説明

用紙処理装置

【課題】位置決めのため用紙に当接する当接部材の位置をユーザが迅速に調整可能な用紙処理装置を提供する。
【解決手段】製本システム10において、プレ整合機構50は、整合処理を実行すべく、搬入された用紙束4aの縁部に当接するストッパ56およびジョガー58有する。本整合機構52は、整合処理を実行すべく、搬入された用紙束4aの縁部に当接する一対の第1当接部材70および一対の第2当接部材72有する。ストッパ56、ジョガー58、一対の第1当接部材70および一対の第2当接部材72は、用紙サイズに応じた位置に移動後、ユーザによってさらにその位置を微調整可能に設けられる。当接部材制御部は、プレ整合機構50および本整合機構52のうち、微調整の実行が選択された機構において微調整のため用紙束4aを停止させ、微調整の実行が選択されなかった機構において微調整のための用紙束4aの停止を回避する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は用紙処理装置に関し、特に、搬入された用紙の縁部に当接して当該用紙の位置を調整する当接部材をそれぞれが有する複数の用紙位置調整機構が設けられた用紙処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、複数の棚から給紙して重ね合わせ、中綴じ折り処理を施すことにより冊子を作成する製本システムが知られている(例えば、特許文献1参照)。冊子を適切に作成するためには、折り処理や綴じ処理などに際して、処理対象となる用紙束を正確に位置決めする必要がある。一般的にこのような製本システムでは、用紙束の縁部に当接部材を当接させて用紙を位置決めする。冊子の作成に用いられる用紙のサイズは様々であることから、これらの当接部材はアクチュエータの作動により用紙サイズに応じた位置に移動するよう設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−312162号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、このように位置決め部材を用紙サイズに応じて移動させた場合においても、作成された冊子において、用紙の揃いが不十分であったり、折り目が付けられるべきラインと実際に付けられた折り目との間にずれが生じる場合がある。このため、ユーザによって位置決め部材の位置を適切な位置に再調整できる技術の開発が求められている。
【0005】
本発明はこのような問題に鑑みてなされたものであり、その目的は、位置決めのため用紙に当接する当接部材の位置をユーザが迅速に調整可能な用紙処理装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明のある態様の用紙処理装置は、用紙束または冊子を作成するための所定処理を用紙に実行すべく、搬入された用紙の縁部に当接して当該用紙の位置を調整する当接部材をそれぞれが有する複数の用紙位置調整機構と、用紙束または冊子の作成に用いる用紙の用紙サイズを取得する用紙サイズ取得部と、取得された用紙サイズに応じた位置に当接部材を移動させる当接部材制御部と、を備える。当接部材は、用紙サイズに応じた位置に移動後、ユーザによってさらにその位置を調整可能に設けられ、当接部材制御部は、複数の用紙位置調整機構の各々について調整を実行するか否かの選択結果を取得し、当接部材の位置を調整するための調整モードの開始要求を取得した場合、調整の実行が選択された用紙位置調整機構では、当接部材の位置を調整できるよう用紙を停止させ、その用紙位置調整機構に対する調整の終了指示を取得したときに停止させていた用紙を搬出し、調整の実行が非選択の用紙位置調整機構では、調整のための用紙の停止を回避する。
【0007】
この態様によれば、まず当接部材の位置をユーザが調節できるため、用紙の位置をより適切な位置に調整することができる。また、調整の実行が非選択の用紙位置調整機構では調整のための用紙の停止が回避されるため、例えばすでに調整が完了した用紙位置調整機構で用紙の停止を回避でき、装置全体において当接部材の位置を迅速に調整できる。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、位置決めのため用紙に当接する当接部材の位置をユーザが迅速に調整可能な用紙処理装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本実施形態に係る製本システムの斜視図である。
【図2】丁合装置の構成を示す図である。
【図3】方向変換装置、折り装置、中綴じ装置、小口断裁装置、および天地断裁装置の各々の構成を模式的に表した上面図である。
【図4】(a)および(b)は、図3の視点Pから送り出しユニットを見た図である。
【図5】製本システムに設けられる電子制御部の構成を示す図である。
【図6】電子制御部の機能ブロック図である。
【図7】(a)〜(f)は、方向変換装置における用紙束の整合処理の各手順を示す図である。
【図8】微調整回避の設定がされた場合の微調整モードでの各用紙位置調整機構における処理の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態(以下、実施形態という)について詳細に説明する。
【0011】
図1は、本実施形態に係る製本システム10の斜視図である。製本システム10は、丁合装置12、方向変換装置14、折り装置16、中綴じ装置18、小口断裁装置20、天地断裁装置22、ベルトスタッカ24、および統合制御装置26を備える。製本システム10は、すでに画像が記録された用紙に、丁合、折り、綴じ、断裁などの後処理を施す後処理装置として機能する。
【0012】
本実施形態では、丁合装置12は3つ設けられている。丁合装置12は、それぞれ用紙収容部である複数の棚を有する。丁合装置12は、複数の棚の各々から用紙を給紙しながら用紙を重ね合わせる。3つの丁合装置12は直列に配置されており、上流側に配置された丁合装置12によって作成された用紙束に下流側に配置された丁合装置12によって作成された用紙束を重ね合わせることが可能となっている。以下、3つの丁合装置12の各々を、下流側から第1丁合装置12A、第2丁合装置12B、および第3丁合装置12Cという。
【0013】
方向変換装置14は、用紙搬送手段として機能し、長手方向に搬送された用紙を、搬送方向を90度変換して短手方向に搬送し、折り装置16に搬出する。このような方向変換装置の構成は公知であるため説明を省略する。以下、用紙搬送方向を単に「搬送方向」といい、搬送方向と垂直且つ水平な方向を「幅方向」という。
【0014】
折り装置16は、丁合装置12によって重ね合わされた用紙を折りたたむ。具体的には、折り装置16は、鞍(図示せず)、搬送機構(図示せず)、および一対の折りローラ(図示せず)を有する。鞍は、頂部が上方に位置する傘状の断面を有する。一対の折りローラは、鞍の頂部周辺において、軸が鉛直方向を向き且つ幅方向に並ぶよう配置される。搬送機構は、幅方向中央が頂部を通過するよう鞍の上において用紙または用紙束を搬送することにより、用紙または用紙束の幅方向の略中央を逆V字状に折り曲げる。一対の折りローラは、逆V字状に折り曲げられたその用紙または用紙束の幅方向の略中央を当該幅方向に挟持しながら搬送することで、折り目が搬送方向と平行となるよう折りたたむ。このような折り装置16の構成は公知であるため説明は省略する。丁合装置12で用紙が重ね合わされ、用紙束が搬送されてきた場合、折り装置16は、用紙が重なった状態を維持したままその用紙束を折りたたむ。
【0015】
折り装置16は、折りたたみ且つ重ね合わせて作成した1セットの用紙束を中綴じ装置18に搬出する。中綴じ装置18は、折り装置16で折りたたまれた用紙を、製本すべき1冊の冊子を構成する1セットの用紙束となるまで積載して重ね合わせる。したがって中綴じ装置18は、折りたたまれた用紙を積載して1セットの用紙束を作成する用紙積載機構としても機能する。また、製本システム10はその全体が、用紙を重ね合わせて用紙束を作成する丁合装置として機能する。中綴じ装置18は、作成された用紙束を折り目で綴じる綴じ処理を実行し、中綴じ折り冊子を作成する。以下、中綴じ折り冊子を単に「冊子」という。
【0016】
小口断裁装置20は、搬入された冊子の小口を断裁し、天地断裁装置22に搬出する。天地断裁装置22は、搬入された冊子の天地を断裁し、ベルトスタッカ24に搬出する。ベルトスタッカ24は、作成された冊子を順次蓄積する。小口断裁装置20、天地断裁装置22、およびベルトスタッカ24の構成は公知であるため、これらに関する説明は省略する。
【0017】
統合制御装置26は、PC(Personal Computer)28、ディスプレイ30、および入力装置32を有する。PC28は、各種演算処理を実行するCPU、各種制御プログラムを格納するROM、データ格納やプログラム実行のためのワークエリアとして利用されるRAMを有する。入力装置32は、キーボードまたはマウスを含む。なお、ディスプレイ30としてタッチパネル式ディスプレイが採用されてもよい。この場合、ディスプレイ30が入力装置としても機能する。
