説明

生産管理システム

【課題】中間製品が容器に入れられた最終製品を、容器ごとに個別管理できる生産管理システムを提供することを課題とする。
【解決手段】缶容器2の個体を識別する個体識別情報が、可視光に対して透明な不可視インクで所定の印字面に印字された缶容器2に、生産単位ごとに統一された製品情報2cが付与される飲料を入れ、可視光に対して不透明な可視インクで製品情報2cを印字面に印字して缶入飲料を生産する生産管理システム1とする。そして、飲料が入った缶容器2を個別検査する缶容器検査装置と、個体識別情報を読み取る個体管理部と、缶容器検査装置が缶容器2を検査して作成する検査情報に個体管理部が当該缶容器2から読み取った個体識別情報をリンクした個別管理情報を作成して保存する検査画像収集システム3と、を備えることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、中間製品を容器に封入して最終製品を生産する生産管理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
飲料や化粧品など、液体や気体の中間製品が缶容器等に封入された最終製品や、菓子や錠剤など、小型固形物の中間製品が袋容器等に封入された最終製品が商品として販売される場合、容器に製造ロット番号が印字されていれば、製造ロットを単位として当該最終製品の生産管理、在庫管理、トレーサビリティをすることができる。
さらに、例えば容器の個体を識別する個体識別情報を容器ごとに付与して印字することで、最終製品を容器ごとに個別管理できる。
しかしながら、このような最終製品は生産数が非常に多いため、文字や数値による個体識別情報は文字数が非常に多くなり、個体識別情報を文字情報として容器に印字すると外観を損なうという問題がある。
【0003】
例えば特許文献1には、販売促進用のパンフレットやカタログ、案内状、請求書などの帳票類に、顧客が視認できないステルスインクで識別コード(個体識別情報)を印字して帳票類を機械的に仕分け可能な封書作成装置が開示されている。
特許文献1に示すようにステルスインクを使用することで、外観を損なうことなく識別コードを印字することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−246183号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記したように、中間製品を容器に封入した最終製品は製造ロット単位で商品管理されている。このような最終製品は、1つの製造ロットで大量に生産され、例えば生産時に異常が発生したときに製造ロットを単位として回収するときには、大量の最終製品を回収する必要が生じ、対応に莫大な費用を要するという問題がある。
また、最終製品を容器ごとに個別管理するためには、容器の個体を識別する個体識別情報を容器ごとに付与して印字する必要があるが、印字された個体識別情報で容器の外観が損なわれないことが好ましい。
例えば、特許文献1に開示されるようにステルスインクを利用すると、外観を損なうことなく必要な情報を印字できるが、中間製品を封入する容器の個体を識別する個体識別情報をステルスインクで容器に印字し、最終製品を個別管理する技術は知られていない。
【0006】
そこで、本発明は、中間製品が容器に入れられた最終製品を、容器ごとに個別管理できる生産管理システムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するため本発明は、容器の個体を識別する第1情報が、可視光に対して透明な不可視インクで所定の印字面に印字された容器に、生産単位ごとに統一された第3情報が付与される中間製品を入れ、可視光に対して不透明な可視インクで前記第3情報を前記印字面に印字して最終製品を生産する生産管理システムとする。そして、前記中間製品が入った前記容器を個別検査する検査装置と、前記第1情報を読み取る読取装置と、前記容器を個別検査する検査装置が前記容器を検査して作成する第2情報に前記読取装置が当該容器から読み取った前記第1情報をリンクした個別管理情報を作成して保存する個別情報管理装置と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によると、中間製品が容器に入れられた最終製品を、容器ごとに個別管理できる生産管理システムを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】生産管理システムの一構成例を示す図である。
【図2】検査画像収集システムと生産設備管理システムの一構成例を示す図である。
【図3】(a)は、印字装置が備わる搬送装置を示す図、(b)〜(d)は、缶容器の缶底に印字される製品情報と識別情報記号を示す図である。
【図4】個体管理部を備えるバルブ入味検査装置の一構成例を示す図である。
【図5】(a)は、バルブ入味検査画像の一例を示す図、(b)は、バルブ入味検査実績データの一例を示す図、(c)は、バルブ入味検査画像データの一例を示す図である。
【図6】(a)は、箱状の容器に印字される製品情報と識別情報記号を示す図、(b)は、袋容器に印字される製品情報と識別情報記号を示す図である。
【図7】(a)は、個体管理部を有するフィラーの一構成例を示す図、(b)は、フィラー生産実績データの一例を示す図である。
【図8】(a)は、シーマ生産実績データの一例を示す図、(b)は、梱包実績データの一例を示す図である。
【図9】生産実績統合データの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について、飲料を缶容器に充填封入する生産管理システムを例に、適宜図を参照して詳細に説明する。
図1は、中間製品である飲料を缶容器2に充填封入して最終製品としての「缶入飲料」を生産する生産管理システム1を示す図であり、空缶搬送工程10、充填工程20、滅菌工程30、検査工程40、梱包・出荷工程50および倉入工程60からなる生産工程で缶入飲料を生産する。以下、空缶搬送工程10の側を上流、倉入工程60の側を下流とする。
【0011】
飲料が充填封入される缶容器2は略円筒形の容器であって、空缶搬送工程10から検査工程40までは生産管理システム1に敷設されるコンベア装置1aによって上流から下流に向かって搬送されて各工程が実行され、梱包・出荷工程50と倉入工程60は、缶容器2が箱詰めされた梱包箱2bを運搬する運搬装置(図示せず)によって運搬される。
【0012】
空缶搬送工程10では、搬送装置11で飲料を充填封入する缶容器2が洗浄されると充填工程20に進む。充填工程20では充填装置21で缶容器2に飲料が充填されて、蓋部2aが取り付けられ(巻き締められ)、入味検査される。
充填装置21には、例えば1つ又は複数のフィラーバルブ22aが備わり、各フィラーバルブ22aには固有のバルブ番号が付与されている(図7の(a)参照)。そして、飲料はフィラーバルブ22aから缶容器2に充填される。このように、複数のフィラーバルブ22aを備えることによって、複数の缶容器2に同時に飲料を充填できる。なお、図1には図の簡略化のため1つのフィラーバルブ22aのみを図示している。
