説明

画像処理システム、画像処理装置、及び画像処理プログラム

【課題】
プロジェクタによって映し出された画像が安定するまでの待ち時間を経てから、ビデオカメラによってその画像を撮影し、撮影された画像にもとづいて画像処理装置が差分画像を生成し、生成した差分画像を他拠点に送信していた。このため、差分画像を生成する処理を開始するまでに待ち時間を経るため、生成して、会議相手に送信する差分画像の数(フレームレート)が低下してしまうという問題が発生していた。
【解決手段】
第一の画像処理装置は画像撮影装置によって撮影された撮影画像の画素の輝度の変化があったか否かを判定する画像変化判定手段と、画像変化判定手段によって判定された前記輝度の変化に基づいて、第二の画像処理装置に差分画像を表す差分画像データを送信制御する送信制御手段とを備えることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像を処理する画像処理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、企業や教育機関、行政機関等では、会議や講演等において文字や数字、図形が描かれたホワイトボード等の描画対象物の画像を保存して利用する技術が知られている。たとえば、スキャナ装置および印刷装置を備えホワイトボードの画像を走査して印刷するホワイトボード装置や、複数の拠点にそれぞれ設置されたホワイトボードに描かれた画像をビデオカメラ等の撮影装置で撮影しプロジェクタが会議相手の拠点のホワイトボードにそれらの描画像を映し出すことによって、双方の拠点の画像を同時に把握することができる技術が知られている。
【0003】
このような描画画像を取得する技術として、特許文献1にはホワイトボードを撮影した描画画像から会議相手によって送信された描画画像を取り除いた画像(差分画像)を会議相手に送信することによって画像エコーを取り除き、ユーザにとってホワイトボード上の画像が見やすいようにする技術が開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載された発明では、プロジェクタによって画像が照射されてからホワイトボードに安定して表示されるまで、ある程度の時間がかかることが分かっている。このため、プロジェクタが画像を映し出され始めてからビデオカメラが画像を撮影できるようになるまで数百ms程度の時間を待つ必要がある。プロジェクタによって映し出され始めてまだ安定していない画像に基づいて生成された差分画像は画像品質の低いものとなってしまい、その差分画像を受信した会議相手がプロジェクタに照射した画像は見にくいものとなってしまうからである。
【0005】
このため、プロジェクタによって映し出された画像が安定するまでの待ち時間を経てからビデオカメラによってその画像を撮影し、撮影された画像にもとづいて画像処理装置が差分画像を生成し、生成した差分画像を他拠点に送信していた。このため、差分画像を生成する処理を開始するまでに待ち時間を経るため、生成して会議相手に送信する差分画像の数(フレームレート)が低下してしまうという問題が発生していた。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するため、請求項1にかかる発明は、第一の画像撮影装置、第一の画像投影装置、および第一の画像処理装置を含む第一の画像処理システムと、第二の画像処理装置および第二の画像投影装置を含む第二の画像処理システムと、を有する画像処理システムであって、前記第一の画像処理装置は、前記第二の画像処理装置から画像データを受信する画像データ受信手段と、前記画像データ受信手段によって受信された受信画像データを記憶する受信画像データ記憶手段と、前記受信画像データ記憶手段に記憶されている受信画像データを第一の画像投影装置に供給する受信画像データ供給手段と、前記画像撮影装置により撮影された撮影画像を取得する撮影画像取得手段と、前記撮影画像取得手段によって取得された撮影画像と、前記画像供給手段よって供給する受信画像データが表す受信画像に基づいて、差分画像を生成する差分画像生成手段と、前記画像撮影装置によって撮影された前記撮影画像の画素の輝度の変化があったか否かを判定する画像変化判定手段と、前記画像変化判定手段によって判定された前記輝度の変化に基づいて、前記第二の画像処理装置に前記差分画像生成手段によって生成された前記差分画像を表す差分画像データを送信制御する送信制御手段と、前記送信制御手段による送信制御に基づいて前記差分画像データを第二の画像処理装置に送信する差分画像データ送信手段と、を備え、前記第二の画像処理装置は、前記差分画像データを前記第一の画像処理装置から受信する差分画像データ受信手段と、前記差分画像データ受信手段によって受信した差分画像データが表す差分画像を第二の画像投影装置に投影させる投影制御手段と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
以上説明したように、本発明によれば、第一の画像処理装置は画像変化判定手段によって判定された変化に基づいて、差分画像生成手段で生成された差分画像を表す差分画像データを第二の画像処理装置に送信するので、第二の画像処理装置は画像の変化に基づいて送信された画像データのみを受信する。つまり、第二の画像処理装置が受信する差分画像データの総数が減少する。したがって、第二の画像処理装置は、画像投影装置が画像を映し出し始めてから撮影装置が画像を撮影できるようになるまでの待ち時間を経ることなく差分画像を生成する処理を行うことが可能になるので、全体として処理できる画像の枚数(フレームレート)を向上させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の一実施形態に係る画像処理システムの概略図である。
【図2】差分画像を説明するための概念図である。
【図3】本発明の一実施形態に係る画像処理装置のハードウェア構成図である。
【図4】本発明の一実施形態に係る画像処理装置の機能ブロック図である。
【図5】本実施形態に係る画像処理装置の処理の概要を示した処理フロー図である。
【図6】撮影画像の変化を判定する処理を示した処理フロー図である。
【図7】差分画像を生成する処理を示した処理フロー図である。
【図8】輝度平均値を算出する処理を示した処理フロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
<<実施形態の全体構成>>
以下、図1乃至図8を用いて、本発明の一実施形態について説明する。
【0010】
<画像処理システムのハードウェア構成>
図1は、本発明の一実施形態に係る画像処理システムの概略図である。図2は、差分画像を説明するための概念図である。図3は、本発明の一実施形態に係る画像処理装置のハードウェア構成図である。
【0011】