【0018】
図2は、丁合装置12の構成を示す図である。丁合装置12の各々は、棚40、給紙機構42、および垂直搬送機構44を有する。棚40は、1つの丁合装置12に複数設けられている。本実施形態では、棚40の数は10個とされている。なお、棚40が10個以外の複数であってもよい。
【0019】
複数の棚40は、略水平の状態で鉛直方向に並設される。なお、棚40は傾斜していてもよく、また棚40の並設方向は鉛直方向に限られない。給紙機構42は、複数の棚40の各々に対応して設けられ、対応する棚40から1枚ずつ用紙を送り出す給紙を実行する。本実施形態では、給紙機構42として、エアの吸引力を利用して最上位の用紙をそれより下位の用紙から分離して送り出す、いわゆるサクション式給紙機構が採用されている。このようなサクション式給紙機構は公知であるため説明を省略する。なお、給紙機構42はサクション式のものに限られず、例えば分離パッドや分離ローラなどを用いて最上位の用紙をそれより下位の用紙から分離して送り出す、いわゆるフリクション式の給紙機構が採用されてもよい。給紙機構42によって送り出された用紙は、垂直搬送機構44によって鉛直下方に搬送されながら重ね合わされる。
【0020】
丁合装置12は、水平搬送機構46を有する。第1丁合装置12Aと第2丁合装置12Bとの間、および第2丁合装置12Bと第3丁合装置12Cとの間には、それぞれ中継搬送装置34が配置される。中継搬送装置34は搬送機構47を有し、上流の丁合装置12で作成された用紙束を下流の丁合装置12に搬送する。搬送機構47にはベルト搬送機構が採用されているが、例えばローラ搬送機構などが採用されてもよい。中継搬送装置34を介して上流の丁合装置12から搬送された用紙束は、水平搬送機構46によって丁合装置12の内部で搬送される。水平搬送機構46の下流側端部は垂直搬送機構44の下流側端部に合流しており、この合流地点にて、上流側から搬送された用紙束と、その丁合装置12で作成された用紙束とが重ね合わされる。
【0021】
第1丁合装置12Aの下流側には中継搬送装置36が設けられている。中継搬送装置36は搬送機構48を有し、第1丁合装置12Aから搬出された用紙束を搬送して方向変換装置14に搬出する。搬送機構48にはベルト搬送機構が採用されているが、例えばローラ搬送機構などが採用されてもよい。
【0022】
図3は、方向変換装置14、折り装置16、中綴じ装置18、小口断裁装置20、および天地断裁装置22の各々の構成を模式的に表した上面図である。折り装置16は、折り目を付けるべき仮想的なラインである折りラインで用紙束4aに折り目を付けられるよう、搬送される用紙束4aに折り目を付ける。このとき折り装置16は、搬送方向と平行且つ対向する2つの縁部の略中央で用紙束に折り目をつける。方向変換装置14には、第1丁合装置12Aから折りラインと垂直、すなわち長手方向に用紙束4aが搬入される。方向変換装置14は、折り装置16で折り目を付けるため、折りラインと垂直に搬入された用紙束4aを、折り目と平行、すなわち短手方向に搬送されるよう搬送方向を変換する。このとき方向変換装置14は、対向する折り目と平行且つ対向する2つの縁部を揃える。したがって方向変換装置14は、整合機構としても機能する。以下、長手方向端部の2つの縁部を「第1対向縁部」といい、短手方向端部の2つの縁部を「第2対向縁部」という。
【0023】
方向変換装置14は、プレ整合機構50および本整合機構52を有する。プレ整合機構50および本整合機構52の各々は、搬入された用紙束の位置を調整する用紙位置調整機構として機能する。プレ整合機構50は、用紙束4aの第1対向縁部を揃える。本整合機構52は、プレ整合機構50から搬入された用紙束4aの第1対向縁部を再び揃える。
【0024】
第1丁合装置12Aから方向変換装置14に搬入された用紙束4aは、搬送機構54および送り出しユニット140によってプレ整合機構50に搬出される。搬送機構54は搬送ローラなどを含み、用紙束のうち折りたたまれるべき折りラインと垂直に用紙束を搬送する。送り出しユニット140の構成については後述する。
【0025】
プレ整合機構50は、用紙束4aの第1対向縁部に当接させるためのストッパ56およびジョガー58と、載置部材59とを有する。載置部材59は、送り出しユニット140から搬入された用紙束が水平に載置されるよう設けられている。ストッパ56およびジョガー58は、用紙束の第1対向縁部を揃える整合処理を用紙に実行すべく、搬入された用紙の第1対向縁部に当接して当該用紙の位置を調整する当接部材として機能する。具体的には、ストッパ56は、載置部材59の上面から突出したまま、搬入される用紙束の折りラインと垂直に移動可能に設けられている。プレ整合機構50は、アクチュエータとしてステッピングモータ(図示せず)を有しており、ストッパ56は、このステッピングモータが作動することにより移動する。
【0026】
ジョガー58は、回動することで載置部材59の上面より上方に進退可能に設けられている。プレ整合機構50は、アクチュエータとしてソレノイド(図示せず)を有している。ジョガー58は、ソレノイドがオンにされたときに載置部材59の上方に進出し、オフされたときに載置部材59の下方に退避する。
【0027】
ジョガー58は、搬入される用紙束の折りラインと垂直に上記ソレノイドとともに移動可能に設けられている。プレ整合機構50は、ジョガー58を移動させるためのステッピングモータ(図示せず)を有しており、ジョガー58は、このステッピングモータが作動することにより移動する。
【0028】
プレ整合機構50は、ストッパ56と進出位置のジョガー58との間の距離が、搬入される用紙束の折りラインと垂直な方向の長さ、すなわち長手方向長さとなるようストッパ56およびジョガー58を移動させる。プレ整合機構50は、用紙束が搬入されるときはジョガー58を下方に退避させ、用紙束の搬入後にジョガー58を上方に進出させる。次にプレ整合機構50は、ストッパ56との間隔が長手方向長さと略同一となるまでジョガー58を折りラインと垂直に移動させることで、用紙束の両端部にストッパ56とジョガー58とを当接させる。プレ整合機構50は、さらにジョガー58を用紙束の縁部から離間させて再び当接させるジョグ動作を1回以上実行して用紙束の両端部を揃える。ユーザは、コントロールパネルを用いて、ジョグ動作の実行回数を設定できる。搬送機構60は、ジョグ動作終了後、用紙束4aを第1対向縁部と平行に本整合機構52に向けて搬送する。
【0029】
本整合機構52は、搬入された用紙束の位置を調整する用紙位置調整機構としても機能する。本整合機構52には、プレ整合機構50によって第1対向縁部が整合された用紙束4aが第1対向縁部と平行に搬入される。本整合機構52は、プレ整合機構50によって長手方向の位置決めがされ且つ第1対向縁部が整合された用紙束4aに対し、さらに長手方向の位置決めをし且つ第1対向縁部を整合させる。これにより、より適切に用紙束4aの位置決めおよび整合をすることができる。
【0030】
本整合機構52は、第1サブ整合機構66および第2サブ整合機構68を有する。第1サブ整合機構66は、用紙束4aの第1対向縁部を揃える。第2サブ整合機構68は、第1サブ整合機構66から搬入された用紙束4aの第1対向縁部を再び揃える。
【0031】
第1サブ整合機構66は、一対の第1当接部材70を有する。一対の第1当接部材70は、搬送方向と平行に延在するよう互いに間隔を開けて配置される。一対の第1当接部材70は、下流側の折り機構80において用紙束に折りラインにて適切に折り目をつけることができるよう、搬入された用紙束の第1対向縁部に当接して第1対向縁部を揃えるとともに用紙束の位置を調整する。
【0032】
第2サブ整合機構68は、一対の第2当接部材72を有する。一対の第2当接部材72は、搬送方向と平行に延在するよう互いに間隔を開けて配置される。一対の第2当接部材72は、一対の第1当接部材70の下流側において、搬送方向と平行に延在するよう互いに間隔を開けて配置される。一対の第2当接部材72もまた、下流側の折り機構80において用紙束に折りラインにて適切に折り目をつけることができるよう、搬入された用紙束の第1対向縁部に当接して第1対向縁部を整揃えるとともに用紙束の位置を調整する。一対の第2当接部材72は、一対の第1当接部材70によって長手方向の位置決めがされ且つ第1対向縁部が整合された用紙束4aに対し、さらに長手方向の位置決めをし且つ第1対向縁部を整合させる。このように複数段階で用紙束4aを整合することにより、より適切に用紙束4aの位置決めおよび整合をすることができる。一対の第1当接部材70および一対の第2当接部材72は、それぞれの間隔が用紙サイズの長手方向長さとなるよう、それぞれのステッピングモータが作動することで移動する。
【0033】
