むベクターを動物細胞へ導入する方法であればいずれも用いることができ、例えば、エレクトロポレーション法〔Cytotechnology, 3, 133 (1990)〕、リン酸カルシウム法(特開平2-227075号公報)、リポフェクション法〔Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 84, 7413 (1987)〕、Virology, 52, 456 (1973)等を挙げることができる。
【0079】
宿主細胞としては、ヒトの細胞であるナマルバ(Namalwa)細胞、サルの細胞であるCOS細胞、チャイニーズ・ハムスターの細胞であるCHO細胞、HBT5637(特開昭63-299号公報)等を挙げることができる。
【0080】
昆虫細胞を宿主として用いる場合には、例えばカレント・プロトコールズ・イン・モレキュラー・バイオロジー、Baculovirus Expression Vectors, A Laboratory Manual, W. H. Freeman and Company, New York(1992)、Bio/Technology, 6, 47 (1988)等に記載された方法によって、ペプチドを発現することができる。
即ち、組換え遺伝子導入ベクターおよび欠損型バキュロウイルスゲノムを昆虫細胞に共導入して昆虫細胞培養上清中に組換えウイルスを得た後、さらに組換えウイルスを昆虫細胞に感染させ、ペプチドを発現させることができる。
【0081】
バキュロウイルスとしては、例えば、ヤガ科昆虫に感染するウイルスであるアウトグラファ・カリフォルニカ・ヌクレアー・ポリヘドロシス・ウイルス(Autographa californica nuclear polyhedrosis virus)等を用いることができる。
【0082】
昆虫細胞としては、例えば、Spodoptera frugiperdaの卵巣細胞であるSf9、Sf21〔Baculovirus Expression Vectors, A Laboratory Manual, W. H. Freeman and Company, New York (1992)〕、Trichoplusia niの卵巣細胞であるHigh 5(インビトロジェン社製)等を用いることができる。
組換えウイルスを調製するための、昆虫細胞への上記組換え遺伝子導入ベクターと上記バキュロウイルスの共導入方法としては、例えば、リン酸カルシウム法(特開平2-227075号公報)、リポフェクション法〔Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 84, 7413 (1987)〕等を挙げることができる。
【0083】
植物細胞を宿主細胞として用いる場合には、本発明のポリヌクレオチドを含むベクターを植物細胞へ導入する方法であればいずれも用いることができ、例えば、アグロバクテリウム(Agrobacterium)(特開昭59-140885号公報、特開昭60-70080号公報、国際公開第94/00977号パンフレット)、エレクトロポレーション法(特開昭60-251887号公報)、パーティクルガン(遺伝子銃)を用いる方法(特許第2606856号公報、特許第2517813号公報)等を挙げることができる。
【0084】
宿主細胞としては、例えばタバコ、ジャガイモ、トマト、ニンジン、ダイズ、アブラナ、アルファルファ、イネ、コムギ、オオムギ等の植物細胞等を挙げることができる。
【0085】
<5.本発明のペプチドの製造方法>
(1)化学的合成による製造方法
本発明のペプチドは、例えば泉屋信夫、加藤哲夫ら,「ペプチド合成の基礎と実験」,丸善,(1985年)、相本三郎ら,「実験化学講座」,第4版,第22巻,「有機合成IV 酸・アミノ酸・ペプチド」,丸善,(1999年)、Int. J. Pept. Protein Res. 35, 161-214 (1990)、Fields, G. B., Solid-Phase Peptide Synthesis, Methods in Enzymology, vol. 289, Academic Press, (1997)、Pennington, M. W. and Dunn, B. M., Peptide Synthesis Protocols, Methods in Molecular Biology, vol. 35, Humana Press, (1994) 等に記載の公知のペプチド合成法により合成後、精製することによって得ることができる。具体的な合成法としては、例えば、アジド法、酸クロライド法、酸無水物法、混合酸無水物法、ジクロロメタン法、活性エステル法、カルボイミダゾール法、酸化還元法等が挙げられる。また、その合成は、固相合成法および液相合成法のいずれをも適用することができる。即ち、本発明のペプチドを構成するアミノ酸と残余部分とを縮合させ、生成物が保護基を有する場合は保護基を脱離することにより目的とするペプチドを合成することができる。
【0086】
さらに、本発明のペプチドが、ペプチドを構成するアミノ酸残基の側鎖および/またはペプチドのアミノ末端および/またはペプチドのカルボキシ末端が化学修飾や保護がなされているものである場合には、ペプチド合成後に化学修飾する方法、化学修飾されたアミノ酸を用いてペプチド合成する方法、またはペプチド合成の最終脱保護の反応条件を適当に選ぶ方法等、ペプチド合成化学の分野において従来公知の方法〔泉屋信夫ら,「ペプチド合成の基礎と実験」,丸善,(1985年)、矢島治明監修,「続医薬品の開発」,第14巻,「ペプチド合成」,広川書店,(1991年)、日本生化学会編「生化学実験講座」,第1巻,「タンパク質の化学IV―化学修飾とペプチド合成」,東京化学同人、大野素徳ら,「生物化学実験法」,第12,13巻,「蛋白質の化学修飾(上)(下)」,学会出版センター,(1981年)〕によって製造することができる。
【0087】
また、本発明のぺプチドは、自動ペプチド合成機を用いて合成することもできる。ペプチド合成機によるペプチドの合成は、島津製作所製ペプチド合成機、アドバンスト・ケムテック社(Advanced ChemTech, Inc.)製ペプチド合成機等の市販のペプチド合成機上で、適当に側鎖を保護したNα−Fmoc(9−フルオレニルメチルオキシカルボニル)−アミノ酸あるいはNα−Boc(t−ブチルオキシカルボニル)−アミノ酸等を用い、それぞれの合成プログラムに従って実施することができる。原料となる保護アミノ酸および担体樹脂は、アプライド・バイオシステムズ社(Applied Biosystems, Inc.)、島津製作所、国産化学株式会社、EMDバイオサイエンシズ社(EMD Biosienses, Inc.)、渡辺化学株式会社、アドバンスト・ケムテック社、アナスペック社(AnaSpec, Inc.)またはペプチド研究所株式会社等から入手することができる。
【0088】
本発明のペプチドの精製は、通常の精製法、例えば溶媒抽出、蒸留、カラムクロマトグラフィー、液体クロマトグラフィー、再結晶等を組み合わせて行なうことができる。
【0089】
(2)遺伝子工学的手法による製造方法
本発明のペプチドが前述の20種類の必須アミノ酸からなり、側鎖、N末端またはC末端の修飾を受けていない場合は、Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 3rd edition, Cold Spring Harbor Laboratory Press (2001)等に記載された方法等を用い、例えば以下の方法により、本発明のペプチドをコードするDNAを宿主細胞中で発現させて、製造することができる。
【0090】
本発明のペプチドをコードするDNAは、本発明のペプチドのアミノ酸配列から、コードする塩基配列を設計し、DNA合成機により合成することができる。また、本発明のペプチドが配列番号1〜7のいずれかで表されるアミノ酸配列を含むヒトCCDC80の部分ペプチドの場合は、ヒトの白色脂肪組織由来または骨髄由来の細胞のcDNAを鋳型としたPCRにより、単離することもできる。本発明のペプチドをコードするDNAを、本発明のペプチドの製造に用いる場合は、本発明のペプチドをコードする領域の末端は終止コドンになるようにする。
【0091】
以下に、本発明のペプチドのN末端がメチオニンである場合の製造方法を記載する。
上記で得られた本発明のペプチドをコードするDNAを適当な発現ベクターのプロモーターの下流に挿入することにより、組換えベクターを作製し、該組換えベクターを、該発現ベクターに適合した宿主細胞に導入して、本発明のペプチドを発現可能な形質転換体を取得する。
