説明

生鮮品の機能保存方法および生鮮品の機能保存装置

【課題】農産、水産、畜産などの生鮮品の生産、流通および販売過程の高品質貯蔵において、清浄性と機能性を維持または増進する機能保存装置を提供する。
【解決手段】生鮮品の高品質保存に好適な振れ幅およびムラが小さな低温高湿度条件を保つ保存庫1と、清浄性や機能性の維持または増進に好適な微粒子状の微酸性電解水を連続または間欠に発生させる微粒子発生器2とを備え、室温から貯蔵状態まで、温度と湿度を連続または段階的に可変制御する制御装置24を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、農産、水産、畜産などの生鮮品の鮮度および品質、特に清浄性および機能性の保存技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
これまで、生鮮品の品質を維持する場合に、-3〜10℃の低温および70〜90%RHの湿度で貯蔵している。
【0003】
また、生鮮品の貯蔵庫内に負イオンとオゾンを含んだ空気を放出することや酸性水または次亜塩素酸水を噴霧することなどが提案されている。(特許文献1、2参照)
【0004】
生鮮品の高品質貯蔵においては、対象生鮮品のはじめの状態に対して終わりの状態をできるだけ同じにすることが求められる。
【0005】
このためには、対象生鮮品に対して、圧力や衝撃等による物理的変化を避けると共に、温度、湿度、ガス環境等による化学的変化をできるだけ少なくする必要がある。
【0006】
また、農産物等の生鮮品の貯蔵は、非破壊、非加工の生物体の保存であり、生物的な特性、特に生物体としての機能性を考慮した保存方法および保存装置が不可欠である。
一般に、多くの秋、冬、春野菜は0℃が貯蔵適温であり、品種によっても異なるが夏野菜のナスやウリ類は7〜8℃、カンキツ類は2〜7℃、熱帯果実類は7〜10℃で貯蔵すると、組織の原形質流動、膜透過性、還元物質の減少、酸化物質の増加、ピッティング、褐変、異味、異臭の発生、追熟不良などの低温障害を起こす。
【0007】
貯蔵対象生鮮品を低温にするほどアレニウス式に従って、呼吸などの生化学反応による糖や酸、脂肪等の消費が抑制され、より長期間の保存が可能になり、理論的には5℃に比べ0℃では貯蔵期間が1.7程度長くなる。
【0008】
一般に、病原微生物の生育と温度の関係は、生育適温より低温側では穏やかな上り勾配の曲線となり、同じ属でも種によって著しく異なる場合が多いが、カビ類は20〜30℃、細菌類はこれより少し高い温度域が生育適温になる。
低温で貯蔵した場合に、微生物の生育速度は減少するが、完全に停止するわけではなく、収穫時に感染していた病原菌が1℃の低温下でも繁殖し、数ヵ月後にはカビが発現してくることが果実類では見られる。
【0009】
また、ナスやピーマンのような低温障害を受けやすい野菜では、5〜10℃以下で長期間貯蔵すると低温障害を受け、微生物の侵入を受けて腐敗しやすくなる。
また、低温高湿貯蔵の場合に壁面冷却式の貯蔵庫が用いられるが、熱移動の主体が放射冷却で行われるため、本質的に貯蔵物の放射冷却面側の温度が低下し、温度ムラが生じやすい問題がある。
【0010】
さらに、野菜や果物等の生鮮品は保存する環境だけでなく、生鮮品自体の水分量をコントロールすることが需要であるが、経験的には貯蔵前の重量の95%以下にならないように水分の蒸発を抑える必要がある。
【0011】
一般には、生鮮品からの蒸発を少なくするには、保存する空気の温度を下げて、湿度を高くして貯蔵物と庫内空気の水蒸気圧差を小さくする。
【0012】
しかし、細菌の最低増殖湿度(水分活性)は90%RH、普通の酵母は88%RH、普通のカビは80%RHであり、湿度を高くすると微生物は生育しやすくなる。
【0013】
一般的には、保存する生鮮品の表面の蒸散抵抗ならびに細菌の増殖およびカビの発生のしやすさにより、生鮮品の種類ごと最適とされるに温度と相対湿度の組み合わせが知られている。
