説明

生産計画変更意思決定支援装置及びプログラム

【課題】生産計画の変更の意思決定に係わり、適切なポイントで意思決定ができるように支援でき、需要追従性の向上、棚卸資産残高・機会損失の削減などを実現できる技術を提供する。
【解決手段】本システム(300)では、生産計画情報や需要情報を含む情報を入力とし、現在の生産計画から新しい生産計画へ変更する意思決定を行うための対象となるポイントに関して、ポイント毎の経営リスクを算出する処理を行う第1の手段(104,105,106)と、ポイント毎の経営リスクの情報に基づき、変更についての推奨されるポイントである1つ以上の推奨ポイントを判定し、当該推奨ポイントを含む情報を出力する処理を行う第2の手段(104)と、GUI画面、及びポイント毎の経営リスクや推奨ポイントを含む情報を表示する手段(20,103)と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生産計画管理システムに関し、特に、製品の生産計画の変更などに関する意思決定及びその支援のための技術に関する。
【背景技術】
【0002】
生産計画管理システムに関する従来の技術では、予め用意された販売計画情報と生産計画情報を用いて、現在から将来に至るまでの棚卸資産残高などの経営リスク指標の推移を算出することが可能である。
【0003】
また、先行技術例(経営リスク算出の技術例)として、特開2008−52413号公報(特許文献1)によると、販売計画を見直すポイント(時点)による棚卸残高の変化を計算することで、販売計画の見直しの意思決定を支援することが可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−52413号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
生産計画立案などの計画業務において、先々の需要動向を想定しながら、(1)供給不足による機会損失発生の抑止、(2)過剰在庫発生の抑止、の両立を目指した、生産計画の見直しが定期的に行われている(需要追従性)。想定する需要に対し、実際の需要(実績)には少なからず乖離が発生することが一般的であり、また、時間経過と共に、想定する需要と実績との乖離が少なくなる傾向がある。従って、生産計画立案の担当者は、想定する需要の精確さの度合いが高くなった時点に生産計画変更の意思決定を行う。
【0006】
一方、上記想定する需要の精確さの度合いが高くなる時点まで生産計画変更の意思決定を待った結果、例えば生産計画の数量を増やしたものの長納期部品の調達が間に合わず、需要に対応した供給ができないといった問題や、生産計画の数量を減らしたものの購入済みの長納期部品の在庫が滞留するといった問題が発生することがある。
【0007】
従来の技術では、現在から将来に至るまでの棚卸資産残高など、経営リスク指標の推移を算出することは可能である。しかしながら、どの時点で計画変更をすべきかを特定することは難しい。なお、従来の技術では、上記生産計画の見直し・変更(その意思決定)が推奨されるポイントを自動的に算出して提示するような技術は無かった。
【0008】
以上を鑑み、本発明の主な目的は、上記生産計画などの変更の意思決定に係わり、担当者が適切なポイント(意思決定ポイント)で意思決定ができるように支援することができ、需要追従性の向上、棚卸資産残高・機会損失の削減などを実現することができる技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本願において開示される発明のうち、代表的なものの概要を簡単に説明すれば、次の通りである。本発明は、製品の生産管理における生産計画変更意思決定支援システムに係わり、コンピュータでの情報処理(プログラム処理)により、ユーザ(生産計画変更の意思決定の担当者等)に対して情報を提示し、生産計画変更の意思決定を支援する技術であり、当該意思決定に纏わる適切なポイント(推奨されるポイント)を自動的に算出して情報を提示する手段を備える。
【0010】
本発明の形態では、意思決定の対象となるポイント(時間単位)毎に、リスク(例えば機会損失リスクや過剰在庫リスクなどの経営リスク)の情報を算出する処理を行う第1の手段と、更に、そのリスクの情報を用いて、どのポイントで計画変更の意思決定をすることが推奨されるかについて判定し、そのポイント(推奨ポイント)やその推奨の度合い(順位など)を算出する処理を行う第2の手段とを有する。また、上記処理に伴い、上記リスクの情報や、上記推奨ポイント等に関する情報を、ユーザに対して画面表示などの形で提示する処理を行う手段を有する。
【0011】
本形態は、例えば、生産計画変更意思決定支援装置であって、(1)意思決定を行う対象となるポイントである意思決定ポイントの情報と、現在の生産計画情報と、変更する対象となる(新)生産計画情報と、想定される1つ以上の需要シナリオ情報(需要情報)と、製品及び部品の初期在庫情報と、BOM情報と、部品情報と、製品の売価情報と、原価情報とを含む情報を取得し、上記取得した情報を用いて、意思決定ポイント別生産計画の情報を生成する第1の処理部と、(2)上記意思決定ポイント別生産計画情報と、前記初期在庫情報と、前記需要シナリオ情報と、前記BOM情報と、前記部品情報とを含む情報を用いて、前記製品及び部品のPSI情報を算出する第2の処理部と、(3)上記PSI情報による意思決定ポイント別PSI情報と、前記製品の売価情報と、前記原価情報とを含む情報を用いて、製品在庫及び部品在庫に関するリスクと、部品不足による機会損失によるリスクとを含むリスク情報を算出する第3の処理部と、(4)上記リスク情報による意思決定ポイント別リスク情報を用いて、推奨ポイント等を判定しその情報(推奨ポイント判定情報)を出力する第4の処理部と、を有する。また、上記処理結果である、推奨ポイント判定情報やリスク情報を用いて、これらの情報を集計したテーブルやグラフ等の情報や、上記一連の処理を誘導するGUIの画面を、ユーザに対して表示する処理を行う出力処理部を有する。
【0012】
本形態は、例えば、コンピュータの情報処理を用いる生産計画変更意思決定支援装置であって、現在の第1の生産計画情報と、1つ以上の新しい第2の生産計画情報と、1つ以上の需要情報とを含む情報を入力とし、前記第1の生産計画情報に基づく現在の生産計画から前記第2の生産計画情報に基づく新しい生産計画へ変更する意思決定を行うための対象となるポイントに関して、前記ポイント毎の経営リスクを算出する処理を行う第1の手段と、前記意思決定の支援のためのユーザの操作を誘導する画面、及び前記ポイント毎の経営リスクを含む情報を表示する画面に関する画面情報を生成して出力する処理を行う出力手段と、を備える。これにより、画面に表示される各ポイントのリスク値を、ユーザが視覚的に見比べることで、どのポイントで意思決定することが適切なのか等を判断することができる(その判断を支援できる)。
【0013】
本形態は、例えば、更に、前記ポイント毎の経営リスクの情報に基づき、前記変更についての推奨されるポイントである1つ以上の推奨ポイントを判定し、当該推奨ポイントを含む情報を出力する処理を行う第2の手段を有し、前記出力手段は、前記推奨ポイントを含む情報を表示する前記画面情報を生成して出力する処理を行う。これにより、画面に表示される推奨ポイントをユーザが確認することで、前記ユーザによる判断が更に効率化・容易化される。
【0014】
本形態は、例えば、更に、前記第1の手段は、前記入力をもとに、前記ポイント毎に、前記製品及びその部品のPSI情報(P情報、S情報、及びI情報のすべて)を算出する処理を行う第2の処理部と、前記PSI情報のPSIの状態から前記ポイント毎の経営リスクを算出する処理を行う第3の処理部と、を有する。
【0015】
なお「ポイント」と称する場合、時点に限らず、ある程度以上の長さを持つ期間(例えば1週)を示す場合も含む。
【発明の効果】
【0016】
本願において開示される発明のうち、代表的なものによって得られる効果を簡単に説明すれば以下の通りである。本発明の代表的な実施の形態によれば、担当者が適切なポイントで意思決定ができるように支援することができ、需要追従性の向上、棚卸資産残高・機会損失の削減などを実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の一実施の形態における生産計画変更意思決定支援システムの構成例を示す図である。
【図2】本システムにおける装置のハードウェア等の構成例を示す図である。
【図3】本システムにおける処理フロー(全体)の例を示す図である。
【図4】外部情報に含まれるデータの構成例を示す図である。
【図5】(A1)意思決定ポイント情報の構成例を示す図である。
【図6】(A2)生産計画情報の構成例を示す図である。
【図7】(A3)新生産計画情報の構成例を示す図である。
【図8】(A4)需要シナリオ情報の構成例を示す図である。
【図9】(A5)初期在庫情報(製品)の構成例を示す図である。
【図10】(A5)初期在庫情報(部品)の構成例を示す図である。
【図11】(A6)BOM情報の構成例を示す図である。
【図12】(A7)部品情報の構成例を示す図である。
【図13】(A8)売価情報の構成例を示す図である。
【図14】(A9)原価情報の構成例を示す図である。
【図15】(B1)意思決定ポイント別生産計画情報の構成例を示す図である。
【図16】図3のS005(意思決定ポイント別生産計画情報の生成)までの処理フローの例を示す図である。
