説明

用紙片圧縮装置

【課題】 紙片が詰まることなく紙片の圧縮、排出を行うことが可能な圧縮装置を提供する。また容易に圧縮度合いを変更することが可能な圧縮装置を提供する。
【解決手段】用紙片の搬入口と排出口とを有する圧縮室304と、搬入口に配置された用紙片圧縮機構部331とを有し、圧縮室の排出口には、開閉可能な圧力壁309と、該圧力壁を閉じる方向に所定の圧力を加える押圧部材310が配置されている。圧縮室は、例えば、内径に段差のない筒状部材であり、搬入室と排出口は向かい合わせに配置され、用紙片圧縮機構部は、搬入口から排出口の圧力壁に向かって用紙片を押し込む力を加える構造を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、機密保持の目的で廃棄する書類を細かく破砕し、その内容を読めなくした状態で廃棄するためのドキュメントシュレッダー装置に関し、特に破砕後の用紙片を圧縮、排出するための用紙片圧縮装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ドキュメントシュレッダー装置としては、対向し接し合って回転する丸刃で用紙を裁断する方式が主流である。しかし切断刃で裁断した紙片は、繊維が切断されているため再生紙としての利用が限られている。これに対し、切断後の紙の用途を考慮し、紙を切断するのではなく、引きちぎることにより破砕する装置が開発されている。例えば、特許文献1には、一対の回転軸に複数の回転刃を設けるとともに一方の回転軸の速度を他方より速くし、また搬送される紙に対し交互に噛み込むように配置することにより、速度差を利用して紙を引きちぎるようにした装置が提案されている。
【0003】
このようなドキュメントシュレッダー装置では、紙の端部が処理されずに排出されるのを防止する必要がある。特許文献1に記載された装置では、回転刃の径を大きくして紙を保持する長さを長く取り、紙が終端まで処理できるようにしている。
【0004】
しかし回転刃の径を大きくした場合には、一対の回転刃の速度比を大きく取ることができず、速度比のみでは十分な破砕力が得られにくい。このため特許文献1記載の装置では、処理後の紙を再度回転刃との間に戻し、確実に破砕されるようにしている。回転刃の径を大きくすること、また破砕後の紙を再度破砕するための機構を設けることは、装置の大型化につながる。さらに従来のドキュメントシュレッダー装置では、破砕刃として摩耗に強い材料が要求され、高い処理能力を維持するためにはメンテナンスの負担が大きいという問題もあった。
【0005】
一方、破砕後の紙の処理については、従来、圧縮装置としては、筒状部材の内部でスクリューを回転させる構成のものが知られている(特許文献2)。この装置において、筒状部材は、出口端に向かって内径が順次狭められている。粉砕された古紙片は、スクリューの回転により出口端に向かって移動し、出口近傍の小径部の内壁面に押しつけられて硬く圧縮され、圧縮物が出口端から排出される。特許文献2では、筒状部材の小径部において圧縮された紙片が詰まる現象を防止するために、小径部を弾性のある樹脂等により形成し、小径部壁面に弾性を持たせることが開示されている。
【0006】
しかしながら、上記特許文献2に記載の圧縮装置は、小径部に向かって紙片を押し込む構造であるため、紙片は小径部の入り口付近の壁面に大きな力で押しつけられ、紙片が詰まりやすいという問題がある。詰まりの問題は、壁面に弾性を持たせることにより多少改善することはできるが、根本的な解消はできない。また、紙片の圧縮物は、それをどのように再利用するかによって圧縮物に要求される圧縮度合い(硬さ)が異なるが、上記特許文献2に記載の圧縮装置の構造において圧縮度合いを変更するには、壁面の弾性度を変更する必要があり、容易に圧縮度合いを変更することはできないという問題もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2003−1131号公報
【特許文献2】特開2002−137096号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の第1の目的は、小型の装置であって、しかも用紙搬送速度と破砕刃の回転速度との速度比を大きく取ることができ、1回の通紙のみで確実に終端まで破砕することが可能なドキュメントシュレッダー装置を提供することにある。また本発明は、破砕刃としてプレス加工によって作製される破砕刃の使用を可能にし、メンテナンス等の負担を軽減することを目的とする。さらに本発明は、このようなドキュメントシュレッダー装置に好適な用紙供給装置を提供することを目的とする。
【0009】
本発明の第2の目的は、紙片が詰まることなく紙片の圧縮、排出を行うことが可能な圧縮装置を提供することにある。また容易に圧縮度合いを変更することが可能な圧縮装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記第1の目的を達成するドキュメントシュレッダー装置は、用紙を把持して搬送する搬送系と、この搬送系の搬送速度よりも速い周速度で回転しながら用紙を破砕する破砕系とを備え、搬送系を構成する要素の一部と破砕系を構成する要素の一部を共通とし、搬送系の作用点と破砕系の作用点を用紙の搬送方向に対し実質的に同じ位置とする、或いは搬送系に連続して破砕系を配置することを特徴とする。
【0011】
本発明のドキュメントシュレッダー装置は、例えば、第1の駆動軸と、第1の駆動軸より高速で回転する第2の駆動軸と、前記第1の駆動軸に固定され用紙を送るための搬送手段と、第2の駆動軸に固定され用紙を引きちぎるための破砕手段とを備え、前記第1の駆動軸に、前記第2の駆動軸に固定された破砕手段に従動して回転する破砕補助手段を設けたことを特徴とする。
【0012】
本発明のドキュメントシュレッダー装置は、例えば、用紙を搬送する用紙搬送手段と、回転軸及び回転軸に固定され用紙を引きちぎるための破砕刃を有し、前記破砕刃を前記用紙搬送手段の搬送速度より速い周速度で回転させる破砕手段と、前記回転軸に回転自在に支持され、前記用紙搬送手段の一部と噛合して、破砕刃による紙の引きちぎり動作の間、用紙を保持するとともに前記搬送手段の搬送速度で用紙を送る手段とを備えたことを特徴とする。
【0013】
本発明のドキュメントシュレッダー装置は、用紙を搬送する用紙搬送手段と、回転軸及び回転軸に固定され紙を引きちぎるための破砕刃を有し、前記破砕刃を前記用紙搬送手段の搬送速度より速い周速度で回転させる破砕手段とを備えたドキュメントシュレッダー装置であって、前記用紙搬送手段は、軸の周りで回転するプーリーと、前記プーリーの外周面に圧接し、当該外周面との間に形成される円弧状の圧接部で紙を挟持する搬送ベルトとを備え、前記圧接部の端部近傍に前記破砕手段の破砕刃が設置されていることを特徴とする。
【0014】
