説明

画像処理方法、画像処理装置、画像形成装置、プログラムおよび記録媒体

【課題】原稿の読取画像データに生じた、原稿には存在しない色筋を容易に除去できるようにする。
【解決手段】画像処理装置12は、原稿自動送り装置により搬送される原稿の画像を読み取って得られた読取画像データを処理する。画像処理装置12は、読取画像データがモノクロ原稿のものであることを示す入力に基づき、ドロップアウトカラー処理部31または色補正部32により、読取画像データに含まれる有彩色の画素を検出して有彩色の画素値を無彩色の画素値に変換する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、原稿の読取画像データを処理する画像処理方法、画像処理装置、画像形成装置、プログラムおよび記録媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
複写機や複合機では、スキャナ機能により原稿画像を読み取り、これにより取得した画像データに基づいて印刷を行ったり、取得した画像データを他の装置に送信したりしている。また、原稿画像の読み取りには、通常、原稿自動送り装置(ADF:Auto Document Feeder)が使用される。ここで、原稿自動送り装置を使用して原稿画像を読み取った場合には、原稿読み取りの光路上のガラス面に埃や紙粉が付着していると、スキャン画像に色筋が発生し、画質が劣化してしまうという問題が生じる。
【0003】
スキャン画像に色筋が発生する仕組みについて、図8に示す一般的なスキャナを用いて説明する。図8は、スキャナによるスキャン画像に色筋が発生する原理の説明図である。図8に示すように、スキャナにおいて、スキャン動作が開始されると、光源201(たとえばLED)から発せられた光は、原稿202にて反射される。この反射光は、ガラス板203を通って第1ミラー204、第2ミラー205および第3ミラー206にて反射され、RGBそれぞれのラインCCD207にて読み取られる。なお、図8では、理解を容易にするために、原稿202とガラス板203とを離して記載しているものの、実際には両者は密接している。
【0004】
このとき、ガラス板203上に埃や紙粉208が付着していると、原稿202からの反射光が埃や紙粉208によって遮断され、ラインCCD207まで到達しない。なお、大きな埃や紙粉は、スキャン前にユーザが気づいて除去される場合が多いものの、小さな埃や紙粉208については、ユーザが気づかず、そのままスキャンが行われてしてしまう。
【0005】
図8に示すように、小さな埃や紙粉208はRGBそれぞれのラインCCDに入る光のうちの一つを遮ることが多い。例えば、B信号のラインCCDに入る光が遮られた場合には、Bの補色であるイエローの色筋が発生する。なお、ラインセンサ207では、R・G・Bのそれぞれにおいて原稿の読み取り位置が異なり、これを補正するために遅延補正が行われる。
【0006】
上記のようにしてスキャン画像に発生した不要な色筋を除去する技術としては、例えば特許文献1に記載のものが知られている。その技術では、スキャン画像を画面上に表示し、ユーザが手動にて筋指定のカーソルを操作して除去したい筋に重畳させ、カーソルにより指定された筋を除去するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2010−21939号公報(2010年1月28日公開)
【特許文献2】特開平4−282968号公報(1992年10月8日公開)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1に記載の技術では、ユーザがスキャン画像を見ながら作業を行う必要がある。また、除去対象となる筋は多くの場合、1画素分から3画素分程度の小さい幅であるため、スキャン画像を大きく拡大しなければ画面上で見つけることができず、非常に手間がかかり、ユーザに大きな負担を強いるものとなっている。
【0009】
したがって、本発明は、原稿を読み取る光路上の例えばガラス部分に付着した汚れや紙粉が原因となって、読取画像データに生じた、原稿には存在しない色筋を容易に除去することができる画像処理方法、画像処理装置、画像形成装置、プログラムおよび記録媒体の提供を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を解決するために、本発明の画像処理装置は、原稿自動送り装置により搬送される原稿の画像を読み取って得られた読取画像データを処理する画像処理装置において、
前記読取画像データがモノクロ原稿のものであることを示す入力に基づき、画素変換処理として、前記読取画像データに含まれる有彩色の画素を検出し、前記有彩色の画素値(濃度値)を無彩色の画素値(濃度値)に変換する画素値変換部を備えていることを特徴としている。
【0011】