【0014】
細菌の増殖やカビの発生の観点から湿度は90〜80%RH以下に抑えられており、意識的に高湿度を避ける対策がとられることもある。
【0015】
生鮮品を保存する空気の相対湿度を90%以上に保持すると、湿度を考慮してない普通の冷蔵庫で保存する場合に比べて、生鮮品からの蒸散が抑えられ、表面蒸散抵抗の小さな生鮮品でも保湿シートなしで長期間鮮度を保つことが知られている。
【0016】
これまで、貯蔵時の温度制御の振れ幅およびムラすなわち温度分布のバラツキについては言及されてこなかったが、高湿度条件下では±1.0℃以上の温度変化によって貯蔵物表面への結露が発生し、細菌の増殖やカビの発生を促すことが判明した。
【0017】
生鮮農産物の自由水(水分活性)は通常98%RH程度といわれており、高湿度貯蔵においてはこれを超えないようにすることが極めて肝要である。湿度が98%RHを超えると、生鮮品が空気中の水分吸収し、表面が膨潤し、品質を損なうことがある。
【0018】
保存庫内空気の絶対湿度が一定の場合に、温度の変化によって相対湿度も変化するので、95%前後の高湿度を保持する場合は、冷却器の霜取り操作を含めて温度の振れ幅およびムラを小さくすることは品質を維持する上できわめて重要な技術である。
【0019】
生鮮品を保存庫に収蔵した直後の表面に付着した水滴除去のための乾燥、貯蔵品の長期貯蔵のためのキュアリング操作、霜取り時の温湿度変動に伴う貯蔵物表面への結露の防止、貯蔵品を取り出す前の貯蔵物表面への結露防止のための昇温操作などでは、温度または湿度を傾斜または段階的に時間をかけて変化させることが貯蔵品の品質を保つ上で有効な技術である。
【0020】
保存庫内を95%前後の高湿度に保持すると、扉の開閉などにより、貯蔵物表面への結露が発生したとき水滴が乾燥しにくい。このため、低湿度で保存する場合に比べて生鮮品に細菌の増殖やカビの発生がしやすくなるので、扉の注意には注意が必要である。
【0021】
生鮮品の低温高湿度での保存に伴う雑菌の増殖やカビの発生を抑えるために、これまでオゾンやヒノキチオール、アリルイソチオシアネート、二酸化塩素、二酸化硫黄などの殺菌・防カビ効果のある雰囲気に貯蔵することが試みられている。
【0022】
しかしながら、生鮮品に与える影響が少ない50ppb程度の低濃度オゾンや低濃度ヒノキチオールなどは殺菌効果や防かび効果がそれほど期待できないし、濃度の分析や制御も難しい。
【0023】
また、殺菌効果の高い数%程度の高濃度オゾンは貯蔵物の表面を酸化漂白し、高濃度のヒノキチオールなどは貯蔵物に匂いが移る恐れがある。
【0024】
一般に殺菌用として使われている有効塩素濃度が30〜300ppmの次亜塩素酸塩水は強アルカリ性で、金属を腐食し、塩素臭が残る問題点がある。
【0025】
同じ機能水である酸性電解水も強力な殺菌効果を示すが、酸性が強いため、貯蔵物の変質や貯蔵庫内の金属腐食という根本的な問題点がある。
【0026】
【特許文献1】:特開2004−298070
【特許文献2】:特開2005−269967
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0027】
以上のように生鮮品は、その保存環境を、低温状態に置くことで生化学反応を低下させ、さらに高湿度状態に置くことで生鮮品の水分量を保持して、鮮度を保つ必要があるが、
低温にすることによって、低温障害を受け微生物の侵入を受けて腐敗しやすくなり、高湿度にすることで結露が発生しカビや細菌の繁殖を促してしまうという問題があった。
【0028】
本発明は、以上の問題を解消し、生鮮品の生産、流通および販売過程の高品質貯蔵において、清浄性と機能性を維持または増進する方法および装置を提供する
【課題を解決するための手段】
【0029】
農産、水産、畜産などの生鮮品の保存環境を低温高湿度に維持すると共に、微粒子状の微酸性電解水を連続または間欠に発生させた空気に曝すことを特徴とする生鮮品の機能保存方法を提供する。
