説明

画像データ転送装置およびそれを備えた画像形成装置

【課題】転送エラーが発生したとしても、出力画像の画質の低下を抑制しながら、実行中のジョブを速やかに完了させることが可能な画像データ転送装置を提供する。
【解決手段】この画像データ転送装置では、DMAC82は、バッファメモリー81への画像データの転送時に転送エラーが発生したことを検出した場合、転送エラーのあった画像データをバッファメモリー81から読み出そうとしていた期間に、転送エラーのあった画像データに対応するラインの直前のラインの画像データをバッファメモリー81から続けて読み出す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像データ転送装置およびそれを備えた画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、画像形成装置として、感光体ドラムに静電潜像を形成し、感光体ドラムに形成した静電潜像を現像してトナー像を得るようにしたものが知られている。このような画像形成装置は、通常、半導体レーザー素子を有する露光部を備えている。そして、その露光部は、感光体ドラムの回転軸方向を主走査方向とし、感光体ドラムに対する走査露光を行うことによって、感光体ドラムに静電潜像を形成する(たとえば、特許文献1参照)。
【0003】
たとえば、露光部は、1走査ライン分ずつ露光を行う。このとき、各走査ラインの露光開始位置(先頭画素の位置)が互いにずれると、画質の低下に繋がる。したがって、画像データの転送を制御する画像データ転送部は、メインメモリーに蓄積された画像データを1走査ライン分ずつバッファメモリーに転送して一時的に書き込み、タイミングを合わせて、画像データを1走査ライン分ずつ露光部に出力する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−356008号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、画像形成装置の各部(メインメモリーや画像データ転送部および露光部など)は、たとえば、バスを介して互いに接続される。この場合、バスの使用状況により、メインメモリーからバッファメモリーへの画像データの転送が遅れ、転送エラーが発生することがある。そして、画像形成装置によっては、転送エラーが発生すると、実行中のジョブを停止する。したがって、ユーザーは、画像形成装置を再起動しなければならない。このように、実行中のジョブが停止されてしまうと、ジョブの完了までに時間がかかってしまうので、ユーザーにとっては利便性が悪い。
【0006】
なお、仮に、転送エラーが発生したにもかかわらずジョブをそのまま続行すると、出力画像の画質が低下してしまう。
【0007】
本発明は、上記の課題を解決するためになされたものであり、転送エラーが発生したとしても、出力画像の画質の低下を抑制しながら、実行中のジョブを速やかに完了させることが可能な画像データ転送装置およびそれを備えた画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するために、本発明の画像データ転送装置は、複数のラインメモリーを含み、ライン単位で画像データの記憶および出力を繰り返すバッファメモリーと、バッファメモリーに画像データを順次転送して書き込ませながら、書き込みを終えた画像データから順に読み出すとともに、バッファメモリーへの画像データの転送時に転送エラーが発生していないか否かの検出を行うメモリー制御部と、を備えている。そして、メモリー制御部は、バッファメモリーへの画像データの転送時に転送エラーが発生したことを検出した場合、転送エラーとなった画像データをバッファメモリーから読み出そうとしていた期間に、転送エラーとなった画像データに対応するラインの直前のラインの画像データをバッファメモリーから続けて読み出す。
【0009】
本発明の画像データ転送装置によると、メモリー制御部は、バッファメモリーへの画像データの転送時に転送エラーが発生したことを検出した場合、転送エラーとなった画像データをバッファメモリーから読み出そうとしていた期間に、転送エラーとなった画像データに対応するラインの直前のラインの画像データをバッファメモリーから続けて読み出す。すなわち、本発明の画像データ転送装置では、転送エラーとなった画像データの代わりに、別の画像データを読み出すので、実行中のジョブを停止させる必要はない。したがって、実行中のジョブを速やかに完了させることができる。