【0013】
また、充填装置21は、例えば、X線検査部23aで缶容器2にX線を照射して入味検査(バルブ入味検査)する。バルブ入味検査は、缶容器2に充填封入された飲料の充填量を充填装置21のフィラーバルブ22aごとに検査する工程である。
【0014】
次に缶容器2は滅菌工程30に進み、滅菌装置31で、例えば加熱されて滅菌され、検査工程40に進む。
検査工程40では、生産検査装置41による内圧検査、入味検査(製品入味検査)、外観検査が終了したのち、缶容器2の例えば底部(缶底)など所定の印字面に必要な情報が印字される。
【0015】
生産検査装置41は、例えばX線検査部42aで缶容器2にX線を照射して飲料の充填量を検査する。また、生産検査装置41は、缶容器2の外観を撮像装置43aで撮像し、撮像した画像(光学画像)と予め登録してある基準の印字情報とのマッチングによって、主に外観の汚れ、印刷ずれ、ラベルの貼り付け位置ずれなど、外観の異常の有無を検査する。なお、撮像装置43aとしては、例えば、CCD(Charge Coupled Device)カメラやCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)カメラを利用することができる。なお、光学画像は、CCDやCMOSなどの撮像素子で光学的に撮像した画像を示す。
【0016】
また、生産検査装置41は、例えばインクジェットプリンタなどの印字装置で、缶容器2の缶底の表面に、製造ロット番号、製造工場、製造年月日、賞味期限(消費期限)など、必要な情報を文字情報として印字する。以下、これらの情報をまとめて製品情報2cと称する。
製品情報2cは、生産単位(例えば、製造ロット)ごとに統一されて飲料に付与される情報(第3情報)であり、生産管理システム1の運用を管理する運用管理者や消費者が直接視認できることが好ましい情報である。したがって、製品情報2cの印字には、熱硬化インク、紫外線硬化インクなど、可視光に対して不透明で視認可能なインク(可視インク)が使用される。
【0017】
そして、生産検査装置41は、缶容器2に印字された製品情報2cの印字状態を検査する。生産検査装置41は、印字した製品情報2cを光学画像として撮像装置45aで撮像し、撮像した文字情報(印字パターン)と予め登録されている基準の印字情報とのマッチングによって、印字位置のずれ、文字のかすれや印字漏れなどの印字不良等を検査する。なお、撮像装置45aは、前記したように、CCDカメラやCMOSカメラを利用することができる。
【0018】
梱包・出荷工程50では、飲料が充填封入された缶容器2が梱包装置51によって梱包箱2bに箱詰めされる。梱包装置51は、例えば1つまたは複数の缶容器2を吸着保持するマジックハンド51aで缶容器2を梱包箱2bに箱詰めする。その後、梱包箱2bは封印されて重量検査される。ここでは、規格外の重量の梱包箱2bが不良品と判定されて生産管理システム1から排斥され、良品と判定された梱包箱2bには必要な製品情報が文字情報として印字される。ここでいう製品情報は、検査工程40で缶容器2の缶底に印字された製品情報2cと同じであってもよいが、缶容器2に印字される製品情報2cと異なった情報を含んでいてもよい。
例えば、梱包箱2bを個別に識別する梱包箱識別符号2e1が付加されていてもよい。
【0019】
その後、梱包装置51は、梱包箱2bに印字された文字情報の状態を検査する。梱包装置51は、例えば、梱包箱2bに印字された印字情報などを光学画像として撮像装置54aで撮像し、撮像された印字パターンと予め登録されている基準の印字情報とのマッチングによって、印字位置のずれ、文字のかすれや印字漏れなどの印字不良等を検査する。なお、撮像装置54aは、前記したように、CCDカメラやCMOSカメラを利用することができる。
【0020】
さらにその後、倉入工程60に進み、缶容器2が箱詰めされた梱包箱2bは倉入装置61によってパレット単位2eにまとめられ、所定の倉庫等に搬送される。
【0021】
パレット単位2eは所定数の梱包箱2bが集められた単位(ユニット)であり、缶容器2に充填封入される商品の種類、流通量等によって、1つのパレット単位2eを構成する梱包箱2bの数は適宜決定される。そして、例えば、倉入装置61でパレット単位2eごとにパレット識別符号2e2が付与される。パレット識別符号2e2は、梱包箱2bに印字される必要はないが、梱包箱2bに印字する構成であってもよい。パレット識別符号2e2は、パレット単位2eを識別するための符号であってパレット単位2eごとに個別に付与される。
【0022】
そこで、例えば、倉入装置61は梱包装置51で梱包箱2bに印字された梱包箱識別符号2e1を読み取るとともに、パレット単位2eに付与するパレット識別符号2e2と梱包箱識別符号2e1とをリンクしたパレット管理情報を作成して管理する構成とすれば、任意のパレット単位2eに含まれる梱包箱2bを管理することができる。
なお、一例として、梱包装置51では、梱包箱識別符号2e1をバーコードで梱包箱2bに印字し、倉入装置61にバーコードリーダを備える構成にすれば、パレット管理情報を作成する倉入装置61を簡単な構成にすることができる。
【0023】
生産管理システム1に備わる生産装置(搬送装置11、充填装置21、滅菌装置31、生産検査装置41、梱包装置51、および倉入装置61をまとめて生産装置と称する)は、例えばイーサネット(登録商標)規格の生産設備ネットワークNE2を介して生産設備管理システム4と接続され、各工程における生産状態を示す情報(生産情報)や検査結果等の情報(検査情報)を第2情報として作成して送信可能に構成される。
例えば、倉入装置61が作成するパレット管理情報を生産設備管理システム4に送信する構成とすれば、パレット管理情報を生産設備管理システム4で管理できる。
【0024】
また、生産管理システム1に備わる検査装置は、例えばイーサネット規格の画像収集ネットワークNE1を介して、各検査装置が検査情報(第2情報)として撮像する(作成する)検査画像を収集する検査画像収集システム3と接続され、缶容器2の検査時の画像を送信可能に構成される。このため、検査装置はそれぞれ、缶容器2の検査状態を検査画像として撮像するための撮像装置が備わることが好ましい。
ここでいう検査装置は、生産装置のうち、缶容器2や梱包箱2bを検査する機能を有する装置を示し、本実施形態においては、充填装置21、生産検査装置41、および梱包装置51を示すものとする。
【0025】
図2に示すように、生産設備管理システム4は、生産装置から送信される情報を受信するシステムサーバ40aと、検査装置が作成する、飲料が充填封入された缶容器2(図1参照)や缶容器2が箱詰めされた梱包箱2b(図1参照)の検査結果に基づく情報を、検査情報としてデータベース化して保存する生産情報保存装置(生産検査情報DBサーバ40b)と、生産管理システム1(図1参照)の運用管理者等が生産管理システム1の状態を監視するとともに必要に応じて遠隔操作するための監視卓40c、監視用モニタ40dを含んで構成される。
