説明

画像処理プログラム、及び画像処理装置

【課題】被写体の動きに応じた好適なトリミング画像を生成する画像処理プログラムを提供することにある。
【解決手段】画像処理プログラムは、画像処理装置としてのコンピュータに、時系列で撮像された複数の画像それぞれから、所定の被写体画像を含む任意の画像領域をトリミングして、トリミング画像を生成するトリミング手順と、撮像された複数の画像のうち少なくとも2つの画像間において、任意の画像領域の位置の変化、または所定の被写体画像の位置の変化を検出する位置検出手順と、位置検出手順により検出された位置の変化に基づいて、トリミング画像内のうち所定の被写体画像の画像領域外となる背景画像領域の高周波数成分を抑圧する画像処理手順と、を実行させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像処理プログラム、及び画像処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
時系列で撮像された複数の画像に対して、主要被写体の動きに応じて、当該主要被写体が含まれるように各画像のトリミング領域を移動させてトリミング画像を生成する技術がある(特許文献1参照)。例えば、動きのある主要被写体を撮像する場合、広角で撮像することにより主要被写体が撮像領域から外れてしまうことを防止し、撮影後に複数の画像から主要被写体の動きに応じたトリミング画像を生成する技術がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−232813号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、広角で撮像された画像から主要被写体を含むよう生成されたトリミング画像と、望遠で主要被写体の動きに応じて撮像された画像とを比較すると、トリミング画像は背景の像流れ等が生じないため、主要被写体の動きが感じられなく臨場感が乏しいことがある。
【0005】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、その目的は、主要被写体の動きが感じられる臨場感のあるトリミング画像を生成する画像処理プログラム、および画像処理装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明は上述した課題を解決するためになされたもので、本発明は、画像処理装置としてのコンピュータに、時系列で撮像された複数の画像それぞれから、所定の被写体画像を含む任意の画像領域をトリミングして、トリミング画像を生成するトリミング手順と、前記複数の画像のうち少なくとも2つの画像間における前記任意の画像領域の位置の変化、または前記所定の被写体画像の位置の変化を検出する位置検出手順と、前記位置検出手順により検出された位置の変化に基づいて、前記トリミング画像内のうち前記所定の被写体画像の画像領域外である背景画像領域内の高周波数成分を抑圧する画像処理手順と、を実行させることを特徴とする画像処理プログラムである。
【0007】
また、本発明は、時系列で撮像された複数の画像それぞれから、所定の被写体画像を含む任意の画像領域をトリミングして、トリミング画像を生成するトリミング部と、前記撮像された複数の画像のうち少なくとも2つの画像間における前記任意の画像領域の位置の変化、または前記所定の被写体画像の位置の変化を検出する位置検出部と、前記位置検出部により検出された位置の変化に基づいて、前記トリミング画像内のうち前記所定の被写体画像の画像領域外である背景画像領域の高周波数成分を抑圧する画像処理部と、を備えることを特徴とする画像処理装置である。
【発明の効果】
【0008】
この発明によれば、主要被写体の動きが感じられる臨場感のあるトリミング画像を生成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の一実施形態による画像処理装置の構成を示すブロック図である。
【図2】画像処理装置における画像処理の概要の一例を示す説明図である。
【図3】高周波数成分を抑圧するフィルタの選択例を示す図である。
【図4】本実施形態における画像処理を示すフローチャートである。
【図5】画像処理装置を備えている撮像装置の構成を示す概略ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態について説明する。図1は、本発明の一実施形態による画像処理装置100の構成を示す概略ブロック図である。
図1に示す画像処理装置100は、画像入力部1、記憶装置2、処理部3、操作部4、及び表示装置5を備えている。
【0011】
画像入力部1には、画像処理装置100において画像処理をする対象となる時系列で撮像された画像(動画像)、例えばビデオカメラやデジタルスチルカメラ等の撮像装置により撮像された動画像が入力される。画像入力部1は、例えば、HDMI(High-Definition Multimedia Interface)、USB(Universal Serial Bus)、またはIEEE1394(Institute of Electrical and Electronics Engineers 1394)等の端子を備えている。そして、画像入力部1には、当該備えている端子を介して動画像が入力される。なお、時系列で撮像された画像は動画像に限られるものではなく、異なる時刻に撮像された一連の複数の静止画像であってもよい。
【0012】
記憶装置2は、メモリカード等の記憶媒体21を着脱可能なコネクタを備えている。そして、記憶装置2は、画像処理装置100において画像処理された動画像を、挿入されている記憶媒体21に記憶させる。
【0013】
なお、記憶装置2は、着脱可能な記憶媒体21とは別に、ハードディスク装置等の磁気記憶装置を備えていてもよく、動画像の書き込み及び読み出しを磁気記憶装置及び記憶媒体21に対して適宜制御する構成であってもよい。更に、記憶装置2は、ハードディスク装置や光磁気ディスク装置、フラッシュメモリ等の不揮発性のメモリや、CD−ROM等の読み出しのみが可能な記憶媒体、RAM(Random Access Memory)のような揮発性のメモリ、あるいはこれらの組み合わせにより構成されるものであってもよい。
【0014】
