説明

生薬抽出液配合液剤パック

本発明の課題は、煎薬に近い薬効を有し、携帯に便利で服用し易く、かつ保存性の良い液剤を提供することにある。例えば生薬抽出液のような液剤を1回服用量に相当する量を熱可塑性プラスチック小容器に充填する。服用時液残りのないようにするには、液剤中の水分を40〜60質量%として粘度を低下させ、また保存性を向上せしめるには滅菌処理あるいはエタノール添加による防腐手段を施し、更に小容器内を脱酸素状態にする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
本発明は、例えば生薬抽出液のような液剤のパックに関するものである。
【背景技術】
生薬、あるいは生薬を組み合わせた漢方処方は、従来下記のような形態で提供されている。
1.煎薬あるいは浸薬:生薬あるいはその組合せを、所定量小袋に充填した形態。
該小袋に充填されている生薬あるいはその組合せをお湯で煎じたり、あるいは小袋が透 水性のティーパック状のものはそのままお湯に浸してその煎液あるいは浸液を服用する。
2.舐薬:生薬あるいはその組合せの抽出液を濃縮して粘稠なエキスとし瓶詰めした形態 。
3.エキス製剤:上記エキスを適当な賦形剤に均一に分散させ、錠剤、細粒剤、顆粒剤、 散剤、カプセル剤とした形態。
4.液剤:上記エキスに甘味料などを添加して1回服用量分瓶に充填した形態。
また、医薬品の包装形態としては、170kg/cm〜230kg/cmの圧力をかけて圧縮固化した生薬を合成樹脂フィルムで包装したり(例えば特開昭63−238021号公報参照)、揮発性成分を含有する生薬を配合した組成物において、アクリル系熱可塑性樹脂、エチレン−ビニルアルコール共重合体、ポリエチレンテレフタレート、ナイロンのうちから選ばれたプラスチックを内容物と接する部分に使用した容器で包装する方法(例えば特開平4−2348号公報参照)がある。
しかしながら、上記形態および方法では下記の点で問題がある。
1.煎薬あるいは浸薬にあっては、煎じ方、浸し方に個人差があり、一様な品質の煎液あるいは浸液が得られていないこと、煎じ器、お湯等が必要で服用場所が限られること、通常該小袋は密閉包装されるが、開封後は小袋中で虫が発生したり、カビが発生したりして衛生的ではないこと、更に煎液あるいは浸液を2〜3回に分けて服用する場合には腐敗のおそれがあること、等の問題点がある。
2.舐薬にあっては、非常に粘稠であるために1回分の服用量が正確に採取しにくいこと、開封後の衛生管理が難しく、また空気酸化を受け易いこと、瓶入りであるため重く割れ易く携帯しにくいこと、等の問題点がある。
3.エキス製剤にあっては、濃縮の過程で精油成分が揮発して、煎薬あるいは浸薬に比して成分的に劣り、また賦形剤の添加によってアレルギーを引き起こすおそれがあること、等の問題点がある。
4.液剤にあっては、瓶入りであるため舐薬と同様割れ易く、携帯に不便なこと、1回の 服用のつど瓶本体やキャップ等の廃棄資材が生ずること、防腐剤、甘味料が含まれており、特に甘味料として多量の糖類を添加する場合が殆どであり、糖尿病を併発している 患者には使用出来ないこと、高コストになること、等の問題点がある。
5.従来の液剤を、アクリル系熱可塑性樹脂、エチレン−ビニルアルコール共重合体、ポリエチレンテレフタレート、ナイロンのようなプラスチックを内容物と接する部分に使用した容器に充填すると、舐薬では非常に粘稠であるため充填時に液だれを起したり、服用時には液剤すべてが取出しにくい。また特に生薬の組合せである漢方薬は腐敗し易く、特に甘草は雑菌等が多いためそのままでは製剤化が困難であった。
上記従来の形態の問題点をまとめると表1のようになる。

