説明

用紙検出装置

【課題】
本発明は、用紙に付与された磁性体を非接触で検知するために磁性体を励磁する磁界を発生させる平面アンテナと、励磁された磁性体が発する信号を受信する平面アンテナとが互いに近接して配置されている場合であっても漏洩磁界の影響による磁性体の誤検知を防止する用紙検出装置を提供する。
【解決手段】
用紙に付与された磁性体に磁化反転を生じさせる交番磁界を発生する第1の導体パターンが該用紙の幅に亘って形成された第1の基板と、前記第1の基板に所定距離離間して対向して配設され、前記用紙に付与された磁性体の磁化反転により生じる信号を検出する第2の導体パターンが形成された第2の基板と、前記第1の基板と前記第2の基板との間に用紙を搬送する搬送手段とを具備し、前記第2の基板の前記第2の導体パターンの検出出力に基づき前記磁性体が付与された用紙を検出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、磁性体が付与された用紙を検出する用紙検出装置に関し、特に、用紙に付与された磁性体を非接触で検知するために磁性体を励磁する磁界を発生させる平面アンテナと、励磁された磁性体が発する信号を受信する平面アンテナとが互いに近接して配置されている場合であっても漏洩磁界の影響による磁性体の誤検知を防止する用紙検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、非接触で検知する検知素子とその検知装置の技術としてICチップを備えたICカードと、そのリーダ/ライタが普及しており、特にRFID(=Radio Frequency IDentification)の非接触型ICカードが広く利用されている。
【0003】
非接触型ICカードに記憶された情報は、非接触型ICカードとリーダ/ライタとがそれぞれ備えるループアンテナを介して情報が送受信されることでリーダ/ライタがその情報を読み取るが、リーダ/ライタは、非接触型ICカードがリーダ/ライタから数cmないし数十cm離れた位置にあっても非接触型ICカードの情報を非接触で読み取ることができる。
【0004】
また、非接触型ICカードは、汚れや静電気等に強いことから入退室管理、工場の生産管理、物流の管理等の様々な分野で利用されている。
【0005】
また、非接触で検知する検知素子とその検知装置の適用技術として大バルグハウゼン効果を起こす磁性素子を商品に付与し、その磁性素子の検知装置をゲートに設置することで検知装置がゲート通過時の商品に付与された磁性素子を検知し、商品の盗難を防止する装置も提供されている。
【0006】
大バルグハウゼン効果を起こす磁性素子は、例えばCo−Fe系アモルファス軟磁性材の磁性ワイヤー等があり、この磁性素子は、磁性素子の保磁力を超える交番磁界を受けた時に磁化反転を起こし、その際に急峻な磁気パルスを発生させる特徴があることから励磁コイルで交番磁界発生させて磁性素子に与え、磁性素子が磁化反転時に発する急峻な磁気パルスを磁性素子近傍に配置された検知コイルを介して検出することで磁性素子の存在が検知できる。
【0007】
また、磁性素子は、非接触型ICカードと比べればコストが安いので大量の商品や媒体に付与する場合や使い捨て媒体に付与する場合に適している。
【0008】
例えば特許文献1には、商品等の物品に添付された識別標識の移動を検出することにより商店における商品の盗難を防止する物品監視システムが提案されている。
【0009】
上記提案の物品監視システムは、商品等に添付された磁性材を有するタグがタグの検知領域を移動する際に、送信アンテナから発生された信号により磁性体の磁束密度を変化させ、その磁束密度の変化に起因した信号を受信アンテナで検出し、検出信号に基づきタグが添付された商品を検知する検知装置において、送信アンテナが内蔵された送信アンテナハウジングと、受信アンテナが内蔵された受信アンテナハウジングとが対向して設置された検知ゲートの各アンテナハウジングの無駄な空間に表示装置を嵌め込み、表示装置に商品情報等を表示させることでタグの検知能力を低下させることなく、検知ゲートの無駄な空間を有効利用するように構成されたものである。
【特許文献1】特開2002−319077号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上記特許文献1に示されるような検知ゲートを複写機や印刷装置内に配置し、当該検知ゲート内を大バルグハウゼン効果を起こす磁性素子が付与された記録紙等の媒体を通過させて検知する環境に適用する場合、励磁コイルと検知コイルとが近接し、それぞれ対向して配置されるため励磁コイルから発信される磁界の検知コイルへの漏洩により磁性素子が誤検知される場合がある。
【0011】
しかしながら、上記特許文献1には、励磁コイルと検知コイルとが互いに近接して配置されている場合であっても漏洩磁界の影響による磁性素子の誤検知を防止する提案はなされていない。
【0012】
そこで、本発明は、用紙に付与された磁性体を非接触で検知するために磁性体を励磁する磁界を発生させる平面アンテナと、励磁された磁性体が発する信号を受信する平面アンテナとが互いに近接して配置されている場合であっても漏洩磁界の影響による磁性体の誤検知を防止する用紙検出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するため、請求項1の用紙検出装置の発明は、用紙に付与された磁性体に磁化反転を生じさせる交番磁界を発生する第1の導体パターンが該用紙の幅に亘って形成された第1の基板と、前記第1の基板に所定距離離間して対向して配設され、前記用紙に付与された磁性体の磁化反転により生じる信号を検出する第2の導体パターンが形成された第2の基板と、前記第1の基板と前記第2の基板との間に用紙を搬送する搬送手段とを具備し、前記第2の基板の前記第2の導体パターンの検出出力に基づき前記磁性体が付与された用紙を検出する。
【0014】
また、請求項2の発明は、請求項1の発明において、前記第1の基板および前記第2の基板は、前記用紙の搬送方向に直角な長さに対応する長さを有し、湾曲自在なフレキシブル基板からなる。
【0015】