処理部3は、時系列で撮像された画像に対して画像処理をする。例えば、処理部3は、画像入力部1から入力された動画像に対して、所定の被写体画像を含む画像領域をトリミングして、トリミング画像を生成する。また、処理部3は、動画像を構成する複数のフレーム画像のうち2つのフレーム画像間において、トリミングした画像領域の位置の変化、または所定の被写体画像の位置の変化を検出し、検出した結果に基づいて所定の画像処理を実行する。ここで、所定の被写体画像とは、例えば、動画像におけるユーザーにより選択された主要被写体画像である。以下、所定の被写体画像を、主要被写体画像とも記述する。
【0015】
操作部4は、画像処理装置100に対してユーザーが操作入力するための各種の操作部材を備えている。例えば、操作部4には、画像処理をする対象となる動画像ファイルの選択、主要被写体画像(所定の被写体画像)の選択、及びトリミング領域の設定等がユーザーの操作により入力される。なお、操作部4は、表示装置5の表示面に備えられているタッチパネルであってもよい。また、操作部4は、キーボード、マウス等の入力デバイスであってもよい。
【0016】
表示装置5は、画像処理装置100において画像や操作画面等を表示する。例えば、表示装置5は、入力された動画像、トリミングされた動画像、画像処理後の動画像、被写体画像の選択画面、トリミング画像、またはトリミング領域の設定画面、等を表示する。
【0017】
次に、処理部3の構成について詳しく説明する。
なお、本実施形態において、トリミング画像の画像領域をトリミング領域とも記述する。また、本実施形態において、主要被写体画像の画像領域を主要被写体画像領域、及び、トリミング領域のうち主要被写体画像以外の画像領域を背景画像領域とも記述する。
【0018】
本実施形態における画像処理装置100の処理部3は、撮像された動画像から、主要被写体画像を含む画像領域をトリミングしてトリミング画像を生成する際に、主要被写体画像の位置の変化に応じて、トリミング領域のうち背景画像領域に対して高周波数成分を抑圧する処理を実行する。
【0019】
例えば、動きのある主要被写体を望遠で、その主要被写体の動きに合わせて撮像した場合、画像の背景領域には像流れが生じる。そのため、主要被写体の動きが感じられるような臨場感ある動画像が得られる。ところが、動きのある主要被写体を適切な望遠で、その動きに合わせて撮像し続けることは一般的なユーザーにとっては困難である。そこで、動きのある主要被写体の動画像を得る時には、予め主要被写体を含むよう広角で撮像しておき、撮影後に画像から主要被写体が拡大されるようにトリミングして、望遠で撮像した時と同様な画角の動画像を得る方法もある。しかし、広角で撮像された画像から得られたトリミング画像は、望遠で撮像された画像と比べて、背景領域に像流れが生じないため、主要被写体の動きが感じられるような臨場感ある動画像が得られない。
【0020】
そこで、本実施形態における画像処理装置100の処理部3は、動きのある主要被写体画像を含む画像をトリミングしてトリミング画像を生成する際に、背景画像領域の高周波数成分を抑圧する処理を実行する。
【0021】
図2は、画像処理装置100における画像処理の概要の一例を示す説明図である。図2(a)は、右から左へ向かって走行する車が広角で撮像された動画像のうち、時刻t1及び時刻t2における2つのフレーム画像を示している。図2(a)において、符号P1に示す領域は、時刻t1におけるフレーム画像に対するトリミング領域を示している。また、符号P2に示す領域は、時刻t2におけるフレーム画像に対するトリミング領域を示している。そして、図2(a)は、画像処理装置100において、車の画像が主要被写体画像として選択されている場合であり、時刻t1から時刻t2に時刻が進むのに対応して、車の画像の位置が右から左へ移動しているのに合わせてトリミング領域の位置も右から左へ移動していること示している。
【0022】
図2(b)及び図2(c)は、図2(a)の時刻t2におけるフレーム画像に対して、符号P2に示すトリミング領域から生成されたトリミング画像の一例を示している。図2(b)は、図2(a)において画像処理装置100がトリミング処理のみ実行した場合のフレーム画像を示している。一方、図2(c)は、図2(a)において画像処理装置100が車の画像の位置の変化に応じて背景画像領域に対して高周波数成分を抑圧する処理を実行した場合のフレーム画像を示している。これによれば、図2(c)に示すトリミング画像は、図2(b)に示すトリミング画像と異なり、背景画像領域に対して高周波数成分を抑圧する処理がされているため、背景画像に像流れが生じた場合と同様の効果が得られた画像となる。なお、図2(a)の時刻t1におけるフレーム画像に対するトリミング画像においても、背景画像領域に対して高周波数成分を抑圧する処理を実行した場合、時刻t2におけるフレーム画像に対するトリミング画像と同様の効果が得られた画像となる。さらに、画像処理装置100によって、動画像のそれぞれのフレーム画像から車を含むトリミング画像を生成し、トリミング画像の背景画像領域に対して高周波数成分を抑圧する処理を実行すれば、トリミング画像をフレーム画像として生成した動画像は背景画像に像流れが生じた場合と同様の効果が得られた動画像となる。
【0023】
処理部3は、被写体選択部31、トリミング部32、位置検出部33、及び画像処理部34を備えている。
被写体選択部31は、ユーザーが操作部4から操作入力することにより、動画像内において主要被写体画像(所定の被写体画像)を選択する。例えば、被写体選択部31は、動画像のうちの1フレーム画像を表示装置5に表示させ、当該フレーム画像内から主要被写体画像に選択する被写体画像をユーザーに選択させる。そして、被写体選択部31は、ユーザーにより選択された被写体画像を主要被写体画像として設定し、選択した主要被写体の画像をテンプレート画像として記憶装置2に記憶させる。なお、主要被写体画像を選択する方法は、予め主要被写体画像の候補となる被写体のテンプレート画像が記憶装置2に記憶されて登録されており、登録されているテンプレート画像の中から主要被写体画像をユーザーに選択させる方法であってもよい。また、主要被写体画像を選択する方法は、顔検出情報、レンズのAF(Auto Focus)情報、画像のコントラスト情報や色情報、及びフレーム画像間の動きベクトルの情報等に基づいて、動画像から主要被写体画像を推定して設定する方法であってもよい。
【0024】
