説明

生薬抽出物及びそれを用いたコラーゲン産生促進剤、線維芽細胞賦活剤

【課題】 動脈硬化防止、骨粗鬆症予防、老化防止などに重要な役割を担う、コラーゲン産生促進作用、線維芽細胞賦活作用に優れた生薬抽出物を提供する。
【解決手段】 ハクシジン、ケツメイシ、カロニン、およびコトウニンから選ばれた1種又は2種以上を、水のみを抽出溶媒とし、生薬抽出物を得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、動脈硬化防止、骨粗鬆症予防、老化防止などに重要な役割を担う、コラーゲン産生促進作用、線維芽細胞賦活作用に優れた生薬抽出物に関する。
【背景技術】
【0002】
コラーゲンは、ほ乳類、鳥類等の結合組織、骨、靱帯、腱、真皮、血管に多く含まれるタンパク質であり、これらの組織の形成、構築に重要な役割を果たしている。コラーゲンは様々な形態を持つが、中でもI型コラーゲンで形成されたコラーゲン繊維は、骨や軟骨に大量に含まれ、骨の弾力性を保持する作用を有している。
コラーゲン産生機能の低下は、骨形成不全症、骨粗鬆症、動脈硬化といった疾患の原因であり、コラーゲン産生促進剤は、これらの疾患の治療剤及び/又は予防剤として有用と考えられている。
そのため、コラーゲン産生促進に関する研究がなされており、特に副作用の問題が少なく、医薬品として安全性の高い天然物由来のコラーゲン産生促進剤の研究がなされている。
一方、線維芽細胞は、コラーゲンを産生する細胞であり、さらにコラーゲン以外の細胞外マトリックスをも産生するなど、これらの新陳代謝を担っている細胞である。そのため、線維芽細胞の減少は、骨形成不全症、骨粗鬆症、動脈硬化といった疾患の原因と考えられ、線維芽細胞賦活剤は、これらの疾患の治療剤及び/又は予防剤として有用と考えられている。
【0003】
コラーゲン産生促進効果または線維芽細胞賦活効果を有する生薬抽出物を抽出する方法として、マリーゴールド重量の5倍量ないし50倍量の低級アルコール溶液を用いて抽出する方法(特許文献1)や、ブナ科コナラ属植物から低級アルコール又は低級アルコールと水との混合溶媒により抽出する方法(特許文献2)など、有機溶剤等を用いた抽出方法が知られている。
また、水を抽出溶媒とする方法としては、ハイビスカス乾燥物を60℃のイオン交換水で2時間加熱抽出する方法(特許文献3)や、乾燥エンドウ種子から60℃の温水中で3時間処理し抽出する方法(特許文献4)が知られている。
しかしながら、上記の生薬を用い、上記の抽出方法で得られた植物抽出液のコラーゲン産生促進効果や、線維芽細胞賦活効果は、十分満足できるものではなかった。したがって、さらに良好な効果をもたらす植物エキスの開発や、それに適した抽出方法が求められていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−253817号公報
【特許文献2】特開2006−249018号公報
【特許文献3】特開平9−295928号公報
【特許文献4】特開平11−315007号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記従来技術の有する課題に鑑みてなされたものであり、コラーゲン産生促進作用や、線維芽細胞賦活作用に優れた生薬抽出物を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記目的を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、特に、ハクシジン、ケツメイシ、カロニン、およびコトウニンから選ばれた1種又は2種以上から、水のみを抽出溶媒として得られた生薬抽出物は、優れたコラーゲン産生促進効果及び線維芽細胞賦活効果を有することを見出し、本発明に至った。
【0007】
すなわち、本発明は、
(1)水のみを抽出溶媒としてハクシジン、ケツメイシ、カロニン、およびコトウニンから選ばれた1種又は2種以上の生薬から抽出された生薬抽出物を提供し、
(2)水のみを抽出溶媒としたときの抽出温度を、0〜40℃として得られる生薬抽出物を提供するものである。さらに、