また、本発明の画像処理方法は、原稿自動送り装置により搬送される原稿の画像を読み取って得られた読取画像データを処理する画像処理方法において、前記読取画像データがモノクロ原稿のものであることを示す入力に基づき、画素変換処理として、前記読取画像データに含まれる有彩色の画素を検出し、前記有彩色の画素値を無彩色の画素値に変換する画素値変換工程を備えていることを特徴としている。
【0012】
上記の構成によれば、画像処理装置は、原稿自動送り装置により搬送される原稿の画像を読み取って得られた読取画像データを処理する。この場合に、画素値変換部は(画素値変換工程では)、読取画像データがモノクロ原稿のものであることを示す入力に基づき、画素変換処理として、読取画像データに含まれる有彩色の画素を検出し、有彩色の画素値を無彩色の画素値に変換する。
【0013】
色筋は、下地領域よりも画像領域において目立ちやすく、有彩色(カラー)の画素値を無彩色(モノクロ)の画素値に変換することにより、目立たなくなる。これにより、モノクロ原稿の読取画像データに生じた、原稿には存在しない色筋を、ユーザに色筋除去のための負担を強いることなく、容易に除去することができる。なお、読取画像データがモノクロ原稿のものであることを示す入力は、例えばユーザからの指定の入力、あるいはカラー/モノクロ原稿判定部からの入力として得ることができる。
【0014】
上記の画像処理装置において、前記画素値変換部は、前記有彩色の画素の画素値を輝度値に置き換える構成としてもよい。
【0015】
上記の構成によれば、画素値変換部は、有彩色の画素の画素値を輝度値に置き換えるので、モノクロ原稿の読取画像データに生じた、原稿には存在しない色筋を適切に除去することができる。
【0016】
上記の画像処理装置において、前記画素値変換部は、前記有彩色の画素の画素値を前記有彩色の画素の周辺における無彩色の画素の画素値に置き換える構成としてもよい。
【0017】
上記の構成によれば、画素値変換部は、有彩色の画素の画素値を有彩色の画素の周辺における無彩色の画素の画素値に置き換えるので、モノクロ原稿の読取画像データに生じた、原稿には存在しない色筋を適切に除去することができる。
【0018】
上記の画像処理装置は、第1の判定動作として、前記読取画像データがカラー原稿のものであるかモノクロ原稿のものであるかを判定するカラー/モノクロ原稿判定部を備え、前記画素値変換部は、前記カラー/モノクロ原稿判定部による前記第1の判定動作の判定結果を入力し、前記カラー/モノクロ原稿判定部により、前記読取画像データがモノクロ原稿のものと判定された場合に、前記画素変換処理を行う構成としてもよい。
【0019】
上記の構成によれば、カラー/モノクロ原稿判定部は、第1の判定動作として、読取画像データがカラー原稿のものであるかモノクロ原稿のものであるかを判定し、画素値変換部は、カラー/モノクロ原稿判定部により、読取画像データがモノクロ原稿のものと判定された場合に、画素変換処理を行う。
【0020】
これにより、読取画像データがモノクロ原稿のものである場合に、画素値変換部への読取画像データがモノクロ原稿のものであることを示す入力は、ユーザがその旨の入力操作を行うことなく、カラー/モノクロ原稿判定部から自動的に行うことができる。また、例えば複数のモノクロ原稿に1枚のカラー原稿が混じっている状態にて原稿の読み取りが行われるような場合にも、適切に対応することができる。これにより、ユーザの負担をさらに軽減し、装置の利便性をさらに向上することができる。
【0021】
上記の画像処理装置において、前記カラー/モノクロ原稿判定部は、前記第1の判定動作に加えて、第2の判定動作として、前記読取画像データの画素毎にカラー画素かモノクロ画素かを判定するとともに、第3の判定動作として、前記第2の判定動作によりカラー画素と判定された画素数が前記読取画像データに色筋が発生していると判断できる所定の範囲内であるか否かを判定し、前記画素値変換部は、前記カラー/モノクロ原稿判定部における前記第1の判定動作により、前記読取画像データがモノクロ原稿のものと判定され、かつ前記第3の判定動作により、カラー画素数が所定の範囲内であると判定された場合に、前記画素値変換処理を行う構成としてもよい。
【0022】
上記の構成によれば、画素値変換部は、カラー/モノクロ原稿判定部における第1の判定動作により読取画像データがモノクロ原稿のものと判定され、かつ第3の判定動作によりカラー画素数が所定の範囲内であると判定された場合、すなわち読取画像データに色筋が発生していると判定された場合に、色筋を除去するために画素値変換処理を行う。
【0023】
これにより、モノクロ原稿の読取画像データに色筋が発生していない状態において、画素値変換部により、色筋を除去するための画素値変換処理が無駄に行われる事態を防止することができる。したがって、効率よく色筋除去処理を行うことができる。
【0024】
上記の画像処理装置において、前記画素値変換部は、前記読取画像データから、有彩色あるいは指定された色を消去するドロップアウトカラー処理部である構成としてもよい。