【0010】
ここで、転送エラーとなった画像データの代わりに別の画像データを読み出すということは、転送エラーとなった画像データに対応するラインが出力画像に表現されないということである。しかし、本発明の画像データ転送装置において、転送エラーとなった画像データの代わりに読み出す画像データは、転送エラーとなった画像データに対応するラインの直前のラインの画像データである。すなわち、出力画像の一部分において同じラインが続くだけであるので、画質の低下が顕在化し難い。
【0011】
これらの結果、本発明の画像データ転送装置では、転送エラーが発生したとしても、出力画像の画質の低下を抑制しながら、実行中のジョブを速やかに完了させることが可能となる。
【0012】
上記の構成において、好ましくは、メモリー制御部は、転送エラーとなった画像データを破棄し、転送エラーとなった画像データをバッファメモリーから読み出そうとしていた期間に、転送エラーとなった画像データに対応するラインの直前のラインの画像データをバッファメモリーから続けて読み出しながら、転送エラーとなった画像データに対応するラインの次のラインの画像データをバッファメモリーに転送して書き込ませる。このように構成すれば、画像データを途切れることなく出力することができる。
【0013】
上記の構成において、好ましくは、メモリー制御部は、バッファメモリーに画像データを転送するとき、画像データを構成する画素データをカウントし、バッファメモリーに転送した画像データの読み出しを開始するまでの間にカウント数が予め定められた値に達しなかった場合に、転送エラーが発生したと判別する。このように構成すれば、転送エラーが発生していないか否かの検出を容易に行うことができる。
【0014】
また、本発明の画像形成装置は、上記の画像データ転送装置と、その画像データ転送装置から出力された画像データに基づいて走査露光を行う露光装置と、を備えている。このように構成された画像形成装置では、転送エラーが発生したとしても、出力画像の画質の低下を抑制しながら、実行中のジョブを速やかに完了させることが可能となる。
【発明の効果】
【0015】
以上のように、本発明によれば、転送エラーが発生したとしても、出力画像の画質の低下を抑制しながら、実行中のジョブを速やかに完了させることが可能な画像データ転送装置およびそれを備えた画像形成装置を容易に得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の一実施形態による画像形成装置の概略図
【図2】図1に示した画像形成装置に設けられた露光装置の概略図
【図3】図1に示した画像形成装置のハードウェア構成を示したブロック図
【図4】図1に示した画像形成装置における画像データの流れを説明するためのブロック図
【図5】図1に示した画像形成装置における画像データの流れを説明するためのタイミングチャート
【図6】図1に示した画像形成装置における画像データの流れを説明するためのタイミングチャート
【図7】図1に示した画像形成装置においてジョブの実行中に転送エラーが発生した場合の動作を説明するためのフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に、図1および図2を参照して、本発明の一実施形態による画像形成装置100の全体構成について説明する。
【0018】
本実施形態の画像形成装置100は、たとえば、図1に示すような複合機であって、コピー、プリンタ、スキャナおよびファックスなどの複数種のジョブを実行することができる。また、この画像形成装置100は、操作パネル101、画像読取部102およびエンジン部(給紙部103、搬送路104、画像形成部105および定着部106)などを備える。
【0019】
操作パネル101には、液晶表示部11が設けられている。液晶表示部11には、各種設定などを行うためのメニューおよび設定キー(ソフトキー)が表示されるとともに、装置状態などを示すメッセージも表示される。そして、ユーザーは、液晶表示部11に表示された設定キーを押下することで、各種設定などを行うことができる。なお、液晶表示部11は、その表示面がタッチパネルで覆われた形態をとる。これにより、液晶表示部11に表示された設定キーがユーザーによって押下されたとき(タッチパネルが押下されたとき)、タッチパネルの出力に基づいて押下位置の座標を検出できるようになっている。