トリミング部32は、時系列で撮像された複数の画像(例えば、動画像)のそれぞれのフレーム画像から、被写体選択部31により選択された主要被写体画像(所定の被写体画像)を含む画像領域をトリミングして、トリミング画像を生成する。例えば、トリミング部32は、ユーザーが操作部4より入力したトリミング領域の位置または大きさに基づいて、トリミング領域を設定する。そして、トリミング部32は、動画像のそれぞれのフレーム画像において、被写体選択部31により選択され記憶装置2に記憶された主要被写体画像のテンプレート画像とテンプレートマッチングをすることにより、主要被写体画像の位置を検出し、検出した位置の変化に応じて、設定されたトリミング領域の位置を変更する。これにより、トリミング部32は、主要被写体画像の位置の変化に応じて、主要被写体画像が含まれるように、トリミング領域の位置を移動する。
【0025】
なお、トリミング部32は、被写体選択部31により選択された主要被写体画像の大きさに基づいて、主要被写体を含む画像に対して予め定められた大きさの背景領域を周辺に加えた画像領域を、トリミング領域として設定してもよい。また、トリミング部32は、主要被写体が人物である場合、顔検出技術により検出された顔の大きさに基づいて、当該顔の大きさに対応して予め定められた大きさの画像領域をトリミング領域として設定してもよい。
【0026】
なお、トリミング部32は、主要被写体が人物である場合、主要被写体の特徴を示す情報に基づいて、動画像のそれぞれのフレーム画像において人物認証(個人認証)を行うことにより、主要被写体画像の位置の変化に応じてトリミング領域の位置を変更してもよい。具体的には、例えば、トリミング部32は、主要被写体の髪型、顔の輪郭、または眼鏡の有無等に基づいて、動画像のそれぞれのフレーム画像において人物認証(個人認証)を行うことにより、主要被写体画像の位置の変化に応じてトリミング領域の位置を変更してもよい。
【0027】
位置検出部33は、時系列に撮像された画像のうち2つの画像間において、トリミング画像の位置の変化、または主要被写体画像(所定の被写体画像)の位置の変化を検出する。例えば、位置検出部33は、動画像の2つのフレーム画像間において、トリミング部32により設定されたトリミング領域の位置の変化量、または、被写体選択部31により選択された主要被写体画像の位置の変化量を検出する。また、位置検出部33は、動画像の2つのフレーム画像間において、トリミング部32により設定されたトリミング領域の位置の変化方向、または、被写体選択部31により選択された主要被写体画像の位置の変化した方向を検出する。
【0028】
画像処理部34は、位置検出部33により検出された位置の変化に基づいて、トリミング画像のトリミング領域のうち、主要被写体画像(所定の被写体画像)以外の画像領域である背景画像領域の画像に対して高周波数成分を抑圧する。
【0029】
例えば、画像処理部34は、位置検出部33により検出された位置の変化量が大きくなるほど、背景画像領域の高周波数成分を抑圧する量を大きくする。一方、位置検出部33により検出された位置の変化量が小さくなるほど、背景画像領域の高周波数成分を抑圧する量を小さくする。
【0030】
また、画像処理部34は、位置検出部33により検出された位置の変化方向に基づいて、背景画像領域の画像に対して当該変化方向に対応する方向における高周波数成分を抑圧する。すなわち、画像処理部34は、検出された位置の変化方向が水平方向である場合、水平方向の高周波数成分を抑圧し、検出された位置の変化方向が垂直方向である場合、垂直方向の高周波数成分を抑圧する。また、画像処理部34は、検出された位置の変化方向が右斜め方向である場合、右斜め方向の高周波数成分を抑圧し、検出された位置の変化方向が左斜め方向である場合、左斜め方向の高周波数成分を抑圧する。
【0031】
また、画像処理部34は、トリミング部32によりトリミングされるトリミング領域のサイズが小さくなるほど、背景画像領域の高周波数成分を抑圧する量を大きくする。一方、トリミング部32によりトリミングされるトリミング領域のサイズが大きくなるほど、背景画像領域の高周波数成分を抑圧する量を小さくする。
【0032】
このように、画像処理部34は、位置検出部33により検出された位置の変化量もしくは変化方向、またはトリミング領域のサイズに基づいて、背景画像領域の高周波数成分を抑圧する。例えば、画像処理部34は、位置検出部33により検出された位置の変化量もしくは変化方向、またはトリミング領域のサイズに基づいて、高周波数成分を抑圧するフィルタを選択する。そして、選択したフィルタに基づいて画像処理することにより、背景画像領域の高周波数成分を抑圧する処理を実行する。
【0033】
図3は、高周波数成分を抑圧するフィルタの選択例を示す図である。
ここで、図3においては、高周波数成分を抑圧するフィルタとして、LPF(ローパスフィルタ)を例としている。この図を用いて、位置検出部33により検出された位置の変化量、もしくは変化方向、またはトリミング部32によりトリミングされたトリミング領域のサイズに基づいて、画像処理部34が選択するLPFの例について説明する。なお、以下の説明において、トリミング領域のサイズをトリミングサイズDとも記述する。
【0034】
図3(a)は、トリミングサイズDが小さい場合であって、トリミングサイズDが予め定められた閾値Dth以下の場合に選択されるLPFを示している。一方、図3(b)は、トリミングサイズDが大きい場合であって、トリミングサイズDが予め定められた閾値Dthより大きい場合に選択されるLPFを示している。
【0035】
さらに、図3(a)及び図3(b)においては、位置検出部33により検出された位置の変化量及び変化方向に基づいて選択されるLPFとして、それぞれの変化量及び変化方向に対応したそれぞれのLPFを示している。ここで、主要被写体の位置の変化に合わせてトリミング領域の位置が動いた場合、トリミング領域の位置の動きと主要被写体画像の位置の動きとが一致する。そのため、この図において、トリミング領域の位置の変化量、及び主要被写体画像の位置の変化量を区別せずに検出された位置の変化量Mとする。同様に、トリミング領域の位置の変化方向、及び主要被写体画像の位置の変化方向も区別せずに検出された位置の変化方向とする。
【0036】
また、図3において、画像処理部34は、検出された位置の変化量Mを、2つの予め定められた閾値Mth1,Mth2と比較して、検出された位置の変化量Mの大きさを判定する。例えば、画像処理部34は、「M≦Mth1」の場合に主要被写体画像の動きが無い、「Mth1<M≦Mth2」の場合に主要被写体画像の動きが小さい、「Mth2<M」の場合に変化動きが大きいと判定し、それぞれに対応するLPFを選択する。
【0037】
