説明

画像処理回路、半導体装置、画像処理装置

【課題】画像解析結果と照度検知結果とに基づいたバックライト制御が可能な画像処理回路、半導体装置、並びに、画像処理装置を提供する。
【解決手段】画像処理IC20は、入力画像の輝度補正を行い出力画像を生成する輝度補正部21と、出力画像の輝度平均値を算出する輝度平均値算出部22と、入力画像の輝度平均値を算出する輝度平均値算出部23と、セレクタ24と、輝度平均値の差分を算出する差分算出部25と、輝度平均値または差分値に基づいてデューティ値を決定するデューティ値算出部26と、デューティ値の決定に用いられるテーブルを格納したレジスタ27と、入力PWM信号のデューティ値を算出するデューティ値算出部28と、デューティ値を示す複数の制御信号を入力し、両制御信号が示すデューティ値に基づいて出力PWM信号のデューティ値を決定する協調処理部29と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像処理回路、これを集積化して成る半導体装置、並びに、これを用いた画像処理装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、画像を表示する際におけるLCD(Liquid Crystal Display)のバックライト制御について、画像の階調を解析した結果や、照度センサで検知した照度に基づいてバックライト制御を行う制御方法が開示・提案されている(例えば特許文献1や特許文献2を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−294323号公報
【特許文献2】国際公開第2008/117784号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来のバックライト制御ICは、画像解析結果に基づいたバックライト制御か、或いは、照度センサの検知結果に基づいたバックライト制御の、いずれか一方しか行うことができなかった。
【0005】
一方、LCDを備えた画像処理装置には、上記のバックライト制御ICとは別に、画像処理ICが含まれている。画像処理ICは、入力画像データに輝度変換処理等を施して出力画像データを生成する。しかしながら、従来の画像処理ICは、あくまでLCDに出力画像データを供給するものであって、LCDのバックライト制御(特に、画像解析結果に応じたバックライト制御と照度センサの検知結果に基づいたバックライト制御との両立)を考慮したものではなかった。
【0006】
本発明は、本願の発明者により見出された上記の問題点に鑑み、画像データの解析処理に加えて画像解析結果に基づいたバックライト制御と照度検知結果に基づいたバックライト制御とを両立することが可能な画像処理回路、これを集積化して成る半導体装置、並びに、これを用いた画像処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明に係る画像処理回路は、入力画像データに画像処理を施して出力画像データを生成する画像処理部と、外部入力されるPWM(Pulse Width Modulation)信号のデューティ値を判別し、該デューティ値を示す第1制御信号を生成する第1デューティ制御部と、前記画像処理部の処理結果に基づいたデューティ値を決定し、該デューティ値を示す第2制御信号を生成する第2デューティ制御部と、前記第1制御信号と前記第2制御信号とに基づいて、出力するPWM信号のデューティ値を決定する協調処理部と、を有する構成(第1の構成)とされている。
【0008】
なお、上記第1の構成から成る画像処理回路は、前記協調処理部が、前記第1制御信号が示すデューティ値と前記第2制御信号が示すデューティ値とを乗算することにより、出力するPWM信号のデューティ値を決定する構成(第2の構成)にするとよい。
【0009】
また、上記第2の構成から成る画像処理回路は、第1デューティ制御部が、照度センサの照度検知結果に基づいて生成されたPWM信号を入力とし、該PWM信号のデューティ値を判別し、該デューティ値を示す前記第1制御信号を生成することを特徴とする構成(第3の構成)にするとよい。
【0010】
また、上記第3の構成から成る画像処理回路は、前記画像処理部が、前記入力画像データの輝度ヒストグラムに基づいて前記入力画像データから前記出力画像データを生成し、前記画像処理回路は、前記出力画像データの輝度平均値を算出する第1輝度平均値算出部をさらに有し、前記第2デューティ制御部は、前記輝度平均値に基づいたデューティ値を決定し、該デューティ値を示す前記第2制御信号を生成することを特徴とする構成(第4の構成)にするとよい。