【0020】
また、操作パネル101には、テンキー12やスタートキー13などのハードキーも設けられている。テンキー12は、数値入力が必要な設定指示をユーザーから受け付けるためのハードキーである。スタートキー13は、各種ジョブの実行開始の指示をユーザーから受け付けるためのハードキーである。
【0021】
画像読取部102は、原稿を読み取り、原稿の画像データを形成する。画像読取部102には、図示しないが、露光ランプ、ミラー、レンズおよびイメージセンサーなどの光学系部材が設けられている。この画像読取部102は、載置読取用コンタクトガラス21に載置される原稿(あるいは、送り読取用コンタクトガラス22に送られる原稿)に光ビームを照射し、反射した光ビームを受けたイメージセンサーの画素毎の出力値をA/D変換することによって画像データを生成する。
【0022】
そして、画像読取部102により生成された画像データは、たとえば、後述する記憶部112に一時的に記憶される。これにより、画像読取部102による原稿の読み取り動作によって得られた画像データに基づき印刷を行うことができる。なお、載置読取用コンタクトガラス21による原稿の読み取り時には、載置用コンタクトガラス21に載置された原稿を原稿カバー23で押えることができる。また、原稿カバー23に原稿搬送装置としての機能を持たせても良く、この場合、原稿カバー23によって、原稿を送り読取用コンタクトガラス22に1枚ずつ送ることができるようになる。
【0023】
給紙部103は、記録媒体としての用紙Pを収容するカセット31を複数有し、それら複数のカセット31に収容された用紙Pを搬送路104に供給する。この給紙部103には、収容された用紙Pを引き出すピックアップローラー32や、用紙Pの重送を抑制するための分離ローラー対33などが設けられている。
【0024】
搬送路104は、装置内部において用紙Pを搬送する。具体的に言うと、給紙部103から供給された用紙Pは、搬送路104によって、画像形成部105および定着部106をこの順番で通過し、排出トレイ41にまで導かれる。この搬送路104には、用紙Pを搬送する複数の搬送ローラー対42が設けられている。さらに、用紙Pを画像形成部105の手前で待機させ、タイミングを合わせて画像形成部105に送り出すレジストローラー対43も設けられている。
【0025】
画像形成部105は、画像データに基づきトナー像を形成し、そのトナー像を用紙Pに転写する。画像形成部105は、感光体ドラム51、帯電装置52、露光装置53、現像装置54、転写ローラー55およびクリーニング装置56を含んでいる。
【0026】
トナー像の形成プロセスおよびトナー像の用紙Pへの転写プロセスとしては、まず、感光体ドラム51を回転駆動させ、その感光体ドラム51の表面を帯電装置52で所定電位に帯電させる。また、露光装置53は、画像データに基づき光ビームLを出力し、感光体ドラム51の表面を走査露光する。これにより、感光体ドラム51の表面に静電潜像を形成する。続いて、現像装置54は、感光体ドラム51の表面に形成された静電潜像にトナーを供給して現像する。
【0027】
そして、転写ローラー55は、感光体ドラム51の表面に圧接する。この後、レジストローラー対43がタイミングを計り、転写ローラー55と感光体ドラム51との間に用紙Pを進入させる。このとき、転写ローラー55には所定の電圧が印加される。これによって、感光体ドラム51の表面のトナー像が用紙Pに転写される。なお、転写プロセスが終わると、クリーニング装置56は、感光体ドラム51の表面に残留するトナーなどを除去する。
【0028】
ここで、露光装置53は、図2に示すように、半導体レーザー素子1、ポリゴンミラー2、ポリゴンモーター3、Fθレンズ4、反射ミラー5および検出部6などを含む。そして、露光装置53は、感光体ドラム51の回転軸方向を主走査方向とし、半導体レーザー素子1からの光ビームLを用い、感光体ドラム51の表面に対して走査露光を行う。これにより、感光体ドラム51の表面に静電潜像を形成する。
【0029】
具体的には、半導体レーザー素子1は、LDドライバー1aから電力供給を受けて光ビームLを出射する。そして、半導体レーザー素子1からの光ビームLは、ポリゴンミラー2のミラー面(側面)に入射される。このとき、ポリゴンミラー2は、ポリゴンモーター3から駆動力が伝達されることで回転している。したがって、ポリゴンミラー2に入射した光ビームLは、ポリゴンミラー2によって反射偏向される。すなわち、ポリゴンミラー2は、光ビームLを主走査方向に走査させる。この後、光ビームLは、Fθレンズ4に入射する。