また、画像処理部34は、検出された位置の変化方向を、水平方向、垂直方向、右斜め方向、及び左斜め方向の4方向に分類している。例えば、画像処理部34は、検出された位置の変化方向の角度を、予め定められた角度の閾値と比較することで、上述の4方向に分類する。そして、画像処理部34は、検出された位置の変化方向が水平方向、垂直方向、右斜め方向、または左斜め方向である場合、それぞれの方向に対応する水平方向、垂直方向、右斜め方向、または左斜め方向のLPFを選択する。
【0038】
以下の説明において、図3(a)及び図3(b)において、LPFの選択例として符号(a1)〜(a12)及び符号(b1)〜(b12)で示すLPFを、それぞれ、LPF(a1)〜LPF(a12)及びLPF(b1)〜LPF(b12)と記述する。
【0039】
図3(a)において、画像処理部34は、検出された位置の変化方向が水平方向であって、変化量Mが「M≦Mth1」(主要被写体画像の動きが無い)である場合、LPF(a1)を選択する。LPF(a1)は、水平方向「1×3ブロック」のLPFであるが、中央ブロックの重み付けが1であってその前後の2ブロックの重み付けがそれぞれ0である。よって、LPF(a1)の各ブロックにおいて重み付けの値を積算し、積算した値を加算して算出した中央ブロックの値が算出前の値と等しくなる。そのため、LPF(a1)は、高周波数成分を抑圧する効果が無いLPFである。すなわち、検出された位置の変化量Mが「M≦Mth1」である場合とは主要被写体画像の動きが無い場合であるため、画像処理部34は、高周波数成分を抑圧する効果が無いLPFを選択する。そして、画像処理部34は、検出された位置の変化量Mが「M≦Mth1」である場合、変化方向が垂直方向、右斜め方向、及び左斜め方向においても、LPFの方向はそれぞれの方向に対応しているが、水平方向と同様に高周波数成分を抑圧する効果がないLPF(a4)、LPF(a7)、またはLPF(a10)を選択する。
【0040】
次に、図3(a)において、画像処理部34は、検出された位置の変化方向が水平方向であって、変化量Mが「Mth1<M≦Mth2」(主要被写体画像の動きが小さい)である場合、LPF(a2)を選択する。LPF(a2)は、水平方向「1×3ブロック」のLPFであって各ブロックの重み付けがそれぞれ1/3である。よって、LPF(a2)によれば、中央ブロックの値は、中央ブロック及びその前後それぞれ1ブロックの合計3ブロックをそれぞれ同じ重み付けで加算平均した値となる。また、画像処理部34は、検出された位置の変化方向が水平方向であって、変化量Mが「Mth2<M」(主要被写体画像の動きが大きい)である場合、LPF(a3)を選択する。LPF(a3)は、水平方向「1×5ブロック」のLPFであって各ブロックの重み付けがそれぞれ1/5である。よって、LPF(a3)によれば、中央ブロックの値は、中央ブロック及びその前後それぞれ2ブロックの合計5ブロックをそれぞれ同じ重み付けで加算平均した値となる。
【0041】
よって、画像処理部34は、検出された変化量Mが「Mth1<M≦Mth2」(主要被写体画像の動きが小さい)である場合、変化量Mが「M≦Mth1」(主要被写体画像の動きが無い)である場合に比較して、高周波数成分を抑圧する効果があるLPF(a2)を選択する。また、画像処理部34は、検出された位置の変化量Mが「Mth2<M」(主要被写体画像の動きが大きい)である場合、変化量Mが「「Mth1<M≦Mth2」(主要被写体画像動きが小さい)である場合に比較して、高周波数成分を抑圧する効果が大きいLPF(a3)を選択する。
このように、画像処理部34は、位置検出部33により検出された位置の変化量が大きくなるに応じて、高周波数成分を抑圧する量が大きいLPFを選択する。
【0042】
そして、画像処理部34は、検出された位置の変化量Mが「Mth1<M≦Mth2」である場合であって、検出された位置の変化方向が垂直方向、右斜め方向、または左斜め方向の場合、水平方向のLPF(a2)に対して高周波数成分を抑圧する量が同じであって、抑圧する方向のみが垂直方向、右斜め方向、または左斜め方向のそれぞれの方向に対応されたLPF(a5)、LPF(a8)、またはLPF(a11)を選択する。また、画像処理部34は、検出された変化量Mが「Mth2<M」である場合であって、検出された変化方向が垂直方向、右斜め方向、または左斜め方向の場合、水平方向のLPF(a3) に対して高周波数成分を抑圧する量が同じであって、抑圧する方向のみが垂直方向、右斜め方向、または左斜め方向のそれぞれの方向に対応されたLPF(a6)、LPF(a9)、またはLPF(a12)を選択する。
このように、画像処理部34は、位置検出部33により検出された位置の変化方向に基づいて、当該変化方向に対応する方向における高周波数成分を抑圧するLPFを選択する。
【0043】
図3(b)は、図3(a)に対してトリミングサイズDが大きい場合のLPFの選択例である。図3(b)のLPF(b1)〜LPF(b12)は、図3(a)のLPF(a1)〜LPF(a12)と対応している。変化量Mが「M≦Mth1」である場合、画像処理部34は、図3(a)と同様にLPFの効果が無いLPF(b1)、LPF(b4)、LPF(b7)、またはLPF(b10)を選択する。また、画像処理部34は、変化量Mが「Mth1<M≦Mth2」である場合、LPF(b2)、LPF(b5)、LPF(b8)、またはLPF(b11)を選択し、変化量Mが「Mth2<M」である場合、LPF(b3)、LPF(b6)、LPF(b9)、またはLPF(b12)を選択する。
【0044】
図3(b)のLPF(b2)、LPF(b5)、LPF(b8)、及びLPF(b11)は、対応する図3(a)のLPF(a2)、LPF(a5)、LPF(a8)、及びLPF(a11)と比較すると、同じ「1×3ブロック」のLPFであるが、中央ブロックの重み付けが前後のブロックの重み付けより大きいためLPFの効果が小さい。また、図3(b)のLPF(b3)、LPF(b6)、LPF(b9)、及びLPF(b12)は、対応する図3(a)のLPF(a3)、LPF(a6)、LPF(a9)、及びLPF(a12)と比較すると、同じ「1×5ブロック」のLPFであるが、中央ブロックに近いブロックの重み付けが中央ブロックに遠いブロックの重み付けより大きいためLPFの効果が小さい。つまり、図3(a)において設定されているLPF、すなわち図3(b)に対してトリミングサイズDが小さい場合において設定されているLPFは、図3(b)に設定されているLPFに比較して、高周波数成分を抑圧する量が大きくLPFの効果が大きい。
【0045】