(3)前記生薬抽出物を含有するコラーゲン産生促進剤、
(4)前記生薬抽出物を含有する線維芽細胞賦活剤
を、提供するものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明は、特に、ハクシジン、ケツメイシ、カロニン、およびコトウニンから、水のみを抽出溶媒として抽出することにより、高いコラーゲン産生促進効果や高い線維芽細胞賦活効果等を有する生薬抽出物を得ることができる。
さらに、本発明は、特定の生薬を選択することにより、低温の水のみで抽出できることから、生薬抽出において、コスト面や工程管理のうえで従来にない優れた効果を発揮することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の生薬抽出物は、ハクシジン、ケツメイシ、カロニン、およびコトウニンから選ばれた1種もしくは2種以上の生薬から、水のみを抽出溶媒として得られた生薬抽出物である。
【0010】
本発明で用いられるハクシジンとは、従来生薬に用いられる植物であって、ヒノキ科(Cupressaceae)、Biota属に属し、コノテガシワ(学名:Biota orientalis)の種子を乾燥させたものをいい、鎮静作用及び止汗作用があるとされる。
ケツメイシとは、従来生薬に用いられる植物であって、マメ科(Leguminosae)、センナ属(Cassia)に属し、エビスグサ(学名:Cassia tora)の種子を乾燥させたものをいい、清肝明目作用があるとされる。
カロニンとは、従来生薬に用いられる植物であって、ウリ科(Cucurbitaceae)、カラスウリ属(Trichosanthes)に属し、シナカラスウリ(学名:Trichosanthes kirilowii)の種子を乾燥させたものをいい、消炎・通便作用があるとされる。
コトウニンとは、従来生薬に用いられる植物であって、クルミ科(Juglandaceae)、クルミ属(Juglans)に属し、クルミ(学名:Juglanda regia)の種子の仁を乾燥させたものをいい、利尿作用及び滋養強壮作用があるとされる。
【0011】
一般に生薬の薬効成分の抽出用溶媒として、1種もしくは2種以上の溶媒を混合して用いられることが多い。使用される溶媒としては、例えば、水、低級アルコール類(例えば、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール等)、液状の多価アルコール(例えば、1,3−ブチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン等)、ケトン類(例えば、アセトン、メチルエチルケトン等)、アセトニトリル、エステル類(例えば、酢酸エチル、酢酸ブチル等)、炭化水素類(例えば、ヘキサン、ヘプタン、流動パラフィン等)、エーテル類(例えば、エチルエーテル、テトラヒドロフラン、プロピルエーテル等)及びこれらの混合溶媒が挙げられる。
【0012】
しかしながら、本発明者らの研究によると、水のみを抽出溶媒としたハクシジン、ケツメイシ、カロニン、およびコトウニンからの生薬抽出物は、アルコール等の有機溶剤又は水とアルコール等の有機溶剤との混合溶媒を抽出溶媒として得られた生薬抽出物より、コラーゲン産生促進効果及び線維芽細胞賦活効果において優れた効果を発現することが確認された。
すなわち本発明は、生薬として特に、ハクシジン、ケツメイシ、カロニン、およびコトウニンを選択し、これらを水のみの抽出溶媒で抽出することを特徴とするものである。
【0013】
また、水のみを抽出溶媒とする場合に、60℃以上の高温または沸騰水で抽出するよりも、水温を0〜40℃としたときに、より好ましくは0〜25℃に、さらに好ましくは0〜15℃としたときに、得られる生薬抽出物のコラーゲン産生促進効果及び線維芽細胞賦活効果が強まることを見出した。
水温0〜40℃の水で、特に本発明の顕著な効果を発現する抽出物が得られる理由については不明であるが、加熱せずに抽出することで、40℃以上で加熱した場合のような熱変性を受けないことや、コラーゲン産生促進効果及び線維芽細胞賦活効果を阻害する成分の抽出量が減少することなどが考えられる。
