説明

画像処理プログラム、画像処理装置、及び画像処理方法

【課題】2D3D変換に必要なパラメータの調整作業の効率を高める。
【解決手段】三次元パラメータを調整するための調整用画面を第1のディスプレイに表示し、三次元パラメータを調整するためのユーザ入力に応じて、三次元パラメータ記憶部に記憶されている三次元パラメータを更新し、二次元映像記憶部に記憶されている二次元映像と、三次元パラメータ記憶部に記憶されている三次元パラメータとに基づいて三次元映像を生成し、調整用画面を用いて三次元パラメータを調整可能な状態において、第1のディスプレイとは別の、三次元表示に対応した第2のディスプレイに、生成された三次元映像を表示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像処理プログラム、画像処理装置、及び画像処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、映画やテレビにおいて三次元(3D)映像を鑑賞する環境が整備され、3D映像に対する関心が高まっている。しかしながら、3D映像を作成するためには、例えば、3D映像を撮影するためのカメラ等の特殊な機材が必要となり、映像作成のコストが高くなってしまう。そのため、3D映像のコンテンツの拡充には至っていないのが現状である。
【0003】
そこで、既に作成されている二次元(2D)映像を3D映像に変換する技術、すなわち2D3D変換技術が注目されている。このような2D3D変換技術を用いることにより、既存の多くのコンテンツを3D映像として楽しむことが可能となる。例えば、特許文献1には、2D3D変換の際に必要となるパラメータを調整するための手法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−80982号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述のように、特許文献1に開示されているような手法を用いることにより、2D3D変換のパラメータを調整することが可能である。しかしながら、特許文献1に開示されている手法では、ある1つのフレーム画像に対するパラメータを調整中に、このフレーム画像に対応する3D画像を確認することはできるものの、元の2D映像から生成される3D映像を確認することはできない。
【0006】
一般的に、フレームごとの3D画像の表示だけでは、3D映像における3Dの表示効果が適切であるかどうかを判断することは難しい。そのため、パラメータの調整結果がどのように3D映像に反映されているかを確認するためには、パラメータの調整作業を一旦終了したうえで、最終的な3D映像を出力するためのレンダリング処理を実行する必要がある。そして、レンダリングにより出力された3D映像を3D表示に対応したディスプレイに表示することにより、3Dの表示が適切に行われているかどうかを確認することとなる。
【0007】
このように、2D3D変換に際しては、フレームごとのパラメータ調整とレンダリングとを繰り返す必要があり、調整作業に非常に手間がかかってしまう。
【0008】
そこで、本発明は、2D3D変換に必要なパラメータの調整作業の効率を高めることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一側面に係る画像処理プログラムは、二次元映像を記憶する二次元映像記憶部と、二次元映像を三次元映像に変換するために必要となる三次元パラメータを記憶する三次元パラメータ記憶部とを有するコンピュータに、三次元パラメータを調整するための調整用画面を第1のディスプレイに表示し、三次元パラメータを調整するためのユーザ入力に応じて、三次元パラメータ記憶部に記憶されている三次元パラメータを更新する三次元パラメータ調整機能と、二次元映像記憶部に記憶されている二次元映像と、三次元パラメータ記憶部に記憶されている三次元パラメータとに基づいて、三次元映像を生成する三次元映像生成機能と、調整用画面を用いて三次元パラメータを調整可能な状態において、第1のディスプレイとは別の、三次元表示に対応した第2のディスプレイに、生成された三次元映像を表示する三次元映像表示機能と、を実現させるためのものである。
【0010】