まず、図1を用いて、本実施形態の概略を説明する。図1に示す画像処理システム1において、拠点Aの画像処理装置10aおよび拠点Bの画像処理装置10bは通信ネットワーク50を経由して相互にデータを送受信する。拠点Aには画像処理装置10a、拠点Aにいる人物が描画を行うためのホワイトボード等の描画対象物20aがあり、画像処理装置10aには描画対象物20aを撮影する撮影装置30a、描画対象物20aに画像を映し出すプロジェクタ40aが接続されている。また、画像処理装置10aはディスプレイ60a、キーボード等の入力装置70aと接続されている。
【0012】
拠点Bには画像処理装置10b、拠点Bにいる人物が描画を行うためのホワイトボード等の描画対象物20bがあり、画像処理装置10bには描画対象物20bを撮影する撮影装置30b、描画対象物20bに画像を映し出すプロジェクタ40bが接続されている。また、画像処理装置10bはディスプレイ60b、キーボード等の入力装置70bと接続されている。
【0013】
なお、本実施形態では、画像処理装置10a、画像処理装置10bのうち任意の画像処理装置を示す場合には「画像処理装置10」といい、描画対象物20a、描画対象物20bのうち任意の描画対象物を示す場合には「描画対象物20」といい、撮影装置30a、撮影装置30bのうち任意の撮影装置を示す場合には「撮影装置30」といい、プロジェクタ40a、プロジェクタ40bのうち任意のプロジェクタを示す場合には「プロジェクタ40」という。また、ディスプレイ60a、ディスプレイ60bのうち任意のディスプレイを示す場合には「ディスプレイ60」といい、入力装置70a、入力装置70bのうち任意の入力装置を示す場合には「入力装置70」という。
【0014】
また、画像処理装置10aは撮影装置30aが撮影した撮影画像Aおよび拠点bから受信した受信画像データBが表す受信画像Bを用いることによって差分画像Aを生成し、通信ネットワーク50を経由して画像処理装置10bに送信するものである。ここで、差分画像とは、拠点Aの撮影装置30aで撮影された撮影画像Aから、拠点Bの画像処理装置10bから受信しプロジェクタ40aによって映し出している受信画像Bを除去することによって、拠点Aで描画された画像のみを表している画像をいう。画像処理装置10bは画像処理装置10aと同様の機能を有するため、その説明を省略する。また、画像処理装置10bによって生成される差分画像Bは差分画像Aと同様のものであるため、その説明を省略する。
【0015】
図2を用いて、撮影画像、受信画像、および差分画像について詳細に説明する。図2(1)は拠点Aの描画対象物20の描画領域内の状態を示している。ここでは、文字「あ」は拠点Aにいる人物によって描画されたものである。そして、文字「い」は拠点Bにいる人物によって描画されたものである。具体的には、文字「い」は、拠点Bの画像処理装置10bから拠点Aの画像処理装置10aが受信した受信画像データBが表す受信画像B(図2(2)参照)に含まれているものであり、プロジェクタ40aによって描画対象物20aに映し出されている。したがって、拠点Aにいる会議参加者は文字「あ」と文字「い」を描画対象物20a上に見ていることになる。また、拠点Aの撮影装置30aは図2(1)に示される文字「あ」と文字「い」が表されている状態を撮影画像Aとして撮影し、撮影画像データAを生成する。
【0016】
図2(3)は、図2(1)に示される撮影画像Aから、図2(2)に示される受信画像Bを除去したものであり、これを差分画像Aという。拠点Bで描画されている描画物を表している受信画像Bを除去していることから、差分画像Aに含まれる文字、図形等の描画物は拠点Aにいる人物によって描画されたもののみとなる。
【0017】
描画対象物20は、ユーザが文字や図形等の描画画像を描画するホワイトボードや黒板、紙等の物品である。また、描画対象物20にはプロジェクタ40が映し出す画像が映し出される。また、描画対象物20a内にプロジェクタ40aが映し出す4つの点を角とする長方形で囲まれる領域を描画領域201aとする。また、その描画領域201aの周辺部を周辺領域202aとする。同様に、描画対象物20b内にプロジェクタ40bが映し出す4つの点を角とする長方形で囲まれる領域を描画領域201bとする。また、その描画領域201bの周辺部を周辺領域202bとする。なお、本実施形態では、描画領域201a、描画領域201bのうち任意の描画領域を示す場合には「描画領域201」といい、周辺領域202a、周辺領域202bのうち任意の描画領域を示す場合には「描画領域202」という。
【0018】
撮影装置30は、描画画像を含む描画領域201、周辺領域202、およびそれらの前にいる人物等を撮影して撮影画像を生成するカメラ等の装置である。プロジェクタ40は、画像処理装置10が記憶、生成、受信した画像を描画対象物20の描画領域201に映し出すものである。なお、プロジェクタ40は画像投影装置の一例である。また、通信ネットワーク50は、画像処理装置10aと画像処理装置10bにて、相互に各種データを送受信するためのものである。
【0019】
<画像処理装置のハードウェア構成>
次に、図3を用いて、本発明の一実施形態に係る画像処理装置10のハードウェア構成について説明する。画像処理装置10は、画像処理装置10全体の動作を制御するCPU(Central Processing Unit)101、画像処理装置用プログラムを記憶したROM(Read Only Memory)102、CPU101のワークエリアとして使用されるRAM(Random Access Memory)103、各種データを記憶するHD(Hard Disk)104、CPU101の制御にしたがってHD104に対する各種データの読み出し又は書込みを制御するHDD(Hard Disk Drive)105、フラッシュメモリ等の記憶メディア106に対するデータの読み出し又は書込み(記憶)を制御するメディアドライブ107、カーソル、メニュー、ウィンドウ、文字、又は画像などの各種情報をディスプレイに表示させるためのディスプレイI/F(Interface)108、通信ネットワーク50を利用してデータ伝送をするためのネットワークI/F109、文字、数値、各種指示などの入力のための複数のキーを備えたキーボードからの情報を受け付けるためのキーボードI/F111、各種指示の選択や実行、処理対象の選択、カーソルの移動などを行うマウスからの情報を受け付けるためのマウスI/F112、着脱可能な記憶媒体の一例としてのCD−ROM(Compact Disc Read Only Memory)113に対するデータの読み出し又は書込みを制御するCD−ROMドライブ114、撮影装置30等の外部の装置と情報を送受信する外部装置I/F115、音声データに基づいて音声を出力するためのスピーカーI/F116、タイマー117、及び、上記各構成要素を電気的に接続するためのアドレスバスやデータバス等のバスライン110を備えている。
【0020】
なお、上記画像処理装置用プログラムは、インストール可能な形式又は実行可能な形式のファイルで、上記記憶メディア106やCD−ROM113等のコンピュータで読み取り可能な記憶媒体に記憶して流通させるようにしてもよい。