【図17】(B2)意思決定ポイント別PSI情報の構成例を示す図である。
【図18】図3のS009(意思決定ポイント別PSI情報の生成)までの処理フローの例を示す図である。
【図19】(B3)意思決定ポイント別リスク情報の構成例を示す図である。
【図20】(B4)推奨ポイント判定情報の構成例を示す図である。
【図21】本システムにおける出力画面の例(その1)を示す図である。
【図22】本システムにおける出力画面の例(その2)を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、実施の形態を説明するための全図において、同一部には原則として同一符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。
【0019】
<概要>
本実施の形態の概要や特徴は以下である。図1のシステム構成、図2の装置構成において、ユーザ(生産計画の意思決定の担当者等)の操作に基づき、図3(図16,図18等)の処理フローに従う処理をプログラム処理により行う。図1の演算部20の各処理部(104〜107)により行われる処理(図3のS005,S009,S010,S011等)がある。本処理の際には、図4の(A1)〜(A9)(図5〜図15)に示す各種データを入力として用いる。また本処理により図1の(B1)〜(B4)(図15,図17,図19,図20)等の情報を作成する。本処理により作成した情報に基づき、図21,図22のような画面を表示する。
【0020】
本システムでは、特に、現在の生産計画から新しい生産計画へ変更する対象となる意思決定ポイント毎の製品・部品のPSI情報を計算・記憶し(図1の105,図3のS009)、意思決定ポイント毎に経営リスクを算出し(106,S010)、経営リスクの変化に基づき、計画変更を推奨するポイントを判定する(107,S011)。そして、上記処理に伴い、上記情報を含む、ユーザによる意思決定などを誘導・支援するための画面を生成して表示する。
【0021】
<システム>
図1において、本実施の形態の生産計画変更意思決定支援システムの構成例を示している。本システムは、制御部10と、演算部20と、記憶部30と、通信部40と、を有する構成である。演算部20の処理で必要な情報は、通信部40をインタフェースとして、ネットワーク100を介し、外部データベース(外部情報200)から取得可能である。
【0022】
ネットワーク100は、通常は、本システムのユーザ(生産計画の意思決定の担当者等)の組織が管理するLAN等の通信網であるが、これに限らず、インターネット等の公衆通信網、WAN(Wide Area Network)またはVPN(Virtual Private Network)等の一般公衆回線を一部に用いた通信網であっても良い。
【0023】
制御部10は、本システムのユーザからの操作入力を、入力情報受付け処理部102で受付けて、ネットワーク100を介して外部情報受付け処理部101で外部情報200を受け取る。そして、後述する演算処理を演算部20に依頼し、その処理結果に関する情報を受け取る。そして、その情報をもとに、出力処理部103での処理を経由して、ユーザに画面表示などの形で提示する。
【0024】
演算部20は、意思決定ポイント別生産計画生成処理部104(第1の処理部)、PSI算出処理部105(第2の処理部)、リスク算出処理部106(第3の処理部)、推奨意思決定ポイント判定処理部107(第4の処理部)、等を有する。これらの各処理部(104〜107)は、対応する各情報((B1)110〜(B4)140)を作成して記憶部30に記憶し、これらの情報を用いて各処理が行われる。第1の処理部(104)は、(B1)意思決定ポイント別生産計画情報110を生成する。第2の処理部(105)は、(B2)意思決定ポイント別PSI情報120を生成する。第3の処理部(106)は、(B3)意思決定ポイント別リスク情報130を生成する。第4の処理部(107)は、(B4)推奨ポイント判定情報140(推奨ポイント情報)を生成する。
【0025】
<ハードウェア>
図2において、本システム300の装置のハードウェア等の構成例を示している。本システム300の装置は、例えばユーザが使用するPCやワークステーションまたはサーバ装置などの計算機を主として構成される。本装置はネットワーク100に接続される。なお本装置自体をユーザが操作する形態としてもよいし、本装置(サーバ装置)に対して外部の端末からアクセスする形態としてもよい。
【0026】
本装置は、入力装置301、出力装置302、外部記憶装置303、演算装置304、主記憶装置305、通信装置306、それぞれの装置を互いに接続するバス307、等を有する。入力装置301は、例えばキーボードやマウス、あるいはタッチペン、その他ポインティングデバイスなどの入力を受付ける装置である。出力装置302は、例えばディスプレイなどである。外部記憶装置303は、例えばハードディスク装置やフラッシュメモリなどの不揮発性記憶装置である。演算装置304は、例えばCPUなどである。主記憶装置305は、例えばRAMなどのメモリ装置である。通信装置306は、アンテナを介して無線通信を行う無線通信装置、またはネットワークケーブルを介して有線通信を行う有線の通信装置などである。
【0027】
図1の記憶部30は、主記憶装置305または外部記憶装置303により実現される。また、外部情報受付け処理部101、入力情報受付け処理部102、出力処理部103、及び演算部20等は、演算装置304に処理を行わせるプログラムによって実現される。本プログラムは、主記憶装置305または外部記憶装置303内に記憶され、実行にあたって主記憶装置305上にロードされ、演算装置304により実行される。また、通信部40は、通信装置306によって実現される。
【0028】
<処理>
図3等に基づいて、本システム300(装置)における処理の概要について説明する。図3において、本システム300(主に演算部20)における処理フロー例を示している(Sは処理ステップを示す)。なお各処理ステップの詳細や用いる情報・データについては後述する。また以下で処理主体を特に明示していない場合、演算部20や制御部10等の各処理部による処理である。
【0029】
まず前提的な処理として、ユーザ操作に基づき、入力情報受付け処理部102が生産計画変更意思決定支援の処理を開始する要求を受付け(入力・取得)し、それにより、出力処理部103が画面(例えば図21の画面500)を構成し、出力装置302で表示させることにより開始される。また一時的な処理データ等は、適宜、主記憶装置305(記憶部30)等に記憶される。なお、GUIとして、本画面(例えば初期状態の画面)内のボタンやフォーム等の項目に対しユーザがクリックやキー入力等の操作により情報を入力し、それによる処理結果が本画面に反映(表示内容更新)される。本画面は例えばWebページ等の形式である。
【0030】
(S001) まず、演算部20は、本画面から、リスク評価ポイントについての情報の入力を受付ける。具体的には、演算部20は、本画面500のリスク評価ポイント入力領域510に入力された時点情報を受信する。
【0031】
このリスク評価ポイントとは、S001以降の処理における集計・計算の範囲を規定(制限)するものであり、経営リスク評価等の計算を行う対象となる範囲を指定または設定等するための時点情報である。例えば、リスク評価ポイントとして「9/28」(9月28日)を受付けた場合、以降の処理(例えばS010のリスク算出処理)に係る計算の範囲が、現在時点から当該「9/28」時点までの範囲と規定される。なおリスク評価ポイントは、ユーザが自由に指定可能な形としてもよいし、指定が無い場合は既存の設定値を自動的に使用する形などとしてもよい。
【0032】
(S002) 次に、演算部20は、現在の生産計画情報の受付け処理を行う。具体的には、図4の(A2)生産計画情報220に格納されている情報から、S001のリスク評価ポイントに対応付けられる範囲のレコードから製品名・バケット・数量等の情報を読み出し、記憶させる。なお、ここで情報を読み込む範囲については、特に設けずに計画が入力されている範囲のデータすべてを読み込む形態としてもよいし、あるいは、当該リスク評価ポイント以降の先々の生産計画までを含む所定の範囲のデータを読み込む形態としてもよい(なお、リスク評価ポイントの部品在庫は、その先の時点の生産計画に基づいた量である)。後者の場合、例えば、構成部品の最長のLTのポイントまでの生産計画を読み込む範囲としてもよい。
【0033】
(S003) 次に、演算部20は、新生産計画情報の受付け処理を行う。具体的には、図4の(A3)新生産計画情報230に格納されている情報から、S001のリスク評価ポイントまでの範囲のレコードから製品名・バケット・数量等の情報を読み出し、記憶させる。
【0034】
(S004) 次に、演算部20は、意思決定ポイント情報の受付け処理を行う。具体的には、図4の(A1)意思決定ポイント情報210に格納されている情報から、S001のリスク評価ポイントまでの範囲における意思決定ポイント等の情報を読み出し、記憶させる。
【0035】
(S005) 次に、演算部20(104)は、意思決定ポイント別生産計画生成処理を行う。具体的な処理については後述する。S002と、S003と、S004とにおいて主記憶装置305に一時格納した情報は、S005を経て、図1の(B1)意思決定ポイント別生産計画情報110に格納される。
【0036】
