説明

用紙供給装置、用紙束プリンタおよび用紙束印刷システム

【課題】用紙束が持ち上げられることなく、用紙束から用紙を容易に引き剥がすことができる用紙供給装置、用紙束プリンタおよび用紙束印刷システムを提供する。
【解決手段】一方の端部を剥離可能に粘着した多数枚の用紙から成る用紙束を用紙トレイ20に収容した状態で、用紙束の自由端側に上側から接触した送りローラの回転により、最上位の用紙から1枚ずつ捲り上げて送るようにした用紙供給装置において、送りローラの接触位置と用紙束の粘着位置との略中間位置に配設され、用紙束の側面に摩擦接触する側面摩擦部材42を、備えたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、用紙トレイに収容した用紙束から、最上位の用紙を捲り上げて送る用紙供給装置、用紙束プリンタおよび用紙束印刷システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の用紙供給装置として、付箋紙束の最上位から付箋紙を捲り上げ、捲り上げた付箋紙を送りながら印刷する付箋紙プリンタが知られている(特許文献1参照)。この付箋紙プリンタは、付箋紙束をセットする付箋紙ホルダを有しており、付箋紙ホルダは、セットされた付箋紙束から付箋紙を引き剥がす際に、付箋紙束が持ち上がらないよう、付箋紙束の自由端部および固定端部を位置規制する一対の位置規制部(爪片)が設けられている。
【特許文献1】特開2003−212367号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、一対の爪片により付箋紙束の自由端部および固定端部を押さえ込み、この状態で付箋紙を捲り上げようとすると、固定端部側の爪片は、付箋紙の粘着部分を押さえ込んでしまうため、付箋紙が引き剥がしにくくなってしまう。これを解消すべく、固定端部側の爪片を取り去ることが考えられるが、そうすると、付箋紙の引き剥がしに際し、付箋紙束の固定端部が持ち上げられ、付箋紙の引き剥がしが良好に行なわれなくなってしまう問題がある。
【0004】
本発明は、用紙束が持ち上げられることなく、用紙束から用紙を容易に引き剥がすことができる用紙供給装置、用紙束プリンタおよび用紙束印刷システムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の用紙供給装置は、一方の端部を剥離可能に粘着した多数枚の用紙から成る用紙束を用紙トレイに収容した状態で、用紙束の自由端側に上側から接触した送りローラの回転により、最上位の用紙から1枚ずつ捲り上げて送るようにした用紙供給装置において、用紙束の側面に摩擦接触する摩擦部材を、備えたことを特徴とする。
【0006】
この構成によれば、用紙束の側面には、摩擦部材が接触しているため、用紙束から用紙を引き剥がすと、摩擦力により用紙束は持ち上がることなく、その場に留まる。このため、用紙束の固定端部を、爪片により押さえ込む必要がないため、用紙束から用紙を容易に引き剥がすことが可能となる。なお、摩擦部材は、用紙束の両側面にそれぞれ設けられていることが、好ましい。
【0007】
この場合、摩擦部材は、送りローラの接触位置と用紙束の粘着位置との略中間位置に配設されていることが、好ましい。
【0008】
この構成によれば、摩擦部材は、用紙束の側面に摩擦力を付与することで、捲り上げにより撓もうとする用紙の剛性を高めることができる。このため、最上位の用紙を捲り上げようとすると、最上位の用紙は、高められた剛性により、その下位の用紙を押さえ込むことで、下位の用紙を捲り上げにくい(撓みにくい)状態とすることができるため、用紙の2枚捲りを防止することができる。
【0009】
また、本発明の他の用紙供給装置は、一方の端部を剥離可能に粘着した多数枚の用紙から成る用紙束を用紙トレイに収容した状態で、用紙束の自由端側に上側から接触した送りローラの回転により、最上位の用紙から1枚ずつ捲り上げて送るようにした用紙供給装置において、用紙束の粘着側の端面に摩擦接触する摩擦部材を、備えたことを特徴とする。
【0010】
この構成によれば、用紙束の粘着側の端面には、摩擦部材が接触しているため、用紙束から用紙を引き剥がすと、摩擦力により用紙束は持ち上がることなく、その場に留まる。このため、用紙束の固定端部を、爪片により押さえ込む必要がないため、用紙束から用紙を容易に引き剥がすことが可能となる。
【0011】
この場合、摩擦部材は、用紙トレイに取り付けられていることが、好ましい。
【0012】
この構成によれば、摩擦部材を用紙トレイと一体とすることができるため、用紙トレイに用紙束をセットするだけで、用紙束に対し摩擦部材による摩擦力を付与することができる。
