説明

生産システム

【課題】 ライン上の各種ワークの個数や製品の生産順序などを容易かつ正確に把握することができる生産システムを提供すること。
【解決手段】 ワークWの搬送およびワークWに対する組み付けを行って複数種の製品を連続的に生産するライン2と、前記ワークWに直接または間接的に設けられ、製品の種類に応じてワークWに割り当てられた組み付け指示内容を含む生産データが書き込まれる記録媒体3と、前記記録媒体3から生産データを読み取る読み取り手段とを備え、各ワークWに対する組み付け内容が、読み取り手段により各ワークWの記録媒体3から読み取った組み付け指示内容に応じて決定される生産システム1であって、前記読み取り手段に読み取られた生産データがモニタ装置4に入力され、このモニタ装置4が、入力された生産データに基づいて、ライン2上におけるワークWの位置と、各ワークWに対する組み付け指示内容の種類またはこの組み付け指示内容の種類に対応する製品の種類とを表示するように構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば、複数種の車両用エンジンなどの製品をライン生産する生産システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の生産システムとして、ワークの搬送およびワークに対する組み付けを行って複数種の製品を連続的に生産するラインと、前記ワークに設けられ、製品の種類に応じてワークに割り当てられた組み付け指示内容を含む生産データが書き込まれる記録媒体と、前記記録媒体から生産データを読み取る読み取り手段とを備え、各ワークに対する組み付け内容が、読み取り手段により各ワークの記録媒体から読み取った組み付け指示内容に応じて決定されるように構成されたものがある。
【0003】
そして、前記製品は例えば車両用エンジンであり、生産システムで製造したエンジンは車両工場などに出荷される。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記従来の生産システムでは、直接目視によって前記ライン上にあるワークの種類別の個数や各ワークの位置を把握しなければならず、その把握を正確に行うのが大変困難で、ミスも起こりやすいという問題があった。
【0005】
また、品質チェック等の目的でワークをライン外に摘出した場合、生産順序が変わり、例えば、所定種類のエンジンがいつ完成するのかを把握するのが困難となり、特に比較的生産数の少ないエンジンについての把握はより困難となる。
【0006】
この発明は上述の事柄に留意してなされたもので、その目的は、ライン上の各種ワークの個数や製品の生産順序などを容易かつ正確に把握することができる生産システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、この発明の生産システムは、ワークの搬送およびワークに対する組み付けを行って複数種の製品を連続的に生産するラインと、前記ワークに直接または間接的に設けられ、製品の種類に応じてワークに割り当てられた組み付け指示内容を含む生産データが書き込まれる記録媒体と、前記記録媒体から生産データを読み取る読み取り手段とを備え、各ワークに対する組み付け内容が、読み取り手段により各ワークの記録媒体から読み取った組み付け指示内容に応じて決定される生産システムであって、前記読み取り手段に読み取られた生産データがモニタ装置に入力され、このモニタ装置が、入力された生産データに基づいて、ライン上におけるワークの位置と、各ワークに対する組み付け指示内容の種類またはこの組み付け指示内容の種類に対応する製品の種類とを表示するように構成されていることを特徴としている(請求項1)。
【0008】
また、前記モニタ装置が、ラインのレイアウトを表示するとともに、ライン中の任意のエリアを選択して、そのエリアに位置するワークの生産データを表示する手段を有していることが好ましい(請求項2)。
【0009】
さらに、前記生産データに各ワークを認識するための認識番号が含まれ、前記モニタ装置が、認識番号からその認識番号に対応するワークの位置を検索する検索手段を備え、この検索手段によって検索した認識番号に対応するワークがライン上に存在する場合、その位置を表示するように構成されていてもよい(請求項3)。
【0010】