(S006) 次に、演算部20は、需要シナリオ情報(需要情報)の受付け処理を行う。具体的には、図4の(A4)需要シナリオ情報240に格納されている情報をもとに、S001のリスク評価ポイントまでの範囲のレコードから需要シナリオ・製品名・バケット・数量等の情報を読み出し、記憶させる。
【0037】
(S007) 次に、演算部20は、製品・部品情報の受付け処理を行う。具体的には、図4の(A6)BOM情報260に格納されている情報から、S006で生成した(B1)意思決定ポイント別生産計画情報110に格納されている製品名と一致するレコードを抽出し、それに関係付けられている部品名称・員数等の情報を読み出し、記憶させる。
【0038】
また、図4の(A7)部品情報270に格納されている情報から、上記BOM情報260から読み出した部品名称と一致するレコードを抽出し、それに関係付けられている単価・LT([w])等の情報を読み出し(LT:リードタイム、単位は例えば週[w])、記憶させる。また、図4の(A8)売価情報280に格納されている情報から、(B1)意思決定ポイント別生産計画情報110に格納されている製品名と一致するレコードを抽出し、それに関係付けられている売価等の情報を読み出し、記憶させる。また、図4の(A9)原価情報290(製品原価情報)に格納されている情報から、(B1)意思決定ポイント別生産計画情報110に格納されている製品名と一致するレコードを抽出し、それに関係付けられている原価等の情報を読み出し、記憶させる。
【0039】
(S008) 次に、演算部20は、製品・部品の初期在庫情報の受付け処理を行う。具体的には、図4の(A5)初期在庫情報250のうちの製品に関する初期在庫情報250aに格納されている情報から、現時点のバケットと、(B1)意思決定ポイント別生産計画情報110に格納されている製品名と、が一致するレコードを抽出し、それに関係付けられた初期在庫数等の情報を読み出し、記憶させる。また、図4の(A5)初期在庫情報250のうちの部品に関する初期在庫情報250bに格納されている情報から、現時点のバケットと、S007で抽出した部品名称と、が一致するレコードを抽出し、それに関係付けられた初期在庫数等の情報を読み出し、記憶させる。
【0040】
(S009) 次に、演算部20(105)は、PSIの計算処理を行う。具体的な処理内容は後述する。S006と、S007と、S008とにおいて主記憶装置305に一時格納した情報は、S009を経て、図1の(B2)意思決定ポイント別PSI情報120に格納される。
【0041】
(S010) 次に、演算部20(106)は、意思決定ポイント毎の経営リスク算出処理を行う。具体的な処理は後述する。S009にて生成した(B2)意思決定ポイント別PSI情報120をもとに、S010の処理で算出した経営リスクの情報は、S010を経て、図1の(B3)意思決定ポイント別リスク情報130に格納される。
【0042】
(S011) 次に、演算部20(107)は、需要シナリオ別の推奨意思決定ポイント判定処理を行う。具体的な処理は後述する。S010で算出した(B3)意思決定ポイント別リスク情報130を用いたS011の判定処理結果情報は、図1の(B4)推奨ポイント判定情報140(推奨意思決定ポイント情報)として格納される。S011を経て、需要シナリオ別の推奨意思決定ポイントの判定処理が完了する。
【0043】
(S012) 次に、演算部20は、出力装置302(出力処理部103)に対し、上記処理ステップで生成した情報の出力処理を要求する。これにより、対応する画面情報が生成され、本画面(画面500)の表示内容が更新される。これにより、ユーザは、本画面で、経営リスクや推奨ポイント等の情報を見ることができる。
【0044】
<データ>
図4において、本システム300で処理に用いるデータ群の一例を示している。これらのデータ(テーブル)は、外部情報受付け処理部101で受け取る外部情報200に含まれている。本実施の形態を説明するに当たり、このデータ(外部情報200)としては、少なくとも、図示の通り、(A1)意思決定ポイント情報210、(A2)生産計画情報220、(A3)新生産計画情報230、(A4)需要シナリオ情報240、(A5)初期在庫情報250(250a,250b)、(A6)BOM情報260、(A7)部品情報270、(A8)売価情報280、及び、(A9)原価情報290、を有する。
【0045】
(A1)意思決定ポイント情報210(詳細例は図5)は、生産計画変更の意思決定を行う対象となる時点(意思決定ポイント)の情報を格納する。
【0046】
(A2)生産計画情報220(詳細例は図6)は、製品別・タイムバケット別の現在の生産計画の情報を格納する。
【0047】
(A3)新生産計画情報230(詳細例は図7)は、需要変動や外部環境の変化に応じた製品別・タイムバケット別の生産計画の変更案(新生産計画)の情報を1つ以上格納する。
【0048】
(A4)需要シナリオ情報240(詳細例は図8)は、製品別・タイムバケット別の今後の需要情報(需要シナリオ情報)を1つ以上格納する。
【0049】
(A5)初期在庫情報250(250a,250b)(詳細例は図9,図10)は、各タイムバケット開始時点の製品在庫、及び部品在庫の情報を格納する。製品に関する初期在庫情報250aと、部品に関する初期在庫情報250bと、を有する。
【0050】
(A6)BOM情報260(詳細例は図11)は、製品のBOM情報を格納する。
【0051】
(A7)部品情報270(詳細例は図12)は、BOMを構成する部品に関するリードタイム(LT)等の情報を格納する。
【0052】
(A8)売価情報280(詳細例は図13)は、製品単位当りの売価情報を格納する。
【0053】
(A9)原価情報290(詳細例は図14)は、製品単位当りの原価情報を格納する。
【0054】
<(A1)意思決定ポイント情報>
図5において、意思決定ポイント情報210の構成例を示す。意思決定ポイント情報210には、a:ID、b:意思決定ポイント、等が格納される。aのIDの欄は、bの意思決定ポイントのレコードを特定するために、1から順にナンバリングされた情報が格納される。bの意思決定ポイントの欄は、意思決定ポイントの情報が格納される。
【0055】
意思決定ポイント(以下適宜「ポイント」と略す)とは、計画変更(現在の生産計画から新たな生産計画に変更するタイミング)の意思決定を行う対象(候補)となる時間単位のことである。例えば、週次で計画変更を考える業務の場合、このポイントは週単位となり、例えば図7のbの欄の「6/1」のように毎週月曜日の日付といった情報が格納される。このポイントは、生産管理対象の業務(製品)のサイクル(タイムバケット)等に応じて決められ、週次であっても良いし、日次であっても良いし、月次であっても良い。以降、本例では、週次での業務サイクル及びポイントを前提とする。
【0056】
<(A2)生産計画情報>
図6において、生産計画情報220の構成例を示す。生産計画情報220には、a:製品名、b:バケット、c:数量、が格納される。aの製品名の欄は、生産計画の対象となる製品名や機種名を特定する情報が格納される。bのバケットの欄は、当該レコードの期間(タイムバケット)を示す情報が格納される。本例では、bのバケットの例えば「6/1」という情報は、6月1日(月曜)からの1週間の期間を示している。cの数量の欄は、現在の生産計画数量が格納される。
【0057】
例えば第1行のレコードによれば、製品Aを、「6/1」(6月1日の週)に「120」生産する予定であることが分かる。
【0058】
<(A3)新生産計画情報>
図7において、新生産計画情報230の構成例を示す。新生産計画情報とは、外部環境の変化などによって変動する需要に対応するために、意思決定者によって見直される生産計画の変更案(新たな生産計画案)のことである。新生産計画情報230は、基本的には生産計画情報220と同様のデータ構造である。新生産計画情報230には、a:製品名、b:バケット、c:数量、等が格納される。a,bの欄は、上記同様である。cの数量の欄は、変更を予定する生産計画数量が格納される。
【0059】
例えば第1行のレコードによれば、製品Aを「6/1」に「140」生産する予定であることがわかる。新生産計画情報230には、複数の生産計画案を格納しても良い。その際には、それらの新生産計画案を特定できる固有のID情報などを格納したカラムを付加しても良い。
【0060】
<(A4)需要シナリオ情報>
図8において、需要シナリオ情報240の構成例を示す。需要シナリオ情報240には、a:需要シナリオ、b:製品名、c:バケット、d:数量、等が格納される。aの需要シナリオの欄は、需要シナリオを特定するための固有の情報が格納される。需要シナリオは、少なくとも1つは必要であり、複数あっても良い。bの製品名の欄は、対象となる製品名や機種名の情報が格納される。cのバケットの欄は、当該レコードの期間を示す情報が格納される。dの数量の欄は、需要の数量情報が格納される。
【0061】
需要シナリオ情報240に格納される情報は、外部情報200に格納されており、本例では所与の値であるが、例えば以下の方法で算出することも可能である。
【0062】
現時点までの需要の実績値を、横軸にバケット、縦軸に数量をプロットすることで、回帰直線を描くことができる。この回帰直線に従い、将来の需要を想定することが可能となる。更に、今後の需要が、この回帰直線を上回ると想定するシナリオを図8の「需要1」(第1の需要シナリオ)、下回ると想定するシナリオを「需要2」(第2の需要シナリオ)、といったように、複数のシナリオを生成することも可能である。本例では、この「需要1」と「需要2」を利用して説明する。