なお、本発明の水のみを抽出溶媒として得られた生薬抽出物の使用形態に特に制限はない。水を溶媒とした抽出液をそのまま用いても良いし、希釈あるいは濃縮したもの、更には、凍結乾燥などによって作製した乾燥物を用いても良い。
【0014】
本発明のコラーゲン産生促進剤及び線維芽細胞賦活剤は、前記水による生薬抽出物をそのままで、又は、希釈あるいは濃縮したもので、さらには凍結乾燥などによって作成した乾燥物を、単独もしくは2種以上を混合して使用することができる。
2種以上の生薬抽出物の混合では、前記各生薬から個別に抽出された生薬抽出物を混合して使用することができ、複数の前記生薬から同時に抽出された生薬抽出物を用いることもでき、複数の前記生薬から同時に抽出された生薬抽出物に、さらに、前記生薬抽出物を混合することもできる。また、本発明の生薬抽出物の使用量に特に制限はなく、用途や適用によって適宜調整することができる。
【0015】
本発明で使用されるハクシジン、ケツメイシ、カロニン、およびコトウニンは、医薬または民間薬、食品、化粧品の成分として一般的に用いられ、安全性が確認されている生薬であり、これらに由来する本発明の生薬抽出物は、内服剤や外用剤等に配合して、経口投与することや経皮投与することができ、さらに、飲食物、飼料、浴用剤に配合して用いることができる。
内服剤や外用剤としての製剤にあたっては、通常の内服剤、外用剤等で使用されている薬剤などと組み合わせて使用することができる。これにより本発明のコラーゲン産生促進及び線維芽細胞賦活効果がより発現しやすくなる。
【0016】
本発明の生薬抽出物をコラーゲン産生促進剤または線維芽細胞賦活剤として内服剤に用いる場合、賦形剤、滑沢剤、結合剤、崩壊剤、コーティング剤のような担体とともに、錠剤、カプセル剤、顆粒剤、散剤、シロップ剤等として製剤することができる。また、必要に応じて、着色料、香料、防腐剤、香料を入れることもできる。
本発明の生薬抽出物をコラーゲン産生促進剤または線維芽細胞賦活剤として飲食物や飼料に用いる場合の剤型に特に制限はなく、例えば、ビスケット、クッキー、錠剤、カプセル剤、キャンディー、粉末などの固形剤や飲料などの液体製剤、ゼリーなどの半固形製剤とすることができる。
本発明の生薬抽出物をコラーゲン産生促進剤または線維芽細胞賦活剤として外用剤に製剤する場合、その剤型には特に制限はなく、例えば、ペースト剤、クリーム、ジェル、軟膏、ローション、乳液、パック、パウダー、パップ剤等とすることができる。
また、本発明の生薬抽出物をコラーゲン産生促進剤または線維芽細胞賦活剤として浴用剤に製剤する場合の剤型に特に制限はなく、例えば、粉末、顆粒状などの固形製剤、乳液、ペースト状などの液体製剤等とすることができる。
【0017】
これらの外用剤又は浴用剤において、前記コラーゲン産生促進効果及び線維芽細胞賦活効果を有する生薬抽出物の配合量に特に制限はなく、剤型により適宜調整することができる。また、外用剤及び浴用剤の使用量についても特に制限はなく、使用者の好みに合わせて適宜用いることができる。
本発明の外用剤及び浴用剤には、本発明のコラーゲン産生促進効果及び線維芽細胞賦活効果を有する生薬抽出物のほかに、通常の外用剤又は浴用剤において使用される公知の機能性成分、例えば、保湿剤、エモリエント剤、血行促進剤、抗酸化剤、抗炎症剤、抗菌剤、美白剤、過酸化物抑制剤などを配合することができる。
【0018】
例えば、グリセリン、ブチレングリコール、尿素、アミノ酸類などの保湿剤;スクワラン、マカデミアナッツ油、ホホバ油などのエモリエント剤;ビタミンE類、トウガラシチンキなどの血行促進剤;ジブチルヒドロキシトルエン(BHT)、ジブチルヒドロキシアニソール(BHA)、酢酸トコフェロール、アスコルビン酸などの抗酸化剤;グリチルリチン、アラントインなどの抗炎症剤;ヒノキチオール、塩化ベンザルコニウム、クロルヘキシジン塩、パラヒドロキシ安息香酸エステルなどの抗菌剤;アスコルビン酸、アルブチンなどの美白剤;スーパーオキシドジスムターゼ(SOD)等の過酸化物抑制剤などの種々の物質を配合することができる。