また、請求項3の発明は、用紙に付与された磁性体に磁化反転を生じさせる交番磁界を発生する第1の導体パターンと前記用紙に付与された磁性体の磁化反転により生じる信号を検出する第2の導体パターンとが積層形成された第1の基板と、前記第1の基板に所定距離離間して対向して配設され、用紙に付与された磁性体に磁化反転を生じさせる交番磁界を発生する第3の導体パターンと前記用紙に付与された磁性体の磁化反転により生じる信号を検出する第4の導体パターンとが積層形成された第2の基板と、前記第1の基板と前記第2の基板との間に用紙を搬送する搬送手段とを具備し、前記第1の基板の前記第2の導体パターン若しくは前記第2の基板の前記第4の導体パターンの検出出力に基づき前記磁性体が付与された用紙を検出する。
【0016】
また、請求項4の発明は、請求項3の発明において、前記第1の基板および前記第2の基板は、前記用紙の搬送方向に直角な長さに対応する長さを有し、湾曲自在なフレキシブル基板からなる。
【0017】
また、請求項5の発明は、請求項3の発明において、前記第1の基板の第1の導体パターンと前記第2の基板の第3の導体パターンに交互に切り替えて励磁電流を流すことにより前記第1の基板の第1の導体パターンと前記第2の基板の第3の導体パターンから交互に交番磁界を発生させ、前記第1の基板の第1の導体パターンから発生された交番磁界により前記磁性体から発生された信号を前記第2の基板の前記第4の導体パターンで検出し、前記第2の基板の第3の導体パターンから発生された交番磁界により前記磁性体から発生された信号を前記第1の基板の前記第2の導体パターンで検出する。
【0018】
また、請求項6の発明は、請求項5の発明において、前記第1の基板の第1の導体パターンと前記第2の基板の第3の導体パターンに交互に流す励磁電流を該励磁電流の周波数に同期して切り替える。
【発明の効果】
【0019】
この発明の用紙検出装置によれば、用紙に付与された磁性体に磁化反転を生じさせる交番磁界を発生する第1の導体パターンが該用紙の幅に亘って形成された湾曲自在な第1の基板と、第1の基板に所定距離離間して対向して配設され、用紙に付与された磁性体の磁化反転により生じる信号を検出する第2の導体パターンが形成された湾曲自在な第2の基板と、第1の基板と第2の基板との間に用紙を搬送する搬送手段とを具備し、第2の基板の第2の導体パターンの検出出力に基づき磁性体が付与された用紙を検出するので、複写機や印刷装置等の種々の装置に柔軟に適用でき、各基板間の漏洩磁界の影響による磁性体の誤検知を防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明に係わる用紙検出装置の一実施例について添付図面を参照して詳細に説明する。
【0021】
図1は、本発明に係わる用紙検出装置30を適用した複写機100の要部の構成を概略的に示したブロック図である。
【0022】
図1に示すように、複写機100は、複写機100のプラテンガラス3上にプラテンカバー2で押えられた原稿1を光学的に走査して読み取った画情報に所定の画像処理を施し、印刷出力用の画像データへ変換する画像処理部20と、画像処理部20で変換され出力される画像データを用紙トレイ4から給紙される専用紙10上に形成する画像形成部50(図中の破線で囲まれた部分)と、画像データが印刷された専用紙10から専用紙10に付与された図示せぬ磁性ワイヤーを検出し、この検出結果に基づき専用紙10の識別情報を検知する用紙検出装置30と、用紙検出装置30で検知した専用紙10の識別情報と当該専用紙10に印刷された画情報とを対応付けて記憶管理する図示せぬデータベースと、複写機100全体を統括制御する制御部40とを備えている。
【0023】
画像形成部50は、画像処理部20から出力される画像データに応じてレーザ光を感光ドラム52へ照射する走査露光制御を行う露光制御部51と、露光制御部51の走査露光制御により感光ドラム52表面上に形成された潜像を各色のトナーで現像する現像器53と、現像器53が感光ドラム52上に形成したトナー画像を用紙トレイ4から給紙された専用紙10上に転写する転写ドラム54と、専用紙10上に形成されたトナー画像を専用紙10上に定着させる定着装置55とを備えている。
【0024】
用紙トレイ4に蓄積収納される専用紙10には、前述したように磁性ワイヤーが付与されて表現された識別情報が予め付与されており、複写機100は、専用紙10の識別情報と当該専用紙10に印刷された画情報とを対応付けて文書管理を行うように構成されている。
【0025】
また、画情報が印刷された専用紙10の識別情報を非接触で検知するために、画情報が印刷された専用紙10が画像形成部50から排紙トレイ5へ排紙される排紙経路の途上には用紙検出装置30の平面アンテナ(送信用)31と平面アンテナ(受信用)32とが上下に対向して配置されている。
【0026】
平面アンテナ(送信用)31と平面アンテナ(受信用)32は、専用紙10の搬送方向に直角な方向の専用紙10の大きさに対応する長さを有し、湾曲自在であり、平面アンテナ(送信用)31と平面アンテナ(受信用)32との間を専用紙10が搬送されるように専用紙10の厚みより少し大きい程度の距離だけ離間され、対向して配設されている。
【0027】
画像形成部50の定着装置55でトナー画像が定着された専用紙10は、平面アンテナ(送信用)31と平面アンテナ(受信用)32との間を搬送されて排紙トレイ5へ排紙される。
【0028】
専用紙10の識別情報は、識別情報に対応付けされた少なくとも一種類以上の大バルクハウゼン効果を起こす磁性ワイヤーが予め付与されて表現されており、これらの磁性ワイヤーは、励磁されることで信号は発する特性を有している。
【0029】
画情報が印刷された専用紙10が各平面アンテナの間を搬送されることで、専用紙10に付与された少なくとも一種類以上の磁性ワイヤーが平面アンテナ(送信用)31から発生する磁界により順次励磁され、該励磁された磁性ワイヤーから順次発生される信号を平面アンテナ(受信用)32を介して用紙検出装置30が順次検出し、専用紙10の識別情報を検知するように構成されている。
【0030】