【0030】
前記生鮮品の保存中は微粒子状の微酸性電解水を連続または間欠に発生させた空気に曝すと共に、前記保存する生鮮品に適合した温度と湿度条件を維持し、
前記生鮮品を取り出すときには微粒子状の微酸性電解水を連続または間欠に発生させた空気に曝すと共に、温度と湿度を連続的または段階的に変化させて外気と同じ温度と湿度に戻してから生鮮品を取り出すことを特徴とする請求項1に記載の生鮮品の機能保存方法を
提供する。
【0031】
前記生鮮品を、保存前の温度および湿度から保存する生鮮品に適合した温度と湿度条件に達するまで、微粒子状の微酸性電解水を連続または間欠に発生させた空気に曝すと共に、連続的または段階的に温度と湿度を変化させて前記保存する生鮮品に適合した温度と湿度条件にし、
前記生鮮品の保存中は微粒子状の微酸性電解水を連続または間欠に発生させた空気に曝すと共に、前記保存する生鮮品に適合した温度と湿度条件を維持し、
前記生鮮品を取り出すときには微粒子状の微酸性電解水を連続または間欠に発生させた空気に曝すと共に、温度と湿度を連続的または段階的に変化させて外気と同じ温度と湿度に戻してから生鮮品を取り出すことを特徴とする請求項1に記載の生鮮品の機能保存方法を
提供する。
【0032】
前記微酸性電解水は、水道水に希塩酸を添加して電解したものであり、水素イオン濃度がpH6前後、有効塩素濃度が12〜30ppm、粒子径が0.3〜30・/SUB>であることを特徴とする請求項1または2に記載の生鮮品の機能保存方法を提供する。
【0033】
前記生鮮品の保存中の温度範囲が-2〜18であり、温度の振れ幅が±0.3からア1.0であり、相対湿度が90%から95%±3%RHであることを特徴とする請求項1から3に記載の生鮮品の機能保存方法を提供する。
【0034】
保存庫と、前記保存庫内に収容する動植物などの生鮮品に適合した温度と湿度条件を維持する空調設備を有する保存庫において、
前記保存庫内の空気中に微粒子状の微酸性電解水を連続または間欠に発生させる微粒子発生器を有し、
前記空調設備と、微粒子発生器を制御する制御部を有することを特徴とする生鮮品の機能保存装置を提供する。
【0035】
前記微酸性電解水が水道水に希塩酸を添加して電解した水素イオン濃度がpH6前後、有効塩素濃度が12〜30ppm、前記微粒子発生器から発生する粒子径が0.3〜30・/SUB>であることを特徴とする請求項5に記載の生鮮品の機能保存装置を提供する。
【0036】
前記保存庫内の温度範囲が-2〜18であり、温度の振れ幅が±0.3からア1.0であり、相対湿度が90%から95%±3%RHであることを特徴とする請求項5または6に記載の生鮮品の機能保存装置提供する。
【0037】
前記生鮮品を、保存前の温度および湿度から保存する生鮮品に適合した温度と湿度条件に達するまで、微粒子状の微酸性電解水を連続または間欠に発生させた空気に曝すと共に、連続的または段階的に温度と湿度を変化させて前記保存する生鮮品に適合した温度と湿度条件にし、
前記生鮮品の保存中は微粒子状の微酸性電解水を連続または間欠に発生させた空気に曝すと共に、前記保存する生鮮品に適合した温度と湿度条件を維持し、
前記生鮮品を取り出すときには微粒子状の微酸性電解水を連続または間欠に発生させた空気に曝すと共に、温度と湿度を連続的または段階的に変化させて外気と同じ温度と湿度に戻してから生鮮品を取り出すように、温度と湿度を制御することを特徴とする請求項5から7に記載の生鮮品の機能保存装置提供する。
【0038】
前記生鮮品の保存中は微粒子状の微酸性電解水を連続または間欠に発生させた空気に曝すと共に、前記保存する生鮮品に適合した温度と湿度条件を維持し、
前記生鮮品を取り出すときには微粒子状の微酸性電解水を連続または間欠に発生させた空気に曝すと共に、温度と湿度を連続的または段階的に変化させて外気と同じ温度と湿度に戻してから生鮮品を取り出すように、温度と湿度を制御することを特徴とする請求項5から7に記載の生鮮品の機能保存装置提供する。
