説明

画像データ処理方法及びその方法を実施するプログラムと画像データ処理装置

【課題】文字画像などが含まれている画像データが入力されても適正な変倍処理を施して、適正なプリント出力が可能な画像データ処理技術を提供する。
【解決手段】入力された画像データに対して変倍処理を含む画像処理を施す画像データ処理装置。この装置は、画像データに文字画像が含まれている可能性を表す文字含有度を演算する文字画像判定部41と、文字含有度に基づいて文字画像が含まれている可能性が高い画像データに対しては輪郭強調変倍処理モジュールを割り当てるとともに文字画像が含まれている可能性が低い画像データに対しては輪郭抑制変倍処理モジュールを割り当てる変倍処理モジュール選択部42と、画像データに割り当てられた変倍処理モジュールを用いて変倍処理する変倍処理部44とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、入力された画像データに対して変倍処理を含む画像処理を施し、プリント出力部で該当画像を形成したプリントを出力するためのプリントデータを生成する画像データ処理技術に関する。
【背景技術】
【0002】
デジタルカメラやスキャナといった画像データ取得機器によって取得された画像データの画像サイズは千差万別であるが、そのような画像データをプリント出力、例えば写真プリント出力する場合には一般にはプリントサイズというものが規定されていることから、そのプリントサイズとプリンタの解像度とに適合するように予め画像データを変倍(縮小・拡大)する必要がある。このような画像データの変倍処理のアルゴリズムとして、バイリニア法やニアレストネイバー法等が知られている。ニアレストネイバー法は最近傍法と呼ばれる方法であり、補間したい点に最も近い画素の濃度値(画素値)をそのまま使うものであり、拡大縮小率が高くなるにしたがって、輪郭が強調されたものになる。バイリニア法は線形補間法と呼ばれる方法であり、注目する新しい位置の画素値は、対応する元画像の位置の近傍4画素からの距離によって線形補間するものであり、滑らかな画像が得られるが、拡大縮小率が高くなるにしたがって、輪郭が失われる輪郭抑制の傾向が強くなる。
【0003】
変倍処理における異なるアルゴリズムの使い分けの適用例として、単一の解像度(第1の解像度)のイメージデータに基づく印刷処理が可能なプリンタに対して、第1の解像度のイメージデータを圧縮した圧縮データを送信する処理をコンピュータに実行させるプリンタドライバに対して、第1の解像度のイメージデータを第1の解像度よりも低い第2の解像度にバイリニア法を用いて変換する画像縮小処理と、第2の解像度のイメージデータをニアレストネイバー法を用いて第1の解像度に変換する画像拡大処理とを実行させる技術が知られている(例えば、特許文献1参照。)。この技術では、特にニアレストネイバー法では単純に画素を保管して画像を拡大するため拡大処理後のイメージデータは同じ画素値をもつ画素が連続して現れることから高い圧縮率で圧縮できることを活用している。
【0004】
DPショップなどで写真プリントを出力するような場合では、変倍処理には滑らかな結果画像を得るためにバイリニア法やバイキュービック法が用いられているため、変倍処理すべき画像に文字画像が含まれている場合文字の輪郭があまくなり、文字をくっきり見せたいような画像には不向きであった。
【0005】
黒い文字や黒細線を、より黒く、シャープに印字したいという要求に応えるために、画像中の文字/線画部分の太さを判定し、文字/線画の輪郭情報と彩度情報を組み合わせて画像処理を行う際に、文字/写真分離レベルの調整により、黒文字処理用判定パラメータと処理の度合を同時に変化させることで、処理される文字の太さや、処理の度合が変化し、ユーザの好みに応じた画像の再現を可能する画像処理装置は提案されている(例えば、特許文献2参照。)。
【特許文献1】特開2003−288180号公報(段落番号0011、0034−0036)
【特許文献2】特開平07−273983号公報(段落番号0003、0125)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