したがって、液剤の充填時に液だれがなく、かつ腐敗しにくく、服用時には液残りが生じない、生薬抽出液を充填した液剤パックが望まれていた。
【発明の開示】
本発明は上記従来の形態の有する問題点を解消し、本来の服用形態である煎薬に出来るだけ近い優れた成分の品質を維持し、確実な防腐作用および酸化防止作用を有し、服用し易くかつ携帯に便利で、しかも廃棄資材を最小限とし、賦形剤等の添加物を出来るだけ使用せず、しかも低コストな医薬品を提供することを課題とする。
かくして、本発明は、上記課題を解決する手段として、1回服用量に相当する生薬抽出液配合液剤を熱可塑性プラスチック小容器に充填した生薬抽出液配合液剤パックを提供する。
該熱可塑性プラスチック小容器はポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリアクリロニトリルの少なくとも1種からなることが望ましい。
また該生薬抽出液配合液剤は、水分が40〜60質量%になるように調整されているものであり、該液剤には滅菌処理が施されているか、あるいは滅菌処理と共に、または滅菌処理に代えてエタノールが水分に対して3〜15容量%になるように調整されているものである。
また更に該生薬は精油または甘草を含有するものであり、更に漢方薬であることを特徴とする。
そして該小容器内は脱酸素状態にあることが好ましく、該小容器内は窒素置換されることによって脱酸素状態とすることが好ましい。
本発明の液剤は、例えば生薬またはその組合せを抽出したものであるから、煎薬や浸薬と同等な成分有効性があり、該液剤を1回服用量に相当する分を小容器に充填するから、必要量を正確に服用することができ、また携帯にも便利である。また該小容器は熱可塑性プラスチック製であるから廃棄量を最小限とすることができ、しかも再生利用可能である。この際該液剤の水分を40〜60質量%に調整すれば、液剤を適当な粘度にして服用時小容器内の液残りがないようにすることが出来る。また滅菌処理するか、またはエタノールを液剤水分に対して3〜15容量%になるように調整し、更に小容器内を脱酸素状態にすれば、防腐作用および酸化防止作用に優れた液剤を提供出来る。更に賦形剤や防腐剤、甘味料等の添加物を添加しないので、添加剤によるアレルギーの弊害がなく、また原料を抽出して抽出液を濃縮し、小容器に充填すると云う簡単な工程で製造出来るので、低コストで製造することが出来る。
【図面の簡単な説明】
図1は、葛根湯抽出時の戻し還流液量とケイヒアルデヒドの回収率との関係を示すグラフである。
図2は、小容器の一例の平面図である。
図3は、小容器の他の実施例の平面図である。
図4は、窒素置換の有無による葛根湯液剤中のアルデヒド量の経時変化を示すグラフである。
図5は、本発明の液剤の3次元クロマトグラムである。
図6は、エキス細粒剤の3次元クロマトグラムである。
図7は、グリチルレチン酸の血中濃度の経時変化を示すグラフである。
【符号の説明】
1,11 小容器
【発明を実施するための最良の形態】
以下本発明について詳細に説明する。
本発明が対象とする生薬抽出液配合液剤は、如何なる種類のものでもよいが、例えば、薬用ニンジン、ニンニク、エゾウコギ、トウキ、ジオウ、チンピ、トシシ、ゴミシ、バクモンドウ等の生薬、葛根湯、麦門冬湯、小青龍湯、黄連解毒湯、四物湯、芍薬甘草湯等の漢方薬、エキナセア、セントジョーンズワート、カモミール、キャッツクロウ、チェストツリー、バレリアン、パッションフラワー、マリアアザミ、ラベンダー、ローズマリー、タイム、パセリ、ボリジ、レモンバーム、ペパーミント、ローマンカモミール、オレガノ、チコリ、チャービル、ペッパー、ジンジャー、ターメリック、サンショウ、ワサビ、ハス、ベルガモット、アニスヒソップ、ナスタチウム、ローズ等のハーブ類、ブルーベリー、ラズベリー、ビルベリー等のベリー類、レイシ、シイタケ、アガリクス等のキノコ類、マムシ等の動物、穀物、植物、海産物を麹菌、紅麹菌、乳酸菌、酢酸菌、納豆菌、酵母等で発酵させた発酵物等のものから水、熱水または含水アルコールで抽出した液剤である。好ましくは揮発し易い精油、例えばウイキョウ、ガジュツ、カノコソウ、ケイヒ、コウブシ、サイシン、サンショウ、シュクシャ、ショウズク、ソウジュツ、ソヨウ、チヨウジ、チンピ、トウヒ、ハッカ、ビャクジュツ、ヤクチ等、また甘草を含む生薬を含む液剤である。精油または甘草を含む漢方薬は、例えば葛根湯、加味逍遥散、当帰四逆湯、麦門冬湯、芍薬甘草湯、銀翹解毒散、安中散、桂枝加述附湯、桂枝加竜骨蠣湯、桂枝茯苓丸、桂枝加芍薬散、当帰芍薬散等である。