【0025】
上記の構成によれば、画素値変換部として、読取画像データから有彩色あるいは指定された色を消去するドロップアウトカラー処理部を利用して、読取画像データに生じた色筋の除去処理を行うことができる。
【0026】
前記画素値変換部は、前記読取画像データの色空間を読取画像データの出力先である画像出力装置の色空間に変換する色補正部である構成としてもよい。
【0027】
上記の構成によれば、画素値変換部として、読取画像データの色空間を読取画像データの出力先である画像出力装置の色空間に変換する色補正部を利用して、読取画像データに生じた色筋の除去処理を行うことができる。また、有彩色あるいは指定された色を消去するドロップアウトカラー処理部を備えていない構成であっても、別途、専用の筋除去処理部を設けることなく、色補正部を用いて色筋の除去処理を行うことができる。
【0028】
本発明の画像形成装置は、前記のいずれかの画像処理装置を備えている構成である。
【0029】
上記の構成によれば、モノクロ原稿の読取画像データに生じた、原稿には存在しない色筋を、ユーザに色筋除去のための負担を強いることなく、容易に除去することがで、色筋が除去された読取画像データによる良好な印刷などの画像形成を行うことができる。
【発明の効果】
【0030】
本発明の構成によれば、モノクロ原稿の読取画像データに生じた、原稿には存在しない色筋を、ユーザに色筋除去のための負担を強いることなく、容易に除去することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の実施の形態の画像処理装置を備えた画像形成装置の概略構成を示すブロック図である。
【図2】図2(a)は、図1に示した出力階調補正部が文字領域のガンマ補正に使用するガンマ曲線を示すグラフであり、図2(b)は、図1に示した出力階調補正部が文字以外の領域のガンマ補正に使用するガンマ曲線を示すグラフである。
【図3】図1に示した画像処理装置において、原稿からの読取画像データに発生している、原稿には存在しない色筋を除去する第1の構成を示すブロック図である。
【図4】図1に示した画像処理装置において、原稿からの読取画像データに発生している、原稿には存在しない色筋を除去する第2の構成を示すブロック図である。
【図5】図1に示したドロップアウトカラー処理部の構成を具体的に示すブロック図である。
【図6】図1に示したドロップアウトカラー処理部によるドロップアウトカラー処理画像の生成方法を示すフローチャートである。
【図7】図1に示した画像処理装置における色筋除去処理を行う場合の動作を示すフローチャートである。
【図8】スキャナによるスキャン画像に色筋が発生する原理の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
本発明の実施の形態を図面に基づいて以下に説明する。図1は、本発明の実施の形態の画像処理装置を備えた画像形成装置の概略構成を示すブロック図である。
【0033】
本実施形態の画像形成装置は、コピーモード、プリントモード、ファクシミリ送信モード、ファクシミリ受信モードおよびイメージ送信モードによる動作が可能なデジタルカラー複合機である。画像形成装置では、こられモードの中からいずれかのモードが例えばユーザにより選択されると、選択されたモードを実行するようになっている。
【0034】
コピーモード(複写モード)は、画像データを読み込み、すなわち原稿を読み取って画像データを生成し、その画像データの画像を用紙に印刷するモードである。プリントモードは、画像形成装置に接続されている端末装置から送られてくる画像データの画像を用紙に印刷するモードである。
【0035】
ファクシミリ送信モードは、(1)原稿を読み取って得られる画像データを電話回線によって外部装置に送信する通常のファクシミリモード、および(2)前記画像データをメールに添付してインターネットによって送信するインターネットファクシミリモードを含む。ファクシミリ受信モードは、外部装置から画像データをファクシミリにて受信し、受信した画像データの画像を用紙に印刷するモードである。
【0036】
イメージ送信モードは、(1)原稿を読み取って生成した画像データを電子メールに添付して指定されたアドレスへ送信するモード(scan to e-mailモード)、(2)原稿を読み取って生成した画像データをユーザにより指定されたフォルダに送信するモード(scan to ftpモード)、および(3)原稿を読み取って生成した画像データを画像形成装置に装着されたUSBメモリなどに送信するモード(scan to usbモード)を含む。
【0037】
なお、本実施形態においては、画像処理の動作上から、ファクシミリ送信モードとイメージ送信モードとを上記のように分類している。
【0038】