【0021】
<画像処理装置の機能構成>
図4は、本実施形態の画像処理装置10の機能ブロック図である。図4を用いて本実施形態の画像処理装置10の機能を説明する。本実施形態の画像処理装置10は、送受信部11、操作入力受付部12、画像取得部13、画像変化判定部14、差分画像生成部15、時間計測部17、表示制御部18a、音声出力制御部18b、及び記憶・読出処理部19を有している。これら各部は、図3に示されている各構成要素のいずれかが、ROM102に記憶されているプログラムに従ったCPU101からの命令によって動作することで実現される機能又は手段である。また、画像処理装置10は、図3に示されているROM102、RAM103、HDD105のいずれかによって構築される記憶部1000を有している。
【0022】
(画像処理装置10の各機能部)
次に、画像処理装置10の各部を詳細に説明する。ここでは、画像処理装置10aが拠点Bから送信された受信画像データBを受信し、拠点Aのプロジェクタ40aが受信画像Bを描画対象物20aに映し出し、拠点Aの撮影装置30aが描画対象物20aを撮影し撮影画像Aを生成するという状況(図1参照)での画像処理装置10aの機能について説明する。なお、拠点Aの画像処理装置10aと拠点Bの画像処理装置10bは同様の機能を有するものである。したがって、画像処理装置10bが拠点Aから送信された受信画像データAを受信し、拠点Bのプロジェクタ40bが受信画像Aを描画対象物20bに映し出し、拠点Bの撮影装置30bが描画対象物20bを撮影するという状況での画像処理装置10bの機能についての説明は省略する。
【0023】
画像処理装置10の送受信部11は、ネットワークI/F109によって実現され、通信ネットワーク50を介して他の端末、装置又はシステムと各種データ(情報)の送受信を行う。操作入力受付部12は、図3に示されているキーボードI/F111またはマウスI/F112によって実現されており、キーボードまたはマウス等を用いることによってユーザから入力された情報を受け付けるものである。画像取得部13は、外部装置I/F115によって実現され、ケーブル等を介して撮影装置30が撮影した撮影画像を表す撮影画像データを撮影装置30から取得するものである。
【0024】
画像変化判定部14は、画像取得部13によって取得された撮影画像データが表す撮影画像のうち周辺領域202の各画素の輝度に基づいて周辺領域202に変化があったか否かを判定する。画像変化判定部14が撮影画像の周辺領域202に変化があったと判定した場合には周辺領域に人物がいるとみなされ、その人物が描画対象物20の描画領域201に描画しているものとみなされる。また、画像変化判定部14が撮影画像の周辺領域202に変化がない判定した場合には周辺領域202に人物がいないとみなされ、描画領域201の描画の状態に変化がないとみなされる。このように画像変化判定部14が撮影画像の周辺領域202に変化があるか否かを判定した結果に基づいて、以降の処理が決定される。詳細については追って記載する。
【0025】
画像変化判定部14は、輝度取得部14a、差分判定部14b、輝度変化画素数判定部14cを含んでいる。画像変化判定部14は拠点Aにいる人物等が描画対象物20に文字、記号、図形等を描画することによって状態が変化しているか否かを判定することを目的としている。すなわち、拠点Aの人物等が描画対象物に何かを描画したり、描画されたものを消去したりしている場合には、その変化した状態を表す画像データを拠点Bに送信する必要があり、拠点Aの人物が描画も消去もしていない場合には拠点Bへ変化していない画像データを送信する必要はない。
【0026】
また、拠点Aの描画領域201aには拠点Bから受信された受信画像データBに基づく受信画像Bを映し出されるため、描画領域201aの描画の状態に変化があったとしてもその変化は拠点Aにいる人物の描画によるものではない場合もある。したがって、拠点Aの人物等が描画することによって状態が変化したか否かを判定するためには、描画領域201aではなく拠点Bから受信した受信画像Bが映し出されない周辺領域202bに変化があるか否かを判定すればよい。
【0027】
輝度取得部14aは、画像取得部13が取得した撮影画像データAが表す撮影画像Aの周辺領域202aに含まれる全ての画素の輝度を取得する。差分判定部14bは、輝度取得部14aが取得した各画素の輝度から、その撮影画像Aより所定の時間前に撮影された撮影画像A’の対応する位置の画素の輝度を減じた差分が閾値より大きいか否かを判定する。なお、差分判定部14bは輝度取得部14aによって取得された全ての画素に対してこの処理を行う。
【0028】
輝度変化画素数判定部14cは、差分判定部14bによって、輝度の差分が閾値より大きいとされた画素の数が所定数以上あったと判定された場合にその撮影画像Aの周辺領域202aに変化があったと判定する。そして、記憶・読出処理部19が、その撮影画像Aを表す撮影画像データAに対応する画像変化フラグを「ON」とする。また、輝度変化画素数判定部14cは、差分判定部14bで輝度の差分が閾値を超えているとされた画素の数が所定数未満であったと判定された場合にその撮影画像Aの周辺領域202aに変化がなかったと判定する。そして、記憶・読出処理部19が、その撮影画像Aを表す撮影画像データAに対応する画像変化フラグを「OFF」とする。
【0029】
本実施形態では周辺領域202aに変化があったことをもって、その拠点の撮影範囲内に人物がいて描画対象物20aの描画領域201aに文字、図形、記号等を描画したり消去したりし撮影画像Aが変化しているとみなしている。描画対象物20aの描画領域201aには拠点Bから受信した受信画像データBが表す受信画像Bがプロジェクタ40aによって映し出されるため、描画領域201aの画素の変化に基づいて拠点Aの人物が描画したことによる撮影画像Aの変化があったか否かを判定することができないためである。
【0030】
差分画像生成部15は、拠点Aの撮影装置30aによって撮影された撮影画像Aの描画領域201a内の画像から、拠点Bの画像処理装置10bより受信した受信画像データBが表す受信画像Bを除去した差分画像Aを生成するものである。具体的には、図2(1)に示される例において拠点Aの描画対象物20aには、拠点Aにいる人物が描画した文字「あ」と拠点Bから受信した受信画像Bに含まれている文字「い」が表されている。そして、撮影装置30aは文字「あ」と文字「い」をともに含む撮影画像Aを撮影している。
【0031】
