説明

画像処理システムおよび画像処理装置

【課題】機能の実行が許可されているか否かを,ユーザが簡単に把握できる画像処理システムおよび画像処理装置を提供すること。
【解決手段】MFP100は,画像データに対して,印刷,FAX送信,電子メール送信の各機能を実行可能であり,さらに各機能の利用を制限する機能を有する。そして,MFP100は,画像データごとに,各機能の実行を許可するか否かを判断する。許可の判断は,例えば,画像データの属性(拡張子,機密情報のフラグ,データ量等)に応じて行う。実行許可の判断後は,その結果を通知する。通知は,例えば,操作パネル40の表示部41に表示してもよいし,画像形成部10によって用紙に印刷してもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,プリント,スキャン,コピー,FAX送受信等,複数の機能を有する画像処理システムおよび画像処理装置に関する。さらに詳細には,各機能の利用を制限することが可能な画像処理システムおよび画像処理装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から,プリント,スキャン,コピー,FAX送受信等,複数の機能を有する画像処理装置が実用化されている。このような画像処理装置では,画像データごとに,ユーザ情報やファイル属性に応じて,利用可能な機能を制限する技術が提案されている。例えば,特許文献1には,電磁波信号によってユーザ情報を読み取り,機能利用制限情報に従ってそのユーザの利用可能機能を制限する複合機が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−144488号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら,前記した従来の複合機には,次のような問題があった。すなわち,特許文献1に開示された複合機では,ユーザが機能の実行を指示しようとする際に,個々の画像データについて,どのような機能の実行が許可されているのかを把握できない。そのため,ユーザに不便を強いる。
【0005】
本発明は,前記した従来の技術が有する問題点を解決するためになされたものである。すなわちその課題とするところは,機能の実行が許可されているか否かを,ユーザが簡単に把握できる画像処理システムおよび画像処理装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この課題の解決を目的としてなされた画像処理システムは,画像データに対して,複数の機能のうちの,実行を許可する機能であるか否かを判断する判断手段と,判断手段によって判断された画像データに対する許可された機能と許可されない機能とを識別可能に通知する通知手段とを備えることを特徴としている。
【0007】
本発明の画像処理システムは,画像データに対して複数の機能を実行可能であり,さらに各機能の利用を制限する機能を有する。画像データに対して行う「機能」としては,例えば,プリント,スキャン,コピー,FAX送信,電子メール送信がある。本発明の画像処理システムは,画像データに対して,各機能の実行を許可するか否かを判断する。許可の判断は,例えば,画像データの属性(拡張子,機密情報のフラグ,データ量等)に応じて行う。実行許可の判断後は,その結果を許可された機能と許可されない機能とを識別可能に通知する。「通知」の形態としては,例えば,画面に表示してもよいし,用紙に印刷してもよい。
【0008】
すなわち,本発明の画像処理システムでは,画像データに対する機能の実行可否の判断結果を通知する。例えば,画像データ別に,許可されている機能を許可されていない機能と区別して通知する。あるいは,機能別に,機能の実行が許可されている画像データをその機能の実行が許可されてない画像データと区別して通知する。このように機能の実行可否の判断結果を,許可された機能と許可されない機能とを識別可能に通知することから,ユーザは,どの機能が許可されているのかを把握できる。
【0009】
また,本発明の画像処理システムの通知手段は,複数の画像データの機能が許可されているか否かを一括して通知するとよい。一括して通知する形態としては,例えば,画面への一覧表示や,画像を一覧で印刷するインデックス印刷がある。これにより,複数の画像データについての許可状態を,一括して把握できる。
【0010】
また,本発明の画像処理システムの通知手段は,画像データに対して複数の機能が許可されているか否かを一括して通知するとよい。これにより,画像データごとに,各機能の許可状態を,一括して把握できる。
【0011】