なお、本発明において、「部」とは、単に物理的手段を意味するものではなく、その「部」が有する機能をソフトウェアによって実現する場合も含む。また、1つの「部」や装置が有する機能が2つ以上の物理的手段や装置により実現されても、2つ以上の「部」や装置の機能が1つの物理的手段や装置により実現されても良い。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、2D3D変換に必要なパラメータの調整作業の効率を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の一実施形態である画像処理システムの構成を示す図である。
【図2】2D映像から各オブジェクトの輪郭を抜き出す処理のイメージを示す図である。
【図3】レイヤーデータを合成して深度画像を生成する処理のイメージを示す図である。
【図4】深度値にグラデーションをつける処理のイメージを示す図である。
【図5】3Dパラメータ調整中の画面の一例を示す図である。
【図6】深度画像内のエッジの一例を示す図である。
【図7】確認用3Dディスプレイ14における画素パターンの一例を示す図である。
【図8】3D映像を生成する処理のイメージを示す図である。
【図9】3視点以上の多視点の場合における最大視差量の一例を示す図である。
【図10】2D3D変換処理全体の流れの一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して本発明の一実施形態について説明する。図1は、本発明の一実施形態である画像処理システムの構成を示す図である。画像処理システムは、二次元(2D)映像を三次元(3D)映像に変換するためのシステムであり、画像処理装置10、作業用二次元ディスプレイ12、及び確認用3Dディスプレイ14を含んで構成されている。画像処理装置10は、2D3D変換処理を行うための情報処理装置であり、パーソナルコンピュータやサーバなどを用いて実現される。なお、画像処理装置10は、複数台の情報処理装置を用いて構成されていてもよい。作業用2Dディスプレイ12は、画像処理装置10において2D3D変換のための作業を行う際に必要な各種情報を表示するためのものであり、2D表示が可能なディスプレイ装置である。確認用3Dディスプレイ14は、画像処理装置10によって生成される3D映像を表示するためのものであり、3D表示が可能なディスプレイ装置である。なお、確認用3Dディスプレイ14は、3D表示に対応していればよく、3D表示の方式は任意である。例えば、偏光フィルタ方式や液晶シャッタ方式等の、3D視聴時にメガネを用いるものであってもよいし、パララックスバリア方式やレンチキュラ方式等の、裸眼での3D視聴が可能なものであってもよい。
【0014】
図1に示すように、画像処理装置10は、2D映像記憶部20、マスク作成部22、レイヤーデータ作成部24、レイヤーデータ記憶部26、深度映像生成部28、3Dパラメータ記憶部30、3Dパラメータ調整部32、深度映像表示部34、3D映像生成部36、3D映像記憶部38、3D映像表示部40、及び3D映像出力部42を含んで構成される。画像処理装置10を構成する各部は、例えば、メモリや記憶装置等の記憶領域を用いたり、記憶領域に格納されているプログラムを実行したりすることにより実現することができる。
【0015】
2D映像記憶部20には、3D映像への変換元となる2D映像が格納されている。2D映像は、連続する複数の2D画像により構成されている。2D映像は任意の形式であってよいが、ここでは、2D映像のフレームごとに1つの2D画像が生成された状態で2D映像記憶部20に格納されていることとする。なお、MPEG形式等の圧縮された2D映像を用いる場合であれば、圧縮された2D映像をデコードすることにより、フレームごとの2D画像を生成することが可能である。本実施形態では、2D映像中の1つのフレームの画像のことを単にフレーム画像と記載する場合もある。
【0016】
マスク作成部22は、3D表示の対象となる各オブジェクトの輪郭を2D映像の中から抜き出すためのものである。図2に、2D映像から各オブジェクトの輪郭を抜き出す処理のイメージ図が示されている。図2には、2D映像中に三角形80、四角形82,84の3つのオブジェクトが示されている。マスク作成部22は、例えば、2D映像の1つのフレーム画像を作業用2Dディスプレイ12に表示し、各オブジェクトの範囲を指定するためのユーザ入力を受け付ける。そして、オブジェクトの範囲が指定されると、マスク生成部22は、2D映像の後続フレームのフレーム画像に対してオブジェクトの追従処理を行い、各フレーム画像においてオブジェクトの輪郭を切り取る。なお、マスク作成部22は、フレーム画像を解析することにより、ユーザ入力によらず自動的にオブジェクトの輪郭を切り抜くこととしてもよい。また、マスク作成部22は、オブジェクトの追従結果を作業用2Dディスプレイ12に表示し、追従が正しく行われていない部分について、ユーザ入力に応じて補正を行うことも可能である。