【0039】
前記保存庫内の空気は、天井面から吸気し、空調設備によって所定の温度に調整された後に、微粒子状の微酸性電解水が混合され、庫内側面の二重壁の間を空気が流通し、床面から吹き出す通気構造としたことを特徴とする請求項5から8に記載の生鮮品の機能保存装置提供する。
【0040】
前記保存庫の制御部とインターネットなどの通信回線網に有線または無線で接続する接続部を備えたことを特徴とする請求項5から9に記載の生鮮品の機能保存装置を提供する。
【0041】
鉄道輸送用の貨車やコンテナまたは道路輸送用の自動車などに、前記保存庫を組み込むことを特徴とする請求項5から10に記載の生鮮品の機能保存装置を提供する。
【発明の効果】
【0042】
本発明は、生鮮品を凍結しない温度でしかも低温障害が発生しない温度で保存するので、生鮮品の呼吸や代謝が抑えられ、室温で保存した場合に比べて鮮度や品質がより長く保持できる。
【0043】
また、生鮮品を保存する空気の相対湿度を95%ア3%以内に保持するので、生鮮品からの蒸散が抑えられ、蒸散抵抗の小さな生鮮品でも長期間鮮度を保つことができる。
【0044】
さらに、温度の振れ幅や変化速度を小さくするので、高湿度条件下で貯蔵物表面への結露の発生すなわち表面自由水の発生が防止でき、雑菌の増殖やカビの発生を抑制できる。
【0045】
微酸性電解水を貯蔵対象や目的に応じて噴霧するので殺菌、鮮度保持、エチレン分解の機能を持たせることができる。
【0046】
微酸性電解水は、オゾンやヒノキオールなどに比べて殺菌効果が高くしかも安全である。
【0047】
さらに、実験データから明らかなように、微酸性電解水を噴霧することにより、ビタミンEやβカロテンをふやすことができる。
【0048】
抗酸化活性物質の保存は、人の健康維持のために効果があるだけでなく、花卉や種苗の生理活性の維持のためにも効果がある。
【0049】
本発明の機能保存庫を離島などの僻地の倉庫で用いることによって、これまでより長期間にわたる生鮮品の保存が可能になる。さらに船舶、自動車、コンテナなどの輸送機関に本発明の機能保存庫を設けることによって、輸送中の生鮮品の鮮度、栄養などの機能性の低下を押さえることが可能になる。
【0050】
微酸性電解水は、食品添加物として認められており、微酸性であるため、貯蔵物への影響がほとんどなく、金属腐食も少なく、匂いが残らず、安全性が高く、耐性菌も生じない。
【0051】
微粒子発生器で発生させる微粒子状の微酸性電解水の粒子径は0.5μm以下のものが好適であり、長時間空気中に浮遊し、貯蔵物の隙間にも拡散する。
0.5μmを超える粒子は比較的短時間で落下または貯蔵物の表面に付着する。
【0052】
果実は糖度や酸度が高く、pHが2〜6程度であり、主にカビの発生が問題となり、野菜は糖度や酸度が低く、pHが7前後であり、主に細菌の増殖が問題になる。
したがって、貯蔵物の種類や形態、または殺菌、制菌、鮮度保持、エチレン分解などの目的に応じて、発生させる微粒子状の微酸性電解水の有効塩素濃度、粒子径、発生時間および周期などを選択することでカビの発生や細菌の増殖を抑制することができる。
【0053】
この微粒子状の微酸性電解水を発生させた空気中に生鮮品を置くことにより、効果的に細菌の増殖やカビの発生を防ぐことができるだけでなく、貯蔵物表面の清浄性の向上および抗酸化活性物質の含有量の向上などの機能性の増進ができることが実験で確かめられた。
【0054】
さらに、微粒子状の微酸性電解水を発生させた空気中に生鮮品を曝すことにより、脂溶性のビタミンEやβカロテンの含有量が増進することも実験で確かめられた。
【0055】
また、保存庫に生鮮品を入れるときは、徐々に温度を下げていき、保存庫から出すときには、徐々に常温に戻るように制御することによって、生鮮品が結露することを防止でき、カビや細菌の繁殖を抑制することができる。