【0011】
また、上記第4の構成から成る画像処理回路は、前記出力画像データの輝度平均値とデューティ値とを関連付けた第1テーブルを格納するレジスタをさらに有し、前記第2デューティ制御部は、デューティ値の決定に際して前記第1テーブルを参照することを特徴とする構成(第5の構成)にするとよい。
【0012】
また、上記第5の構成から成る画像処理回路は、前記画像処理回路が、前記入力画像データの輝度平均値を算出する第2輝度平均値算出部と、前記第1輝度平均値算出部により算出された輝度平均値と前記第2輝度平均値算出部により算出された輝度平均値との差分値を算出する差分算出部とをさらに有し、前記第2デューティ制御部は、前記差分値に基づいたデューティ値を決定し、該デューティ値を示す前記第2制御信号を生成することを特徴とする構成(第6の構成)にするとよい。
【0013】
また、上記第6の構成から成る画像処理回路は、前記差分値とデューティ値とを関連付けた第2テーブルを格納するレジスタをさらに有し、前記第2デューティ制御部は、デューティ値の決定に際して前記第2テーブルを参照する構成(第7の構成)としてもよい。
【0014】
また、本発明に係る半導体装置は、上記第1〜第7いずれかの構成から成る画像処理回路を集積化した構成(第8の構成)とされている。
【0015】
また、本発明に係る画像処理装置は、上記第8の構成から成る半導体装置と、前記半導体装置に前記入力画像データを供給する画像入力部と、を有する構成(第9の構成)とされている。
【0016】
また、上記第9の構成から成る画像処理装置は、前記第1テーブル及び前記第2テーブルの内容を書き換えるためのインタフェイス部をさらに有する構成(第10の構成)としてもよい。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、照度検知結果と画像解析結果とを協調した輝度制御を実施することが可能な画像処理回路及びこれを集積化して成る半導体装置、並びに、これを用いた画像処理装置を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明に係る画像処理装置の第1実施形態を示すブロック図
【図2】画像処理の全体的な流れを説明するためのタイムチャート
【図3】輝度変換係数の算出処理を説明するためのフローチャート
【図4】エリア分割の態様を説明するための模式図
【図5】仮想エリアが設定された状態を説明するための模式図
【図6】ローパスフィルタの態様を説明するための模式図
【図7】バイリニア演算について説明するための模式図
【図8】本発明に係る画像処理装置の第2実施形態を示すブロック図
【図9】第1変換テーブルを示す模式図
【図10】第2変換テーブルを示す模式図
【図11】PWM信号の波形を示す波形図
【発明を実施するための形態】
【0019】
<第1実施形態>
図1は、本発明に係る画像処理装置の第1実施形態を示すブロック図である。第1実施形態の画像処理装置1は、撮像部10と、輝度変換処理部11と、輝度変換係数算出部12と、輝度変換係数記憶部13と、出力部14を有する。
【0020】
撮像部10は、所定のレンズ群や撮像素子(例えば、CMOS[Complementary Metal-Oxide Semiconductor]センサやCCD[Charge Coupled Devices]センサ)等を備えており、被写体の光学像を結像させることで被写体の撮像処理(例えば30フレーム毎秒の動画撮像)を行う。なお、撮像部10で生成された入力画像データは、輝度変換処理部11及び輝度変換係数算出部12に逐次出力される。なお、入力画像データの生成手段は、撮像部10に限定されるものではなく、その他の画像入力部(メディア再生装置や放送受信装置など)を用いても構わない。
【0021】
輝度変換処理部11は、撮像部10からの入力画像データに輝度変換処理を施して出力画像データを生成する。この輝度変換処理は、入力画像データに含まれる各画素の輝度値を、輝度変換係数記憶部13に記憶されている輝度変換係数に応じて変換することにより行われる。なお、輝度変換処理部11で生成された出力画像データは、出力部14に逐次出力される。
【0022】
輝度変換係数算出部12は、撮像部10から入力されるフレーム毎の画像データ(入力画像)に基づいて、輝度変換処理に用いられる輝度変換係数を算出する。なお、輝度変換係数の内容及び輝度変換係数の算出方法については、後に改めて説明する。
【0023】