なお、ここでいう検査結果に基づく情報は、具体的には、後記する缶容器2の個体識別情報を検査結果にリンクした情報を示す。
【0026】
また、検査画像収集システム3は、全画像収集ネットワークレコーダ30a、検査画像保存DBサーバ30b、検査実績保存DBサーバ30c、および画像トレース編集サーバ30dを含んで構成される。
【0027】
全画像収集ネットワークレコーダ30aは、生産管理システム1(図1参照)の検査装置から検査情報として送られる検査画像を静止画像として保存(蓄積)する画像保存装置であって、例えば、生産管理システム1の検査装置から送信される検査画像を「JPEG」などの画像データに変換して蓄積する記録装置である。
検査画像保存DBサーバ30bは、全画像収集ネットワークレコーダ30aが蓄積する検査画像に基づく情報をデータベース化して保存(管理)する画像管理装置(サーバ)である。
なお、ここでいう検査画像に基づく情報は、具体的には、後記する缶容器2の個体識別情報を、検査画像を示す情報にリンクした情報を示す。
検査実績保存DBサーバ30cは、生産設備管理システム4の生産検査情報DBサーバ40bがデータベース化して保存する検査結果に基づく情報を取得して保存する検査実績管理装置(サーバ)である。
画像トレース編集サーバ30dは、運用管理者等の操作によって、検査画像保存DBサーバ30bが保存する検査画像および検査実績保存DBサーバ30cが保存する検査結果に基づく情報を、検査情報として検索して表示するサーバである。
検査画像保存DBサーバ30b、検査実績保存DBサーバ30cの詳細は後記する。
【0028】
なお、検査画像収集システム3の、全画像収集ネットワークレコーダ30a、検査画像保存DBサーバ30b、検査実績保存DBサーバ30c、および画像トレース編集サーバ30dは、例えばイーサネット規格の検査情報活用ネットワークNE3で接続され、生産設備管理システム4のシステムサーバ40a、生産検査情報DBサーバ40b、監視卓40c、および監視用モニタ40dは、例えばイーサネット規格の生産設備情報ネットワークNE4で接続される。そして、検査情報活用ネットワークNE3と生産設備情報ネットワークNE4が接続される。
この構成によって、検査画像収集システム3と生産設備管理システム4の間で、情報の送受信が可能になる。
【0029】
本実施形態においては、画像収集ネットワークNE1、生産設備ネットワークNE2、検査情報活用ネットワークNE3、および生産設備情報ネットワークNE4を独立したネットワークで構築したが、これは各ネットワークの負荷を分散して、特定のネットワークに過大な負荷がかかることを防ぐことを目的とする。したがって、例えば負荷の軽いネットワークを適宜統合して生産管理システム1(図1参照)を構成してもよい。
【0030】
そして、本実施形態に係る生産管理システム1(図1参照)は、缶容器2(図1参照)を単体で個別管理可能に構成される。例えば、生産管理システム1の検査装置のうち、缶容器2を個別検査する検査装置は、缶容器2に検査結果をリンクして検査実績データを作成するように構成される。
なお、ここでいう検査装置は、缶容器2を単体で検査する機能を有する充填装置21(図1参照)と生産検査装置41(図1参照)を示し、以下、これらの検査装置(缶容器2を個別検査する検査装置)をまとめて缶容器検査装置と称する。
【0031】
具体的に、図1に示す生産管理システム1の缶容器検査装置は、検査対象となる缶容器2を個体識別情報によって個別に識別し、さらに、当該缶容器2に対する検査結果に個体識別情報をリンクした検査実績データを、缶容器2の個別管理情報として作成する。
そして生産管理システム1は、缶容器検査装置で検査実績データ(個別管理情報)を作成することによって、缶容器2を単体で個別管理可能にする。
【0032】
このため、本実施形態に係る缶容器2には、個体を識別するための個体識別情報が第1情報として個別に付与されていることが好ましく、さらに、付与された個体識別情報が缶容器2に印字されていることが好ましい。
【0033】
缶容器2に付与される個体識別情報は、例えば、缶容器2の製造番号や個体番号である。このような個体識別情報は、缶容器2の製造段階で付与されて印字されることが好ましいが、充填工程20より上流で、生産管理システム1が缶容器2に個体識別情報を付与して印字する構成であってもよい。
【0034】
そして、缶容器2の個体識別情報(製造番号または個体番号)を、例えば二次元コード化した記号(識別情報記号)が、可視光に対して透明で消費者が可視光下で視認不可能な不可視インク(ステルスインク)で、缶容器2の缶底など、所定の印字面に印字されていることが好ましい。
ステルスインクは、例えば、紫外線が照射されたときに発光して可視化し、可視光下では消費者が視認することができない性質のインクであればよい。
【0035】
例えば、図3の(a)に示すように、搬送装置11に印字装置11aが備わり、缶容器2ごとに個体識別情報を付与するとともに、付与した個体識別情報を、例えば二次元コードにコード化した識別情報記号2dを、ステルスインクで缶容器2の缶底に印字する構成とすることができる。
【0036】
缶容器2は略円筒形であり、生産管理システム1(図1参照)で缶容器2は、転がりながらコンベア装置1a(図1参照)で搬送される。例えば、識別情報記号2dを読み取る読取装置が缶容器2の側面と対面するように配置される場合、缶容器2が識別情報記号2dの読取装置の位置にあるとき、缶容器2の側面の任意の位置が読取装置に対面する。したがって、識別情報記号2dが缶容器2の側面に印字されている場合、識別情報記号2dの読取装置に識別情報記号2dを対面させる必要があり、そのための装置が必要になる。
または、識別情報記号2dの読取装置が、缶容器2の側面から識別情報記号2dを抽出する機能を備える必要がある。いずれにしても、生産管理システム1や識別情報記号2dの読取装置の構成が複雑になる。
【0037】
これに対し、生産管理システム1(図1参照)において缶容器2の缶底を所定の方向に向けることは容易であり、識別情報記号2dの読取装置に缶底を対面させることは容易である。したがって、缶容器2の缶底に印字された識別情報記号2dと読取装置を容易に対面させることができ、生産管理システム1や識別情報記号2dの読取装置を簡単な構成とすることができる。
【0038】
また、前記したように缶容器2は転がりながら生産管理システム1(図1参照)を搬送されることから、円形の缶底は周方向に回転する。したがって、識別情報記号2dが缶底の中心部からずれた周縁部に印字されていると、識別情報記号2dの読取装置は、識別情報記号2dを抽出するための画像処理が必要になる。
これに対し、図3の(b)に示すように缶容器2の缶底の略中心部に識別情報記号2dが印字されていると、識別情報記号2dを読み取る読取装置は、識別情報記号2dを抽出する画像処理をすることなく、常に缶底の中心部から識別情報記号2dを読み取ることができる。