【0013】
この場合、摩擦部材は、少なくとも摩擦接触する側の面がゴムで構成されていることが、好ましい。
【0014】
この構成によれば、安価な材料で、用紙束に対し適切に摩擦力を付与することができる。
【0015】
本発明の用紙束プリンタは、上記の用紙供給装置と、捲り上げて送られてゆく用紙に印刷を行う印刷手段と、を備えたことを特徴とする。
【0016】
この構成によれば、用紙束が持ち上げられることなく、用紙束から用紙を容易に引き剥がすことができるため、用紙に対しスムーズな印刷を行うことができる。
【0017】
本発明の用紙束印刷システムは、上記の用紙束プリンタと、インターフェースを介して用紙束プリンタに接続されてコンピュータと、から成ることを特徴とする。
【0018】
この構成によれば、コンピュータを利用して用紙束プリンタを制御することができ、また、用紙束から用紙を容易に引き剥がすことができるため、用紙に対しスムーズな印刷を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、添付の図面を参照して、本実施形態に係る用紙供給装置を付箋紙プリンタに適用した場合ついて説明する。この付箋紙プリンタは、付箋紙印刷システム(用紙束印刷システム)に組み込まれており、付箋紙印刷システムは、付箋紙プリンタに接続されたパソコンからの制御により、付箋紙プリンタの装置ケース内部にセットされた付箋紙束(用紙束)から、1枚ずつ付箋紙を引き剥がしながら印刷を行って、装置外部に印刷済みの付箋紙を排出するものである。
【0020】
図1に示すように、付箋紙印刷システム1は、付箋紙束Hがセットされる付箋紙プリンタ2と、付箋紙プリンタ2にUSB等のケーブル4で接続され、付箋紙H1に印刷するための印刷データを作成・編集すると共に、付箋紙プリンタ2の各種駆動を制御するパソコン3とから構成されている。
【0021】
パソコン3は、パソコン本体5と、パソコン本体5に接続され、データを入力するキーボード6およびマウス7と、入力結果等を表示するディスプレイ8とを有しており、パソコン本体5には、付箋紙プリンタ2に関するアプリケーションソフト(プログラム)やデバイスドライバ等のデータを記憶したCD−ROM9が着脱自在にセットされている。そして、キーボード6等から各種検出信号、各種指令、各種データ等が入力されると、パソコン3は、CD−ROM9内のプログラムに従って、各種データを処理し、付箋紙プリンタ2を制御するようになっている。
【0022】
なお、当然ではあるが、付箋紙プリンタ2に印刷データの作成・編集機能や各部の制御機能やディスプレイを設け、付箋紙プリンタ2を単体として用いて、付箋紙H1に対する印刷を行うようにしてもよい。
【0023】
図2に示すように、付箋紙プリンタ2は、外殻を成す装置ケース15と、装置ケース15内部に格納され、装置ケース15内部にセットした付箋紙束Hから付箋紙H1を引き剥がしながら印刷を行う印刷部アッセンブリ12(図3参照)と、を備えている。
【0024】
付箋紙束Hは、その最下位に位置する台紙Hdと、裏面の基端部(固定端部)Hkを部分糊付けし、台紙Hdに積層して貼着した長方形状の複数枚の付箋紙H1と、からなっている(図3参照)。付箋紙H1は、付箋紙束Hから1枚ずつ剥離され、剥離後に、この固定端部Hkの糊付け部分を介して、手帳等に貼着される。
【0025】
装置ケース15は、全体として小型に形成されており、装置ケース15の下部前面には、後述する付箋紙トレイ(用紙トレイ)20を装置ケース15内部に前方から引出し式で導入するためのトレイ導入開口17が形成されている。装置ケース15の上部前面中央には、印刷済み付箋紙H1を装置ケース15外部に送り出すための排出口16と、排出口16を境に装置ケース15内部から装置ケース15外部へ延在し、印刷済み付箋紙H1を受け留める受け部14と、が形成されている。また、装置ケース15の上面には、リボンカートリッジCの着脱やメンテナンスのための開閉蓋18が取り付けられている。
【0026】
図3に示すように、印刷部アッセンブリ12は、付箋紙束Hをセットする付箋紙トレイ20と、セットした付箋紙束Hから付箋紙H1を捲り上げ、これを引き剥がして排出するピックアップローラ(送りローラ)25と、ピックアップローラ25により送られてゆく付箋紙H1に印刷を行うサーマルヘッド26と、ピックアップローラ25を、付箋紙H1を捲り上げる捲上げ位置23とサーマルヘッド26に接触する印刷位置24との間で移動させるローラアーム27と、インクリボンRを収容したリボンカートリッジCと、を有している。つまり、ピックアップローラ25は、サーマルヘッド26に対峙するプラテンローラとしての役割も兼ねている。