なお、専用紙10は、専用紙10の表面と各平面アンテナの平面とが平行な状態で平面アンテナ(送信用)31と平面アンテナ(受信用)32との間を搬送され、平面アンテナ(送信用)31と平面アンテナ(受信用)32との配置は、専用紙10の搬送経路に応じて専用紙10を挟む方向で左右に対向して配置されていてもよく、平面アンテナ(送信用)31と平面アンテナ(受信用)32との間を磁性ワイヤーが通過するように配置されていればよい。
【0031】
図2は、複写機100に適用された本発明に係わる用紙検出装置30の要部の構成と、各平面アンテナの一例を示す図である。
【0032】
図2(a)は用紙検出装置30の要部の構成を示すブロック図、図2(b)は用紙検出装置30の各平面アンテナの平面図、図2(c)は各平面アンテナの断面図である。
【0033】
図2(a)に示すように、用紙検出装置30は、平面アンテナ(送信用)31と、平面アンテナ(受信用)32と、励磁部33と、検知部34と、タイミング制御部35と、信号処理部36とを備えている。
【0034】
平面アンテナ(送信用)31は、図2(b)及び(c)に示すように、用紙の幅に対応して長方形状に形成された湾曲自在の絶縁基板310の表面に導体312で形成された渦巻き状の導体パターン311が形成され、その上層に皮膜層313で皮膜されて構成されている。
【0035】
また、平面アンテナ(送信用)31の導体パターン311の両端には端子314と、端子315が形成されており、この各端子を介して励磁部33と接続されるように構成されている。
【0036】
この導体パターン311に電流が流れることで導体パターン311の形状に対応した交番磁界が発生し、この交番磁界を大バルクハウゼン効果を起こす磁性ワイヤーが受けると磁化反転し、磁化反転時に急峻な磁気パルスが生じる。
【0037】
また、平面アンテナ(受信用)32は、平面アンテナ(送信用)31と同様に用紙の幅に対応して形成された長方形状の図示せぬフレキシ基板の表面に導体で形成された渦巻き状の導体パターンが形成され、その上層に皮膜層で皮膜されており、導体パターンの両端には端子が形成されている。
【0038】
なお、各平面アンテナの導体パターンの形状は、限定されるものではなく、各平面アンテナの適用環境に応じた形状でよく、例えば平面アンテナ(送信用)31の導体パターンは、導体パターンに電流が流れることで導体パターンから発生する交番磁界が平面アンテナ(送信用)31の平面と直交する方向に磁界が発生するような導体パターンであれば何れの形状の導体パターンでもよい。
また、平面アンテナ(受信用)32の導体パターンは、励磁された磁性ワイヤーから発生する信号による磁界の変化を検出しやすいように形成された導体パターンであれば何れの形状の導体パターンでもよい。
前述したように、平面アンテナ(送信用)31の導体パターン311と励磁部33とは導体パターン311の各端子314、端子315を介して接続され、検知部34と平面アンテナ(受信用)32の導体パターンとの接続は、平面アンテナ(受信用)32の導体パターンの各端子を介して接続されている。
【0039】
励磁部33は、所定周波数の交流電流を生成し、生成した交流電流を平面アンテナ(送信用)31に流す制御を行い、専用紙10に付与された磁性ワイヤーを励磁するための交番磁界を発生させる。
【0040】
タイミング制御部35は、励磁部33と検知部34とのタイミング制御を行う。
【0041】
具体的には、励磁部33で生成される所定周波数の交流電流の立ち上がり方向で電流値が0になる時間、すなわち電流の向きが負から正へ逆転する時の時間を検出し、この検出した時間に交番磁界の一周期に一回のタイミングで検知部34へ基準信号を出力する。
【0042】
検知部34は、専用紙10に付与された磁性ワイヤーが平面アンテナ(送信用)31から発生した交番磁界を受けて磁化反転時に発する磁気パルスを平面アンテナ(受信用)32に流れる誘導電流の検出結果とタイミング制御部24から出力された基準信号のタイミングに基づき検出し、検出結果を信号処理部36へ出力する。
【0043】
信号処理部36は、検知部34から出力された検出信号を増幅し、平面アンテナ(送信用)31から発生した交番磁界とノイズ成分を除去して磁性ワイヤーの磁化反転時の磁気パルスに対応したパルス信号を検出し、検出結果に基づき少なくとも一種類以上の磁性ワイヤーと対応付けされて表現されて専用紙10に付与された識別情報300を検知する。
このように構成された複写機100が原稿1の画情報を読み取って専用紙10に複写印刷後、原稿1の画情報と当該画情報が印刷された専用紙10とを対応付けて文書管理するまでの処理動作について簡単に説明する。
【0044】
ユーザが複写機100のプラテンカバー2を開き、原稿1をプラテンガラス3上に置いた後、プラテンカバー2を閉じて図示せぬ複写開始ボタンを押下すると、制御部40の指令により画像処理部20が原稿1をスキャンして原稿1の画情報を読み取り、読み取った画情報に対して所定の画像処理を施して印刷出力用の画像データに変換後、画像形成部50の露光制御部51へ出力する。
【0045】
露光制御部51は、画像処理部20から出力された画像データに基づきレーザ光を感光ドラム52上に照射する走査露光の制御を行う。
【0046】
露光制御部51で制御されたレーザ光の走査露光により感光ドラム52の表面上に画像データに対応した静電潜像が形成され、静電潜像に対応したそれぞれの色のトナーが現像器53から供給されトナー象が形成される。
【0047】
感光ドラム52の表面上に形成されたトナー像は、用紙トレイ4から給紙されて転写ドラム54上に保持された専用紙10へ静電力によって転写され、専用紙10とともに定着装置55へ搬送され、定着装置55により専用紙10上へ熱定着される。
【0048】
原稿1の画情報が印刷された専用紙10は、排紙トレイ5へ排紙される途上で用紙検出装置30の平面アンテナ(送信用)31と平面アンテナ(受信用)32との間に搬送される。
【0049】
用紙検出装置30は、励磁部33で生成した所定周波数の交流電流を平面アンテナ(送信用)31の導体パターン311へ流して所定周波数の交番磁界を平面アンテナ(送信用)31から発生させており、専用紙10に付与された磁性ワイヤーが平面アンテナ(送信用)31から発生している交番磁界を受けて磁化反転し、磁化反転時に磁性ワイヤーから磁気パルスが発生する。