ドキュメントシュレッダー装置は、例えば、一対の駆動軸にそれぞれ固定され、互いに対向して配置された一対の破砕手段と、前記一対の破砕手段への用紙供給側の近傍に配置された一対の用紙搬送用歯車とを備えたドキュメントシュレッダー装置であって、前記駆動軸は少なくとも前記破砕手段が固定されていない部分に歯車が形成されており、当該駆動軸の動力を減速して前記用紙搬送用歯車に伝達する伝達歯車を備えたことを特徴とする。
【0015】
また本発明の用紙供給装置は、用紙を収納する用紙収納部と、用紙をドキュメントシュレッダー装置に搬送する搬送ベルトと、前記搬送ベルトを走行させる駆動手段を備えたドキュメントシュレッダー装置用の用紙供給装置であって、前記用紙収納部は、その底部に用紙と前記搬送ベルトを接触させるための開口を有し、前記搬送ベルトとの接触により用紙収納部から排出された用紙を前記ドキュメントシュレッダー装置が処理可能な量に分離する分離手段を備えたことを特徴とする。
【0016】
本発明の第2の目的を達成する本発明の用紙片圧縮装置は、用紙片の搬入口と排出口とを有する圧縮室と、前記搬入口に配置された用紙片圧縮機構部とを有し、前記圧縮室の排出口には、開閉可能な圧力壁と、該圧力壁を閉じる方向に所定の圧力を加える押圧部材が配置されていることを特徴とする。
この場合、圧縮室は、例えば、内径に段差のない筒状部材であり、搬入室と排出口は向かい合わせに配置され、前記用紙片圧縮機構部は、前記搬入口から前記排出口の圧力壁に向かって用紙片を押し込む力を加える構造とすることができる。
【0017】
また本発明の用紙片圧縮装置は、例えば、用紙片の搬入口と排出口とを有する圧縮室と、前記搬入口に配置された用紙片圧縮機構部とを有し、前記用紙片圧縮機構部は、搬入口の開口面内で回転する回転部材と、回転部材を駆動する駆動軸とを含むことを特徴とする。
例えば回転部材は軸状部材であり、該軸状部材には、1以上のローラーが取り付けられ、該ローラーは、軸状部材の前記開口面内での回転により、前記圧縮室内の用紙片の圧縮物と接触し、圧縮物の端面上で転がる。
また搬入口の外側には用紙片を受ける容器が配置され、該容器内にはコイル形状の線材が備えられ、該コイル形状の線材は、前記駆動軸に固定され、駆動軸の回転に伴って回転することにより、前記容器内の用紙片を前記搬入口に搬送する。
【発明の効果】
【0018】
本発明のシュレッダー装置は、用紙を把持して搬送する搬送系と破砕系とが一部の要素を共通にして組み立てられているので小型であり、また搬送系とそれぞれ独立の作用点を有しているので用紙搬送速度と破砕刃の回転速度との速度比を大きく取ることができる。また搬送系によって用紙の終端までしっかり把持されながら破砕が行われるので、1回の通紙のみで確実に終端まで破砕することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明のドキュメントシュレッダー装置の全体構成を示す図
【図2】用紙供給部の一実施の形態を示す図
【図3】用紙供給部の別の実施の形態を示す図
【図4】用紙供給部の別の実施の形態を示す図
【図5】用紙供給部の別の実施の形態を示す図
【図6】第1の実施の形態の破砕部を側面から見た図
【図7】図6の破砕部を矢印Aから見た図
【図8】第2の実施の形態の破砕部を側面から見た図
【図9】図8の破砕部を矢印Aから見た図
【図10】第3の実施の形態の破砕部を側面から見た図
【図11】第4の実施の形態の破砕部を側面から見た図
【図12】図11の破砕部を上面から見た図
【図13】図11の破砕部の変更例を示す図
【図14】図11の破砕部の別の変更例を示す図
【図15】第5の実施の形態の破砕部を側面から見た図
【図16】図15の破砕部を上面から見た図
【図17】第6の実施の形態の破砕部を側面から見た図
【図18】図17の破砕部を上面から見た図
【図19】図17の破砕部を備えたドキュメントシュレッダー装置を示す図
【図20】圧縮部の一部を切り欠いた上面図
【図21】図20の圧縮部のA−A断面図
【図22】圧縮部の側面図
【図23】圧縮機構部としてプロペラを採用した場合の圧縮部を示す切り欠き上面図
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明のドキュメントシュレッダー装置および用紙片圧縮装置の実施の形態を説明する。
図1は、本発明のドキュメントシュレッダー装置の全体概要を示す図であり、このドキュメントシュレッダー装置は、不要用紙を収納すると共にその適量を分離供給する用紙供給部100と、用紙供給部100から供給される用紙Pを破砕処理する破砕部100と、破砕部200で破砕された後の用紙片P’を圧縮する圧縮部300とを備えている。
【0021】
用紙供給部100は、図2に示すように、廃棄用紙を大量にまとめて収納できる用紙収納部110と、用紙収納部110から適当な枚数の用紙Pを分離して取り出すための用紙分離機構120と、ベルト131及びプーリー132とからなる用紙搬送機構130とを備えている。ベルト131は、用紙の幅方向(図面に垂直な方向)に複数列設けられている。
用紙収納部110は、箱状の部材で内部に廃棄用紙を重ねて収納できるようになっており、その底部は一部開放され、収納された用紙の下端が用紙搬送部130のベルト131と接触するようになっている。また用紙収納部110の用紙排出側も用紙の排出を可能にするための開口が設けられている。
【0022】
用紙搬送機構130は、複数のプーリー132と、これらプーリーに掛け回されたベルト131と、用紙の搬送をガイドする用紙ガイド135とからなる。複数のプーリーの一つは図示しない動力源によって回転駆動され、このプーリー132が回転することにより、ベルト131は図中反時計回りに回転し、用紙収納部110の下端でベルト131と接触する用紙を図中左方向に排出する。なお図示する実施の形態では、用紙搬送機構130は、後続の破砕部200の搬送系も兼ねており、後述する破砕刃を固定したローラー等が搬送機構130に設けられている。装置全体を小型化するためには図示した形態が好ましいが、用紙供給部100と破砕部200の用紙搬送系は互いに独立していてもよい。
【0023】
用紙分離機構120は、用紙収納部110の用紙排出側の下端に設けられた分離部材121と、用紙収納部110から排出された用紙の先端を検出するセンサ122と、センサ122からの用紙検出信号によって駆動される偏心カム123と、偏心カム123によって駆動され、用紙の搬送を制限するリフター124とを備えている。
分離部材121は、表面が高摩擦係数の材料からなり、ベルト131との間隙が用紙の進行方向に向って狭くなるように設定されており、用紙格納部110から出てこようとする用紙の枚数を1、2枚に制限する。分離部材121は、例えば一方向クラッチを内蔵したゴムローラで構成され、所定の軸を中心に回転可能であり、用紙の搬送方向にはその回転がロックされるが逆方向には自由に回転し用紙ジャム時に用紙が容易に取り出せるようになっている。
【0024】