以上の理由によって識別情報記号2dは、図3の(b)に示すように、所定の印字面を缶容器2の缶底とし、缶底の略中心部に印字されることが好ましい。
【0039】
また、図1に示す検査工程40では、缶容器2の缶底に製品情報2cが印字される。このとき、製品情報2cは、図3の(c)に示すように、識別情報記号2dと互いに重なる部分を有するように上書きされる。検査工程40で製品情報2cの印字に使用されるインクは、前記したように、熱硬化インク、紫外線硬化インクなどの可視インクであり、消費者等が製品情報2cを視認可能に構成される。
【0040】
識別情報記号2dが可視インクで印字されると、図3の(c)に示すように製品情報2cと識別情報記号2dが重る部分は、消費者等が製品情報2cを識別することが困難になる。また、可視光下で読取装置が識別情報記号2dを識別することが困難になり、読み取りのエラー発生率が高くなることが予測される。
【0041】
これに対し、識別情報記号2dがステルスインクで印字されると、可視光下で消費者等は識別情報記号2dを視認することができず、図3の(d)に示すように、製品情報2cのみ視認することができる。したがって、消費者等は、賞味期限等を含む製品情報2cを容易に読み取ることができる。
また、例えば紫外線の照射で発光するステルスインクとすると、可視光を遮光した環境で紫外線を照射することで識別情報記号2dのみ発光させることができ、読取装置が識別情報記号2dを容易に識別することが可能で、読み取りのエラー発生率を低く抑えることができる。
以上の理由によって、識別情報記号2dはステルスインクで印字されることが好ましい。
【0042】
そして、本実施形態に係る生産管理システム1(図1参照)は、図3の(b)に示すようにステルスインクで識別情報記号2dが印字された缶容器2に飲料を充填封入して缶入飲料を生産する装置とし、生産管理システム1の缶容器検査装置は、缶容器2に印字された識別情報記号2dを読み取り可能に構成される。
【0043】
例えば、充填装置21(図1参照)には、缶容器2(図1参照)をバルブ入味検査するため、図4に示すように構成されるバルブ入味検査装置23が備わる。そして、バルブ入味検査装置23は、識別情報記号2d(図3の(b)参照)の読取装置として、図4に示すように構成される個体管理部100を備える。
バルブ入味検査装置23の個体管理部100は、缶容器2の缶底に向かって紫外線を照射する紫外線照射手段(照明装置101)と、照明装置101から照射される紫外線で発光する二次元コードを読み取るバーコードリーダ(高速BCR102)と、を含んで構成され、ステルス印字読取部104によって制御される。
【0044】
照明装置101は、例えば、可視光が遮光された暗室の内部で紫外線を照射するように構成され、高速BCR102は、暗室の内部で発光する識別情報記号2d(図3の(b)参照)を読み取るように構成される。さらに、缶容器2はコンベア装置1aによって暗室の内部に搬送されるように構成される。
【0045】
また、個体管理部100は、缶容器2が照明装置101に到達したことを検出する着荷センサ103を備え、着荷センサ103が缶容器2を検出すると、バルブ入味検査装置23を制御する制御部105は、着荷センサ103が缶容器2を検出したことをステルス印字読取部104に通知する。
ステルス印字読取部104は、照明装置101を駆動して紫外線を照射し、高速BCR102は、紫外線によって発光する識別情報記号2d(図3の(b)参照)を読み取ってステルス印字読取部104に通知する。なお、照明装置101はバルブ入味検査装置23の作動時は常時紫外線を照射するように構成されていてもよい。
【0046】
ステルス印字読取部104は、高速BCR102から通知された識別情報記号2d(図3の(b)参照)を解析して缶容器2の個体識別情報を抽出し、制御部105に通知する。
この構成によって、制御部105はバルブ入味検査装置23で検査される缶容器2の個体識別情報を取得できる。つまり、缶容器2の個体を識別できる。
【0047】
高速BCR102が識別情報記号2d(図3の(b)参照)を読み取った後、缶容器2はX線検査部23aに搬送される。X線検査部23aに備わる着荷センサ232が缶容器2を検出すると、制御部105はX線検査部23aを制御するバルブ入味検査部231に、着荷センサ232が缶容器2を検出したことを通知する。
バルブ入味検査部231は、X線検査部23aに備わるX線照射装置230を駆動して缶容器2にX線を照射し、缶容器2における飲料の充填量を検査する。そして、飲料の充填量が規定の範囲内にあるときは良品(GOOD)と判定し、飲料の充填量が規定の範囲内にない場合は不良品(NG)と判定する。
【0048】
そして、バルブ入味検査部231は、判定結果(検査結果)を制御部105に通知する。制御部105は、バルブ入味検査部231が缶容器2を不良品(NG)と判定した場合は、そのことを、着荷センサ108が缶容器2を検出したときに排斥制御部106に通知する。排斥制御部106は排斥装置107を駆動して缶容器2を排斥ライン1bに導いてコンベア装置1aから排斥する。この構成によって、飲料の充填量が規定の範囲内にない缶容器2を排斥できる。
【0049】
一方、バルブ入味検査部231で良品(GOOD)と判定された缶容器2は、コンベア装置1aによって滅菌装置31(図1参照)に導入されて滅菌工程30(図1参照)が実行される。
【0050】
なお、バルブ入味検査装置23は、缶容器2の飲料の充填量と予め設定される基準充填量との誤差を計測し、その計測結果を検査結果として取得する構成であってもよい。この場合、バルブ入味検査部231は、飲料の充填量が基準充填量より少ない缶容器2(すなわち、マイナス誤差の缶容器2)を不良品と判定する。さらに、基準充填量との誤差の計測結果を検査結果として制御部105に通知する。
【0051】
また、例えばX線検査部23aは、X線照射装置230が缶容器2にX線を照射したときに得られるX線画像(検査画像)を例えばJPEGなどの画像データに変換し、判定結果などの検査結果とともに制御部105に送信するように構成される。
X線検査部23aが撮像する検査画像は、例えば、図5の(a)に示すように、缶容器2に充填されている飲料(斜線で示す)の状態を撮像した画像(バルブ入味検査画像230a)であり、例えば、基準充填量「0」に対する誤差を示す構成が好ましい。さらに、制御部105(図4参照)では、バルブ入味検査画像230aを示す情報として、個別に画像番号230bを付与することが好ましい。
【0052】
制御部105(図4参照)は、バルブ入味検査部231(図4参照)から通知された判定結果や誤差の計測結果(検査結果)にステルス印字読取部104(図4参照)から通知された個体識別情報をリンクし、個別管理情報として検査実績データ(バルブ入味検査実績データ)を作成する。