さらに、生鮮品を保存庫に入れたときに、乾燥工程を入れることで、生鮮品の表面に付着した水分をのぞくことができ、より効果がある。
【0056】
本発明の機能保存庫を船舶、離島などの僻地で用いることによって、これまでより長期間にわたる生鮮品の保存が可能になることから、輸送のコスト低減ができる。さらに輸送機関に本発明の機能保存庫を設けることによって、輸送中の生鮮品の鮮度、栄養などの機能性の低下を押さえることが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0057】
本発明の実施の形態を図面に基づき説明する。
【0058】
図1から図3は実施形態を示し、図1は機能保存庫の断面図、図2と図3はコマツナの保存データである。
【0059】
図1の機能保存庫は保存庫1と前記保存庫内に収納された微酸性電解水の微粒子発生器2から構成される。
【0060】
図1に示す1は断熱材で囲まれた保存庫本体を表し、11はファンコイルユニットの吸い込み側に取り付けられたレターグリルである。
【0061】
12はファンコイルユニットの軸流ファンで、13は冷却コイル、14はドレーンパンである。
【0062】
15は天井の仕切りパネル、16は側壁の仕切りパネル、17は有孔板である。
【0063】
2は微酸性電解水の微粒子発生器であり、21は微粒子供給パイプ、22はメッシュ付の超音波式微粒子発生器、23は微酸性電解水貯留タンク、24は微粒子発生器および庫内温度を調整する空調機器の制御部である。
【0064】
保存庫内の空気はレターングリル11から吸い込まれ、軸流ファン12で送風加圧され、冷却コイル13で冷却負荷に応じて比例的に冷却され、天井面から吹き出される。
【0065】
吹き出された空気は天井パネルで四方に分配され、側面パネルと側壁の間を流れて床面に達する。
【0066】
床面は有孔板17を用いて、床面より庫内に循環空気が吹き出されるようになっている。
【0067】
吹き出された空気は保存庫内の貯蔵品の隙間を通って、再びレターングリルから吸い込まれる。
【0068】
壁面冷却式貯蔵庫の放射熱伝達とは異なり、貯蔵物との熱交換は対流熱伝達で行われるため、壁面冷却式貯蔵庫のように冷却壁面に面した部分のみが冷えるというような問題は発生しない。また、適度の対流があるので、湿気がこもるようなこともない。
【0069】
また、吸い込み口が天井面にあるので、わずかでも温められて上昇した空気が優先的に冷やされ、温度ムラも小さく出来る。
【0070】
なお、冷却能力の比例制御は冷凍機の回転数制御とホットガスバイパスにより実現している。
【0071】
微酸性電解水の微粒子は供給パイプから貯蔵庫内の空気に供給されるが、粒子が細かいため断熱材壁面や仕切りパネルにほとんど付着することなく庫内を循環する。
【0072】
ただし、粒子の相互衝突や冷却操作によって粒子径が次第に大きくなり、主に冷却コイル13およびその出口付近で水滴となって循環空気中から除去される。
【0073】
したがって、庫内が過飽和になることはなく、比較的高い湿度が容易に実現できる。
微粒子発生器の制御部はタイマーにより微粒子の発生時間や発生周期を変えることが出来る。
【0074】
機能保存庫1は常時電源が投入されて稼働し続ける機器であり、稼動状態の遠隔監視が望ましい。そこで本発明の保存庫1には、インターネットなどの通信回線への接続機能を持たせるため、通信機器を設けた。これは、有線または無線LANおよび無線による電話回線への接続機能を有しており、保存庫を輸送機関に載せて移動中でも通信することができるようになっている。
【0075】
これにより、稼働状況の遠隔監視だけでなく、トレーサビリティのための入出庫品の確認、GAPやHACCPのための保存条件の指導、他所での貯蔵状況および市況予測データなどの情報の収集および配信が容易になり、機能保存庫の設置者、サービス業者、使用者および消費者にユビキタスな利便性を提供する。
【0076】