一対の当接部材の間隔が用紙束4aの長手方向長さと略同一のままでは次の用紙束4aを受け入れることは困難である。これに対し、当接部材を上流側の第1当接部材70と下流側の第2当接部材72とに分割することによって、一対の第2当接部材72に2つの縁部を当接させながら用紙束4aを折り装置16へ送り出す動作と並行して、一対の第1当接部材70を開いて次の用紙束4aを受け入れることができる。したがって、当接部材を上流側と下流側とで分割しない場合に比べ、用紙束4aの間隔を狭めることができ、処理速度を向上させることができる。
【0034】
方向変換装置14は、一対の当接部材の少なくとも一部に2つの縁部を当接させた状態で用紙束を折り機構80に送り込む。具体的には、第1サブ整合機構66は、一対の第1当接部材70の少なくとも一部に2つの縁部を当接させた状態で用紙束を第2サブ整合機構68に送り込む。第2サブ整合機構68は、一対の第2当接部材72の少なくとも一部に2つの縁部を当接させた状態で用紙束を折り機構80に送り込む。これにより、用紙束の2つの縁部を揃えながら折り機構に用紙束を送り込むことができ、折り目をつけるべき折りラインで用紙束に適切に折り目を付けることができる。
【0035】
折り装置16は、折り機構80を有する。折り機構80は、搬送機構82、筋付けローラ83、および一対の折りローラ84を有する。搬送機構82は、第2サブ整合機構68から搬入された用紙束4aを第1対向縁部と平行に搬送する。搬送機構82は、上述のように鞍の上で用紙束4aを搬送しながら用紙束4aを逆V字状に湾曲させる。
【0036】
筋付けローラ83は、湾曲した用紙束の折りラインに折り筋を付ける。筋付けローラ83は、用紙搬送路を挟んで配置される上ローラ(図示せず)と下ローラ(図示せず)を含む、下ローラには外周に凸条が形成されている。上ローラには外周に溝が形成されている。下ローラは、上ローラの溝に凸条が入り込むように配置されている。この下ローラと上ローラとの間に用紙束4aが搬入されることで、上に凸となる折り筋が用紙束4aに付けられる。この折筋がついた状態で一対の折りローラ84に搬入されることによって、折り筋に沿って折り目が形成される。筋付けローラ83の構成は公知であるため、筋付けローラ83についてのこれ以上の詳細な説明は省略する。
【0037】
一対の折りローラ84は、軸方向が鉛直方向を向き、且つ長手方向に並ぶよう配置される。一対の折りローラ84は、逆V状に湾曲した用紙束4aの中央を挟み込むことで用紙束4aの中央に折り目を付ける。こうして用紙束4aは山折り用紙束4bとなる。山折り用紙束4bは、第1対向縁部と平行に中綴じ装置18に搬出される。
【0038】
中綴じ装置18は、用紙蓄積部90、綴じ機構100、および折り畳み機構110を有する。用紙蓄積部90は、山折り用紙束4bが積載される載置部材(図示せず)と、積載された山折り用紙束4bの短手方向を整合させる整合機構92とを有する。
【0039】
載置部材は、折り装置16から搬入された山折り用紙束4bが山折り状態のまま載置されるよう設けられている。整合機構92は、用紙束4aの第2対向縁部に当接させるためのストッパ94およびジョガー96を有する。ストッパ94およびジョガー96は、用紙束の第2対向縁部を揃える整合処理を用紙に実行すべく、搬入された用紙の第2対向縁部に当接して当該用紙の位置を調整する当接部材として機能する。
【0040】
具体的には、ストッパ94は、ジョガー96の下流側に配置されている。ジョガー96は、載置部材の上面から突出したまま搬送方向と平行に移動可能に設けられている。 ストッパ94は、載置部材の上面より上方に進退可能に設けられている。整合機構92は、アクチュエータとしてソレノイド(図示せず)を有している。ストッパ94は、ソレノイドがオンにされたときに載置部材の上方に進出し、オフされたときに載置部材の下方に退避する。
【0041】
ジョガー96は、搬入される用紙束の折りラインと平行に移動可能に設けられている。整合機構92は、ジョガー96を移動させるためのステッピングモータ(図示せず)を有しており、ジョガー96は、このステッピングモータが作動することにより移動する。
【0042】
整合機構92は、ストッパ94と進出位置のジョガー96との間の距離が、搬入される用紙束の折りラインと平行な方向の長さ、すなわち短手方向長さとなるようジョガー96を移動させる。整合機構92は、用紙束が用紙蓄積部90に搬入されるときにストッパ94を上方に進出させ、用紙蓄積部90に積載された山折り用紙束4bに整合処理を施すときはストッパ94を進出させた状態を維持する。整合機構92は、ストッパ94との間隔が短手方向長さと略同一となるまでジョガー96を折りラインと平行に移動させることで、山折り用紙束4bの第2対向縁部にストッパ94とジョガー96とを当接させる。整合機構92は、用紙蓄積部90に山折り用紙束4bが積載されるたびに、ジョガー96を用紙束の縁部から離間させて再び当接させるジョグ動作を1回実行して用紙束の両端部を揃える。
【0043】
整合機構92は、綴じ処理を施す山折り用紙束4bが用紙蓄積部90に積載され整合された後、ストッパ94を退避位置に退避させる。搬送機構98は、整合された山折り用紙束4bを綴じ機構100に送り出す。
【0044】
綴じ機構100は、ステッチャ102および位置決め機構104を有する。ステッチャ102の構成は公知であるため説明を省略する。位置決め機構104は、プッシャ105および当接部材106を有する。
【0045】
当接部材106は、用紙サイズの短手方向長さに応じた位置に綴じ処理が適切に施されるよう、ステッピングモータが作動することで移動され、停止している。整合機構92で整合された山折り用紙束4bは、ストッパ94の上流側から下流側へ移動するプッシャ105に押され、当接部材106に当接する位置まで搬送される。プッシャ105は、山折り用紙束4bの下方で周回するベルト(図示せず)に取り付けられており、このベルトを周回させることでプッシャ105を移動させ、山折り用紙束4bを搬送する。山折り用紙束4bが当接部材106に当接するタイミングでプッシャ105が停止する。こうしてプッシャ105と当接部材106は、ステッチャ102によって適切な位置で山折り用紙束4bに綴じ処理が施されるよう、山折り用紙束4bの第2対向縁部にそれぞれ当接して山折り用紙束4bの位置を決める。
【0046】
当接部材106は、ソレノイドがオンにされたときに載置部材の上方に進出し、オフされたときに載置部材の下方に退避する。位置決め機構104は、綴じ機構100に山折り用紙束4bが搬入されるときは当接部材106を上方に進出させておく。山折り用紙束4bがステッチャ102によって綴じ処理されると、位置決め機構104は、当接部材106を下方に退避させる。次にプッシャ105は、さらに下流側に移動して山折り用紙束4bを折り畳み機構110に搬送する。
【0047】
折り畳み機構110は、位置決め機構108を有する。位置決め機構108は、プッシャ105および当接部材107を有する。当接部材107は、ステッピングモータが作動することで用紙サイズの短手方向長さに応じた位置に移動され停止している。プッシャ105は、山折り用紙束4bが当接部材107に当接するタイミングで停止する。こうしてプッシャ105と当接部材107は、山折り用紙束4bの第2対向縁部にそれぞれ当接して山折り用紙束4bの位置を決める。折り畳み機構110は、こうして位置決めされた山折り用紙束4bを折り畳んで冊子4cとする。搬送機構112は、背を先頭に天地と平行に冊子4cを搬送し、小口断裁装置20に搬出する。
【0048】
小口断裁装置20は、搬送機構114および小口断裁機構116を有する。小口断裁機構116は、ストッパ118を有する。ストッパ118は、冊子4cの搬送方向と垂直に延在するよう設けられている。ストッパ118は、冊子4cが載置される載置部材の上面まで下降可能に設けられている。小口断裁機構116は、アクチュエータとしてソレノイド(図示せず)を有している。ストッパ118は、ソレノイドがオンにされたときに載置部材の上面に下降して進出し、オフされたときに載置部材の上方に退避する。
【0049】
小口断裁機構116は、冊子4cが搬入されるときにストッパ118を載置部材の上面まで下降させておく。搬送機構114は、このストッパ118に冊子4cの背が当接するタイミングで冊子4cの搬送を停止させる。次に小口断裁機構116は、把持部材(図示せず)で冊子4cを把持して、断裁刃(図示せず)により断裁位置L1で冊子4cの小口を断裁する。この断裁位置L1は、ユーザが統合制御装置26に入力することで設定できる。小口断裁後、小口断裁機構116は、ストッパ118を上方に退避させ、搬送機構114は、冊子4cを天地断裁装置22に搬出する。
【0050】
天地断裁装置22は、搬送機構128および天地断裁機構130を有する。天地断裁機構130は、位置決め機構132およびストッパ134を有する。位置決め機構132は、一対の当接部材136を有する。
【0051】