また該液剤には揮発性の高い香料、例えばオレンジ、カミツレ油、カンフル、ジンコウ、スペアミント油、テレピン油、パインオイル、バニラフレーバー、バニリン、ヘスペリジン、ペパーミントエッセンス、ベルガモット油、ペルーバルサム、ベルモットフレーバー、ミントフレーバー、メントール、ユーカリ油、ラベンダー油、リュウノウ、レモン油、ローズ油、ロート油、ローマカミツレ油等を加えることが出来る。
生薬からの抽出は、水、熱水または含水アルコールにて行なうことができるが、より煎薬や浸薬に近い抽出方法として熱水抽出が好ましい。熱水抽出のプロセスは、(1)生薬ま たは該生薬の二種類以上の組合せを水で加熱抽出する工程、(2)抽出液を濃縮して水分を40〜60質量%にする工程、(3)好ましくはエタノールを濃縮抽出液の水分に対して3〜15容量%なるように調整する工程、(4)熱可塑性プラスチック製小容器に該抽出液を充填する工程、この場合好ましくは該小容器内は窒素等で置換して脱酸素状態にされる。(3′)(3)の工程にて、エタノールでの調整と共にあるいはエタノール調整に代えて水分調整後の抽出液を小容器に充填する前あるいは小容器に充填後、滅菌処理を行なってもよい。
含水アルコールに用いるアルコールは、例えばメタノール、エタノール、プロピルアルコール等であるが、エタノールが好ましい。含水アルコールにて抽出後、希釈、濃縮またはエタノールを添加することで、エタノール含量を液剤の水分に対して3〜15容量%なるように調整することが望ましい。
上記プロセスを更に詳細に説明する。
(1)加熱抽出工程
生薬またはその組合せを水で加熱抽出するには、還流冷却器を付した抽出器を使用することが望ましい。生薬には揮発性の精油成分を多量に含有するものが多く、そして該精油成分は薬効に重要な関わりを持つものが多い。生薬を加熱抽出時、該精油成分は水に溶出してくる。この工程における加熱温度は、抽出溶媒が沸騰する温度である。
(2)濃縮工程
加熱抽出工程に続いて得られた抽出液は還流冷却器を介して濃縮し、水分を40〜60質量%に調整する。この場合、抽出工程で水に溶出した精油は水と共に共沸して殆ど揮発してしまう。そこで本発明では精油の殆どが含まれる初期還流分を別に採取しておき、該初期還流分を濃縮抽出液の水分調整時に該抽出液に戻して精油を回収する。
例えば、葛根湯の抽出液1200Lを濃縮する場合、戻し還流液量と精油成分であるケイヒアルデヒドの回収率の関係を図1に示す。図1において、回収率とは抽出液に含まれるケイヒアルデヒドの量を100として計算した。図1によれば、初期還流液の採取量を10〜20Lとすれば、アルデヒドは略完全に回収されることが分かる。
上記濃縮抽出液の水分は、上記したように40〜60質量%の範囲に調整されるが、40質量%未満の場合には、液が粘稠になり、小容器への充填工程で液だれが生じたり、服用時に液残りが生じる。一方水分が60質量%を越えると成分が希釈され、1回の服用量が多くなると同時に容器が大型になるので携帯等が不便となる。
(3)エタノール調整
本発明では、得られた生薬抽出液にエタノールを該抽出液の水分に対して3〜15容量%になるよう調整することが好ましい。更に好ましくは5〜10容量%である。甘草のように雑菌の多い生薬を含む液剤でも十分な防腐効果が得られる。
上記のように小容器に充填した液剤を取出す時、液残りのないようにするには、水分量を高く(40質量%以上)に調整する必要があるが、水分量を高めに設定すると腐敗し易くなる。この腐敗を防ぐために一般的には防腐剤を添加するのであるが、ある種のカビには全く効果が認められない。
種々の生薬抽出液(エキス)について、防腐剤が添加されていない場合の防腐試験結果を表2に示す。