宿主細胞としては、例えば細菌、酵母、動物細胞、昆虫細胞、植物細胞等、目的とする遺伝子を発現できるものであればいずれも用いることができる。
【0092】
該形質転換体を培地に培養し、培養物中に本発明のペプチドを生成蓄積させ、該培養物から採取することにより、本発明のペプチドを製造することができる。
なお、形質転換体を培地に培養する方法は、宿主の培養に用いられる通常の方法に従って行うことができる。
【0093】
形質転換体が大腸菌等の原核生物あるいは酵母等の真核生物を宿主として得られた形質転換体である場合、該形質転換体を培養する培地として、該形質転換体が資化し得る炭素源、窒素源、無機塩類等を含有し、該形質転換体の培養を効率的に行える培地であれば天然培地、合成培地のいずれを用いてもよい。
炭素源としては、該形質転換体が資化し得るものであればよく、例えばグルコース、フラクトース、スクロース、これらを含有する糖蜜、デンプンあるいはデンプン加水分解物等の炭水化物、酢酸、プロピオン酸等の有機酸、エタノール、プロパノール等のアルコール類等を用いることができる。
【0094】
窒素源としては、例えばアンモニア、塩化アンモニウム、硫酸アンモニウム、酢酸アンモニウム、リン酸アンモニウム等の無機酸もしくは有機酸のアンモニウム塩、その他の含窒素化合物、ならびに、ペプトン、肉エキス、酵母エキス、コーンスチープリカー、カゼイン加水分解物、大豆粕および大豆粕加水分解物、各種発酵菌体およびその消化物等を用いることができる。
【0095】
無機塩としては、例えばリン酸第一カリウム、リン酸第二カリウム、リン酸マグネシウム、硫酸マグネシウム、塩化ナトリウム、硫酸第一鉄、硫酸マンガン、硫酸銅、炭酸カルシウム等を用いることができる。
培養は、振盪培養または深部通気攪拌培養等の好気的条件下で行うことが好ましい。培養温度は15〜40℃が好ましく、培養時間は、通常16時間〜7日間が好ましい。培養中のpHは3.0〜9.0に保持することが好ましい。pHの調整は、無機または有機の酸、アルカリ溶液、尿素、炭酸カルシウム、アンモニア等を用いて行うことができる。
【0096】
また、培養中必要に応じて、アンピシリンやテトラサイクリン等の抗生物質を培地に添加してもよい。
プロモーターとして誘導性のプロモーターを用いた組換えベクターで形質転換した微生物を培養するときには、必要に応じてインデューサーを培地に添加するのが好ましい。例えば、lacプロモーターを用いた組換えベクターで形質転換した微生物を培養するときにはイソプロピル−β−D−チオガラクトピラノシド等を、trpプロモーターを用いた組換えベクターで形質転換した微生物を培養するときにはインドールアクリル酸等を培地に添加してもよい。
【0097】
動物細胞を宿主として得られた形質転換体を培養する培地としては、例えばRPMI1640培地〔The Journal of the American Medical Association, 199, 519 (1967)〕、Eagleのミニマル・エッセンシャル培地(MEM)〔Science, 122, 501 (1952)〕、ダルベッコ改変イーグル培地〔Virology, 8, 396 (1959)〕、199培地〔Proceeding of the Society for the Biological Medicine, 73, 1 (1950)〕またはこれら培地に牛胎児血清等を添加した培地等が挙げられる。
【0098】
培養は、通常、5%CO2存在下で行うのが好ましく、pHは6〜8、温度は30〜40℃が好ましく、1〜7日間行うのが好ましい。
また、培養中必要に応じて、カナマイシン、ペニシリン等の抗生物質を培地に添加してもよい。
また、特開平2-227075号公報に記載されている方法に準じて、ジヒドロ葉酸還元酵素遺伝子等を用いた遺伝子増幅系を利用して生産量を上昇させることもできる。
【0099】
昆虫細胞を宿主として得られた形質転換体を培養する培地としては、一般に使用されているTNM−FH培地(ベクトン・ディッキンソン社製)、Sf−900 II SFM培地(インビトロジェン社製)、ExCell400、ExCell405(いずれもJRHバイオサイエンシズ社製)、グレース(Grace)の昆虫培地〔Nature, 195, 788 (1962)〕等を用いることができる。
培養は、通常、pHは6〜7、温度は25〜30℃が好ましく、1〜5日間行うのが好ましい。
また、培養中必要に応じて、ゲンタマイシン等の抗生物質を培地に添加してもよい。
【0100】
植物細胞を宿主として得られた形質転換体は、細胞として、または植物の細胞や器官に分化させて培養することができる。該形質転換体を培養する培地としては、一般に使用されているムラシゲ・アンド・スクーグ培地、ホワイト(White)培地、またはこれら培地にオーキシン、サイトカイニン等、植物ホルモンを添加した培地等を用いることができる。
培養は、通常、pHは5〜9、温度は20〜40℃が好ましく、3〜60日間行うのが好ましい。
また、培養中必要に応じて、カナマイシン、ハイグロマイシン等の抗生物質を培地に添加してもよい。
【0101】
上記のとおり、本発明のペプチドをコードするDNAを組み込んだ組換え体ベクターを保有する微生物、動物細胞、あるいは植物細胞由来の形質転換体を、通常の培養方法に従って培養し、ペプチドを生成蓄積させ、培養物よりペプチドを採取することにより、ペプチドを製造することができる。
【0102】
本発明のペプチドは、宿主細胞内での分解を避けるため、任意のポリペプチド(以下、ポリペプチドXとよぶ)と本発明のペプチドとの融合蛋白質を製造した後、本発明のペプチドを融合蛋白質から単離して製造してもよい。融合蛋白質を発現する発現ベクターは、上記の本発明のペプチドをコードするDNAを作製する際に、その5’末端に特定のプロテアーゼの認識配列またはメチオニンをコードするDNAを付加して作製し、ポリペプチドXの発現ベクターの、ポリペプチドXをコードするDNAとフレームを合わせて連結して作製することができる。ただし、メチオニンをコードするDNAを付加するのは、本発明のペプチドがメチオニンを含んでいない場合に限る。ポリペプチドXとしては任意のポリペプチドを用いることができるが、例えば、グルタチオンS−トランスフェラーゼ、マルトース結合蛋白質、DsbA、DsbC、プロテインA等が挙げられる。特定のプロテアーゼの認識配列としては、ファクターXa認識配列(Ile-Glu-Gly-Arg)、エンテロキナーゼ認識配列(Asp-Asp-Asp-Asp-Lys)等が挙げられる。ポリペプチドXの発現ベクターは、上記の本発明のペプチドの発現ベクターに準じて、本発明のペプチドをコードするDNAの代わりにポリペプチドXをコードするDNAを挿入して作製できる。また、市販の融合蛋白質発現用ベクター、例えば、グルタチオンS−トランスフェラーゼとの融合蛋白質発現用ベクターpGEX-3(GEヘルスケア社製)、マルトース結合蛋白質との融合蛋白質発現ベクターpMAL-c2X、pMAL-p2E(ニュー・イングランド・バイオラブズ社製)、DsbAとの融合蛋白質発現ベクターpET-39b(+)(EMDバイオサイエンシズ社製)等を利用してもよい。ポリペプチドXに特定のプロテアーゼの認識配列を介して本発明のペプチドが融合している場合は、認識配列に対応するプロテアーゼ処理により、本発明のペプチドを融合蛋白質から切断することができる。ポリペプチドXのC末端にメチオニンを介して本発明のペプチドが融合している場合は、特開平1-102096号公報に記載の方法に準じて、臭化シアン処理することにより、本発明のペプチドを融合蛋白質から切断することができる。プロテアーゼまたは臭化シアンで処理した後、ゲルろ過、逆相HPLC、アフィニティークロマトグラフィー等を組み合わせることにより、本発明のペプチドを単離精製することができる。
【0103】
文献〔J. Biol. Chem.,264, 17619 (1989); Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 86, 8227 (1989); Genes Develop., 4, 1288(1990); 特開平5-336963号公報; 国際公開第94/23021号パンフレット〕の記載に準じて、上記の本発明のペプチドをコードするDNAを作製する際に、その5’末端に分泌蛋白質のシグナルペプチドをコードするDNAを付加して作製し、該DNAを用いて、上記と同様にして組換えベクターを作製し、宿主細胞に導入することにより、本発明のペプチドを培地中に分泌させて製造することができる。