輝度変換係数記憶部13は、輝度変換係数算出部12によって算出された輝度変換係数を、少なくとも次のフレームに係る輝度変換処理が実行されるまで記憶する。なお、この記憶内容は、輝度変換処理部11における輝度変換処理において用いられることとなる。
【0024】
出力部14は、LCD[Liquid Crystal Display]等のディスプレイ(例えば、車載モニタ)を備えており、輝度変換処理部11によって輝度変換処理のなされた出力画像データを逐次表示する。
【0025】
上記構成から成る画像処理装置1は、撮像部で得られた入力画像データに所定の輝度変換処理を施して出力画像データを生成し、この出力画像データに応じた映像表示を行う。
【0026】
なお、上記構成要素のうち、輝度変換処理部11、輝度変換係数算出部12、及び、輝度変換係数記憶部13については、半導体装置に集積化するとよい。
【0027】
次に、画像処理装置1における画像処理の全体的な流れについて、図2を参照しながら説明する。
【0028】
図2は、画像処理装置1における画像処理の全体的な流れを説明するための図である。本図に示したように、第n番目のフレームに係る入力画像データが到来すると、輝度変換係数算出部12は、入力画像データに基づいて輝度変換係数の算出を行う。これにより、第n番目のフレームに基づいて定められる輝度変換係数が得られ、これが輝度変換係数記憶部13に一旦格納される。
【0029】
一方、輝度変換処理部11は、到来した第n番目のフレームに係る入力画像データに対して、既に輝度変換係数記憶部13に格納されている第(n−1)番目のフレームに基づいて定められた輝度変換係数を用いて輝度変換処理を施す。
【0030】
より具体的には、n番目のフレームにおける座標(i,j)の画素について、輝度変換処理前の輝度をIij(n)、輝度変換処理後の輝度をOij(n)とし、(n−1)番目のフレームに基づいて、座標(i,j)の画素に対して定められた輝度変換係数をTij(n−1)とすると、各フレームの各画素に係る輝度は、下記の(1)式に基づいて、変換処理される。そして、輝度変換処理部11にて輝度変換処理のなされた出力画像データは、出力部14を通じて出力される。
Oij(n)=Tij(n−1)×Iij(n) ・・・(1)
【0031】
このように、本実施形態の画像処理装置1は、第n番目のフレームに係る入力画像データに対しては、第(n−1)番目のフレームに基づいて定められる輝度変換係数を用いて輝度変換処理を行う構成とされている。そのため、第n番目の輝度変換係数の算出を待たずに、第n番目の輝度変換処理及び画像出力を実行することが可能となる。その結果、入力画像データに輝度変換処理を施した出力画像データを極力早い時期に出力することが可能となり、リアルタイムに近い画像出力が可能となる。
【0032】
なお、第n番目のフレームに係る入力画像データに対して、第(n−2)番目以前のフレームに基づいて定められた輝度変換係数を用いて輝度変換処理を行うことも可能ではあるが、あまり古いフレームに基づいた輝度変換係数を用いた場合、変換処理の精度が問題となることに注意を要する。この問題は、特に、入力画像データとして動きの大きい動画データを取り扱う場合に顕著となる。また、例えば、入力画像データとして静止画データを取り扱う場合などにおいては、第n番目のフレームに係る入力画像データに対して、第n番目のフレームに基づいて定められた輝度変換係数を用いて輝度変換処理を行うようにしても良い。
【0033】
次に、輝度変換係数の算出処理の内容について、図3のフローチャートを参照しながら説明する。
【0034】
図3は、画像処理装置1における輝度変換係数の算出処理を説明するためのフローチャートである。本フローチャートで例示する処理では、まず、1フレーム分の入力画像データに対してエリア分割を行う(ステップS11)。
【0035】
図4は、画像処理装置1におけるエリア分割の態様を説明するための図である。なお、本図の例では、1フレームが縦40×横64(=2560)の画素から構成されているものとし、1エリアは8×8画素分の大きさとする。従って、エリアの総数は、縦5エリア×横8エリア=40エリアとなる。また、各エリアについては、左上から順に、A0、A1、・・・、An、・・・、A39と称することにする。
【0036】
エリア分割が完了したら、次に、エリア別変換係数の算出を行う(図3のステップS12)。このエリア別変換係数は、エリア毎に決定されるものであり、エリア内の各画素に共通となる。なお、このエリア別変換係数の算出に際しては、フレーム全体の輝度ヒストグラムではなく、エリア毎の輝度ヒストグラムが算出された後、当該エリア毎の輝度ヒストグラムに基づいて変換係数が算出される。このようにして算出されたエリア別変換係数によれば、分割された各エリアにつき、入力画像データにおいて高頻度な輝度範囲であるほど、出力画像データにおいて広い輝度範囲が割り当てられることとなる。