ここで差分画像Aを生成するということは、撮影装置30aが撮影した文字「あ」と文字「い」から、拠点Bから受信した受信画像データBが表す受信画像Bが含んでいる文字「い」を除去し、文字「あ」のみを含む画像を生成するということである。このように差分画像A(文字「あ」のみを含む画像)を生成し、その差分画像Aを表す差分画像データAを拠点Bに送ることができる。これによって、拠点Bでは、拠点Bにいる人物が描画した文字「い」と拠点Aの画像処理装置10aから受信した差分画像Aに含まれる文字「あ」が描画対象物20bに表されるようになる。ここで、差分画像を生成しなかった場合、拠点Bでは人物が描画した文字「い」および拠点Aから受信しプロジェクタ40bによって映し出されている文字「あ」と文字「い」が描画対象物20bに表される。すなわち、二つの文字「い」が重なってしまうこととなる。そして、この二つの文字「い」が少しでもずれた場合、「い」の文字が拠点Bにいる会議参加者からは見にくいものとなってしまう。なお、差分画像Aは撮影画像Aの描画領域201a内の画像および受信画像Bの描画領域201b内の画像によって生成されるものであり、それぞれの周辺領域の画像は含まない。周辺領域202aに受信画像Bが投影されると、先に説明した画像変化判定部14は拠点Bで発生した変化に基づいて拠点Aの画像に変化があったか否かを判定してしまうことになり、画像変化判定部14の説明で記載した判定の目的をなさないからである。
【0032】
差分画像生成部15は、輝度補正部15a、輝度平均値算出部15b、輝度平均値差分算出部15c、輝度判定・決定部15dを含んでいる。また、差分画像生成部15は、画像変化判定部14によって周辺領域202aに変化があると判定されたときに差分画像Aを生成するものである。また、差分画像生成部15は送受信部11が受信画像データBを受信して所定の時間が計測してからその処理を開始するものとする。受信画像データBを受信してからプロジェクタ40aの照射や撮影装置30aでの撮影が安定するまで数百ミリ秒程度の時間がかかり、所定の時間が経過した後の安定した画像を用いて差分画像生成部15が処理を行う必要があるからである。なお、時間計測部17がタイマーを用いて時間の経過を計測する。
【0033】
輝度補正部15aは、各画素の周辺にある画素の輝度に基づいてその画素の輝度を補正したり、照明の影響により黄色がかった画素を補正したりするものである。輝度平均値算出部15bは、輝度補正部15aによって補正された撮影画像Aの各画素の周辺にある画素の輝度の平均値を算出するものである。輝度平均値差分算出部15cは、輝度平均値算出部15bが算出した輝度平均値から受信画像Bの同じ位置にある画素の輝度を減じることによって差分を算出し、輝度平均値差分を算出するものである。輝度判定・決定部15dは、輝度平均値差分算出部15cが算出した輝度平均値差分を新たに生成する差分画像の輝度として決定するものである。
【0034】
時間計測部17は送受信部11が受信画像データBを受信してから経過した時間を計測するものである。具体的には時間計測部17は、送受信部11が受信画像データBを受信するとタイマー117を起動し0にセットしてから経過時間を計測する。
【0035】
表示制御部18aは、図3に示されているディスプレイI/F108によって実現され、画像処理装置10に接続されているディスプレイ60aに対して画像を表示させるための制御を行う。また、表示制御部18aは画像処理装置10aに接続されているプロジェクタ40aに画像を投影させるための制御を行う。なお、表示制御部18aは投影制御手段、受信画像データ供給手段の一例である。音声出力制御部18bは、図3に示されているスピーカーI/F116によって実現され、画像処理装置10に接続されているスピーカーに音声を出力するための制御を行う。
【0036】
また、記憶・読出処理部19は、図3に示されているROM102、RAM103、HDD105のいずれかとして実現されている記憶部1000に各種データを記憶したり、記憶部1000に記憶された各種データを読み出したりする。記憶部1000には、撮影画像記憶部1001、受信画像記憶部1002、画像変化フラグ記憶部1004、表示画像記憶部1005、差分画像記憶部1006によって構成される。
【0037】
撮影画像記憶部1001は、画像取得部13によって撮影装置30aから取得された撮影画像データAを記憶するものである。撮影画像記憶部1001は撮影装置30aによって撮影された撮影画像データAを撮影順が識別できるように記憶している。このように記憶していることによって画像変化判定部14は新たに取得した撮影画像データAがそれ以前に撮影された撮影画像データA’から変化しているか否かを判定することができるのである。
【0038】
受信画像記憶部1002は、送受信部11によって拠点Bの画像処理装置10bから受信した受信画像データBを記憶するものである。受信画像記憶部1002には、新たに受信画像データBが記憶されるとき、既に記憶されている受信画像データは上書きされ、常に最新の受信画像データBが記憶されている。画像変化フラグ記憶部1004は、撮影画像データAに対応して画像変化フラグを記憶するものである。なお、画像変化フラグとは、撮影画像データAが表す撮影画像Aが所定の時間前に撮影された撮影画像Aから変化があったか否かを示す情報であり、上述のとおり画像変化判定部14によって撮影画像Aの周辺領域202aに変化があったと判定された場合には画像変化フラグは「ON」とされ、画像変化判定部14によって撮影画像Aの周辺領域202aに変化がなかったと判定された場合には画像変化フラグは「OFF」とされる。
【0039】
表示画像記憶部1005は、プロジェクタ40に表示している画像データを記憶するものである。差分画像記憶部1006は、差分画像生成部15によって生成された差分画像データAを記憶するものである。
【0040】
なお、送受信部11は画像受信手段、差分画像受信手段、差分画像送信手段の一例であり、受信画像記憶部1002は受信画像記憶手段の一例であり、画像取得部13は画像取得手段の一例であり、差分画像生成部15は差分画像生成手段の一例である。また、画像変化判定部14は画像変化判定手段の一例である。
【0041】
<<実施形態の処理・動作>>
続いて、図5乃至図8を用いて、本実施形態に係る画像処理システム1における処理方法を説明する。なお、図4は、本発明の一実施形態に係る画像処理装置の機能ブロック図である。図5は、本実施形態に係る画像処理装置の処理の概要を示した処理フロー図である。図6は、撮影画像の変化を判定する処理を示した処理フロー図である。図7は、差分画像を生成する処理を示した処理フロー図である。図8は、輝度平均値を算出する処理を示した処理フロー図である。
【0042】
図5を用いて、本実施形態に係る画像処理装置10の処理を説明する。本実施形態では、図1に示す拠点Aの画像処理装置10aが撮影した撮影画像Aと拠点Bの画像処理装置10bから受信した受信画像Bに基づいて、画像処理装置10aが実施する処理について説明する。なお、拠点Bの画像処理装置10bは拠点Aの画像処理装置10aと同じ機能を有し同じ処理を実施しているため、ここでの説明は省略する。
【0043】