また、オウゴンエキス、イチョウエキス、シャクヤクエキス、胎盤抽出物、乳酸菌培養抽出物などの植物・動物・微生物由来の各種抽出物などを添加して使用することもできる。
さらに、前記内服剤、飼料、外用剤並びに浴用剤には、その剤型化のために界面活性剤、油脂類などの基剤成分や、必要に応じて増粘剤、防腐剤、等張化剤、紫外線吸収剤、キレート剤、香料、着色料など種々の添加剤を併用できる。
【0019】
上記の界面活性剤としては、一般的な非イオン系界面活性剤、陰イオン系界面活性剤、陽イオン系界面活性剤、両イオン性界面活性剤、食添用の界面活性剤を用いることができる。
例えば、高級アルキルアミンのアルキレンオキサイド付加物、高級脂肪酸アミドのアルキレンオキサイド付加物、多価アルコールの脂肪酸エステル、硬化ひまし油のアルキレンオキサイド付加物、ポリエチレングリコールソルビタンアルキルエステル、ステロール等のアルキレンオキサイド付加物等の非イオン系界面活性剤;アルキル硫酸ナトリウム、アルキロイルメチルタウリンナトリウム、α−オレフィンスルホン酸ナトリウム、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸ナトリウム等の陰イオン系界面活性剤;塩化アルキルピリジニウム、塩化ジステアリルジメチルアンモニウム等の陽イオン性界面活性剤;アルキルアミノプロピオン酸ナトリウム、アルキルポリアミノエチルグリシン等の両イオン性界面活性剤、レシチンやショ糖エステル等が挙げられ、これらのうち1種又は2種以上を選択して使用することができる。
上記の基剤成分としては、例えば、オリーブ油、ツバキ油、ホホバ油、アボガド油、マカデミアナッツ油、杏仁油、スクワラン、スクワレン、馬油など、一般的に知られている油脂類を用いることができる。
【0020】
上記の増粘剤としては、例えば、ポリビニルアルコール、ポリアクリルアミド、ポリエチレングリコール、及びこれらの各種誘導体;ヒドロキシアルキルセルロースなどのセルロース類及びその誘導体;デキストラン、ゼラチン、アラビアガム、トラガントガムなどのガム類;カルボキシビニルポリマーなどの水溶性高分子などを用いることができる。
上記の防腐剤としては、例えば、パラヒドロキシ安息香酸エステル、塩化アルキルピリジニウム、塩化ベンザルコニウム、クロルヘキシジン塩、ヒノキチオールなどが挙げられる。
上記の等張化剤としては、例えば、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウムなどの無機塩類が挙げられる。
上記の紫外線吸収剤としては、例えば、パラアミノ安息香酸、ベンゾフフェノン系紫外線吸収剤、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤などが挙げられる。
使用可能なキレート剤としては、例えば、エチレンジアミン四酢酸、フィチン酸、クエン酸及びこれらの水溶性塩などが挙げられる。
【実施例】
【0021】
以下に、実施例及び比較例を挙げて、本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0022】
実施例1(ハクシジン常温水抽出物)
予め粉砕したハクシジン30gに、蒸留水を200ml加え、20℃にて24時間抽出した。これを濾過し、ハクシジン常温水抽出物を得た。さらに、これを凍結乾燥し、凍結乾燥物1.9gを得た。
【0023】
実施例2(ケツメイシ常温水抽出物)
予め粉砕したケツメイシ30gに、蒸留水を200ml加え、20℃にて24時間にて抽出した。これを濾過し、ケツメイシ常温水抽出物を得た。さらに、これを凍結乾燥し、凍結乾燥物1.6gを得た。
【0024】
実施例3(カロニン常温水抽出物)
予め粉砕したカロニン30gに、蒸留水を200ml加え、10℃にて24時間にて抽出した。これを濾過し、カロニン常温水抽出物を得た。さらに、これを凍結乾燥し、凍結乾燥物2.3gを得た。
【0025】
実施例4(コトウニン常温水抽出物)