次に種々の生薬抽出液(エキス)に対して医薬品として一般に使用が許されている安息香酸ナトリウムおよびパラペンを防腐剤として限度値まで添加し、同様に防腐試験を行なった結果を表3に示す。

表3によれば、防腐剤を添加してもなおC.albicansに対しては麦門冬湯エキスが効果なく、A.nigerに対しても麦門冬湯エキスに効果がみられない。
そこで該液剤の水分量に対してエタノール含量を調整し、防腐試験を行なった結果を表4に示す。

表4よりエタノール含量は液剤の水分に対して3〜15容量%になるように調整すると優れた防腐効果が得られることが判明した。
またエタノールが液剤中に存在することにより、該液剤の粘度や表面張力を低下させ、小容器へ液剤を充填する工程で液だれが生じにくくなり、服用時においては液残りないように取出すことが容易となる。更に生薬抽出液に認められる苦味等を緩和させ、香りをよくし、服用感を向上させ、薬効成分の吸収効率の向上が期待出来る。
(4)充填工程
本発明に使用する小容器の例を図2および図3に示す。図2に示す小容器(1)は本体(2)と、該本体(2)の上端の蓋部(3)とからなり、該蓋部(3)と該本体(2)との間に切込み(4)が設けられている。該小容器(1)を開く場合には、該蓋部(3)を指で矢印方向に押せば、該蓋部(3)は切込み(4)から切り離される。図3に示す小容器(11)は本体(12)と、該本体(12)の上端の蓋部(13)とからなり、該 蓋部(13)の下端からくびれ(14)が設けられ、該くびれ(14)と該本体(12)との間には切込み(15)が設けられている。該小容器(11)も蓋部(13)を指で矢印方向に押せば、該蓋部(13)は切込み(15)から切り離される。図2に示す小容器(1)および図3に示す小容器(11)の充填量は1〜50ml程度とする。
該小容器(1,11)の材料は充填される生薬抽出液の成分を吸着しにくく、また透液性や通気性のない材料であり、このような材料としては、例えばポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリアクリロニトリル等の熱可塑性プラスチックであり、好ましくはポリプロピレンまたはポリアクリロニトリルであり、更に好ましくはポリアクリロニトリルである。上記熱可塑性プラスチックは少なくとも液剤に接する内面に存在すればよい。また上記熱可塑性プラスチックは二種以上積層されていてもよく、またアルミニウム箔、ステンレススチール箔等の金属箔を介在させてもよい。本発明により精油を含め生薬独自の香りを封じ込めることが出来る。
上記生薬またはその組合せの抽出液に含まれる成分には空気酸化され易いものも多い。したがって該小容器内は脱酸素状態にして酸化を防止することが望ましい。該小容器内を脱酸素状態にする望ましい方法は、窒素置換である。窒素置換の効果を図4に示す。図4においては、葛根湯液剤を小容器に充填した場合、窒素置換の有無でケイヒアルデヒドの残存量が経時的にどのように変化するかが示されている。なおケイヒアルデヒドの初期量を100としている。これによると60℃の保管条件で窒素置換したものは3週間の保管でもケイヒアルデヒドの量が変化しないが、窒素置換しなかったものは経時的に減少する。なおケイヒアルデヒドは空気酸化され易く、酸化によりケイヒ酸に変化するので、上記酸化防止試験に最も適する成分の一つである。
上記(3′)エタノール調整と共にあるいはエタノール調整に代えて上記液剤パックは滅菌されるのが好ましいが、滅菌は液剤を小容器に充填前に液体瞬間殺菌装置を用いた滅菌、沸騰による滅菌をすることが出来る。また小容器へ充填後にレトルトパウチ食品に用いられている高温短時間滅菌等によって滅菌をすることが出来る。
更に本発明の葛根湯液剤と、該葛根湯液剤と原料を同じくする葛根湯エキス細粒剤とについて、HPLCを用いた三次元クロマトグラムを測定し、成分パターンを比較した結果を図5(葛根湯液剤)、および図6(葛根湯エキス細粒剤)に示す。
図5および図6により液剤は細粒剤よりもピークが顕著に観察され、成分的に優れていることが確認された。
本発明における生薬抽出液配合液剤パックの好ましい態様としては、例えば葛根湯、当帰芍薬散料等の漢方液剤を水分を40〜60質量%に調整し、更に水分に対してエタノールを3〜15容量%になるように調整し、ポリプロピレンまたはポリアクリロニトリルの材質の小容器に充填したものが挙げられる。
以下に本発明の実施例を記載する。
【実施例1】
葛根湯の構成生薬の組み合わせ5kg(200日分)に水50Lを加えて還流冷却器を付した蒸気釜で沸騰抽出を30分行なった。その間還流冷却器で凝縮される還流液1Lを回収し別に保管した。抽出液は減圧濃縮し、水分約25質量%のエキス1.33kgとし、これに還流液1Lとエタノール0.13kgを加えてよく攪拌し、水分に対し約12容量%のエタノールを含有するエキス2.5kg(12.5g/1日量)が出来上がった。これを窒素置換の下、図2に示す小容器に6.25gずつ充填し、液体パックを完成した。
〔液剤取出し試験〕
実施例1のエキスに対してエタノールを水分に対して10容量%になるように添加調整したものを試料エキスとした。上記エキスに対して取出し試験を行なった。取出し試験は同一の容器にエキスを略同一量になるように充填し、取出し試験を行ない取り出し率を求めた。比較としてエタノールに代えて水を添加したエタノール無添加試料の取り出し率を求めた。上記取出し試験は10個の試料について行なわれた。その結果を表5に示す。