リフター124は、ベルト131を挟んで用紙収納部110の底部に対向する位置に備えられており、偏心カム123の一回転により上下動する。リフター124とベルト131は用紙の幅方向(図面の紙面に垂直な方向)にずれた位置にあり、リフター124の上下動がベルト131と干渉しないようになっている。またリフター124の、用紙と接触する面の一端には高摩擦係数の材料からなる突起125が設けられている。センサ122が、用紙の先端を検出することによって偏心カム123が回転すると、リフター124が上昇し、まず突起125が排出されずに残った用紙の下端部に接触し、その搬送を止める。さらにリフター124が上昇すると、リフター124が用紙全体を持ち上げベルト131との接触を絶ち、残された用紙の搬送を停止させる。
【0025】
以上のような構成における用紙供給部100の動作を説明する。
プーリー132が図示しない動力源によって回転駆動され、ベルト131が回転すると、用紙収納部110に収納された用紙のうち、ベルト131に接している最下端部の用紙が用紙収納部110から引き出される。この際、用紙収納部110の排出側開口とベルト131との間に設定された間隙に相当する枚数が用紙収納部110から搬送され外に出てくる。用紙が分離部材121に達すると、そのテーパーに上部の用紙から接触し進行を止められ、最終的には1,2枚のみが分離部材121を通過する。
【0026】
分離部材121を通過した用紙の先端が用紙センサ122に検出されると、これによって2つの偏心カム123が回転し、リフター124を上に持ち上げる。まずリフター124の突起125が収納部110に残された用紙と接触してその搬送を止め、さらにリフター124が上昇することにより用紙全体を持ち上げ、ベルト131との接触を切り離す。これにより後続の用紙の搬送は中断される。後続の用紙に突起125が接触してから用紙全体が持ち上げられるまでの時間差に、分離部材121を通過した用紙は、移動を制限されることなく収納部110から排出され、破砕部200に搬送される。偏心カム123がさらに回転することにより、リフター124はベルト131より下側の位置に戻り、その際、用紙収納部110において下端となった用紙が搬送可能な状態となる。
【0027】
このように本実施の形態の用紙供給部100は、用紙収納部110から制限された枚数の用紙のみを分離して排出させるとともに、用紙収納部110に残った用紙の移動を確実に制限することにより、ジャムの発生を防止し、確実に少ない枚数の用紙を破砕部200に供給することができる。
【0028】
なお上記実施の形態では、用紙収納部110の端部に単一の分離部材121を設けた場合を示したが、例えば図3に示すように、分離部材121は複数(121a、121b)設けてもよい。この場合、後段の分離部材121bとベルト131との間隙を用紙一枚程度の間隙となるように調整しておくことにより、前段の分離部材121aで2〜3枚程度に分離し、最終的に1枚のみを分離し、破砕部200に供給することができる。また分離部材121の形状としては、用紙の進行方向に向ってベルトとの間隙が狭くなればよく、図2に示すようなローラーのみならずテーパー形状の部材でもよい。
【0029】
用紙供給部100の別の実施形態を図4及び図5により説明する。
図4に示す用紙供給部100は、基本的な構成は図2に示したものと同様であるが、用紙詰まり(ジャム)を解消する機構を備えていることが特徴である。このような機構として、図4に示す実施形態では、用紙収納部110の用紙出口とは反対側の近傍に位置するプーリー132の軸137に偏心ローラー140が設けられている。プーリー132は軸137に対し自由回転し、ベルトに従動回転するのに対し、偏心ローラー140は軸137に固定され、軸137を駆動することによりベルト搬送系とは独立して回転できるようになっている。軸137は、例えば用紙詰まりを検出するセンサからの信号により駆動される。また偏心ローラー140は、表面が高摩擦材料からなり、その一部が軸137に対し凸形状を有している。偏心ローラー140の軸137方向の位置は、ベルト131とは干渉しない位置にあり、偏心ローラー140が回転することにより、その凸部が用紙の下側に接触できるようになっている。反時計回りに摩擦力により用紙端部を捲り上げる。
【0030】
このような構成において、例えば、用紙がホチキス止めだったり折れ曲がっているために、用紙収納部110の出口或いは分離部材121の手前で詰まると、収納部底面の用紙有無センサが用紙を検知し、分離部と破砕部の間にある用紙通過センサが一定時間用紙を検知しないと用紙詰まりと認識して、軸137が回転し、偏心ローラー140を反時計回りに回転させる。これにより偏心ローラー140の凸部が用紙の端部Eを急に持ち上げ、用紙と偏心ローラー140との接触圧が急激に増加した状態で用紙を前方に送る。このため、用紙の最後端は湾曲し膨らみ、その圧力でベルトとの接触圧も増加し、用紙の端部はベルトにより捲り上げられ裏返しの状態で前方に搬送される。用紙の端部が搬送され、狭くなった出口までくると、詰まっている用紙の下から搬送される為に分離ロールに接触せずに取り込まれ、またしわ等により一部厚くなっている部分が有ったとしても、分離ロール及びベルトが座屈し、結果として、停止力よりも搬送力が勝り、用紙は出口を通過し、破砕部に供給される。
【0031】
このように用紙がホチキス止やクリップ止されている場合には、止められている端部を用紙搬送方向先頭部にセットすることで、用紙は一枚一枚捲くられホチキス止めされた部分から剥がされていくため、出口で詰まることなく破砕部に供給することができる。
【0032】
図5に示す用紙供給部100は、基本的な構成は図2に示したものと同様であるが、ベルトの研削機構150が設けられていることが特徴である。すなわちベルト搬送系のプーリー132の近傍に、支点151で回転可能なアーム152が設置されており、その一端にはベルト研削のための砥石153が固定され、他端にはアーム152を駆動するための駆動源、例えば電磁ソレノイド154と復帰スプリング155が固定されている。また図示しない用紙処理枚数のカウンタが設けられている。カウンタは、例えば、用紙の先端を検出するセンサからの信号やプーリーに設けられたエンコーダからの信号を入力し、用紙処理枚数をカウントし、それが一定の枚数に達すると電磁ソレノイド154に通電する。
【0033】
これにより電磁ソレノイド154は縮み、アーム152を図中反時計方向に回転させ、砥石153を回転中のベルト131に接触させる。砥石153と接触することによりベルト131の表面が削られ、再度高摩擦状態に戻る。電磁ソレノイド154への通電は、例えばタイマー制御で行なわれ、一定時間後通電が終了するようになっている。通電が終わると復帰スプリング155の力でアーム152は元の状態に復帰し、砥石153もベルト131から離れ研削は終了する。
【0034】