【0037】
図3のステップS12では、画像領域内の全エリアについて、エリア別変換係数が算出される。すなわち、各々のエリア毎に、固有のエリア別変換係数が定まることとなる。そして、エリア別変換係数をそのまま輝度変換係数として採用し、入力画像データの輝度変換処理を実行するものとしても良い。これにより、画像全体に比べて輝度差の大きい箇所が部分的に存在していても、当該部分を含めた良好なコントラストを得ることができる。
【0038】
ただし、エリア別変換係数は、そのエリアの外、すなわち、他のエリアに係る輝度情報は基本的に考慮されない。そのため、エリア同士の境界部分では、輝度の差が目立ち(輝度の分布が高周波となり)、滑らかさの点において良好とはいえない画像が出力されるおそれがある。そこで、本実施形態では、各エリアについて算出されたエリア別変換係数に対し、フィルタ処理等を行うこととする。この処理の内容について具体的に説明する。
【0039】
まず、フィルタ処理等の実行に先立ち、画像領域の外部に上述したエリアと同規模の仮想エリアを設定する。
【0040】
図5は、仮想エリア(図中のA40〜A69)が設定された状態を説明するための図である。
【0041】
そして、これらの仮想エリアA40〜A69に対して、仮想のエリア別変換係数(以下では、仮想係数と呼ぶ)を設定する(図3のステップS13)。なお、この仮想係数は、後述する通り、画像領域の外縁付近のエリアに対しても、通常通りフィルタ処理を実行し得るようにするためのものであり、エリア別変換係数と同様の形式をとるものである。
【0042】
上記の仮想係数は、仮想エリアに隣り合う各エリア(画像領域の外縁に位置する各エリア)を基準として、当該仮想エリアと対称位置に存在するエリアのエリア別変換係数を参照して設定される。例えば、A41はA0に対してA8と対称であるから、A41の仮想係数は、A8のエリア別変換係数と同値とする。同様に、A42はA1に対してA9と対称であるから、A42の仮想係数は、A9のエリア別変換係数と同値とする。一方、四隅に位置するA40はA0に対してA9と対称であるから、A40の仮想係数は、A9のエリア別変換係数と同値とする。
【0043】
なお、仮想係数の設定方法は、上述のほか、例えば、画像領域の外縁(図5中の太線)に対して対称となるように設定しても良い。この場合、A41は画像領域の外縁に対してA0と対称であるから、A40の仮想係数は、A0のエリア別変換係数と同値とする。同様に、A42は画像領域の外縁に対してA1と対称であるから、A42の仮想係数は、A1のエリア別変換係数と同値とする。一方、四隅に位置するA40は画像領域の外縁に対してA0と対称であるから、A40の仮想係数は、A0のエリア別変換係数と同値とする。
【0044】
このように、各仮想エリアに対して仮想係数を設定したら、次に、画像領域内の各エリアにおけるエリア別変換係数について、画像空間的にローパスフィルタをかける処理(フィルタ処理)を実行する(図3のステップS14)。
【0045】
図6は、ローパスフィルタの態様を説明するための図である。
【0046】
これによれば、ある注目エリアについてフィルタを施す場合に、注目エリア周辺の所定範囲(この場合は上下左右の4エリア)に存在するエリアのエリア別変換係数が用いられることになる。ただし、この所定範囲の一部が画像領域からはみ出す場合、そのはみ出した部分については、その位置の仮想エリアに割り当てられた仮想係数をエリア別変換係数と仮定する。
【0047】
例えば、エリアA0におけるフィルタ処理後のエリア別変換係数a’(0)は、以下のようになる。なお、a(n)は、エリアAn(n=0,1,8,41,50)における当該フィルタ処理前のエリア別変換係数を示している。また、a(41)とa(50)は、それぞれ仮想エリアA41とA50における仮想係数である。
a´(0)=a(0)/2+{a(1)+a(8)+a(41)+a(50)}/8
【0048】
このようなフィルタ処理により、エリア同士の境界部分において輝度の差が目立っていた場合であっても、かかる輝度の差を軽減させることが可能となる。また、本実施形態では、ローパスフィルタとして図6に示すものを挙げたが、どの範囲までのエリアに係るエリア別変換係数を考慮するか、また、フィルタにおけるエリア毎の重み付けをどのようにするか等については、種々の態様とすることが可能である。
【0049】
