説明

生産ラインにおける製品検査情報記録システム

【課題】製品に対して複数の検査項目がある場合でも、製品に対する問題の把握を、迅速に且つ容易に行い得る製品検査情報記録システムを提供する。
【解決手段】物品を製造する製造工程1と、この製造工程1にて製造された製品Sを検査手段2により検査する検査工程3とが具備された生産ラインにおける製品検査情報記録システムであって、検査工程3での製品Sを撮影する検査用撮影カメラ22,23,14aと、これらのカメラにて撮影された画像データに製品Sの識別データ及び製品Sの検査結果を示す検査結果データを関連付けて記録する画像記録装置31とを具備し、上記検査結果データに、製品Sの質量データおよび異物の混入の有無データ、製品Sの包装容器に印刷された文字の良否データを含ませるようにしたものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生産ラインにおける製品検査情報記録システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、生産ラインにおける製品検査では、製造工程の後段に設けられた検査装置により、例えば製品の外観をカメラで撮影した撮影画像に基づき良品であるか不良品であるかの判断が行われており、不良品である場合にその原因を突き止めるためにその画像を記憶するようにした外観検査装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平08−334475号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した外観検査装置によると、製品が不良品である場合にはその外観を撮影した画像が記憶されており、後でその画像を取り出すことにより、その原因などを究明することができる。
【0005】
ところで、例えば食品の製造分野においては、外観検査以外に、製品の質量(重さ)、製品への異物の混入、賞味期限等の印字のチェックなど複数の検査工程が設けられており、それぞれに検査装置が設けられている。
【0006】
そして、当然ながら、これら各検査装置においては、検査結果が記録されることになるが、通常は、各検査装置ごとに記録・管理されている。
したがって、不良品となった製品に対して、どの検査項目について問題があったのかを把握するには、各製品に対して検査装置ごとに検査結果を抽出する必要があり、また画像を用いる場合には、製品ごとに検査結果を抽出するとともにこの製品に対する画像を抽出する必要があり、製品に対する問題の把握に時間および手間を要するという問題があった。
【0007】
そこで、本発明は、製品に対して複数の検査項目がある場合でも、製品に対する問題の把握を迅速に且つ容易に行い得る生産ラインにおける製品検査情報記録システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明の請求項1に係る生産ラインにおける製品検査情報記録システムは、物品を製造する製造工程と、この製造工程にて製造された物品を検査手段により検査する検査工程とが具備された生産ラインにおける製品検査情報記録システムであって、
上記検査工程での製品を撮影する検査状態撮影装置と、
上記撮影装置にて撮影された画像データに製品の識別データおよび製品の検査結果を示す検査結果データを関連付けてこれら各データを記録する画像記録装置とを具備し、
且つ上記検査結果データに、少なくとも、製品の質量データおよび異物の混入の有無データを含ませるようにしたものである。
【0009】
また、請求項2に係る生産ラインにおける製品検査情報記録システムは、請求項1に記載の製品検査情報記録システムにおいて、検査結果データに、製品の包装容器に印刷された文字の良否の判定データを含ませるようにしたものである。
【0010】
さらに、請求項3に係る生産ラインにおける製品検査情報記録システムは、請求項1または2に記載の製品検査情報記録システムにおいて、画像データに、少なくとも識別データを重畳させ得る重畳装置を具備したものである。
【発明の効果】
【0011】
上記製品検査情報記録システムによると、製品の検査状態を示す画像データおよびその検査結果データが、製品の識別データに、つまり個々の製品に対応付けされて画像記録装置に記録されるため、検査項目が複数ある場合でも、製品の識別データに基づき、各検査結果データを自動的に取り出すことができ、すなわち特定の製品に対して複数の検査結果データを一括して把握・管理することができ、したがって不良品の発生原因を迅速に且つ容易に究明することができる。
【0012】
また、検査時における製品の画像データが製品と関連付けされて記録されているため、検査装置による判断が適切であるか否かを検証および是正することが可能となり、生産ラインでの検査の信頼性の向上に繋がる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施例に係る製品検査情報記録システムの概略構成を示すブロック図である。
【図2】同製品検査情報記録システムにおけるイベント管理画面を示す図である。
【図3】同製品検査情報記録システムにおけるイベント情報の内容を示す図である。