次に破砕部200について説明する。本発明のドキュメントシュレッダー装置の破砕部200は、用紙を把持して搬送する搬送系と、この搬送系の搬送速度よりも速い周速度で回転しながら用紙を破砕する破砕系とを備え、搬送系を構成する要素の一部と破砕系を構成する要素の一部を共通とし、搬送系の作用点と破砕系の作用点を用紙の搬送方向に対し実質的に同じ位置とする、或いは搬送系に連続して破砕系を配置することを特徴としたものである。このような構成を可能にする具体的な態様としては、例えば、ベルト搬送系とプーリーとを組み合わせたもの(第1の態様)、歯車を用いたもの(第2の態様)などがある。以下、各態様の破砕部について詳述する。
【0035】
第1の態様
図6及び図7は、ベルト搬送系とプーリーを用いた破砕部の第1の実施の形態を示す図である。この破砕部200は、プーリー及びベルトからなる搬送系230と、用紙を破砕するための機構と、破砕後の紙を排出するホッパー240とを備えている。用紙を破砕するための機構は、図示しない駆動源に接続され、互いに反対方向に回転する第1の軸210および第2の軸220と、第1の軸210に固定された平板状の破砕刃211と、第2の軸220に固定され、破砕刃211と協働して用紙の破砕(引きちぎり)を行なう平板状の破砕刃221とを備えている。
【0036】
搬送系230は、上述した用紙供給部100の用紙搬送系が兼ねていてもよい。図示する実施の形態では、搬送系230は、3つのプーリー232a、232b、232cと、プーリー232に掛回されたベルト231と、プレスローラー234と、用紙ガイド235とからなる。ベルト231は、例えば表面を高摩擦係数とするために、高摩擦係数の材料(ゴム)であるか或いは細かい凹凸状に加工されている。ベルト231は、用紙の幅に合わせて幅広いものを用いてもよいが、この実施の形態では、用紙の幅方向に複数本のベルトを並置した構成としている。3つのプーリーの一つは図示しない駆動源に接続された駆動プーリーであり、ベルト231を図中反時計回りに回転させる。搬送系の下側に位置するプーリー232aの下方には、破砕を行なうための機構が固定されている。
【0037】
破砕機構を構成する2本の軸210、220は、軸210が時計回り、軸220が反時計回りで、搬送系による用紙の搬送速度よりも速い周速度で回転し、これにより軸210、220に固定された破砕刃211、221が用紙に突き刺さり、引きちぎり動作を行なう。破砕刃211、221は、図7に示すように、板状部材の両端部に鋭利な刃を形成したものであり、2枚で軸を挟むように軸210、220に固定されている。破砕刃は軸を挟む2枚を一組として、複数組が軸210、220の軸方向に配置されている。複数組の破砕刃は、それぞれプーリー231の軸方向に複数配置されるベルト231に対向している。また破砕刃211と破砕刃221は、両破砕刃の回転径は重なり合い且つ90度の位相差となるように固定されている。これにより両破砕刃の間を通過する用紙に刃が突き刺さりやすくなっている。
【0038】
また軸210には、複数組の破砕刃211の間に、軸210に対し自由回転する突起状ホイル213と、突起状ホイル213に固定されたローラー214が装着されている。ローラー214は、ベルト231に圧接し、これによりローラー214とベルト231との間で用紙を挟み搬送する。突起状ホイル213は、外周に鋭利な突起状の刃が形成された円盤状の部材で、複数のベルトの間に配置される。突起状ホイル213は、ローラー214とベルト231で挟まれた用紙に穴を明けながら用紙を搬送し、破砕刃によって発生する用紙への大きな引張力に対向して保持力を持ち、用紙が最後まで破砕されるのを助ける。
【0039】
このような構成における破砕部200の動作について説明する。
プレスローラー234とベルト231によって搬送された用紙が、プーリー232aとローラー214との間に達すると突起状ホイル213の刃が用紙に突き刺さり用紙を確実に保持しながら破砕刃211、221の間に送る。このとき突起状ホイル213がなければ用紙はその剛性により用紙の進行方向に向かって直進しようとするが、突起状ホイル213によって保持されているためホイルに沿って移動し、確実に破砕刃211、221の間に送ることができる。破砕刃211、221は、プーリー232aと同じ回転速度で回転する突起状ホイル213に対し速い速度で回転しているので、突起状ホイル213によって保持されている用紙に対し引きちぎり力が与えられ、用紙は用紙片となって破砕刃211、221の下部に設置されたホッパー240内に落下する。用紙は突起状ホイル213によって後端まで同じ搬送速度で搬送され、最後まで破砕刃による引きちぎりが行われる。したがって、用紙の端部が直線状に残るということがなく、1回の破砕動作で用紙全体が確実に破砕される。ホッパー240で集められた用紙片P’は、次工程の圧縮部300に送られる。
【0040】
本実施の形態によれば、対向配置され、用紙を破砕する破砕刃の軸の一方に、軸に対し自由回転して用紙を保持、搬送するための手段を設けたことにより、搬送速度と破砕刃の回転速度との差を利用して効果的に用紙の引きちぎりを行うことができ、しかも両者の作用点が用紙の搬送方向に対しほぼ同じ位置となるので、用紙の終端まで確実に破砕を行うことができる。
【0041】
図8および図9は、ベルト搬送系とプーリーを用いた破砕部の第2の実施の形態を示す図である。図中、図6および図7に示す実施の形態と同じ要素については同一の符号で示している。
【0042】
この破砕部は、破砕機構として、軸250について自由回転するプーリー251と破砕刃211が固定された軸210とを備えている。プーリー251は用紙搬送系のベルト231に圧接するように配置されており、ベルト231の回転に伴い回転し、これによりベルト231との間に用紙を挟んで搬送する。ベルト231は用紙の幅方向(プーリーの軸方向)に複数配置されており、これに対向してプーリー251も複数配置されている。また軸250には、その軸方向にプーリー251と交互に押さえリング252が装着されている。
【0043】
破砕刃215および軸210は、第1の実施の形態と同様の構造を有し、2枚の破砕刃を一組として軸210の軸方向に複数組が固定されている。ただし破砕刃215は、その回転が押さえリング252と干渉しないために、両端にそれぞれ所定の間隔を持つ2つの突起状の刃が形成されている。軸210は図示しない動力源に接続されており、ベルト231による用紙の搬送速度より速い周速度で破砕刃215を回転させる。複数組の破砕刃215は、ベルト231およびプーリー251と交互に配置されており、且つその中央に押さえリング252が位置するように配置される。これにより破砕刃の2つの突起状の刃と押さえリングとが干渉しないようになっている。また破砕刃215は、用紙との接触部がベルト231とプーリー251との接触中心点(圧力最大点)より少し下方にずらして設置されている。これにより用紙が破砕されるとき、ベルトによる用紙保持の影響をなくし、帯状に残ることが無く、紙の幅方向に自由に引きちぎられ切り残しがなくなる。