また、コピーモードあるいはプリントモードが選択されている場合、ユーザは、モノクロ画像を出力するモノクロモード、またはフルカラーの画像を出力するフルカラーモードのいずれかを選択できるようになっている。
【0039】
また、本実施の形態では、原稿カラー自動判別モードを設定することが可能である。このモードが設定されている場合、画像形成装置は、原稿がカラー原稿かモノクロ原稿であるかを判別するカラー/モノクロ原稿判定処理を行う。さらに、原稿がカラー原稿と判定された場合には上記のフルカラーモードにて出力処理を行い、原稿がモノクロ原稿と判定された場合には上記のモノクロモードにて出力処理を行うようになっている。
【0040】
画像形成装置は、図1に示すように、画像入力装置11、画像処理装置12、画像出力装置13、受信装置14、送信装置15、記憶装置16、制御部17および入力装置18を有している。
【0041】
画像入力装置11は、原稿自動送り装置(ADF:Auto Document Feeder)としての機能を有し、コピーモード、ファクシミリ送信モードおよびイメージ送信モードにおいて、原稿を読み取り、読取画像データを生成する。すなわち、画像入力装置11は、CCD(Charge Coupled Device)を備えたスキャナ部を有し、ADF機能によって原稿を読み取り位置に搬送し、原稿から反射してきた光を、RGBに色分解された電気信号(アナログの画像信号)に変換し、この電気信号を画像処理装置12に入力するものである。
【0042】
なお、画像入力装置11は、上記のフルカラーモードおよびモノクロモードのいずれのモードが選択されている場合であっても、フルカラーにて原稿画像の読み取りを行う。また、画像入力装置11は、画像処理装置12において前述した原稿カラー自動判別処理が行われる場合であってもフルカラーにて原稿画像の読み取りを行う。
【0043】
画像処理装置12は、画像データ(画像信号)に対して画像処理を施す集積回路であり、例えばASIC(Application specific integrated circuit)にて構成されている。この画像処理装置12は、図1に示すように、A/D(アナログ/デジタル)変換部21、シェーディング補正部22、入力処理部23、カラー/モノクロ原稿判定部24、領域分離処理部25、圧縮部26、領域分離信号圧縮部27、復号部28、領域分離信号復号部29、画質調整部30、ドロップアウトカラー処理部(画素値変換部)31、色補正部(画素値変換部)32、黒生成/下色除去部33、空間フィルタ部34、変倍部35、出力階調補正部36および中間調生成部37の各ブロックを有している。画像処理装置12に含まれる各ブロックの処理内容については後に詳述する。
【0044】
なお、画像処理装置12は、コピーモード、ファクシミリ送信モードおよびイメージ送信モードにおいて、画像入力装置11から送られてきた画像データに対して画像処理を行う。また、プリントモードにおいて、画像処理装置12と接続された端末装置(図示せず)から送信されてきた画像データに対して画像処理を行いう。また、ファクシミリ受信モードにおいて、外部装置(図示せず)から受信した画像データに対して画像処理を行う。
【0045】
さらに、画像処理装置12は、コピーモード、プリントモードおよびファクシミリ受信モードにおいて、画像処理を施した画像データを画像出力装置13に送信する。また、ファクシミリ送信モードにおいて、画像処理を施した画像データを送信装置15に送信する。また、イメージ送信モードのscan to e-mailモードにおいて、画像処理を施した画像データをメール処理部(図示せず)に送信する。また、scan to ftpモードにおいて、画像処理を施した画像データを所定のフォルダに送信する。また、scan to usbモードにおいて、画像処理を施した画像データを所定のUSBメモリに送信する。
【0046】
画像出力装置13は、画像処理装置12から送られてきた画像データの画像を紙等のシート上に印刷する(画像形成する)。したがって、画像出力装置13は、例えば、電子写真方式またはインクジェット方式を用いたカラープリンタである。なお、本実施の形態において、「印刷」とは、プリントモードでの印刷、コピーモードでの印刷あるいはファクシミリ受信モードでの印刷のいずれかを意味する。画像出力装置13は、画像データの画像を表示する表示装置であってもよい。
【0047】
受信装置14は、電話回線またはインターネットに接続しており、ファクシミリ通信によって外部装置から画像データを受信する。送信装置15は、電話回線またはインターネットに接続しており、画像入力装置11から入力された画像データをファクシミリ通信によって外部装置へ送信する。記憶装置16は、画像処理装置12にて扱われる画像データを一旦保存するものであり、例えばハードディスク装置である。
【0048】
制御部17は、CPU(Central Processing Unit)あるいはDSP(Digital Signal Processor)等のプロセッサを含むコンピュータであり、画像形成装置が備える各種ハードウェアを統括的に制御する。また、制御部17は、画像形成装置が備える各ハードウェア間のデータ転送を制御する機能も有する。