上記したフィルタ処理がなされたエリア別変換係数をそのまま輝度変換係数として採用し、入力画像データの輝度変換処理を実行するようにしても良い。しかし、本実施形態では、さらに出力画像の滑らかさを得るため、画素毎に決定される(同一エリア内でも、各画素に共通とは限らない)画素別変換係数を算出し(図3のステップS15)、これを輝度変換係数として適用する(図3のステップS16)。
【0050】
ここで、この画素別変換係数の算出方法(バイリニア演算)について、図7を参照しながら説明する。
【0051】
図7は、バイリニア演算について説明するための図である。ある注目画素についての画素別変換係数を定めるにあたっては、当該画素の近傍に係る4個のエリアに着目する。例えば、図7における画素Pが注目画素であるときは、A0、A1、A8、及び、A9のエリアに着目することとなる。つまり、各エリアが一つの頂点を共有するとともに、各エリアの中心同士を結んでできる四辺形の内部に注目画素が位置する関係となるように、4個のエリアを選ぶこととする。
【0052】
そして、注目画素Pの画素別変換係数は、これら4個のエリアの各々におけるフィルタ処理後のエリア別変換係数{a´(0)、a´(1)、a´(8)、a´(9)}と、注目画素Pの位置と、当該4個のエリアの各々における中心位置と、に係るバイリニア演算により算出される。
【0053】
より具体的には、図7に示すように、横方向のエリア間距離をX、縦方向のエリア間距離をY、エリアA0の中心と注目画素Pとの横方向の距離をa、同じく縦方向の距離をbとした場合、注目画素Pの画素別変換係数p(P)は、次のように求められる。
p(P)={ a´(0)×(X−a)×(Y−b)
+a´(1)×a×(Y−b)
+a´(8)×(X−a)×b
+a´(9)×a×b } /(X×Y)
【0054】
なお、当該バイリニア演算においても、注目画素が画像領域の外縁付近にある場合は、着目する4個のエリアのうちの一部が画像領域からはみ出してしまうことが考えられる。このような場合でも、先述したフィルタ処理の場合と同様、仮想エリア及び仮想係数を設定しておくこと等により、通常のバイリニア演算が実行可能である。
【0055】
かかる方法によって、画像領域内の全ての画素について画素別変換係数を算出し、これを各々対応する画素に関する輝度変換係数とする。これにより、エリア別変換係数に基づいてエリア同士の境界部を含めて輝度の変化が滑らかとなるように、画素別変換係数が算出される。その結果、輝度変化の不連続な部分が生じることを極力回避することが可能となり、より美しい画像を出力することが容易となる。
【0056】
上記したように、本実施形態の画像処理装置1であれば、画像全体からみると出現頻度の低い輝度(或いは輝度範囲)に係る部分が存在しても、当該部分を含めて良好なコントラストを得ることが可能となる。
【0057】
<第2実施形態>
次に、本発明に係る画像処理回路の第2実施形態について詳細に説明する。図8は、本発明に係る画像処理回路の第2実施形態を示すブロック図である。
【0058】
画像処理IC20は、撮像部10で得られる入力画像の輝度ヒストグラムに基づいて輝度変換係数を算出し、入力画像を構成する各画素に対して、輝度変換係数に応じた輝度変換処理を施すことにより、所望の出力画像を生成する半導体装置である。図8に示すように、画像処理IC20は、撮像部10等から入力される入力画像信号であるDIに輝度変換処理を施し、出力画像信号であるDOを生成し、出力する。
【0059】
まず、画像処理IC20に外部接続される装置について説明する。照度センサ90は、周囲光の照度に応じた検出信号を生成し、これをCPU91に送出する。なお、照度センサ90は、画像処理装置1に入射される周囲光の照度を精度良く測定すべく、できる限り画像処理装置1の近傍に配設することが望ましい。また、照度センサ90の受光素子としては、フォトダイオードやフォトトランジスタを用いることができる。
【0060】
また画像処理IC20は、CPU91等から入力される入力PWM信号であるPWMIに対し、後述する協調処理を施し、出力PWM信号であるPWMOを生成し、バックライト30へ出力する。
【0061】
CPU91は、照度センサ90で得られる検出信号に基づいて、バックライト制御用のPWM信号を生成するためのデューティ値を決定する。そして決定したデューティ値を用いて、PWMIを生成し、画像処理IC20へ送出する。
【0062】
インタフェイス部92は、後述するレジスタ27に格納されている情報をユーザが書き換えるためのものである。より具体的には、操作ボタン、または制御信号の入力端子(共に不図示)等を含むように構成されている。