【0044】
このような構成における本実施の形態の破砕部の動作を説明する。用紙Pが用紙ガイド237を経てプーリー251とベルト231の接触部に導かれると、用紙はプーリー251とベルト231の間に挟まれ、保持されプーリー251の曲率に従い弧状の状態に曲げられて搬送される。用紙の先端が高速で回転する破砕刃211の回転半径内にくると、破砕刃の鋭利な先端が用紙に突き刺さり、ベルト231との周速の差で用紙は引きちぎられ破砕が始まる。この際、用紙は押さえリング252によって破砕刃から逃げる方向への移動が制限されているので、確実に破砕刃による引きちぎり動作を行うことができる。また用紙は弧の状態に曲げられ、ある程度剛性を持つため破砕刃が刺さりやすく、また破砕時の騒音が大きく減少する。
【0045】
用紙の終端近くなると破砕刃211の強い張力が幅が狭くなった用紙に働くため、用紙はベルト231で押さえられている部分以外は引きちぎられ、最後にベルト231に挟まれた部分が残り、小さな用紙片としてプーリー251から落下する。
【0046】
本実施の形態によれば、用紙を破砕する破砕刃を、搬送用プーリーによる用紙保持部の直ぐ後に設置するとともに、破砕時に用紙を押さえ破砕を補助する押さえリングを搬送用プーリーに設けたことにより、第1の実施の形態と同様に、用紙の終端まで確実に用紙を破砕することができる。
【0047】
図10は、ベルト搬送系とプーリーを用いた破砕部の第3の実施の形態を示す図である。この実施の形態は、第2の実施の形態の破砕刃215と同軸にベルト搬送系を構成する第2のプーリー238を設けるとともに、プーリー251と同軸に設けられる押さえリング252に代えて破砕刃216を装着したことが特徴である。すなわち、破砕刃215が固定される軸210には、破砕刃215の回転半径より半径の小さい複数のプーリー238が、破砕刃215と交互に回転自在可能に装着されている。複数のプーリー238はそれぞれ搬送系のベルト231と接触し、ベルト231の回転に従い回転する。一方、プーリー251は第2の実施の形態と同様に、その軸方向に沿って複数配置され、各プーリーの間には破砕刃215と同様の構造の破砕刃216が固定されている。プーリー251は、軸250に対し自由回転が可能であり、ベルト231の回転に従い回転する。
【0048】
このような構成において、用紙はまずプーリー251とベルト231との間に挟まれ保持された状態でベルト231の速度で搬送される。用紙がプーリー251とベルト231との接触中心部をある程度過ぎたところで破砕刃215との接触が始まり、ベルトによる搬送速度と破砕刃215の周速度との差により、引きちぎり動作が開始される。一方、破砕刃216の回転径はプーリー251よりも少し小さいため、単独では用紙と接触することはないが、一旦破砕刃215による破砕が始まると破砕刃216側に押されてくる用紙を破砕したり、用紙を破砕刃215側に押し返し破砕刃215による破砕を助けるように働く。
【0049】
この実施の形態においても、用紙は終端まで確実にプーリー251とベルト231で保持された状態で破砕が行われるので、終端を残すことなく1回の破砕動作で破砕を行うことができる。
【0050】
第2の態様
次に歯車を用いた破砕部の実施の形態を説明する。図11から図14は、複数の歯車を利用した第4の実施の形態とその変更例を示す図である。この実施の形態の破砕部は、複数の歯車群を用いることによって動力源を簡素化するとともに、用紙の搬送系に対し破砕系の作用点を少し後ろにずらし、用紙に作用する破砕張力を安定化させ、用紙の終端まで確実に破砕を行うようにしたものである。また用紙の搬送系に歯車を用いることにより、破砕系に進む用紙をあらかじめ皺状にするため、破砕刃が引っ掛りやすく引きちぎりが容易となる。
【0051】
図11および図12は、それぞれ第4の実施の形態の破砕部を横から見た図、上から見た図である。この破砕部500は、用紙の搬送系である第1および第2の歯車状ホイル511、512と、破砕系である第1および第2の歯車軸521、522と、歯車軸521、522にそれぞれ固定された破砕刃531、532とからなる。歯車状ホイル511、512および破砕刃531、532は、図12に示すように、用紙の幅方向に複数配置されており、図11の矢印方向から見たときに互いに交互に配置されている。
【0052】
歯車状ホイル511、512は、同形状であって外周に外歯512a、内周に内歯512bが形成されたリング状の部材で、互いの外歯が噛み合うとともに、それぞれの内歯に歯車軸521、522が噛み合っている。歯車軸521、522は、外周に第1の実施の形態と同様の構造を有する破砕刃531、532が2枚を一組として複数組間隔を置いて固定されている。歯車軸521、522の、破砕刃が固定されていない外周には歯車状ホイル511、521と噛み合うための歯が形成されている。歯車軸521、522は、図示しない駆動源に接続されており、歯車軸521が時計回り、歯車軸522が反時計回りに回転する。歯車軸521、522の回転により、これらに固定された破砕刃531、532が回転する。破砕刃531の回転径と破砕刃532の回転径は互いに重なり、これによってこの間を通過する用紙を破砕する。歯車状ホイル511、512の外歯同士がかみ合う位置は破砕刃の回転中心から少し上(約1〜2cm上)にずれたところに設定される。
【0053】
歯車軸521、522の回転により、それらと内歯が噛み合っている歯車状ホイル511、512も歯車軸と同方向に回転する。歯車状ホイル511、512の回転速度は、歯車軸521、522の回転速度に対し、歯車軸の歯数と内歯の歯数との割合で決まる減速比で減速された遅い速度となる。たとえば破砕刃と歯車状ホイルとの回転速度比は、破砕刃の一回転で歯車状ホイルは用紙を4cm程度送るように設定され、用紙送り約1cmごとに破砕刃の歯が交互に用紙に当たるように設定されている。これにより搬送系である歯車状ホイル511、512と破砕系である歯車軸521、522との間に速度差が形成され、破砕刃による引きちぎり動作が可能となる。
【0054】
また歯車状ホイル511、512の内側には、歯車軸に固定された破砕刃の回転を妨げない位置に、ホイルの回転を安定にするために歯車541、542が設けられている。
【0055】
このような構成において、図示しない搬送系(用紙供給部)からガイド550を経て歯車状ホイル511、512の間に搬送された用紙は、まず外歯に噛み込まれ皺状に変形させられ、その直後破砕刃531、532で破砕される。歯車状ホイル511、512が用紙を送る速度に対し、破砕刃531、532は速い周速度で回転しているため用紙に張力が与えられ、安定した引きちぎり動作が行われ、最後まで破砕される。
【0056】
本実施の形態によれば、用紙を搬送する搬送系の歯車と、用紙を破砕する破砕系の軸とを遊星歯車としたことにより、同一の駆動系で搬送と破砕とを行うことができ、また搬送系の作用点に連続して破砕系の作用点を配置することができ、用紙の終端まで確実に破砕を行うことができる。さらに搬送系により用紙を皺状にするので、破砕刃が突き刺さりやすく効率よく破砕を行うことができる。