【0050】
用紙検出装置30の検知部34が磁性ワイヤーから発生した磁気パルスを平面アンテナ(受信用)32の導体パターン内を流れる誘導電流に基づき検出し、信号処理部36が検知部34で検出された検出信号に基づき所定の信号処理を行い磁性ワイヤーから発生した磁気パルスの検出結果に基づき専用紙10の識別情報を検知する。
【0051】
用紙検出装置30によって検知された専用紙10の識別情報は、制御部40へ出力され、制御部40が用紙検出装置30で検知された専用紙10の識別情報と、画像処理部20で読み取られた原稿1の画情報とを対応付けて図示せぬデータベースへ記憶管理し、文書管理を行う。
【0052】
このように用紙検出装置30は、搬送されてくる専用紙10に付与された磁性ワイヤーに対して平面アンテナ(送信用)31の導体パターン311で交番磁界を発生させて与え、磁化反転した磁性ワイヤーが発する磁気パルスを平面アンテナ(送信用)31と対向されて配置された平面アンテナ(受信用)32の導体パターンで受信して検出するので各導体パターンのクロストークの影響を抑え、磁性体の誤検知を防止することができる。
【0053】
このように動作する用紙検出装置30を複写機100に用いることにより、原稿1の画情報と原稿1の画情報が複写印刷された専用紙10の識別情報とを対応付けて文書管理することができる。
【0054】
また、文書管理された原稿を複写機で複写する際、複写機が原稿に付与された識別情報に基づき原稿が複写可または複写不可のいずれかを判別し、複写不可と判別した場合は、複写禁止動作を行うような構成とすることで、不用意な複写等による機密情報の漏洩を防止することも可能となる。
【0055】
ところで、図1で示した複写機100により原稿1の画情報と当該画情報を複写印刷した専用紙10の識別情報とを対応付けて文書管理する場合は、専用紙10の識別情報に対応付けされた少なくとも一種類以上の複数の磁性ワイヤーが予め付与された専用紙10を用いるように構成されており、この専用紙10の識別情報は、専用紙10に付与された磁性ワイヤーが所定の磁界を受けることで磁化され、磁化反転時に発する急峻な磁気パルスの検知結果に基づき用紙検出装置30が非接触で検知するように構成されている。
【0056】
図3は、複数の磁性ワイヤーで対応付けされて表現された識別情報300が付与された専用紙10の一例を示す図である。
【0057】
図3(a)は、専用紙10に付与された識別情報に対応付けされた3本の磁性ワイヤー301、磁性ワイヤー302、磁性ワイヤー303の配置状態を示す図であり、図3(b)は、各磁性素子の磁化特性を示す図である。
【0058】
なお、専用紙10の識別情報は、少なくとも一種類以上の磁性ワイヤーを組み合わせて表現することが可能であり、図3においては、説明の便宜上、一種類の磁性ワイヤーを3本用いて表現した識別情報の一例が示してある。
【0059】
図3(a)及び図3(b)に示すように、専用紙10には例えばCo−Fe系アモルファス軟磁性材の磁性ワイヤー301、磁性ワイヤー302、磁性ワイヤー303が等間隔Pで配置されて表現された識別情報が付与されており、各磁性ワイヤーは、同一の長さと線径の大きさで同一の磁化特性を有し、各磁性ワイヤーが同じ保磁力を有している。
【0060】
各磁性ワイヤーは、例えば図3(b)に示すような磁気履歴曲線305の磁気特性を有しており、保磁力H1を有している。
【0061】
なお、アモルファス軟磁性材の磁性ワイヤーの保磁力は、磁性ワイヤーの大きさや形状等により異なる。
【0062】
保磁力H1を有する各磁性ワイヤーは、保磁力H1を超える磁界を外部から受けた時に磁化反転し、その際に急峻な磁気パルスを発生する特性がある。
【0063】
専用紙10に等間隔Pで配置付与された各磁性ワイヤーは、各磁性ワイヤーが磁化反転時に発する磁気パルスを用紙検出装置30が平面アンテナ(受信用)32を介して順次検出できるように専用紙10の搬送方向と平行な方向で互いに隣り合う磁性ワイヤー間の間隔Sが平面アンテナ(受信用)32の幅W以上となるように配置されて専用紙10に付与されている。
【0064】
このように、専用紙10には、専用紙10の識別情報に対応付けされた磁性ワイヤー301、磁性ワイヤー302、磁性ワイヤー303が等間隔で配置されているので、画情報が印刷された専用紙10の各磁性ワイヤーは、画像形成部50と排紙トレイ5との途上に配置された平面アンテナ(送信用)31と平面アンテナ(受信用)32の間を搬送され、平面アンテナ(送信用)31から発生している交番磁界により順次励磁されて磁化反転する。
【0065】
用紙検出装置30は、順次磁化反転した各磁性ワイヤーが発する磁気パルスを平面アンテナ(受信用)32を介して順次検出することで検出結果に基づき画情報が印刷された専用紙10の識別情報を検知することがせきる。
【0066】
用紙検出装置30が画情報が印刷された専用紙10の識別情報を検知する動作について図4及び図5を参照して説明する。
【0067】
図4(a)は、各平面アンテナの間を通過する専用紙10の様子を示す模式図、図4(b)は、用紙検出装置30の検知部34で検出される検出信号波形の一例を示す図、図4(c)は、信号処理部36で検出される磁気パルスに対応したパルス信号波形を示す図である。
【0068】
図4(a)に示すように、専用紙10が平面アンテナ(送信用)31と平面アンテナ(受信用)32との間を所定の搬送速度Vで搬送されると、専用紙10の搬送方向(図中の矢印方向)に対して専用紙10の最前方側に形成された磁性ワイヤー301が平面アンテナ(送信用)31から発信されている交番磁界401を最初に受けて磁化反転し、その際に大バルクハウゼン効果による磁気パルスを発する。
【0069】
検知部34は、平面アンテナ(送信部)31から発信された交番磁界401と、磁性ワイヤー301が磁化反転時に発した磁気パルスを平面アンテナ(受信部)32を介して受信し、その受信信号とタイミング制御部35から出力される基準信号とに基づき図4(b)に示すような検出信号波形402を検出する。
【0070】