ストッパ134は、冊子4cの搬送方向と垂直に延在するよう設けられている。ストッパ134は、冊子4cが載置される載置部材の上面より上方に進退可能に設けられている。天地断裁機構130は、アクチュエータとしてソレノイド(図示せず)を有している。ストッパ134は、ソレノイドがオンにされたときに載置部材の上方に進出し、オフされたときに載置部材の下方に退避する。
【0052】
一対の当接部材136の各々は、ストッパ134よりも上流側に配置される。一対の当接部材136の各々は、冊子4cの天地に当接すべく、搬入される冊子4cの天地と平行に延在するよう互いに間隔を開けて配置される。一対の当接部材136の各々は、ステッピングモータ(図示せず)の作動によって、冊子4cの天地に近接および離間可能に設けられている。
【0053】
天地断裁機構130は、冊子4cが搬入されるときにストッパ134を上方に進出させ、一対の当接部材136を、冊子4cの幅、すなわち用紙束4aの短手方向長さよりも広い間隔があくよう配置しておく。搬送機構128は、このストッパ134に冊子4cの背が当接するタイミングで冊子4cの搬送を停止させる。次に天地断裁機構130は、取得した用紙サイズを用いて互いの間隔が冊子4cの幅と略同一となるよう一対の当接部材136を移動させ、さらに把持部材(図示せず)で冊子4cを把持する。天地断裁機構130は、断裁刃(図示せず)により断裁位置L1で冊子4cの小口を断裁する。この断裁位置L2は、ユーザが統合制御装置26に入力することで設定できる。小口断裁後、天地断裁機構130は、ストッパ134を下方に退避させ、搬送機構128は、冊子4cをベルトスタッカ24に搬出する。
【0054】
ベルトスタッカ24に搬入された冊子4cは、ベルトスタッカ24のベルト上に載置される。ベルトスタッカ24は、冊子4cが搬入されると、ベルトを所定量下流側に駆動する。これにより、冊子4cはベルトスタッカ24のベルト上において一部が重なり合ったうろこ状に積載される。
【0055】
なお、綴じ機構100には、山折り用紙束4bに打ち込まれた綴じ針を検知する綴じ針センサが設けられている。このような綴じ針センサは公知であるため説明は省略する。綴じ針センサの検知結果は、綴じ制御部156に出力される。綴じ針が検知されなかった場合、綴じ制御部156は、綴じ不良と判定し、ベルトスタッカ24を制御するベルトスタッカ制御部(図示せず)に判定結果を送信する。
【0056】
ベルトスタッカ制御部は、綴じ不良の判定結果を受信した場合、その綴じ不良の冊子4cがベルトスタッカ24に搬入される前、または搬入された後におけるベルト駆動量を、他の冊子4cが搬入されるときと異ならせる。本実施形態では、ベルトスタッカ制御部は、綴じ不良の判定結果を受信した場合、その綴じ不良の冊子4cがベルトスタッカ24に搬入された後におけるベルト駆動量を、他の冊子4cが搬入されるときよりも長くする。これによりユーザは、ベルトスタッカ24に積載された冊子4cのうち、他の冊子との間隔が広い冊子4cが綴じ不良の冊子4cと迅速に把握することができる。また、綴じ不良の冊子4cを排出するリジェクト機構などを設ける必要がなくなるため、装置の大型を回避できる。
【0057】
なお、ベルトスタッカ24は、モータなどのアクチュエータの作動により、搬入される冊子を搬入方向と異なる方向、例えば天または地方向に押すことで、冊子4cの位置をずらす冊子移動機構が設けられていてもよい。ベルトスタッカ制御部は、綴じ不良の判定結果を受信した場合、その綴じ不良の冊子4cがベルトスタッカ24に搬入されたときに、冊子移動機構によってその冊子4cの位置をずらしてもよい。これによってもユーザは、位置がずれている冊子4cが綴じ不良の冊子4cと迅速に把握することができる。
【0058】
なお、ベルトスタッカ制御部は、排出されてくる冊子を一定部数ごとに冊子移動機構により区分ける区分け設定が行われている場合に綴じ不良の冊子4cが発生したときは、上述のようにその冊子4cのベルトスタッカ24への搬入前または搬入後におけるベルト駆動量を通常と異ならせてもよい。ベルトスタッカ制御部は、区分け設定が行われていない場合は、綴じ不良の冊子4cが発生したとき、冊子移動機構でその冊子4cをずらして区分けてもよい。
【0059】
なお、ベルトスタッカ24に、警告灯またはスピーカなどの報知装置が設けられていてもよい。ベルトスタッカ制御部は、綴じ不良の判定結果を受信した場合、その綴じ不良の冊子4cがベルトスタッカ24に搬入されたときに、警告灯を点灯させてもよく、スピーカから警告音を出力してもよい。
【0060】
さらに、綴じ針センサで綴じ針が検知されなかった場合、綴じ制御部156は、綴じ不良と判定し、小口断裁装置20を制御する小口断裁制御部158に判定結果を送信し、小口断裁制御部158は、綴じ不良の判定結果を受信した場合、その綴じ不良の冊子4cに限って小口断裁を行わないように制御してもよい。この態様によれば、綴じ不良の冊子4cのみ、背から小口までの寸法が他の冊子4cよりも大きくなるので、ユーザは出来上がった冊子を揃えたときに、はみ出した冊子4cを綴じ不良冊子4cとして取り除けばよい。なお、小口断裁を行わない処理を行っているときに、綴じ不良の判定結果を受信した場合に、その綴じ不良冊子4cに限って小口断裁を行ってもよい。そうすることによっても、綴じ不良の冊子4cは、背から小口までの寸法が他の冊子4cよりも小さくなるので、区別することができる。
【0061】
また同様に、綴じ針センサで綴じ針が検知されなかった場合、綴じ制御部156は天地断裁装置22を制御する天地断裁制御部160に判定結果を送信し、天地断裁制御部160は、その綴じ不良の冊子4cに限って天地断裁を行わないように制御してもよい。この態様によれば、綴じ不良の冊子4cのみ、天地方向寸法が他の冊子よりも大きくなるので、ユーザは出来上がった冊子を揃えたときに、天地方向にはみ出した冊子4cを綴じ不良冊子4cとして取り除けばよい。また、天地断裁を行わない処理を行っているときに、綴じ不良の判定結果を受信した場合に、その綴じ不良冊子4cに限って天地断裁を行ってもよい。
【0062】
上記のように製本システム10では、用紙サイズを取得すると、用紙束の位置決めのための当接部材の位置が用紙サイズに合わせて自動的に調整される。一方、例えば試験的に冊子を作成したときに、作成された冊子において、用紙の揃いが不十分であったり、折り目が付けられるべきラインと実際に付けられた折り目との間にずれが生じる場合がある。また、例えば「A3」など規格の用紙サイズを用いた場合においても、実際の用紙サイズが誤差を持つ場合や、湿度により用紙サイズに変化が生じる場合がある。このような場合は、規格通りの用紙サイズに合わせて当接部材を移動させた後においても、実際の用紙サイズに合わせて微調整が必要となる。さらに、紙質によっては、当接部材の間隔を用紙長さよりも狭くして用紙束の縁部を押圧した方が冊子が適切に作成できる場合もある。
【0063】
このため、製本システム10には、当接部材の位置を微調整するための微調整モードが設けられている。製本システム10では、微調整モードでスタートボタンが押され、各装置において微調整モードの開始要求を取得した場合、当接部材の位置を微調整できるよう用紙を一時的に停止させる。具体的には、微調整モードでスタートボタンが押された場合、方向変換装置14のプレ整合機構50および本整合機構52、中綴じ装置18の整合機構92および位置決め機構104、天地断裁装置22の位置決め機構132、において用紙束が一時的に停止される。ユーザは、これら用紙位置調整機構の各々において用紙束が一時停止しているときにコントロールパネルの調整ボタンを1回押下することで、ステッピングモータを所定パルス分微小に移動させることができる。このためユーザは、この調整ボタンを所望の回数押下することで、各々の用紙位置調整機構における当接部材の位置を微調整できる。コントロールパネルに微調整終了の入力がされた場合、用紙位置調整機構は、その入力を微調整の終了指示として取得し、停止させていた用紙束を搬出し、次の工程に進める。
【0064】
プレ整合機構50では、ジョガー58は、搬入された用紙束4aを位置決めするよう用紙サイズに応じた位置に移動した後、ユーザによっての長手方向の位置を微調整可能に設けられている。本実施形態ではストッパ56の長手方向の位置は微調整不能に設けられているが、ストッパ56の長手方向の位置も微調整可能に設けられていてもよい。ユーザは、方向変換装置14に設けられたコントロールパネルの調整ボタンを押下することで、ステッピングモータを押下回数に応じたパルス数作動させてジョガー58を長手方向に移動させてその位置を微調整できる。
【0065】