また、前記ワークに対して所定の組み付けを行った際にその組み付けに関する結果をそのワークの記録媒体に書き込むための書き込み手段を備えていてもよい(請求項4)。
【0011】
また、前記組み付け指示内容の種類に応じて組み付け指示番号が定められ、前記モニタ装置が、ワークに対する組み付け指示内容の種類またはこの組み付け指示内容の種類に対応する製品の種類として、前記組み付け指示番号を表示するように構成されていてもよい(請求項5)。
【発明の効果】
【0012】
請求項1に係る発明では、ライン上の各種ワークの個数や製品の生産順序などを容易かつ正確に把握することができる生産システムが得られる。
【0013】
請求項2に係る発明では、各エリアに位置するワークの生産データを簡単に調べることができ、各ワークの監視や各ワークに関する情報の閲覧が非常に容易となる。
【0014】
請求項3に係る発明では、ワークの検索が非常に容易となり、また、例えば、ワークあるいはワークから製造された製品に不具合が発生したときに、同種のワークの製造連番を検索すれば、その検索結果を不具合原因の特定などに役立てることもできる。
【0015】
請求項4に係る発明では、ワークに関する有用な情報を増やすことができ、その情報を活用することで、ラインの管理面などで向上を図ることができる。
【0016】
請求項5に係る発明では、組み付け指示内容の種類を番号(組み付け指示番号)によって表記することにより、組み付け指示内容の種類の把握が極めて容易となり、モニタ装置を介してのラインの管理の簡素化を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
図1〜図5は、この発明の一実施の形態を示す。図1に示すように、この実施の形態の生産システム1は、ワークWの搬送およびワークWに対する組み付けを行って複数種の製品(この実施の形態では車両用エンジン)を連続的に生産するライン2を備えている。
【0018】
前記ライン2は、ワークWを順次搬送する搬送コンベア(図示していない)およびワークWを順次ライン2上のある位置から他の位置へと移載する移載装置からなる搬送手段と、前記搬送手段の搬送方向に沿って配置され、搬送手段により搬送されるワークWに対して部品などの組み付けを行う手段としての複数の組み付け工程部とを備えている。そして、搬送手段により搬送されるワークWに対して組み付け工程部により組み付け作業等の加工が行われて、所定の製品が生産される。
【0019】
また、前記ライン2には、手直しや品質チェックなどのためにライン2から摘出したワークWをライン2に戻すためのストックライン2aが接続されている。このストックライン2aは前記搬送手段を備えている。
【0020】
一方、前記ワークWには、製品の種類に応じてワークWに割り当てられた組み付け指示内容を含む生産データが書き込まれる記録媒体3が直接または間接的に設けられている。すなわち、記録媒体3を前記ワークWにおける作業の邪魔とならない位置に直接または適宜の部材を介して間接的に設けてもよく、また、前記ワークWはパレット(図示していない)に載置された状態でライン2上を流れることから、前記パレットに記録媒体3を取り付け、これにより、記録媒体3をワークWに間接的に設けるようにしてもよい。なお、前記記録媒体3は、ICタグよりなる。
【0021】
ここで、この実施の形態では、前記ライン2およびストックライン2aを複数のステーションSの集合とし、前記ステーションSとして、前記搬送手段を構成する搬送ステーションと、前記組み付け工程部を構成する組み付けステーションと、搬送手段および組み付け工程部を構成する複合ステーションとの3種類が設けられている。また、この実施の形態では、ライン2を構成する計39のステーションSを、ライン2のスタート側から順に、第1ステーションS1〜第39ステーションS39と呼称し、ストックライン2aを構成する計8のステーションSを、ストックライン2aのスタート側から順に、第40ステーションS40〜第47ステーションS47と呼称する。なお、第1ステーションS1から第40ステーションS47までの各ステーションSの種類(換言すれば、ライン2およびストックライン2aを構成するためのステーションSの組み合わせ方)やステーションSの配列の仕方などは適宜に設定することができ、その設定についての詳細な説明は省略する。
【0022】