最近、レンズ付きフィルム、デジタルカメラ、特にカメラ付き携帯電話の普及とともに、手軽な撮影が可能となり、これらの機器で取得される撮影画像データには、風景や人物などの従来の写真画像だけではなく、時刻表や料理のレシピといった文字画像を中心とした画像が含まれるようになってきている。このため、例えば、DPショップに持ち込まれ写真プリント出力を依頼される画像データにも文字画像を中心とした画像もあり、このような画像データに対して従来のような滑らかな画像を得ることを意図した変倍処理を施してプリント出力していたのでは、顧客の要望に応えることができないといった問題が生じてきた。
上記実状に鑑み、本発明の課題は、文字画像などが含まれている画像データが入力されても適正な変倍処理を施して、適正なプリント出力が可能な画像データ処理技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、入力された画像データに対して変倍処理を含む画像処理を施し、プリント出力部で該当画像を形成したプリントを出力するためのプリントデータを生成する画像データ処理方法において、本発明では、前記画像データに文字画像が含まれている可能性を表す文字含有度を演算する文字画像判定ステップと、前記文字含有度に基づいて文字画像が含まれている可能性が高い画像データに対しては輪郭を目立たせる輪郭強調変倍処理モジュールを割り当てるとともに文字画像が含まれている可能性が低い画像データに対しては輪郭を抑制する輪郭抑制変倍処理モジュールを割り当てる変倍処理モジュール選択ステップと、前記画像データをこの画像データに割り当てられた変倍処理モジュールを用いて変倍処理する変倍処理ステップとが備えられている。
【0008】
この方法では、入力された画像データに文字画像が含まれている可能性を示す指標値としての文字含有度を演算し、この演算によって得られた文字含有度の値が高ければ文字が重要な画像要素であるとみなしてその画像データに輪郭を目立たせる輪郭強調変倍処理モジュールが割り当てられ、得られた文字含有度の値が低ければ自然画像が重要な画像要素であるとみなしてその画像データに輪郭を抑制する輪郭抑制変倍処理モジュールが割り当てられる。この画像データに基づいて出力されるプリントサイズと画像データサイズ、そして使用するプリント部の解像度に基づいて変倍率が決定されると、この画像データに割り当てられている方式の輪郭抑制変倍処理モジュールを用いて画像データが変倍処理される。これにより、文字が重要な画像要素となっている画像データから出力されるプリントは文字がくっきり見える画像となり、一般的な写真画像であるような自然画像が重要な画像要素となっている画像データから出力されるプリントは例え拡大しても滑らかなソフトフォーカスがかかったような画像となる。
【0009】
1つの画像データにおける文字画像は任意の位置に偏在していることが少なくない。従って、精度良く文字含有度を算定するために、前記文字画像判定ステップでは、入力された画像データを複数の領域に分け、各領域で演算された文字含有度から画像データ全体の文字含有度が決定されることが好ましい。その際、画像データを小さな領域で区分けし、各領域での文字含有度を1と0、つまり有無で表し、その集計値で表される面積比で、最終的な画像データ全体の文字含有度を決定することが好適である。また、その文字画像の偏在の様子によりその画像データが作り出す画像の特徴、例えば時刻表のような文字の一覧表あるいは料理レシピといったことを推定することもでき、例えば全領域の文字含有度の平均値、最大値、累計値、ヒストグラムなどからの分析により精度の高い、画像データ全体の文字含有度を決定することも好適な実施形態である。
【0010】
また、文字画像が偏在していることを考慮するならば、前記文字画像判定ステップでは、入力された画像データを複数の領域に分け、各領域で文字含有度が演算され、かつ前記変倍処理モジュール選択ステップでは、前記各領域での文字含有度を用いて当該領域毎に変倍処理モジュールが割り当てられることも好適な実施形態の1つである。これにより、文字画像が存在している可能性の高い領域には輪郭を強調する変倍処理が施され、文字画像が存在している可能性の低い領域には輪郭を抑制する変倍処理が施され、結果的にくっきりした文字画像と滑らかな自然画像が得られる。
【0011】
文字画像は全方向において所定の画素ピッチで濃度差が繰り返すという特徴を持つため、その画像データの空間周波数特性からその存在をある程度推測することができる。このため、前記文字画像判定ステップでは、対象となる画像データの空間周波数特性に基づいて文字含有度を演算することは、好適な実施形態の1つである。