【0030】
Fθレンズ4は、光ビームLが一定の速度で主走査方向を走査するように、光ビームLを反射ミラー5に導く。そして、反射ミラー5は、光ビームLを感光体ドラム51の表面に向かって反射する。このようにして、感光体ドラム51の表面への露光装置53による走査露光が行われる。
【0031】
なお、ポリゴンミラー2の各ミラー面は、光ビームLを反射偏向することによって主走査方向に1ラインずつ走査する。そして、感光体ドラム51は、ポリゴンミラー2による主走査方向への1ライン分の走査期間に、主走査方向と直交する副走査方向(周方向)に1画素分だけ回転する。
【0032】
また、検出部6は、ポリゴンミラー2により反射偏向される光ビームLが行き渡る範囲内で、かつ、感光体ドラム51の表面への走査露光の範囲外に配置されている。この検出部6は、たとえば、受光素子としてのフォトダイオードを含んでおり、フォトダイオードが光ビームLを受光すると、出力電圧(出力電流)が変化するようになっている。すなわち、検出部6は、光ビームLを検出し、検出信号(BD信号)を出力する。たとえば、検出部6が光ビームLを検出すると、BD信号がHレベルからLレベルに立ち下がる。
【0033】
検出部6から出力されたBD信号は、たとえば、ポリゴンモーター3(ポリゴンミラー2)の駆動を制御するためのモーター制御部3aが受信する。そして、モーター制御部3aは、検出部6による光ビームLの検出周期が一定になるように、ポリゴンモーター3(ポリゴンミラー2)の回転数を調整して安定させる。
【0034】
さらに、検出部6から出力されたBD信号は、たとえば、後述する画像処理部108が受信する。そして、画像処理部108は、BD信号に基づき、露光装置53への画像データの出力タイミングを計る。なお、画像処理部108による露光装置53への画像データの出力タイミングの調整方法については、後で詳細に説明する。
【0035】
図1に戻って、定着部106は、用紙Pに転写されたトナー像を加熱・加圧して定着させる。この定着部106は、発熱源を内蔵する定着ローラー61と、定着ローラー61に圧接される加圧ローラー62とを含んでいる。そして、トナー像が転写された用紙Pは、定着ローラー61と加圧ローラー62との間を通過することで、加熱・加圧される。これにより、用紙Pにトナー像が定着され、印刷が完了する。
【0036】
次に、図3および図4を参照して、画像形成装置100のハードウェア構成について説明する。
【0037】
画像形成装置100は、図3に示すように、装置全体の制御を司る主制御部110を有する。この主制御部110は、中央演算処理装置であるCPU111を含む。また、画像形成装置100は、ROM、RAMおよびHDDなどの揮発性の記憶装置と不揮発性の記憶装置との組み合わせからなる記憶部112を含む。たとえば、各種のプログラムおよびデータは、ROMに記憶され、RAMに展開される。
【0038】
また、主制御部110は、操作パネル101、画像読取部102およびエンジン部(給紙部103、搬送路104、画像形成部105および定着部106)などとバスを介して接続されている。そして、主制御部110は、記憶部112に記憶された各種のプログラムおよびデータに基づき、各部の制御や演算などを行う。
【0039】
また、主制御部110と各部とを接続するバスには、通信部107が接続されている。通信部107は、たとえば、外部のコンピューター200とネットワークを介して通信可能に接続される。これにより、コンピューター200から送信された画像データに基づき印刷を行うことができる。さらに、画像読取部102による原稿の読み取り動作によって得られた画像データをコンピューター200に送信することもできる。また、通信部107にモデムなどを内蔵してもよく、この場合、電話回線などのネットワークを介して、外部のファックス装置300とファックス通信を行うことができる。
【0040】