【0104】
本発明のペプチドのN末端がメチオニンでない場合は、上記の融合蛋白質を製造した後に単離する方法または培地中に分泌させる方法で製造することができる。例えば、配列番号1で表されるアミノ酸配列からなる本発明のペプチドは、以下のようにして製造できる。まず、配列番号8で表される塩基配列からなるDNAおよび配列番号8と相補的な塩基配列からなるDNAをDNA合成機で化学合成した後、両者をアニーリングして2本鎖DNAを調製する。該2本鎖DNAとXmnIで切断したpMAL-c2Xを連結させて、pMAL-c2XのXmnIサイトに該2本鎖DNAを挿入したプラスミドを作製する。得られたプラスミドは、マルトース結合蛋白質のC末端に、ファクターXa認識配列(Ile-Glu-Gly-Arg)および配列番号1で表されるアミノ酸配列からなるペプチドが融合した融合蛋白質をコードする。得られたプラスミドでEscherichia coliを形質転換する。得られた形質転換体を培地中に培養して、形質転換体の細胞内に融合蛋白質を発現させる。培養後の菌体を遠心分離により単離した後、菌体を破砕して、融合蛋白質を含む溶液を得る。得られた溶液から、マルトースを固定化したカラムによるアフィニティークロマトグラフィーにより、融合蛋白質を単離した後、ファクターXaで融合蛋白質を処理し、配列番号1で表されるアミノ酸配列からなるペプチドを融合蛋白質から切り離す。ゲルろ過あるいは逆相HPLC等で配列番号1で表されるアミノ酸配列からなるペプチドを単離、精製することができる。
【0105】
形質転換体により製造されたペプチドを単離精製するためには、通常の蛋白質の単離精製法を用いることができる。
例えば本発明のペプチドが、細胞内に溶解状態で発現した場合には、培養終了後、細胞を遠心分離により回収し、水系緩衝液にけん濁後、超音波破砕機、フレンチプレス、マントンガウリンホモゲナイザー、ダイノミル等により細胞を破砕し、無細胞抽出液を得る。該無細胞抽出液を遠心分離することにより得られる上清から、通常の蛋白質の単離精製法、即ち、溶媒抽出法、硫安等による塩析法、脱塩法、有機溶媒による沈殿法、ジエチルアミノエチル(DEAE)−セファロース、DIAION HPA-75(三菱化成社製)等のレジンを用いた陰イオン交換クロマトグラフィー法、S-Sepharose FF(Pharmacia社製)等のレジンを用いた陽イオン交換クロマトグラフィー法、ブチルセファロース、フェニルセファロース等のレジンを用いた疎水性クロマトグラフィー法、分子篩を用いたゲルろ過法、アフィニティークロマトグラフィー法、クロマトフォーカシング法、等電点電気泳動等の電気泳動法等の手法を単独あるいは組み合わせて用い、精製標品を得ることができる。
【0106】
また、該ペプチドが細胞内に不溶体を形成して発現した場合は、同様に細胞を回収後、破砕し、遠心分離を行うことにより、沈殿画分としてペプチドの不溶体を回収する。回収したペプチドの不溶体を蛋白質変性剤で可溶化する。該可溶化液を希釈または透析し、該可溶化液中の蛋白質変性剤の濃度を下げることにより、該ペプチドを正常な立体構造に戻す。該操作の後、上記と同様の単離精製法により該ペプチドの精製標品を得ることができる。
【0107】
本発明のペプチドが細胞外に分泌された場合には、培養上清に該ペプチドを回収することができる。即ち、該培養物を上記と同様の遠心分離等の手法により処理することにより培養上清を取得し、該培養上清から、上記と同様の単離精製法を用いることにより、精製標品を得ることができる。
【0108】
<6.本発明のペプチドまたはその薬理学的に許容される塩を含有する医薬>
本発明のペプチドおよびその薬理学的に許容される塩は、哺乳動物の副腎、腎臓、血管または心臓の細胞の細胞内カルシウム濃度を上昇させる活性を有するので、血圧や血流量を調節する循環調節活性を有する。したがって、本発明のペプチドおよびその薬理学的に許容される塩は、循環調節剤、昇圧剤、あるいは心筋梗塞、虚血性心疾患または脳梗塞等の循環器系疾患の治療薬の有効成分として用いることができる。
【0109】
また、本発明のペプチドおよびその薬理学的に許容される塩は、哺乳動物の視床下部または下垂体、あるいは脳組織内の細胞の細胞内カルシウム濃度を上昇させる活性を有するので、摂食量や摂水量、エネルギー代謝を調節するエネルギー代謝調節活性を有する。したがって、本発明のペプチドおよびその薬理学的に許容される塩は、摂食調節剤、摂水調節剤、代謝調節剤、あるいは肥満、拒食症または不眠症等のエネルギー代謝調節系の疾患の治療薬の有効成分として用いることができる。
【0110】
本発明のペプチドまたはその薬理学的に許容される塩を含有する医薬は、活性成分として該ペプチドまたはその薬理学的に許容される塩単独で、あるいは任意の他の治療のための有効成分との混合物として含有することができる。また、それら医薬は、活性成分を薬理学的に許容される一種もしくはそれ以上の担体と一緒に混合し、製剤学の技術分野においてよく知られている任意の方法により製造される。
【0111】
投与経路は、治療に際し最も効果的なものを使用するのが望ましく、経口または、例えば脳室内や静脈内等の非経口で投与される。
投与形態としては、錠剤、散剤、顆粒剤、シロップ剤、注射剤等がある。
経口投与に適当な、例えばシロップ剤のような液体調製物は、水、蔗糖、ソルビット、果糖等の糖類、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール等のグリコール類、ごま油、オリーブ油、大豆油等の油類、p−ヒドロキシ安息香酸エステル類等の防腐剤、ストロベリーフレーバー、ペパーミント等のフレーバー類等を使用して製造できる。また、錠剤、散剤および顆粒剤等は、乳糖、ブドウ糖、蔗糖、マンニット等の賦形剤、澱粉、アルギン酸ソーダ等の崩壊剤、ステアリン酸マグネシウム、タルク等の滑沢剤、ポリビニールアルコール、ヒドロキシプロピルセルロース、ゼラチン等の結合剤、脂肪酸エステル等の界面活性剤、グリセリン等の可塑剤等を用いて製造できる。
【0112】
非経口投与に適当な製剤は、好ましくは受容者の血液と等張である活性化合物を含む滅菌水性剤からなる。例えば、注射剤の場合は、塩溶液、ブドウ糖溶液または塩水とブドウ糖溶液の混合物からなる担体等を用いて注射用の溶液を調製する。
また、これら非経口剤においても、経口剤で例示した希釈剤、防腐剤、フレーバー類、賦形剤、崩壊剤、滑沢剤、結合剤、界面活性剤、可塑剤等から選択される1種もしくはそれ以上の補助成分を添加することもできる。
【0113】
本発明のペプチドまたはその薬理学的に許容される塩の投与量および投与回数は、投与形態、患者の年齢、体重、治療すべき症状の性質もしくは重篤度により異なるが、通常経口の場合、成人一人当り0.01mg〜1g、好ましくは0.05〜50mgを一日一回ないし数回投与する。静脈内投与等の非経口投与の場合、成人一人当り0.001〜100mg、好ましくは0.01〜10mgを一日一回ないし数回投与する。しかしながら、これら投与量および投与回数に関しては、前述の種々の条件により変動する。
【0114】
また本発明のペプチドを発現する組換えベクターや、該組換えベクターを導入した所定の細胞を体内へ移植することにより、体内で該ペプチドを発現させることができる。体内で発現された本発明のペプチドは、それ自体あるいはその薬理学的に許容される塩を体外から投与した場合と同様な効果を期待できる。該ペプチドを発現する組換えベクターや、該組換えベクターを導入した所定の細胞は、上記3.または4.に記載された方法などにより製造することができる。
【0115】
<7.本発明のペプチドによる視床下部、下垂体、副腎、腎臓、心臓、血管または脳組織内の細胞の細胞内カルシウムイオン濃度の上昇を阻害または促進する物質のスクリーニング方法>
本発明のペプチドによる視床下部や下垂体細胞内でのカルシウム濃度の上昇は、被験物質が、摂食亢進、摂食抑制、飲水亢進、飲水抑制、睡眠誘起、覚醒亢進、代謝亢進、または代謝抑制などのエネルギー代謝調節活性あるいは循環調節活性を有することの指標となるため、医薬候補物質のスクリーニングに用いることができる。
【0116】