【0012】
よく知られた変倍処理アルゴリズムを用いることでソフトウエアコストの低減を図るため、本発明の好適な実施形態では、輪郭強調変倍処理モジュールにはニアレストネイバー法に基づいた処理アルゴルズムが採用され、輪郭抑制変倍処理モジュールにはバイリニア法又はバイキュービック法に基づいた処理アルゴルズムが採用される。
【0013】
本発明では、上述した画像データ処理方法をコンピュータに実行させるプログラムやそのプログラムを記録した媒体も権利の対象とするものである。
【0014】
さらに、本発明では、上述した画像データ処理方法を実施する画像データ処理装置も権利の対象としており、そのような装置は、入力された画像データに文字画像が含まれている可能性を表す文字含有度を演算する文字画像判定部と、前記文字含有度に基づいて文字画像が含まれている可能性が高い画像データに対しては輪郭を目立たせる輪郭強調変倍処理モジュールを割り当てるとともに文字画像が含まれている可能性が低い画像データに対しては輪郭を抑制する輪郭抑制変倍処理モジュールを割り当てる変倍処理モジュール選択部と、前記画像データをこの画像データに割り当てられた変倍処理モジュールを用いて変倍処理する変倍処理部とを備えている。当然ながら、このような画像データ処理装置も上述した画像データ処理方法で述べたすべての作用効果を得ることができ、さらに上述した好適な実施形態を組み込むことも可能である。
本発明によるその他の特徴及び利点は、以下図面を用いた実施形態の説明により明らかになるだろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
図1に、入力された画像データに対して変倍処理を含む画像処理を施し、プリント出力部で該当画像を形成したプリントを出力するためのプリントデータを生成する、本発明による画像データ処理技術の原理が模式的に示されている。なお、デジタルカメラで取得された画像データはそのままデジタル画像データとして入力されるが、銀塩式カメラによってフィルムに画像を形成している場合にはフィルムスキャナによってデジタル化された画像データが入力される。
【0016】
入力された画像データはその画像データが作り出す画像に文字画像が含まれている可能性がどの程度あるかを、例えば、この画像データの空間周波数特性から判定してその判定結果を文字含有度として表す。文字を見やすくしている画像では、背景と文字と明度差や彩度差を大きくしていることから、明度や彩度の高低の繰り返しが生じていることなる。このことから、画像データの階調幅(ダイナミックレンジ)を低下させてから空間周波数特性をとると、文字画像を多く含む画像データは自然画像からなる画像データに較べ特定周波数帯域に強い値を示す傾向を示す。これを利用することにより、文字含有度を2段階又はより多くの段階で算定することができる。
【0017】
その際、画像データ全体の空間周波数特性をとると、文字画像の特性が平均化されてしまう可能性があるので、画像データを複数の領域に区分けし、この区分けられた領域毎に空間周波数特性を求め、領域毎の文字含有度を算定し、それらの文字含有度の積算値、平均値、あるいは所定値以上の文字含有度をもつ領域の数によって画像データ全体の文字含有度を決定することが好ましい。
【0018】
入力された画像データに対する文字含有度が決定されると、その文字含有度に基づいて適正な変倍処理モジュールが割り当てられる。例えば、文字画像が含まれている可能性が高い画像データに対しては輪郭を目立たせる輪郭強調変倍処理モジュールとしてニアレストネイバー法に基づいた変倍処理モジュールが割り当てられ、文字画像が含まれている可能性が低い画像データに対しては輪郭を抑制する輪郭抑制変倍処理モジュールとしてバイリニア法又はバイキュービック法に基づいた変倍処理モジュールが割り当てられる。さらに、割り当てられた変倍処理モジュールに設定可能なパラメータが付いている場合文字含有度や画像データのその他の画像特性からそのパラメータが適正に設定される。
【0019】
この画像データに基づいて出力されるプリントサイズと画像データサイズ、そして使用するプリント部の解像度に基づいて変倍率が決定されると、必要な色補正などの画像補正とともにこの画像データに割り当てられている変倍処理モジュールを用いて所定の変倍率で変倍処理が行われ、最終的にプリントデータに変換され、プリント出力される。