また,本発明の画像処理システムの通知手段は,少なくとも1つの機能が許可されている,またはすべての機能が許可されていない画像データについて,それぞれ優劣をつけて通知するとよい。優劣をつけた通知の態様としては,例えば,非通知,グレーアウト,通知順序の並び替えがある。すなわち,実行可能性がある画像データと,実行可能性がない画像データとについて,それぞれ優劣をつけて通知することで,画像データの実行可否の把握が容易になる。
【0012】
また,本発明の画像処理システムは,実行対象となる機能を選択する機能選択手段を備え,通知手段は,機能選択手段にて選択された機能の実行が許可されている,または許可されていない画像データについて,それぞれ優劣をつけて通知するとよい。すなわち,機能ごとに,許可されている画像データと許可されていない画像データとについて,それぞれ優劣をつけて通知することで,画像データの実行可否の把握が容易になる。
【0013】
また,本発明の画像処理システムは,実行対象となる画像データを選択する画像選択手段を備え,通知手段は,画像選択手段にて選択された画像データに対して実行が許可されていない機能については優劣をつけて通知とするとよい。すなわち,画像データごとに,許可されている機能と許可されていない機能とについて,それぞれ優劣をつけて通知することで,許可される機能の把握が容易になる。
【0014】
また,本発明の画像処理システムが有する複数の機能には,画像データを印刷する印刷機能を含み,通知手段は,画像データと当該画像データに対して各機能の実行が許可されているか否かの情報とを関連付けて印刷し,印刷機能が許可されていない画像データに対しては当該画像データを印刷しないとよい。すなわち,画像データに対して各機能の実行が許可されているか否かの判断結果を印刷することで,用紙を介してその判断結果を容易に把握できる。さらには,印刷機能が許可されていない画像データの画像自体については印刷しないことで,その画像データの内容を秘密にしたままで適切に許可状態を通知できる。
【0015】
また,本発明の画像処理システムは,データの属性に応じて各機能の許可を設定する設定手段を備え,判断手段は,設定手段の設定に応じて判断するとよい。これにより,ユーザによる自由な設定に応じて,画像データと,機能の実行が許可されているか否かとを関連させて設定することが可能になる。そのため,機能の制限に,より大きな自由度を与えることができる。
【0016】
また,本発明の画像処理システムが有する複数の機能には,画像データを印刷する印刷機能を含み,判断手段は,印刷機能による画像データの印刷枚数に応じて印刷機能の実行が許可されているか否かを判断するとよい。これにより,印刷枚数を管理することができる。
【0017】
また,本発明の画像処理システムは,実行対象となる画像データが外部記憶媒体に記憶されており,通知手段は,外部記憶媒体が接続されたことを契機に通知を実行するとよい。すなわち,外部記憶媒体(例えば,USBメモリ)が接続されたタイミングで通知を実行することで,ユーザは各機能の実行指示前に機能の許可ないし不許可を把握できる。よって,ユーザの混乱の低減が期待できる。
【0018】
また,本発明は,画像データに対する複数の機能が実行可能な画像処理装置であって,画像データに対して,前記複数の機能のうちの,実行を許可する機能であるか否かを判断する判断手段と,判断手段によって判断された画像データに対する許可された機能と許可されない機能とを識別可能に通知する通知手段とを備えることを特徴とする画像処理装置を含んでいる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば,機能の実行が許可されているか否かを,ユーザが簡単に把握できる画像処理システムおよび画像処理装置が実現される。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】実施の形態にかかる複合機の概略構成を示す斜視図である。
【図2】実施の形態にかかる複合機の電気的構成を示すブロック図である。
【図3】許可テーブルの構成および設定例を示す図である。
【図4】ファイルタイプ毎の許可設定を行う設定画面の一例を示す図である。
【図5】通知処理の手順を示すフローチャートである。
【図6】USBメモリのファイル記憶構成の一例を示す図である。
【図7】画像ファイルの一覧表示の例を示す図である。
【図8】表示切替処理の手順を示すフローチャートである。
【図9】表示切替処理の画面遷移の一例を示す図である。
【図10】機能の一覧表示の例を示す図である。
【図11】ファイル一覧印刷処理の出力例を示す図である。
【図12】複合機を含むネットワーク構成の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下,本発明にかかる画像処理装置を具体化した実施の形態について,添付図面を参照しつつ詳細に説明する。本形態は,画像データに対する複数の機能を有する複合機(MFP:Multi Function Peripheral )に本発明を適用したものである。