【0049】
入力装置18は、表示部として例えばタッチパネル式の液晶パネルを備え、画像処理装置12すなわち画像形成装置に対してユーザから各種入力を行うためのものである。通常は、操作パネルとして備えられている。
【0050】
画像処理装置12において、A/D(アナログ・デジタル)変換部21は、画像入力装置11から送られてきたカラー画像信号(RGBアナログ信号)をデジタルの画像データ(RGBデジタル信号)に変換する。シェーディング補正部22は、A/D変換部21から送られてきた画像データに対して、画像入力装置11の照明系、結像系および撮像系にて生じる各種の歪みを取り除く処理を施す。入力処理部23は、シェーディング補正部22から送られてくるRGBの画像データのそれぞれに対してγ補正処理などの階調変換処理を施す。
【0051】
カラー/モノクロ原稿判定部24は、入力処理部23から出力されたRGB信号を用いて、読取画像データがカラーの原稿のものであるか、モノクロ(白黒)の原稿のものであるかを判定する。なお、カラー/モノクロ原稿判定部24の代わりに、原稿が文字原稿、印刷写真原稿、印画紙写真原稿、文字と印刷写真とが混在する文字印刷写真原稿、あるいは文字と印画紙写真とが混在する文字印画紙写真原稿であるか等の原稿種別の判別を行う原稿種別判別部を設けてもよい。この場合、原稿種別判別部は、上記原稿種別とともに、読み取られた原稿がカラー原稿であるかモノクロ(白黒)原稿であるのかを判別する、自動カラー判別処理を行うようにしてもよい。さらに、原稿種別判別部は、無地の原稿であるか否かの判定を行うブランク原稿判別処理を行うようにしてもよい。
【0052】
領域分離処理部25は、カラー/モノクロ原稿判定部24から送られてくるRGBの画像データに基づき、入力画像データ(読取画像データ)の画素毎に、当該画素がどのような画像領域に分類されるのかを判別し、その判別結果を示す領域分離信号を生成する。ここで、領域分離処理部25において判別される画像領域は、黒文字領域、色文字領域および網点領域等である。なお、領域分離処理25は、画素毎に画像領域の判定を行う形態ではなく、複数の画素からなるブロック毎に画像領域の判定を行う形態であってもよい。
【0053】
圧縮部26は、カラー/モノクロ原稿判定部24から送られてくる読取画像データ(RGB信号)を符号化する処理を行う。なお、上記符号化は、例えばJPEG(Joint Photographic Experts Group)方式に基づいて行われる。
【0054】
領域分離信号圧縮部27は、領域分離処理25により画素毎に生成された領域分離信号に対して圧縮処理を施す。なお、領域分離信号圧縮部27における圧縮処理は、例えば、可逆圧縮方法であるMMR(Modified Modified Reed)方式あるいはMR(Modified Reed)方式に基づいて行われる。
【0055】
制御部17は、圧縮部26から出力された符号化コード(符号化された画像データ)と領域分離信号圧縮部27から出力された領域分離信号コード(圧縮された領域分離信号)とを一旦記憶装置16に保存し、ファイリングデータとして管理する。そして、制御部17は、コピー出力動作が指示された場合、記憶装置16から上記の符号化コードおよび当該符号化コードに対応する領域分離信号コードを読み出し、復号部28および領域分離信号復号部29にそれぞれ引き渡す。
【0056】
なお、制御部17は、上記符号化コードの保存アドレスまたはデータ名と、領域分離信号コードの保存アドレスとを対応付けて記憶装置16に設けられた管理テーブルに記入する。つまり、制御部17は、当該管理テーブルを用いて、符号化コードおよび領域分離信号コードの読み出しまたは書き込みの制御を行っている。
【0057】
復号部28は、上記符号化コードに対して復号化処理を施すことによって、上記符号化コードをRGBの画像データに伸張する。また、領域分離信号復号部29は、上記領域分離信号コードに対して復号化処理を施す。復号化した領域分離信号は、黒生成/下色除去部33、空間フィルタ部34および中間調生成部37に引き渡される。そして、黒生成/下色除去部33、空間フィルタ部34および中間調生成部37においては、画像領域の種類に応じて画像処理内容の切替えが行われる。
【0058】
画質調整部30は、復号部28から送られてくるRGBの画像データについて、下地の検出を行って下地除去補正を行う。さらに、画質調整部30は、ユーザによって例えば操作パネルである入力装置18から入力される設定情報に基づいて、RGBのバランス(カラー調整、赤み青みといった全体のカラー調整)、明るさおよび鮮やかさの調整を行う。
【0059】