【0020】
本発明による画像データ処理技術を組み込んだ写真プリント装置1の一例が、図2に示されている。この写真プリント装置1は、印画紙Pに対して露光処理と現像処理とを行う写真プリンタとしてのプリントステーション1Bと、現像済み写真フィルム2aやデジタルカメラ用メモリカード2bなどの画像記録メディアから取り込んだ撮影画像を適当なテンプレートに嵌め込んで合成処理してプリントステーション1Bに転送する操作ステーション1Aとから構成されている。
【0021】
この写真プリント装置1はデジタルミニラボとも称せられるものであり、特に図3からよく理解できるように、プリントステーション1Bは2つの印画紙マガジン11に納めたロール状の印画紙Pを引き出してシートカッター12でプリントサイズに切断し、このように切断された印画紙Pに対し、バックプリント部13でプリント処理情報を印画紙Pの裏面に印字するとともに、プリント露光部14で印画紙Pの表面に画像露光を行い、この露光後の印画紙Pを複数の現像処理槽を有した処理槽ユニット15に送り込んで現像処理する。乾燥の後に装置上部の横送りコンベア16からソータ17に送られた印画紙P、つまり写真プリントないしはアルバムシートはこのソータ17の複数のトレイにオーダ単位で仕分けられた状態で集積される(図2参照)。
【0022】
上述した印画紙Pに対する各種処理に合わせた搬送速度で印画紙Pを搬送するために印画紙搬送機構18が敷設されている。印画紙搬送機構18は、印画紙搬送方向に関してプリント露光部14の前後に配置されたチャッカー式印画紙搬送ユニット18aを含む複数の挟持搬送ローラ対から構成されている。
【0023】
プリント露光部14には、副走査方向に搬送される印画紙Pに対して、主走査方向に沿って操作ステーション1Aからのプリントデータに基づいてR(赤)、G(緑)、B(青)の3原色のレーザ光線の照射を行うライン露光ヘッドが設けられている。処理槽ユニット15は、発色現像処理液を貯留する発色現像槽15aと、漂白定着処理液を貯留する漂白定着槽15bと、安定処理液を貯留する安定槽15cを備えている。
【0024】
前記操作ステーション1Aのデスク状コンソールの上部位置には、写真フィルム2aの撮影画像コマから画像データを取得することができるフィルムスキャナ20が配置されており、デジタルカメラ等に装着される各種メモリカード2bやCD−Rなどから撮影画像の画像データを取得するメディアリーダ21は、この写真プリント装置1のコントローラ3として機能する汎用パソコンに組み込まれている。この汎用パソコンには、さらに画像出力手段としてのメディア記録装置26、各種情報を表示するモニタ23、各種設定や調整を行う際に用いる操作入力部として利用される操作入力デバイスとしてのキーボード24やマウス25も接続されており、図示はされていないが、デジタルカメラ等から直接画像データを転送するためのインターフェースとしてUSB( Universal Serial Bus )やIEEE1394の接続口やその専用ケーブルも備えられている。
【0025】
この写真プリント装置1のコントローラ3は、CPUを中核部材として、写真プリント装置1の種々の動作を行うための機能部をハードウエア又はソフトウエアあるいはその両方で構築しているが、図4と図5に示されているように、本発明に特に関係する入出力インターフェース系の機能部としては、フィルムスキャナ20やメディアリーダ21によって読み取られた画像データに次の処理のために必要な前処理を施してメモリ30に展開する画像入力部31と、キーボード24やマウス25からのユーザ操作入力を処理して適当な内部処理コマンドに変換する操作入力処理部32と、種々の画像情報を最終的にモニタ23に表示させるためのビデオ信号を生成するビデオ制御部33と、処理が完了した処理済み画像データに基づいてプリントステーション1Bに装備されているプリント露光部14に適したプリントデータを生成するプリントデータ生成部34と、顧客の要望に応じて生の撮影画像や編集済みの撮影画像などをCDやDVDに書き込むための形式にフォーマットするフォーマッタ部35と、プレジャッジ画面などのグラフィック操作画面の作成やそのようなグラフィック操作画面を通じてのユーザ操作入力から変換された内部処理コマンドを管理するグラフィックユーザインターフェース(以下GUIと略称する)を構築するGUI部36などが挙げられる。