【0063】
画像処理IC20は、輝度補正部21と、輝度平均値算出部22と、輝度平均値算出部23と、セレクタ24と、差分算出部25と、デューティ値算出部26と、レジスタ27と、デューティ値算出部28と、協調処理部29と、を集積化して成る。
【0064】
輝度補正部21は、DIに輝度補正を施してDOを生成し、出力部14と、次に説明する輝度平均値算出部22とに出力する。なお輝度補正部21が実施する輝度補正処理の詳細は、第1実施形態の輝度変換処理部11、輝度変換係数算出部12、及び輝度変換係数13が実施する処理と同様であるため、ここでは説明を省略する。
【0065】
輝度平均値算出部22は、DOに含まれる輝度成分をモニタすることで、出力画像の輝度平均値を算出する。そして算出した輝度平均値を、セレクタ24を介して、デューティ値算出部26へ送出する。なお、上記した輝度平均値の算出は、例えばDOに含まれる輝度ヒストグラムを取得することにより行う。或いは、DOの各画素の輝度値を加算し、総画素数で除算することにより算出する方法でもよい。
【0066】
輝度平均値算出部23は、DIに含まれる輝度平均をモニタすることで、入力画像の輝度ヒストグラムを取得して輝度平均値を算出する。そして算出した輝度平均値を、差分算出部25へ送出する。なお、輝度平均値算出部23が実施する処理の詳細は輝度平均値算出部22と同様である。
【0067】
セレクタ24は、輝度平均値算出部22より入力される信号と、差分算出部25より入力される信号とのいずれか一方のみをデューティ値算出部26へ出力する。つまり、出力画像の輝度平均値の算出結果を示す信号と、輝度平均値の差分値を示す信号とのいずれか一方のみをデューティ値算出部26へ出力する。なお、いずれを出力するかの決定は、インタフェイス部92等を用いて受け付けたユーザ指定に基づいて行う。
【0068】
ユーザは、セレクタ24を操作することにより、例えば輝度平均値を用いてデューティ値を決定したい場合に、輝度平均値算出部22より入力される信号をデューティ値算出部26へ送出するよう切り換えることが可能である。また、輝度平均値差分を用いてデューティ値を決定したい場合に、差分算出部25より入力される信号をデューティ値算出部26へ送出するよう切り換えることが可能である。
【0069】
差分算出部25は、輝度平均値22で算出された輝度平均値と輝度平均値23で算出された輝度平均値との差分値を算出する。そして算出した差分値を示す信号を、セレクタ24を介して、デューティ値算出部26へ送出する。
【0070】
デューティ値算出部26は、輝度平均値22より入力される輝度平均値、または差分算出部25より入力される輝度平均値差分に基づいて、バックライト30の制御に用いられるPWM信号のデューティ値を算出する。そして算出したデューティ値を示す制御信号S2(第2制御信号)を、後述する協調処理部29へ出力する。
【0071】
より具体的には、デューティ値算出部26は、輝度平均値22より入力される輝度平均値をテーブル変換することで、PWM信号のデューティ値を決定する。変換に用いる第1テーブルは、レジスタ27に予め格納されている。
【0072】
またデューティ値算出部26は、差分算出部25より入力される輝度平均値差分をテーブル変換することで、PWM信号のデューティ値を決定する。変換に用いる第2テーブルは、レジスタ27に予め格納されている。
【0073】
なお、デューティ値算出部26が上記の二つの処理のいずれを行うかは、入力されるデータの種別に応じて決定するものとする。つまり、輝度平均値が入力された場合は第1テーブルを参照し、輝度平均値差分が入力された場合は第2テーブルを参照する。
【0074】
レジスタ27は、入力画像データの輝度平均値とデューティ値とを関連付けた第1テーブル(図9)と、差分算出部25により算出された差分値とデューティ値とを関連付けた第2テーブル(図10)とを格納する。デューティ値算出部26は、デューティ値の決定に際して第1テーブルまたは第2テーブルを参照する。
【0075】
図9は、デューティ値算出部26で用いられる第1テーブルの一例を示す図である。なお、図9の横軸は、輝度平均値算出部22により得られた輝度平均値を示しており、縦軸は、PWM信号のデューティ値を示している。
【0076】
図10は、デューティ値算出部26で用いられる第2テーブルの一例を示す図である。なお、図10の横軸は、差分値算出部25により得られた輝度平均値差分を示しており、縦軸は、PWM信号のデューティ値を示している。
【0077】