また、各ステーションSには、前記記録媒体3から生産データを読み取る読み取り手段(図示していない)が設けられている。この読み取り手段は、ICタグリーダ・ライタであり、記録媒体3との間でデータの送受信を行うためのアンテナ(図示していない)を備えている。そして、前記読み取り手段は、前記ワークWに対して所定の組み付けを行った際にその組み付けに関する結果をそのワークWの記録媒体3に書き込むための書き込み手段を兼ねている。
【0023】
上記の構成からなるライン2では、ワークWは第1ステーションS1から第39ステーションS39へと搬送され、この搬送される間のワークWに対して組み付け工程部により適宜に組み付けされる。すなわち、ライン2を構成するステーションSのうちの組み付けステーションでは、読み取り手段によりワークWの記録媒体3から読み取った組み付け指示内容に基づいて、ワークWに対して組み付け作業を行うか行わないかが個別に決定される。従って、ライン2における各ワークWに対する組み付け内容は、各ワークWの記録媒体3に書き込まれた組み付け指示内容に応じたものとなる。
【0024】
また、ライン2の途中で摘出されたワークWは、ストックライン2aを経てライン2へと戻される。
【0025】
そして、各ステーションSの前記読み取り手段に読み取られた生産データはモニタ装置(例えばパソコン)4に入力され、このモニタ装置4は、入力された生産データに基づいて、図2に示すように、ライン2,2a上におけるワークWの位置と、各ワークWに対する組み付け指示内容の種類とをディスプレイに表示するように構成されている。
【0026】
すなわち、前記組み付け指示内容の種類に応じて組み付け指示番号(図2には、1、2、3、10、99の4種の組み付け指示番号が示されている)が定められ、前記モニタ装置4は、ワークWに対する組み付け指示内容の種類として、前記組み付け指示番号を表示するように構成されている。
【0027】
また、前記モニタ装置4は、ライン2,2aの全体のレイアウトを表示するとともに、ライン2,2a中の任意のエリア(この実施例ではステーションS)を選択して、そのエリアに位置するワークWの生産データを表示する手段(例えば、マウス操作によるクリック)を有し、図2に示すレイアウト表示画面と、図3に示す各ワークWの生産データの詳細を表示する生産データ表示画面とに切り換わるように構成されている。すなわち、図3は、図2において第11ステーション11Sを選択した場合のディスプレイ画面を示し、このディスプレイ画面には、ステーションSの番号(11)およびこのステーションSが含まれる工程番号(1)とともに、第11ステーション11Sに位置するワークWの生産データとして、組み付け指示番号と、各ワークWを認識するための認識番号としての製造連番と、ライン2に受け入れられた日時(仕掛日時)と、製品型式とが表示されている。なお、前記工程番号は、ライン2に設けられた組み付け工程部(図示していない)に付された番号である。
【0028】
さらに、上述したように、前記生産データには各ワークWを認識するための認識番号としての製造連番が含まれ、モニタ装置4は、製造連番(認識番号)からその製造連番に対応するワークWの位置を検索する検索手段を備えている。すなわち、図4に示すように、モニタ装置4は、製造連番を入力するための検索画面をディスプレイに表示することができ、この画面上で製造連番の欄5に検索対象のワークWの製造連番を入力し、検索ボタン6をクリックすれば、この検索手段によって検索した製造連番に対応するワークWがライン2,2a上に存在する場合、その位置が表示される。
【0029】
また、所定の組み付けステーションSでは、前記ワークWに対して所定の組み付けを行った際にその組み付けに関する結果をそのワークWの記録媒体3に書き込むように構成されている。図5には、所定の組み付けステーションSにおいて、ナットをワークWの所定部位に組み付ける際に、トルクセンサによって検知した各ナットランナーのトルク値と、各トルク値が正常値の範囲内にあるかどうかの判定結果とを記録媒体3に書き込み、前記生産データ表示画面に表示した例を示している。
【0030】
上記の構成からなる生産システム1では、ストックライン2aを含めたライン2上における仕掛かりから完成までの各ワークWの状態・種類をモニタ装置4の画面上でモニタすることができ、ライン2,2aの各ステーションSに位置するワークWの種類を特定することが容易となる。従って、例えば、組付異常や品質チェック等でライン2からワークWを抜き取り、製品の生産順序が変わっても、各種ワークの個数や製品の生産順序を容易かつ正確に把握することができる。