【0063】
例えば需要シナリオ情報240の第1行のレコードによれば、需要1では製品Aが「6/1」に「140」であることが分かる。第4行のレコードによれば、需要2では製品Aが「6/1」に「100」であることが分かる。この例では、需要2は現在の傾向に対しネガティブなシナリオであるのに対し、需要1はよりポジティブなシナリオであることが分かる。このように、よりポジティブな需要シナリオや、ネガティブな需要シナリオがあっても良い。
【0064】
<(A5)初期在庫情報(製品)>
図9において、初期在庫情報(製品)250aの構成例を示す。初期在庫情報(製品)250aには、a:バケット、b:製品名、c:初期在庫数、等が格納される。aのバケットの欄は、当該レコードの期間を示す情報が格納される。bの製品名の欄は、在庫情報を取得する製品名や機種名を特定する情報が格納される。cの初期在庫数の欄は、当該バケット開始時点の製品在庫の情報が格納される。
【0065】
例えば末行のレコードによれば、「6/1」の製品Aの初期在庫数量は「50」であることが分かる。
【0066】
<(A5)初期在庫情報(部品)>
図10において、初期在庫情報(部品)250bの構成例を示す。初期在庫情報(部品)250bには、a:バケット、b:部品名称、c:初期在庫数、等が格納される。aのバケットの欄は、当該レコードの期間を示す情報が格納される。bの部品名称の欄は、在庫情報を取得する対象となる部品名称の情報が格納される。cの初期在庫数の欄は、当該バケットの開始時点の部品在庫の情報が格納される。
【0067】
例えば末行のレコードによれば、「6/1」の部品yの初期在庫数は「30」であることが分かる。
【0068】
<(A6)BOM情報>
図11において、BOM情報260の構成例を示す。BOM情報260には、a:製品名、b:部品名称、c:員数、が格納される。aの製品名の欄は、対象となる製品名や機種名を特定できる情報が格納される。bの部品名称の欄は、製品を構成する部品の親子関係情報が格納される。cの員数の欄は、製品を作るために必要な部品の数量情報が格納される。
【0069】
BOM情報260によれば、例えば、製品Aを製造するには、部品xが1つ、部品yが1つ、必要であることが分かる。
【0070】
<(A7)部品情報>
図12において、部品情報270の構成例を示す。部品情報270には、a:部品名称、b:単価、c:LT(w)、等が格納される。aの部品名称の欄は、製品を構成する部品を特定できる情報が格納される。bの単価の欄には、部品を購入する価格情報が格納される。cのLT(w)の欄には、部品の入庫までに要する時間情報が格納される(LT:リードタイム、w:週単位)。本例では、週次の業務を前提としているため、cに入る値は、部品が入庫するまでの週の数を意味している。
【0071】
例えば第1行のレコードによれば、部品xは単価が「10」であり、手元に届くまでのリードタイムとして2週間が必要であることが分かる。
【0072】
<(A8)売価情報>
図13において、売価情報280の構成例を示す。売価情報280には、a:製品名、b:売価、等が格納される。aの製品名の欄は、対象となる製品名や機種名を特定できる情報が格納される。bの売価の欄は、当該製品を市場で販売する時の価格に関する情報が格納される。
【0073】
例えば第1行のレコードによれば、製品Aは市場での販売価格が「200」であることが分かる。
【0074】
<(A9)原価情報>
図14において、原価情報290の構成例を示す。原価情報290には、a:製品名、b:原価、等が格納される。aの製品名の欄は、対象となる製品名や機種名を特定できる情報が格納される。bの原価の欄は、当該製品を生産するに当たり要するコストに関する情報が格納される。コストには、部品の価格だけでなく、製造に纏わる諸々のコストを含んでも良いし、販売のための費用などを含んでも良い。
【0075】
例えば第1行のレコードによれば、製品Aは生産する過程で「180」のコストを消費することが分かる。
【0076】
<処理(1)−意思決定ポイント別生産計画生成処理>
図1等に戻り、演算部20の各処理部による処理内容について以下順に説明する。
【0077】
図16において、意思決定ポイント別生産計画情報110(図15)を生成するまで(図3、S005まで)の処理フロー例を示している。まず、意思決定ポイント別生産計画生成処理部104では、(A1)意思決定ポイント情報210と、(A2)生産計画情報220と、(A3)新生産計画情報230と、を含む情報から、(B1)意思決定ポイント別生産計画情報110を生成する処理を行う。
【0078】
(S111)まず、現在時点情報(年月週日時など)を取得する。例えば「6/1」等である。
【0079】
(S112)次に、S111で取得した現在時点に最も近い将来もしくは同一の時点(ポイント)を、意思決定ポイント情報210から抽出し、意思決定ポイント別生産計画情報110の意思決定ポイント(b)に格納する。
【0080】
(S113)次に、(A2)生産計画情報220から、S112で取得したポイントまでの生産計画の情報を抽出し、格納する。即ち、当該取得ポイントまでのバケット(b)と数量(c)を抽出し、意思決定ポイント別生産計画情報110のバケット(c)と数量(d)に格納する。
【0081】
(S114)次に、(A3)新生産計画情報230から、S112で取得したポイント以降の新生産計画の情報を抽出し、格納する。即ち、当該取得ポイントまでのバケット(b)と数量(c)を抽出し、意思決定ポイント別生産計画情報110のバケット(c)と数量(d)に格納する。
【0082】
(S115,S116)次に、意思決定ポイント情報210におけるS111で取得した現在時点の以降(次)のデータ(ポイント)の有(Y)/無(N)を判定する。上記データが有った場合(Y)、次のポイント情報を取得(選択)し、S113に戻る。S115で次のデータが無くなった場合(N)は処理を終了する。
【0083】
<(B1)意思決定ポイント別生産計画情報>
図15において、上記処理により作成される意思決定ポイント別生産計画情報110の構成例を示している。この情報では、a:意思決定ポイント、b:製品名、c:バケット、d:数量、等を格納する。
【0084】
例えば、現在時点を「6/1」とした場合、最初に意思決定ポイント情報210から取得されるポイントは「6/1」となり、第1行のaの意思決定ポイントの欄に格納される。次に、生産計画情報220から、現在時点までのバケット(b)と数量(c)が抽出され、意思決定ポイント別生産計画情報110のバケット(c)と数量(d)に格納される。ここでは生産計画情報220に「6/1」までのデータが無いため、格納される情報は無い。次に、新生産計画情報230から、「6/1」以降のバケット(b)と数量(c)が抽出され、1行目のバケット(c)と数量(d)に、「6/1」と「140」が格納され、2行目のバケット(c)と数量(d)に、「6/8」と「140」が格納され、同様にバケットの終点まで繰り返される。次に、意思決定ポイント情報210から、取得されるポイントは「6/8」となり、第5行の意思決定ポイント(a)の欄に格納される。次に、生産計画情報220から、現在取得しているポイントまでのバケット(b)と数量(c)が抽出され、5行目のバケット(c)と数量(d)に格納される。生産計画情報220によると、「6/1」の数量は「120」であるので、「6/1」と「120」が、バケット(c)と数量(d)に格納される。次に、新生産計画情報230から、現在取得しているポイントよりも将来のバケット(b)と数量(c)が抽出され、6行目以降のバケット(c)と数量(d)に格納される。同様に、新生産計画情報230から、「6/8」以降のバケットと数量が抽出され、データが追加されて行く。6行目のバケット(c)と数量(d)には、「6/8」と「140」が格納され、7行目のバケット(c)と数量(d)に、「6/15」と「140」が格納され、同様にバケットの終点まで繰り返される。
【0085】
このように、意思決定ポイント別生産計画情報110には、意思決定ポイント情報210に格納された全てのポイント毎に、生産計画情報220と新生産計画情報230とを組み合わせた結果が格納される。
【0086】
<処理(2)−意思決定ポイント別PSI算出処理>
図1に戻り、PSI算出処理部105では、上記(B1)意思決定ポイント別生産計画情報110と、(A4)需要シナリオ情報240と、(A6)BOM情報260と、(A7)部品情報270と、(A5)初期在庫情報(製品)250a及び初期在庫情報(部品)250bと、を含む情報から、(B2)意思決定ポイント別PSI情報120(図17)を生成する。
【0087】
PSIとは、生産(Production)、出荷(Sales)、在庫(Inventory)、それぞれの頭文字を取った言葉(一般的な用語)である。PSI情報は、時間の経過と共に推移するこれらの値に関する情報である。
【0088】
<(B2)意思決定ポイント別PSI情報>
図17において、上記処理により作成される意思決定ポイント別PSI情報120の構成例を示している。この情報では、a:需要シナリオ、b:意思決定ポイント、c:バケット、d:製品名、e:生産計画数、f:需要数、g:部品x入庫数、h:部品x出庫数、i:部品x在庫数、j:部品y入庫数、k:部品y出庫数、l:部品y在庫数、m:生産可能数、n:生産数、o:製品在庫数、等が格納される。
【0089】
図18において、意思決定ポイント別PSI情報120を生成するまで(S009まで)の処理フロー例を示している。