本整合機構52では、一対の第1当接部材70および一対の第2当接部材72は、搬入された用紙束4aを位置決めするよう用紙サイズに応じた位置に移動後、ユーザによって長手方向の位置を同時に微調整可能に設けられている。ユーザは、方向変換装置14に設けられたコントロールパネルの長手方向位置調整ボタンを押下することで、ステッピングモータを押下回数に応じたパルス数作動させて一対の第1当接部材70および一対の第2当接部材72を同時に長手同方向に同じ距離だけ移動させて各位置を微調整できる。また、ユーザは、コントロールパネルの間隔調整ボタンを押下することで、ステッピングモータを押下回数に応じたパルス数作動させて一対の第1当接部材70の間隔すなわち一対の第2当接部材72の間隔を微調整することができる。なお、一対の第1当接部材70および一対の第2当接部材72は、それぞれ間隔および長手方向の位置を個別に調整できるよう設けられていてもよい。
【0066】
整合機構92では、ジョガー96は、分割して搬入された1冊分の山折り用紙束4bを揃えるよう用紙サイズに応じた位置に移動した後、ユーザによっての短手方向の位置を微調整可能に設けられている。ユーザは、中綴じ装置18に設けられたコントロールパネルにおける整合機構92の調整ボタンを押下することで、ステッピングモータを押下回数に応じたパルス数作動させ、ジョガー96を短手方向に移動させてその短手方向位置を微調整できる。
【0067】
位置決め機構104では、当接部材106は、搬入された山折り用紙束4bを綴じ処理に適した位置に位置決めするよう用紙束4aの短手方向長さに応じた位置に移動後、ユーザによって短手方向の位置を微調整可能に設けられている。ユーザは、中綴じ装置18に設けられたコントロールパネルにおける当接部材106の間隔調整ボタンを押下することで、ステッピングモータを押下回数に応じたパルス数作動させて当接部材106を短手方向に移動させ、その短手方向の位置を微調整できる。この結果、当接部材106とプッシャ105との間隔を山折り用紙束4bのサイズに合わせて微調整できる。また、ユーザは中綴じ装置18に設けられたコントロールパネルにおける当接部材106の短手方向位置調整ボタンを押下することで、ステッピングモータを押下回数に応じたパルス数作動させて、当接部材106とプッシャ105を、山折り用紙束4bの短手方向に沿って同時に同方向に移動させることができる。この結果、ステッチャ102に対する山折り用紙束4bの短手方向位置を微調整できる。
【0068】
位置決め機構108では、当接部材107は、搬入された山折り用紙束4bを折り畳み機構110における折り畳み処理に適した位置に位置決めするよう用紙束4aの短手方向長さに応じた位置に移動後、ユーザによって短手方向の位置を微調整可能に設けられている。ユーザは、中綴じ装置18に設けられたコントロールパネルにおける位置決め機構108の調整ボタンを押下することで、ステッピングモータを押下回数に応じたパルス数作動させてプッシャ105および当接部材107を短手方向に移動させてその短手方向の位置を微調整できる。
【0069】
位置決め機構132では、一対の当接部材136は、搬入された冊子4cを位置決めするよう用紙サイズに応じた位置に移動後、ユーザによって冊子4cの幅方向の位置を微調整可能に設けられている。ユーザは、天地断裁装置22に設けられたコントロールパネルの調整ボタンを押下することで、ステッピングモータを押下回数に応じたパルス数作動させて当接部材136の冊子4cの幅方向位置を微調整できる。また、ユーザは、コントロールパネルの調整ボタンを押下することで、ステッピングモータを押下回数に応じたパルス数作動させて一対の当接部材136の間隔を微調整することができる。
【0070】
図4(a)および図4(b)は、図3の視点Pから送り出しユニット140を見た図である。本実施形態では、ストッパ56に用紙束4aの先端を当接させ、後端をジョガー58で揃える。上述の通りジョガー58はジョグ動作のため頻繁に移動する。一方、載置部材59上に適切に用紙を搬出させるためには、用紙束4aを載置部材59上に送り出す送り出し機構は、用紙サイズに応じてジョガー58がどの位置に移動してもジョガー58とともに移動させる必要がある。ここで、送り出し機構を一対のローラで構成した場合、ローラを駆動する駆動機構もジョガー58とともに移動させる必要がある。しかし、駆動機構はモータや伝達機構などを含むため重量が大きく、ジョガー58を移動させる移動機構の複雑化や大型化に繋がり得る。
【0071】
このため、送り出しユニット140は、ベルト搬送機構142およびローラ144を有する。ベルト搬送機構142は、用紙束4aが搬送される搬送経路の上方において、搬送方向に延在するよう設けられている。ローラ144は、搬送経路の下方に設けられ、用紙束4aの非搬送時ではベルト搬送機構142のベルト下面に当接している。送り出しユニット140は、ベルト搬送機構142とローラ144とで用紙束4aを挟持した状態でベルト搬送機構142を駆動することで、用紙束4aを載置部材59上に搬出する。ローラ144は駆動機構には接続されておらず、ベルト搬送機構142に従動する。
【0072】
ローラ144は、ジョガー58とともに長手方向に移動するよう、ジョガー58を支持する部材に支持されている。図4(a)は、長手方向長さが長い用紙束4aがプレ整合機構50に搬入された状態を示しており、図4(b)は、長手方向長さが短い用紙束4aがプレ整合機構50に搬入された状態を示している。ストッパ56およびジョガー58は、用紙束4aの長手方向長さに応じてこのように移動するが、ローラ144は、このときジョガー58と共に移動する。ベルト搬送機構142は、ローラ144の移動可能な範囲で移動した場合においてもローラ144と用紙束4aが挟持できる範囲にわたってベルト下面が配置されるよう設けられている。このため、ジョガー58とともにローラ144が移動した場合においても、用紙束4aを適切に載置部材59上に搬出することができる。このようにローラ144を従動ローラとしてジョガー58と共に移動可能に構成することにより、ジョガー58とともに搬送のための駆動機構を移動させることを回避できる。このため、装置の複雑化、大型化を回避できる。
【0073】
本実施形態では、ローラ144の上流側には、さらに別のローラ(図示せず)がベルト搬送機構142のベルト下面に当接している。この別のローラは、ローラ144が所定位置よりも上流側に移動すると、ベルト下面から離間してローラ144との干渉を回避する。
【0074】
図5は、製本システム10に設けられる電子制御部148の構成を示す図である。製本システム10に含まれる第1丁合装置12A、第2丁合装置12B、第3丁合装置12C、方向変換装置14、折り装置16、中綴じ装置18、小口断裁装置20および天地断裁装置22には、それぞれサブシステム制御基板によって構成されるサブシステム制御部である、丁合制御部150A、丁合制御部150B、丁合制御部150C、整合制御部152、折り制御部154、綴じ制御部156、小口断裁制御部158、および天地断裁制御部160が設けられている。これらサブシステム制御部の各々はCPU、RAM、およびROMを有し、対応する装置に設けられたアクチュエータの作動を制御する。
【0075】
PC28はインターフェースボックス162とUSB(Universal Serial Bus)を介して接続されている。インターフェースボックス162と各サブシステム制御部とは、LAN(Local Area Network)ケーブルを介して接続されている。PC28は、各サブシステム制御部にスタート信号、停止信号、その他各装置を作動させるための調整信号を送信する。各サブシステム制御部は、受信したこれらの信号にしたがって対応する装置のアクチュエータに制御信号を出力し、その作動を制御する。電子制御部148は、PC28およびこれら各サブシステム制御部を含む。
【0076】
図6は、電子制御部148の機能ブロック図である。図6において電子制御部148は、CPU、ROM、RAMなどのハードウェア、およびソフトウェアの連携によって実現される機能ブロックが描かれている。したがって、これらの機能ブロックはハードウェアおよびソフトウェアの組合せによって様々な形で実現することができる。
【0077】
統合制御装置26は、処理内容取得部200およびスタート指示取得部202を有する。処理内容取得部200は、入力装置32を用いてユーザに入力された用紙サイズ、冊子の作成数、使用する棚、断裁の有無および断裁位置を取得する。したがって処理内容取得部200は、用紙サイズ取得部として機能する。用紙サイズには、冊子の作成に用いられる用紙の長手方向長さおよび短手方向長さが含まれる。
【0078】
なお、丁合装置12の棚40の各々に、用紙サイズを検知する用紙サイズセンサが設けられていてもよい。丁合制御部150は、この用紙サイズセンサの検知結果を取得して用紙サイズを判定し、判定結果を統合制御装置26に出力してもよい。これによっても処理内容取得部200は、用紙サイズを取得することができる。
【0079】
統合制御装置26は、ディスプレイ30にスタートボタンを表示させる。ユーザは、そのスタートボタンをクリックすることにより製本処理の開始を指示することができる。スタート指示取得部202は、スタートボタンがクリックされたときに、製本処理の開始要求を取得する。統合制御装置26は、ディスプレイ30に微調整モードでのスタートボタンも表示する。ユーザは、そのスタートボタンをクリックすることにより微調整モードでの製本処理の開始を指示することができる。スタート指示取得部202は、スタートボタンがクリックされたときに、微調整モードでの製本処理の開始要求を取得する。