【0057】
なお歯車群を利用した破砕部は、上述の実施の形態のほか、歯車の組み合わせを種々変更することが可能である。例えば図13に示すように、歯車状ホイル561、562の外側に外歯と噛み合う動力伝達用の歯車571、572を設け、歯車状ホイル561、562の駆動を、破砕刃の駆動とは別にすることも可能である。またこの実施の形態では、歯車状ホイル561、562は、その厚みより厚いホルダー581、582に回転自在に支持されている。ホルダー581、582は2本の支柱590で支持されている。また破砕刃が固定された軸511、512は、ホルダーに回転自在に支持されており、歯車状ホイル561、562よりも速い周速度で回転する。
【0058】
この実施の形態でも、歯車状ホイルの作用点と破砕刃の作用点とが近接し、かつ歯車状ホイルによって用紙を皺状にして破砕刃に送り込むことができるので、図11に示す実施の形態と同様に確実かつ効率よく用紙の破砕を行うことができる。
【0059】
図14に示す変更例は、破砕刃を固定した軸600に破砕刃と交互に固定された歯車610、この歯車610と噛み合う歯車620、および歯車620と同軸で回転する歯車630によって、軸600の回転を減速して歯車ホイル640に伝達するようにしたものである。破砕刃および歯車610を固定した軸620と、歯車620および歯車630を固定した軸650は、含油合金等からなるベース660に支持されている。ベース660は、歯車状ホイル640の軸670に対しては軸受けになっている。歯車610と歯車630は、ベース660の同じ側にあって、他の部材と隔てられている。
【0060】
この実施の形態でも、歯車状ホイルの作用点と破砕刃の作用点とが近接し、かつ歯車状ホイルによって用紙を皺状にして破砕刃に送り込むことができるので、図11に示す実施の形態と同様に確実かつ効率よく用紙の破砕を行うことができる。
【0061】
次に歯車を用いた破砕部であって、搬送系の作用点と破砕系の作用点とが用紙の搬送方向について実質的に同じ位置にあり、第2の態様に比べ少ない歯車数で効率よく用紙の破砕を可能にした破砕部の実施の形態を説明する。
【0062】
図15および図16は破砕部700の第5の実施の形態を示す図で、図15は用紙搬送方向の横から見た図、図16は上から見た図である。この破砕部は、平行な2本の駆動軸710、720と、駆動軸710に固定された搬送用歯車711と、駆動軸720に固定された破砕用歯車721と、駆動軸710に回転自在に支持され、破砕用歯車721と噛み合って従動するに従動歯車713と、駆動軸720に回転自在に支持され、搬送用歯車711と噛み合って従動するに従動歯車723とを備えている。搬送用歯車711は、用紙Pの張力が集中し、そこから破れやすくなるように他の歯車に比べ歯幅を小さくしている。
【0063】
駆動軸710、720はそれぞれ図示しない駆動源に接続され、それぞれ異なる速度で回転する。破砕用歯車721が固定された駆動軸720は、搬送用歯車711が固定された駆動軸710より速い速度で回転する。各駆動軸において、搬送用歯車或いは破砕用歯車と従動歯車は互いに交互に複数配列し、駆動軸710に固定された搬送用歯車711と駆動軸720に固定された従動歯車723とが噛み合い、駆動軸720に固定された破砕用歯車721と駆動軸710に固定された従動歯車713とが噛み合うように配置されている。
【0064】
各歯車間には負荷スプリング731、732が装着されている。負荷スプリング731、732は、自由に回転できる従動歯車713、723に適当な回転負荷トルクを与えるもので、それにより2つの歯車が噛み合い接触する部分で用紙保持圧力が高まり、搬送用歯車および破砕用歯車にかみこまれる用紙の保持力、搬送力が向上するようになっている。
【0065】
このような構成において、用紙Pが搬送用歯車711と従動歯車723との噛み合い部にくると、用紙は二つの歯車により噛み込まれ皺状にされながら搬送される。同時に破砕用歯車721と従動歯車713と間でも用紙の搬送が始まる。この際、破砕用歯車721による搬送速度が搬送用歯車711による搬送速度よりも速いため、両歯車間の用紙に部分的で大きな引張り力が発生し、搬送用歯車の用紙保持部に張力が集中する結果、その部分から用紙は引きちぎられ破砕され細かい用紙片となる。
【0066】
このように本実施の形態によれば、2本の駆動軸とそれらに設けられた搬送用歯車と従動歯車の組および破砕用歯車と従動歯車の組という簡単な構成で、確実な用紙保持力と破砕力を与えることができ、用紙の終端まで確実に且つ効率よく破砕を行うことができる。
【0067】
本実施の形態の変更例として第6の実施の形態を図17および図18に示す。この実施の形態でも、互いに回転方向、回転速度の異なる2つの駆動軸710、720に、搬送用歯車711、破砕用歯車721が固定される点は第5の実施の形態と同じであるが、搬送用歯車711と噛み合って搬送系を構成する従動歯車は、駆動軸720に固定されておらず、その代わりに、プレス歯車740が破砕系の作用点とは異なる位置、ここでは搬送用歯車711の上側に設けられている。プレス歯車740は歯幅を比較的広くし、一方、搬送用歯車711は、その製造過程で転移係数を調整し、歯の先端が鋭く尖るように加工されている。また搬送用歯車711は、従動歯車713よりも径が大きく、破砕用歯車721と従動歯車713とが噛み合う位置において、その中心よりも破砕用歯車721側に突出している。
【0068】
このような構成において、搬送用歯車711とプレス歯車740との間に用紙が噛み込まれると、用紙はプレス歯車740により強く搬送用歯車711側に押され、その歯に突き刺さり穴があいた状態で搬送され、破砕歯車721と従動歯車713との間に送られる。用紙の端部が破砕歯車721と従動歯車713との噛み合い部に噛み込まれると、用紙は歯車同士の歯圧により固く保持されたまま搬送用歯車711の搬送速度より高速で送られるため、搬送用歯車711と破砕用歯車721との間で用紙に大きな引きちぎり力が発生する。このとき、破砕用歯車721の歯の位置は搬送用歯車711の歯の位置より搬送用歯車711が固定された軸710側に突き出した位置にあるので、引きちぎり破砕がより円滑に行われる。また用紙にはすでにプレス歯車740と搬送用歯車711とによって突き刺さり穴が形成されているため、用紙に加わる張力はすべて穴に集中し、比較的弱い張力でも用紙の引きちぎりが始まり細かい用紙片に破砕される。
【0069】
第6の実施の形態の破砕部を、ベルト搬送系を備えた用紙供給部100と連結したドキュメントシュレッダー装置の全体の構成を図19に示す。