図4(b)に示すように、検出信号波形402には交番磁界の波形信号401の他に磁化反転時の磁性ワイヤー301が発した磁気パルスに対応したパルス信号A、パルス信号Bが検出されている。
【0071】
パルス信号A、パルス信号Bは、例えばタイミング制御部35から出力された基準信号に基づく時刻taの時に磁界強度が略H1を超える交番磁界401を受けた保磁力H1を有する磁性ワイヤー301が磁化反転して発する磁気パルスA(時刻taの時)と、基準信号に基づく時刻tbの時に磁界強度が略−H1を超える交番磁界401を受けた磁性ワイヤー301が磁化反転して発する磁気パルス信号B(時刻tbの時)の検出信号波形である。
【0072】
検知部34で検出された検出信号波形402は、信号処理部36へ出力され、信号処理部36が検出信号波形402のうちの交番磁界成分の信号波形401を除去し、パルス信号A、Bのうちの正の信号成分であるパルス信号Aを増幅後、ノイズ成分を除去する信号処理後、図4(c)に示すようなパルス信号Aを検出する。
【0073】
このように専用紙10が平面アンテナ(送信部)31と平面アンテナ(受信部)32の間を搬送速度Vで搬送されることで、専用紙10に付与された磁性ワイヤー301、磁性ワイヤー302、磁性ワイヤー303は、平面アンテナ(送信部)31から発せられる交番磁界を順次受けて磁化反転し、その際に各磁性ワイヤーから順次発せられる磁気パルスが平面アンテナ(受信部)32を介して検知部34や信号処理部36で順次検出される。
【0074】
図5は、搬送速度Vで搬送される専用紙10に付与された各磁性ワイヤーが平面アンテナ(送信部)31と平面アンテナ(受信部)32の間を順次移動することで用紙検出装置30で検出される検出信号波形を時系列で示した図である。
【0075】
図5(a)乃至(c)は、専用紙10に形成された磁性ワイヤー301、磁性ワイヤー302、磁性ワイヤー303が平面アンテナ(送信部)31と平面アンテナ(受信部)32の間を順次通過する様子を示した模式図、図5(d)乃至(f)は、図5(a)乃至(c)の状態でそれぞれ検出される各検出信号波形を示す図である。
【0076】
図5(a)に示すように、専用紙10には専用紙10の搬送方向(図中の矢印方向)の最前方側から磁性ワイヤー301、磁性ワイヤー302、磁性ワイヤー303の順に等間隔Pで配置されているので、平面アンテナ(送信部)31と平面アンテナ(受信部)32の間を専用紙10が搬送速度Vで搬送されることで磁性ワイヤー301が最初に平面アンテナ(送信部)31から発生している交番磁界を受けて磁化反転し、磁化反転した磁性ワイヤー301が発する磁気パルスと交番磁界の各検出信号が図5(d)に示すような検出信号波形402(検知部34での検出信号)とパルス信号A(信号処理部36での検出信号(時刻ta))とで検出される。
【0077】
また、図5(b)に示すように、磁性ワイヤー301が発する磁気パルスを検出してからΔt時間後の時刻tcの時に磁性ワイヤー302が平面アンテナ(送信部)31から発生している交番磁界を受けて磁化反転し、磁化反転した磁性ワイヤー302が発する磁気パルスと交番磁界の各検出信号が図5(e)に示すような検出信号波形403(検知部34での検出信号)とパルス信号C(信号処理部36での検出信号(時刻tc))とで検出される。
【0078】
なお、Δtは、磁性ワイヤー301と磁性ワイヤー302の間隔Pと専用紙10の搬送速度Vから求まる時間である。
【0079】
また、図5(c)に示すように、磁性ワイヤー302が発する磁気パルスを検出してからΔt時間後の時刻tdの時に磁性ワイヤー303が平面アンテナ(送信部)31から発生している交番磁界を受けて磁化反転し、磁化反転した磁性ワイヤー303が発する磁気パルスと交番磁界の各検出信号が図5(f)に示すような検出信号波形404(検知部34での検出信号)とパルス信号D(信号処理部36での検出信号(時刻td))とで検出される。
【0080】
なお、Δtは、磁性ワイヤー302と磁性ワイヤー303の間隔Pと専用紙10の搬送速度Vから求まる時間である。
【0081】
このように用紙検出装置30の信号処理部36で検出されるパルス信号に基づき専用紙10に付与された識別情報を検知する方法とその検知動作について図6を参照して説明する。
【0082】
図6(a)は、信号処理部36が3本の磁性ワイヤー301、磁性ワイヤー302、磁性ワイヤー303が付与された専用紙10から検知する識別情報の一例を示す図である。
図6(a)に示すように、平面アンテナ(送信部)31と平面アンテナ(受信部)32の間を搬送される専用紙10に付与された各磁性ワイヤーは、前述したように磁性ワイヤー301、磁性ワイヤー302、磁性ワイヤー303の順に励磁されて磁化反転し、磁化反転した各磁性ワイヤーが発する磁気パルスがパルス信号パターン600として検出される。
【0083】
パルス信号パターン600には3本のパルス信号が含まれており、この3本のパルス信号は、検出時刻ta、tc、tdの順に磁性ワイヤー301、磁性ワイヤー302、磁性ワイヤー303がそれぞれ発した磁気パルスの検出信号である。
【0084】
信号処理部36は、各検出時刻ta、tc、tdのパルス信号の有無に応じて「1」、「0」の値で認識するように構成されており、パルス信号パターン600の検時刻ta近傍でのパルス信号の有無を1ビット目の情報、検出時刻tc近傍でのパルス信号の有無を2ビット目の情報、検出時刻td近傍でのパルス信号の有無を3ビット目の情報として認識する。
【0085】
パルス信号パターン600が検出された専用紙10の場合は、パルス信号パターン600が検出時刻ta近傍でパルス信号が「有」で「1」、検出時刻tc近傍でパルス信号が「有」で「1」、検出時刻td近傍でパルス信号が「有」で「1」と認識し、専用紙10の識別情報を「111」と検知する。
【0086】
また、図6(b)は、信号処理部36が2本の磁性ワイヤー301、磁性ワイヤー302が付与された専用紙11から検知する識別情報の一例を示す図である。
【0087】
図6(b)に示すように、専用紙11には専用紙10の3本の磁性ワイヤー301、302、303のうちの磁性ワイヤー301、302のみを配置して表現された識別情報が付与されている。