【0080】
整合制御部152は、用紙サイズ取得部204、微調整選択取得部206、当接部材制御部208、および搬送制御部210を有する。用紙サイズ取得部204は、統合制御装置26から用紙サイズを取得する。ユーザは、方向変換装置14に設けられたコントロールパネルに入力することで、プレ整合機構50において微調整を実行するか否かを選択することができる。微調整選択取得部206は、微調整を実行するか否かの選択結果を取得する。当接部材制御部208は、各々のステッピングモータの作動を制御することで、ストッパ56、ジョガー58、一対の第1当接部材70、一対の第2当接部材72の各々の移動を制御する。搬送制御部210は、搬送機構54および搬送機構60による用紙束4aの搬送を制御する。
【0081】
当接部材制御部208は、ストッパ56とジョガー58との間隔が、取得した用紙サイズの長手方向長さよりも所定量長く余裕を持たせた状態で、ストッパ56とジョガー58とを停止させて待機させる。用紙束4aの搬入が完了すると、当接部材制御部208は、ストッパ56とジョガー58との間隔が、取得した用紙サイズの長手方向長さとなるよう、ストッパ56とジョガー58とを移動させる。当接部材制御部208は、ジョガー58のジョグ動作も制御する。また、当接部材制御部208は、一対の第1当接部材70の間隔が、取得した用紙サイズの長手方向長さよりも所定量長くなるよう一対の第1当接部材70を移動させ待機させる。また、当接部材制御部208は、一対の第2当接部材72の間隔が、取得した用紙サイズの長手方向長さとなるよう一対の第2当接部材72を移動させ待機させる。
【0082】
綴じ制御部156は、用紙サイズ取得部220、微調整選択取得部222、当接部材制御部224、ステッチャ制御部226、および搬送制御部228を有する。用紙サイズ取得部220は、統合制御装置26から用紙サイズを取得する。ユーザは、中綴じ装置18に設けられたコントロールパネルに入力することで、整合機構92において微調整を実行するか否かを選択することができる。微調整選択取得部222は、微調整を実行するか否かの選択結果を取得する。当接部材制御部224は、各々のステッピングモータの作動を制御することで、ストッパ94、ジョガー96、プッシャ105、当接部材106、当接部材107の各々の移動を制御する。ステッチャ制御部226は、ステッチャ102による綴じ処理を制御する。搬送制御部228は搬送機構98および搬送機構112による山折り用紙束4bまたは冊子4cの搬送を制御する。
【0083】
当接部材制御部224は、ストッパ94とジョガー96との間隔が、取得した用紙サイズの短手方向長さよりも所定量長くなるよう、ジョガー96を移動させ、ジョグ動作時にストッパ94との間隔が取得した用紙サイズの短手方向長さとなるようジョガー96を移動させる。また、当接部材制御部224は、取得した用紙サイズの短手方向長さに応じた位置に綴じ処理が適切に施されるよう当接部材106を移動させ、また、取得した用紙サイズの短手方向長さに応じて、折り畳み機構110における折り畳み処理に適切な位置に位置するよう当接部材107を移動させる。
【0084】
天地断裁制御部160は、用紙サイズ取得部230、微調整選択取得部232、当接部材制御部234、断裁刃制御部236、および搬送制御部238を有する。用紙サイズ取得部230は、統合制御装置26から用紙サイズを取得する。ユーザは、天地断裁装置22に設けられたコントロールパネルに入力することで、位置決め機構132において微調整を実行するか否かを選択することができる。微調整選択取得部232は、微調整を実行するか否かの選択結果を取得する。当接部材制御部234は、各々のステッピングモータの作動を制御することで、一対の当接部材136の各々の移動を制御する。断裁刃制御部236は、断裁刃を駆動するアクチュエータの作動を制御することで、冊子4cの断裁処理を制御する。搬送制御部238は、搬送機構128による冊子4cの搬送を制御する。当接部材制御部234は、互いの間隔が、取得した用紙サイズの短手方向長さよりも所定量長くなるよう一対の当接部材136の各々を移動させて待機し、冊子4cが搬入されたときに互いの間隔が取得した用紙サイズの短手方向長さとなるよう一対の当接部材136の各々を移動させる。
【0085】
図7(a)〜図7(f)は、方向変換装置14における用紙束4aの整合処理の各手順を示す図である。良好な冊子を作成するためには、折り機構80において、折り目が付けられるべき折りラインで正確に折り目が付けられる必用がある。しかし、方向変換装置14において用紙束4aの第1対向縁部の整合処理が不十分、または長手方向の位置決めが不正確だと、折りラインにおいて正確に折り目を付けることは困難である。
【0086】
このためプレ整合機構50ではジョガー58のジョグ動作により第1対向縁部を揃える一方、本整合機構52では、用紙束4aを第1対向縁部と平行に搬送しながら第1対向縁部に一対の第1当接部材70および一対の第2当接部材72を当接させて第1対向縁部を揃える。
【0087】
さらに、第1サブ整合機構66は、用紙束4aの第1対向縁部の間の距離よりも長い距離を隔てた第1待機位置で一対の第1当接部材70を待機させる。第1サブ整合機構66は、用紙束4aを第1対向縁部と平行に一対の第1当接部材70の間に搬送しながら一対の第1当接部材70を互いに近接させるよう移動させることにより、第1対向縁部に一対の第1当接部材70を当接させて第1対向縁部を揃える。
【0088】
第2サブ整合機構68は、用紙束4aの第1対向縁部の間の距離と略同一の距離を隔てた第2の待機位置で一対の第2当接部材72を待機させる。第2サブ整合機構68は、第1サブ整合機構66から搬入された用紙束4aを第1対向縁部と平行に一対の第2当接部材72の間に搬送することにより、第1対向縁部に一対の第2当接部材72を当接させて第1対向縁部を揃える。以下、この整合処理について図7(a)〜図7(e)に関連して説明する。
【0089】
図7(a)は、プレ整合機構50に用紙束4aが搬入されたときの方向変換装置14の状態を模式的に表す上面図である。このとき当接部材制御部208は、ジョガー58にジョグ動作をさせて用紙束4aの第1対向縁部を揃える。
【0090】
図7(b)は、プレ整合機構50から用紙束4aが搬出され、本整合機構52に向けて搬送されているときの方向変換装置14の状態を模式的に表す上面図である。プレ整合機構50においてジョガー58のジョグ動作が終了すると、搬送制御部210は、搬送機構60によって用紙束4aを第1対向縁部と平行に本整合機構52に向けて搬送する。
【0091】
このとき当接部材制御部208は、用紙束4aの第1対向縁部の間の距離W1よりも長い距離W2を隔てた第1の待機位置で一対の第1当接部材70を待機させる。また、当接部材制御部208は、用紙束4aの第1対向縁部の間の距離と略同一の距離を隔てた第2の待機位置で一対の第2当接部材72を待機させる。
【0092】
図7(c)は、第1サブ整合機構66に用紙束4aが搬送されたときの方向変換装置14の状態を模式的に表す上面図である。当接部材制御部208は、一対の第1当接部材70の間に用紙束4aが搬送されている間に、一対の第1当接部材70を互いに近接させるよう移動させる。
【0093】
図7(d)は、一対の第1当接部材70が用紙束4aの第1対向縁部に当接したときの方向変換装置14の状態を模式的に表す上面図である。当接部材制御部208は、用紙束4aが第2サブ整合機構68まで搬送される前に、一対の第1当接部材70を互いに近接させて第1対向縁部に一対の第1当接部材70を当接させ、第1対向縁部を揃える。
【0094】
図7(e)は、第2サブ整合機構68に用紙束4aが搬送されたときの方向変換装置14の状態を模式的に表す上面図である。第1サブ整合機構66は、一対の第1当接部材70の少なくとも一部に2つの縁部を当接させた状態で用紙束を第2サブ整合機構68に送り込む。当接部材制御部208は、用紙束4aが一対の第2当接部材72の間を搬送される間も、一対の第2当接部材72の間隔を第1対向縁部の幅W1と略同一の第2の待機位置に維持する。第2サブ整合機構68は、一対の第2当接部材72の少なくとも一部に2つの縁部を当接させた状態で用紙束を折り機構80に送り込む。なお、第1サブ整合機構66は、一対の第1当接部材70を用紙束4aから離間させ再び当接させるジョグ動作を少なくとも1回実行する。また、第2サブ整合機構68は、一対の第2当接部材72を用紙束4aから離間させ再び当接させるジョグ動作を少なくとも1回実行する。なお、第1サブ整合機構66および第2サブ整合機構68は、このジョグ動作を省略してもよい。
【0095】