本発明のペプチドまたはその薬理学的に許容される塩による哺乳動物の視床下部、下垂体、副腎、腎臓、心臓、血管または脳組織内の細胞の細胞内カルシウムイオン濃度の上昇を阻害する物質は、(i)視床下部、下垂体、副腎、腎臓、心臓、血管または脳組織内の細胞に、該本発明のペプチドまたはその薬理学的に許容される塩および被験物質を接触させた場合の細胞応答を測定し、(ii)同じ細胞に被験物質の非存在下で、該本発明のペプチドまたはその薬理学的に許容される塩を接触させた場合の細胞応答と比較し、被験物質の存在下で細胞応答が抑制される場合にその被験物質を該本発明のペプチドによる視床下部、下垂体、副腎、腎臓、心臓、血管または脳組織内の細胞の細胞内カルシウムイオン濃度の上昇を阻害する物質として特定すること、によりスクリーニングできる。
【0117】
また同様に、(i)視床下部、下垂体、副腎、腎臓、心臓、血管または脳組織内の細胞に、該本発明のペプチドまたはその薬理学的に許容される塩および被験物質を接触させた場合の細胞応答を測定し、(ii)同じ細胞に被験物質の非存在下で、該本発明のペプチドまたはその薬理学的に許容される塩を接触させた場合の細胞応答と比較し、被験物質の存在下で細胞応答が促進される場合にその被験物質を該本発明のペプチドによる視床下部、下垂体、副腎、腎臓、心臓、血管または脳組織内の細胞の細胞内カルシウムイオン濃度の上昇を促進する物質として特定すること、により該本発明のペプチドによる視床下部、下垂体、副腎、腎臓、心臓、血管または脳組織内の細胞の細胞内カルシウムイオン濃度の上昇を促進する物質をスクリーニングできる。
【0118】
細胞応答としては、視床下部、下垂体、副腎、腎臓、心臓、血管または脳組織内の細胞に該本発明のペプチドまたはその薬理学的に許容される塩を接触させたときに起こる、測定可能な細胞応答であれば、いかなる細胞応答でもかまわないが、例えば、細胞内カルシウムイオン濃度の上昇が挙げられる。
【0119】
上記本発明のスクリーニング方法で用いる視床下部、下垂体、副腎、腎臓、心臓、血管または脳組織内の細胞は、本発明のペプチドまたはその薬理学的に許容される塩と接触させたときに細胞応答を示す細胞であれば、哺乳動物の視床下部、下垂体、副腎、腎臓、心臓、血管または脳組織内の細胞に由来する細胞株でもよいし、哺乳動物から採取した視床下部、下垂体、副腎、腎臓、心臓、血管または脳組織を細断したものでもよい。アポエクオリン遺伝子を導入して作製した、全身にアポエクオリンを発現するトランスジェニックマウス(国際公開第2002/010371号パンフレット)の視床下部、下垂体、副腎、腎臓、心臓、血管または脳組織を採取し、細断して得られる細胞は、セレンテラジンの存在下で発光量をルミノメーターで測定することにより、細胞内カルシウムイオン濃度を簡便に測定できるので、好ましい。なお、細胞内カルシウムイオン濃度は、上記1.の(i)および(ii)に記載された方法で測定することができる。
【0120】
上記本発明のスクリーニング方法で得られる本発明のペプチドまたはその薬理学的に許容される塩による視床下部、下垂体、副腎、腎臓、心臓、血管または脳組織内の細胞の細胞内カルシウムイオン濃度の上昇を促進する物質は、本発明のペプチドまたはその薬理学的に許容される塩と同様に、エネルギー代謝調節活性または循環調節活性を有するので、摂食調節剤、摂水調節剤、代謝調節剤、循環調節剤、昇圧剤、あるいは摂食障害、摂水障害、代謝障害、睡眠障害などのエネルギー代謝調節系の疾患や心筋梗塞、虚血性心疾患または脳梗塞等の循環器系疾患の治療薬の候補物質として医薬の開発に有用である。また、本発明のペプチドまたはその薬理学的に許容される塩による視床下部、下垂体、副腎、腎臓、心臓、血管または脳組織内の細胞の細胞内カルシウムイオン濃度の上昇を阻害する物質は、本発明のペプチドまたはその薬理学的に許容される塩が有する循環調節活性、例えば血圧を上昇させる活性を阻害するので、降圧剤の候補物質として医薬の開発に有用である。
【0121】
<8.本発明のペプチドの受容体に対するアゴニストまたはアンタゴニストのスクリーニング方法>
本発明のペプチドの受容体に対するアゴニストまたはアンタゴニストは、(i)視床下部、下垂体、副腎、腎臓、心臓もしくは血管の細胞、あるいは脳組織内の細胞または該細胞の膜画分に、該本発明のペプチドまたはその薬理学的に許容される塩および被験物質を接触させた場合の該細胞または該細胞の膜画分に対する該ペプチドまたはその薬理学的に許容される塩の結合量を測定し、(ii)同じ細胞または膜画分に被験物質の非存在下で、該本発明のペプチドまたはその薬理学的に許容される塩を接触させた場合の該細胞または該細胞の膜画分に対する該ペプチドまたはその薬理学的に許容される塩の結合量と比較し、被験物質の存在下で該ペプチドまたはその薬理学的に許容される塩の結合量が低下する場合にその被験物質を該本発明のペプチドの受容体に対するアゴニストまたはアンタゴニストの候補物質として特定すること、によりスクリーニングできる。
【0122】
視床下部、下垂体、副腎、腎臓、心臓、血管または脳組織内の細胞としては、哺乳動物から採取した視床下部、下垂体、副腎、腎臓、心臓、血管または脳組織を細断した組織片、あるいは視床下部、下垂体、副腎、腎臓、心臓、血管または脳組織内の細胞に由来する細胞株等を用いることができる。該細胞または該細胞の細胞膜画分は、適当な緩衝液に懸濁する。緩衝液は、本発明のペプチドまたはその薬理学的に許容される塩と該細胞または該細胞の細胞膜画分との結合を阻害しない緩衝液であればいずれでもよく、例えばpH4〜10(望ましくはpH6〜8)のリン酸緩衝液やTris−HCl緩衝液等が用いられる。また、非特異的結合を低減させる目的で、CHAPS、Tween−80、ジギトニン、デオキシコール酸等の界面活性剤やウシ血清アルブミンやゼラチン等の各種蛋白質を緩衝液に加えることもできる。さらに、プロテアーゼによる本発明のペプチドやリガンドの分解を抑える目的でPMSF、ロイペプチン、E−64、ペプスタチン等のプロテアーゼ阻害剤を添加することもできる。
【0123】
10μL〜10mLの該細胞または該細胞の細胞膜画分の懸濁液に、125I、H等の放射性同位元素で標識した一定の放射能量を有する本発明のペプチドを共存させて結合実験を行う。反応は0〜50℃、好ましくは4〜37℃で、20分〜24時間、好ましくは30分〜3時間行なう。反応後、ガラス繊維濾紙等で濾過し、適量の同緩衝液で洗浄した後、ガラス繊維濾紙に残存する放射活性をγ−カウンターまたは液体シンチレーションカウンターで計測する。この時の結合量を全結合量(A)とする。大過剰の非標識の同化合物を加えた条件で同様の反応を行い、その時の結合量を非特異的結合量(B)とする。被験物質を加えた条件で同様の反応を行い、その時の結合量をCとする。被験物質の結合阻害率は下記の式で求めることができる。
【0124】
【数1】

【0125】
上記本発明のスクリーニング方法で得られる本発明のペプチドの受容体に対するアゴニストは、本発明のペプチドまたはその薬理学的に許容される塩と同様に、エネルギー代謝調節活性または循環調節活性を有するので、摂食調節剤、摂水調節剤、代謝調節剤、循環調節剤、昇圧剤あるいは摂食障害、摂水障害、代謝障害、睡眠障害などのエネルギー代謝調節系の疾患や心筋梗塞、虚血性心疾患または脳梗塞等の循環器系疾患の治療薬の候補物質として医薬の開発に有用である。また、本発明のペプチドの受容体に対するアンタゴニストは、本発明のペプチドまたはその薬理学的に許容される塩が有する循環調節活性、例えば血圧を上昇させる活性を阻害するので、降圧剤の候補物質として医薬の開発に有用である。
【0126】
<9.本発明のペプチドを特異的に認識する抗体>
本発明のペプチドを特異的に認識する抗体は、上記本発明のペプチドに含まれる(i)配列番号1〜7のいずれかで表されるアミノ酸配列、(ii)配列番号1〜7のいずれかで表されるアミノ酸配列において、1〜5個のアミノ酸が置換、欠失もしくは付加されたアミノ酸配列、または(iii)配列番号1〜7のいずれかで表されるアミノ酸配列と54%以上の同一性を有するアミノ酸配列中に存在するエピトープと結合する抗体であり、上記本発明のペプチドを特異的に認識することができる。
【0127】
ここで、「特異的に認識する」とは、ある抗体の特定の抗原に対する親和性が、他の抗原に対する親和性よりも高いことを意味する。
【0128】