【0088】
平面アンテナ(送信部)31と平面アンテナ(受信部)32の間を搬送される専用紙11の各磁性ワイヤーは、磁性ワイヤー301、磁性ワイヤー302の順に励磁されて磁化反転し、磁化反転した各磁性ワイヤーが発する磁気パルスがパルス信号パターン601として検出される。
【0089】
パルス信号パターン601には2本のパルス信号が含まれており、この2本のパルス信号は、検出時刻ta、tcの順に磁性ワイヤー301、磁性ワイヤー302がそれぞれ発した磁気パルスの検出信号である。
【0090】
パルス信号パターン601は、検出時刻ta近傍でパルス信号が「有」で「1」、検出時刻tc近傍でパルス信号が「有」で「1」、検出時刻td近傍でパルス信号が「無」で「0」と認識し、パルス信号パターン601が検出された専用紙11の識別情報を「110」と検知する。
【0091】
また、図6(c)は、信号処理部36が2本の磁性ワイヤー301、磁性ワイヤー303が付与された専用紙12から検知する識別情報の一例を示す図である。
【0092】
図6(c)に示すように、専用紙12には専用紙10の3本の磁性ワイヤー301、302、303のうちの磁性ワイヤー301、303のみを配置して表現された識別情報が付与されている。
【0093】
平面アンテナ(送信部)31と平面アンテナ(受信部)32の間を搬送される専用紙12の各磁性ワイヤーは、磁性ワイヤー301、磁性ワイヤー303の順に励磁されて磁化反転し、磁化反転した各磁性ワイヤーが発する磁気パルスがパルス信号パターン602として検出される。
【0094】
パルス信号パターン602には2本のパルス信号が含まれており、この2本のパルス信号は、検出時刻ta、tdの順に磁性ワイヤー301、磁性ワイヤー303がそれぞれ発した磁気パルスの検出信号である。
【0095】
パルス信号パターン602は、検出時刻ta近傍でパルス信号が「有」で「1」、検出時刻tc近傍でパルス信号が「無」で「0」、検出時刻td近傍でパルス信号が「有」で「1」と認識し、パルス信号パターン602が検出された専用紙12の識別情報を「101」と検知する。
【0096】
また、図6(d)は、信号処理部36が2本の磁性ワイヤー302、磁性ワイヤー303が付与された専用紙13から検知する識別情報の一例を示す図である。
【0097】
図6(d)に示すように、専用紙13には専用紙10の3本の磁性ワイヤー301、302、303のうちの磁性ワイヤー302、303のみを配置して表現された識別情報が付与されている。
【0098】
平面アンテナ(送信部)31と平面アンテナ(受信部)32の間を搬送される専用紙13の各磁性ワイヤーは、磁性ワイヤー302、磁性ワイヤー303の順に励磁されて磁化反転し、磁化反転した各磁性ワイヤーが発する磁気パルスがパルス信号パターン603として検出される。
【0099】
パルス信号パターン603には2本のパルス信号が含まれており、この2本のパルス信号は、検出時刻tc、tdの順に磁性ワイヤー302、磁性ワイヤー303がそれぞれ発した磁気パルスの検出信号である。
【0100】
パルス信号パターン603は、検出時刻ta近傍でパルス信号が「無」で「0」、検出時刻tc近傍でパルス信号が「有」で「1」、検出時刻td近傍でパルス信号が「有」で「1」と認識し、パルス信号パターン603が検出された専用紙13の識別情報を「011」と検知する。
【0101】
また、図6(e)は、信号処理部36が1本の磁性ワイヤー301が付与された専用紙14から検知する識別情報の一例を示す図である。
【0102】
図6(e)に示すように、専用紙14には専用紙10の3本の磁性ワイヤー301、302、303のうちの磁性ワイヤー301のみを配置して表現された識別情報が付与されている。
【0103】
平面アンテナ(送信部)31と平面アンテナ(受信部)32の間を搬送される専用紙14の磁性ワイヤー301は励磁されて磁化反転し、磁化反転した磁性ワイヤー301が発する磁気パルスがパルス信号パターン604として検出される。
【0104】
パルス信号パターン604は1本のパルス信号であり、このパルス信号は、磁性ワイヤー301が発した磁気パルスの検出信号である。
【0105】
パルス信号パターン604は、検出時刻ta近傍でパルス信号が「有」で「1」、検出時刻tc近傍でパルス信号が「無」で「0」、検出時刻td近傍でパルス信号が「無」で「0」と認識し、専用紙14の識別情報を「100」と検知する。
【0106】
なお、ここでは各検出時刻ta、tc、tdの検出パルス信号の有無に応じた多ビット情報への対応付けによる識別情報の検知方法の一例を示したが、信号処理部36がパルス信号パターンに含まれるパルス信号の本数と、各パルス信号間の検出間隔に基づき識別情報を対応付けて検知するようにしてもよい。
【0107】
また、ここでは専用紙に付与された識別情報が一種類の磁性ワイヤーで対応付けされている例を示したが、識別情報を複数種類の複数の磁性ワイヤーで表現して専用紙に付与するようにしてもよい。
【0108】
これまでの説明では平面アンテナ(送信用)31と平面アンテナ(受信用)32とを専用紙10の搬送経路を挟んで上下に対向して配置した用紙検出装置30を適用した複写機100の例を示したが、複写機100に平面アンテナ(送信用)31と平面アンテナ(受信用)32とで一対を形成する平面アンテナを専用紙10の搬送経路を挟んで上下に対向して配置した用紙検出装置60を適用する構成としてもよい。
【0109】
図7は、用紙検出装置60を適用した複写機101の要部の構成を概略的に示したブロック図である。
【0110】
図7に示すように、複写機101は、複写機100の用紙検出装置30とそのアンテナである平面アンテナ(送信用)31と平面アンテナ(受信用)32を用紙検出装置60とそのアンテナである平面アンテナ(送受信用)61と平面アンテナ(送受信用)62とに置換えた他は、複写機100を構成する各部と同様に構成されているので用紙検出装置60の構成と制御動作について示すこととする。
【0111】
図8は、複写機101の用紙検出装置60の要部の構成と、各平面アンテナの一例を示す図である。を示すブロック図である。
【0112】