【0022】
[MFPの全体構成]
実施の形態のMFP100は,図1に示すように,用紙に画像を印刷する画像形成部10(通知手段の一例)と,原稿の画像を読み取る画像読取部20とを備えている。また,画像読取部20の前面側には,液晶ディスプレイからなる表示部41(通知手段の一例)と,OKキー,キャンセルキー,テンキー等から構成されるボタン群42とを備えた操作パネル40が設けられ,この操作パネル40により動作状況の表示やユーザによる入力操作が可能になっている。
【0023】
また,画像読取部20の前面側には,USBインターフェース37が設けられている。MFP100は,USBインターフェース37を介して,USB(Universal Serial Bus)規格に準拠する周辺機器の着脱が可能になっている。例えば,USBインターフェース37に,情報記憶媒体であるUSBメモリが装着された場合,MFP100はそのUSBメモリに記憶されているファイルにアクセス可能になる。
【0024】
また,MFP100は,画像ファイルに対して実行可能な機能として,印刷機能(特に,USBメモリ内の画像ファイルの画像を印刷する機能を「ダイレクト印刷機能」とする),FAX送信機能,電子メール送信機能を有している。各機能は,操作パネル40を操作することによって実行が指示される。
【0025】
具体的に,本形態の操作パネル40のボタン群42には,FAXキー,ダイレクトキー,およびEメールキーが含まれる。FAXキーは,画像ファイルの画像のFAX送信を実行するためのボタンである。ダイレクトキーは,画像ファイルの画像の印刷を実行するためのボタンである。Eメールキーは,画像ファイルの電子メール送信を実行するためのボタンである。例えば,FAXキーが押下されると,表示部41をFAX送信可能な画像ファイルの一覧画面に切り替える。そして,その一覧画面で画像ファイルが選択され,OKキーが押下されることで,選択された画像ファイルのFAX送信を実行する。ダイレクトキーおよびEメールキーについても,同様の手順で印刷ないし電子メール送信を実行する。実行画面の表示の詳細については後述する。
【0026】
[MFPの電気的構成]
続いて,MFP100の電気的構成について説明する。MFP100は,図2に示すように,CPU31と,ROM32と,RAM33と,NVRAM34と,ASIC35と,ネットワークインタフェース36と,USBインタフェース37と,FAXインタフェース38とを備えた制御部30を有している。
【0027】
CPU31は,MFP100における画像読取機能,画像形成機能等の各種機能を実現するための演算を実行し,制御の中枢となるものである。ROM32には,MFP100を制御するための各種制御プログラムや各種設定,初期値等が記憶されている。RAM33は,各種制御プログラムが読み出される作業領域として,あるいは画像データを一時的に記憶する記憶領域として利用される。NVRAM(Non Volatile RAM)34は,不揮発性を有する記憶手段であって,各種設定ないし画像データ等を保存する記憶領域として利用される。
【0028】
CPU31は,ROM32から読出した制御プログラムや各種センサから送られる信号に従って,その処理結果をRAM33またはNVRAM34に記憶させながら,MFP100の各構成要素(例えば,画像形成部10を構成する露光装置の点灯タイミング,用紙の搬送路を構成する各種ローラの駆動モータ(不図示),画像読取部20を構成するイメージセンサユニットの移動用モータ(不図示))を,ASIC35を介して制御する。
【0029】
ネットワークインターフェース36は,インターネット等のネットワークに接続され,PC等の情報処理装置との接続を可能にしている。USBインターフェース37は,USBメモリ等の周辺機器との接続を可能にしている。FAXインターフェース38は,電話回線に接続され,相手先のFAX装置との接続を可能にしている。そして,ネットワークインターフェース36,USBインターフェース37,あるいはFAXインターフェース38を介してデータのやりとりを行うことができる。
【0030】
[制限機能]
続いて,MFP100における制限機能について説明する。MFP100は,画像ファイルの属性およびユーザ情報を基に,画像ファイルごとに各機能の実行を制限する機能を有している。なお,MFP100は複数の機能を有しているが,以下の説明では,説明を簡略化するため,ダイレクト印刷機能,FAX送信機能,電子メール送信機能の3つの機能に限定して説明する。
【0031】