まず、拠点Aの撮影装置30aは描画領域201aおよび周辺領域202aを決定する(ステップS11)。具体的には、プロジェクタ40aが4つの点を描画対象物20aに映し出し、撮影装置30aが描画対象物20aを撮影したときに撮影画像に含まれる4つの点を結んで形成される長方形に囲まれる領域が描画領域201aとされる。その描画領域201の外側で撮影装置30aの撮影範囲内にある部分が周辺領域202とされる。なお、以降、画像処理装置10aの画像変化判定部14aは撮影装置30aによって撮影された撮影画像Aのうち、ここで決定した周辺領域202aに対して処理を行う。また、画像処理装置10bの差分画像生成部15は撮影装置30aによって撮影された撮影画像Aのうち、ここで決定した描画領域201aに対して処理を行う。
【0044】
拠点Aの画像処理装置10aの送受信部11は拠点Bの画像処理装置10bの送受信部11から送信された受信画像データBを受信する(ステップS12)。この受信画像データBが表す受信画像Bは、拠点Bにいる人物が描画対象物20bに描画した画像を表すものであり、拠点Aから送信されプロジェクタ40bによって描画対象物20bに映し出されている画像は除去されている。つまり、拠点Bの画像処理装置10bから送信される受信画像データBは、画像処理装置10bが生成した差分画像Bを表す差分画像データBである。なお、画像処理装置10bが差分画像Bを生成する処理は、画像処理装置10aが差分画像Aを生成する処理と同じであり、その処理の詳細は追って説明する。また、以降、受信画像データが表す画像を受信画像という。
【0045】
拠点Aの画像処理装置10aの送受信部11は拠点Bの画像処理装置10bの送受信部11から送信された受信画像データBを受信する(ステップS12)と、拠点Aの時間計測部17は、タイマー117を0にセットし、受信画像データBを受信してから経過する時間を計測し始める(ステップS13)。
【0046】
次に、拠点Aの画像処理装置10の記憶・読出処理部19はステップS12で送受信部11によって受信された受信画像データBを受信画像記憶部1002に記憶する(ステップS14)。受信画像データBは画像処理装置10bによって所定の処理が行われるごとに次々に画像処理装置10aに送信されることとなるが、記憶・読出処理部19は受信画像データBを上書きして記憶するので、送受信部11が受信した最新の受信画像データBのみが受信画像記憶部1002に記憶される。
【0047】
続いて、拠点Aの画像処理装置10の表示制御部18aはステップS12で送受信部11によって受信した受信画像データBが表す受信画像Bを、プロジェクタ40aを制御することによって描画対象物20aに表示させる(ステップS15)。なお、ここで、記憶・読出処理部19が受信画像記憶部1002に記憶されている受信画像データBを読出し、読み出された受信画像データBが表す受信画像Bを表示制御部18aが表示させるとしてもよい。
【0048】
一方、拠点Aでは撮影装置30aが描画対象物20aを撮影している。このとき、描画対象物20aには、図1および図2(1)に示されるように拠点Aにいる人物によって描画されている文字「あ」とプロジェクタ40aによって映し出されている受信画像データBが表す受信画像Bが含む文字「い」が表されているとすると、撮影装置30aは文字「あ」、文字「い」をともに含む画像を撮影していることになる。また、撮影装置30aの撮影範囲内に人物等がいる場合にはその人物もともに撮影されている。
【0049】
このようにして、撮影装置30aによって撮影された撮影画像Aを表す撮影画像データAを、拠点Aの画像処理装置10aの画像取得部13が取得する(ステップS16)。そして、画像取得部13によって取得された撮影画像データAを記憶・読出処理部19が撮影画像記憶部1001に記憶する(ステップS17)。撮影装置30aは次々に画像を撮影しており、画像取得部13は撮影された撮影画像Aを表す撮影画像データAを順次取得している。このとき、順次取得された撮影画像データAを記憶・読出処理部19は取得された順を識別できるように撮影画像記憶部1001に記憶する。
【0050】
続いて、拠点Aの画像処理装置10aの画像変化判定部14は、撮影画像Aの周辺領域202aに変化があったか否かを判定する(ステップS18)。画像変化判定部14が判定する処理の詳細について図6を用いて説明する。まず、記憶・読出処理部19が撮影画像記憶部1001に記憶されている撮影画像データAを読み出す(ステップS181)。そして、画像変化判定部14の輝度取得部14aが記憶・読出処理部19によって読み出された撮影画像データAが表す撮影画像Aの周辺領域202a内の全ての画素の輝度を取得する(ステップS182)。
【0051】
また、記憶・読出処理部19はステップS181で読み出された撮影画像データAより所定の枚数だけ前に、もしくは所定の時間前に撮影された撮影画像データA’を撮影画像記憶部1001から読み出す(ステップS181’)。そして、輝度取得部14aが記憶・読出処理部19によって読み出された撮影画像データA’が表す撮影画像A’の周辺領域202内の全ての画素の輝度を取得する(ステップS182’)。
【0052】
ステップS182およびステップS182’で全ての画素の輝度が取得されると、差分判定部14bは撮影画像Aの各画素の輝度と、撮影画像Aの画素と同じ位置にある撮影画像A’の画素の輝度との差分を算出する(ステップS183)。そして、差分判定部14bはその差分が所定の閾値を超えているか否か判定する(ステップS184)。
【0053】
続いて、輝度変化画素数判定部14cが、差分判定部14bによって差分が閾値を超えていると判定された画素を輝度変化画素としてその数を算出し(ステップS185)、輝度変化画素の数が所定の値を超えているか判定する(ステップS186)。ステップS186で、輝度変化画素の数が所定の値を超えていると判定された場合、その撮影画像Aには変化があったとされ、記憶・読出処理部19が、撮影画像データAに対応する画像変化フラグを「ON」とする(ステップS187)。ステップS186で輝度変化画素の数が所定の値以下である場合、画像には変化がないとされ、記憶・読出処理部19は、撮影画像データAに対応する画像変化フラグを「OFF」とする(ステップS188)。
【0054】
図5に戻って、このように画像変化判定部14によって画像に変化があったか否かが判定され(ステップS18)た結果、撮影画像Aに変化があった場合、時間計測部17がタイマー117を用いて計測した時間が所定の時間を経過しているか否かを判定する(ステップS19)。
【0055】
画像変化判定部14によって画像に変化があったか否かが判定され(ステップS18)た結果、撮影画像Aに変化がなかった場合、ステップS16に戻って画像変化判定部14は撮影装置30aが次に撮影し画像取得部13によって取得されている撮影画像Aについて同様に画像変化があったか否かを判定する。なお、画像変化判定部14は全ての撮影画像Aに対してこの処理を施しても良いが、一の撮影画像Aに変化があると判定されて以降に画像取得部13によって取得された所定数の撮影画像Aについてはこの処理を施さずに画像に変化があったものとみなしてもよい。
【0056】