好ましい態様において、前記抗体は、配列番号1〜7のいずれかで表されるアミノ酸配列からなるペプチドを特異的に認識する。当該抗体は、配列番号1〜7から選択された一つのアミノ酸配列中に存在するエピトープと結合する。当該抗体は抗原特異性が高く、例えば、配列番号1で表されるアミノ酸配列からなるペプチドを特異的に認識する抗体の当該ペプチドに対する親和性は、配列番号2〜7のいずれかで表されるアミノ酸配列からなるペプチドに対する親和性と比較して100倍以上高い。同様に、配列番号2で表されるアミノ酸配列からなるペプチドを特異的に認識する抗体の当該ペプチドに対する親和性は、配列番号1又は3〜7のいずれかで表されるアミノ酸配列からなるペプチドに対する親和性と比較して100倍以上高く、配列番号3で表されるアミノ酸配列からなるペプチドを特異的に認識する抗体の当該ペプチドに対する親和性は、配列番号1、2又は4〜7のいずれかで表されるアミノ酸配列からなるペプチドに対する親和性と比較して100倍以上高く、配列番号4で表されるアミノ酸配列からなるペプチドを特異的に認識する抗体の当該ペプチドに対する親和性は、配列番号1〜3又は5〜7のいずれかで表されるアミノ酸配列からなるペプチドに対する親和性と比較して100倍以上高く、配列番号5で表されるアミノ酸配列からなるペプチドを特異的に認識する抗体の当該ペプチドに対する親和性は、配列番号1〜4、6又は7のいずれかで表されるアミノ酸配列からなるペプチドに対する親和性と比較して100倍以上高く、配列番号6で表されるアミノ酸配列からなるペプチドを特異的に認識する抗体の当該ペプチドに対する親和性は、配列番号1〜5又は7のいずれかで表されるアミノ酸配列からなるペプチドに対する親和性と比較して100倍以上高く、配列番号7で表されるアミノ酸配列からなるペプチドを特異的に認識する抗体の当該ペプチドに対する親和性は、配列番号1〜6のいずれかで表されるアミノ酸配列からなるペプチドに対する親和性と比較して100倍以上高い。なお、抗体の親和性は、IC50(選択したペプチドの該抗体に対する最大結合量を50%阻害する対象ペプチドの量または濃度)で評価される。
【0129】
それらの抗体は、ポリクローナル抗体でもモノクローナル抗体でもよい。また、それらの抗体には、ポリクローナル抗体またはモノクローナル抗体から調製されるFab、Fab’、F(ab’)2等の抗体断片も含まれる。また、モノクローナル抗体には、非ヒト動物で作製したモノクローナル抗体の可変領域とヒト抗体の定常領域からなるヒト型キメラ抗体、非ヒト動物で作製したモノクローナル抗体の相補性決定領域(CDR)をヒト抗体のフレームワーク領域に挿入した可変領域と、ヒト抗体の定常領域からなるヒト型CDR移植抗体も含まれる。
【0130】
(1)ポリクローナル抗体の作製
上記本発明のペプチドを抗原として、非ヒト動物の皮内、静脈内、腹腔内または筋肉内等に投与することにより、該ペプチドと結合するポリクローナル抗体を作製することができる。またペプチドの溶解性等の問題で抗体がつくりにくい場合は、ペプチドをポリエチレングリコール等の親水性修飾基で修飾したエピトープを用いることも可能である。このポリクローナル抗体は、本発明のペプチドに特異的に結合することができる。この場合、抗原とするペプチドをキーホール・リンペット・ヘモシアニン、ウシチログロブリン、オボアルブミン等のキャリア蛋白に共有結合させたものを、アジュバントと共に投与するのが望ましい。抗原とするペプチドのキャリア蛋白への共有結合は、マレイミド、カルボジイミド、グルタルアルデヒド等の架橋剤を用いた反応により行うことができる。マレイミドの反応を行う場合は、抗原とするペプチドのアミノ酸配列のN末端またはC末端にシステイン残基を付加したペプチドを上記2に記載の方法で作製し、システインを介して共有結合させる。アジュバントとしては、例えばフロイントの完全アジュバント、水酸化アルミニウムゲル、百日咳菌ワクチン等が挙げられる。抗原を投与する非ヒト動物として、ウサギ、ヤギ、ラット、マウス、ハムスター等を用いることができ、投与量は動物1匹に1回当たり、抗原とするペプチドを50〜200μg含有する量が好ましい。
【0131】
該抗原の投与は、例えば1回目の投与の後1〜3週間おきに、血清の抗体価が十分に上昇するまで3〜10回行うのが好ましい。血清の抗体価は、各投与後3〜7日目に採血して血清を調製し、酵素免疫測定法、ラジオイムノアッセイ法等により測定できる。酵素免疫測定法は、文献〔酵素免疫測定法、医学書院 (1976); Antibodies-A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory (1988)〕に基づき、(i)抗原としたペプチドを抗原に用いたものとは別のキャリア蛋白質と共有結合させたものを適当なプレートに固定化し、(ii)ブロッキングを行って洗浄し、(iii)免疫した動物から調製した血清を反応させた後、洗浄し、(iv)免疫に用いた動物のIgGに対する酵素標識した抗体と反応させて洗浄し、(v)標識酵素により発色または発光する基質を用いた反応を行い、発色量または発光量を測定して抗体価の指標とする、という手順で行うことができる。
【0132】
その血清が抗原としたペプチドに対して十分な抗体価を示した非ヒト動物より、血液を採取して血清を調製する。この血清、即ち抗血清をポリクローナル抗体として使用することもできるし、該抗血清からポリクローナル抗体を精製することもできる。
抗血清からポリクローナル抗体を精製する方法としては、例えば遠心分離、40〜50%飽和硫酸アンモニウムによる塩析、カプリル酸沈殿〔Antibodies, A Laboratory manual, Cold Spring Harbor Laboratory, (1988)〕、またはDEAE−セファロースカラム、陰イオン交換カラム、プロテインAまたはG−カラムあるいはゲル濾過カラム等を用いるクロマトグラフィー等を、単独または組み合わせて処理する方法が挙げられる。
【0133】
(2)モノクローナル抗体の作製
以下に示す方法より、本発明のペプチドのアミノ酸配列中に存在するエピトープと結合するモノクローナル抗体を作製することができる。またペプチドの溶解性等の問題で抗体がつくりにくい場合は、ペプチドをポリエチレングリコール等の親水性修飾基で修飾したエピトープを用いることも可能である。このモノクローナル抗体は、本発明のペプチドに特異的に結合することができる。
【0134】
(a)抗体産生細胞の調製
マウスまたはラットを抗原を投与する動物として用い、(1)のポリクローナル抗体の作製と同様の抗原の投与を行い、その血清が抗原としたペプチドに対して十分な抗体価を示したマウスまたはラットを、抗体産生細胞の供給源とすることができる。抗体産生細胞としては、脾細胞を用いることができる。抗体産生細胞は、十分な抗体価を示したマウスまたはラットから、例えば以下のようにして調製することができる。
【0135】
該抗体価を示したマウスまたはラットに抗原を最終投与した後3〜7日目に、脾臓を摘出する。脾臓をMEM中で細断し、ピンセットでほぐし、遠心分離した後、上清を捨て、沈殿の脾細胞を回収する。得られた脾細胞をトリス−塩化アンモニウム緩衝液(pH7.65)で1〜2分間処理し赤血球を除去した後、MEMで3回洗浄したものを抗体産生細胞として用いることができる。
【0136】
(b)骨髄腫細胞の調製
骨髄腫細胞としては、マウスまたはラットの骨髄腫細胞から樹立した株化細胞を用いることができる。株化骨髄腫細胞としては、例えば、8−アザグアニン耐性マウス(BALB/c由来)骨髄腫細胞株P3−X63Ag8−U1〔Curr. Topics. Microbiol. Immunol., 81, 1 (1978); Europ. J. Immunol., 6, 511 (1976)〕、SP2/0−Ag14〔Nature, 276, 269 (1978)〕、P3−X63−Ag8653〔J. Immunol., 123, 1548 (1979)〕、P3−X63−Ag8〔Nature, 256, 495 (1975)〕等が挙げられる。これらの細胞株は、8−アザグアニン培地〔RPMI−1640培地にグルタミン(1.5mmol/L)、2−メルカプトエタノール(5×10−5mol/L)、ジェンタマイシン(10μg/mL)およびウシ胎児血清(10%)を加えた培地(以下、正常培地という)に、さらに8−アザグアニン(15μg/mL)を加えた培地〕で継代するのが好ましく、また細胞融合の3〜4日前には正常培地で培養するのが好ましい。融合には該細胞を2×107個以上用いるのが好ましい。
【0137】
(c)ハイブリドーマの作製