更にエタノールを3容量%、15容量%に調整したものについても同様な取出し試験を行なった。その結果を表6に示す。


表5、表6に明らかなようにエタノール添加によって液剤の取り出し率が向上する。
〔服用感試験〕
実施例1のエキスについて、エタノールを添加した時の服用感について官能試験を行なった。試験は10名のモニターに対して行なった。その結果を表7に示す。

表7の結果から、何れのアルコール濃度においても、エタノールを添加したエキスの方が服用感に優れる結果が得られ、アルコール濃度が上るほどその傾向は顕著であった。一方アルコールを添加しないエキスは服用感が悪かった。
〔グリチルレチン酸の血中濃度〕
漢方処方の大半に処方される甘草は、グリチルリチン酸を主成分として含有し、この成分は糖がはずれたグリチルレチン酸の形になって血中に吸収される。そこで液剤中にエタノールを添加したことによって血液中のグリチルレチン酸の吸収にどのような差異が出るか試験した。
小青竜湯エキスの水分に対して10容量%のエタノールを添加したエキスと、水を同一容量添加したエキスとをそれぞれ調製した。ラットを16匹ずつ2群に分け、エタノール添加エキス群と水添加エキス群とにわけ、それぞれ同量ずつ(人用量の50倍量)エキスを同時に投与した。投与後、2,8,24,32時間後に各群4匹ずつ全採血を行ない、常法に従い血清を得た。この血清中の1mlを正確に採り、クロロホルム9mlを正確に加えて10分間振り混ぜた後に遠心分離を行ない、クロロホルム層5mlを採り、減圧下溶媒を留去し、残留物に薄めたエタノール(1→2)0.5mlを正確に加えて溶かし、メンブランフィルター濾過した濾液を試料溶液とした。各試料溶液は10μlずつを正確に採り、下記条件でHPLC分析を行ない、濃度既知のグリチルレチン酸標準溶液とのピーク面積の比較から、各血清中のグリチルレチン酸濃度を算出し、各時間4匹の平均濃度を算出し、グラフ化した(図7)。
HPLC分析条件
検 出:紫外吸光光度計(測定波長:254nm)
カラム:DevelosilODS−7(4.0×300mm)NOMURA CHEMICAL
移動相:80v/v%メタノール500mlに臭化テトラn−ブチルアンモニウム0.621gを加え、リン酸でpH6.0に調整したもの
カラム温度:40℃
流 量:1.0ml/min.
図7から、アルコールを添加したエキスの方がグリチルレチン酸の血中濃度が高くなることが分かった。この結果からアルコールを添加することでより高い効果の発現が期待出来ると考えられる。
【実施例2】
実施例1で調製した小容器入りの液剤の廃棄資材、携帯性について成人20名(男性13名、女性7名)から聴取した。その結果全員から従来の葛根湯液剤に比べて、廃棄資材が最小限で、携帯性に優れるとの回答を得た。
【実施例3】
実施例1で調製した液剤を小容器から適当な容器(容量が100〜200ml)に移し、お湯を50ml加え、1〜2分間冷ました後、成人ボランティア10名(男性6名、女性4名)に服用してもらった。その結果10名中9名から煎剤(生薬を同程度のお湯で煎じたもの)とほぼ同様な服用感があり、「服用し易い」との回答があった。