図2はコマツナを温度、湿度の異なる条件下で2週間保存した時のビタミンEの含量を比較したものである。右の2本が本発明の
【0077】
図3はコマツナを温度、湿度の異なる条件下で2週間保存した時のビタミンAの含量を比較したものである。
【0078】
図2および図3の左側4本のデータは、市販のコマツナを開封状態のビニール袋にいれ、一般の家庭用冷蔵庫(4℃)、橙色LED照射冷蔵庫(LED)、フリーザー(-20℃)、ディープフリーザー(-80℃)および本発明の保存庫で2週間保存後、凍結乾燥し、ビタミンEおよびビタミンA(β−カロテン)の含量を定量したものである。
【0079】
図2および図3の右側の2本が本発明の保存方法および装置で実験したデータであり、庫内の空気については、微粒子状の水道水のみを含む場合と、微粒子状の微酸性電解水を含む場合の二つサンプルについて測定した。
【0080】
このときの微酸性電解水は粒子径0.5μm以下、有効塩素濃度は約25ppm、水素イオン濃度はpH約6.0とした。
【0081】
図2および図3共に、購入直後のコマツナを直ちに凍結乾燥、定量したときの含量を100%としたときの相対値として表示した。
【0082】
図4は、生鮮品を保存庫に出し入れするときの温度と湿度制御状態を表すグラフで、点線が生鮮品の温度変化を示しており、このグラフのように保存庫に生鮮品を入れるときは、徐々に温度を下げていき、また、保存庫から出すときには、徐々に常温に戻るように制御する。これによって、生鮮品が結露することを防止することによって、カビや細菌の繁殖を抑制する。 またこのときグラフでは乾燥段階を入れているが、生鮮品の状態によっては乾燥段階を入れずに常温から保存段階に制御することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0083】
【図1】本発明の機能性保存庫の正面断面図である。
【図2】小松菜の保存実験におけるビタミンEの増加を示すデータである。
【図3】小松菜の保存実験におけるビタミンAの増加を示すデータである。
【図4】温度と湿度の制御状況と生鮮品の温度変化を示すグラフである。
【符号の説明】
【0084】
1 保存庫
2 微粒子発生器
3 メッシュネット
11 レターングリル
12 軸流ファン
13 冷却コイル
14 ドレーンパン
15 天板
16 側壁仕切りパネル
17 有孔板
21 供給パイプ
22 メッシュ付超音波式発生器
23 機能性電解水貯留タンク
24 制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
農産、水産、畜産などの生鮮品の保存環境を低温高湿度に維持すると共に、微粒子状の微酸性電解水を連続または間欠に発生させた空気に曝すことを特徴とする生鮮品の機能保存方法。
【請求項2】
前記生鮮品の保存中は微粒子状の微酸性電解水を連続または間欠に発生させた空気に曝すと共に、前記保存する生鮮品に適合した温度と湿度条件を維持し、
前記生鮮品を取り出すときには微粒子状の微酸性電解水を連続または間欠に発生させた空気に曝すと共に、温度と湿度を連続的または段階的に変化させて外気と同じ温度と湿度に戻してから生鮮品を取り出すことを特徴とする請求項1に記載の生鮮品の機能保存方法。
【請求項3】
前記生鮮品を、保存前の温度および湿度から保存する生鮮品に適合した温度と湿度条件に達するまで、微粒子状の微酸性電解水を連続または間欠に発生させた空気に曝すと共に、連続的または段階的に温度と湿度を変化させて前記保存する生鮮品に適合した温度と湿度条件にし、
前記生鮮品の保存中は微粒子状の微酸性電解水を連続または間欠に発生させた空気に曝すと共に、前記保存する生鮮品に適合した温度と湿度条件を維持し、
前記生鮮品を取り出すときには微粒子状の微酸性電解水を連続または間欠に発生させた空気に曝すと共に、温度と湿度を連続的または段階的に変化させて外気と同じ温度と湿度に戻してから生鮮品を取り出すことを特徴とする請求項1に記載の生鮮品の機能保存方法。