具体的にMFP100は,この制限機能を実現するにあたって,図3に示すような許可テーブル341を備えている。この許可テーブル341は,ユーザ情報とファイル拡張子との組み合わせ毎に,実行を許可する機能を記憶している。例えば,図3に示したような設定がなされている場合,ユーザAとファイル拡張子「TIF」との組み合わせにおいては,「Email」と記憶されている。そのため,この組み合わせにおいては,電子メール送信機能の実行が許可され,その他の機能の実行は制限される。なお,許可テーブル341中,「ダイレクト」は,ダイレクト印刷機能を許可することを意味し,「FAX」は,FAX送信機能を許可することを意味し,「ALL」は,ダイレクト印刷,FAX送信,電子メール送信のすべての機能を許可することを意味し,「(無)」は,許可する機能がないことを意味する。
【0032】
また,許可テーブル341では,ユーザごとに印刷許可枚数が設定されている。さらに,現時点での印刷枚数(現印刷済枚数)を記憶しており,印刷を実行する度に自動的に更新される。例えば,図3に示した許可テーブル341の場合,ユーザAにおいては,印刷可能枚数が100,現印刷済枚数が30と記憶されている。そのため,ユーザAは,残り70枚の印刷が可能であり,それ以上の印刷の実行は制限される。
【0033】
また,MFP100は,許可テーブル341の設定内容を変更する機能を有している。すなわち,表示部41に,図4に示すような,ファイルタイプごとに,実行を許可する機能を選択する許可設定画面(設定手段の一例)を表示し,各機能に対応するチェックボックスをオンオフすることで,許可テーブル341の設定内容の変更が可能になる。また,印刷可能枚数の設定変更が可能な画面も用意されている。これにより,ユーザによる自由な設定に応じて,機能の許可を設定できる。
【0034】
[通知処理]
続いて,MFP100における通知処理(判断手段,通知手段の一例)について説明する。通知処理では,利用可能な機能の通知あるいは実行可能な画像ファイルの通知を,表示部41への表示あるいは用紙への印刷によって行う。以下,通知処理の手順を,図5のフローチャートを参照しつつ説明する。なお,本処理は,定期的に実行される。
【0035】
まず,USBメモリがUSBインターフェース37に装着されたか否かを判断する(S101)。このS101の判断は,USBメモリが未装着状態から装着状態になったことを検知するものであり,装着時に1回だけYESと判断され,装着状態を維持している間はNOと判断される。USBメモリが装着されたと判断しなかった場合には(S101:NO),本通知処理を終了する。
【0036】
USBメモリが装着されたと判断した場合には(S101:YES),ユーザを識別する(S102)。ユーザの識別は,例えば,ユーザがMFP100にログインしている場合には,そのログインの際のユーザ情報を基に識別することができる。また,表示部41にユーザ情報の入力を促す画面を表示し,ユーザによって入力された情報を基に識別してもよい。また,IDカードなどによりユーザからの入力操作無しでユーザ認証が可能であれば,その認証情報を基に識別してもよい。
【0037】
次に,USBメモリに記憶されている画像ファイル個々に,実行を許可する機能を判断する(S103)。すなわち,許可テーブル341を参照し,画像ファイルごとに,どの機能が許可されているのかを判断する。さらに,画像ファイルの属性情報からページ数を取得し,現印刷済枚数と照らし合わせて印刷可能であるか否かを判断する。判断結果は,NVRAM34に記憶する。
【0038】
次に,USBメモリに記憶されている画像ファイルの一覧を,表示部41に表示する(S104)。なお,USBメモリ内にフォルダが形成され,画像ファイルが階層管理されている場合には,画像ファイルとともにフォルダも表示する。
【0039】
また,S104の際には,USBメモリに記憶されている画像ファイルのうち,実行が許可される機能が1つもない画像ファイルについては,非表示とする。例えば,USBメモリ71内に,図6に示すようなフォルダ構成で複数の画像ファイルが記憶されているものとし,ユーザBがこのUSBメモリ71をMFP100に装着したものとする。図3に示した許可テーブル341を参照すると,ユーザBについては,拡張子が「PDF」のファイルのダイレクト印刷およびFAX送信が許可され,拡張子が「DOC」のファイルのダイレクト印刷および電子メール送信が許可される。一方,拡張子が「TIF」のファイルについては,どの機能も許可されていない。そのため,S104では,図7に示すように,USBメモリ71に記憶されている画像ファイルのうち,拡張子が「TIF」である「ファイル01.tif」については表示しない。なお,以下の表示部41の表示に関しても,ユーザBについての表示を例として説明する。
【0040】
画像ファイルの一覧表示後は,キャンセルキーが押下されたか否かを判断する(S105)。キャンセルキーが押下されていない場合には(S105:NO),表示部41の表示切替処理を行う(S106)。S106の表示切替処理では,ボタン群42の各ボタンの押下を検知し,各ボタンの押下に対応して表示部41の表示を切り替える。