【0090】
(S121)まず、(A4)需要シナリオ情報240から、需要シナリオ(a)を1つ抽出する。
【0091】
(S122)次に、S121で抽出した需要シナリオ(a)の製品名(b)とバケット(c)の組み合わせをキーに、(B1)意思決定ポイント別生産計画情報110を展開し、(B2)意思決定ポイント別PSI情報120に格納する。キーとなる製品名(b)とバケット(c)は、意思決定ポイント別PSI情報120の製品名(d)とバケット(c)に格納され、需要シナリオ情報240に関係付けられている需要シナリオ(a)と数量(d)は、意思決定ポイント別PSI情報120の需要シナリオ(a)と需要数(f)に格納され、意思決定ポイント別生産計画情報110に関係付けられている意思決定ポイント(a)と数量(d)は、意思決定ポイント別PSI情報120の意思決定ポイント(b)と生産計画数(e)に格納される。
【0092】
(S123)次に、(A6)BOM情報260及び(A7)部品情報270を利用して、テーブルの拡張を行う。意思決定ポイント別PSI情報120の製品名(d)に格納されている製品の構成部品を、BOM情報260から特定し、その構成部品ごとに、入庫数量(g,j)、出庫数量(h,k)、在庫数(i,l)を格納できるように、テーブルを展開する。
【0093】
具体的には、1行目のレコードにある製品Aは、BOM情報260によると部品xと部品yで構成されていることから、意思決定ポイント別PSI情報120には、部品xの入庫数(g)、部品xの出庫数(h)、部品xの在庫数(i)、部品yの入庫数(j)、部品yの出庫数(k)、部品yの在庫数(l)、といった各欄のカラムを生成させる。部品xの入庫数(g)の欄には、意思決定ポイント別生産計画情報110と、BOM情報260と、部品情報270とから、各バケットに入庫する部品の数を算出し格納する。
【0094】
入庫数量の算出には、BOM情報260の員数(c)、及び、部品情報270からの納入のLT(c)の情報を利用する。まず、発注済みの部品を当該入庫数の欄に格納する。発注済みの部品とは、([意思決定ポイント]+[LT])分のバケットまでの入庫数のことで、その間は現在の生産計画に基づいた分の部品数が納入される。具体的には、部品xの場合、部品情報270から、LTは2週間であることが分かる。ここで、ポイントを「6/22」とした場合、「6/29」までの部品は既に発注済みであり、数量を変更することはできない。従って、「6/22」と「6/29」の入庫数は、[生産計画情報220の数量(c)]×[BOM情報260の員数(c)](=120×1=120)が格納されることになる。
【0095】
上記の([意思決定ポイント]+[LT])以降の入庫量は、変更する生産計画に対応し部品の入庫が可能となる。具体的には、部品xの場合、「6/29」の翌バケットである「7/6」以降の入庫量の変更が可能となる。入庫量は、一時点過去のバケットの部品在庫数と当該時点のバケットでの生産計画数とから算出可能である。一時点過去のバケットの部品在庫数が当該時点のバケットでの生産計画数を上回っていた場合、その時点での部品在庫は充足しており入庫は発生しない。一時点過去のバケットの在庫が、当該時点のバケットでの生産計画数を下回っていた場合、その差分が入庫量となる。例えば需要シナリオが「需要1」でポイントが「6/22」の場合における、「7/6」の部品xの入庫量は、前バケットの部品在庫が「20」で、意思決定ポイント別生産計画情報110に格納されている当該バケットの生産計画数が「140」なので、その差分である「140−20=120」が、部品xの入庫量となる。上記例は、部品xに関する説明であったが、部品yまたはその他製品の構成部品についても同様の処理を行うことにより、入庫量の算出が可能となる。
【0096】
(S124)次に、生産可能数を計算し、生産可能数(m)の欄に格納する。生産可能数とは、当該バケット内で理論的に生産が可能な数量のことである。本例では、部品の数量が揃っていれば生産が可能である。例えば、部品xが「100」有り、部品yが「100」有る場合、それぞれ製品Aを生産するのに必要な員数は「1」であるため、製品Aを「100」生産することが可能である。また部品xが「100」有り、部品yが「90」有る場合、製品Aを「100」生産するのに部品yが「10」不足しているため、「90」までの生産が可能になる。即ち、構成部品毎に[部品数]×[員数]を求め、最小の値を、生産可能数とする。
【0097】
(S125)次に、生産数量を決定(計算)し、生産数(n)の欄に格納する。生産数/生産量とは、実際に生産を行う数量のことであり、[生産数]≦[生産可能数]の関係になる。製品の過不足を生じさせないよう、需要数に応じた生産を行うことが必要になるため、需要数(f)と同一の値が生産数(生産量)(n)となる。但し、生産可能数(m)が需要数(f)を下回った場合、生産可能数(m)がそのまま生産数(n)の欄に格納されることになる。
【0098】
(S126)次に、PSIの計算を行う。ここでは、製品と部品それぞれのPSI(P:生産情報、S:出荷情報、I:在庫情報)の算出を行うものであるが、そのうち、PとSに対応する情報として、P:生産計画数(e)、及びS:需要数(f)については、既にテーブルに格納済みなので、本処理ステップでは、Iに対応する情報として、I:製品在庫数(o)及び部品在庫数(i,l)についての算出を行う。
【0099】
在庫の計算の考え方は、製品・部品で共通であるが、それぞれを式で表すと以下のようになる。即ち、(1)[製品在庫数]=[初期在庫]+[生産数]−[需要数]、(2)[部品在庫数]=[初期在庫]+[入庫数]−[出庫数]。
【0100】
初期在庫は、一時点過去のバケットの在庫とすることで計算が可能となる。但し、最初のバケットのみ、製品の初期在庫は、初期在庫情報(製品)250aから取得し、部品の初期在庫は、初期在庫情報(部品)250bから取得することで、計算を行う。具体的には、意思決定ポイント別PSI情報120の1行目のレコードによると、製品Aのバケット「6/1」の製品初期在庫については、初期在庫情報(製品)250aから「50」を取得し、生産数(n)「140」を加算し、需要数(f)「140」を減算するため、製品在庫数(o)は「50」となることが分かる。また、部品xのバケット「6/1」の部品xの初期在庫については、初期在庫情報(部品)250bから「30」を取得し、入庫数(g)「120」を加算し、出庫数(h)「140」を減算するため、部品x在庫数(i)は「10」となることが分かる。ただし、計算上、在庫の値がマイナス「−」となった場合、本例では「0」として処理を継続するものとする。部品yについても同様の処理が実行される。
【0101】
(S127,S128)次に、他の需要シナリオの有(Y)/無(N)を確認する。他の需要シナリオが有った場合(Y)、S128で当該需要シナリオを1つ抽出し、S122からS126までの処理を繰り返す。無い場合(N)は処理を終了する。
【0102】
<処理(3)−リスク算出処理>
図1に戻り、リスク算出処理部106の処理について説明する。リスク算出処理部106では、(B2)意思決定ポイント別PSI情報120と、(A7)部品情報270と、(A8)売価情報280と、(A9)原価情報290と、を含む情報から、(B3)意思決定ポイント別リスク情報130を生成する。
【0103】
<(B3)意思決定ポイント別リスク情報>
図19において、意思決定ポイント別リスク情報130の構成例を示す。この情報では、a:需要シナリオ、b:意思決定ポイント、c:バケット、d:製品名、e:製品在庫リスク、f:機会損失リスク、g:部品在庫リスク、等が格納される。a〜dの各欄の値は、(B2)意思決定ポイント別PSI情報120に格納されている値を抽出、格納する。
【0104】
eの製品在庫リスクの欄は、製品在庫に係るリスク情報を格納する。例えば、在庫管理費用であったり、在庫処分費用であったり、安価で販売するための販売促進金額であっても良い。本例では、eの欄には、意思決定ポイント別PSI情報120の製品在庫数(o)に、(A8)売価情報280の売価(b)を積算した値を格納する。
【0105】
具体的には、意思決定ポイント別PSI情報120の1行目によると、「6/1」の製品在庫は「50」であり、売価情報280から製品Aの売価は「200」であるので、「50×200=10000」が意思決定ポイント別リスク情報130の製品在庫リスク(e)の欄に格納される。
【0106】
fの機会損失リスクの欄は、需要数に対する製品の供給不足によって生じる機会損失リスクに関する情報を格納する。本例では、fの欄には、需要に対し、在庫及び生産で供給ができなかった数量に、本来得られるはずであった利益を積算した値が格納される。得られるはずであった利益とは、製品の売価から原価を引いた値とする。機会損失の値は、以下の式によって計算する。即ち、[機会損失リスク]=([需要数]−([初期在庫]+[生産数]))×[利益]。但し、([初期在庫]+[生産数])<[需要数]の場合。
【0107】
具体的には、意思決定ポイント別PSI情報120での「6/22」をポイントとした「6/29」のレコードによると、初期在庫は「0」で、需要数は「140」、生産数は「120」、売価情報280から製品Aの売価は「200」、原価情報290から製品Aの原価は「180」であるため、(140−(0+120))×20=400が意思決定ポイント別リスク情報130の機会損失リスク(f)の欄に格納されていることが分かる。
【0108】