【0017】
レイヤーデータ作成部24は、マスク作成部22の処理結果に基づいて、3D表示の対象となるオブジェクトごとのレイヤーデータを作成し、レイヤーデータ記憶部26に格納する。また、レイヤーデータ作成部24は、あるオブジェクトのレイヤーデータを作業用2Dディスプレイ12に表示し、当該オブジェクトの傾きや凹凸を指定するためのユーザ入力を受け付けることも可能である。
【0018】
深度映像生成部28は、レイヤーデータ作成部24により作成された複数のオブジェクトのレイヤーデータをフレームごとに合成することにより深度映像を生成し、3Dパラメータ記憶部24内の深度映像記憶部50に格納する。図3には、あるフレームのレイヤーデータを合成した深度画像が表示されている。深度画像は、画像中の画素ごとの深度を示すものであり、デプスマップと呼ばれる。深度画像は、2D映像のフレーム画像と同じ大きさであり、各画素の画素値は深度を表す深度値となっている。本実施形態では、深度画像は、各画素の値を256段階のグレースケール値で表したグレースケール画像とする。そして、図3に示すように、深度値0が最も奥の深度を表し、深度値255が最も手前の深度を表すこととする。
【0019】
深度映像生成部28では、各深度画像に対して、各レイヤーの深度値を初期設定することができる。また、深度映像生成部28では、オブジェクトの傾きや凹凸に応じて、オブジェクト内の深度値を変更することが可能である。例えば、図4に示すように、深度映像生成部28は、オブジェクトの傾きに応じて深度値にグラデーションをつけることも可能である。なお、深度値の初期設定は、各フレームの深度画像に対して個別に行うことも可能であるし、例えば、いくつかのフレームの深度画像に対して深度値を設定することにより、その他のフレームの深度画像の深度値を補間により算出することも可能である。このように、深度映像生成部28では、2D映像の各フレームに対応する深度画像を生成することにより、2D映像に対応する深度映像を生成することができる。
【0020】
3Dパラメータ調整部32は、2D映像を3D映像に変換するために必要となる3Dパラメータを調整するための機能を有している。上述した深度映像も3Dパラメータの1つである。3Dパラメータには、深度映像の他に、視差量、輻輳位置、及び3Dモードが含まれる。図1に示すように、これらの3Dパラメータは、3Dパラメータ記憶部30内の深度映像記憶部50、視差量記憶部52、輻輳位置記憶部54、及び3Dモード記憶部56に格納されている。3Dパラメータ調整部32では、これらの3Dパラメータを調整するための調整用画面を作業用2Dディスプレイ12に表示し、当該画面に対するユーザ入力に応じて3Dパラメータを更新することが可能である。
【0021】
図5には、調整用画面の一例が示されている。図5に示すように、調整用画面100には、深度映像を表示するための表示領域110に加えて、深度映像の再生を制御するためのボタン、3Dパラメータを調整するためのボタン、3D映像のレンダリングを指示するためのボタンが設けられている。
【0022】
再生/一時停止ボタン120は、深度映像の再生や一時停止を指示するためのものである。この再生/一時停止ボタン120の操作入力に応じて、深度映像表示部34が、深度映像記憶部50に格納されている深度映像の再生や一時停止を行う。また、深度映像表示部34は、フレーム指定ボタン122で指定されたフレームの深度画像を表示させたり、戻しボタン124や送りボタン126の操作入力に応じてフレームを戻したり進めたりすることが可能である。
【0023】
深度値ボタン130は、表示領域110に表示されている深度画像の深度値を調整する際に用いられる。例えば、ユーザは、表示領域110において調整対象のレイヤー(オブジェクト)を選択し、選択されたレイヤーに対する深度値を入力することができる。3Dパラメータ調整部32は、このように入力される深度値により、深度映像記憶部50に格納されている、対象の深度画像における深度値を更新する。なお、3Dパラメータ調整部32は、オブジェクトに設定されている傾きや凹凸を考慮したうえで深度値を更新することが可能である。