また、主制御部110と各部とを接続するバスには、画像データ転送装置としての画像処理部108が接続されている。この画像処理部108は、記憶部112に一時的に記憶された画像データをライン単位で自身に転送し、そのライン単位の画像データに対して露光用の画像処理を施す。すなわち、このとき、画像処理部108は、半導体レーザー素子1を画像データに基づいて点消灯させるための露光用の画像データを生成する。その後、画像処理部108は、露光用の画像データをライン単位で画像形成部105(具体的には、露光装置53)に出力する。そして、露光装置53は、画像処理部108からの露光用の画像データを受信し、走査露光を開始する。
【0041】
画像処理部108には、図4に示すように、バッファメモリー81、DMAC82(メモリー制御部)および出力処理部83などが設けられている。
【0042】
バッファメモリー81は、第1ラインメモリー81aおよび第2ラインメモリー81bを含み、ライン単位で画像データの記憶および出力を繰り返す。第1ラインメモリー81aおよび第2ラインメモリー81bは、それぞれ、画像データを1ライン分ずつ蓄積することができる。
【0043】
DMAC82は、記憶部112からバッファメモリー81への画像データのDMA転送を制御するとともに、バッファメモリー81から出力処理部83への画像データの送信を制御するコントローラーである。具体的には、DMAC82は、バッファメモリー81に画像データを1ライン分ずつ順次転送して書き込ませながら、同時に、書き込みを終えた画像データから順に読み出す。言い換えると、DMAC82は、第1ラインメモリー81aから1ライン分の画像データを読み出すときに、第2ラインメモリー81bに1ライン分の画像データを転送して書き込ませ、第1ラインメモリー81aに1ライン分の画像データを転送して書き込ませるときに、第2ラインメモリー81bから1ライン分の画像データを読み出す。
【0044】
そして、DMAC82は、バッファメモリー81から読み出した画像データを出力処理部83に送信する。出力処理部83は、バッファメモリー81からの画像データの送信を受けて、露光用の画像データを生成し、その露光用の画像データを露光装置53に出力する。これにより、露光装置53(半導体レーザー素子1)は、画像データに基づいて点消灯する。
【0045】
また、DMAC82は、バッファメモリー81への画像データの転送(書き込み)およびバッファメモリー81からの画像データの読み出しに際して、検出部6からBD信号(検出部6が光ビームLを検出したことを示す信号)を受信し、BD信号に基づき、画像データの転送(書き込み)および読み出しのタイミング調整を行う。
【0046】
すなわち、DMAC82は、まず、BD信号の立ち下がりエッジを検出する(検出部6が光ビームLを検出したことを認識する)。そして、DMAC82は、BD信号の立ち下がりエッジの時点から一定時間経過した後に、画像データの書き込み(読み出し)を開始し、BD信号の次の立ち下がりエッジの時点までに、画像データの書き込み(読み出し)を終える。これにより、BD信号の立ち下がりエッジの時点から一定時間経過した後に、各走査ラインの先頭画素からの露光が露光装置53により開始され、BD信号の次の立ち下がりエッジの時点までに露光装置53による1走査ライン分の露光が終わる。
【0047】
図5を参照して具体的に説明する。図5において、「ライト」は、記憶部112から第1ラインメモリー81aまたは第2ラインメモリー81bへの画像データの転送・書き込みを意味し、「リード」は、第1ラインメモリー81aまたは第2ラインメモリー81bからの画像データの読出し・出力を意味する。また、図中のT1〜T6は、BD信号の立ち下がりエッジを検出してから次の立ち下がりエッジを検出するまでの期間であり、第1ラインメモリー81aまたは第2ラインメモリー81bから画像データを読み出す読出期間(あるいは、第1ラインメモリー81aまたは第2ラインメモリー81bに画像データを書き込ませる書込期間)に相当する。なお、後で参照する図6においても同様である。
【0048】
期間T1(BD信号が立ち下がってから次に立ち下がるまでの期間)において、DMAC82は、第1ラインメモリー81aに1ライン分の画像データを転送して書き込ませる。期間T1の直後の期間T2において、DMAC82は、第1ラインメモリー81aから1ライン分の画像データを読み出し、同時に、第2ラインメモリー81bに1ライン分の画像データを転送して書き込ませる。
【0049】