【0026】
さらに、処理系の機能部としては、メモリ30に展開されている画像データに文字画像が含まれている可能性を表す文字含有度を当該画像データの空間周波数特性から算定する文字画像判定部41と、画像データに対して輪郭を目立たせる輪郭強調変倍処理モジュールや輪郭を抑制する輪郭抑制変倍処理モジュールといったように種々の変倍処理モジュールを格納している変倍処理モジュール群格納部43と、前記文字画像判定部41で算定された文字含有度基づいて文字画像が含まれている可能性が高い画像データに対しては前記輪郭強調変倍処理モジュールを割り当てるとともに文字画像が含まれている可能性が低い画像データに対しては前記輪郭抑制変倍処理モジュールを割り当てる変倍処理モジュール選択部42と、前記画像データを前記変倍処理モジュール選択部42によってこの画像データに割り当てられた変倍処理モジュールを用いて変倍処理する変倍処理部44を含む各種画像補正処理を実行する画像処理部45などが挙げられる。この画像処理部45には、各入力された画像データのための予想仕上がりプリント画像であるシミュレート画像を生成するシミュレート画像生成機能も備えられている。輪郭強調変倍処理モジュールの代表的なものはニアレストネイバー法に基づいた変倍処理モジュールであり、輪郭抑制変倍処理モジュールの代表的なものはバイリニア法又はバイキュービック法に基づいた変倍処理モジュールである。
【0027】
この実施形態の文字画像判定部41は、まず、画像データを複数の領域に区分けし、この区分けられた領域毎に空間周波数特性を求める。この空間周波数特性における所定空間周波数帯域での偏在に基づいて領域毎の文字含有度を算定する。文字含有度は文字画像が中心であるとみなされる場合は「1」、そうでない場合は「0」とする。さらに領域毎に算定された文字含有度を積算し、その積算値によりこの画像データの最終的な文字含有度を算定する。例えば、画像データが50個の領域に分けられた場合、積算値が20以上あれば文字含有度を「1」、それ未満であれば、「0」としてもよいし、さらなる多値化で文字含有度を表現することも可能である。
【0028】
この写真プリント装置は、画像データ入力からプリント出力までの処理が自動化されており、画像データとプリントサイズを入力すると、自動的に文字含有度に基づく変倍処理モジュールの選択や選択された変倍処理モジュールを用いた変倍処理を含む画像処理が実行され、最終的な画像データから変換されたプリントデータによってプリント露光部14を制御することで写真プリントPを出力する。しかしながら、画像データ毎の色補正やプリント枚数の設定がモニタに表示された専用の画面を見ながらオペレータによって行われるプレジャッジプリントモードも用意されている。
【0029】
このようなプレジャッジプリントモードを実現するために、GUI部36は、図6に例示するようなプレジャッジ画面50を生成するプレジャッジ画面生成部36aと、プレジャッジ画面50を含む種々の操作画面を通じて取得した内部処理コマンドを管理する処理コマンド管理部36bと、上述した文字画像判定部41で文字画像が主要な要素となっている画像と判定された画像データに対応するプレジャッジ画面50上のコマ画像にそのことを示す指標を表示する文字マーク表示部36cとを備えている。
【0030】
一般的なプレジャッジ画面50では、フィルム1本分やメモリカード1枚分の画像データに基づく撮影画像がその画像チェックのために撮影画像表示枠51に順次表示される。この撮影画像表示枠51は前設定された表示コマ数だけ配置されるが、図6では、6コマ表示となっている。各撮影画像表示枠51の下側には色濃度補正設定エリア52とプリント枚数設定エリア53が配置されている。色濃度補正設定エリア52には「イエロー」、「マゼンタ」、「シアン」、「濃度」の設定枠が設けられており、補正量の「N」はニュートラルを表し補正なしを意味している。プリント枚数設定エリア53にはプリント枚数を入力する入力枠が設けられており、この入力枠に「PASS」が表示された場合その撮影画像はプリント対象外となっていることを意味している。プレジャッジ画面50の下方にはプリント条件表示欄54が配置されており、この写真プリント出力に適用されたプリントチャンネル名称の表示や、このプリントチャンネルに含まれているプリントサイズやインデックスプリントの要否やメディア出力の要否などが示されている。プリントサイズは仕上がり写真プリントPの大きさを示すものであり、印画紙幅と送り長さでプリントサイズが決定される。各撮影画像表示枠51の上側にはこの撮影画像表示枠51に表示されている撮影画像のコマ番号又は撮影画像ファイル名を表示するコマ識別コード表示欄55が配置されている。