【0024】
深度値範囲ボタン132は、各レイヤーの深度値の範囲を入力する際に用いられる。例えば、ユーザは、表示領域110において調整対象のレイヤーを選択し、選択されたレイヤーに対する深度値の範囲を入力することができる。3Dパラメータ調整部32は、ここで指定される範囲内において、当該レイヤーの深度値を調整することができる。3Dパラメータ調整部32は、あるフレームの深度画像の深度値が調整されることに伴って、例えば、初期設定時と同様の手法により、他のフレームの深度画像の深度値を自動的に更新することができる。このとき、3Dパラメータ調整部32は、ユーザに指定された範囲内となるように深度値を更新することができる。
【0025】
視差量ボタン134は、隣り合う視点間における最大視差を示す最大視差量を調整する際に用いられる。最大視差量は、3D映像における立体感を調整するためのパラメータであり、最大視差量が大きくなるほど立体感が強くなる反面、最大視差量を大きくしすぎると立体感が破綻したり、3D映像に乱れが生じたりすることがある。3Dパラメータ調整部32は、このように入力される最大視差量を視差量記憶部52に格納する。なお、本実施形態では、入力される最大視差量は深度映像の全フレームに対して適用されることとするが、フレームごとや区間ごとに最大視差量を調整可能であることとしてもよい。フレームごとや区間ごとに最大視差量が調整される場合、視差量記憶部52には、フレームや区間を識別するための情報と最大視差量とが対応付けて記憶されることとすればよい。
【0026】
輻輳位置ボタン136は、3D映像における輻輳位置を調整する際に用いられる。輻輳位置は、3D映像を表示する際にスクリーン面に位置する深度値を指定するものである。例えば、図3に示したように、奥から手前に向かって0から255まで深度値が規定されている場合において、輻輳位置を0とすると、深度値0(無限遠)がスクリーン面に位置することになる。この場合、映像が全てスクリーン面から飛び出したものとなる。3Dパラメータ調整部32は、このように入力される輻輳位置を輻輳位置記憶部54に格納する。なお、本実施形態では、入力される輻輳位置は深度映像の全フレームに対して適用されることとするが、フレームごとや区間ごとに輻輳位置を調整可能であることとしてもよい。フレームごとや区間ごとに輻輳位置が調整される場合、輻輳位置記憶部54には、フレームや区間を識別するための情報と輻輳位置とが対応付けて記憶されることとすればよい。
【0027】
エッジ補正ボタン138は、深度画像内のエッジを補正する際に用いられる。エッジとは、深度値の変化量が大きい部分であり、例えば図6に示すように、レイヤーの境目部分などに存在する。3Dパラメータ調整部32は、表示領域110に表示されている深度画像内のエッジを検出し、検出されたエッジ周辺の深度値の変化が緩やかになるように深度値を更新することができる。ここで、エッジの検出は、例えば隣接する画素間における深度値の変化量が所定レベル以上であるかどうかを判定することなどにより行うことが可能である。3Dパラメータ調整部32は、表示領域110においてユーザから指定される範囲内のエッジを補正することも可能である。また、3Dパラメータ調整部32は、表示領域110に表示されている深度画像だけではなく、他のフレームの深度画像に含まれるエッジについても同様に補正することが可能である。
【0028】
3Dモード選択ボタン140は、3D映像の生成や表示を行う際のモードを示す3Dモードを選択する際に用いられる。例えば、3Dモードとして、パラレル、クロス、アナグリフ、インターレース、多視点などを選択することが可能である。ここで、多視点とは、視点数が3つ以上のものであり、視点数を入力することが可能である。3Dパラメータ調整部32は、このように入力される3Dモードを3Dモード記憶部56に格納する。なお、3Dモード記憶部56には、確認用3Dディスプレイ14における3D表示に関連する仕様を示すディスプレイ情報が、3Dモードの一部として予め格納されていてもよい。このようなディスプレイ情報には、例えば、確認用3Dディスプレイ14における画素配列のパターンを示す情報が含まれる。図7には、確認用3Dディスプレイ14が8視点の3D映像の表示に対応している場合における、画素パターンの一例が示されている。図7の例では、確認用3Dディスプレイ14の表示面は、横8画素×縦6画素ごとにグループ分けされており、各グループに対して同じ画素パターンが規定されている。なお、3Dパラメータ調整部32は、このような画素パターン等を示すディスプレイ情報を確認用3Dディスプレイ14から取得して3Dモード記憶部56に格納してもよい。