期間T2の直後の期間T3において、DMAC82は、第1ラインメモリー81aに1ライン分の画像データを転送して書き込ませ、同時に、第2ラインメモリー81bから1ライン分の画像データを読み出す。そして、期間T3の後の期間T4以降において、DMAC82は、期間T2およびT3で行った動作をこの順番で交互に繰り返す。
【0050】
また、DMAC82は、画像データのバッファメモリー81への転送時に転送エラー(アンダーラン)が発生していないか否かの検出を行う。たとえば、DMAC82は、バッファメモリー81に画像データを転送するとき、すなわち、BD信号の立ち下がりを検出したとき、1ライン分の画像データを構成する画素データをカウントする。そして、DMAC82は、バッファメモリー81に転送した画像データの読み出しを開始するまでの間にカウント数が予め定められた値に達しなかった場合に、転送エラーが発生したと判別する。なお、このような転送エラーは、たとえば、バスの混雑度が高くなっているときに起こり易い。
【0051】
ところで、従来の画像形成装置では、印刷中に転送エラーが発生した場合、印刷を中止する。しかし、ユーザーにとっては、印刷が中止されてしまうと、利便性が悪い。
【0052】
このような不都合を解消するには、印刷中に転送エラーが発生したとしても、印刷を中止しないようにすればよい。ただし、印刷中に転送エラーが発生した場合に、そのまま印刷を続行すると、出力画像の画質が低下してしまう。
【0053】
そこで、本実施形態では、DMAC82は、バッファメモリー81への画像データの転送時に転送エラーが発生したことを検出した場合、転送エラーとなった画像データをバッファメモリー81から読み出そうとしていた期間に、転送エラーとなった画像データに対応するラインの直前のラインの画像データをバッファメモリー81から続けて読み出す。
【0054】
たとえば、図6に示すように、期間T4において、第2ラインメモリー81bに1ライン分の画像データを転送し切れなかったことに起因して転送エラーが発生したとする。この場合、DMAC82は、期間T4の直後の期間T5において、期間T4に画像データを読み出した第1ラインメモリー81aから再び画像データを読み出す(転送エラーとなった画像データに対応するラインの直前のラインの画像データを第1ラインメモリー81aから続けて読み出す)。
【0055】
同時に、DMAC82は、期間T5において、第2ラインメモリー81bに画像データを転送して書き込ませる(転送エラーとなった画像データに対応するラインの次のラインの画像データを第2ラインメモリー81bに転送して書き込ませる)。なお、転送エラーとなった画像データは破棄する。そして、DMAC82は、期間T5の直後の期間T6において、第2ラインメモリー81bから画像データを読み出し、第1ラインメモリー81aに画像データを転送して書き込ませる。
【0056】
すなわち、本実施形態では、所定期間に転送エラーが発生した場合、所定期間から直後の期間への移行に際して、画像データを転送して書き込むバッファメモリーと、画像データを読み出すバッファメモリーとの切り替えを行わない。
【0057】
以下に、図7のフローを参照して、ジョブの実行中に転送エラーが発生した場合の動作について説明する。
【0058】
まず、図7のフローのスタート時点では、ジョブの実行に際して、画像読取部102による原稿の読み取り動作によって得られた画像データ、あるいは、コンピューター200やファックス装置300などの外部装置から送信された画像データが記憶部112に一時的に記憶されているとする。
【0059】
また、このときには、露光装置53において、ポリゴンモーター3(ポリゴンミラー2)の回転数が目標速度に到達し、安定回転状態になっているとする。たとえば、ポリゴンモーター3(ポリゴンミラー2)の回転を安定させるにあたって、LDドライバー1aは、半導体レーザー素子1に電力を供給して光ビームLを出射させる。そして、モーター制御部3aは、光ビームLの検出部6による検出周期が一定になるように、ポリゴンモーター3(ポリゴンミラー2)の回転数を調整する。
【0060】
そして、1ライン目の画像データをバッファメモリー81(第1ラインメモリー81aおよび第2ラインメモリー81bの一方)に転送して書き込ませた後、図7のフローがスタートする。言い換えると、図7のフローのスタートは、バッファメモリー81(第1ラインメモリー81aおよび第2ラインメモリー81bの一方)から1ライン目の画像データを読み出すのと同時に2ライン目の画像データをバッファメモリー81(第1ラインメモリー81aおよび第2ラインメモリー81bの他方)に転送して書き込ませるときである。