このように、第1サブ整合機構66では一対の第1当接部材70を互いに近接させて用紙束4aの第1対向縁部を揃え、第2サブ整合機構68では第2当接部材72の間隔をW1に維持したまま第1対向縁部を揃えることで、用紙束4aの第1対向縁部を良好に揃えることができる。
【0096】
図7(f)は、折り装置16に用紙束4aが送り込まれるときの方向変換装置14の状態を模式的に表す上面図である。第2サブ整合機構68は、一対の第2当接部材72の少なくとも一部に2つの縁部を当接させた状態で折り筋の付与が開始されるよう用紙束を筋付けローラ83に送り込む。このような折り装置16では、折り筋が付けられた個所で折り目が付けられる。このため、折りラインで用紙束に適切に折り筋を付けることができ、折りラインで用紙束に適切に折り目を付けることができる。
【0097】
図8は、微調整回避の設定がされた場合の微調整モードでの各用紙位置調整機構における処理の一例を示す図である。
【0098】
微調整モードにおいてプレ整合機構50に用紙束4aが搬入される場合、当接部材制御部208は、通常モードと同様に、ストッパ56とジョガー58との間隔が、取得した用紙サイズの長手方向長さよりも余裕を持たせた長さとし、用紙束4aの搬入後、取得した用紙サイズの長手方向長さとなるよう、ストッパ56とジョガー58とを移動させる。搬送制御部210は、ストッパ56およびジョガー58の移動後にプレ整合機構50に用紙束4aを搬入する。当接部材制御部208は、設定されたジョグ回数だけジョガー58にジョグ動作をさせる。通常モードではジョガー58のジョグ動作後、搬送制御部210は用紙束4aを本整合機構52に搬送するが、微調整モードではその搬送を回避し、ストッパ56とジョガー58との間隔が取得した用紙サイズの長手方向長さとなっている状態で用紙束4aをプレ整合機構50において一時的に停止させておく。ユーザは、プレ整合機構50に用紙束4aが停止したまま用紙束4aとストッパ56およびジョガー58との当接状態を目視しながら方向変換装置14のコントロールパネルの調整ボタンを押下できる。当接部材制御部208は、調整ボタンの押下回数に応じた量だけジョガー58を移動させる。プレ整合機構50での微調整終了が方向変換装置14のコントロールパネルに入力された場合、搬送制御部210は、停止させていた用紙束4aの本整合機構52への搬送を開始する。
【0099】
微調整モードにおいて本整合機構52に用紙束4aが搬入される場合、当接部材制御部208は、通常モードと同様に、一対の第1当接部材70を第1の待機位置で保持し、一対の第2当接部材72を第2の待機位置で保持する。搬送制御部210は、この状態で本整合機構52に用紙束4aを搬入する。当接部材制御部208は、通常モードと同様に、一対の第1当接部材70の間に用紙束4aが搬送されているときに一対の第1当接部材70を近接させて用紙束4aに当接させ、さらに一対の第2当接部材72の間に用紙束4aを搬送させる。このとき、一対の第1当接部材70の間隔および一対の第2当接部材72の間隔は、取得した用紙サイズの長手方向長さとなるよう移動された状態となっている。
【0100】
搬送制御部210は、通常モードでは用紙束4aをそのまま折り装置16に搬送するが、微調整モードでは、用紙束4aが一対の第1当接部材70の間に搬送された時点で用紙束4aの搬送を一時的に停止させておく。このため、サイズの大きな用紙束4aでは用紙束4aが一対の第1当接部材70および一対の第2当接部材72の双方の間に位置した状態で停止されるため、そのまま一対の第1当接部材70および一対の第2当接部材72の双方の微調整が可能となる。一方、サイズの小さな用紙束4aでは、用紙束4aが停止したときに一対の第2当接部材72の間に用紙束4aが位置していない状態となる。このため、このときは一対の第1当接部材70の位置を微調整後、ユーザの手によって用紙束4aを一対の第2当接部材72の間によって移動させて一対の第2当接部材72の微調整を行うことになる。
【0101】
ユーザは、本整合機構52に用紙束4aが停止したまま用紙束4aと一対の第2当接部材72の当接状態や用紙束4aの整合状態を目視しながら方向変換装置14のコントロールパネルの調整ボタンを押下できる。当接部材制御部208は、調整ボタンの押下回数に応じた量だけ一対の第1当接部材70および一対の第2当接部材72を移動させる。本整合機構52での微調整終了が方向変換装置14のコントロールパネルに入力された場合、搬送制御部210は、停止させていた用紙束4aの折り装置16への搬送を開始する。
【0102】
微調整モードにおいて整合機構92に山折り用紙束4bが搬入される場合、当接部材制御部224は、通常モードと同様に、ストッパ94とジョガー96との間隔が、取得した用紙サイズの短手方向長さとなるよう、ジョガー96を移動させる。搬送制御部228は、ジョガー96の移動後に整合機構92に山折り用紙束4bを搬入する。当接部材制御部224は、通常モードと同様にジョガー96にジョグ動作をさせる。通常モードではジョガー96のジョグ動作後、搬送制御部228は山折り用紙束4bを位置決め機構104に搬送するが、微調整モードではその搬送を回避し、山折り用紙束4bを整合機構92において一時的に停止させておく。ユーザは、整合機構92に山折り用紙束4bが停止したまま山折り用紙束4bとストッパ94およびジョガー96との当接状態を目視しながら中綴じ装置18のコントロールパネルの調整ボタンを押下できる。当接部材制御部224は、調整ボタンの押下回数に応じた量だけジョガー96を移動させる。整合機構92での微調整終了が中綴じ装置18のコントロールパネルに入力された場合、搬送制御部228は、停止させていた山折り用紙束4bの位置決め機構104への搬送を開始する。
【0103】
微調整モードにおいて位置決め機構104に山折り用紙束4bが搬入される場合、当接部材制御部224は、通常モードと同様に、当接部材106を、取得した用紙サイズの短手方向長さに応じた位置となるよう移動させる。搬送制御部228は、当接部材106の移動後に位置決め機構104に山折り用紙束4bを搬入する。ステッチャ制御部226は、この山折り用紙束4bに綴じ処理を施す。
【0104】
通常モードでは、綴じ処理後に山折り用紙束4bが搬出されるが、微調整モードでは、搬送制御部228は、綴じ処理が施される前に、山折り用紙束4bがプッシャ105と当接部材106との間にある状態のまま山折り用紙束4bの搬送を一時的に停止させておく。ユーザは、山折り用紙束4bが停止したまま山折り用紙束4bとプッシャ105および当接部材106との当接状態を目視しながら中綴じ装置18のコントロールパネルにおける当接部材106の間隔調整ボタンおよび短手方向位置調整ボタンを押下できる。ユーザは、間隔調整ボタンの押下して当接部材106とプッシャ105との間隔微調整でき、短手方向位置調整ボタンを押下してプッシャ105と当接部材106の同方向の短手方向位置を微調整できる。位置決め機構104での微調整終了が中綴じ装置18のコントロールパネルに入力された場合、ステッチャ制御部226は、山折り用紙束4bに綴じ処理を施すよう綴じ機構100を作動させ、搬送制御部228は、綴じられた山折り用紙束4bの折り畳み機構110への搬送を開始する。なお、搬送制御部228は、綴じ処理が施された後に、山折り用紙束4bがプッシャ105と当接部材106との間にある状態のまま山折り用紙束4bの搬送を一時的に停止させておいてもよい。これによりユーザは、綴じ位置を目視しながら当接部材106の位置などを微調整できる。また、ステッチャ制御部226は、微調整モードでは綴じ処理の実行を回避してもよい。
【0105】
微調整モードにおいて折り畳み機構110に山折り用紙束4bが搬入される場合、当接部材制御部224は、通常モードと同様に、当接部材107を、取得した用紙サイズの短手方向長さに応じた位置となるよう移動させる。搬送制御部228は、当接部材107の移動後に折り畳み機構110に山折り用紙束4bを搬入する。
【0106】
通常モードでは、この後に山折り用紙束4bが搬出されるが、微調整モードでは、搬送制御部228は、山折り用紙束4bがプッシャ105と当接部材107との間にある状態のまま山折り用紙束4bの搬送を一時的に停止させておく。ユーザは、山折り用紙束4bが停止したまま山折り用紙束4bとプッシャ105および当接部材107との当接状態を目視しながら中綴じ装置18のコントロールパネルの調整ボタンを押下できる。当接部材制御部224は、中綴じ装置18のコントロールパネルの調整ボタンの押下回数に応じた量だけ当接部材107を移動させる。折り畳み機構110での微調整終了が中綴じ装置18のコントロールパネルに入力された場合、搬送制御部228は、停止させていた山折り用紙束4bに折り畳み処理を実行し、小口断裁機構116への搬送を開始する。
【0107】
微調整モードにおいて位置決め機構132に山折り冊子4cが搬入される場合、当接部材制御部234は、通常モードと同様に、一対の当接部材136の間隔を、取得した用紙サイズの短手方向長さより余裕を持たせた長さとして待機し、冊子4cの搬入後、取得した用紙サイズの短手方向長さとなるよう移動させる。搬送制御部238は、一対の当接部材136が用紙サイズの短手方向長さの間隔となるまで移動した後に位置決め機構132に冊子4cを搬入する。