【0029】
図1に戻り、3D映像生成部36は、2D映像記憶部20に記憶されている2D映像と、3Dパラメータ記憶部30に記憶されている3Dパラメータとに基づいて3D映像を生成し、3D映像記憶部38に格納する。図8は、3D映像の生成処理のイメージが示されている。図8に示すように、3D映像生成部36は、2D映像の各フレーム画像から、3Dパラメータを考慮して、3Dモードに応じた視点数のフレーム画像を生成する。例えば、視点数が8であれば、1フレームの2D画像から、対応する8枚の3D画像が生成されることとなる。
【0030】
2D映像のフレーム画像から3D映像のフレーム画像を生成する処理の一例について説明する。本実施形態では、上述したように、深度画像は変換元の2D画像と幅、高さが同じサイズで、R・G・B値が全て共通の256段階のグレースケール画像とする。3D映像生成部36は、深度画像の各画素の輝度値、すなわち深度値を取得し、変換元の2D画像の対応する画素を深度値に従って水平方向に移動させることにより3D画像を生成する。画素の移動量をshift、最大視差量をshift_max、深度値をpとすると、例えば、2視点の場合であれば次式(1)によって移動量shiftを求めることができる。
【0031】
shift=(shift_max×p)/255 ・・・(1)
ここで、2視点の場合、画素の移動方向は、右目用の3D画像が左方向、左目用の3D画像が右方向となる。なお、変換元の2D画像の対象画素を水平方向に移動しただけでは、対象画素の隣の画素の深度値に変化があった場合、生成された3D画像において画素間に隙間が発生してしまう。そこで、3D映像生成部36は、例えば移動量分を変換元の2D画像の対象画素で埋めるなどにより、画素間に隙間が生じないように3D画像を生成することができる。3D映像生成部36は、例えば、深度値0から深度値255の順番等、深度値ごとに上述の処理を行うようにすることができる。
【0032】
さらに、3D映像生成部36は、輻輳位置を考慮して3D画像を生成することができる。輻輳位置は、スクリーン平面に位置させたい深度値を示すものであるため、深度画像が256段階のグレースケールの画像の場合であれば、輻輳位置の値も0〜255の範囲となる。ここで、輻輳位置をs_posとすると、次式(2)によって移動量を求めることができる。
【0033】
shift=(shift_max)×(p−s_pos)/255 ・・・(2)
これにより、深度画像上の輻輳位置と同じ深度値を有する画素の移動幅がゼロとなる。また、深度画像上の他の深度値の画素の移動方向は、輻輳位置を境界として逆方向となる。結果的に生成される3D画像は、深度値が輻輳位置より大きい部分は飛び出し、深度値が輻輳位置より小さい部分は引っ込んだものとなる。
【0034】
簡単な例として2視点の場合について説明したが、3D映像生成部36は、視点ごとに最大視差量を変更して上式に適用することにより、多視点の3D画像を生成することができる。1視点あたりの視差量をshift0、視点数をvnとすると、多視点3D画像を生成する際の最大視差量は0〜(shift0×(vn−1))/2の範囲となる。そして、3D変換による画質劣化を抑えるために、変換元の2D画像を中心位置に配置することとすると、多視点3D画像を生成する際の最大視差量は、−((shift0×(vn−1))/2)〜(shift0×(vn−1))/2の範囲となる。3D映像生成部36は、この範囲を均等に区切った位置を各視点の最大視差量として用いることができる。図9(a)には、視点数が奇数(例えば5視点V1〜V5)の場合の各視点の最大視差量の一例が示されている。また、図9(b)には、視点数が偶数(例えば6視点V1〜V6)の場合の各視点の最大視差量の一例が示されている。
【0035】