【0027】
印刷部アッセンブリ12は、付箋紙トレイ20にセットされた付箋紙束Hに対し、ピックアップローラ25を捲上げ位置23に臨ませ、付箋紙トレイ20にセットした付箋紙束Hの最上位の付箋紙H1を捲り上げる。すると、捲り上げた付箋紙H1は、ピックアップローラ25に乗り上げた状態となり、この状態でローラアーム27によりピックアップローラ25を印刷位置24に移動させる。印刷位置24に移動したピックアップローラ25は、捲り上げた付箋紙H1と装着したリボンカートリッジCから繰り出されるインクリボンRとを、サーマルヘッド26と共に挟み込み、ピックアップローラ25によりこれを排出口16に向かって送ると共に、送られてゆく付箋紙H1にサーマルヘッド26によりインクリボンRのインクを熱転写して印刷を行う。この後、ピックアップローラ25は、ローラアーム27により印刷済みの付箋紙H1を受け部14に受け渡しつつ捲上げ位置23に戻る。
【0028】
ここで、図4および図5を参照して、付箋紙トレイ20について詳細に説明する。付箋紙トレイ20は、上面を開放すると共にボックス状に形成されたトレイケース40と、トレイケース40に収容され、付箋紙束Hを水平にセットするためのセットステージ41と、トレイケース40の内側側面にそれぞれ付設された一対の側面摩擦部材42(摩擦部材)と、トレイケース40の内側の図示右側に付設された端面摩擦部材44(摩擦部材)と、で構成され、セットステージ41とトレイケース40の底面との間には、セットステージ41を上方に付勢するXリンク43が介設されている。
【0029】
トレイケース40は、セットステージ41をスライド自在に案内する四周枠状のケース本体50と、ケース本体50の上端部に設けられ、付箋紙束Hの先端部(自由端部)Hjを押さえるよう内向きに突設された爪状の位置規制部51と、ケース本体50の前面部に設けられ、装置ケース15のトレイ導入開口17を介して引き出し式で着脱自在に装着するための取手部52と、で一体に形成されている。このため、付箋紙束Hの交換や装着を行う際には、付箋紙トレイ20ごと取り出して、付箋紙束Hをセットする。
【0030】
Xリンク43は、その先端部に付箋紙束Hの幅方向に亘ってそれぞれ掛け渡された第1押上片57および第2押上片58をセットステージ41に接触させ、コイルバネ59により、セットステージ41を上方に向けて水平に平行移動させている。
【0031】
セットステージ41は、下面を開放した薄型ボックス状に形成されており、セットステージ41の下面の図示左右両側には、第1押上片57および第2押上片58が接触している。これにより、セットステージ41は、Xリンク43により上方に付勢されつつ、トレイケース40によりガイドされて上下スライド自在に移動する。また、セットステージ41には、トレイケース40内部に付設された一対の側面摩擦部材42および端面摩擦部材44がセットステージ41に接触しないよう、各摩擦部材42、44に対応する位置に、3つの摩擦開口溝部65が形成されている。
【0032】
各側面摩擦部材42は、長方形の板状に形成されると共にトレイケース40の内側側面の略中央に摩擦面を内側にして設けられており、摩擦面は摩擦ゴムで構成されている。そして、一対の側面摩擦部材42は、捲り上げにより撓もうとする付箋紙H1に対し摩擦力を付与すべく、付箋紙束Hを両側面から挟み込むように配設されている。
【0033】
端面摩擦部材44は、長方形の板状に形成されると共にトレイケース40の固定端面の略中央に摩擦面を内側にして設けられており、摩擦面は摩擦ゴムで構成されている。そして、端面摩擦部材44は、セットされた付箋紙束Hの固定端面に対し摩擦力を付与すべく、付箋紙束Hの固定端面に接触するよう配設されている。
【0034】
そして、付箋紙トレイ20に付箋紙束Hをセットすると、セットされた付箋紙束Hの両側面および固定端面には、一対の側面摩擦部材42および端面摩擦部材44が接触する。この状態において、ピックアップローラ25により、付箋紙束Hの最上位の付箋紙H1を捲り上げようとすると、最上位の付箋紙H1は、一対の側面摩擦部材42により摩擦力が働き、付箋紙H1が撓みにくくなる。すなわち、最上位の付箋紙H1の剛性が高まった状態となる。このため、最上位の付箋紙H1の下位の付箋紙H1は、最上位の付箋紙H1に押さえ込まれ、下位の付箋紙H1は撓みにくくなる。これにより、下位の付箋紙H1は、捲り上げにくい状態とすることができるため、ピックアップローラ25は、付箋紙束Hの最上位の付箋紙H1のみを確実に捲り上げることができ、付箋紙H1の2枚捲りを防止することができる。