【図4】同製品検査情報記録システムの変形例に係る概略構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施例に係る生産ラインにおける製品検査情報記録システムを、図1〜図3に基づき説明する。
まず、実施例に係る物品の生産ラインを、図1に基づき簡単に説明する。
【0015】
この生産ラインは、物品、例えば食品(以下、製品ともいう)Sを製造する(つまり物品の製造装置が設けられた)製造工程1と、この製造工程1にて製造された製品Sを検査する検査手段2が設けられた検査工程3とが具備されるとともに、製品Sの検査情報をその画像とともに記録する製品検査情報記録システム5が具備されている。また、検査工程3の途中には、製品の包装容器の表面に、製造番号などの識別データ、賞味期限などの文字を印刷するための印字装置(例えば、インクジェットプリンターが用いられる)4が配置されている。なお、図1においては、生産ラインを1つのコンベヤCで図示しているが、模式的に表しただけである。
【0016】
まず、検査手段2について説明しておく。この検査手段2は、検査工程3に配置されて製品の質量を測定する質量測定器(所謂、はかりである)12と、この質量測定器12より下流側に配置されて製品中に金属などの異物が混入している場合にその異物を検出するための異物検出器(例えば、X線、磁気などを用いたもの)13と、印字装置4の下流側に配置されて印字された製造番号・賞味期限などの文字にかすれなどの不具合があるか否かを判断する文字良否判断器14とから構成されている。この文字良否判断器14は、コンベヤC上の製品Sの表面つまり包装容器の表面を撮影する撮影カメラ(検査状態撮影装置の一例)14aと、この撮影カメラ14aで撮影された製品Sの包装容器の表面に印字された文字を検出して文字の良否(例えば、文字の欠落、一部欠落、かすれなどの有無)を判断する判断部14bとから構成されている。
【0017】
上記製品検査情報記録システム5は、製造工程1における製品状態(具体的には、製品の製造途中および完成状態の製品)を撮影する製造時撮影カメラ(製造時撮影装置の一例)21と、質量測定器12にて測定された製品を上方から撮影する第1検査用撮影カメラ(検査状態撮影装置の一例)22と、異物検出器13での製品を上方から撮影する第2検査用撮影カメラ(検査状態撮影装置の一例)23と、質量測定器12、異物検出器13および文字良否判断器14で得られた検査情報である各種データ(後述する)、並びに各撮影カメラ21〜23および文字良否判断器14の撮影カメラ14aにて撮影された動画および静止画の画像データを入力して記録する画像記録装置31と、この画像記録装置31にLANなどの通信回線32を介して接続されて上記画像データに基づき生産ラインを監視する監視用コンピュータ装置33とから構成されている。なお、画像記録装置31に記録された動画の画像データから、静止画としての画像データを取り出し得るようにされている。
【0018】
また、製品状態を撮影する製造時撮影カメラ21については、一台だけ図示しているが、実際には、製造工程途中の複数箇所に設けられており、またそれぞれの箇所には、移動してきた製品を検出するとともに個々の製品を予め付与された製造番号などの識別データに基づき認識し得る製品検出センサー11が配置されている。この製品検出センサー11についても、製造時撮影カメラ21に対応して複数箇所に設けられている。なお、ここでは、製品に対する動作、すなわち撮影を行うこと、検査工程3における検査動作などをイベントと称する。
【0019】
ここで、検査手段2すなわち検査機器である質量測定器12、異物検出器13および文字良否判断器14から出力される各種データ、つまり各検査結果データについて説明する。
【0020】
質量測定器12から出力されるデータは製品の質量データであり、異物検出器13から出力されるデータは製品に金属などの異物が混入しているか否かの有無データであり、また文字良否判断器14から出力されるデータは製品の包装容器に印刷された文字にかすれなどがあるか否かの良否データ(判定データ)である。
【0021】
また、上記画像記録装置31には、静止画、動画などの画像データを大量に記録し得るハードディスクなどの記録媒体が具備されるとともに、画像データを記録媒体に記録する際に、画像データがどの製品に対するものであるかが分かるように、当該画像データと、検査結果データを含む各種データ(例えば、製品温度または雰囲気温度などの製造時における各種データが含まれ、温度を測定するサーモグラフィ装置などが設けられている)と、製品の識別データとが互いに関連付けされる。したがって、各撮影カメラ21〜23,14aにて撮影された画像データは連続的に画像記録装置31に記録されているが、識別データにより、当該画像データおよび画像データがどの製品に対するものであるかを特定することができる。勿論、画像記録装置31には、これら各データを互いに対応付けるためのデータ対応付け部が具備されている。また、この画像記録装置31には、動画および静止画を記録する画像記録領域と、各種データつまり文字データを記録する文字記録領域とが設けられている。そして、この画像記録領域に記録される画像には、どの画像であるかを示す時刻、検査機器を示すサーチ用データが追加されており、また検査結果データについても、検査を行った時刻が追加されている。なお、少なくとも、検査時に製品の撮影を行うようにしており、このため、検査時刻データに対応する撮影時刻データが存在することになり、したがって時刻データに基づき、検査結果データとそのときの画像データとが1対1で対応付けされていることになる。