【0031】
このプレジャッジ画面50には、コマ識別コード表示欄55の右側に主要画像要素表示欄56が配置されている。撮影画像表示枠51に表示されているコマ画像の画像データに対して文字画像判定部41がその主要な画像要素が文字画像であると判定している場合、つまりその画像データに対して輪郭強調変倍処理モジュールが割り当てられている場合、そのことを示す指標として主要画像要素表示欄56に「文字」というマークが表示される。この「文字」マークは、撮影画像表示枠51に表示されているコマ画像の画像データに対する輪郭強調変倍処理モジュールと輪郭抑制変倍処理モジュールとの間の割り当て切換トグルスイッチの機能を備えており、「文字」というマークをクリックすることで、「文字」マークは消え、対応する画像データには輪郭強調変倍処理モジュールに代えて輪郭抑制変倍処理モジュールが割り当てられることになる。逆に、文字画像判定部41の判定結果に基づいて輪郭抑制変倍処理モジュールが割り当てられ、「文字」マークが付いていない場合でも、その主要画像要素表示欄56をクリックすることで主要画像要素表示欄56に「文字」マークが表示され、対応する画像データには輪郭抑制変倍処理モジュールに代えて輪郭強調変倍処理モジュールが割り当てられることになる。
【0032】
撮影画像の色濃度補正は色濃度補正設定エリア52に設けられた設定ボタンを用いて行うことができるし、さらには各撮影コマをダブルクリックすることによって表示される1コマ拡大表示画面を通じてさらに細やかな画像補正を行うことも可能である。
【0033】
上述した写真プリント装置1を用いて、画像データの内容に適合した変倍処理を施して写真プリントPを出力する処理手順を図7のフローチャートを用いて説明する。
まず、フィルムスキャナ20又はメディアリーダ21から画像入力部31を介して撮影画像ファイル、詳しくは撮影画像のデジタル画像データが取り込まれ、メモリ30に展開される(#01)。入力された画像データを所定数(画像データのサイズによって異なるが通常は10〜50)の領域に区分けする(#02)。区分けされた各領域に含まれる画像データ(画素値)を用いて空間周波数特性を求める(#03)。この空間周波数特性はフーリエ変換を用いて比較的簡単に得ることができるが、例えば振幅成分に関するフーリエ変換画像における振幅成分の分布を評価することで、つまり元画像データの全方向における空間周波数成分の偏在を評価することで、文字画像が多く含まれているかどうかを推定することができる。この推定を区分けされた領域毎に行うことで、各領域の文字含有度が得られる(#04)。文字含有度の最も簡単な形態は、文字が含まれている可能性大が「1」、文字が含まれている可能性小が「0」の2値化表現である。各領域の文字含有度を積算し、その積算値と領域の区分け数との比から文字が含まれている可能性の高い区域とそうでない区域との面積比が得られる。この面積比から画像データ全体としての文字含有度を決定する(#05)。各領域の文字含有度の表現を2値化表現ではなく、もっと多くの段階をもった多値化表現を採用した場合、各領域の文字含有度の表現から画像データ全体としての文字含有度の決定手法として、各領域の文字含有度の統計学的な演算、例えば平均値やヒスグラム曲線など、を利用することも可能である。
【0034】
入力された画像データのための文字含有度が決定されると、この文字含有度に基づいて適合する変倍処理モジュールが割り当てられる(#06)。その際、文字含有度が高い画像データに対しては輪郭を目立たせる輪郭強調変倍処理モジュールとしてニアレストネイバー法に基づいた変倍処理モジュールが割り当てられ、文字含有度が低い画像データに対しては輪郭を抑制する輪郭抑制変倍処理モジュールとしてバイリニア法又はバイキュービック法に基づいた変倍処理モジュールが割り当てられる。さらに、必要な場合、文字含有度のレベルに応じて割り当てられた変倍処理モジュールのパラメータを適正に設定する(#07)。