(a)で取得した抗体産生細胞と(b)で取得した骨髄腫細胞を、例えば、以下のようにしてポリエチレングリコールを用いて細胞融合させるにより、ハイブリドーマを作製できる。(a)で取得した抗体産生細胞と(b)で取得した骨髄腫細胞を、MEMまたはPBS(リン酸二ナトリウム1.83g、リン酸一カリウム0.21g、食塩7.65g、蒸留水1リットル、pH7.2)でよく洗浄し、細胞数が、抗体産生細胞:骨髄腫細胞=5〜10:1になるよう混合し、1,200rpmで5分間遠心分離した後、上清を捨てる。得られた沈殿画分の細胞群をよくほぐし、該細胞群に、攪拌しながら、37℃で、108抗体産生細胞あたり、ポリエチレングリコール−1000 2g、MEM 2mLおよびジメチルスルホキシド 0.7mLを混合した溶液を0.2〜1mL添加し、さらに1〜2分間ごとにMEM 1〜2mLを数回添加する。添加後、MEMを加えて全量が50mLになるように調製する。該調製液を900rpmで5分間遠心分離後、上清を捨てる。
【0138】
細胞融合後の細胞は、例えば、以下のように培養し、抗体の生産量の高いハイブリドーマを選択することができる。得られた沈殿画分の細胞を、ゆるやかにほぐした後、メスピペットによる吸込み、吹出しでゆるやかにHAT培地〔正常培地にヒポキサンチン(10−4mol/L)、チミジン(1.5×10−5mol/L)およびアミノプテリン(4×10−7mol/L)を加えた培地〕100mL中に懸濁する。該懸濁液を96穴培養用プレートに100μL/穴ずつ分注し、5%CO2インキュベーター中、37℃で7〜14日間培養するのが好ましい。培養後、培養上清の一部を採取し、血清の代わりに該培養上清を用いて(1)で上述した抗体価の測定を行い、抗体価の高い培養上清に対応するハイブリドーマを、抗体の生産量の高いハイブリドーマとして選択することができる。
【0139】
該ハイブリドーマは、クローニングを行い、得られた各ハイブリドーマのクローンから、抗体を高生産するものを選択することにより、安定して抗体を高生産するハイブリドーマ細胞を得ることができる。クローニングは、例えば、限界希釈法等により行うことができ、2回繰り返す〔1回目は、HT培地(HAT培地からアミノプテリンを除いた培地)、2回目は、正常培地を使用する〕のが好ましい。クローニングにより得られた各クローンの培養上清を用いて、上述の抗体価の測定を行い、強い抗体価の認められた培養上清に対応するハイブリドーマのクローンを、安定して抗体を高生産するハイブリドーマ細胞として選択することができる。
【0140】
(d)モノクローナル抗体の調製
モノクローナル抗体は、例えば、以下のように(c)で選択されたハイブリドーマをヌードマウス内で腹水癌として増殖させた後、腹水から調製することができる。2,6,10,14−テトラメチルペンタデカン(プリスタン)0.5mLを腹腔内投与し、2週間飼育した8〜10週令のマウスまたはヌードマウスに、(c)で取得したモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマ細胞5〜20×106細胞/匹を腹腔内に注射するのが好ましい。10〜21日後に、ハイブリドーマが腹水癌化したマウスから腹水を採取し、3,000rpmで5分間遠心分離して固形分を除去する。得られた腹水の上清より、ポリクローナル抗体で用いた方法と同様の方法でモノクローナル抗体を精製、取得することができる。
【0141】
抗体のサブクラスの決定は、マウスモノクローナル抗体タイピングキットまたはラットモノクローナル抗体タイピングキットを用いて行うことができる。ペプチド量は、ローリー法あるいは280nmでの吸光度より算出することができる。
【0142】
(3)本発明のペプチドの測定方法
上記のように作製した抗体を用いて、本発明のペプチドを免疫学的に検出または定量することができる。免疫学的な検出または定量方法としては、競合法、サンドイッチ法、免疫組織化学、ウェスタンブロット、凝集法(単クローン抗体実験マニュアル、講談社サイエンティフィック、1987;続生化学実験講座5、免疫生化学研究法、東京化学同人、1986)等が挙げられる。
【0143】
競合法は、調製した抗体に、試料溶液および一定量の競合物質(測定対象の本発明のペプチドを酵素、ビオチン、放射性同位元素、蛍光物質等で標識したもの)を反応させて、試料溶液中の本発明のペプチドおよび競合物質を競合的に抗体と結合させた後、抗体と結合した競合物質の量を標識を利用して測定し、その結合量から本発明のペプチドを定量する方法である。例えば抗体をプレートやビーズ等の固相に固定化し、本発明のペプチドおよび競合物質を競合的に抗体と結合させた後、固相を洗浄し、固相上の抗体への競合物質の結合量を測定する方法、本発明のペプチドおよび競合物質を競合的に抗体と結合させた後、γ−グロブリンおよびポリエチレングリコールにより免疫複合体を沈殿させて抗体と結合していない競合物質と分離し、抗体と結合した競合物質の量を測定する方法等が挙げられる。例えば、5〜10点の濃度を決めた本発明のペプチドの溶液を調製し、この溶液を試料溶液とした場合の競合物質の抗体への結合量を測定して、ペプチドの濃度と競合物質の結合量をプロットした検量線を作成し、本発明のペプチドを定量する試料溶液についての、競合物質の結合量を検量線にあてはめることにより、試料溶液の本発明のペプチドを定量することができる。
【0144】
サンドイッチ法は本発明のペプチドと特異的に結合する2種類の抗体を使用する方法であり、例えば、片方の抗体をプレートやビーズ等の固相に固定化したものに試料溶液を反応させ、試料中の本発明のペプチドを固相上の抗体と結合させた後、酵素、ビオチン、放射性同位元素、蛍光物質等で標識したもう一方の抗体を反応させて、固相上の抗体と結合した本発明のペプチドにさらに該標識抗体を結合させ、該標識抗体の結合量を標識物質を利用して測定し、その結合量から本発明のペプチドを定量する方法が挙げられる。例えば、5〜10点の濃度を決めた本発明のペプチドの溶液を調製し、この溶液を試料溶液とした場合の、標識抗体への結合量を測定して、ペプチドの濃度と標識の結合量をプロットした検量線を作成し、本発明のペプチドを定量する試料溶液についての、標識抗体の結合量を検量線にあてはめることにより、試料溶液の本発明のペプチドを定量することができる。
【0145】
酵素免疫測定法は、上記の競合法、サンドイッチ法において、競合物質あるいは抗体をアルカリフォスファターゼ、ペルオキシダーゼ等の酵素で標識し、該標識酵素により発色または発光する試薬を反応させ、その発色または発光量から競合物質または標識抗体の結合量を測定する定量方法である。また、ラジオイムノアッセイは、上記の競合法、サンドイッチ法において、競合物質あるいは抗体を放射性同位元素で標識し、その放射活性から競合物質または標識抗体の結合量を測定する定量方法である。
【0146】
免疫組織化学は、組織や細胞を凍結またはパラフィンに包埋して作製した切片に対し、酵素、ビオチン、放射性同位元素、蛍光物質、金コロイド等で標識した抗体を反応させた後、該抗体を標識物質を利用して検出し、組織または細胞における本発明のペプチドを検出する方法である。
【0147】
ウェスタンブロットは、試料に含まれる蛋白質およびペプチドをSDS−ポリアクリルアミドゲルで分離した後、ゲルからポリフッ化ビニリデン(PVDF)膜、ニトロセルロース膜等に蛋白質およびペプチドをブロットし、酵素、ビオチン、放射性同位元素等で標識した抗体を反応させた後、標識物質を利用して該抗体を検出し、膜上の本発明のペプチドを検出する方法である。
【0148】
凝集法は、抗体を固定化したラテックス等の粒子と、試料溶液とを反応させて、試料中の本発明のペプチドに粒子上の抗体が結合することにより生ずる粒子の凝集を、吸光度の測定により検出または定量する方法である。
【0149】
以下に、本発明の実施例を示す。
【実施例】
【0150】
実施例1:CCDC80に由来するペプチドの単離と構造決定