【0022】
すなわち、各画像データにはその撮影時刻データ(日も含む)を含む基本的なデータが付加されるとともに、各検査結果データにもその検査時刻データ(日も含む)が付加されている。なお、文字良否判断器14の撮影カメラ14aで撮影された画像データは判断器14bに入力されるため、実際には(図1に示すように)、この画像データは、判断器14bを経由して画像記録装置31に入力されることになるが、撮影カメラ14aから画像記録装置31に入力されるものとして説明する。
【0023】
上記監視用コンピュータ装置33は、少なくとも、コンピュータ本体、モニタ装置、DVDなどの外部記録装置などから構成されるとともに、少なくとも、検査結果データについては、図示しないが、その検査時刻データと一緒に記録される。したがって、コンピュータ本体にはデータ記録部(図示せず)が設けられている。なお、図1において、検査結果データを検査時刻データとともに、監視用コンピュータ装置33に送るようには図示していないが、勿論、コンピュータ装置のデータ記録部に送られている。
【0024】
そして、この監視用コンピュータ装置33には、監視用ソフトウエアが起動されており、モニタ装置における起動画面においては、図2に示すように、イベント情報の一覧表示部41、表示されたイベント情報から所定条件に合致するもの(例えば、撮影時刻などを指定して)を検索するための検索条件入力部42、選択されたイベント情報のサムネイルによる静止画像表示部43、生産ラインの動作状態を監視する監視表示部44などが設けられている。なお、監視表示部44には、通信中であるか否かを表示する「通信中」表示ボックス44a、製品が不良品であることを表示(警告)する「イベント発生」表示ボックス44b、イベント管理ソフトの稼動状態(稼動または停止)を表示させる表示ボックス44cなどが設けられており、この他、任意の撮影カメラからの現在の画像を表示させる「ライブ」ボタン、静止画に係る動画像を再生させる「再生」ボタン、選択されたイベント情報に係る画像データをDVDなどの他の記録媒体にコピーするための「ダウンロード」ボタンなどが設けられている。
【0025】
また、一覧表示部41におけるイベント情報(イベント部分)を選択してクリックすると、図3に示すように、そのイベント情報に係る静止画の拡大表示画面に移行して、静止画像が拡大表示されるとともに、当該選択されたイベント情報より前のイベント情報に係る静止画がサムネイルでもって表示される。
【0026】
なお、図2および図3に記載された「ラインA〜H」は、撮影が行われている場所(ライン)を示しており、実際には、上述した4台の撮影カメラ以外に、他の複数箇所にも撮影カメラが配置されている。
【0027】
また、画像記録装置31には、製造工程1、検査手段2である質量測定器12、異物検出器13、文字良否判断器14からのデータを入力するデータ入力部31aおよび各撮影カメラ21〜23,14aからの画像データを入力する映像入力部31b並びに通信回線32との接続用のインターフェース部31cが具備されており、監視用コンピュータ装置33のコンピュータ本体側にも、通信回線32に接続されるインターフェース部33aが具備されている。
【0028】
次に、上記生産ラインにおける製品検査情報記録システムによる監視動作について説明する。
生産ラインにおいては、食品などの製品Sが製造工程1にて製造された後、検査工程3で検査され、最終的に、良品であると判断された場合には、そのまま箱詰めされて出荷され、また不良品であると判断された場合には排出ライン(図示せず)に導かれて排除される。
【0029】
このとき、それぞれの撮影カメラ21〜23,14aにより、製造作業状態および検査時の製品、つまり良品および不良品がそれぞれ撮影されてその画像データが画像記録装置31に入力されるとともに、データ対応付け部により、これら各画像データに対して、撮影時刻、撮影対象である製品の識別データ、検査結果データなどが互いに対応付けされて記録される。なお、検査結果データについても、検査時刻データとともに監視用コンピュータ装置33に送られている。
【0030】
そして、これら撮影された各画像データについては、監視用コンピュータ装置33を介して監視されており、例えば不良品が発生した場合には、表示画面の監視表示部44の「イベント発生」表示ボックス44bに表示されるため、不良品の発生を容易に知ることができる。なお、不良品が発生した場合に、その旨を「イベント発生」表示ボックス44bに表示する機能が具備されている。
【0031】
また、不良品が発生したイベント情報をクリックすることにより、そのイベントが発生した時刻データ、例えば検査時刻データおよびこれに対応する(関連付けられた)撮影時刻データに基づき、画像記録装置31に記録された画像データが呼び出され、当該画像データが拡大表示画面に表示され、したがってその不良状態を把握することができる。