バルブ入味検査実績データは、図5の(b)に示すように、例えば「A」、「B」、「C」という個体識別情報が付与された缶容器2(図4参照)の判定結果(「GOOD」または「NG」)や誤差の計測結果を示すマップ、つまり、缶容器2の検査結果に個体識別情報をリンクするマップである。
【0053】
そして、制御部105(図4参照)は、作成したバルブ入味検査実績データを、生産設備ネットワークNE2を介して生産設備管理システム4(図4参照)に送信する。
生産設備管理システム4は、送信されたバルブ入味検査実績データを生産検査情報DBサーバ40b(図2参照)で保存する。
この構成によって、生産管理システム1(図1参照)は、バルブ入味検査装置23(図4参照)が作成する、缶容器2のバルブ入味検査実績データを生産設備管理システム4で保存(管理)できる。
【0054】
また、図4に示す検査画像出力部111は、例えば制御部105から、缶容器2の個体識別情報を取得するとともに、X線検査部23aが撮像したバルブ入味検査画像230aの画像番号230b(図5の(a)参照)に、取得した個体識別情報をリンクし、個別管理情報として検査画像データ(バルブ入味検査画像データ)を作成して、バルブ入味検査画像230aとともに画像収集ネットワークNE1を介して検査画像収集システム3に送信する。
バルブ入味検査画像データは、図5の(c)に示すように、例えば「A」、「B」、「C」という個体識別情報が付与された缶容器2(図4参照)を撮像したバルブ入味検査画像230aの画像番号230b(図5の(a)参照)を示すマップ、つまり、検査画像の画像番号に缶容器2の個体識別情報をリンクするマップである。
【0055】
検査画像収集システム3の全画像収集ネットワークレコーダ30a(図2参照)は、検査画像出力部111から送信されたバルブ入味検査画像230a(図5の(a)参照)を蓄積して保存し、検査画像保存DBサーバ30b(図2参照)は、図5の(c)に示すバルブ入味検査画像データをデータベース化して保存(管理)する。
【0056】
また、検査実績保存DBサーバ30c(図2参照)は、生産設備管理システム4の生産検査情報DBサーバ40b(図2参照)に送信されたバルブ入味検査実績データ(図5の(b)参照)を取得してデータベース化して保存(管理)する。
この構成によって、生産管理システム1(図1参照)は、バルブ入味検査実績データとバルブ入味検査画像データ(図5の(c)参照)を個別管理情報として検査画像収集システム3で保存(管理)できる。
【0057】
なお、図4の符号109は、排斥確認センサであり、不良品と判定された缶容器2が排斥ライン1bを通過したことを検出するセンサである。また、符号110はタッチパネルであり、例えば、生産管理システム1(図1参照)の運用管理者が、必要な情報を制御部105に入力するためのインタフェースである。
【0058】
この構成によると、生産管理システム1(図1参照)の運用管理者等は、缶容器2の個体識別情報をキーとして、検査実績保存DBサーバ30c(図2参照)に保存されるバルブ入味検査実績データ(図5の(b)参照)と全画像収集ネットワークレコーダ30aを介して検査画像保存DBサーバ30b(図2参照)に保存されるバルブ入味検査画像データ(図5の(c)参照)を検索して取り出すことができる。
つまり、生産管理システム1の運用管理者は必要に応じて任意の缶容器2のバルブ入味検査実績データとバルブ入味検査画像データを検索して、例えば、画像トレース編集サーバ30d(図2参照)で確認できる。
【0059】
なお、バルブ入味検査実績データ(図5の(b)参照)のみを作成し、缶容器2(図1参照)の個体識別情報に判定結果や誤差の計測結果をリンクして管理する構成であってもよい。この構成によると、生産管理システム1(図1参照)の運用管理者は、バルブ入味検査実績データのみ検索できる。
または、バルブ入味検査画像データ(図5の(c)参照)のみを作成し、缶容器2の個体識別情報にバルブ入味検査画像230a(図5の(a)参照)のみをリンクして管理する構成であってもよい。この構成によると、生産管理システム1の運用管理者は、バルブ入味検査画像データのみ検索できる。
【0060】
また、生産検査装置41(図1参照)に備わり、X線検査部42a(図1参照)を有して製品入味検査する製品入味検査装置(図示せず)を、図4に示すバルブ入味検査装置23と同等に構成することができる。すなわち、判定結果や誤差の測定結果を含む検査結果に個体識別情報をリンクした検査実績データ(製品入味検査実績データ)を作成して生産設備ネットワークNE2を介して生産設備管理システム4(図2参照)に送信するとともに、検査画像を示す情報(画像番号)に個体識別情報をリンクした検査画像データ(製品入味検査画像データ)を作成して画像収集ネットワークNE1を介して検査画像収集システム3に送信する構成とすればよい。
【0061】
さらに、検査画像収集システム3の検査実績保存DBサーバ30c(図2参照)は、生産設備管理システム4の生産検査情報DBサーバ40b(図2参照)から製品入味検査実績データを取得して保存する。製品入味検査実績データは、例えば、図5の(b)に示すバルブ入味検査実績データと同様に、判定結果や誤差の測定結果(検査結果)に個体識別情報をリンクするマップとすればよい。また、製品入味検査画像データは、例えば、図5の(c)に示すバルブ入味検査画像データと同様に、製品入味検査装置(図示せず)が撮像したX線画像(製品入味画像)の画像番号に個体識別情報をリンクするマップとすればよい。
【0062】
また、生産検査装置41(図1参照)に備わり、撮像装置43a(図1参照)を有して缶容器2の外観を検査する外観検査装置(図示せず)は、例えば、外観検査の判定結果(「GOOD」または「NG」)に個体識別情報をリンクして検査実績データ(外観検査実績データ)を作成して生産設備ネットワークNE2を介して生産設備管理システム4(図2参照)に送信する。さらに、外観検査のときに撮像装置43aが撮像した光学画像(外観検査画像)に個別の画像番号を付し、この画像番号に個体識別情報をリンクして検査画像データ(外観検査画像データ)を作成し、画像収集ネットワークNE1を介して検査画像収集システム3(図2参照)に送信する構成とする。
さらに、検査画像収集システム3(図2参照)は、生産設備管理システム4(図2参照)から外観検査実績データを取得して保存する。
【0063】
外観検査実績データは、例えば、図5の(b)に示すバルブ入味検査実績データと同様に、判定結果(検査結果)に個体識別情報をリンクするマップとすればよい。なお、外観検査実績データには、誤差の項目はなくてもよい。また、外観検査画像データは、例えば、図5の(c)に示すバルブ入味検査画像データと同様に、撮像装置43a(図1参照)が撮像した外観検査画像の画像番号に個体識別情報をリンクするマップとすればよい。
【0064】