【0061】
ステップS1において、DMAC82は、BD信号の立ち下がりエッジを検出したか否か(検出部6が光ビームLを検出したか否か)を判断する。そして、BD信号の立ち下がりエッジを検出すれば、ステップS2に移行する。一方、BD信号の立ち下がりエッジを検出していなければ、ステップS1の動作を繰り返す。
【0062】
ステップS2に移行すると、DMAC82は、記憶部112からバッファメモリー81に転送する画像データ(1ライン分の画素データ)をカウントするため、カウンターを起動(あるいは、リセット)する。
【0063】
ステップS3において、DMAC82は、第1ラインメモリー81aおよび第2ラインメモリー81bの一方からの1ライン目の画像データの読み出しを開始する。同時に、DMAC82は、第1ラインメモリー81aおよび第2ラインメモリー81bの他方に2ライン目の画像データを転送して書き込みを開始する。なお、第1ラインメモリー81aおよび第2ラインメモリー81bの一方からDMAC82によって読み出された画像データは、出力処理部83が露光用の画像処理を施し、露光装置53に出力する。
【0064】
ステップS4において、DMAC82は、BD信号の立ち下がりエッジを検出したか否かを判断する。そして、BD信号の立ち下がりエッジを検出すれば、ステップS5に移行する。一方、BD信号の立ち下がりエッジを検出していなければ、ステップS4の動作を繰り返す。
【0065】
ステップS5に移行すると、DMAC82は、画素データのカウント数に基づき、第1ラインメモリー81aおよび第2ラインメモリー81bの他方への画像データの転送時に転送エラーが発生したか否かを検出する。そして、転送エラーが発生していれば、ステップS6に移行し、転送エラーが発生していなければ、ステップS8に移行する。
【0066】
ステップS6に移行すると、DMAC82は、カウンターをリセットして起動する。そして、ステップS7において、DMAC82は、第1ラインメモリー81aおよび第2ラインメモリー81bの一方から再び1ライン目の画像データを読み出し、第1ラインメモリー81aおよび第2ラインメモリー81bの他方に3ライン目の画像データを転送して書き込ませる。すなわち、DMAC82は、画像データを読み出すバッファメモリーと書き込むバッファメモリーとを切り替えない。
【0067】
一方で、ステップS8に移行する場合には、DMAC82は、カウンターをリセットして起動する。そして、ステップS9において、DMAC82は、第1ラインメモリー81aおよび第2ラインメモリー81bの一方に3ライン目の画像データを転送して書き込ませ、第1ラインメモリー81aおよび第2ラインメモリー81bの他方から2ライン目の画像データを読み出す。すなわち、DMAC82は、画像データを読み出すバッファメモリーと書き込むバッファメモリーとを切り替える。
【0068】
ステップS7およびS9の後、ステップS10に移行する。ステップS10において、DMAC82は、バッファメモリー81に転送して書き込ませた画像データが最終ラインであるか否かを判断する。そして、最終ラインでなければ、ステップS4に戻り、ステップS4〜ステップS9の動作と同様の動作を繰り返す。一方、最終ラインであれば、バッファメモリー81に対する画像データの転送・書き込みを終える。
【0069】
本実施形態では、上記のように、DMAC82(メモリー制御部)は、バッファメモリー81への画像データの転送時に転送エラーが発生したことを検出した場合、転送エラーとなった画像データをバッファメモリー81から読み出そうとしていた期間に、転送エラーとなった画像データに対応するラインの直前のラインの画像データをバッファメモリー81から続けて読み出す。すなわち、本実施形態では、転送エラーとなった画像データの代わりに、別の画像データを読み出すので、実行中のジョブを停止させる必要はない。したがって、実行中のジョブを速やかに完了させることができる。
【0070】
ここで、転送エラーとなった画像データの代わりに別の画像データを読み出すということは、転送エラーとなった画像データに対応するラインが出力画像に表現されないということである。しかし、本実施形態において、転送エラーとなった画像データの代わりに読み出す画像データは、転送エラーとなった画像データに対応するラインの直前のラインの画像データである。すなわち、出力画像の一部分において同じラインが続くだけであるので、画質の低下が顕在化し難い。