【0035】
捲り上げた付箋紙H1は、ピックアップローラ25に乗り上げられ、この状態でローラアーム27により印刷位置24に移動させる。印刷位置24に移動した付箋紙H1を、ピックアップローラ25により引き剥がしてゆくと、付箋紙束Hの固定端部は、引き剥がされてゆく付箋紙H1により上方に持ち上げられようとするが、一対の側面摩擦部材42および端面摩擦部材44による摩擦力により、付箋紙束Hの固定端部Hkは持ち上がることなく付箋紙トレイ20内に留まる。
【0036】
以上の構成によれば、付箋紙束Hからの付箋紙H1の引き剥がしに際し、一対の側面摩擦部材42および端面摩擦部材44による摩擦力により、付箋紙束Hの固定端部Hkは持ち上がることがないため、付箋紙束Hの固定端部Hkを、爪片により押さえ込む必要が無い。これにより、付箋紙束Hから付箋紙H1を容易に引き剥がすことができ、付箋紙H1に対しスムーズな印刷を行うことができる。なお、本実施形態では、一対の側面摩擦部材42および端面摩擦部材44を配設したが、少なくともどちらか一方を配設すればよい。また、各側面摩擦部材42自身および端面摩擦部材44自身をバネ性を有するゴム張りのもので構成してもよいし、あるいは、各摩擦部材42、44の背面側に弱いバネを設けるようにしてもよい。これにより、セットする付箋紙束Hのサイズが誤差により少々異なったとしても、この誤差を許容することができる。但し、これらの場合には、各側面摩擦部材42および端面摩擦部材44の上端部を外側に向けて折り曲げ、付箋紙H1がセットし易いようガイド部を形成しておくことが、好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本実施形態に係る付箋紙印刷システムの模式図である。
【図2】本実施形態に係る付箋紙プリンタの外観斜視図である。
【図3】付箋紙プリンタの断面模式図である。
【図4】付箋紙トレイの外観斜視図である。
【図5】付箋紙トレイの断面図である。
【符号の説明】
【0038】
1…付箋紙印刷システム 2…付箋紙プリンタ 20…付箋紙トレイ 25…ピックアップローラ 42…側面摩擦部材 44…端面摩擦部材 H…付箋紙束 H1…付箋紙

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方の端部を剥離可能に粘着した多数枚の用紙から成る用紙束を用紙トレイに収容した状態で、前記用紙束の自由端側に上側から接触した送りローラの回転により、最上位の前記用紙から1枚ずつ捲り上げて送るようにした用紙供給装置において、
前記用紙束の側面に摩擦接触する摩擦部材を、備えたことを特徴とする用紙供給装置。
【請求項2】
前記摩擦部材は、前記送りローラの接触位置と前記用紙束の粘着位置との略中間位置に配設されていることを特徴とする請求項1に記載の用紙供給装置。
【請求項3】
一方の端部を剥離可能に粘着した多数枚の用紙から成る用紙束を用紙トレイに収容した状態で、前記用紙束の自由端側に上側から接触した送りローラの回転により、最上位の前記用紙から1枚ずつ捲り上げて送るようにした用紙供給装置において、
前記用紙束の粘着側の端面に摩擦接触する摩擦部材を、備えたことを特徴とする用紙供給装置。
【請求項4】
前記摩擦部材は、前記用紙トレイに取り付けられていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか一項に記載の用紙供給装置。
【請求項5】
前記摩擦部材は、少なくとも摩擦接触する側の面がゴムで構成されていることを特徴とする請求項4に記載の用紙供給装置。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれか一項に記載の用紙供給装置と、
捲り上げて送られる前記用紙に印刷を行う印刷手段と、を備えたことを特徴とする用紙束プリンタ。
【請求項7】
請求項6に記載の用紙束プリンタと、
インターフェースを介して前記用紙束プリンタに接続されてコンピュータと、から成ることを特徴とする用紙束印刷システム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2008−94520(P2008−94520A)
【公開日】平成20年4月24日(2008.4.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−275749(P2006−275749)
【出願日】平成18年10月6日(2006.10.6)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】