【0041】
ここで,表示切替処理(機能選択手段,画像選択手段の一例)について,図8のフローチャートおよび図9の画面遷移図を参照しつつ説明する。なお,図9中の(A)から(H)は,表示部41の画面の表示状態を示している。画面中の「*」マークは,現在選択中のファイル,フォルダ,機能のいずれかを意味する。「*」マークは,ボタン群42中の上矢印キーあるいは下矢印キーを押下することによって,図9(A)ないし(B)に示すように画面中の上下に移動し,選択対象を切り替える。
【0042】
表示切替処理では,まず,フォルダが選択されたか否かを判断する(S151)。フォルダの選択は,図9(A)に示したように,フォルダが選択されている状態でOKキーが押下されたか否かによって判断する。フォルダが選択された場合には(S151:YES),図9(C)に示すように,選択されたフォルダ内の画像ファイルおよびフォルダを一覧表示する(S161)。
【0043】
一方,フォルダが選択されなかった場合には(S151:NO),画像ファイルが選択されたか否かを判断する(S152)。画像ファイルの選択は,図9(B)ないし(C)に示したように,画像ファイルが選択されている状態でOKキーが押下されたか否かによって判断する。画像ファイルが選択された場合には(S152:YES),図9(D)ないし(E)に示すように,選択された画像ファイルにおいて許可されている機能を一覧表示する(S162)。このように機能を一覧表示することで,画像ファイルごとに,許可されている機能を一括して把握できる。この状態でOKキーの押下を検知すると,「*」マークによって選択されている機能を実行する。
【0044】
なお,ダイレクト印刷機能が許可されている画像ファイルについては,ページ数も併せて表示する。さらに,そのページ数が,ユーザごとに設定されている印刷可能枚数および現印刷済枚数から得られる印刷可能残数を超える場合には,ダイレクト印刷の実行は,機能としては許可されるが実行枚数制限によって不可となる。そのため,図10に示すように印刷不可であることを表示する。すなわち,不許可の機能として実行できない場合は非表示とし,実行枚数制限によって実行できない場合は「印刷不可」と表示する。つまり,実行できない原因を区別して表示を切り替える。これにより,制限される原因を推測できる。
【0045】
また,画像ファイルの機能を表示している状態で,ボタン群42中の右矢印キーあるいは左矢印キーの押下を検知すると,図9(E)ないし(F)に示すように,同階層に記憶されている他の画像ファイルの情報に切り替える。
【0046】
一方,画像ファイルが選択されなかった場合には(S152:NO),ダイレクトキーが押下されたか否かを判断する(S153)。ダイレクトキーが押下された場合には(S153:YES),図9(G)に示すように,ダイレクト印刷機能の実行が許可され,かつ,ページ数が印刷可能残数内の画像ファイルを抽出し,一覧表示する(S163)。この状態でOKキーの押下を検知すると,「*」マークによって選択されている画像ファイルの画像についてダイレクト印刷の印刷枚数の設定など各種設定がなされた後にダイレクト印刷を実行する。
【0047】
一方,ダイレクトキーが押下されなかった場合には(S153:NO),FAXキーが押下されたか否かを判断する(S154)。FAXキーが押下されたか否かを判断する(S154)。FAXキーが押下された場合には(S154:YES),図9(H)に示すように,FAX送信機能の実行が許可されている画像ファイルを抽出し,一覧表示する(S164)。この状態でOKキーの押下を検知すると,「*」マークによって選択されている画像ファイルの画像についてFAX送信の宛先設定など各種設定がなされた後にFAX送信を実行する。
【0048】
一方,FAXキーが押下されなかった場合(S154:NO),Eメールキーが押下されたか否かを判断する(S155)。Eメールキーが押下された場合には(S155:YES),ダイレクトキーやFAXキーと同様に,電子メール送信機能の実行が許可されている画像ファイルを抽出し,一覧表示する(S165)。この状態でOKキーの押下を検知すると,選択されている画像ファイルについて電子メール送信の宛先アドレスの設定など各種設定がなされた後に電子メール送信を実行する。
【0049】
一方,Eメールキーが押下されなかった場合(S155:NO),あるいはS161,S162,S163,S164,S165のいずれかで表示内容を切り換えた後は,表示切替処理を終了する。なお,S161,S162,S163,S164,S165のいずれかで表示内容を切り換えた後にバックキーの押下を検知した場合には,切り替える前の表示内容に戻る。