また、生産検査装置41(図1参照)に備わり、撮像装置45a(図1参照)を有して缶容器2に印字された製品情報2c(図3の(b)参照)の印字状態を検査する印字検査装置(図示せず)は、例えば、印字検査の判定結果(「GOOD」または「NG」)に個体識別情報をリンクして検査実績データ(缶印字検査実績データ)を作成して生産設備ネットワークNE2を介して生産設備管理システム4(図2参照)に送信する。さらに、印字検査のときに撮像装置45aが撮像した光学画像(缶印字検査画像)に個別の画像番号を付し、この画像番号に個体識別情報をリンクして検査画像データ(缶印字検査画像データ)を作成し、画像収集ネットワークNE1を介して検査画像収集システム3に送信する構成とする。
さらに、検査画像収集システム3(図2参照)は、生産設備管理システム4(図2参照)から缶印字検査実績データを取得して保存する。
【0065】
缶印字検査実績データは、例えば、図5の(b)に示すバルブ入味検査実績データと同様に、判定結果(検査結果)に個体識別情報をリンクするマップとすればよい。なお、缶印字検査実績データには、誤差の項目はなくてもよい。また、缶印字検査画像データは、例えば、図5の(c)に示すバルブ入味検査画像データと同様に、撮像装置45a(図1参照)が撮像した缶印字検査画像の画像番号に個体識別情報をリンクするマップとすればよい。
【0066】
また、生産検査装置41(図1参照)に備わって、缶容器2の内圧を検査する内圧検査装置(図示せず)は、例えば、超音波を缶容器2に当てて内圧を検査する装置で、缶容器2の内圧が所定の範囲内にあるか否かによって良品および不良品を判定する。また、内圧の基準値からの誤差を計測する構成であってもよい。
そして、本実施形態に係る内圧検査装置は、内圧検査の判定結果(「GOOD」または「NG」)および誤差の計測結果に個体識別情報をリンクして検査実績データ(内圧検査実績データ)を作成し、生産設備ネットワークNE2を介して生産設備管理システム4(図2参照)に送信する。
さらに、検査画像収集システム3(図2参照)は、生産設備管理システム4(図2参照)から内圧検査実績データを取得して保存する。
内圧検査実績データは、例えば、図5の(b)に示すバルブ入味検査実績データと同様に、判定結果や誤差の計測結果(検査結果)に個体識別情報をリンクするマップとすればよい。
内圧検査装置は検査画像を作成せず、検査実績データ(内圧検査実績データ)のみを作成する缶容器検査装置となる。
【0067】
以上のように、缶容器検査装置には、検査実績データと検査画像データを作成する、バルブ入味検査装置23(図4参照)、製品入味検査装置(図示せず)、外観検査装置(図示せず)、および印字検査装置(図示せず)と、検査実績データのみを作成する内圧検査装置(図示せず)と、が含まれる。
【0068】
また、バルブ入味検査装置23(図4参照)、製品入味検査装置(図示せず)などX線画像を検査画像とする装置と、外観検査装置(図示せず)、印字検査装置(図示せず)など光学画像を検査画像とする装置と、が含まれる。
【0069】
また、例えば、缶容器2(図1参照)に混入する異物をX線照射によって検査する図示しない異物検査装置が備わる場合、X線が缶容器2を透過した状態を示すX線画像を検査画像とし、さらに、缶容器2内部に異物が混入している(NG)か、していない(GOOD)か、を判定した判定結果を検査結果とすることができる。
この場合も、X線画像(検査画像)に固有の画像番号を付すとともに、缶容器2の個体識別情報と当該画像番号をリンクした異物検査画像データと、個体識別情報と検査結果をリンクした異物検査実績データと、を作成して管理できる。
【0070】
このように、図1に示す生産管理システム1は、缶容器2に関する検査実績データ(個別管理情報)を缶容器2ごとに作成して、生産設備管理システム4(図2参照)と画像収集システム3(図2参照)で保存(管理)できる。
また、缶容器検査装置が撮像する検査画像に缶容器2の個体識別情報をリンクして缶容器2ごとの検査画像データ(個別管理情報)を作成し、画像収集システム3で保存(管理)できる。
そこで、検査結果に缶容器2の個体識別情報をリンクした個別管理情報(検査実績データ)を作成する缶容器検査装置と、検査実績データを保存する検査実績保存DBサーバ30c(図2参照)と、検査画像に缶容器2の個体識別情報をリンクした個別管理情報(検査画像データ)を作成して保存する検査画像保存DBサーバ30b(図2参照)と、を含んで個別情報管理装置と称すると、本実施形態に係る生産管理システム1は、個別管理情報を作成して保存する個別情報管理装置を備えることになる。
【0071】
以上のように構成される生産管理システム1は、缶容器2(図1参照)の個体を識別可能な個体識別情報と検査結果がリンクした検査実績データおよび個体識別情報と検査画像がリンクした検査画像データをデータベース化し、個別管理情報として個別情報管理装置で管理することができる。
そして、運用管理者等は、必要に応じて、缶容器2の個体ごとに検査実績データや検査画像データを検索して確認できる。
【0072】
以上のように、本実施形態に係る生産管理システム1(図1参照)は、個別情報管理装置で、缶容器2(図1参照)に付与される個体識別情報に基づいて個別管理情報を作成し、缶容器2を個別管理することができる。そして、検査実績データ(バルブ入味検査実績データ、内圧検査実績データ、製品入味検査実績データ、缶印字検査実績データ)と検査画像データ(バルブ入味検査画像データ、製品入味検査画像データ、缶印字検査画像データ)を缶容器2ごとに個別に管理できる。
【0073】
また、缶容器2(図1参照)には、ステルスインクを使用して個体識別情報を示す識別情報記号2d(図3の(b)参照)を印字することができ、識別情報記号2dと製品情報2c(図3の(b)参照)を重ねて印字しても、消費者は識別情報記号2dを視認することなく、必要な製品情報2cを容易に読み取ることができる。
そして、生産管理システム1(図1参照)は、必要に応じて識別情報記号2dを読み込んで缶容器2の個体を識別できる。
また、ステルスインクを使用して缶底に識別情報記号2dを印字することによって、従来の外観(印刷図柄)に影響を与えることなく、つまり、外観を損なうことなく、識別情報記号2dを印字できる。
【0074】
なお、ステルスインクは紫外線が照射されると発光する性質を有するもののほか、赤外線が照射されると発光する性質を有するステルスインクを使用することも可能である。この場合、例えば、バルブ入味検査装置23の個体管理部100(図4参照)には、赤外線を照射する照明装置101(図4参照)が備わる構成とすればよい。
【0075】
また、本実施形態は、缶容器2(図1参照)に飲料が充填封入される缶入飲料に限定されず、例えば、殺虫液や化粧液など、液体や気体の中間製品を缶容器や樹脂製容器に充填封入して最終製品を生産する生産管理システムにも適用できる。
【0076】
または、固形の菓子や錠剤の薬品など、小型固形物の中間製品を樹脂製容器や箱状の容器や袋容器に封入して最終製品を生産する生産管理システムにも適用できる。
図6の(a)に示すような箱状の容器200の場合、図示しない生産管理システムを流れるときに缶容器2(図1参照)のように回転することがない。したがって、所定の面を1方向に向けることが容易である。そこで、賞味期限などの製品情報201を印字する面と同じ面に、ステルスインクで識別情報記号202を印字する構成とすることができる。