ステップS19で時間計測部17が所定の時間が経過していることを計測した場合、ステップS14で受信画像記憶部1002に記憶された受信画像データBおよびステップS17で撮影画像記憶部1001に記憶された撮影画像データAに基づいて、拠点Aの画像処理装置10aの差分画像生成部15が差分画像データAを生成する(ステップS20)。図2に示す例で説明すると、差分画像生成部15は、撮影画像データAが表す撮影画像Aに含まれる文字「あ」および文字「い」から、受信画像データBが表す受信画像Bに含まれる文字「い」を除去し、拠点Aにいる人物が描画した文字「あ」のみを含む差分画像Aを表す差分画像データAを生成する。
【0057】
ステップS19で時間計測部17によって計測された時間が所定の時間を経過していなかった場合、拠点Aの画像処理装置10aの差分画像生成部15は所定の時間が経過してから差分画像データAを生成する(ステップS20)。
【0058】
ここで、差分画像生成部15が差分画像を生成する処理の詳細について図7を用いて説明する。図7に示されるように、まず、画像処理装置10aの記憶・読出処理部19が受信画像記憶部1002に記憶されている受信画像データAを読み出す(ステップS201)。続いて、画像処理装置10aの差分画像生成部15の輝度補正部15aがステップS201で記憶・読出処理部19によって読み出された受信画像データAが表す受信画像Aの輝度を補正する(ステップS202)。ここでの補正は各画素の周辺にある画素の輝度の平均値に対するその画素の輝度の比率に背景色の輝度を掛け合わせることにより算出した輝度平均値を対象画素の輝度とすることである。また、ここでの補正は、黄色の成分を除去することによって、外光の影響を均すためのものである。
【0059】
ステップS202で輝度補正部15aが輝度を補正する処理について図8を用いて詳細に説明する。図8に示されるように、まず、対象画素の周辺にある画素の輝度の平均値として、周辺輝度平均値AVEが色成分(R、G、B)ごとに算出される(ステップS2021)。次に、色成分ごとに周辺輝度平均値AVEに対する対象画素の輝度の比率が算出され、それぞれ輝度比率とされる(ステップS2022)。次に、ステップS2022で算出された輝度比率に、撮影画像の背景色の輝度を乗じることにより、色成分ごとに平均輝度が算出される(ステップS2023)。更に、ステップS2023で色成分ごとに平均輝度が算出されると、それらの色成分を合成して形成された画像の黄色を除去するフィルタ処理が行われる。(ステップS2024)。
【0060】
ステップS2024で実施される黄色を除去するフィルタ処理を詳細に説明する。ここでは、まず、対象画素の背景色の輝度と赤色(R)の輝度との差分値(背景色輝度差分値R)が算出される。そして、緑色(G)の輝度との差分値(背景色輝度差分値G)が算出される。さらに、当該背景色の輝度と青色(B)の輝度との差分値(背景色輝度差分値B)が算出される。そして背景色輝度差分値Rおよび背景色輝度差分値Gと、背景色輝度差分値Bとが比較される。背景色輝度差分値Bが、背景色輝度差分値Rおよび背景色輝度差分値Gのいずれかよりも大きい場合には、背景色輝度差分値Rおよび背景色輝度差分値Gのうち大きい方の値を定数倍したものが、青色の輝度とされる。一方、背景色輝度差分値Bが、背景色輝度差分値Rおよび背景色輝度差分値Gよりも小さい場合には、青色の輝度は、そのままとされる。
【0061】
例えば、背景色の輝度が「200」、赤色の輝度が「190」、緑色の輝度が「180」、青色の輝度が「140」である場合、各色の背景色の輝度との差分値は、それぞれ10(背景色輝度差分値R)、20(背景色輝度差分値G)、60(背景色輝度差分値B)となる。この場合、背景色輝度差分値Bが、背景色輝度差分値Rおよび背景色輝度差分値Gよりも大きく、また、背景色輝度差分値Rより背景色輝度差分値Gの方が大きいため背景色輝度差分値G「20」の定数倍(例えば、2倍)である「40」が青色の輝度の差分値とされる。すなわち、青色の輝度は背景色の輝度「200」との差分値が「40」となるように、「160」とされる。なお、本実施形態で使用する定数は、任意の数値とするが、数値が大きいと効果的に黄色成分が除去されないため、定数として1〜2が採用されるのが好適である。これにより描画対象物20に照射される照明の光に含まれる黄色成分を除去することができ、会議参加者とって見やすい画像を生成することができる。
【0062】
ステップS202の処理が終了すると、図7に戻って、撮影画像データAが表す撮影画像Aから受信画像データBが表す受信画像Bを除去する。具体的には、輝度平均値差分算出部15cが、ステップS202で補正されたの各画素の輝度から、ステップS201で読み出された受信画像データBが表す受信画像Bの同じ位置にある画素の輝度を減じた値を輝度差分値として算出する(ステップS203)。
【0063】
次に、輝度判定・決定部15dはステップS203で算出された輝度差分値が所定の閾値より大きいか否かを判定する(ステップS204)。図2に示す例では、撮影画像Aの文字「あ」が描画されている位置と同じ位置の受信画像Bの位置に「あ」の文字は描画されていないため、撮影画像Aの文字「あ」を形成している画素と同じ位置の受信画像Bの画素との輝度差分値は閾値以下であると判定されることになる。具体的には撮影画像Aの文字「あ」は黒いインクで描かれているものであるため画素の輝度は低いため、例として輝度は0であるとする。また、受信画像Bの対応する画素はホワイトボードの地の色であるから輝度が高いため、例として輝度は255であるとする。このとき、輝度差分値は0−255=−255となる。この値は所定の閾値が例えば−100である場合に輝度差分値は所定の閾値以下であると判定される。
【0064】
また、撮影画像Aの文字「い」が描画されている位置と同じ位置の受信画像Bに同様に「い」の文字が描画されているため、撮影画像Aの文字「い」を形成している画素の輝度と同じ位置の受信画像Bの画素の輝度との輝度差分値は閾値以下であると判定される。具体的には撮影画像Aの文字「い」を形成する画素の輝度は0であるとし、受信画像Bの対応する画素は同じく文字「い」を形成する画素であるため、その輝度は0であるとする。このとき、輝度差分値は0−0=0である。この値は、所定の閾値である−100より大きいと判定される。
【0065】
ステップS204で、輝度差分値が閾値以下であると判定された場合には、輝度判定・決定部15dは、その輝度差分値を定数倍する等の所定の処理を施した値を差分画像Aの該当の位置の画素の輝度と決定する(ステップS205)。
【0066】
ステップS204で、輝度差分値が閾値より大きいと判定された場合には、輝度判定・決定部15dは、背景となる画素の輝度より高い所定の値を輝度とする(ステップS206)。ステップS206の処理によって、差分画像Aにおいて撮影画像Aおよび受信画像Bの文字「い」に対応する部分は何も描画されていないものとする必要があるため、背景となる画素の輝度より高い所定の値とすることにしている。さらに、輝度判定・決定部15dは、このようにして得られた輝度に背景色の輝度を加算する(ステップS207)。