ドロップアウトカラー処理部31は、入力装置18においてユーザによりドロップアウトカラーモードが指定されている場合に、有彩色全て、あるいはユーザにより指定された色について、原稿中からカラーの枠線などを消去する。ドロップアウトカラーモードが指定されている場合には、また、後段の色補正部32にて、読取画像データが一般に普及している表示装置の表示特性に適合したR’G’B’の画像データ(例えば、sRGBデータ)に変換される。さらに、空間フィルタ部34にて領域分離信号を基にデジタルフィルタによる空間フィルタ処理(強調処理,平滑化処理)が行われる。
【0060】
出力階調補正部37は、例えば、読取画像データの文字領域に対して、図2(b)に示すガンマ曲線を用いた補正を行う。また、読取画像データの文字以外の領域に対して、図2(a)に示すガンマ曲線を用いた補正を行う。なお、図2(a)は、出力階調補正部37が文字領域のガンマ補正に使用するガンマ曲線を示すグラフであり、図2(b)は、出力階調補正部37が文字以外の領域のガンマ補正に使用するガンマ曲線を示すグラフである。
【0061】
黒生成/下色除去部33および中間調生成部37は、ドロップアウトカラーモードが指定されている場合に、入力される読取画像データに対して処理を行わず、その画像データをそのまま後段のブロックにスルーする。
【0062】
中間調生成部37から出力された画像データについては、図示しない処理部において、文字認識処理がなされ、認識結果が透明テキストとして画像データに埋め込まれ所定のファイルフォーマット(例えば、PDF)に変換される。そして、ユーザが電子メール送信を選択している場合、図示しないメール処理部(ジョブ装置)にて電子メールに添付され、電子メールがネットワークを介して相手先に送信されることになる。ユーザがファイリングモードを選択している場合は、上記透明テキストが埋め込まれたPDFファイルが記憶部に格納される。ドロップアウトカラーモードが指定されていない場合は、RGBの画像データをそのまま出力する。
【0063】
ドロップアウトカラー処理部31を備えない構成では、画質調整部30から出力された画像データは色補正部32に入力される。
【0064】
色補正部32は、フルカラーモードが選択されている場合、ドロップアウトカラー処理部31から出力されるRGBの画像データをCMYの画像データに変換する色補正処理を行い、また当該画像データに対して、印刷装置での印刷画像や表示装置での表示画像の色再現性を高める処理を施す。なお、上記の色補正処理は、入力値(RGB)と出力値(CMY)とを対応付けたルックアップテーブル(以下、単にLUTと称する)を作成し、作成したLUTから出力値をルックアップすることによって行われる。また、ドロップアウトカラー処理部31を備えない構成では、この色補正部32において、筋除去処理が行われる。
【0065】
黒生成/下色除去部33は、フルカラーモードが選択されている場合、色補正部32から出力されたCMYの画像データから黒(K)の画像データを生成する黒生成を行う。また、元のCMYの画像データから黒(K)の画像データを差し引いて新たなCMYの画像データを生成する。これにより、フルカラーモードが選択されている場合、図1に示すように、CMYの画像データは、黒生成/下色除去部33によってCMYKの4色の画像データに変換される。
【0066】
空間フィルタ部34は、黒生成/下色除去部33から出力されるCMYKまたはCMYの画像データに対して、領域分離信号(領域識別信号)に基づいて、デジタルフィルタによる空間フィルタ処理(強調処理、平滑化処理等)を行う。すなわち、空間フィルタ部34では、領域分離信号に基づいて、画像領域毎に異なる画像処理が実行される。
【0067】
変倍部35は、操作パネルとしての入力装置18を介してユーザから入力される変倍コマンド(印刷画像の倍率を示した情報)に基づいて、画像の拡大や縮小処理を行う。
【0068】
出力階調補正部36は、変倍部35から出力された画像データに対して、用紙等のシートに出力するための出力γ補正処理を行う。中間調生成部37は、誤差拡散法やディザ法により、画像出力装置13において画像を印刷するために必要な階調再現処理(中間調生成処理)を行う。
【0069】
中間調生成部37から出力されるCMYKまたはCMYの画像データは、画像出力装置13に入力される。画像出力装置13は、当該画像データの画像を紙等のシート上に印刷する。
【0070】
次に、本実施の形態の画像処理装置12において、原稿からの読取画像データに発生している、原稿には存在しない色筋を除去する構成について説明する。図3は、原稿からの読取画像データに発生している、原稿には存在しない色筋を除去する第1の構成を示すブロック図である。図4は、原稿からの読取画像データに発生している、原稿には存在しない色筋を除去する第2の構成を示すブロック図である。なお、図3および図4では、構成を簡素化して示すため、カラー/モノクロ原稿判定部24とドロップアウトカラー処理部31および色補正部32との間に存在する処理部を省略している。
【0071】