そして、製品情報201と識別情報記号202を同じ面に印字する構成とすると、図示しない生産管理システムには、製品情報201を撮像する撮像装置(図示せず)の近傍に識別情報記号202の読取装置を配置することができる。このことによって、図示しない生産管理システムに、簡単な構成で識別情報記号202の読取装置を取り付けることができる。
【0077】
なお、識別情報記号202は、製品情報201と重ねて印字する構成であってもよいし、製品情報201と重ねることなく印字する構成であってもよい。
識別情報記号202はステルスインクで印字されることから、その印字位置に拘らず箱状の容器200の外観(印刷図柄)に影響を与えることがなく、外観を損なうことがない。
【0078】
また、袋容器の場合、図6の(b)に示すように、封入される中間製品204を上下方向から挟み込むように上側シート203Uと下側シート203Dを貼り合わせて形成される。そして、上側シート203Uと下側シート203Dを貼り合わせるときに、印字装置207で賞味期限などの製品情報205を印字している。そこで、製品情報205を印字するのと同時に識別情報記号206をステルスインクで印字する構成とすれば、従来の印字装置207からの比較的容易な設計変更で識別情報記号206を印字可能になる。
【0079】
この場合も識別情報記号206はステルスインクで印字されることから、その印字位置に拘らず、製品情報205や袋容器の外観(印刷図柄)に影響を与えることがなく、外観を損なうことがない。
【0080】
さらに本実施形態は、発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜設計変更が可能である。
例えば、生産管理システム1の充填装置21(図1参照)に備わり、複数のフィラーバルブ22a(図1参照)で缶容器2に飲料を充填するフィラー22(図7の(a)参照)が識別情報記号2d(図3の(b)参照)を読み取り可能に構成されていてもよい。
例えば図7の(a)に示すように、フィラー22が識別情報記号2dを読み取る個体管理部22bを備える構成であってもよい。
【0081】
個体管理部22bは、バルブ入味検査装置23の個体管理部100(図4参照)と同等の構成であり、照明装置221、高速BCR222、着荷センサ223を備えて構成され、ステルス印字読取部224によって制御される。
さらに、フィラー22には複数(図7の(a)には3つを図示)のフィラーバルブ22aが備わり、3つのフィラーバルブ22aはバルブ制御部22cによって制御される。また、複数のフィラーバルブ22aには個別のバルブ番号が付与される。例えば、図7の(a)に示すように3つのフィラーバルブ22aが備わる場合、「1」から「3」のバルブ番号が付与される。
【0082】
着荷センサ223が缶容器2を検出すると、フィラー22を制御する制御部22dは、着荷センサ223が缶容器2を検出したことをステルス印字読取部224に通知する。
ステルス印字読取部224は、照明装置221を駆動して紫外線を照射し、高速BCR222は、紫外線の照射によって発光する識別情報記号2d(図3の(b)参照)を読み取ってステルス印字読取部224に通知する。
【0083】
ステルス印字読取部224は、高速BCR222から通知された識別情報記号2d(図3の(b)参照)を解析して缶容器2の個体識別情報を抽出し、制御部22dに通知する。
この構成によって、制御部22dはフィラー22で飲料を充填する缶容器2の個体識別情報を取得できる。
【0084】
また、バルブ制御部22cは、制御部22dから缶容器2の個体識別情報を取り出すとともに、当該缶容器2に飲料を充填するフィラーバルブ22aのバルブ番号に、取り出した個体識別情報をリンクし、例えば図7の(b)に示されるようなフィラー生産実績データ(生産実績データ)を作成して制御部22dに送信する。
制御部22dは、送信されたフィラー生産実績データを、生産設備管理システム4に通知する構成とすれば、生産管理システム1(図1参照)は、フィラーバルブ22aのバルブ番号に缶容器2の個体識別情報をリンクしたフィラー生産実績データを生産設備管理システム4で管理できる。
また、検査画像収集システム3の検査実績保存DBサーバ30c(図2参照)が、フィラー生産実績データを生産設備管理システム4から取得する構成とすれば、フィラー生産実績データを検査画像収集システム3で保存(管理)できる。
【0085】
なお、フィラーバルブ22aと同数の個体管理部22bが、各フィラーバルブ22aに対応して配置される構成であってもよい。
【0086】
また、充填装置21(図1参照)に備わり、複数のチャネルで缶容器2(図1参照)に蓋部2aを取り付けるシーマ(図示せず)において、缶容器2の個体識別情報(例えば、「A」、「B」、「C」)とシーマのチャネル番号(例えば、「1」、「2」、「3」)とをリンクし、図8の(a)に示すようなシーマ生産実績データ(生産実績データ)を作成して生産設備管理システム4(図2参照)で管理する構成としてもよい。
この場合、シーマ(図示せず)には、例えばフィラー22の個体管理部22b(図7の(a)参照)と同等の個体管理部が備わる構成とすればよい。
また、検査画像収集システム3の検査実績保存DBサーバ30c(図2参照)が、シーマ生産実績データを生産設備管理システム4から取得する構成とすれば、シーマ生産実績データを検査画像収集システム3で保存(管理)できる。
【0087】
また、梱包装置51(図1参照)に備わって、缶容器2(図1参照)を梱包箱2b(図1参照)に箱詰めするケーサ(図示せず)において、缶容器2の個体識別情報(例えば、「A」、「B」、「C」)と、当該缶容器2が箱詰めされる梱包箱2bに付与される梱包箱識別符号2e1(例えば、「BOX1」、「BOX2」、「BOX3」)とをリンクし、図8の(b)に示すような梱包実績データ(生産実績データ)を作成して生産設備管理システム4(図2参照)で管理する構成としてもよい。
この場合、ケーサ(図示せず)には、例えばフィラー22の個体管理部22b(図7の(a)参照)と同等の個体管理部が備わる構成とすればよい。
また、検査画像収集システム3の検査実績保存DBサーバ30c(図2参照)が、梱包実績データを生産設備管理システム4から取得する構成とすれば、梱包実績データを検査画像収集システム3で保存(管理)できる。
【0088】
前記したように、倉入装置61(図1参照)ではパレット単位2eごとに付与されるパレット識別符号2e2と梱包箱2b(図1参照)ごとに付与される梱包箱識別符号2e1(図1参照)をリンクしたパレット管理情報を作成し、生産設備管理システム4(図2参照)で管理している。
したがって、缶容器2(図1参照)の個体識別情報と梱包箱識別符号2e1がリンクした梱包実績データ(生産実績データ)を生産設備管理システム4で管理する構成にすると、缶容器2が含まれるパレット単位2eを特定できる。
【0089】