図1に戻り、3D映像表示部40は、3D映像生成部36により生成されて3D映像記憶部38に格納される3D映像を参照し、確認用3Dディスプレイ14に表示することができる。なお、3D映像表示部40は、3Dパラメータ調整部32によって3Dパラメータが調整されている際に、その時点での3Dパラメータに基づいて生成された3D映像をリアルタイムで確認用3Dディスプレイ14に表示することができる。すなわち、図5に示すように、作業用2Dディスプレイ12において3Dパラメータを調整している際に、調整された3Dパラメータ値を反映した3D映像を確認用3Dディスプレイ14に表示することができる。また、3D映像表示部40は、作業用2Dディスプレイ12の表示領域110に表示されている深度映像と同期させて3D映像を確認用3Dディスプレイ14に表示することができる。つまり、2D画像の同一のフレームに対応する深度画像と3D画像とを表示することが可能となる。2D画像、深度画像、及び3D画像の間におけるフレームの対応関係は、例えば、対応するフレームにはファイル名の一部に同じ文字列を含めるなど、任意の手法により行うことができる。また、深度映像と3D映像との同期は、例えば、深度映像表示部34が、作業用2Dディスプレイ12に表示中の深度画像のフレームを示す情報を3D映像表示部40に通知するなど、任意の手法により行うことができる。
【0036】
図1に戻り、3D映像出力部42は、3Dパラメータの調整が完了した後に、3D映像のレンダリングを行って出力する。例えば、3D映像出力部42は、図5に示した調整用画面100でレンダリングボタン142が押下されると、3D映像記憶部38から3D映像を読み出し、最終的な3D映像として記憶媒体や外部の情報処理装置に出力する。
【0037】
図10は、2D3D変換処理全体の流れの一例を示すフローチャートである。まず、マスク作成部22は、2D映像記憶部20に記憶されている2D映像を読み込み(S1001)、例えばユーザ入力によって各オブジェクトに対するマスクを作成する(S1002)。マスクが作成されると、レイヤーデータ作成部24は、各オブジェクトに対応するレイヤーデータを作成し、レイヤーデータ記憶部26に格納する(S1003)。深度映像生成部28は、レイヤーデータを合成し(S1004)、さらに、深度値を設定した深度映像を生成して深度映像記憶部50に格納する(S1005)。
【0038】
その後、3Dパラメータ調整部32は、作業用2Dディスプレイ12に調整用画面100を表示し、ユーザからの入力に基づいて、視差調整(S1006)や、輻輳位置調整(S1007)、エッジ補正(S1008)などの3Dパラメータ調整処理を行い、深度映像記憶部50に格納されている深度映像を更新する。このように3Dパラメータの調整が行われている際に、3D映像生成部36は、その時点での3Dパラメータに基づいて3D映像を生成し、3D映像記憶部38に格納する(S1009)。
【0039】
そして、3D映像記憶部38に格納される3D映像は、3D映像表示部40によってリアルタイムに参照され、作業用2Dディスプレイ12に表示される深度映像と同期した状態で、確認用3Dディスプレイ14に表示される(S1010)。ユーザは3Dパラメータの調整結果をリアルタイムに確認用3Dディスプレイ14上で確認して3D映像をチェックする。チェック結果がNGである場合(S1011:NG)、3Dパラメータの調整作業が繰り返し実行される。チェック結果がOKとなれば(S1011:OK)、3D映像出力部42は、3D映像記憶部38に格納されている3D映像をレンダリングし、最終的な3D映像を出力する(S1012)。なお、チェック結果がOKであることの判定は、例えば、調整用画面100においてレンダリングボタン142が押下されたことにより行うことができる。
【0040】
以上、本実施形態について説明した。本実施形態によれば、作業用2Dディスプレイ12において調整用画面100を用いて3Dパラメータの調整作業を行いつつ、3Dパラメータの調整結果を反映した3D映像を確認用3Dディスプレイ14においてリアルタイムに確認することが可能である。したがって、3Dパラメータの調整をする際に、調整作業を一旦終了したうえでレンダリングを実行して3D映像を確認し、その確認結果に基づいて再度3Dパラメータの調整を行うなどの煩雑な調整作業が不要となる。これにより、2D3D変換に必要な3Dパラメータの調整作業の効率を高めることが可能となる。
【0041】