図3に示す、色筋を除去する第1の構成は、カラー/モノクロ原稿判定部24、ドロップアウトカラー処理部31および出力カラーモード指定部38を備えている。この第1の構成では、読取画像データ(入力画像データ)に対して、ユーザにより指定された出力カラーモード、またはカラー/モノクロ原稿判定部24にて判定された原稿のカラー/モノクロ判定結果に基づき、ドロップアウトカラー処理部31において色筋除去処理を行う。したがって、ドロップアウトカラー処理部31は、第1の色筋除去部として機能する。
【0072】
図4に示す、色筋を除去する第2の構成は、カラー/モノクロ原稿判定部24、色補正部32および出力カラーモード指定部38を備えている。この第2の構成では、読取画像データ(入力画像データ)に対して、ユーザにより指定された出力カラーモード、またはカラー/モノクロ原稿判定部24にて判定された原稿のカラー/モノクロ判定結果に基づき、色補正部32において色筋除去処理を行う。したがって、色補正部32は、第2の色筋除去部として機能する。なお、第2の構成は、色筋除去部としてドロップアウトカラー処理部31に代えて色補正部32を使用するものであり、画像処理装置12がドロップアウトカラー処理部31を備えていない場合の色筋除去にも対応できるようになっている。
【0073】
出力カラーモード指定部38は、画像処理装置12から、原稿の読取画像データをカラーで出力するか、モノクロで出力するかをユーザが指定するための入力部である。本実施の形態において、出力カラーモード指定部38は入力装置18によって構成される。なお、出力カラーモード指定部38は、さらに具体的には、カラー、モノクロそれぞれのスタートキー(ボタン)であってもよい。
【0074】
カラー/モノクロ原稿判定部24は、原稿の読取画像データに基づいて、原稿がカラー原稿であるかモノクロ(白黒)原稿であるかを判定する。ただし、出力カラーモード指定部38において、ユーザによりカラーで出力するか、モノクロで出力するかが指定されている場合には、上記判定動作を行わず、出力カラーモード指定部38において指定されたカラーモードに従う。
【0075】
次に、カラー/モノクロ原稿判定部24における自動カラー判別処理の具体例について説明する。
【0076】
自動カラー判別処理については、例えば、特開平4−282968(特許文献2)に記載されている方法を適用することができる。この方法では、次の手順にて原稿がカラー原稿であるかモノクロ(白黒)原稿であるかを判定する。
【0077】
まず、原稿の読取画像データ(入力画像データ:1頁分)の画素毎に、カラー画素であるかモノクロ画素であるかを判別する。次に、与えられる画素順にて所定数以上の連続するカラー画素の存在を検知すると、その連続カラー画素分をカラーブロックと認識する。次に、1ライン中に所定数以上のカラーブロックが存在していれば、そのラインをカラーラインとして計数する。次に、読取画像データ中にカラーラインが所定数存在していればカラー画像と判断し、そうでない場合はモノクロ画像と判断する。読取画像データ中にどの程度のカラー画素が含まれていればカラー原稿と判定するかについては、カラーブロックであるか否かを判定する基準、カラー原稿であるか否かを判定するカラーライン数の基準を適宜設定すればよい。
【0078】
カラー/モノクロ原稿判定部24での画素毎にカラー画素であるかモノクロ画素であるかの上記の判定には、
(1)RGB信号の最大値と最小値を閾値THaと比較する方法
max(R,G,B)−min(R,G,B)≧THa(例えば、20)
(2)RGB信号の各色成分の差分の絶対値を求めて閾値とを比較する方法
など、公知の方法を使用することができる。
【0079】
さらに、カラー/モノクロ原稿判定部24は、読取画像データが示す原稿がカラー原稿であるかモノクロ原稿であるかの上記判定に加えて、読取画像データ全体(1頁分)に含まれるカラー画素数に基づき、読取画像データにおける色筋発生の有無を判定するようにしてもよい。色筋発生の有無の判定は、例えば次のようにして行ってもよい。
【0080】
すなわち、色筋が生じている場合、カラー画素として計数される数は、カラー原稿かモノクロ原稿の判定を行う閾値付近であることが多い。そこで、例えば、モノクロ原稿と判定され、かつカラー画素数が、原稿の読取画像データ全体(1頁分)において、例えば、5000以上8000未満である場合には、色筋が発生していると判定するようにしてもよい。
【0081】
あるいは、カラー/モノクロ原稿判定部24は、原稿の読取画像データ全体(1頁分)に対するカラー画素数の判定のみにより、色筋発生の有無を判定するようにしてもよい。具体的には、RGB信号の最大値と最小値を閾値THa(例えば、20)と比較して、画素が有彩であるか無彩であるかを判定する。そして、有彩と判定された画素を読取画像データ全体(1頁分)で計数し、例えば、有彩画素数(カラー画素数)が5000以上8000未満である場合に、色筋が発生していると判定するようにしてもよい。なお、上記カラー画素の値は、色筋が精度良く検出できる値を実験に基づいて設定すればよい。