【実施例4】
実施例3の成人ボランティア10名に実施例1で調製した小容器入りの液剤と携帯性では同程度であるエキス製剤(細粒剤)を服用してもらった。その結果10名中9名がエキス製剤に比べて「比較にならないほど服用感に優れている」と回答し、1名が「服用感に優れている」と回答した。
【産業上の利用可能性】
本発明の生薬抽出液配合液剤パックは内容物中での細菌やカビの繁殖が抑制され、長期間の保存が可能であり、かつ内容物は略定量的に取り出し服用することが可能であり、また服用し易い。
【図1】

【図2】

【図3】

【図4】

【図5】

【図6】

【図7】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
1回服用量に相当する生薬抽出液配合液剤を熱可塑性プラスチック小容器に充填したことを特徴とする生薬抽出液配合液剤パック。
【請求項2】
熱可塑性プラスチック小容器がポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリアクリロニトリルの少なくとも1種からなる請求項1に記載の生薬抽出液配合液剤パック。
【請求項3】
該生薬抽出液配合液剤は、水分が40〜60質量%になるように調整されている請求項1または2に記載の生薬抽出液配合液剤パック。
【請求項4】
該生薬抽出液配合液剤には滅菌処理が施されているか、あるいは滅菌処理と共に、または滅菌処理に代えてエタノールが水分に対して3〜15容量%になるように調整されている請求項1〜3に記載の生薬抽出液配合液剤パック。
【請求項5】
該生薬は精油を含有するものである請求項3または4に記載の生薬抽出液配合液剤パック。
【請求項6】
該生薬は甘草を含有するものである請求項3〜5に記載の生薬抽出液配合液剤パック。
【請求項7】
該生薬は精油を含有する漢方薬である請求項3〜6に記載の生薬抽出液配合液剤パック。
【請求項8】
該生薬は甘草を含有する漢方薬である請求項3〜7に記載の生薬抽出液配合液剤パック。
【請求項9】
該小容器内は脱酸素状態にある請求項1〜8に記載の生薬抽出液配合液剤パック。
【請求項10】
該小容器内は窒素置換されることによって脱酸素状態にある請求項9に記載の生薬抽出液配合液剤パック。

【国際公開番号】WO2004/084794
【国際公開日】平成16年10月7日(2004.10.7)
【発行日】平成18年6月29日(2006.6.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−504106(P2005−504106)
【国際出願番号】PCT/JP2004/004225
【国際出願日】平成16年3月25日(2004.3.25)
【出願人】(000187471)松浦薬業株式会社 (7)
【出願人】(000250100)湧永製薬株式会社 (51)
【Fターム(参考)】