用紙収納部に収納された用紙Pは、搬送ベルト131が回転すると用紙収納部110と搬送ベルト131との間の隙間より用紙収納部110の外部に送られ、分離ローラー121により例えば1枚のみが分離され、ガイドローラー139およびガイド135に案内されて、破砕部700の搬送用歯車に運ばれる。プレス歯車740との噛み合い部で搬送用歯車711の歯に突き刺さり搬送され、ガイド135により回転する破砕用歯車721の噛み合い部に誘導される。破砕用歯車721は搬送用歯車711より搬送速度が速いため、両者の間で用紙の引きちぎり力が発生し用紙は細かく破砕され、ホッパーを介して圧縮部に集められる。
【0070】
つぎに、圧縮部300について説明する。圧縮部300は、破砕部200で破砕された用紙片312を所定の圧縮力で押し固め、一塊の圧縮物として排出する。
【0071】
まず、圧縮部300の構造を、その上面図である図20、A−A断面図である図21、側面図である図22を用いて説明する。圧縮部300は、上部から用紙片312が投入される格納部307と、それに連結された圧縮室304と、格納部307と圧縮部304との間に配置された圧縮機構部331とを有する。なお、図20においては、内部構造を示すために、圧縮室304と圧縮機構部331の一部を切り欠いて示している。
【0072】
格納部307は、図21にその外形を破線で示したように、板状部材をU字型に湾曲させて形成した本体と、その一端に配置された板状部材である側面部材とにより構成され、U字型本体の開口は、用紙片12の投入口として上方に向けられている。U字側本体の他方の開放された側面部は、圧縮機構部331に連結されている。
【0073】
圧縮室304は、4枚の板状部材を組み合わせて構成した、筒状の圧縮室本体と、2枚の圧力壁309とを含む。筒状の圧縮室本体は、内部空間の断面形状が四角形であり、その径は、軸方向に一定であって、狭められている箇所はない。したがって、圧縮された用紙片312が筒状の圧縮室本体の軸方向の特定箇所に押しつけられることはない。筒状の圧縮室本体の開口は、一側が用紙片の搬入口、他側が排出口となる。
【0074】
2枚の板状の圧力壁309は、先細りの勾配を持つように、すなわち主平面のなす角が180°よりも小さくなるように、一端を付き合わせられ、筒状の圧縮室本体の排出口を覆うように配置されている。他端はそれぞれヒンジ321によって筒状の本体の側面に取り付けられている。これにより、圧力壁309は、両開き扉のように開閉可能に圧縮室本体の開口を塞いでいる。また、2枚の圧力壁309の付き合わせられた端部には、それぞれ突起322が設けられ、突起322にはそれぞれスプリング310の端部が固定されている。スプリング310の他端は、圧縮室本体の側面に設けられた突起323に固定されている。この時スプリング310は、2枚の圧縮壁309が閉じる方向に力を加えるように、取り付けられている。圧縮部304の内部の用紙片312は、圧力壁309に押しつけられることにより圧縮される。用紙片312の塊(用紙塊311)が圧力壁309を内側から押す力が、スプリング310が圧力壁309を閉じる方向に与える力を超えた場合には、用紙塊311が圧力壁309を押し広げ、外部に用紙塊311が排出される。
【0075】
圧縮機構部331は、格納部307と圧縮室304の搬入口とを連結するように配置されたフレーム313と、格納部307と圧縮室304の連結部の内部空間に回転可能に配置された軸302と、圧縮ローラー301と、駆動軸306と、コイルスプリング305とを備えている。
【0076】
軸302は、複数の圧縮ローラー301の回転中心に挿入され、圧縮ローラー301が軸302を中心に回転できるように支持している。同時に、軸302の中心には、駆動軸306が垂直に挿入されている。駆動軸306の逆側の端部は、格納部307を貫き、格納部307の逆側の側面から突出しており、不図示の回転駆動源に接続されている。駆動軸306の回転駆動されることによって軸302は、格納部307と圧縮室304との境界面(鉛直面)内で回転する。これに伴い、圧縮ローラー301は、格納部307と圧縮室304との境界面で駆動軸306を中心に同心円を描くように回転する。このとき、圧縮ローラー301は、圧縮室304内に用紙片312が満たされている場合には、用紙片312の塊の端面を押しつぶすように、軸302を中心に自転し、用紙片312を圧縮する。
【0077】
軸302の両端は、フレーム313の内部に配置されたリング状の支持体303に固定されている。支持体303は、スラストベアリング308を介して、フレーム313に強固に支持されている。よって、圧縮室304内の用紙片312の圧縮度合いが高まり、圧縮ローラー301に大きな圧力が加わる場合であっても、支持体303に働く反力は、ラジアル荷重とスラスト荷重が受け入れられるベアリング308を通じ、フレーム313で支持することができる。これにより、大きな圧縮力が発生したときにも、圧縮ローラー301は安定して回転することができる。また、軸302にかかる大きな力をフレーム313で確実に支持することができるため、低トルクで回転駆動することができる。
【0078】
コイルスプリング305は、適切な送りピッチが設定された螺旋搬送機構であり、格納部307の内部空間に配置されている。その両端は駆動軸306に固定されている。駆動軸306が回転すると、コイルスプリング305も格納部307の内部空間で回転し、格納部307内に堆積した用紙片312を圧縮室304側へ移動させる搬送機構として動作する。
【0079】
つぎに、圧縮部300の動作を説明する。
用紙破砕部200で破砕された用紙片312は、格納部307の上部開口から連続投入される。この状態で、駆動軸306が回転すると、コイルスプリング305は、格納部307に堆積した用紙片312を圧縮室304へ向かって連続的に搬送し、用紙片12は、回転する軸302の脇の空間を通り抜けて、圧縮室304の内部空間へ搬入される。圧縮室304が圧縮室304と格納部307との境界面まで用紙片312で満たされると、境界面で回転している軸302に取り付けられている圧縮ローラー301は、用紙片12の塊の端面に接触した状態で、円軌道を描きながら回転する。これにより、用紙片12は圧縮室304側に向かって連続的に押しつぶされ圧縮される。さらに連続的に格納部307から圧縮室304へ搬送されてくる用紙片312は、圧縮ローラー301によって押しつぶされ、踏み固められるように圧縮室304へ押し込まれる。このようにコイルスプリング305による搬送および圧縮ローラー301による圧縮動作は、駆動軸306の回転により、連続的に進行し、圧縮室304内部では用紙片の圧縮が連続して行われ、用紙片312は、用紙塊311になる。
【0080】
圧縮室304の用紙塊311が圧力壁309を押す圧力が、スプリング310のバネ力によって設定される所定レベルに達すると、用紙塊311が圧力壁309を押し広げ、圧縮されて一塊となった用紙塊311が、圧縮室304から一塊のまま排出される。