上記の変換テーブルを用いることで、輝度平均値または輝度平均値差分と、PWM信号のデューティ値との相関関係、延いては、PWM信号のハイレベル幅(H幅)を任意に設定することが可能となる。また、上記の変換テーブルは、インタフェイス部92を用いてユーザが任意に書き換えられる。
【0078】
デューティ値算出部28は、PWMIの波形を計測し、PWMIのデューティ値を算出する。そして算出したデューティ値を示す制御信号S1(第一制御信号)を、協調処理部29へ出力する。
【0079】
協調処理部29は、S1とS2とを入力し、両制御信号が示すデューティ値に基づいて、PWMOのデューティ値を決定する。そして決定したデューティ値によるPWMOを生成して、バックライト30へ送出する。
【0080】
より具体的には、協調処理部29は、上記の両制御信号が示すデューティ値を乗算することにより、PWMOのデューティ値を決定する。この算出処理の一例を、図11を用いて説明する。
【0081】
図11(a)はPWMIの波形を示したものであり、PWMIのデューティ値はS1に基づいて生成可能なPWM信号を模式的に表したものである。また図11(b)は、PWMOの波形を示したものである。また図11(c)は、S2に基づいて生成可能なPWM信号を模式的に表したものである。
【0082】
図11に示すように、PWM信号は、所定のサイクルでハイレベル期間(オン期間)とローレベル期間(オフ期間)を交互に繰り返すパルス信号である。このデューティ値を可変制御することで、バックライト30に流す駆動電流の平均値を調整することが可能となる。すなわち、PWM信号のデューティ値を大きくするほど、バックライト30は明るくなり、PWM信号のデューティ値を小さくするほど、バックライト30は暗くなる。
【0083】
協調処理部29は、S1が示すデューティ値をd(S1)、S2が示すデューティ値をd(S2)、PWMOのデューティ値をd(S3)とした場合、d(S3)を次のように求める。
d(S3)=d(S1)×d(S2)
【0084】
例えば本図左に示すように、S1のデューティ値が50%であり、S2のデューティ値が100%である場合、協調処理部29は下記のように演算を行う。
(50/100)×(100/100)=(50/100)
この結果、PWMOのデューティ値は50%となる。
【0085】
また例えば本図中央に示すように、S1のデューティ値が50%であり、S2のデューティ値が50%である場合、協調処理部29は下記のように演算を行う。
(50/100)×(50/100)=(25/100)
この結果、PWMOのデューティ値は25%となる。
【0086】
また例えば本図右に示すように、S1のデューティ値が50%であり、S2のデューティ値が25%である場合、協調処理部29は下記のように演算を行う。
(50/100)×(25/100)=(12.5/100)
この結果、PWMOのデューティ値は12.5%となる。
【0087】
以上のように、S1が示すデューティ値とS2が示すデューティ値とを乗算することにより、照度センサ90による検知結果と、輝度補正部21による輝度補正結果との両方を考慮したPWM信号を生成することが可能である。これにより、照度検知結果と画像解析結果とを協調した輝度制御を実施することが可能である。
<その他の変形例>
【0088】
なお、本発明の構成は、上記実施形態のほか、発明の主旨を逸脱しない範囲で種々の変更を加えることが可能である。すなわち、上記実施形態は、全ての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきであり、本発明の技術的範囲は、上記実施形態の説明ではなく、特許請求の範囲によって示されるものであり、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内に属する全ての変更が含まれると理解されるべきである。
【0089】
なお上記の実施形態では、フレーム単位での輝度制御を前提としており、従ってローカルディミングを行っていない。しかし、画素(もしくはエリア)単位の輝度制御を実施するローカルディミングにおいて、本発明の輝度制御を実施する形態でもよい。この際、変換テーブルの内容も、ローカルディミングの制御内容に併せて適宜変更することが可能である。
【0090】
また上記の実施形態では、輝度補正部21による輝度補正結果に基づいてS2を生成しているが、これ以外の画像処理結果、例えば色調変換処理等の処理結果に基づいてS2を生成する形態でもよい。
【0091】
また本発明の画像処理装置としては、例えばテレビジョン装置、ハードディスクレコーダ、ビデオカメラ等の装置のほか、インターネットを介して提供される映像コンテンツの再生機能を備えたパーソナルコンピュータ等を用いることができる。