gの部品在庫リスクの欄は、部品在庫に係るリスク情報を格納する。例えば、在庫管理費用であったり、処分費用であったり、返品費用であっても良い。本例では、意思決定ポイント別PSI情報120の部品xの在庫数(i)に部品情報270の単価(b)を積算した値と、部品yの在庫数(l)に部品情報270の単価(b)を積算した値と、を足し合わせた値が、部品在庫リスク(g)の欄に格納される。具体的には、意思決定ポイント別PSI情報120での「6/22」をポイントとした「7/6」のレコードによると、部品xの在庫は「20」、部品情報270の単価(b)から部品xの価格は「10」であるため、「20×10=200」が部品xの在庫リスクであり、部品yの在庫は「0」、部品情報270の単価(b)から部品yの価格は「5」であるため、「0×5=0」が部品yの在庫リスクであり、これらの部品xと部品yの在庫リスクを足し合わせた「200+0=200」が、意思決定ポイント別リスク情報130の部品在庫リスク(g)の欄に格納されていることが分かる。
【0109】
<処理(4)−推奨意思決定ポイント判定処理>
図1に戻り、推奨意思決定ポイント判定処理部107の処理について説明する。推奨意思決定ポイント判定処理部107では、リスク算出処理部106で算出した(B3)意思決定ポイント別リスク情報130等を含む情報に基づき、(B4)推奨ポイント判定情報140を生成する。
【0110】
<(B4)推奨ポイント判定情報>
図20において、推奨ポイント判定情報140の構成例を示す。この情報には、a:需要シナリオ、b:意思決定ポイント、c:製品名、d:製品在庫リスク、e:機会損失リスク、f:部品在庫リスク、g:注残リスク、h:リスク合計、i:変化量、j:順位、等が格納される。a〜cの欄には、(B2)意思決定ポイント別PSI情報120に格納されている値を抽出、格納する。
【0111】
dの製品在庫リスクの欄には、(B3)意思決定ポイント別リスク情報130に格納されている製品在庫リスク(e)から、当該ポイントの最終バケットにおける製品在庫リスクを抽出し、当該値が格納される。具体的には、例えば需要シナリオ(a)が「需要2」で、意思決定ポイント(b)が「6/15」のレコードによると、最終バケット「9/28」の製品在庫リスク(e)「10000」が、当該dの欄に格納される。尚、最終バケットとは、処理フロー中(図3のS001)でユーザ操作入力に基づき取得される値である(図21の510で入力されるリスク評価ポイント(当該リスク評価ポイントに最も近いバケット))。
【0112】
eの機会損失リスクの欄は、ポイント別の機会損失リスクの値を、現在時点からリスク評価ポイントまでの期間(範囲)で累計した値が格納される。具体的には、(B3)意思決定ポイント別リスク情報130で、例えば需要シナリオが「需要1」でポイントが「6/22」の場合の機会損失リスクは、「6/29」と「7/6」でそれぞれ「400」ずつ発生しているため、「400+400=800」が機会損失リスクとなる。更に、「6/29」と「7/6」以外のバケットの機会損失リスクを加算して得られた値が、機会損失リスク(e)の欄に格納される。
【0113】
fの部品在庫リスクの欄には、(B3)意思決定ポイント別リスク情報130に格納されている部品在庫リスク(g)の欄から、当該ポイントの最終バケットにおける製品在庫リスクを抽出し、その値が格納される。
【0114】
gの注残リスクの欄には、リスク評価ポイントの時点で入庫が完了していない部品の数量情報が格納される。部品は、発注してから入庫するまでに時間を要する期間があるため、部品在庫が増えたので部品入庫を止めようとしても、そのLTを考慮して事前に発注を止める必要がある。従って、現在時点を起点にして部品のLT以内のバケットについては、既に発注済みであり、発注を止めることはできない。リスク評価ポイントがこの期間にかかった場合、当該リスク評価ポイント以降で入庫予定の部品を、注残と言うこととする。注残は、リスク評価ポイントでは在庫数に含まれないが、その先々で結局在庫となるため、ここではリスクの1つと評価する。
【0115】
例えば、部品yの場合、入庫までのLTは(A7)部品情報270のLT(c)から5週と分かるので、リスク評価ポイントよりも5週過去の時点までの生産計画に応じた部品の発注は行われており、リスク評価ポイントを超過したこの期間分の生産計画数が注残となる。具体的には、(B2)意思決定ポイント別PSI情報120によると、例えば需要シナリオが「需要2」でポイントを「9/7」としたデータの場合、部品yのLTは5週なので、「10/5」までの入庫数量を変更することはできない。従って、リスク評価ポイントの「9/28」を超えて入庫する「120」が注残数となる。この値に、部品在庫リスクと同様に、単価情報を積算した値、即ち「120×5=600」が、注残リスク(g)の欄に格納される。
【0116】
hのリスク合計の欄は、製品在庫リスク(d)と、機会損失リスク(e)と、部品在庫リスク(f)と、注残リスク(g)との合計値が格納される。
【0117】
iの変化量の欄は、ポイント間のリスク合計(h)における変化量を格納する。これは翌バケットとの差を算出し格納する。例えば第2行、第3行のレコードによると、翌バケット(ポイント「6/22」)のリスク合計(h)「1600」と、当該バケット(ポイント「6/15」)のリスク合計(h)「1200」との差分である「400」が、当該バケットにおける変化量(i)の欄に格納される。
【0118】
jの順位の欄には、意思決定ポイントの推奨の度合いを表す順位を格納する。この順位(j)の決定方法は、本例では、変化量(i)が大きい順位とする。即ち、変化量(i)が最も大きいレコードの意思決定ポイント(b)の順位(j)を「1」とし、次順以降同様に「2」,「3」,……といったように割り当てる。この順位付けは、同一の需要シナリオ(a)内で行い、需要シナリオ(a)毎に当該順位情報を格納する。
【0119】
上記では、ポイント間のリスク合計(h)の変化量(i)において、変化後のリスクが大きい箇所における、当該変化後のポイントに変化する手前のポイントが、その順位(j)に応じて推奨されることになる。例えば、需要シナリオ(a)「需要1」内において、第3行目のレコード(ポイント「6/22」)では、リスク合計(h)が「1600」、変化量(i)が「800」であり(図示しない第4行目のレコード(ポイント「6/29」)のリスク合計(h)が「1600+800=2400」)、この変化量(i)「800」が1番大きく、当該ポイント「6/22」の順位(j)が「1」となる。同様に第2行目のレコード(ポイント「6/15」)における変化量(i)「400」が2番目に大きく、当該ポイント「6/15」の順位(j)が「2」となる。
【0120】
上記のように、(B4)推奨ポイント判定情報140(推奨意思決定ポイント情報)が生成され、即ち、本例では、推奨ポイントとして、リスク及び順位(j)の情報から、例えば「需要1」では「6/22」,「6/15」の順に推奨されることが分かる。
【0121】
<画面>
次に、以上の処理に基づき生成・表示される画面の構成例として、図21の画面(推奨意思決定ポイント提示画面)500について説明する。前記(B3)や(B4)等の情報を用いて本画面500の情報が生成される。
【0122】
本画面500において、まず上側に示すように、リスク評価ポイント入力領域510、推奨意思決定ポイント表示領域520、現在時点情報530、意思決定リスク表示領域540、等を有する。
【0123】
現在時点情報530は、現在時点(対応するポイント)が表示される。例えば「6/1」の場合である。
【0124】
リスク評価ポイント入力領域510は、ユーザ操作により、リスク評価対象となる範囲を指定するためのポイント情報の入力を受付ける領域である。例えば、リスク評価ポイントが「9/28」に指定された場合である。即ちこの場合、リスク評価対象となる範囲は、「6/1」〜「9/28」の期間となる。
【0125】
推奨意思決定ポイント表示領域520は、リスク評価ポイント入力領域510で指定されたリスク評価ポイントの範囲における、推奨ポイント情報(ポイント毎の経営リスクの算出結果に基づく、推奨意思決定ポイント判定処理結果に基づく情報)を、所定の形式で表示(提示)する領域である。
【0126】
本例では、この領域(520)で、横方向のaの領域には、時点(ポイント)の情報が表示される。例えば、現在時点情報530に表示されている現在時点から、リスク評価ポイント入力領域510で入力されたリスク評価ポイントの時点までの範囲が、時間経過順に表示される。なお現在時点やリスク評価ポイントの箇所を強調表示等してもよい。
【0127】
また、縦方向のbの領域では、想定される1つ以上の需要シナリオ名が表示される。例えば「需要シナリオ1」〜「需要シナリオ4」である。
【0128】
また、cの領域には、前述の推奨意思決定ポイント判定処理によって得られた、需要シナリオ毎の推奨ポイントの情報が表示される。cの領域は、セル状になっている。本例では、各セルに、ポイントの推奨の度合いを表す順位(図20の順位(j)による)を表示する。視覚的な判断・解釈を補助するため、順位などの情報を、番号に限らず記号や色などで表現しても良い。本例では、推奨ポイントとして最も順位が高い(順位「1」)と判定されているポイントのセル部分を「◎」、次点(順位「2」)を「○」、その他を空白としている。
【0129】
また、この領域(520)は、排他的に選択可能な機能を有しており、例えば、bの領域に表示された複数の需要シナリオ名の項目のうち、ユーザがどれか1つを選択することで、下側に示すような領域(540)に情報(選択された対象に関する情報)を表示させることができる。