このように、本実施の形態の圧縮部300の構造では、圧縮室304の筒状の本体の径を一定とし、圧縮室304での用紙片312の圧縮により最も力がかかる部分が、先端(排出口)の圧力壁309となるように構成している。しかも、この圧力壁309をバネ力によって開閉可能な構造とし、所定の圧力で開く排出口としている。このため、本実施の形態の構造では、圧縮された用紙塊311に詰まりが発生しない。また、スプリング310として所望のバネ力のものを用いることにより、用紙塊311の圧縮力を所望の圧縮力に容易に設定することができる。2枚の圧力壁309の突き合わせの勾配によっても、圧縮率を調整することができる。
【0081】
また、用紙塊311が圧力壁300に突き当たるまでの圧縮室304本体は、径が一定であるため、径を段階的に狭めるためのテーパー部等が不要であり、圧縮室304を小型にすることができる。
また、圧縮機構部331は、圧縮ローラー301を用紙塊311の端面に接触させて、端面上で回転させることにより押しつぶす構成であるため、圧縮機構部331は、ローラー301部分の厚みのみでよく、小型な圧縮機構部331を提供できる。
【0082】
また、圧縮機構部331の搬送機構として、格納部307を貫く駆動軸306によって回転するコイルスプリング305を用いている。別途搬送機構を設けることなく、圧縮機構部331の回転駆動軸を利用して用紙片の搬送ができる。しかも、コイルスプリング305による搬送および圧縮ローラー301による圧縮は、上述したように、用紙塊311の圧縮面が鉛直面方向であっても搬送および圧縮を行うことができる。また、圧縮面を鉛直方向とした場合であっても搬送および圧縮を行うことができる。よって、設置方向に自由度の高い圧縮部300を提供することができる。
【0083】
なお、用紙片搬送用のコイルスプリング305は、必要に応じて1条から2条以上へ増設することができる。
また、上記構造では、圧縮室304の圧力壁309をスプリング310の引っ張り力によって閉じる構成であるが、本実施の形態の圧縮部300はこの構造に限られるものではない。例えば、圧力壁309と不図示の筐体との間に、スプリングを配置し、圧力壁309の外側壁面を垂直に押す力を加えることにより、圧力壁309を閉じることも可能である。この場合は、スプリングを押し縮める力に逆らって、用紙塊311は圧力壁309を押し開き、排出される構成となり、大きな圧縮力で用紙塊311を圧縮したい場合等に適している。
【0084】
上述の圧縮部300においては、圧縮機構部331は、圧縮ローラー301と軸302を用いて用紙塊311を圧縮しているが、別の機構を用いることも可能である。例えば図23に記載したように、駆動軸306に取り付けたプロペラ344によって用紙塊311を圧縮することができる。プロペラ344が回転することにより、プロペラ344の圧縮室304側の面は、用紙塊311の端面と接触し、端面上を摺動する。この摺動により、用紙塊311は押しつぶされ、圧縮される。
【0085】
このとき、プロペラ344の圧縮室304側の面に、プロペラ344の回転中心を中心として同心円を描く複数の溝を設けておくことが可能である。これにより、プロペラ34と用紙塊311との動摩擦力を低減することができ、駆動軸306の回転トルクを小さくすることができる。
【符号の説明】
【0086】
100・・・用紙供給部、110・・・用紙収納部、120・・・用紙分離機構、121・・・分離部材、130・・・用紙搬送系、200、500、700・・・破砕部、210、220、511、521、710、720・・・軸、211、215、216、221、531、532・・・破砕刃、213・・・突起状ホイル、214・・・ローラー、231・・・ベルト、235・・・ガイド、252・・・押さえローラー、300・・・圧縮部、301・・・圧縮ローラー、302・・・軸、303・・・支持体、304・・・圧縮室、305・・・コイルスプリング、306・・・駆動軸、307・・・格納部、308・・・スラストベアリング、309・・・圧力壁、310・・・スプリング、311・・・用紙塊、312・・・用紙片、313・・・フレーム、321・・・ヒンジ、322・・・突起、323・・・突起、331・・・圧縮機構部、344・・・プロペラ、711・・・搬送用歯車、713、723・・・従動歯車、721・・・破砕用歯車、740・・・プレス歯車

【特許請求の範囲】
【請求項1】
用紙片の搬入口と排出口とを有する圧縮室と、前記搬入口に配置された用紙片圧縮機構部とを有し、
前記圧縮室の排出口には、開閉可能な圧力壁と、該圧力壁を閉じる方向に所定の圧力を加える押圧部材が配置されていることを特徴とする用紙片圧縮装置。
【請求項2】
請求項1に記載の用紙片圧縮装置において、前記圧縮室は、内径に段差のない筒状部材であり、搬入室と排出口は向かい合わせに配置され、前記用紙片圧縮機構部は、前記搬入口から前記排出口の圧力壁に向かって用紙片を押し込む力を加える構造であることを特徴とする用紙片圧縮装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の用紙片圧縮装置において、前記圧力壁は、2枚の板状部材であり、該2枚の板状部材は、主平面のなす角が180°よりも小さくなるように、端部を突き合わせて配置され、突き合わせた部分から開閉可能に圧縮室に取り付けられていることを特徴とする用紙片圧縮装置。
【請求項4】
用紙片の搬入口と排出口とを有する圧縮室と、前記搬入口に配置された用紙片圧縮機構部とを有し、
前記用紙片圧縮機構部は、搬入口の開口面内で回転する回転部材と、回転部材を駆動する駆動軸とを含むことを特徴とする用紙片圧縮装置。
【請求項5】
請求項4に記載の用紙片圧縮装置において、前記回転部材は軸状部材であり、該軸状部材には、1以上のローラーが取り付けられ、該ローラーは、軸状部材の前記開口面内での回転により、前記圧縮室内の用紙片の圧縮物と接触し、圧縮物の端面上で転がることを特徴とする用紙片圧縮装置。
【請求項6】
請求項4または5に記載の用紙片圧縮装置において、前記搬入口の外側には用紙片を受ける容器が配置され、該容器内にはコイル形状の線材が備えられ、該コイル形状の線材は、前記駆動軸に固定され、駆動軸の回転に伴って回転することにより、前記容器内の用紙片を前記搬入口に搬送することを特徴とする用紙片圧縮装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【公開番号】特開2013−91107(P2013−91107A)
【公開日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2013−10844(P2013−10844)
【出願日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【分割の表示】特願2006−528623(P2006−528623)の分割
【原出願日】平成17年6月24日(2005.6.24)
【出願人】(507021263)ECO株式会社 (6)
【Fターム(参考)】