なお、検査画像収集システム3の検査実績保存DBサーバ30c(図2参照)は、生産設備管理システム4(図2参照)から取得するバルブ生産実績データ(図7の(b)参照)、フィラー生産実績データ(図8の(a)参照)、および梱包実績データ(図8の(b)参照)を結合して、例えば図9に示す生産実績統合データ(生産実績データ)として管理する構成であってもよい。
この構成によると、生産管理システム1(図1参照)の運用管理者は、検査実績保存DBサーバ30cから図9に示す生産実績統合データを取り出して、任意の缶容器2(図1参照)の生産に関する情報を容易に参照できる。
【0090】
例えば、生産管理システム1(図1参照)の運用管理者は、流通過程におけるパレット単位2e(図1参照)を追跡することで、当該パレット単位2eに含まれる梱包箱2bを追跡できる。さらに、梱包実績データを参照して任意の梱包箱2bに箱詰めされている缶容器2(図1参照)を特定できる。つまり、任意のパレット単位2eに含まれる缶容器2の流通過程を追跡(トレースフォワード)できる。
【0091】
例えば、フィラー22(図7の(a)参照)のバルブ番号が「1」のフィラーバルブ22a(図7の(a)参照)に異常が発生した場合、生産管理システム1(図1参照)の運用管理者は、フィラー生産実績データ(図7の(b)参照)を参照して、「1」のフィラーバルブ22aで飲料を充填した缶容器2を特定し、さらに、梱包実績データ(図8の(b)参照)を参照して、当該缶容器2が箱詰めされた梱包箱2bを特定できる。
そして、当該梱包箱2bを回収することで、異常が発生したフィラーバルブ22aで飲料が充填された缶容器2を回収することができる。
【0092】
缶容器2(図1参照)に個体識別情報が付与されない場合、異常が発生したフィラーバルブ22a(図1参照)で飲料が充填された缶容器2を特定することはできず、当該缶容器2が含まれる製造ロットを全て回収する必要がある。
缶容器2に個体識別情報を付与し、さらに、個体識別情報を読み取り可能にすることで、異常が発生したフィラーバルブ22aで飲料が充填された缶容器2を特定することができ、さらに特定された缶容器2を含む梱包箱2b(図1参照)のみを回収できる。このことによって、回収の規模を小さくすることができ、回収に要する費用を低く抑えることができる。
【0093】
このように、図3の(b)に示すような識別情報記号2dがステルスインクで印字された缶容器2(図1参照)を利用し、さらに、フィラー生産実績データ(図7の(b)参照)、シーマ生産実績データ(図8の(a)参照)、梱包実績データ(図8の(b)参照)、生産実績統合データ(図9参照)などの生産実績データを作成することで、缶容器2を個別管理することができ、さらに、容易に追跡(トレースフォワード)することができる。そして、前記したように、生産装置に異常が発生した場合の回収の規模を小さくすることができる。
【0094】
なお、図1に示す生産管理システム1の各生産工程の内容および配置順、各生産工程に備わる生産装置の種類や配置順は、図1に示す構成に限定されるものではなく、生産管理システム1が製造する最終製品の種類に応じて適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0095】
1 生産管理システム
1a コンベア装置
2 缶容器(容器)
2a 蓋部
3 検査画像収集システム
4 生産設備管理システム
21 充填装置(容器を個別検査する検査装置、個別情報管理装置)
30a 全画像収集ネットワークレコーダ(画像保存装置、個別情報管理装置)
30b 検査画像保存DBサーバ(画像管理装置、個別情報管理装置)
30c 検査実績保存DBサーバ(検査実績管理装置、個別情報管理装置)
41 生産検査装置(容器を個別検査する検査装置、個別情報管理装置)
100 個体管理部(読取装置)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器の個体を識別する第1情報が、可視光に対して透明な不可視インクで所定の印字面に印字された容器に、生産単位ごとに統一された第3情報が付与される中間製品を入れ、可視光に対して不透明な可視インクで前記第3情報を前記印字面に印字して最終製品を生産する生産管理システムであって、
前記中間製品が入った前記容器を個別検査する検査装置と、
前記第1情報を読み取る読取装置と、
前記容器を個別検査する検査装置が前記容器を検査して作成する第2情報に前記読取装置が当該容器から読み取った前記第1情報をリンクした個別管理情報を作成して保存する個別情報管理装置と、を備えることを特徴とする生産管理システム。
【請求項2】
前記中間製品は飲料で、前記容器は略円筒状の缶容器で、前記印字面は前記缶容器の底部で、前記第1情報と前記第3情報は互いに重なる部分を有して前記印字面に印字されることを特徴とする請求項1に記載の生産管理システム。
【請求項3】
前記第2情報は、前記容器を個別検査する検査装置が前記容器を検査するときに撮像する検査画像を含み、
前記個別情報管理装置は、
前記検査画像を保存する画像保存装置と、
前記検査画像を示す情報に前記第1情報をリンクして作成される検査画像データを前記個別管理情報として保存する画像管理装置と、を含んで構成されることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の生産管理システム。
【請求項4】
前記第2情報は、前記容器を個別検査する検査装置が前記容器を検査した検査結果を含み、
前記個別情報管理装置は、
前記検査結果に前記第1情報をリンクして作成される検査実績データを前記個別管理情報として保存する検査実績管理装置を含んで構成されることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の生産管理システム。
【請求項5】
前記不可視インクは、紫外線または赤外線が照射されたときに可視化することを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の生産管理システム。
【請求項6】
前記生産単位は、前記中間製品の製造ロットであることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の生産管理システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−79020(P2012−79020A)
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−222623(P2010−222623)
【出願日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【特許番号】特許第4679671号(P4679671)
【特許公報発行日】平成23年4月27日(2011.4.27)
【出願人】(000233044)株式会社日立エンジニアリング・アンド・サービス (276)
【Fターム(参考)】