【0130】
このように推奨意思決定ポイント表示領域520において推奨ポイントを明示的に表示することにより、ユーザは、いつまでに計画変更の意思決定をすべきか、あるいは、どのポイントで意思決定することが最適なのか、といった判断が可能になる(それを支援できる)。また、表示された推奨ポイントの情報に従うことに限らず、当該情報を利用して、ユーザは、多少の経営リスクを踏まえた上で、故意に意思決定の延長をするといった判断を行うことも可能である。
【0131】
意思決定リスク表示領域540は、図3のリスク算出処理(S010)と推奨意思決定ポイント判定処理(S011)での処理結果(ポイント毎の経営リスク、及び推奨ポイントの情報)を表示させる表示領域の例である。この領域(540)は、dのグラフ出力領域、eの需要シナリオ入力領域、fのリスク属性選択領域、等を有する。
【0132】
dのグラフ出力領域は、上記処理結果をグラフ形式で表示した例である。グラフ表示例として、縦軸に経営リスク値(「リスク評価ポイントのリスク」)を、横軸に意思決定ポイントをとり、ポイント毎の経営リスクをプロットしたものを図示している。ここで算出・表示される経営リスクとは、リスク評価ポイント入力領域510に入力されたリスク評価ポイント(それによる範囲)で算出された値である。
【0133】
またこのグラフのデータは、bの領域あるいはeの領域でユーザが選択した需要シナリオ(「需要シナリオ1」)についての算出結果である。eの需要シナリオ入力領域では、ユーザによる任意の需要シナリオの選択を受付け、その選択された需要シナリオにおける、ポイント別の経営リスクのデータが、当該グラフで算出・表示される。
【0134】
本例のグラフによると、以下のような内容が分かる。「需要シナリオ1」において、ポイントを遅らせること(意思決定を後に延ばすこと)によって、あるポイント付近から経営リスクが増加していることが読み取れる。特に、「6/15」から「6/29」の期間におけるポイントの違いによる経営リスクの増加が顕著であることが分かる。つまり、リスク増加が大きい箇所として、第1に、「6/15」から「6/22」に計画変更の意思決定を変更する場合(「6/22」になってから計画変更(その意思決定)する場合)のリスク増加量(変化量)がBで示す大きさであり、第2に、「6/22」から「6/29」に計画変更の意思決定を変更する場合(「6/29」になってから計画変更(その意思決定)する場合)のリスク増加量がAで示す大きさであることが読み取れる。更に詳しくは、これらのリスク増加量AとBを比較し、A>Bであるとすると、「6/22」になってから計画変更の意思決定をする第1の場合よりも、「6/29」になってから計画変更の意思決定をする第2の場合の方が、よりリスク増加量が大きくなることを示している。前述のように、リスク増加量(変化量)が大きいポイント間の手前のポイントの推奨の順位が高くなるようにしており、上記例で言えば、第2の場合のAのポイント間(「6/22」,「6/29」)における手前のポイント「6/22」の順位が「1」(◎)になっており、同様に、第1の場合のBのポイント間における手前のポイント「6/15」の順位が「2」(○)になっている。
【0135】
上記表示情報に基づき、ユーザ(意思決定者)は、例えば、需要精度が高くなるように待ちつつ、ポイント「6/22」までには計画変更の意思決定をした方がよい(最適である)、と判断することができる。本システムはそのような判断を支援することができる。
【0136】
また、意思決定者は、実際に意思決定する時点を延ばすことに因る、先々の高い需要精度の確保(利点)と、当該時点を延ばすことに因る経営リスク増加(不利点)とのトレードオフの関係を睨みながら、最終的な計画変更の意思決定をしなければならない。つまり、ある程度の経営リスクを認めた上で、計画変更の意思決定を行わざるを得ない。そこで、ある程度の経営リスクは容認しつつ、その値が極度に増加する以前には意思決定をすべき(することが適切)であり、本システムでは前述のように、各意思決定ポイント間の経営リスクの増加量が最も大きい箇所における手前のポイントを、計画変更の最適なポイントとして提示するものである。
【0137】
本例では、「6/22」と「6/29」に計画変更の意思決定をした場合のそれぞれの変化量は、前述の通りBとAであり、その関係をA>Bとすると、リスク増加量Aが発生する直前のポイントである「6/22」が最適なポイント(第1の候補)であることを提示している。また、意思決定者がその「6/22」での意思決定ができない場合(例えば、さらに需要精度の高くなるポイントまで待ちたい、リスク増加量Aを認められない、といった場合)も考えられる。本例では、Aの次にリスク増加量が大きいBの箇所の直前のポイント「6/15」を、2番目に適切なポイント(第2の候補)として提示している。ユーザは提示される候補の中から適宜選択することができる。
【0138】
また、上記意思決定リスク表示領域540(dの領域)での表示は、推奨意思決定ポイント表示領域520での表示を、定量的な表示としているのと同意であり、領域(520)の理解を補足するデータでもある。ユーザはいずれの領域の表示も適宜参照することができる。
【0139】
また、fの領域(リスク属性選択領域)では、領域(540)に表示する経営リスクの属性のユーザによる選択が可能である。本例では、経営リスクとして大別すると前述のように機会損失リスク、及び在庫リスク(注残リスクも含む)を有し、これらの個別のリスク属性と、この2つの合算値とを合わせて、計3種類のリスク属性を有し、当該領域で選択可能である。dの領域には、このfの領域で選択された属性の経営リスクについての算出・表示が可能である。
【0140】
また、eの領域(需要シナリオ入力領域)で選択可能とする項目の中に、全需要シナリオ合計という項目を設け、全ての需要シナリオでの経営リスクを合算した値を算出し表示させても良い。本例では、dの領域で機会損失リスクと在庫リスクの合算値を折線状で表示しているが、リスク属性毎に分割して表示しても良いし、それぞれのリスクを積層状に表示をしても良いし、棒グラフで表示しても良い。
【0141】
また、gの領域(グラフ表示切り替えボタン)では、領域(540)に表示させる内容の切り替え操作をユーザにより行うことができる。gの領域を押下し、表示内容を切り替えた例を図22に示す。
【0142】
図22において、領域(540)には、hの領域(グラフ出力領域)、iの領域(意思決定ポイント入力領域)、jの領域(需要シナリオ入力領域)、等を有する。
【0143】
hの領域の表示は、前記bの領域で選択、またはeの領域で入力された需要シナリオと、前記aの領域、またはiの領域で入力された需要シナリオとにおける、経営リスクの推移を、グラフ形式で出力した例である。グラフ表示例として、縦軸に経営リスク値(「各バケットの累計リスク」)を、横軸にバケット(ポイントと対応)をとり、各バケットでの機会損失リスク(破線)及び在庫リスク(実線)それぞれの変化をプロットしたものを図示している。ここで、縦軸の経営リスクとは、機会損失リスクの場合は現在時点からの累計を、在庫リスクの場合は各バケットで発生する在庫リスクのスナップショットを、それぞれ算出した値である。また本例では、機会損失リスク、在庫リスクともに折線グラフで表示をしているが、棒グラフでの表示であっても良いし、層状のグラフなどであっても良い。
【0144】
本例のグラフによると、「需要シナリオ1」において、iの領域で示される推奨ポイント(意思決定ポイント)である「6/22」に計画変更の意思決定を行う場合における、各バケットの機会損失リスクと在庫リスクの変化をユーザが確認することができる。機会損失リスクは、計画変更の意思決定を行う「6/22」の直後に4バケット期間発生し、その後は発生せず、在庫リスクは、現在及び「6/22」以降の4バケット期間、並びに「8/17」で発生するが、リスク評価ポイント(「6/28」)には発生していないことが分かる。このグラフから、推奨ポイントである「6/22」に計画変更の意思決定をする場合における、各種経営リスク発生箇所が明確になり、さらに経営リスクを抑える施策を検討することも可能になる。本例で言えば、計画変更の意思決定を「6/22」に行っても機会損失が発生することが分かっているので、サプライヤーからの部品調達を早める交渉を行うといった、積極的な対策による機会損失リスク解消などが挙げられる。
【0145】
また、iの領域の入力ポイントを変化させることで、それぞれの場合の経営リスクの変化が確認できる。そのため、推奨ポイント以外のポイントで意思決定をする場合の判断情報として活用することも可能である。また特に、意思決定するポイントを変化させた場合の経営リスクの変化を観察する場合などに対応して、このiの領域は、ポイントを選択させるスライドバーのような入力インタフェースであっても良い。
【0146】
またその他、画面例としては、上記のように1つの需要シナリオやポイント等を選択した時の1つのグラフ等の情報に限らず、任意の2つのグラフ等の情報における差異を確認しやすいようにそれらの重ね合わせによるグラフや、差異情報によるグラフ等を表示してもよい。
【0147】
<実施の形態の効果等>