【0035】
写真プリント出力にあたっては、まず、写真プリント出力の対象となった画像データのサイズとプリントサイズとプリント露光部14の解像度から、変倍率が決定されると(#08)、この写真プリント出力の対象となった画像データに割り当てられている変倍処理モジュールを読み出して、ステップ#08で決定された変倍率で変倍処理が実行される(#09)。変倍処理を含む画像補正の終えた画像データはプリントデータに変換され(#10)、プリントステーション1B(プリント露光部14)に転送されることで、写真プリントPとして出力される(#11)。
【0036】
図7のフローチャートで示された画像データの内容に適合した変倍処理を施して写真プリントPを出力する処理手順では、区分けされた領域毎に求められた文字含有度から画像データ全体の文字含有度を決定して、画像データに対して唯一の変倍処理モジュールを割り当てていた。このような手順に代えて、区分けされた領域毎に求められた文字含有度から各領域に独立した変倍処理モジュールを割り当て、領域毎に場合よっては異なる変倍処理モジュールで変倍処理を行うことも可能である。このような手順のフローチャートが図8に示されている。図8では、図7と異なるステップだけ区別できるステップ番号を付与しているが、実質的に同じ処理を行うステップには同じステップ番号を付与して、その説明は省略する。このフローチャートでは、ステップ#4において区分けされた領域毎の文字含有度が求められると、ステップ#6aにおいて、その領域毎の文字含有度に基づいて領域毎に適合する変倍処理モジュールが割り当てられる。そして、ここでも、必要な場合、文字含有度のレベルに応じて各領域に割り当てられた変倍処理モジュールのパラメータを適正に設定する(#07a)。ステップ#08で変倍率が決定されると、この写真プリント出力の対象となった画像データを区分けしている各領域毎に、その領域に割り当てられている変倍処理モジュールを読み出して領域毎の変倍処理が実行される(#09a)。その後、写真プリント出力が実行される。
【0037】
上述した実施形態の説明では、本発明による画像データ処理技術が、DPショップに設置されているミニラボと呼ばれている写真プリント装置に組み込まれた例を取り上げたが、コンビニやDPショップの店頭に設置されているセルフサービス式の写真プリント装置など、種々の写真プリント装置に組み込んでもよい。
【0038】
上述した実施の形態では、画像出力手段としてのプリントステーション1Bは、印画紙Pに対し、レーザ式露光エンジンを備えたプリント露光部14で撮影画像の露光を行い、この露光後の印画紙Pを複数の現像処理する、いわゆる銀塩写真プリント方式を採用していたが、もちろん、本発明におけるプリントステーション1Bは、このような方式に限定されるわけではなく、例えば、フィルムや紙にインクを吐出して画像を形成するインクジェットプリント方式や感熱転写シートを用いた熱転写方式など、種々の写真プリント方式を採用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明による画像データ処理技術を用いて写真プリントを出力する原理を模式的に説明する原理図
【図2】本発明による画像データ処理技術を組み込んだ写真プリント装置の一例を示す外観図
【図3】図2による写真プリント装置を構成するプリントステーションの説明図
【図4】図2による写真プリント装置のコントローラの機能を示す機能ブロック図
【図5】コントローラの画像処理系の機能ダイヤグラムを示すブロック図
【図6】プレジャッジ画面の一例を示す画面図
【図7】画像データの内容に適合した変倍処理を施して写真プリントを出力する処理手順を示すフローチャート
【図8】図7のフローチャートとは別形態の処理手順を示すフローチャート
【符号の説明】
【0040】
1:写真プリント装置
1A:操作ステーション
1B:プリントステーション
4:コントローラ
23:モニタ
30:メモリ
31:画像入力部
34:プリントデータ生成部
36:GUI部
36a:プレジャッジ画面作成部
36b:処理コマンド管理部
36c:文字マーク表示部
41:文字画像判定部
42:変倍処理モジュール選択部
43:変倍処理モジュール格納部