【産業上の利用可能性】
【0092】
本発明は、入力画像データに輝度変換処理を施して出力画像データを生成する画像処理回路、これを集積化して成る半導体装置、並びに、これを用いた画像処理装置において、出力画像の視認性を高める上で有用な技術である。
【符号の説明】
【0093】
1 画像処理装置
10 撮像部
11 輝度変換処理部
12 輝度変換係数算出部
13 輝度変換係数記憶部
14 出力部
20 画像処理IC(半導体装置)
21 輝度補正部(画像処理部)
22 輝度平均値算出部(第1輝度平均値算出部)
23 輝度平均値算出部(第2輝度平均値算出部)
24 セレクタ
25 差分算出部
26 デューティ値算出部(第2デューティ制御部)
27 レジスタ
28 デューティ値算出部(第1デューティ制御部)
29 協調処理部
30 バックライト
90 照度センサ
91 CPU
92 インタフェイス部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力画像データに画像処理を施して出力画像データを生成する画像処理部と、
外部入力されるPWM(Pulse Width Modulation)信号のデューティ値を判別し、該デューティ値を示す第1制御信号を生成する第1デューティ制御部と、
前記画像処理部の処理結果に基づいたデューティ値を決定し、該デューティ値を示す第2制御信号を生成する第2デューティ制御部と、
前記第1制御信号と前記第2制御信号とに基づいて、出力するPWM信号のデューティ値を決定する協調処理部とを有することを特徴とする画像処理回路。
【請求項2】
前記協調処理部は、前記第1制御信号が示すデューティ値と前記第2制御信号が示すデューティ値とを乗算することにより、出力するPWM信号のデューティ値を決定することを特徴とする請求項1に記載の画像処理回路。
【請求項3】
第1デューティ制御部は、照度センサの照度検知結果に基づいて生成されたPWM信号を入力とし、該PWM信号のデューティ値を判別し、該デューティ値を示す前記第1制御信号を生成することを特徴とする請求項2に記載の画像処理回路。
【請求項4】
前記画像処理部は、前記入力画像データの輝度ヒストグラムに基づいて前記入力画像データから前記出力画像データを生成し、
前記画像処理回路は、前記出力画像データの輝度平均値を算出する第1輝度平均値算出部をさらに有し、
前記第2デューティ制御部は、前記輝度平均値に基づいたデューティ値を決定し、該デューティ値を示す前記第2制御信号を生成することを特徴とする請求項3に記載の画像処理回路。
【請求項5】
前記出力画像データの輝度平均値とデューティ値とを関連付けた第1テーブルを格納するレジスタをさらに有し、
前記第2デューティ制御部は、デューティ値の決定に際して前記第1テーブルを参照することを特徴とする請求項4に記載の画像処理回路。
【請求項6】
前記画像処理回路は、前記入力画像データの輝度平均値を算出する第2輝度平均値算出部と、前記第1輝度平均値算出部により算出された輝度平均値と前記第2輝度平均値算出部により算出された輝度平均値との差分値を算出する差分算出部とをさらに有し、
前記第2デューティ制御部は、前記差分値に基づいたデューティ値を決定し、該デューティ値を示す前記第2制御信号を生成することを特徴とする請求項5に記載の画像処理回路。
【請求項7】
前記差分値とデューティ値とを関連付けた第2テーブルを格納するレジスタをさらに有し、
前記第2デューティ制御部は、デューティ値の決定に際して前記第2テーブルを参照することを特徴とする請求項6に記載の画像処理回路。
【請求項8】
請求項1〜請求項7のいずれか一項に記載の画像処理回路を集積化したことを特徴とする半導体装置。
【請求項9】
請求項8に記載の半導体装置と、前記半導体装置に前記入力画像データを供給する画像入力部と、を有することを特徴とする画像処理装置。
【請求項10】
前記第1テーブル及び前記第2テーブルの内容を書き換えるためのインタフェイス部をさらに有することを特徴とする請求項9に記載の画像処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−220717(P2012−220717A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−86249(P2011−86249)
【出願日】平成23年4月8日(2011.4.8)
【出願人】(000116024)ローム株式会社 (3,539)
【Fターム(参考)】