よって、画像処理部34は、トリミングサイズDが予め定められた閾値Dth以下の場合、図3(b)に示すLPFよりも高周波数成分を抑圧する量が大きい図3(a)に示すLPFを選択する。すなわち、画像処理部34は、トリミング部32によりトリミングされるトリミングサイズDが小さくなるに応じて、背景画像領域の画像に対して高周波数成分を抑圧する量が大きいLPFを選択する。一方、画像処理部34は、トリミングサイズDが予め定められた閾値Dthより大きい場合、図3(a)に示すLPFよりも高周波数成分を抑圧する量が小さい図3(b)に示すLPFを選択する。すなわち、画像処理部34は、トリミング部32によりトリミングされるトリミングサイズDが大きくなるに応じて、背景画像領域の画像に対して高周波数成分を抑圧する量が小さいLPFを選択する。
【0046】
以下、トリミングサイズに応じて、高周波成分を抑圧する量を変更する理由について説明する。表示装置に画像を表示する際、表示装置の表示画素数は一定であるため、トリミングサイズが小さい場合、トリミングサイズが大きい場合よりも大きな拡大倍率で拡大する必要がある。つまり、広角で撮影されたうえで、トリミング領域内の被写体が同一速度で移動したときであっても、トリミングサイズが小さい場合、表示画面上ではトリミングサイズが大きい場合と比較して背景の移動速度が大きくなる。したがって、トリミングサイズに応じて高周波成分を抑圧する量を変更することで、より臨場感のある画像を得ることができる。
【0047】
以上、図3を用いて説明したように、画像処理部34は、位置検出部33により検出された位置の変化量、もしくは変化方向、またはトリミング部32によりトリミングされたトリミング領域のサイズに基づいて、それぞれに適した効果のLPFを選択する。そして、画像処理部34は、背景画像領域の画像に対して選択したフィルタに基づいて画像処理することにより高周波数成分を抑圧する。
【0048】
次に、本実施形態における画像処理の動作を説明する。
図4は、本実施形態における画像処理を示すフローチャートである。
以下、図4が示すフローチャートを用いて、画像処理装置100の画像処理について説明する。なお、この図は、画像処理装置100が、主要被写体画像の位置の変化に基づいて、トリミング領域のうち主要被写体画像以外の背景画像に高周波数成分を抑圧してトリミング画像を生成する場合の処理を示すフローチャートである。
【0049】
画像処理装置100に画像入力部1から動画像のデータが入力されて、画像処理装置100の処理部3は、画像処理動作を開始する(ステップS1)。次に、ユーザーが操作部4から操作入力することにより、処理部3の被写体選択部31は、動画像内において主要被写体(所定の被写体)画像を選択する。具体的には、処理部3は、動画像のうちの1フレーム画像を表示装置5に表示させ、当該フレーム画像内のから主要被写体画像をユーザーに指定させる。そして、被写体選択部31は、ユーザーにより指定された被写体画像を主要被写体画像として選択し、テンプレート画像として記憶装置2に記憶させる(ステップS2)。
【0050】
次に、処理部3のトリミング部32は、ユーザーが操作部4より入力したトリミング領域の位置または大きさに基づいて、トリミング領域を設定する。また、トリミング部32は、最初のフレーム画像においてユーザーによりトリミング領域が設定された後は、記憶装置2に記憶されている主要被写体画像のテンプレート画像を用いて、動画像のそれぞれのフレーム画像においてテンプレートマッチングをすることにより、主要被写体画像の位置を検出し、検出した位置に応じて設定されたトリミング領域の位置を変更して設定する(ステップS3)。
【0051】
次に、処理部3の位置検出部33は、入力された動画像における現在のフレーム画像と直前のフレーム画像との2つの画像間における主要被写体画像の位置の変化を検出する(ステップS4)。そして、画像処理部34は、位置検出部33により検出された位置の変化量、または変化方向に基づいて、背景画像領域の画像に対して画像処理するLPFの種類を選択する(ステップS5)。
【0052】
次に、処理部3の画像処理部34は、現在のフレーム画像におけるトリミング領域のうち、主要被写体画像領域以外の背景画像領域に対して選択したLPFに基づいて画像処理する。これにより、画像処理部34は、背景画像領域の高周波数成分を抑圧する(ステップS6)。
【0053】
そして、トリミング部32は、設定したトリミング領域において画像処理部34により高周波数成分を抑圧する画像処理が実行された現在のフレーム画像におけるトリミング画像を生成する(ステップS7)。
【0054】
次に、処理部3は、現在のフレーム画像が最終のフレーム画像であるか否かを判定する(ステップS8)。処理部3は、ステップS8において、現在のフレーム画像が最終のフレーム画像であると判定した場合、処理を終了する。一方、現在のフレーム画像が最終のフレーム画像でないと判定した場合、ステップS3に処理を戻し、次のフレーム画像に対する画像処理を実行する。
【0055】
なお、図4を用いて、画像処理装置100が、主要被写体画像の位置の変化に基づいて、画像処理を実行する例について説明したが、トリミング領域の位置の変化に基づいて画像処理を実行する場合は、ステップS4の処理を変更する。例えば、ステップS4において、位置検出部33が、入力された動画像における現在のフレーム画像と直前のフレーム画像との間において、主要被写体画像の位置の変化を検出するのに代えてトリミング領域の位置の変化を検出する。そして、ステップS5において、画像処理部34は、検出されたトリミング領域の位置の変化量、または変化方向に基づいてLPFの種類を選択する。そして、ステップS6において、画像処理部34は、選択したLPFに基づいて画像処理することにより、背景画像領域の高周波数成分を抑圧する画像処理を実行する。
【0056】
以上のように、本実施形態における画像処理装置100は、時系列で撮像された複数の画像からトリミング画像を生成する場合に、主要被写体画像以外の背景画像領域の高周波数成分を抑圧する処理を実行する。例えば、画像処理装置100は、動きのある主要被写体が広角で撮像された動画像から、主要被写体画像が拡大されるようにトリミングした動画像を生成する。そして、画像処理装置100は、生成したトリミング画像の背景画像領域の高周波数成分を抑圧する。これにより、トリミングされた動画像は、望遠で主要被写体の動きに合わせて撮像された動画像の背景画像領域に生じる像流れと同様の効果が得られ、主要被写体の動きが感じられるような臨場感ある動画像となる。よって、本実施形態によれば、広角で動画像が撮像することで主要被写体が撮像領域から外れてしまうことを防止するとともに、画像処理装置100によって、当該広角で撮像された動画像から主要被写体の動きが感じられるようなトリミング画像を生成することができる。