図8(a)は用紙検出装置60の要部の構成を示すブロック図、図8(b)は用紙検出装置60の各平面アンテナの平面図、図8(c)は各平面アンテナの断面図である。
【0113】
図8に示すように、用紙検出装置60は、平面アンテナ(送受信用)61と、平面アンテナ(送受信用)62と、励磁部63と、検知部64と、タイミング制御部65と、信号処理部66と、切替制御部67とを備えている。
【0114】
平面アンテナ(送受信用)61は、図8(b)及び(c)に示すように、用紙の幅に対応して形成された長方形状のフレキシ基板610の表面に導体616で形成された渦巻き状の図示せぬ導体パターン(説明の便宜上、「導体パターン(受信用)」という。)が形成され、その上層に皮膜層317で皮膜され、その上層に導体612で形成された渦巻き状の導体パターン611(説明の便宜上、「導体パターン(送信用)」という。)が形成され、その上層に皮膜層613で皮膜されて構成されている。
【0115】
また、導体パターン(送信用)611の両端には端子614、端子615が形成され、導体616で形成された渦巻き状の図示せぬ導体パターン(受信用)の両端にも図示せぬ端子が形成されており、導体パターン(送信用)611と励磁部63とは導体パターン(送信用)の端子614、端子615を介して接続され、検知部64と導体パターン(受信用)は、この導体パターン(受信用)の両端に各端子を介して接続されている。
【0116】
導体パターン(送信用)611は、この導体パターン(送信用)611に電流が流れることで導体パターン(送信用)611の形状に対応した交番磁界が発生し、この交番磁界を大バルクハウゼン効果を起こす磁性ワイヤーが受けると磁化反転し、磁化反転時に急峻な磁気パルスが生じる。
【0117】
また、導体パターン(送信用)611の下層の導体パターン(受信用)は、導体パターン(送信用)611から発生する交番磁界を受けた磁性ワイヤーから発生する信号による磁界の変化を検出する。
【0118】
なお、導体パターン(送信用)611と導体パターン(受信用)との上層、下層の配置関係は、限定されるものではなく、導体パターン(送信用)611の上層に導体パターン(受信用)が配置されていてもよい。
【0119】
励磁部63は、所定周波数の交流電流を生成し、生成した交流電流を平面アンテナ(送受信用)61または平面アンテナ(送受信用)62の各導体パターンに流す制御を行い、専用紙10に付与された磁性ワイヤーを励磁するための交番磁界を発生させる。
【0120】
タイミング制御部65は、励磁部63と検知部64とのタイミング制御を行う。
【0121】
具体的には、励磁部63で生成される所定周波数の交流電流の立ち上がり方向で電流値が0になる時間、すなわち電流の向きが負から正へ逆転する時の時間を検出し、この検出した時間に交番磁界の一周期に一回のタイミングで検知部64へ基準信号を出力する。
【0122】
検知部64は、専用紙10に付与された少なくとも一種類以上の磁性ワイヤーが平面アンテナ(送受信用)61または平面アンテナ(送受信用)62の各導体パターン(送信用)611から発生した交番磁界を受けて磁化反転時に発する磁気パルスを平面アンテナ(送受信用)61または平面アンテナ(送受信用)62の各導体パターン(受信用)に流れる誘導電流の検出結果とタイミング制御部24から出力された基準信号のタイミングに基づき検出し、検出結果を信号処理部66へ出力する。
【0123】
信号処理部66は、検知部34から出力された検出信号を増幅し、平面アンテナ(送受信用)61または平面アンテナ(送受信用)62の各導体パターン(送信用)611から発生した交番磁界とノイズ成分を除去して磁性ワイヤーの磁化反転時の磁気パルスに対応したパルス信号を検出し、検出結果に基づき少なくとも一種類以上の磁性ワイヤーと対応付けされて表現されて専用紙10に付与された識別情報300を検知する。
【0124】
切替制御部67は、励磁部63と平面アンテナ(送受信用)61及び平面アンテナ(送受信用)62の各導体パターン(送信用)611との接続と、検知部64と平面アンテナ(送受信用)61及び平面アンテナ(送受信用)62の各導体パターン(受信用)との接続とを予め設定された接続条件に基づき時分割で切替え接続する制御を行う。
【0125】
このように構成された用紙検出装置60は、各平面アンテナ(送受信用)の各導体パターン(送信用)611から発生した交番磁界が各導体パターン(送信用)611と近接して配置された各平面アンテナ(送受信用)の各導体パターン(受信用)に漏洩して専用紙10に付与された磁性ワイヤーの誤検知を防止するために、片方の平面アンテナ(送受信用)の導体パターン(送信用)611から交番磁界を発信し、この交番磁界により励磁された磁性ワイヤーが発する磁気パルスを他の片方の平面アンテナ(送受信用)の導体パターン(受信用)で受信して磁性ワイヤーを検知するように構成されている。
【0126】
具体的には、用紙検出装置60の切替制御部67が予め設定された接続組合せに基づき励磁部63と各平面アンテナ(送受信用)の各導体パターン(送信用)611との接続と、検知部64と各平面アンテナの各導体パターン(受信用)との接続とを時分割で切替え接続することで実現している。
【0127】
予め設定された接続組合せは、具体的には励磁部63と平面アンテナ(送受信用)61の導体パターン(送信用)611とを接続し、検知部64と平面アンテナ(送受信用)62の導体パターン(受信用)とを接続する組合せ(説明の便宜上、「モード1」という。)と、励磁部63と平面アンテナ(送受信用)62の導体パターン(送信用)611とを接続し、検知部64と平面アンテナ(送受信用)61の導体パターン(受信用)とを接続する組合せ(説明の便宜上、「モード2」という。)である。
【0128】
切替制御部67は、前述のモード1とモード2の接続状態を励磁部63が生成する交流電流の周波数の波数に対応して交互に切替え接続てもよく、一定時間毎に交互に切替え接続してもよい。
【0129】
励磁部63が生成する交流電流の周波数の波数に対応してモード1とモード2の接続状態に交互に切替える場合は、例えば交流電流の周波数のn波数(n=1、2、・・・等の予め指定される整数)毎に交互にモード1とモード2の接続状態とし、一定時間毎に交互に切替える場合は、例えば予め指定された時間間隔で交互にモード1とモード2の接続状態とする。