以上説明したように、本実施の形態の生産計画変更意思決定支援システムにおいて、需要シナリオ別、意思決定ポイント別の経営リスクの評価(S010まで)、及び、推奨意思決定ポイント判定(S011)などを実行し、その情報を画面に表示することにより、適切な意思決定ポイントをユーザに対して提示することができ、ユーザによる適切な意思決定を支援することができる。また、生産計画変更の意思決定の前倒し、または後倒しする場合における経営リスク情報を提示することもでき、ユーザによる意思決定を支援することができる。
【0148】
以上、本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることは言うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0149】
本発明は、製品の生産(製造)管理システムに利用可能である。
【符号の説明】
【0150】
10…制御部、20…演算部、30…記憶部、40…通信部、100…ネットワーク、101…外部情報受付け処理部、102…入力情報受付け処理部、103…出力処理部、104…意思決定ポイント別生産計画生成処理部、105…PSI算出処理部、106…リスク算出処理部、107…推奨意思決定ポイント判定処理部、110…意思決定ポイント別生産計画情報、120…意思決定ポイント別PSI情報、130…意思決定ポイント別リスク情報、140…推奨ポイント判定情報、200…外部情報、210…意思決定ポイント情報、220…生産計画情報、230…新生産計画情報、240…需要シナリオ情報、250(250a,250b)…初期在庫情報、260…BOM情報、270…部品情報、280…売価情報、290…原価情報、301…入力装置、302…出力装置、303…外部記憶装置、304…演算装置、305…主記憶装置、306…通信装置、307…バス、500…画面、510…リスク評価ポイント入力領域、520…推奨意思決定ポイント表示領域、530…現在時点情報、540…意思決定リスク表示領域。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンピュータの情報処理を用いる生産計画変更意思決定支援装置であって、
現在の第1の生産計画情報と、1つ以上の新しい第2の生産計画情報と、1つ以上の需要情報とを含む情報を入力とし、
前記第1の生産計画情報に基づく現在の生産計画から前記第2の生産計画情報に基づく新しい生産計画へ変更する意思決定を行うための対象となるポイントに関して、
前記ポイント毎の経営リスクを算出する処理を行う第1の手段と、
前記意思決定の支援のためのユーザの操作を誘導する画面、及び前記ポイント毎の経営リスクを含む情報を表示する画面に関する画面情報を生成して出力する処理を行う出力手段と、を備えること、を特徴とする生産計画変更意思決定支援装置。
【請求項2】
請求項1記載の生産計画変更意思決定支援装置において、
前記ポイント毎の経営リスクの情報に基づき、前記変更についての推奨されるポイントである1つ以上の推奨ポイントを判定し、当該推奨ポイントを含む情報を出力する処理を行う第2の手段を有し、
前記出力手段は、前記推奨ポイントを含む情報を表示する前記画面情報を生成して出力する処理を行うこと、を特徴とする生産計画変更意思決定支援装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の生産計画変更意思決定支援装置において、
前記第1の手段は、
前記入力をもとに、前記ポイント毎に、製品及びその部品のPSI情報を算出する処理を行う第2の処理部と、
前記PSI情報のPSIの状態から前記ポイント毎の経営リスクを算出する処理を行う第3の処理部と、を有すること、を特徴とする生産計画変更意思決定支援装置。
【請求項4】
請求項3記載の生産計画変更意思決定支援装置において、
前記第1の手段は、
前記ポイントの情報と、現在の前記第1の生産計画情報と、1つ以上の新しい前記第2の生産計画情報と、前記1つ以上の需要情報と、前記製品及びその部品の初期在庫情報と、BOM情報と、部品情報と、売価情報と、原価情報とを含む情報を取得し、前記ポイント毎の生産計画の情報を生成する処理を行う第1の処理部を有し、
前記第3の処理部は、前記ポイント毎の生産計画の情報を用いて、前記ポイント毎の経営リスクを算出すること、を特徴とする生産計画変更意思決定支援装置。
【請求項5】
請求項2記載の生産計画変更意思決定支援装置において、
前記第2の手段は、前記ポイント毎の経営リスクの算出の際、当該経営リスクを評価及び算出するための対象となる範囲を規定する将来の時点であるリスク評価ポイントの指定または設定に応じて、当該リスク評価ポイントによる範囲において前記ポイント毎の経営リスクを算出すること、を特徴とする生産計画変更意思決定支援装置。
【請求項6】
請求項5記載の生産計画変更意思決定支援装置において、
前記第2の手段または前記出力手段は、現在時点と前記リスク評価ポイントとを含む範囲において、前記ポイント及び前記推奨ポイントの情報を表示する前記画面情報を生成すること、を特徴とする生産計画変更意思決定支援装置。
【請求項7】
請求項5記載の生産計画変更意思決定支援装置において、
前記第2の手段または前記出力手段は、現在時点と前記リスク評価ポイントとを含む範囲において、前記ポイント及び前記ポイント毎の経営リスクの情報をグラフ表示する前記画面情報を生成すること、を特徴とする生産計画変更意思決定支援装置。
【請求項8】
請求項2記載の生産計画変更意思決定支援装置において、
前記第1の手段は、前記ポイント毎の経営リスクの情報に基づき、前記変更についての推奨されるポイントである1つ以上の推奨ポイント、及び当該推奨の順位を判定し、当該推奨ポイント及び順位を含む情報を出力する処理を行い、
前記第2の手段または前記出力手段は、前記推奨ポイント及び順位を含む情報を表示する前記画面情報を生成すること、を特徴とする生産計画変更意思決定支援装置。
【請求項9】
請求項2記載の生産計画変更意思決定支援装置において、
前記第1の手段は、前記需要情報における複数の各々の需要シナリオ毎に、前記ポイント毎の経営リスクを算出し、
前記第2の手段または前記出力手段は、前記需要シナリオ毎に、前記ポイント毎の経営リスクの情報を表示する前記画面情報を生成すること、を特徴とする生産計画変更意思決定支援装置。
【請求項10】
請求項2記載の生産計画変更意思決定支援装置において、
前記第2の手段または前記出力手段は、前記需要情報における複数の各々の需要シナリオ毎に、前記ポイント及び前記推奨ポイントの情報を表示する前記画面情報を生成すること、を特徴とする生産計画変更意思決定支援装置。
【請求項11】
請求項5記載の生産計画変更意思決定支援装置において、
前記ポイントと、製品の生産管理におけるタイムバケットとが対応付けられ、
前記第2の手段または前記出力手段は、現在時点と前記リスク評価ポイントとを含む範囲において、任意の指定されるポイントに対応付けられるタイムバケット及び前記タイムバケット毎の経営リスクの情報をグラフ表示する前記画面情報を生成すること、を特徴とする生産計画変更意思決定支援装置。
【請求項12】
請求項1記載の生産計画変更意思決定支援装置において、
前記第1の手段は、前記経営リスクの算出の処理として、製品の在庫、または前記製品の部品の在庫、または前記部品の注残、またはそれらの組み合わせ、による第1のコストと、前記在庫の不足による需要未充足分を機会損失とする第2のコストと、を算出し、当該第1と第2のコストを演算して前記経営リスクを算出すること、を特徴とする生産計画変更意思決定支援装置。
【請求項13】
請求項2記載の生産計画変更意思決定支援装置において、
前記第2の手段は、前記ポイント毎の経営リスクの情報に基づき、前記ポイント間の前記経営リスクの変化量の大きさを算出及び判定し、当該変化量が大きいポイント間における、当該変化の前のポイントを、前記推奨ポイントとして決定すること、を特徴とする生産計画変更意思決定支援装置。
【請求項14】
コンピュータの情報処理を用いる生産計画変更意思決定支援プログラムであって、
現在の第1の生産計画情報と、1つ以上の新しい第2の生産計画情報と、1つ以上の需要情報とを含む情報を入力とし、
前記第1の生産計画情報に基づく現在の生産計画から前記第2の生産計画情報に基づく新しい生産計画へ変更する意思決定を行うための対象となるポイントに関して、
前記ポイント毎の経営リスクを算出する第1の処理と、
前記意思決定の支援のためのユーザの操作を誘導する画面、及び前記ポイント毎の経営リスクを含む情報を表示する画面に関する画面情報を生成して出力する出力処理と、をコンピュータに実行させること、を特徴とする生産計画変更意思決定支援プログラム。
【請求項15】
請求項14記載の生産計画変更意思決定支援プログラムにおいて、
前記ポイント毎の経営リスクの情報に基づき、前記変更についての推奨されるポイントである1つ以上の推奨ポイントを判定し、当該推奨ポイントを含む情報を出力する第2の処理をコンピュータに実行させ、
前記出力処理では、前記推奨ポイントを含む情報を表示する前記画面情報を生成して出力すること、を特徴とする生産計画変更意思決定支援プログラム。
【請求項16】
請求項14または15に記載の生産計画変更意思決定支援プログラムにおいて、
前記第1の処理では、
前記入力をもとに、前記ポイント毎に、製品及びその部品のPSI情報を算出する処理と、
前記PSI情報のPSIの状態から前記ポイント毎の経営リスクを算出する処理と、を含むこと、を特徴とする生産計画変更意思決定支援プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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