また、本実施形態では、調整用画面100に深度映像が表示されるため、現在の深度値によって3D映像がどのように表示されているかを把握することが容易である。さらに、本実施形態では、深度映像と3D映像とが同期した状態で表示されるため、現在の深度値と3D映像との関係をより容易に把握することができる。
【0042】
また、本実施形態では、調整用画面100において、深度映像を一時停止可能であるため、深度映像の確認が容易である。そして、一時停止により表示されている深度画像に対する3Dパラメータを調整可能であるため、3Dパラメータの調整作業を行いやすい。
【0043】
また、本実施形態では、深度画像内にエッジが存在する場合に、隣接する画素間における深度値の差が小さくなるようにエッジ補正を行うことが可能である。これにより、3D映像の見え方をより自然なものとすることが可能である。
【0044】
また、本実施形態では、レイヤーごとに3Dパラメータを調整可能であるため、3Dパラメータの調整作業が容易となり、作業効率を高めることが可能となる。
【0045】
また、本実施形態では、2D映像と3Dパラメータとに基づいて、3視点以上の多視点の3D映像を生成することが可能である。これにより、2D映像をもとに、より自然な3D映像を生成することができる。
【0046】
また、本実施形態では、確認用3Dディスプレイ14から3D表示に関連する仕様を示すディスプレイ情報を取得して、該ディスプレイ情報を用いて3D映像を生成することが可能である。そのため、3Dディスプレイに応じた適切な3D映像が生成され、その表示結果を3Dディスプレイ上で確認しながら、3Dパラメータの調整を行うことが可能となる。
【0047】
なお、本実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更/改良され得るととともに、本発明にはその等価物も含まれる。
【符号の説明】
【0048】
10 画像処理装置
12 作業用2Dディスプレイ
14 確認用3Dディスプレイ
20 2D映像記憶部
22 マスク作成部
24 レイヤーデータ作成部
26 レイヤーデータ記憶部
28 深度映像生成部
30 3Dパラメータ記憶部
32 3Dパラメータ調整部
34 深度映像表示部
36 3D映像生成部
38 3D映像記憶部
40 3D映像表示部
42 3D映像出力部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
二次元映像を記憶する二次元映像記憶部と、前記二次元映像を三次元映像に変換するために必要となる三次元パラメータを記憶する三次元パラメータ記憶部とを有するコンピュータに、
前記三次元パラメータを調整するための調整用画面を第1のディスプレイに表示し、前記三次元パラメータを調整するためのユーザ入力に応じて、前記三次元パラメータ記憶部に記憶されている前記三次元パラメータを更新する三次元パラメータ調整機能と、
前記二次元映像記憶部に記憶されている二次元映像と、前記三次元パラメータ記憶部に記憶されている三次元パラメータとに基づいて、三次元映像を生成する三次元映像生成機能と、
前記調整用画面を用いて前記三次元パラメータを調整可能な状態において、前記第1のディスプレイとは別の、三次元表示に対応した第2のディスプレイに、前記生成された三次元映像を表示する三次元映像表示機能と、
を実現させるための画像処理プログラム。
【請求項2】
請求項1に記載の画像処理プログラムであって、
前記三次元パラメータには、前記二次元映像における深度値を表す深度映像が含まれ、
前記三次元パラメータ調整機能では、前記調整用画面に前記深度映像を表示可能である、
画像処理プログラム。
【請求項3】
請求項2に記載の画像処理プログラムであって、
前記深度映像及び前記三次元映像は、同期した状態で、前記第1及び第2のディスプレイに表示される、
画像処理プログラム。
【請求項4】
請求項2または3に記載の画像処理プログラムであって、
前記第1のディスプレイに表示されている前記深度映像を、該深度映像に含まれる任意の深度画像が表示されている状態で一時停止可能である、
画像処理プログラム。
【請求項5】
請求項4に記載の画像処理プログラムであって、
前記三次元パラメータ調整機能では、前記任意の深度画像に対する前記三次元パラメータを調整可能である、
画像処理プログラム。
【請求項6】
請求項2〜5の何れか一項に記載のプログラムであって、