【0130】
なお、各平面アンテナ(送受信用)のそれぞれの導体パターン(送信用)611は、各導体パターン(送信用)611の端子を介して励磁部63と接続され、各平面アンテナ(送受信用)のそれぞれの導体パターン(受信用)は、導体616で形成された各導体パターン(受信用)の端子を介して検知部36と接続される。
【0131】
このように切替制御部67が予め設定された接続組合せ(モード1、モード2)を予め設定されたタイミング(交番磁界の波数毎または一定時間毎)で切替え接続するので片方の平面アンテナ(送受信用)の導体パターン(送信用)611から交番磁界が発信され、この交番磁界により励磁された磁性ワイヤーが発する磁気パルスを他の片方の平面アンテナ(送受信用)の導体パターン(受信用)で受信されるので磁界の漏洩による磁性ワイヤーの誤検知を防止することができる。
【0132】
用紙検出装置60が専用紙10に付与された磁性ワイヤーを検出し、検出結果に基づき専用紙10に付与された識別情報を検知する方法については用紙検出装置30の場合と同様であるので省略する。
【産業上の利用可能性】
【0133】
本発明は、磁性体の検知と、その検知結果を応用する技術に適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0134】
【図1】本発明に係わる用紙検出装置30を適用した複写機100の要部の構成を示すブロック図
【図2】本発明に係わる用紙検出装置30の要部の構成を示すブロック図
【図3】磁性ワイヤーが付与された専用紙10と、磁性ワイヤーの特性を示す図
【図4】磁性ワイヤーが磁化反転時に発する磁気パルスとその検出信号を示す図
【図5】情報読取装置30が専用紙10から検出する検出パルス信号の時系列図
【図6】検出したパルス信号に基づく専用紙の識別情報の検知動作を示す説明図
【図7】用紙検出装置60を適用した複写機101の要部の構成を示すブロック図
【図8】用紙検出装置60の要部の構成を示すブロック図
【符号の説明】
【0135】
1 原稿
2 プラテンカバー
3 プラテンガラス
4 用紙トレイ
5 排紙トレイ
10、11、12、13、14 専用紙
20 画像処理部
30、60 用紙検出装置
31 平面アンテナ(送信用)
311、611 導体パターン
312、613、617 導体
313、612、616 皮膜層
314、315、614、615 端子
32 平面アンテナ(受信用)
33、63 励磁部
34、64 検知部
35、65 タイミング制御部
36、66 信号処理部
40 制御部
50 画像形成部
51 露光制御部
52 感光ドラム
53 現像器
54 転写ドラム
55 定着装置
67 切替制御部
61、62 平面アンテナ(送受信用)
100、101 複写機
300 識別情報
305 磁気履歴曲線
301、302、303 大バルクハウゼン効果を起こす磁性ワイヤー
401、402、403、404 検出信号波形

【特許請求の範囲】
【請求項1】
用紙に付与された磁性体に磁化反転を生じさせる交番磁界を発生する第1の導体パターンが該用紙の幅に亘って形成された第1の基板と、
前記第1の基板に所定距離離間して対向して配設され、前記用紙に付与された磁性体の磁化反転により生じる信号を検出する第2の導体パターンが形成された第2の基板と、
前記第1の基板と前記第2の基板との間に用紙を搬送する搬送手段と
を具備し、
前記第2の基板の前記第2の導体パターンの検出出力に基づき前記磁性体が付与された用紙を検出する用紙検出装置。
【請求項2】
前記第1の基板および前記第2の基板は、
前記用紙の搬送方向に直角な長さに対応する長さを有し、湾曲自在なフレキシブル基板からなる請求項1記載の用紙検出装置。
【請求項3】
用紙に付与された磁性体に磁化反転を生じさせる交番磁界を発生する第1の導体パターンと前記用紙に付与された磁性体の磁化反転により生じる信号を検出する第2の導体パターンとが積層形成された第1の基板と、
前記第1の基板に所定距離離間して対向して配設され、用紙に付与された磁性体に磁化反転を生じさせる交番磁界を発生する第3の導体パターンと前記用紙に付与された磁性体の磁化反転により生じる信号を検出する第4の導体パターンとが積層形成された第2の基板と、
前記第1の基板と前記第2の基板との間に用紙を搬送する搬送手段と
を具備し、
前記第1の基板の前記第2の導体パターン若しくは前記第2の基板の前記第4の導体パターンの検出出力に基づき前記磁性体が付与された用紙を検出する用紙検出装置。
【請求項4】
前記第1の基板および前記第2の基板は、
前記用紙の搬送方向に直角な長さに対応する長さを有し、湾曲自在なフレキシブル基板からなる請求項3記載の用紙検出装置。
【請求項5】
前記第1の基板の第1の導体パターンと前記第2の基板の第3の導体パターンに交互に切り替えて励磁電流を流すことにより前記第1の基板の第1の導体パターンと前記第2の基板の第3の導体パターンから交互に交番磁界を発生させ、前記第1の基板の第1の導体パターンから発生された交番磁界により前記磁性体から発生された信号を前記第2の基板の前記第4の導体パターンで検出し、前記第2の基板の第3の導体パターンから発生された交番磁界により前記磁性体から発生された信号を前記第1の基板の前記第2の導体パターンで検出する請求項3記載の用紙検出装置。
【請求項6】
前記第1の基板の第1の導体パターンと前記第2の基板の第3の導体パターンに交互に流す励磁電流を該励磁電流の周波数に同期して切り替える請求項5記載の用紙検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−70948(P2008−70948A)
【公開日】平成20年3月27日(2008.3.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−246736(P2006−246736)
【出願日】平成18年9月12日(2006.9.12)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】