予め粉砕したコトウニン30gに、蒸留水を200ml加え、35℃にて24時間にて抽出した。これを濾過し、コトウニン常温水抽出物を得た。さらに、これを凍結乾燥し、凍結乾燥物1.8gを得た。
【0026】
実施例5(ハクシジン煮沸水抽出物)
予め粉砕したハクシジン30gに蒸留水を200ml加え、2時間煮沸抽出した。冷却後濾過し、ハクシジン煮沸水抽出物を得た。さらに、これを凍結乾燥し、凍結乾燥物3.4gを得た。
【0027】
実施例6(ケツメイシ煮沸水抽出物)
予め粉砕したケツメイシ30gに、蒸留水200ml加え、2時間煮沸抽出した。冷却後濾過し、ケツメイシ煮沸水抽出物を得た。さらに、これを凍結乾燥し、凍結乾燥物3.8gを得た。
【0028】
実施例7(カロニン煮沸水抽出物)
予め粉砕したカロニン30gに、蒸留水を200ml加え、2時間煮沸抽出した。冷却後濾過し、カロニン煮沸水抽出物を得た。さらに、これを凍結乾燥し、凍結乾燥物2.6gを得た。
【0029】
実施例8(コトウニン煮沸水抽出物)
予め粉砕したコトウニン30gに、蒸留水を200ml加え、2時間煮沸抽出した。冷却後濾過し、コトウニン煮沸水抽出物を得た。さらに、これを凍結乾燥し、凍結乾燥物2.1gを得た。
【0030】
比較例1(ハクシジン50(v/v)%エタノール抽出物)
予め粉砕したハクシジン30gに、50(v/v)%エタノールを200ml加え、60℃にて24時間抽出した。冷却後濾過し、ハクシジン50(v/v)%エタノール抽出物を得た。さらにこの抽出物を濃縮し、蒸発残分が2.9質量%である抽出物を得た。
【0031】
比較例2(ケツメイシ50(v/v)%エタノール抽出物)
予め粉砕したケツメイシ30gに、50(v/v)%エタノールを200ml加え、60℃にて24時間抽出した。冷却後濾過し、ケツメイシ50(v/v)%エタノール抽出物を得た。さらにこの抽出物を濃縮し、蒸発残分が2.1質量%である抽出物を得た。
【0032】
比較例3(カロニン50(v/v)%エタノール抽出物)
予め粉砕したカロニン30gに、50(v/v)%エタノールを200ml加え、60℃にて24時間抽出した。冷却後濾過し、カロニン50(v/v)%エタノール抽出物を得た。さらにこの抽出物を濃縮し、蒸発残分が1.8質量%である抽出物を得た。
【0033】
比較例4(コトウニン50(v/v)%エタノール抽出物)
予め粉砕したコトウニン30gに、50(v/v)%エタノールを200ml加え、60℃にて24時間抽出した。冷却後濾過し、コトウニン50(v/v)%エタノール抽出物を得た。さらにこの抽出物を濃縮し、蒸発残分が3.2質量%である抽出物を得た。
【0034】
(1)試料の調製
得られた生薬抽出物を固形分0.02%になるように蒸留水で溶解したものをコラーゲン産生促進効果及び線維芽細胞賦活効果試験に使用し、評価した。
【0035】
(2)コラーゲン産生促進効果の評価
ヒト皮膚由来線維芽細胞(TIG−113)を48穴マルチプレートに2.0×104cells/wellずつ播種し、37℃×3日間、5%CO2の条件下で前培養し細胞を定着させた。培地に前記(1)で調整した試料を添加して(最終濃度0.001質量%)、37℃×7日間、5%CO2の条件下で培養した。4日目に培地と試料を新しいものと交換した。
コントロールとして、試料の代わりに蒸留水を添加した。さらに、陽性コントロールとして、コラーゲン産生促進物質であるアスコルビン酸マグネシウム(NIKKOL VC−PMG、日光ケミカルズ)でコラーゲン産生促進を確認した。
7日後、シリウスレッド−ファーストグリーン試薬(0.5M酢酸に対して0.05質量%のCirius Red F3B、及び0.04質量%のFast Green FCFを溶解)で、室温で1時間染色した。0.1M NaOHで抽出し、540nm(シリウスレッド)および605nm(ファーストグリーン)の吸光度を測定した。共染時シリウスレッド単独の吸光度は、以下の式(1)より求めた。
式(1):
共染時シリウスレッド単独の吸光度=540nm吸光度−0.25×605nm吸光度
【0036】