【0057】
なお、本実施形態によれば、画像処理装置100のトリミング部32は、時系列で撮像された複数の画像それぞれから、主要被写体画像(所定の被写体画像)を含む画像領域をトリミングして、トリミング画像を生成する。また、画像処理装置100の位置検出部33は、撮像された画像のうち2つの画像間において、トリミング画像の位置の変化、または主要被写体画像(所定の被写体画像)の位置の変化を検出する。そして、画像処理装置100の画像処理部34は、位置検出部33により検出された位置の変化に基づいて、トリミング画像の画像領域のうち主要被写体(所定の被写体)画像の画像領域外となる背景画像領域の高周波数成分を抑圧する。
つまり、画像処理装置100は、主要被写体画像の動きに基づいて、トリミング領域における背景画像領域の画像に対して、高周波数成分を抑圧する。よって、画像処理装置100は、主要被写体の動きに応じて主要被写体の動きが感じられるような臨場感のあるトリミング画像を生成することができる。
【0058】
また、本実施形態によれば、画像処理装置100の画像処理部34は、動位置検出部33により検出された位置の変化量が大きくなるほど、背景画像領域の高周波数成分を抑圧する量を大きくする。
つまり、画像処理装置100は、トリミング領域における背景画像領域の画像に対して、主要被写体の動きが早くなるほど、高周波数成分を抑圧する量を大きくする。これにより、トリミング領域における背景画像領域の画像は、主要被写体画像の動きが早くなるにつれて像流れが大きい画像と同様の効果を得る。よって、画像処理装置100は、主要被写体の動きに応じて主要被写体の動きが感じられる臨場感のあるトリミング画像を生成することができる。
【0059】
また、本実施形態によれば、画像処理装置100の画像処理部34は、位置検出部33により検出された位置の変化方向に基づいて、背景画像領域の当該変化方向に対応する方向における高周波数成分を抑圧する。
つまり、画像処理装置100は、トリミング領域における背景画像領域の画像に対して、主要被写体の動き方向に合わせてその方向に対して高周波数成分を抑圧する。これにより、トリミング領域における背景画像領域の画像は、主要被写体の動き方向に対して像流れがある画像と同様の効果を得る。よって、画像処理装置100は、主要被写体の動きに応じて主要被写体の動きが感じられるような臨場感のあるトリミング画像を生成することができる。
【0060】
また、本実施形態によれば、画像処理装置100の画像処理部34は、トリミング部32によりトリミングされたトリミング画像の画像領域のサイズが小さくなるほど、背景画像領域の高周波数成分を抑圧する量を大きくする。トリミング領域のサイズが小さくなるほど、実際により望遠で撮影される場合に背景画像領域に生じる像流れが大きくなるのと同様となるように、画像処理装置100は、背景画像領域の画像に対して高周波数成分を抑圧する量を大きくする。よって、画像処理装置100は、主要被写体の動きに応じて主要被写体の動きが感じられるようなトリミング画像を生成することができる。
【0061】
なお、図3において、画像処理部34が2つの予め定められた閾値Mth1,Mth2により変化量Mを判定する例を示したが、これに限られるものではない。例えば、画像処理部34は、位置検出部33により検出された位置の変化量Mを、1つまたは3つ以上の予め定められた閾値により判定してもよい。また、画像処理部34は、位置検出部33により検出された位置の変化量Mが連続して変化する大きさに応じて、処理を実行してもよい。
【0062】
また、図3において、画像処理部34が位置の変化方向を4つの方向に分類して処理する例を示したが、これに限られるものではない。例えば、画像処理部34は、位置検出部33により検出された位置の変化方向を4つの方向より少ない方向、または多い方向に分類して処理してもよい。
【0063】
また、図3において、画像処理部34が1つの予め定められた閾値Dthにより、トリミングサイズDの大きさを判定する例を示したが、これに限られるものではない。例えば、画像処理部34は、トリミング部32によりトリミングされたトリミングサイズDの大きさを、1つまたは3つ以上の予め定められた閾値により判定してもよい。また、画像処理部34は、トリミングサイズDが連続して変化する大きさに応じて、処理を実行してもよい。
【0064】
また、図3において、画像処理部34が、位置の変化量M、もしくは変化方向、またはトリミングサイズに基づいて、予め定められた24種類のLPFの設定から選択する例を示したが、LPFの種類は24種類に限られるものではない。例えば、位置の変化量M、もしくは変化方向、またはトリミングサイズの検出閾値の数に基づいた種類のLPFの設定が予め定められており、画像処理部34は、当該予め定められた種類のLPFの設定から選択してもよい。
【0065】
また、図3において、「1×3ブロック」及び「1×5ブロック」のLPFの例を示したが、その他のブロック数によるLPFであってもよい。また、図3に示すLPFの各ブロックの重み付けの値は一例であって、この値に限られるものではない。また、LPFの1つのブロックを構成する画素は、1画素により構成されてもよいし、また、複数の画素により構成されてもよい。LPFの1つのブロックを構成する画素は、画像処理を行う動画像の画素数、LPFの効果、または画像処理装置100における処理条件やメモリ容量等の諸条件に基づいて予め定められた画素数の画素により構成されてもよい。
【0066】
また、図3において、画像処理部34が、位置検出部33により検出された位置の変化量M、変化方向、及びトリミング部32によりトリミングされたトリミングサイズDのそれぞれの組み合わせに対応して設定されているLPFを、それぞれの条件に基づいて選択する例を示したが、これら全ての組み合わせでなくてもよい。画像処理部34は、変化量M、変化方向、またはトリミングサイズDの何れか1つまたは2つの条件に基づいて設定されているLPFを選択する構成であってもよい。
【0067】
なお、上記実施形態における画像処理装置100において、被写体選択部31が設定する主要被写体画像(所定の被写体画像)は、1つの被写体画像に限らず、複数の被写体画像を主要被写体画像としてもよい。例えば、人物が主要被写体であって、徒競走をしている複数の人物(例えば、4人)が主要被写体である場合、画像処理装置100は、トリミング画像の位置の動きに基づいて、トリミング領域のうち、徒競走をしている複数の人物(例えば、4人)の画像領域以外の背景画像領域の画像に対して高周波数成分を抑圧する。この場合、複数の人物の動きが異なる場合であっても、画像処理装置100は、トリミング画像の位置の動きに基づいて、トリミング領域のうち、徒競走をしている複数の人物(例えば、4人)の画像領域以外の背景画像領域の画像に対して高周波数成分を抑圧する処理が可能である。