【0031】
また、前記生産システム1は、前記検索手段を備えているので、例えば、ワークWあるいはワークWから製造された製品に不具合が発生したときに、同種のワークWの製造連番を検索すれば、その検索結果を不具合原因の特定などに役立てることができる。
【0032】
さらに、生産データ表示画面に、所定の組み付けステーションSにおいて行ったナットの組み付け時における各ナットランナーのトルク値を表示するようにしているので、各トルク値が正常であるかどうかを判断することができるだけでなく、ナットランナーの劣化度合いなども推測することができ、より有用な情報が得られることになる。
【0033】
なお、この発明は、上記の実施の形態に限られず、種々に変形して実施することができる。例えば、前記記録媒体3は、ICタグに限られず、例えば、IDカード、バーコードなどであってもよい。この場合、前記読み取り手段は、IDカードリーダ・ライタや、バーコードリーダなどとなる。
【0034】
また、モニタ装置4は、図2に示すように、各ワークWに対する組み付け指示内容の種類を表示するのではなく、例えば、各ワークWに対する組み付け指示内容の種類に対応する製品の種類などを表示してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】この発明の一実施の形態に係る生産システムの構成を概略的に示す説明図である。
【図2】モニタ装置のレイアウト表示画面の構成を概略的に示す説明図である。
【図3】モニタ装置の生産データ表示画面の構成を概略的に示す説明図である。
【図4】モニタ装置の検索画面の構成を概略的に示す説明図である。
【図5】モニタ装置の生産データ表示画面の構成を概略的に示す説明図である。
【符号の説明】
【0036】
1 生産システム
2 ライン
3 記録媒体
4 モニタ装置
W ワーク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークの搬送およびワークに対する組み付けを行って複数種の製品を連続的に生産するラインと、前記ワークに直接または間接的に設けられ、製品の種類に応じてワークに割り当てられた組み付け指示内容を含む生産データが書き込まれる記録媒体と、前記記録媒体から生産データを読み取る読み取り手段とを備え、各ワークに対する組み付け内容が、読み取り手段により各ワークの記録媒体から読み取った組み付け指示内容に応じて決定される生産システムであって、前記読み取り手段に読み取られた生産データがモニタ装置に入力され、このモニタ装置が、入力された生産データに基づいて、ライン上におけるワークの位置と、各ワークに対する組み付け指示内容の種類またはこの組み付け指示内容の種類に対応する製品の種類とを表示するように構成されていることを特徴とする生産システム。
【請求項2】
前記モニタ装置が、ラインのレイアウトを表示するとともに、ライン中の任意のエリアを選択して、そのエリアに位置するワークの生産データを表示する手段を有している請求項1に記載の生産システム。
【請求項3】
前記生産データに各ワークを認識するための認識番号が含まれ、前記モニタ装置が、認識番号からその認識番号に対応するワークの位置を検索する検索手段を備え、この検索手段によって検索した認識番号に対応するワークがライン上に存在する場合、その位置を表示するように構成されている請求項1または2に記載の生産システム。
【請求項4】
前記ワークに対して所定の組み付けを行った際にその組み付けに関する結果をそのワークの記録媒体に書き込むための書き込み手段を備えている請求項1〜3のいずれかに記載の生産システム。
【請求項5】
前記組み付け指示内容の種類に応じて組み付け指示番号が定められ、前記モニタ装置が、ワークに対する組み付け指示内容の種類またはこの組み付け指示内容の種類に対応する製品の種類として、前記組み付け指示番号を表示するように構成されている請求項1〜4のいずれかに記載の生産システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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