【0050】
図5の通知処理の説明に戻り,S106の表示切替処理後は,一覧印刷の指示があったか否かを判断する(S107)。一覧印刷の指示は,画像ファイルの一覧画面(例えば,図9(A),(F),(G),(H))に表示されている「一覧印刷」を選択した状態で,OKキーが押下されたか否かによって判断する。一覧印刷が指示された場合には(S107:YES),画像ファイルの一覧印刷を実行する(S108)。
【0051】
S108の一覧印刷は,図11に示すように,用紙81に,USBメモリに記憶されている画像ファイルについての情報を一覧で印刷する印刷態様(所謂,インデックス印刷)である。本形態では,画像ファイルの情報として,画像ファイル名,ページ数,許可されている機能,およびサムネイル画像を印刷する。これにより,ユーザは,USBメモリに記憶されているすべての画像ファイルについて,実行可能な機能を一括して把握することができる。
【0052】
なお,S108の一覧印刷では,ダイレクト印刷機能が許可されていない画像ファイル(例えば,図11中の「ファイル01.tif」)については,その画像ファイルのサムネイル画像を印刷せず,画像の印刷が許可されていない旨の代替画像を印刷する。すなわち,印刷機能が許可されていない画像ファイルの画像自体については印刷しない。これにより,その画像の秘密状態を維持できる。
【0053】
また,印刷枚数の制限によって印刷不可となっている場合には,印刷不可であることに加え,不足するページ数をあわせて表示してもよい。また,すべての機能が実行不可の画像ファイルについては,一覧印刷する画像ファイルに含めないようにしてもよい。
【0054】
一覧印刷が指示されていない場合(S107:NO),あるいはS108による一覧印刷の実行後は,S105に戻り,キャンセルキーが押下されるまでS105以下の処理を繰り返す。一方,キャンセルキーが押下された場合には(S105:YES),表示部41を初期状態に戻し,本処理を終了する。
【0055】
以上詳細に説明したように本形態のMFP100は,画像ファイル(画像データ)ごとに,ダイレクト印刷,FAX送信,電子メール送信の,各機能の実行を許可するか否かを判断している。そして,実行許可の判断後は,その結果を,表示部41への表示あるいは用紙81への印刷によって通知している。このことから,ユーザは,画像ファイル別に,どの機能が許可されているのかを容易に把握できる。
【0056】
なお,本実施の形態は単なる例示にすぎず,本発明を何ら限定するものではない。したがって本発明は当然に,その要旨を逸脱しない範囲内で種々の改良,変形が可能である。例えば,複合機(MFP)に限らず,コピー機,プリンタ,スキャナ,FAX装置等であっても,画像データに対する複数の機能を備えるものであれば適用可能である。
【0057】
また,実施の形態では,USBメモリに記憶されている画像ファイルの機能を表示しているが,これに限るものではない。例えば,図12に示すように,MFP100がネットワーク61を介してPC110やサーバ120と接続する場合には,PC110やサーバ120に記憶されている画像ファイルを通知の対象としてもよい。
【0058】
また,実施の形態では,画像ファイルの機能一覧をMFP100の表示部41に表示しているが,これに限るものではない。例えば,図12に示したネットワーク構成において,MFP100で実施可能な画像ファイルごとの機能一覧を,PC110のディスプレイに表示してもよい。また,例えば,MFP100でサポートする機能および許可条件をサーバ120で記憶し,PC110に記憶されている画像ファイルとサーバ120のディスプレイとで,本発明の画像処理システムを構築してもよい。
【0059】
また,実施の形態では,実行を許可する機能を記憶する許可テーブル341を用意しているが,実行を制限する機能を記憶する制限テーブルを用意してもよい。すなわち,本発明では,画像データごとに,その画像データを処理対象とする各機能がそれぞれ実行可能か否かを判断できるものであればよい。
【0060】
また,実施の形態では,ファイルの拡張子やページ数などの画像ファイルの属性や,ユーザによって許可する機能を決定しているが,決定条件はこれに限るものではない。例えば,使用する時間帯や,ファイルの機密度,装置が元々有している制限を考慮して実行可否を決定してもよい。
【0061】
また,実施の形態では,画像ファイルあるいは機能が実行不可であることを通知する態様として,該当画像ファイル等の非表示や,実行不可であることを通知する文字列「不可」の追記を行っているが,これらに限るものではない。例えば,該当画像ファイル等のグレーアウト表示,反転表示,取り消し線の付加,表示順序を並び替えが適用可能である。なお,非表示ではなく,あくまでも表示態様を変えることで,実行不可を通知する場合には,実行不可の機能の存在を通知することができる。一方,実行不可の画像ファイルないし機能を非表示にすると,通知される画像ファイルないし機能数が少なくなり,実行可能な画像ファイルないし機能の把握がより容易になる。