【0071】
これらの結果、本実施形態では、転送エラーが発生したとしても、出力画像の画質の低下を抑制しながら、実行中のジョブを速やかに完了させることが可能となる。
【0072】
また、本実施形態では、上記のように、DMAC82は、転送エラーとなった画像データを破棄し、転送エラーとなった画像データをバッファメモリー81から読み出そうとしていた期間に、転送エラーとなった画像データに対応するラインの直前のラインの画像データをバッファメモリー81から続けて読み出しながら、転送エラーとなった画像データに対応するラインの次のラインの画像データをバッファメモリー81に転送して書き込ませる。このように構成すれば、画像データを途切れることなく出力することができる。
【0073】
また、本実施形態では、上記のように、DMAC82は、バッファメモリー81に画像データを転送するとき、画像データを構成する画素データをカウントし、バッファメモリー81に転送した画像データの読み出しを開始するまでの間にカウント数が予め定められた値に達しなかった場合に、転送エラーが発生したと判別する。このように構成すれば、転送エラーが発生していないか否かの検出を容易に行うことができる。
【0074】
今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
【符号の説明】
【0075】
53 露光装置
81 バッファメモリー
81a 第1ラインメモリー(ラインメモリー)
81b 第2ラインメモリー(ラインメモリー)
82 DMAC(メモリー制御部)
100 画像形成装置
108 画像処理部(画像データ転送装置)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のラインメモリーを含み、ライン単位で画像データの記憶および出力を繰り返すバッファメモリーと、
前記バッファメモリーに画像データを順次転送して書き込ませながら、書き込みを終えた画像データから順に読み出すとともに、前記バッファメモリーへの画像データの転送時に転送エラーが発生していないか否かの検出を行うメモリー制御部と、を備え、
前記メモリー制御部は、前記バッファメモリーへの画像データの転送時に転送エラーが発生したことを検出した場合、転送エラーとなった画像データを前記バッファメモリーから読み出そうとしていた期間に、前記転送エラーとなった画像データに対応するラインの直前のラインの画像データを前記バッファメモリーから続けて読み出すことを特徴とする画像データ転送装置。
【請求項2】
前記メモリー制御部は、前記転送エラーとなった画像データを破棄し、前記転送エラーとなった画像データを前記バッファメモリーから読み出そうとしていた期間に、前記転送エラーとなった画像データに対応するラインの直前のラインの画像データを前記バッファメモリーから続けて読み出しながら、前記転送エラーとなった画像データに対応するラインの次のラインの画像データを前記バッファメモリーに転送して書き込ませることを特徴とする請求項1に記載の画像データ転送装置。
【請求項3】
前記メモリー制御部は、前記バッファメモリーに画像データを転送するとき、画像データを構成する画素データをカウントし、前記バッファメモリーに転送した画像データの読み出しを開始するまでの間にカウント数が予め定められた値に達しなかった場合に、転送エラーが発生したと判別することを特徴とする請求項1または2に記載の画像データ転送装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の画像データ転送装置と、
前記画像データ転送装置から出力された画像データに基づいて走査露光を行う露光装置と、を備えていることを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−46963(P2013−46963A)
【公開日】平成25年3月7日(2013.3.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−185454(P2011−185454)
【出願日】平成23年8月29日(2011.8.29)
【出願人】(000006150)京セラドキュメントソリューションズ株式会社 (13,173)
【Fターム(参考)】