【0068】
なお、上記実施形態における画像処理装置100において、位置検出部33が、トリミング画像の位置の変化、または主要被写体画像(所定の被写体画像)の位置の変化を検出するための2つの画像は、時系列に撮像された画像のうち連続した現在のフレーム画像と直前のフレーム画像との2つの画像に限られるものではない。位置検出部33が位置の変化を検出するための2つの画像は、現在のフレーム画像を含まない2つの画像であってもよい。また、位置検出部33が位置の変化を検出するための2つの画像は、連続していないフレーム画像であってもよく、所定の時間(例えば、0.5秒、または1秒等)間隔のフレーム画像であってもよいし、ユーザーにより任意に設定された時間間隔のフレーム画像であってもよい。そして、この2つのフレーム画像の時間間隔は、トリミング画像または主要被写体画像の位置の変化量の大きさ、すなわち主要被写体の動きの速さに基づいて、予め設定されてもよいし、ユーザーにより設定されてもよい。また、位置検出部33は、位置の変化量を検出できない場合、2つのフレーム画像の時間間隔を広げる制御を実行してもよい。これにより、位置検出部33は、トリミング画像または主要被写体画像の位置の変化が遅いことにより位置の変化量を検出できない場合、2つのフレーム画像の時間間隔を広げることにより位置の変化量を検出することができる。さらに、位置検出部33は、2つのフレーム画像の時間間隔を連続的に変化させて、位置の変化量を検出してもよい。
【0069】
また、位置検出部33が、時系列に撮像された2つの画像間において、位置の変化を検出する例について説明したが、これに限られるものではない。位置検出部33は、時系列に撮像された3つ以上の複数の画像間において、トリミング画像の位置の変化、または主要被写体画像(所定の被写体画像)の位置の変化を検出してもよい。すなわち、位置検出部33は、時系列に撮像された少なくとも2つの画像間において、トリミング画像の位置の変化、または主要被写体画像(所定の被写体画像)の位置の変化を検出してもよい。
【0070】
なお、上記実施形態における画像処理装置100は、単一フレーム画像内において主要被写体画像領域以外の背景画像領域に対して、選択したLPFに基づいて画像処理する構成について説明したが、LPFに基づいて画像処理する構成に代えて、複数のフレーム画像における背景画像領域の画像を加算処理する構成としてもよい。この構成によれば、複数のフレーム画像における背景画像領域の画像を加算することで、背景画像領域において像流れと同様の効果が得られる。
【0071】
なお、上記実施形態における画像処理装置100において、画像処理をする対象となる動画像が画像入力部1から入力される例について説明したが、画像処理をする対象となる動画像は、記憶媒体21に記憶されていてもよい。そして、画像処理装置100は、記憶装置2が記憶媒体21から読み出した当該動画像に対して画像処理を実行してもよい。
【0072】
なお、上記実施形態における画像処理装置100の記憶装置2、操作部4、及び表示装置5は、画像処理装置100と一体に構成されていてもよいし、着脱可能な外部装置であってもよい。
【0073】
なお、上記実施形態において、ビデオカメラやデジタルスチルカメラ等の撮像装置により撮像された動画像が入力されて画像処理を行う画像処理装置100の構成を例に説明したが、撮像装置が画像処理装置100の構成の一部または全てを備え、当該撮像装置において、撮像から画像処理までの一連の処理を実行する構成としてもよい。
以下、画像処理装置の構成を備えている撮像装置の一例を説明する。
【0074】
(撮像装置の構成)
図5は、画像処理装置100を備えている撮像装置200の構成を示す概略ブロック図である。図5に示す撮像装置200は、画像処理装置100、撮像部6、制御部7、記憶部8、バッファメモリ部9、及びバス15を備えている。また、画像処理装置100は、図1の画像処理装置100と対応しており、外部入出力部1a、記憶装置2、処理部3、操作部4、及び表示装置5を備えている。図5において図1の各部に対応する部分には同一の符号を付けており、その説明を省略する。図5の外部入出力部1aは、外部装置と動画像等のデータを入出力する端子を備えており、図1の画像入力部1に対応している。
【0075】
撮像部6は、レンズ部61、撮像素子62、及びA/D変換部63を備えており、被写体の光学像から動画像または静止画像等を撮像する。この撮像部6は、設定された撮像条件(例えば絞り値、露出等)に基づいて制御部7により制御され、レンズ部61を介して入力された被写体の光学像を、撮像素子62の撮像面上に結像させる。撮像素子62は、撮像面に結像された光学像を光電変換したアナログ信号を、A/D変換部63に出力する。A/D変換部63は、撮像素子62から入力されたアナログ信号をデジタル信号に変換し、この変換したデジタル信号を出力する。なお、上述したレンズ部61は、撮像装置200に取り付けられて一体とされていてもよいし、撮像装置200に着脱可能に取り付けられてもよい。
【0076】
例えば、撮像部6は、操作部4における動画撮影操作に応じて、所定の間隔で連続的に撮像した動画像を出力する。また、撮像部6は、操作部4における静止画撮影操作に応じて、撮像した静止画像を出力する。そして、撮像部6によって撮像された動画像及び静止画像は、制御部7の制御により、バッファメモリ部9や画像処理装置100を介して記憶媒体21に記録される。また、撮像部6は、操作部4における撮影操作がされていない撮影待機状態の場合、所定の間隔で連続的に得られる画像をスルー画像として出力する。
【0077】
制御部7は、撮像装置200が備えている各部を制御する。記憶部8には、撮像装置200を制御するための、予め定められた撮影制御条件、画像処理条件、再生制御条件、表示制御条件、記録制御条件、及び出力制御条件などが記憶されている。例えば、記憶部8は、ROM(Read Only Memory)である。なお、画像処理装置100が画像処理に用いる予め定められた画像処理条件は、画像処理装置100に記憶部を備えて記憶されていてもよい。
【0078】