【0032】
さらに、必要に応じて、「ライブ」ボタンをクリックすることにより、現在の画像データを表示させて、現在の生産ラインの状態を見ることができる。
勿論、不良品の発生を通知するイベント情報ではなく、正常状態のイベント情報、例えば製造作業状態、完成後の製品の画像データについても、静止画としてまたは動画として見ることができる。
【0033】
このような製品検査情報記録システムにより下記のような利点が得られる。
製品の製造状態(完成後の状態も含む)を示す画像データ、および製品の検査状態を示す画像データ、およびその検査結果データが、製造番号などの識別データにつまり個々の製品に対応付けされて画像記録装置に記録されるため、検査項目が複数ある場合でも、不良品であると判断された製品の識別データに基づき、各種データつまり検査結果データなどを自動的に取り出す(抽出する)ことができ、すなわち特定の製品に対して、複数の検査結果データを一括して把握・管理することができ、したがって不良品の発生原因を迅速に且つ容易に究明することができる。
【0034】
また、検査時における製品の画像データが製品と関連付けされて記録されているため、質量測定器、異物検出器、文字良否判断器などの検査機器での判断が適切であるか否かを検証および是正することが可能となり、生産ラインでの検査の信頼性の向上に繋がる。
【0035】
なお、同じ生産ラインが複数ある場合は、それぞれのライン毎に同じ検査機器、画像記録装置などが配置されることになるが、例えば画像記録装置については、ライン毎に設けるのではなく、一台だけ設けて、全てのデータを一括して記録するようにしてもよい。この場合、ライン、検査手段における各検査機器の識別データも同時に記録されることになる。
【0036】
さらに、監視用コンピュータ装置に記録された検査結果データはその検査時刻データが関連付けられて記録されているため、検査結果データを呼び出した際に、この検査時刻データおよびこれに対応する撮影時刻データを用いて、その検査時における画像データを呼び出して画面に表示することができる。
【0037】
ところで、上記実施例においては、製品の画像データと各種データとを関連付けて、直接、画像記録装置に記録するように説明したが、図4に示すように、画像記録装置31の手前にスーパーインポーズ装置(画像重畳装置ともいう)51を配置して、当該画像データに各種データを重ねて表示させるようにしてもよい。
【0038】
このように、製品の画像データに製造番号などの識別データを重ねて表示させることにより、不良品の特定を迅速に行うことができる。なお、スーパーインポーズ装置51には、製造工程1、検査手段2、検査工程3からのデータを入力するデータ入力部51aおよび各データを画像記録装置31に出力するデータ出力部51b並びに各撮影カメラ21〜23,14aからの画像データを入力する映像入力部51cおよび画像記録装置31に出力する映像出力部51dが具備されている。
【符号の説明】
【0039】
S 製品
1 製造工程
2 検査手段
3 検査工程
4 印字装置
5 製品検査情報記録システム
11 製品検出センサー
12 質量測定器
13 異物検出器
14 文字良否判断器
14a 撮影カメラ
14b 判断部
21 製造時撮影カメラ
22 第1検査用撮影カメラ
23 第2検査用撮影カメラ
31 画像記録装置
32 通信回線
33 監視用コンピュータ装置
51 スーパーインポーズ装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
物品を製造する製造工程と、この製造工程にて製造された物品を検査手段により検査する検査工程とが具備された生産ラインにおける製品検査情報記録システムであって、
上記検査工程での製品を撮影する検査状態撮影装置と、
上記撮影装置にて撮影された画像データに製品の識別データおよび製品の検査結果を示す検査結果データを関連付けてこれら各データを記録する画像記録装置とを具備し、
且つ上記検査結果データに、少なくとも、製品の質量データおよび異物の混入の有無データを含ませるようにしたことを特徴とする生産ラインにおける製品検査情報記録システム。
【請求項2】
検査結果データに、製品の包装容器に印刷された文字の良否の判定データを含ませるようにしたことを特徴とする請求項1に記載の生産ラインにおける製品検査情報記録システム。
【請求項3】
画像データに、少なくとも識別データを重畳させ得る重畳装置を具備したことを特徴とする請求項1または2に記載の生産ラインにおける製品検査情報記録システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−253469(P2011−253469A)
【公開日】平成23年12月15日(2011.12.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−128370(P2010−128370)
【出願日】平成22年6月4日(2010.6.4)
【出願人】(000005119)日立造船株式会社 (764)
【Fターム(参考)】