【請求項4】
前記微酸性電解水は、水道水に希塩酸を添加して電解したものであり、水素イオン濃度がpH6前後、有効塩素濃度が12〜30ppm、粒子径が0.3〜30・/SUB>であることを特徴とする請求項1または3に記載の生鮮品の機能保存方法。
【請求項5】
前記生鮮品の保存中の温度範囲が-2〜18であり、温度の振れ幅が±0.3からア1.0であり、相対湿度が90%から95%±3%RHであることを特徴とする請求項1から4に記載の生鮮品の機能保存方法。
【請求項6】
保存庫と、前記保存庫内に収容する農産、水産、畜産などの生鮮品に適合した温度と湿度条件を維持する空調設備を有する保存庫において、
前記保存庫内の空気中に微粒子状の微酸性電解水を連続または間欠に発生させる微粒子発生器を有し、
前記空調設備と、微粒子発生器を制御する制御部を有することを特徴とする生鮮品の機能保存装置。
【請求項7】
前記微酸性電解水が水道水に希塩酸を添加して電解した水素イオン濃度がpH6前後、有効塩素濃度が12〜30ppm、前記微粒子発生器から発生する粒子径が0.3〜30・/SUB>であることを特徴とする請求項6に記載の生鮮品の機能保存装置。
【請求項8】
前記保存庫内の温度範囲が-2〜18であり、温度の振れ幅が±0.3からア1.0であり、相対湿度が90%から95%±3%RHであることを特徴とする請求項6または7に記載の生鮮品の機能保存装置。
【請求項9】
前記生鮮品の保存中は微粒子状の微酸性電解水を連続または間欠に発生させた空気に曝すと共に、前記保存する生鮮品に適合した温度と湿度条件を維持し、
前記生鮮品を取り出すときには微粒子状の微酸性電解水を連続または間欠に発生させた空気に曝すと共に、温度と湿度を連続的または段階的に変化させて外気と同じ温度と湿度に戻してから生鮮品を取り出すように、温度と湿度を制御することを特徴とする請求項6から8に記載の生鮮品の機能保存装置。
【請求項10】
前記生鮮品を、保存前の温度および湿度から保存する生鮮品に適合した温度と湿度条件に達するまで、微粒子状の微酸性電解水を連続または間欠に発生させた空気に曝すと共に、連続的または段階的に温度と湿度を変化させて前記保存する生鮮品に適合した温度と湿度条件にし、
前記生鮮品の保存中は微粒子状の微酸性電解水を連続または間欠に発生させた空気に曝すと共に、前記保存する生鮮品に適合した温度と湿度条件を維持し、
前記生鮮品を取り出すときには微粒子状の微酸性電解水を連続または間欠に発生させた空気に曝すと共に、温度と湿度を連続的または段階的に変化させて外気と同じ温度と湿度に戻してから生鮮品を取り出すように、温度と湿度を制御することを特徴とする請求項6から9に記載の生鮮品の機能保存装置。
【請求項11】
前記保存庫内の空気は、天井面から吸気し、空調設備によって所定の温度に調整された後に、微粒子状の微酸性電解水が混合され、庫内側面の二重壁の間を空気が流通し、床面から吹き出す通気構造としたことを特徴とする請求項6から10に記載の生鮮品の機能保存装置。
【請求項12】
前記保存庫の制御部とインターネットなどの通信回線網に有線または無線で接続する接続部を備えたことを特徴とする請求項6から11に記載の生鮮品の機能保存装置。
【請求項13】
鉄道輸送用の貨車やコンテナまたは道路輸送用の自動車などに、前記保存庫を組み込むことを特徴とする請求項6から12に記載の生鮮品の機能保存装置





【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−228817(P2007−228817A)
【公開日】平成19年9月13日(2007.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−51376(P2006−51376)
【出願日】平成18年2月27日(2006.2.27)
【出願人】(390010054)小糸工業株式会社 (136)
【Fターム(参考)】