ラット非心筋初代培養細胞は、定法〔Metabolism, 53, 710 (2004)〕に従い日齢1日のWistarラットより調製した。培養3日目の細胞を、フェノールレッドおよび血清を含まないRPMI培地中で6時間培養した後、培地を回収した。培地を遠心し、得られた上清に1mol/Lの塩酸を1/50容量加えた後に、セップ−パック(Sep-Pak)C18カートリッジ〔ウォーターズ(Waters)社製〕を用いて試料を抽出した。カートリッジは0.1%(v/v)トリフルオロ酢酸(以下、TFAと略する)で洗浄し、60%(v/v)アセトニトリル−0.1%(v/v)TFAで試料を溶出させた。溶出液を凍結乾燥の後に60%(v/v)アセトニトリル−0.1%(v/v)TFAに溶解させ、同液で平衡化したゲル濾過HPLCカラム〔TSKgel G2000SWXL、21.5mm×30cm(東ソー株式会社製)〕を用いたHPLC〔HPLCポンプ L−2100(日立製)〕により、流速1.5ml/分で分離し、およそ30分から35分で溶出されるペプチド画分を回収した。凍結乾燥した同試料を1mol/L酢酸に溶解の後、1mol/Lトリス(pH11)で中和させ、還元反応液(1mmol/L EDTA、25mmol/Lジチオスレイトール、0.5mol/lトリス、pH8.5)中において37℃で1時間加温した。次いでヨードアセトアミドを終濃度50mmol/Lになるように加え、遮光して室温で15分間反応させた。氷酢酸で反応を停止させ、セップ−パックC18カートリッジを用いて脱塩した。脱塩後、凍結乾燥した試料を0.1%(v/v)ギ酸、2%(v/v)アセトニトリルに溶解し、逆相ナノスプレーカラム〔Monospray C18、100μm×10mm(GLサイエンス社製)〕を用いたHPLC〔ナノHPLCポンプChorus(CTC Analytics社製)〕により、流速200nL/分で分離し、ハイブリッド型質量分析計〔LTQ−Orbitrap−XL、サーモフィッシャーサイエンティフィック(Thermofisher Scientific)社製〕を用いて実施した。獲得したタンデムマススペクトルは、解析ソフトウエア マスコットMS/MSイオン・サーチ〔マトリックス・サイエンス(Matrix Science)社製〕を用い、NCBIおよびSwiss−Protのアミノ酸配列データベースを基に同定した。その結果、ラットCCDC80の一部のアミノ酸配列に相当する、配列番号2、5および7で表されるアミノ酸配列からなる3種類のペプチドを見出した。
【0151】
実施例2:CCDC80に由来するペプチドの調製
実施例1で見出された配列番号2、5、および7で表されるアミノ酸配列からなるペプチド(以下それぞれペプチド2、5および7とよぶ)をそれぞれ、シグマ−ジェノシス(Sigma-Genosys)社に依頼して化学合成した。
【0152】
合成後のペプチドの構造は、MALDI−TOF質量分析計オートフレックス〔Autoflex、ブルカー(Brucker)社製〕を用いたMALDI法による質量分析で確認した。マトリックスとしては、50%(v/v)ACN−0.1%(v/v)TFAで調製したα−シアノ−4−ヒドロキシ桂皮酸(シグマ−アルドリッチ社製)飽和溶液を用いた。さらに、アミノ酸分析〔Anal. Biochem., 222, 19 (1994)〕によっても、ペプチドの構造の確認を行った。加水分解はピコタグ用ワークステーション(ウォーターズ社製)を使用し、塩酸蒸気中110℃で22時間行い、加水分解物のアミノ酸組成はアミノ酸分析機L−8500(日立製)を用いて行った。
【0153】
実施例3:CCDC80に由来するペプチドの細胞内カルシウムイオン濃度を上昇させる活性
全身にアポエクオリンを発現しているアポエクオリン遺伝子のトランスジェニックマウス(以下、アポエクオリン発現マウスとよぶ)の各臓器を利用して、実施例2で合成したペプチド2、5および7が、細胞内カルシウムイオン濃度を上昇させる活性を有するかどうかを調べた。アポエクオリン発現マウスの細胞は、アポエクオリンが発光基質セレンテラジンの存在下でカルシウムイオンと結合し発光するため、細胞内カルシウムイオン濃度をモニターできる。なお、国際公開第2002/010371号パンフレットには、アポエクオリン発現マウスの作製法、該マウス由来の生体試料を使用した生理活性物質の評価方法および、以下に示すような生理活性ペプチドを該マウスの臓器を使用して評価した実験結果が開示されている。即ち、アポエクオリン発現マウスより得られた各臓器に、アンジオテンシンIIを終濃度1μmol/Lで添加したところ、血管、子宮、副腎において強い発光が観察され、またブラジキニンを終濃度10μmol/Lで添加したところ、血管、子宮、副腎において強い発光が観察されたとの記載があり、アポエクオリン発現マウスは新規なペプチドの生理活性評価に使用可能である。
【0154】
アポエクオリン発現マウスは国際公開第2002/010371号パンフレットの参考例4で開示されている方法に従い作製した。アポエクオリン発現マウスを屠殺後、胸腺、視床下部、脾臓、骨、大動脈、心臓、腎臓、副腎、膵臓、下垂体、子宮、延髄、脊髄の各臓器を摘出し、それぞれの臓器を約1〜2mmの大きさに細断した。次に、5mLチューブ(Rohren-Tubes;ザルスタット(Sarstedt)社製、No.55.476)中で、RPMI1640培地に溶解した10μmol/Lセレンテラジン〔モレキュラー・プローブズ(Molecular Probes)社製〕溶液50μLに、調製した各種臓器試料を3個ずつ加え37℃で3時間培養した。3時間後、RPMI1640培地を添加し、25秒後にRPMI1640培地に溶解したペプチド2、5および7のそれぞれを終濃度1μmol/Lになるように添加し、ルミノメーター〔オートルーマット(AutoLumat)LB953、ベルトルード(Berthold)社製〕を用いて、RPMI1640培地の添加直後から1秒ごとに相対発光量を測定した。
【0155】
その結果、ペプチド2については胸腺、脾臓(図1)、下垂体(図2)、延髄、腎臓で、ペプチド5については、心臓(図3)、腎臓(図4)、視床下部(図5)、副腎(図6)、大動脈、大静脈、脾臓で、ペプチド7については胸腺、心臓(図7)、大動脈(図8)、大静脈(図9)、視床下部(図10)、副腎(図11)、脾臓、頭蓋骨、延髄で、それぞれ発光が観察された。以上の結果から、これらのペプチドは、エネルギー代謝調節系に関与する臓器である視床下部または下垂体、循環器系に関与する臓器である副腎、腎臓、心臓または血管の細胞において細胞内のカルシウムイオンの濃度を上昇させる活性を有していることがわかった。またその相対発光量の時間変化の様子から、生理的な作用による細胞内カルシウムイオン濃度の上昇であることがわかった。
【産業上の利用可能性】
【0156】
本発明により、エネルギー代謝調節活性または循環調節活性を有する新規な生理活性ペプチドが提供される。また該ペプチドを利用する、該ペプチドの活性を促進または抑制する物質あるいは該ペプチドの受容体に対するアゴニストまたはアンタゴニストのスクリーニング方法が提供される。該ペプチド、本発明で提供されるスクリーニング方法によって得られる該ペプチドの活性を促進または抑制する物質、あるいは該ペプチドの受容体に対するアゴニストまたはアンタゴニストは、エネルギー代謝調節活性または循環調節活性を有するので、摂食調節剤、摂水調節剤、代謝改善剤、循環調節剤、昇圧剤、あるいは摂食障害、摂水障害、代謝障害、睡眠障害などのエネルギー代謝調節系の疾患、または心筋梗塞、虚血性心疾患もしくは脳梗塞等の循環器系疾患の治療薬の候補物質として医薬の開発に用いることができる。
【配列表フリーテキスト】
【0157】
[配列番号7]
配列番号9の940−950番目、配列番号10の939−949番目、又は配列番号11の939−949番目の部分アミノ酸配列

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の(a)〜(d)から選択されるいずれかのペプチドまたはその薬理学的に許容される塩:
(a)配列番号1〜7のいずれかで表されるアミノ酸配列からなるペプチド;
(b)配列番号1〜7のいずれかで表されるアミノ酸配列を含み、かつ長さが80アミノ酸以下であるペプチド;
(c)配列番号1〜7のいずれかで表されるアミノ酸配列において、1〜5個のアミノ酸が置換、欠失もしくは付加されたアミノ酸配列を含み、哺乳動物の視床下部、下垂体、副腎、腎臓、心臓、血管または脳組織内の細胞の細胞内カルシウムイオン濃度を上昇させる活性を有し、かつ長さが80アミノ酸以下であるペプチド;および
(d)配列番号1〜7のいずれかで表されるアミノ酸配列と54%以上の同一性を有するアミノ酸配列を含み、哺乳動物の視床下部、下垂体、副腎、腎臓、心臓、血管または脳組織内の細胞の細胞内カルシウムイオン濃度を上昇させる活性を有し、かつ長さが80アミノ酸以下であるペプチド。
【請求項2】
下記式(I):
【化1】

(式中、R1は水素原子、置換もしくは非置換のアルカノイル、置換もしくは非置換のアロイル、置換もしくは非置換のヘテロアリールカルボニル、置換もしくは非置換のアルコキシカルボニル、置換もしくは非置換のアリールオキシカルボニル、または置換もしくは非置換のヘテロアリールオキシカルボニルを表し、R2はヒドロキシ、置換もしくは非置換のアルコキシ、または置換もしくは非置換のアミノを表し、Aは請求項1(a)〜(d)のいずれかに記載のペプチドのペプチド残基を表す。)