前記三次元パラメータ調整機能では、前記深度映像に含まれる深度画像内の隣接する画素間における深度値の差が所定値以上である場合に、該深度値の差が小さくなるように該隣接する画素の深度値を調整可能である、
画像処理プログラム。
【請求項7】
請求項1〜6の何れか一項に記載のプログラムであって、
前記コンピュータは、前記二次元映像におけるレイヤーを表すレイヤーデータを記憶するレイヤーデータ記憶部をさらに有し、
前記三次元パラメータ調整機能では、前記レイヤーデータ記憶部に記憶されているレイヤーデータに基づいて、前記調整用画面で指定されるレイヤーに対する前記三次元パラメータを調整可能である、
画像処理プログラム。
【請求項8】
請求項1〜7の何れか一項に記載のプログラムであって、
前記三次元パラメータには、前記三次元映像を生成する際の視差量が含まれる、
画像処理プログラム。
【請求項9】
請求項1〜8の何れか一項に記載のプログラムであって、
前記三次元パラメータには、前記三次元映像を生成する際の輻輳位置が含まれる、
画像処理プログラム。
【請求項10】
請求項1〜9の何れか一項に記載のプログラムであって、
前記三次元映像生成機能では、前記二次元映像と、前記三次元パラメータとに基づいて、3視点以上の視点を有する前記三次元映像を生成可能である、
画像処理プログラム。
【請求項11】
請求項1〜10の何れか一項に記載のプログラムであって、
前記三次元映像生成機能では、前記第2のディスプレイにおける三次元表示に関連する仕様を示すディスプレイ情報を前記第2のディスプレイから取得し、前記二次元映像と、前記三次元パラメータと、前記ディスプレイ情報とに基づいて、前記三次元映像を生成可能である、
画像処理プログラム。
【請求項12】
二次元映像を記憶する二次元映像記憶部と、
前記二次元映像を三次元映像に変換するために必要となる三次元パラメータを記憶する三次元パラメータ記憶部と、
前記三次元パラメータを調整するための調整用画面を第1のディスプレイに表示し、前記三次元パラメータを調整するためのユーザ入力に応じて、前記三次元パラメータ記憶部に記憶されている前記三次元パラメータを更新する三次元パラメータ調整部と、
前記二次元映像記憶部に記憶されている二次元映像と、前記三次元パラメータ記憶部に記憶されている三次元パラメータとに基づいて、三次元映像を生成する三次元映像生成部と、
前記調整用画面を用いて前記三次元パラメータを調整可能な状態において、前記第1のディスプレイとは別の、三次元表示に対応した第2のディスプレイに、前記生成された三次元映像を表示する三次元映像表示部と、
を備える画像処理装置。
【請求項13】
二次元映像を記憶する二次元映像記憶部と、前記二次元映像を三次元映像に変換するために必要となる三次元パラメータを記憶する三次元パラメータ記憶部とを有するコンピュータが、
前記三次元パラメータを調整するための調整用画面を第1のディスプレイに表示し、前記三次元パラメータを調整するためのユーザ入力に応じて、前記三次元パラメータ記憶部に記憶されている前記三次元パラメータを更新し、
前記二次元映像記憶部に記憶されている二次元映像と、前記三次元パラメータ記憶部に記憶されている三次元パラメータとに基づいて三次元映像を生成し、
前記調整用画面を用いて前記三次元パラメータを調整可能な状態において、前記第1のディスプレイとは別の、三次元表示に対応した第2のディスプレイに、前記生成された三次元映像を表示する、
画像処理方法。

【図1】
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【図7】
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【図9】
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【図10】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−5376(P2013−5376A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−137211(P2011−137211)
【出願日】平成23年6月21日(2011.6.21)
【出願人】(501059958)株式会社オフィスサンサーラ (1)
【出願人】(511248847)株式会社フレディシステム (1)
【Fターム(参考)】