44:変倍処理部
45:画像処理部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力された画像データに対して変倍処理を含む画像処理を施し、プリント出力部で該当画像を形成したプリントを出力するためのプリントデータを生成する画像データ処理方法において、
前記画像データに文字画像が含まれている可能性を表す文字含有度を演算する文字画像判定ステップと、
前記文字含有度に基づいて文字画像が含まれている可能性が高い画像データに対しては輪郭を目立たせる輪郭強調変倍処理モジュールを割り当てるとともに文字画像が含まれている可能性が低い画像データに対しては輪郭を抑制する輪郭抑制変倍処理モジュールを割り当てる変倍処理モジュール選択ステップと、
前記画像データをこの画像データに割り当てられた変倍処理モジュールを用いて変倍処理する変倍処理ステップと、
を備えていることを特徴とする画像データ処理方法。
【請求項2】
前記文字画像判定ステップでは、入力された画像データを複数の領域に分け、各領域で演算された文字含有度から画像データ全体の文字含有度が決定されることを特徴とする請求項1に記載の画像データ処理方法。
【請求項3】
前記文字画像判定ステップでは、入力された画像データを複数の領域に分け、各領域で文字含有度が演算され、かつ
前記変倍処理モジュール選択ステップでは、前記各領域での文字含有度を用いて当該領域毎に変倍処理モジュールが割り当てられることを特徴とする請求項1に記載の画像データ処理方法。
【請求項4】
前記文字画像判定ステップでは、対象となる画像データの空間周波数特性に基づいて文字含有度を演算することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の画像データ処理方法。
【請求項5】
前記輪郭強調変倍処理モジュールがニアレストネイバー法に基づいた処理アルゴルズムを採用しており、前記輪郭抑制変倍処理モジュールがバイリニア法又はバイキュービック法に基づいた処理アルゴルズムを採用していることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の画像データ処理方法。
【請求項6】
入力された画像データに対して変倍処理を含む画像処理を施し、プリント出力部で該当画像を形成したプリントを出力するためのプリントデータを生成するために、
前記画像データに文字画像が含まれている可能性を表す文字含有度を演算する文字画像判定機能と、
前記文字含有度に基づいて文字画像が含まれている可能性が高い画像データに対しては輪郭を目立たせる輪郭強調変倍処理モジュールを割り当てるとともに文字画像が含まれている可能性が低い画像データに対しては輪郭を抑制する輪郭抑制変倍処理モジュールを割り当てる変倍処理モジュール選択機能と、
前記画像データをこの画像データに割り当てられた変倍処理モジュールを用いて変倍処理する変倍処理機能と、
をコンピュータに実行させる画像データ処理プログラム。
【請求項7】
入力された画像データに対して変倍処理を含む画像処理を施し、プリント出力部で該当画像を形成したプリントを出力するためのプリントデータを生成する画像データ処理装置において、
前記画像データに文字画像が含まれている可能性を表す文字含有度を演算する文字画像判定部と、
前記文字含有度に基づいて文字画像が含まれている可能性が高い画像データに対しては輪郭を目立たせる輪郭強調変倍処理モジュールを割り当てるとともに文字画像が含まれている可能性が低い画像データに対しては輪郭を抑制する輪郭抑制変倍処理モジュールを割り当てる変倍処理モジュール選択部と、
前記画像データをこの画像データに割り当てられた変倍処理モジュールを用いて変倍処理する変倍処理部と、
を備えていることを特徴とする画像データ処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−49537(P2007−49537A)
【公開日】平成19年2月22日(2007.2.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−233302(P2005−233302)
【出願日】平成17年8月11日(2005.8.11)
【出願人】(000135313)ノーリツ鋼機株式会社 (1,824)
【Fターム(参考)】