上記の式(1)で求めた共染時シリウスレッド単独の吸光度を元に、下記式(2)よりコントロールに対してのコラーゲン産生率を得た。
式(2):
コラーゲン産生率(%)=試料添加細胞の吸光度/コントロール添加細胞の吸光度×100
【0037】
【表1】

【0038】
表1に示したように、ハクシジン、ケツメイシ、カロニン、およびコトウニンの水抽出物にコラーゲン産生促進効果が認められた。また、煮沸抽出物(実施例5〜8)に比べて0〜40℃の常温水抽出物(実施例1〜4)のコラーゲン産生効果は、特に顕著であった。
一方、50(v/v)%エタノール抽出物(比較例1〜4)には、コラーゲン産生促進効果がほとんど認められなかった。
【0039】
(3)線維芽細胞賦活効果の評価
ヒト皮膚由来線維芽細胞(TIG−113)を48穴マルチプレートに2.0×104cells/wellずつ播種し、37℃×3日間、5%CO2の条件下で前培養し細胞を定着させた。培地に前記(1)で調整した試料を添加して(最終濃度0.001質量%)、37℃×7日間、5%CO2の条件下で培養した。4日目に培地と試料を新しいものと交換した。コントロールとして、試料の代わりに蒸留水を添加した。
さらに、陽性コントロールとして、コラーゲン産生促進物質であるアスコルビン酸マグネシウム(NIKKOL VC−PMG、日光ケミカルズ)で線維芽細胞賦活を確認した。
7日後、メタノールで線維芽細胞を固定した。メタノール乾燥後、マイヤーヘマトキシリン液で線維芽細胞の核を染色した。染色した線維芽細胞の核を撮影し、画像処理ソフトImage Jを用いて画像処理を行い、細胞数を計測した。次式(3)よりコントロールに対する相対細胞数を求めた。
式(3):
相対細胞数(%)=試料添加培地での繊維芽細胞数/コントロール添加培地での繊維芽細胞数×100
【0040】
【表2】

【0041】
表2に示したように、ハクシジン、ケツメイシ、カロニン、およびコトウニンの水抽出物に線維芽細胞賦活作用が認められた。また、煮沸抽出物(実施例5〜8)に比べて0〜40℃の常温水抽出物(実施例1〜4)の線維芽細胞賦活効果は、特に顕著であった。
一方、50(v/v)%エタノール抽出物(比較例1〜4)には、線維芽細胞賦活作用がほとんど認められなかった。
【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明のハクシジン、ケツメイシ、カロニン、およびコトウニンから水のみを抽出溶媒として抽出することにより、優れたコラーゲン産生促進効果及び線維芽細胞賦活効果を有する、天然物由来の生薬抽出物を得ることが可能となる。
本発明のコラーゲン産生促進剤及び線維芽細胞賦活剤は、例えば、骨形成不全症、骨粗鬆症、動脈硬化といった疾患の治療剤や予防剤として有用であると考えられる。
本発明のコラーゲン産生促進効果及び線維芽細胞賦活効果に優れた効果を発揮する生薬抽出物は、外用剤、内服剤に制限なく使用でき、例えば、医薬品、医薬部外品、食品、化粧品等の各分野において利用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水のみを抽出溶媒として、ハクシジン、ケツメイシ、カロニン、及びコトウニンから選ばれた1種又は2種以上の生薬から抽出された生薬抽出物。
【請求項2】
水のみを抽出溶媒としたときの抽出温度が、0〜40℃であることを特徴とする請求項1に記載の生薬抽出物。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の生薬抽出物を含有することを特徴とするコラーゲン産生促進剤。
【請求項4】
請求項1又は2に記載の生薬抽出物を含有することを特徴とする維芽細胞賦活剤。

【公開番号】特開2010−235482(P2010−235482A)
【公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−83850(P2009−83850)
【出願日】平成21年3月31日(2009.3.31)
【出願人】(000226161)日華化学株式会社 (208)
【出願人】(507408763)
【Fターム(参考)】