【符号の説明】
【0062】
10 画像形成部
20 画像読取部
30 制御部
341 許可テーブル
37 USBインターフェース
40 操作パネル
41 表示部
42 ボタン群
100 MFP

【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像データに対する複数の機能が実行可能な画像処理システムにおいて,
画像データに対して,前記複数の機能のうちの,実行を許可する機能であるか否かを判断する判断手段と,
前記判断手段によって判断された画像データに対する許可された機能と許可されない機能とを識別可能に通知する通知手段と,
を備えることを特徴とする画像処理システム。
【請求項2】
請求項1に記載する画像処理システムにおいて,
前記通知手段は,複数の画像データの機能が許可されているか否かを一括して通知することを特徴とする画像処理システム。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載する画像処理システムにおいて,
前記通知手段は,画像データに対して複数の機能が許可されているか否かを一括して通知することを特徴とする画像処理システム。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか1つに記載する画像処理システムにおいて,
前記通知手段は,少なくとも1つの機能が許可されている,またはすべての機能が許可されていない画像データについて,それぞれ優劣をつけて通知することを特徴とする画像処理システム。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか1つに記載する画像処理システムにおいて,
実行対象となる機能を選択する機能選択手段を備え,
前記通知手段は,前記機能選択手段にて選択された機能の実行が許可されている,または許可されていない画像データについて,それぞれ優劣をつけて通知することを特徴とする画像処理システム。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれか1つに記載する画像処理システムにおいて,
実行対象となる画像データを選択する画像選択手段を備え,
前記通知手段は,前記画像選択手段にて選択された画像データに対して実行が許可されていない機能については優劣をつけて通知とすることを特徴とする画像処理システム。
【請求項7】
請求項1から請求項6のいずれか1つに記載する画像処理システムにおいて,
前記複数の機能には,画像データを印刷する印刷機能を含み,
前記通知手段は,画像データと当該画像データに対して各機能の実行が許可されているか否かの情報とを関連付けて印刷し,印刷機能が許可されていない画像データに対しては当該画像データを印刷しないことを特徴とする画像処理システム。
【請求項8】
請求項1から請求項7のいずれか1つに記載する画像処理システムにおいて,
画像データの属性に応じて各機能の許可を設定する設定手段を備え,
前記判断手段は,前記設定手段の設定に応じて判断することを特徴とする画像処理システム。
【請求項9】
請求項1から請求項8のいずれか1つに記載する画像処理システムにおいて,
前記複数の機能には,画像データを印刷する印刷機能を含み,
前記判断手段は,印刷機能による画像データの印刷枚数に応じて印刷機能の実行が許可されているか否かを判断することを特徴とする画像処理システム。
【請求項10】
請求項1から請求項9のいずれか1つに記載する画像処理システムにおいて,
実行対象となる画像データは外部記憶媒体に記憶されており,
前記通知手段は,前記外部記憶媒体が接続されたことを契機に通知を実行することを特徴とする画像処理システム。
【請求項11】
画像データに対する複数の機能が実行可能な画像処理装置において,
画像データに対して,前記複数の機能のうちの,実行を許可する機能であるか否かを判断する判断手段と,
前記判断手段によって判断された画像データに対する許可された機能と許可されない機能とを識別可能に通知する通知手段と,
を備えることを特徴とする画像処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2010−226159(P2010−226159A)
【公開日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−67819(P2009−67819)
【出願日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】