【0067】
これによりステップS205で決定された輝度はステップS206の処理によって増加し、さらに背景色とのバランスをとるためにステップS207の処理を施すことによって、文字「あ」の部分が背景色に対して明瞭に表されるような輝度に補正されることになる。差分画像生成部15はステップS205からステップS208までの処理を全ての画素に対して実施し、各画素に対して輝度が決定された画像を差分画像Aとする。そして、差分画像生成部15は差分画像Aを表す差分画像データAを生成する。
【0068】
続いて、画像処理装置10aの送受信部11は差分画像生成部15によって生成された差分画像データAを画像処理装置10bに対して送信する。そして、画像処理装置10bの送受信部11が画像処理装置10aの送受信部によって送信された差分画像データAを受信画像データAとして受信し、画像処理装置10bの表示制御部18aがプロジェクタ40bを制御して拠点Bの描画対象物20bの描画領域201bに受信画像データAが表す受信画像Aを表示させる。そして、拠点Bの画像処理装置10bは拠点Bの撮影装置30bによって描画対象物20bを撮影した撮影画像Bおよび受信画像Aにもとづいて、画像処理装置10aが行ったステップS11乃至ステップS22の処理と同様の処理を行う。
【0069】
<<実施形態の主な効果>>
以上説明したように、本実施形態によれば、画像処理装置10aは、拠点Aの人物等が描画したり除去したりすることによって画像に変化が発生した場合の差分画像Aだけを拠点Aの画像処理装置10aは拠点Bに送信する。また、差分画像Aを表す差分画像データAを受信画像データAとして受信した拠点Bの画像処理装置10bは、受信した受信画像Aをプロジェクタ40bに描画対象物20bに対して映し出させる。つまり、画像処理装置10bは画像に変化がない場合は差分画像データAを送信しないため、拠点Bで受信する受信画像データAの総数は減ることになる。したがって、プロジェクタ40bが描画対象物20bに映し出す受信画像Aの数は少なくなり、受信画像Aが安定して映し出されるために待つ時間が減少する。待つ時間が減少すれば、拠点Bの画像処理装置10bは受信画像Aと撮影画像Bに基づいて差分画像Bを生成する処理を早く始められることになり、拠点Aに送信することができる差分画像Bの数を向上することが可能となる。
【0070】
<<実施形態の補足>>
上述の実施形態では、受信画像データと撮影画像データが表す画像の同じ位置にある画素の差を算出しているが、同じ位置にある領域(たとえば、矩形で表される8画素×8画素の領域)ごとに差を算出してもよい。
【0071】
また、人物を検知する処理、差分画像を生成する処理をそれぞれの画像処理装置10で実施しているが、撮影画像データ、及び、受信画像データを通信通信ネットワーク経由で画像処理サーバに送信し、その画像処理サーバで人物を検知する処理、差分画像を生成する処理を実施してもよい。
【0072】
また、差分判定部14bは各画像の各画素の輝度と、それぞれの画像が撮影された時間より、所定の時間前に撮影された画像の同じ位置にある画素の輝度との差分を算出しているが、所定の数だけ前に撮影された画像に基づいて、差分を算出してもよい。
【0073】
また、背景色の輝度は、ユーザが予め任意の値を設定することができる。この場合、ユーザによる設定を操作入力受付部12が受け付けられる。
【0074】
また、画像処理装置10に画像補正部を設け、画像取得部13によって取得された画像を台形補正等により補正してもよい。
【0075】
また、差分画像生成部15は、表示画像記憶部1005に記憶されている受信画像データを用いて、差分画像を生成しているが、送受信部11で受信された受信画像データを用いるようにしてもよい。
【0076】
また、差分画像生成部15は、撮影画像記憶部1001に記憶されている撮影画像データを用いて、差分画像を生成しているが、画像取得部13が撮影装置30から取得した撮影画像データを用いるようにしてもよい。
【0077】
また、差分画像生成部15が生成した差分画像データは差分画像記憶部1006に記憶しているが、差分画像生成部15が生成した差分画像を差分画像記憶部1006に記憶せず、送受信部11が他の画像処理装置に送信してもよい。
【0078】
また、本実施形態の各機能部は通信ネットワーク50に接続されているサーバ等の情報処理装置が有しているとしてもよい。
【符号の説明】
【0079】
10 画像処理装置
11 送受信部
12 操作入力受付部
13 画像取得部
14 画像変化判定部
14a 輝度取得部
14b 差分判定部
14c 輝度変化画素数判定部
15 差分画像生成部
15a 輝度補正部
15b 輝度平均値算出部
15c 輝度平均値差分算出部
15d 輝度判定・決定部
17 時間計測部
18a 表示制御部
18b 音声出力制御部
19 記憶・読出処理部
1000 記憶部
1001 撮影画像記憶部
1002 受信画像記憶部
1004 画像変化フラグ記憶部
1005 表示画像記憶部
1006 差分画像記憶部
20 描画対象物
200 描画画像
201 描画領域
202 周辺領域
30 撮影装置
40 プロジェクタ
【先行技術文献】
【特許文献】
【0080】
【特許文献1】特開2004−080750公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一の画像撮影装置、第一の画像投影装置、および第一の画像処理装置を含む第一の画像処理システムと
第二の画像処理装置および第二の画像投影装置を含む第二の画像処理システムと、
を有する画像処理システムであって、
前記第一の画像処理装置は、
前記第二の画像処理装置から画像データを受信する画像データ受信手段と、
前記画像データ受信手段によって受信された受信画像データを記憶する受信画像データ記憶手段と、
前記受信画像データ記憶手段に記憶されている受信画像データを前記第一の画像投影装置に供給する受信画像データ供給手段と、
前記画像撮影装置により撮影された撮影画像を取得する撮影画像取得手段と、
前記撮影画像取得手段によって取得された撮影画像と、前記受信画像データ供給手段が前記第一の画像投影装置に供給する受信画像データが表す受信画像に基づいて、差分画像を生成する差分画像生成手段と、
前記撮影画像取得手段によって取得された前記撮影画像の画素の輝度の変化があったか否かを判定する画像変化判定手段と、
前記画像変化判定手段によって判定された前記輝度の変化に基づいて、前記第二の画像処理装置に前記差分画像生成手段によって生成された前記差分画像を表す差分画像データを送信制御する送信制御手段と、
前記送信制御手段による送信制御に基づいて前記差分画像データを前記第二の画像処理装置に送信する差分画像データ送信手段と、を備え、
前記第二の画像処理装置は、
前記差分画像データを前記第一の画像処理装置から受信する差分画像データ受信手段と、