【0108】
通常モードでは、この後、冊子4cが天地が断裁されてから搬出されるが、微調整モードでは、搬送制御部238は、天地が未断裁で冊子4cが一対の当接部材136の間にある状態のまま冊子4cの搬送を一時的に停止させておく。ユーザは、冊子4cが停止したまま冊子4cと一対の当接部材136の当接状態を目視しながら天地断裁装置22のコントロールパネルの調整ボタンを押下できる。当接部材制御部224は、調整ボタンの押下回数に応じた量だけ一対の当接部材136を移動させる。位置決め機構132での微調整終了が天地断裁装置22のコントロールパネルに入力された場合、断裁刃制御部236は冊子4cを断裁するよう天地断裁機構130を作動させ、断裁後の冊子4cをベルトスタッカ24に搬出する。
【0109】
このように製本システム10では、微調整モードでスタートボタンがクリックされた場合、微調整可能な用紙位置調整機構で用紙を一時的に停止させてユーザによる当接部材の位置の微調整を可能としている。ある用紙位置調整機構で微調整が終了して、その終了を指示する微調整終了ボタンがユーザに押されると、用紙束4aは次の用紙位置調整機構まで搬送される。次の用紙位置調整機構では再度その用紙束4aが停止され、ユーザによる微調整が可能となる。このような微調整モードを設けることで、ユーザの手によって各用紙位置調整機構に用紙束4aを供給することなく、各個所における微調整を可能としている。
【0110】
一方、冊子の要求品質は近年さらに高まっており、用紙間のずれや折り目のズレなどに対する要求も高まっている。このためユーザは、微調整モードによる冊子の作成を複数回実行することで、用紙位置調整機構の各々における微調整を繰り返して高精度に用紙を位置決めすることが求められる。しかしながら、このように微調整を複数回繰り返す場合、すでに微調整が終了してそれ以上微調整が必要ない用紙位置調整機構も生じ得る。このような場合においても各機構で用紙束を一時停止させた場合、迅速に微調整を終了させることは困難である。
【0111】
このため、各装置において微調整モードの開始要求を取得した場合、微調整の実行が選択された用紙位置調整機構では、当接部材の位置を微調整できるよう用紙を停止させ、その用紙位置調整機構に対する微調整の終了指示を取得したときに停止させていた用紙を搬出する。微調整の実行が非設定の用紙位置調整機構では、微調整のための用紙の停止を回避する。これにより、調整の実行が選択されていない用紙位置調整機構では調整のための用紙の停止が回避されるため、当接部材の位置を迅速に調整できる。
【0112】
搬送制御部210は、微調整モードであっても、プレ整合機構50での微調整の実行が非選択の場合、プレ整合機構50での微調整のための用紙束4aの搬送停止を回避し、通常モードと同様にジョガー58のジョグ動作後そのまま用紙束4aを本整合機構52に搬送する。また、搬送制御部210は、微調整モードであっても、本整合機構52での微調整の実行が非選択の場合、一対の第2当接部材72の間での用紙束4aの搬送停止を回避し、通常モードと同様に用紙束4aをそのまま折り装置16に搬出する。
【0113】
搬送制御部228は、微調整モードであっても、整合機構92での微調整の実行が非選択の場合、整合機構92での微調整のための用紙束4aの搬送停止を回避し、通常モードと同様にジョガー96のジョグ動作後そのまま山折り用紙束4bを位置決め機構104に搬送する。また、搬送制御部210は、微調整モードであっても、位置決め機構104での微調整の実行が非選択の場合、プッシャ105と当接部材106とで位置決めした状態での山折り用紙束4bの搬送停止を回避し、通常モードと同様に山折り用紙束4bをそのまま折り畳み機構110に搬出する。
【0114】
搬送制御部238は、微調整モードであっても、位置決め機構132での微調整の実行が非選択の場合、一対の当接部材136の間での冊子4cの搬送停止を回避し、通常モードと同様に冊子4cをそのままベルトスタッカ24に搬出する。
【0115】
図8に示す例では、方向変換装置14において、プレ整合機構50には微調整の実行が選択されているが、本整合機構52で微調整の実行が非選択となっている。また、中綴じ装置18において、整合機構92および位置決め機構108には微調整の実行が選択されているが、位置決め機構104で微調整の実行が非選択となっている。また、天地断裁装置22において、位置決め機構132に微調整の実行が選択されている。このため、方向変換装置14のプレ整合機構50、中綴じ装置18の整合機構92、および天地断裁装置22の位置決め機構132では、用紙束4a、山折り用紙束4b、および冊子4cが微調整のために一時的に停止される。しかし、方向変換装置14の本整合機構52および中綴じ装置18の位置決め機構104、位置決め機構108では、微調整のための用紙束4aおよび山折り用紙束4bの搬送停止が回避され、通常モードと同様の処理がなされる。このように微調整の実行が非選択の機構において用紙束の搬送停止を回避することで、迅速な微調整を実現することができる。
【0116】
なお、例えば、統合制御装置26は、ディスプレイ30に、例えば図3に示すような製本システム10の模式図を表示してもよい。ユーザにより製本システム10のうち調整可能な個所がクリックなどされた場合、PC28は、微調整個所の指定入力として取得し、その個所を微調整個所として設定してもよい。
【0117】
本発明は上述の各実施形態に限定されるものではなく、各実施形態の各要素を適宜組み合わせたものも、本発明の実施形態として有効である。また、当業者の知識に基づいて各種の設計変更等の変形を各実施形態に対して加えることも可能であり、そのような変形が加えられた実施形態も本発明の範囲に含まれうる。
【符号の説明】
【0118】
10 製本システム、 14 方向変換装置、 16 折り装置、 18 中綴じ装置、 20 小口断裁装置、 22 天地断裁装置、 24 ベルトスタッカ、 26 統合制御装置、 50 プレ整合機構、 52 本整合機構、 56 ストッパ、 58 ジョガー、 66 第1サブ整合機構、 68 第2サブ整合機構、 70 第1当接部材、 72 第2当接部材、 80 折り機構、 83 筋付けローラ、 90 用紙蓄積部、 92 整合機構、 94 ストッパ、 96 ジョガー、 100 綴じ機構、 102 ステッチャ、 104 位置決め機構、 105 プッシャ、 106 当接部材、 107 当接部材、 108 位置決め機構、 110 折り畳み機構、 130 天地断裁機構、 132 位置決め機構、 136 当接部材、 140 送り出しユニット、 142 ベルト搬送機構、 148 電子制御部、 152 整合制御部、 156 綴じ制御部、 160 天地断裁制御部、 200 処理内容取得部、 202 スタート指示取得部、 204 用紙サイズ取得部、 206 微調整選択取得部、 208 当接部材制御部、 210 搬送制御部、 220 用紙サイズ取得部、 222 微調整選択取得部、 224 当接部材制御部、 226 ステッチャ制御部、 228 搬送制御部、 230 用紙サイズ取得部、 232 微調整選択取得部、 234 当接部材制御部、 236 断裁刃制御部、 238 搬送制御部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
用紙束または冊子を作成するための所定処理を用紙に実行すべく、搬入された用紙の縁部に当接して当該用紙の位置を調整する当接部材をそれぞれが有する複数の用紙位置調整機構と、
用紙束または冊子の作成に用いる用紙の用紙サイズを取得する用紙サイズ取得部と、
取得された用紙サイズに応じた位置に前記当接部材を移動させる当接部材制御部と、
を備え、
前記当接部材は、用紙サイズに応じた位置に移動後、ユーザによってさらにその位置を調整可能に設けられ、
前記当接部材制御部は、
前記複数の用紙位置調整機構の各々について調整を実行するか否かの選択結果を取得し、
前記当接部材の位置を調整するための調整モードの開始要求を取得した場合、調整の実行が選択された用紙位置調整機構では、前記当接部材の位置を調整できるよう用紙を停止させ、その用紙位置調整機構に対する調整の終了指示を取得したときに停止させていた用紙を搬出し、調整の実行が非選択の用紙位置調整機構では、調整のための用紙の停止を回避することを特徴とする用紙処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−254883(P2012−254883A)
【公開日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−113989(P2012−113989)
【出願日】平成24年5月18日(2012.5.18)
【出願人】(000109727)株式会社デュプロ (195)
【Fターム(参考)】