で表されるペプチドまたはその薬理学的に許容される塩。
【請求項3】
請求項1に記載のペプチドをコードするヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチド。
【請求項4】
請求項3に記載のポリヌクレオチドを含むベクター。
【請求項5】
請求項4に記載のベクターが導入された形質転換体。
【請求項6】
請求項5に記載の形質転換体を培養し、培養物中に請求項1に記載のペプチドを生成蓄積させ、該培養物から該ペプチドを単離することを含む、請求項1に記載のペプチドの製造方法。
【請求項7】
以下の(a)〜(d)のいずれかのペプチドまたはその薬理学的に許容される塩を含む医薬:
(a)配列番号1〜7のいずれかで表されるアミノ酸配列からなるペプチド;
(b)配列番号1〜7のいずれかで表されるアミノ酸配列を含むペプチド;
(c)配列番号1〜7のいずれかで表されるアミノ酸配列において、1〜5個のアミノ酸が置換、欠失もしくは付加されたアミノ酸配列を含み、かつ、哺乳動物の視床下部、下垂体、副腎、腎臓、心臓、血管または脳組織内の細胞の細胞内カルシウムイオン濃度を上昇させる活性を有するペプチド;および
(d)配列番号1〜7のいずれかで表されるアミノ酸配列と54%以上の同一性を有するアミノ酸配列を含み、かつ、哺乳動物の視床下部、下垂体、副腎、腎臓、心臓、血管または脳組織内の細胞の細胞内カルシウムイオン濃度を上昇させる活性を有するペプチド。
【請求項8】
下記式(II):
【化2】

(式中、R3は水素原子、置換もしくは非置換のアルカノイル、置換もしくは非置換のアロイル、置換もしくは非置換のヘテロアリールカルボニル、置換もしくは非置換のアルコキシカルボニル、置換もしくは非置換のアリールオキシカルボニル、または置換もしくは非置換のヘテロアリールオキシカルボニルを表し、R4はヒドロキシ、置換もしくは非置換のアルコキシ、または置換もしくは非置換のアミノを表し、Bは請求項7(a)〜(d)のいずれかのペプチドのペプチド残基を表す。)
で表されるペプチドまたはその薬理学的に許容される塩を含む、医薬。
【請求項9】
エネルギー代謝調節剤である、請求項7に記載の医薬。
【請求項10】
循環調節剤である、請求項7に記載の医薬。
【請求項11】
以下の(a)〜(d)のいずれかのペプチドまたはその薬理学的に許容される塩および被験物質を、哺乳動物の視床下部、下垂体、副腎、腎臓、心臓、血管または脳組織内の細胞に接触させた場合の細胞応答を測定する工程、該ペプチドまたはその薬理学的に許容される塩を該被験物質の非存在下で該細胞に接触させた場合の細胞応答と比較して、細胞応答が抑制される場合の該被験物質を該ペプチドによる哺乳動物の視床下部、下垂体、副腎、腎臓、心臓、血管または脳組織内の細胞の細胞内カルシウムイオン濃度の上昇を阻害する物質として特定する工程を含む、該ペプチドまたはその薬理学的に許容される塩による哺乳動物の視床下部、下垂体、副腎、腎臓、心臓、血管または脳組織内の細胞の細胞内カルシウムイオン濃度の上昇を阻害する物質のスクリーニング方法:
(a)配列番号1〜7のいずれかで表されるアミノ酸配列からなるペプチド;
(b)配列番号1〜7のいずれかで表されるアミノ酸配列を含むペプチド;
(c)配列番号1〜7のいずれかで表されるアミノ酸配列において、1〜5個のアミノ酸が置換、欠失もしくは付加されたアミノ酸配列を含み、かつ、哺乳動物の視床下部、下垂体、副腎、腎臓、心臓、血管または脳組織内の細胞の細胞内カルシウムイオン濃度を上昇させる活性を有するペプチド;および
(d)配列番号1〜7のいずれかで表されるアミノ酸配列と54%以上の同一性を有するアミノ酸配列を含み、かつ、哺乳動物の視床下部、下垂体、副腎、腎臓、心臓、血管または脳組織内の細胞の細胞内カルシウムイオン濃度を上昇させる活性を有するペプチド。
【請求項12】
以下の(a)〜(d)のいずれかのペプチドまたはその薬理学的に許容される塩および被験物質を、哺乳動物の視床下部、下垂体、副腎、腎臓、心臓、血管または脳組織内の細胞に接触させた場合の細胞応答を測定する工程、該ペプチドまたはその薬理学的に許容される塩を該被験物質の非存在下で該細胞に接触させた場合の細胞応答と比較して、細胞応答が促進される場合の該被験物質を該ペプチドによる哺乳動物の視床下部、下垂体、副腎、腎臓、心臓、血管または脳組織内の細胞の細胞内カルシウムイオン濃度の上昇を促進する物質として特定する工程を含む、該ペプチドまたはその薬理学的に許容される塩による哺乳動物の視床下部、下垂体、副腎、腎臓、心臓、血管または脳組織内の細胞の細胞内カルシウムイオン濃度の上昇を促進する物質のスクリーニング方法:
(a)配列番号1〜7のいずれかで表されるアミノ酸配列からなるペプチド;
(b)配列番号1〜7のいずれかで表されるアミノ酸配列を含むペプチド;
(c)配列番号1〜7のいずれかで表されるアミノ酸配列において、1〜5個のアミノ酸が置換、欠失もしくは付加されたアミノ酸配列を含み、かつ、哺乳動物の視床下部、下垂体、副腎、腎臓、心臓、血管または脳組織内の細胞の細胞内カルシウムイオン濃度を上昇させる活性を有するペプチド;および
(d)配列番号1〜7のいずれかで表されるアミノ酸配列と54%以上の同一性を有するアミノ酸配列を含み、かつ、哺乳動物の視床下部、下垂体、副腎、腎臓、心臓、血管または脳組織内の細胞の細胞内カルシウムイオン濃度を上昇させる活性を有するペプチド。
【請求項13】
以下の(a)〜(d)のいずれかのペプチドまたはその薬理学的に許容される塩および被験物質を、哺乳動物の視床下部、下垂体、副腎、腎臓、心臓、血管もしくは脳組織内の細胞、または該細胞の膜画分に接触させた場合の該細胞または該細胞の膜画分に対する、該ペプチドまたはその薬理学的に許容される塩の結合量を測定する工程、該ペプチドまたはその薬理学的に許容される塩を該被験物質の非存在下で該細胞または該細胞の膜画分に接触させた場合の該ペプチドまたはその薬理学的に許容される塩の結合量と比較して、結合量が低下する場合の該被験物質を該ペプチドの受容体に対するアゴニストまたはアンタゴニストとして特定する工程を含む、該ペプチドの受容体に対するアゴニストまたはアンタゴニストのスクリーニング方法:
(a)配列番号1〜7のいずれかで表されるアミノ酸配列からなるペプチド;
(b)配列番号1〜7のいずれかで表されるアミノ酸配列を含むペプチド;
(c)配列番号1〜7のいずれかで表されるアミノ酸配列において、1〜5個のアミノ酸が置換、欠失もしくは付加されたアミノ酸配列を含み、かつ、哺乳動物の視床下部、下垂体、副腎、腎臓、心臓、血管または脳組織内の細胞の細胞内カルシウムイオン濃度を上昇させる活性を有するペプチド;
(d)配列番号1〜7のいずれかで表されるアミノ酸配列と54%以上の同一性を有するアミノ酸配列を含み、かつ、哺乳動物の視床下部、下垂体、副腎、腎臓、心臓、血管または脳組織内の細胞の細胞内カルシウムイオン濃度を上昇させる活性を有するペプチド。
【請求項14】
以下の(a)〜(d)のいずれかのペプチドを特異的に認識する抗体:
(a)配列番号1〜7のいずれかで表されるアミノ酸配列からなるペプチド;
(b)配列番号1〜7のいずれかで表されるアミノ酸配列を含み、かつ長さが80アミノ酸以下であるペプチド;
(c)配列番号1〜7のいずれかで表されるアミノ酸配列において、1〜5個のアミノ酸が置換、欠失もしくは付加されたアミノ酸配列を含み、哺乳動物の視床下部、下垂体、副腎、腎臓、心臓、血管または脳組織内の細胞の細胞内カルシウムイオン濃度を上昇させる活性を有し、かつ長さが80アミノ酸以下であるペプチド;および
(d)配列番号1〜7のいずれかで表されるアミノ酸配列と54%以上の同一性を有するアミノ酸配列を含み、哺乳動物の視床下部、下垂体、副腎、腎臓、心臓、血管または脳組織内の細胞の細胞内カルシウムイオン濃度を上昇させる活性を有し、かつ長さが80アミノ酸以下であるペプチド。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−75408(P2012−75408A)
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−225276(P2010−225276)
【出願日】平成22年10月4日(2010.10.4)
【出願人】(000001029)協和発酵キリン株式会社 (276)
【出願人】(510094724)独立行政法人国立循環器病研究センター (52)
【Fターム(参考)】