バッファメモリ部9は、制御部7が撮像装置200を制御する際の作業領域として利用される。撮像部6によって撮像された動画像、スルー画像、もしくは静止画像、または記憶媒体21から読み出された画像は、制御部7の制御による画像処理の過程においてバッファメモリ部9に一時的に記憶される。バッファメモリ部9は、例えばRAM(Random Access Memory)である。なお、バッファメモリ部9は、画像処理装置100に備えられ、画像処理装置100の制御による画像処理の過程において作業領域として利用されてもよい。
【0079】
バス15は、外部入出力部1a、記憶装置2、処理部3、操作部4、表示装置5、撮像部6、制御部7、記憶部8、及びバッファメモリ部9と接続され、各部から出力された画像データや制御信号等を転送する。
【0080】
以上、図5を用いて説明した撮像装置200の構成において、画像処理装置100は、撮像部6により撮像された動画像に対して、主要被写体画像を含む画像領域をトリミングして、トリミング画像を生成する。また、画像処理装置100は、撮像された動画像のうち少なくとも2つの画像間において、トリミング画像の位置の変化、または主要被写体画像の位置の変化を検出する。そして、画像処理装置100は検出した位置の変化に基づいて、トリミング画像の画像領域のうち所定の被写体画像の画像領域外となる背景画像領域の高周波数成分を抑圧する。これにより、撮像装置200は、撮像部6により撮像された動画像から主要被写体画像を含むトリミング画像を生成する場合に、主要被写体画像の位置の変化に基づいてトリミング領域における背景画像領域の高周波数成分を抑圧することができる。よって、撮像装置200は、主要被写体の動きが感じられるような臨場感のあるトリミング画像を生成することができる。なお、画像処理装置100は、記憶媒体21に記憶されている動画像、または、外部入出力部1aから入力される動画像に対して、同様にトリミング画像を生成してもよい。
【0081】
なお、図1における画像処理装置100の処理部3は専用のハードウェアにより実現されるものであってもよく、また、メモリおよびCPU(中央演算装置)により構成され、上述の処理部3の機能を実現するためのプログラムをメモリにロードして実行することによりその機能を実現させるものであってもよい。
【0082】
また、上述の画像処理装置100の処理部3の機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することにより上述の処理部3の処理を行ってもよい。なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものとする。
【0083】
また、「コンピュータシステム」は、WWWシステムを利用している場合であれば、ホームページ提供環境(あるいは表示環境)も含むものとする。
また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD−ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムを送信する場合の通信線のように、短時間の間、動的にプログラムを保持するもの、その場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリのように、一定時間プログラムを保持しているものも含むものとする。また上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであっても良く、さらに前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるものであっても良い。
【0084】
以上、この発明の実施形態を図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計等も含まれる。
【符号の説明】
【0085】
32 トリミング部、33 位置検出部、34 画像処理部、100 画像処理装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像処理装置としてのコンピュータに、
時系列で撮像された複数の画像それぞれから、所定の被写体画像を含む任意の画像領域をトリミングしてトリミング画像を生成するトリミング手順と、
前記複数の画像のうち少なくとも2つの画像間における前記任意の画像領域の位置の変化、または前記所定の被写体画像の位置の変化を検出する位置検出手順と、
前記位置検出手順により検出された位置の変化に基づいて、前記トリミング画像内のうち前記所定の被写体画像の画像領域外である背景画像領域の高周波数成分を抑圧する画像処理手順と、
を実行させることを特徴とする画像処理プログラム。
【請求項2】
前記画像処理手順において、
前記位置検出手順により検出された位置の変化量が大きくなるほど、前記背景画像領域の高周波数成分を抑圧する量を大きくする
ことを特徴とする請求項1に記載の画像処理プログラム。
【請求項3】
前記画像処理手順において、
前記位置検出手順により検出された位置の変化の移動方向に基づいて、前記背景画像領域の当該移動方向に対応する方向における高周波数成分を抑圧する
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の画像処理プログラム。
【請求項4】
前記画像処理手順において、
前記任意の画像領域のサイズが小さくなるほど、前記背景画像領域の高周波数成分を抑圧する量を大きくする
ことを特徴とする請求項1から請求項3の何れか1項に記載の画像処理プログラム。
【請求項5】
時系列で撮像された複数の画像それぞれから、所定の被写体画像を含む任意の画像領域をトリミングしてトリミング画像を生成するトリミング部と、
前記複数の画像のうち少なくとも2つの画像間における前記任意の画像領域の位置の変化、または前記所定の被写体画像の位置の変化を検出する位置検出部と、
前記位置検出部により検出された位置の変化に基づいて、前記トリミング画像内のうち前記所定の被写体画像の画像領域外となる背景画像領域の高周波数成分を抑圧する画像処理部と、
を備えることを特徴とする画像処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−159872(P2012−159872A)
【公開日】平成24年8月23日(2012.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−17064(P2011−17064)
【出願日】平成23年1月28日(2011.1.28)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)
【Fターム(参考)】