前記差分画像データ受信手段によって受信した前記差分画像データが表す差分画像を前記第二の画像投影装置に投影させる投影制御手段と、
を備えることを特徴とする画像処理システム。
【請求項2】
請求項1に記載の画像処理システムであって、
前記送信制御手段は、
前記画像変化判定手段によって、前記輝度の変化があったと判定された場合に、前記画像送信手段が前記差分画像データを送信するように制御し、
前記画像変化判定手段によって、前記輝度の変化がなかったと判定された場合に、前記画像送信手段が前記差分画像データを送信しないように制御すること、
を特徴とする画像処理システム。

【請求項3】
請求項1または2に記載の画像処理システムであって、
前記画像変化判定手段は、前記第一の撮影装置により撮影された撮影画像の周辺領域の画素の輝度の変化を判定することを特徴とする画像処理システム。

【請求項4】
請求項1乃至3のいずれかに記載の画像処理システムであって、
前記画像変化判定手段は、前記撮影画像の輝度の変化が所定の範囲である画素の数が所定の閾値より大きいか否かを判定すること
を特徴とする画像処理システム。
【請求項5】
請求項3または4に記載の画像処理システムであって、
前記輝度の変化は、前記撮影画像の各画素の輝度と、前記撮影画像が撮影されるより前に撮影された第一の撮影画像の前記各画素に対応する画素の輝度との差であることを特徴とする画像処理システム。

【請求項6】
請求項1乃至5のいずれかに記載の画像処理システムであって、
前記差分画像生成手段は、
前記撮影画像の各画素の輝度と前記受信画像の前記各画素に対応する画素の輝度に基づいて画像を生成することを特徴とする画像処理システム。

【請求項7】
描画対象物を撮影する第一の画像撮影装置と、
第一の画像撮影装置によって撮影された撮影画像および第二の画像処理装置から受信した受信画像データが表す受信画像を処理する第一の画像処理装置と、
第一の画像処理装置から受信した受信画像データが表す受信画像を処理する第二の画像処理装置と、
を有する画像処理システムにおいて、
前記第一の画像処理装置は、
前記第二の画像処理装置から受信画像データを受信する画像データ受信手段と、
前記画像データ受信手段によって受信された受信画像データが表す受信画像と、前記画像撮影装置によって撮影された撮影画像に基づいて、差分画像を生成する差分画像生成手段と、
前記画像撮影装置によって撮影された撮影画像の画素の輝度の変化があったか否か判定する画像変化判定手段と、
前記画像変化判定手段によって判定された前記輝度の変化に基づいて、前記第二の画像処理装置に前記差分画像を表す差分画像データを送信する差分画像データ送信制御する送信制御手段と、
前記送信制御手段による送信制御に基づいて前記差分画像データを前記第二の画像処理装置に送信する差分画像データ送信手段と、を備え、
前記第二の画像処理装置は、
前記差分画像データを前記第一の画像処理装置から受信する差分画像データ受信手段と、
前記差分画像データ受信手段によって受信された差分画像データが表す差分画像を前記画像投影装置に投影させる投影制御手段と、
を備えることを特徴とする画像処理システム。

【請求項8】
画像撮影装置によって撮影された撮影画像と他の画像処理装置から受信した受信画像データが表す受信画像を処理する画像処理装置であって、
他の画像処理装置から画像データを受信する画像データ受信手段と、
前記画像データ受信手段によって受信された受信画像データを記憶する受信画像データ記憶手段と、
前記受信画像データ記憶手段に記憶されている受信画像データを画像投影装置に供給する受信画像データ供給手段と、
前記画像撮影装置により撮影された撮影画像を取得する撮影画像取得手段と、
前記撮影画像取得手段によって取得された撮影画像と、前記画像供給手段が前記画像投影装置に供給する受信画像データが表す受信画像の画素の輝度に基づいて、差分画像を生成する差分画像生成手段と、
前記撮影画像取得手段により取得された撮影画像の画素の輝度の変化に基づいて画像の変化があったか否かを判定する画像変化判定手段と、
前記画像変化判定手段によって判定された前記輝度の変化に基づいて、前記他の画像処理装置に、前記差分画像生成手段で生成された前記差分画像を表す差分画像データを送信制御する送信制御手段と、
前記送信制御手段による送信制御に基づいて前記差分画像データを前記他の画像処理装置に送信する画像送信手段と、
を備えることを特徴とする画像処理装置。
【請求項9】
画像撮影装置によって撮影された撮影画像と他の画像処理装置から受信した受信画像データが表す受信画像を処理する画像処理装置であって、
前記他の画像処理装置から受信画像データを受信する画像データ受信手段と、
前記画像データ受信手段によって受信された受信画像データが表す受信画像と、前記画像撮影装置によって撮影された撮影画像に基づいて、差分画像を生成する差分画像生成手段と、
前記画像撮影装置によって撮影された撮影画像の画素の輝度の変化があったか否かを判定する画像変化判定手段と、
前記画像変化判定手段によって判定された前記輝度の変化に基づいて、前記差分画像生成手段によって生成された前記差分画像を表す差分画像データを送信制御する送信制御手段と、
前記送信制御手段による送信制御に基づいて前記差分画像データを前記他の画像処理装置に送信する差分画像データ送信手段と、
を有することを特徴とする画像処理装置。
【請求項10】
他の画像処理装置から画像データを受信する画像データ受信工程と、
前記画像データ受信工程によって受信された受信画像データを記憶する受信画像データ記憶工程と、
前記受信画像データ記憶工程で記憶した受信画像データを画像投影装置に供給する受信画像データ供給工程と、
前記画像撮影装置により撮影された撮影画像を取得する撮影画像取得工程と、
前記撮影画像取得工程によって取得された撮影画像と、前記画像供給工程が前記画像投影装置に供給する受信画像データが表す受信画像に基づいて、差分画像を生成する差分画像生成工程と、
前記撮影画像取得工程により取得された撮影画像データが表す撮影画像の画素の輝度の変化に基づいて画像の変化があったか否かを画像変化判定工程と、
前記画像変化判定工程によって判定された前記画素の輝度の変化に基づいて、前記他の画像処理装置に、前記差分画像を表す差分画像データを送信制御する送信制御工程と、
前記送信制御工程による送信制御に基づいて前記差分画像データを他の画像処理装置に送信する画像送信工程と、
を画像処理装置に実行させることを特徴とする画像処理プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−120160(P2012−120160A)
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−246872(P2011−246872)
【出願日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】