【0082】
また、カラー/モノクロ原稿判定部24での判定方法は、上記の方法に限定されるものではなく、原稿のカラー、モノクロを精度良く判定できるものであれば、どのような方法を用いてもよい。
【0083】
次に、第1の色筋除去部としてのドロップアウトカラー処理部31、および第2の色筋除去部としての色補正部32について説明する。
【0084】
ドロップアウトカラー処理部31でのドロップアウトカラー処理は、OCR(Optical Character Recognition:文字認識)の精度を高めるための一機能であり、原稿の読取画像データ中から、カラーの枠線など、認識精度に影響を与える情報を消去するものである。本実施の形態の画像処理装置12では、この機能を利用し、読み込まれた画像に含まれる不要な色筋を除去する。
【0085】
図5は、ドロップアウトカラー処理部31の構成を具体的に示すブロック図である。図5に示すように、ドロップアウトカラー処理部31は、輝度彩度算出部41、有彩無彩判定部42および画素値変更部43を備えている。
【0086】
輝度彩度算出部41は、読取画像データ(入力画像データ)に対して輝度と彩度を計算する。有彩無彩判定部42は、輝度彩度算出部41にて算出された彩度に基づき、画素毎に有彩か無彩かを判定する。画素値変更部43は、輝度彩度算出部41により有彩と判定された画素について、有彩色の画素値の変更処理を行う。これにより、有彩色の画素値が変更された画像データが作成される。
【0087】
次に、ドロップアウトカラー処理部31によるドロップアウトカラー処理画像の生成方法(色筋除去方法)について、詳細に説明する。図6は、ドロップアウトカラー処理部31によるドロップアウトカラー処理画像の生成方法を示すフローチャートである。
【0088】
まず、輝度彩度算出部41は、読取画像データ(入力画像データ:RGBデータ)に対して、下記のように、輝度(Lum)と彩度(Chroma)を計算する(S301)。
【0089】
Lum = Coefficient_R×In_R+Coefficient_G×In_G+Coefficient_B×In_B
Chroma = Max(In_R, In_G, In_B)−Min(In_R, In_G, In_B)
ただし、In_R, In_G, In_Bは入力画像データのR値、G値、B値(画素値)である。また、Coefficient_R、Coefficient_G、Coefficient_B は、予め設定される係数であり、例えば、
Coefficient_R = 0.3、 Coefficient_G = 0.6、 Coefficient_B = 0.1
のような値を用いればよい。
【0090】
次に、有彩無彩判定部42は、S301にて算出された彩度情報を用いて、画素毎に有彩か無彩かを判定する(S302)。なお、この判定において、有彩と判定するのは、彩度値が一定値以上(例えば、10以上)の場合とし、無彩と判定するのは上記以外(例えば、10未満)の場合とする。
【0091】
次に、画素値変更部43は、S302において有彩と判定された画素について、S301にて算出された輝度、彩度を用いて画素値変更処理を行う(S303)。
【0092】
この画素値変更処理では、例えば、有彩の画素を輝度値に応じた無彩色に置き換える。この場合、RGB各プレーンの置き換え後の画素値をそれぞれ Out_R、Out_G、Out_Bとすると、これら画素値は、例えば、
Out_R = Out_G =Out_B = Lum
のような値となる。
【0093】
なお、ユーザがドロップアウトカラー処理部31での筋除去処理(筋除去モード)を選択した場合には、予めユーザにより定められた有彩色については、画素値の変更を行わないようにしてもよい。これは、例えば、読取画像データに含まれる印鑑の部分を残すようにする場合である。
【0094】
上記のように画素値を変更しない有彩色の定め方については、ユーザにより画素値を変更しないものと指定された画素値に、ある程度の幅を持たせた値とするのが好ましい。例えば、ユーザが指定した画素値が(R,G,B)=(20,50,100)である場合、RGBそれぞれの値に、±5の幅を持たせた、(15≦R≦25)かつ、(45≦G≦55)かつ、(95≦B≦105)とするのが好ましい。
【0095】
次に、色補正部32による色筋除去方法について、詳細に説明する。色補正部32は、入力値と出力値とを対応付けたLUTを用いて、目的に応じた色変換を行う。例えば、画像出力装置13にて印刷を行う場合には、入力値(RGB)と出力値(CMY)とを対応付けたLUTを使用する。また、ファイリング、あるいは送信(e-mail送信、ファクシミリ送信)を行う場合には、入力値(RGB)と出力値(R’G’B’)とを対応付けたLUTを使用する。
【0096】
色補正部32は、原稿の読取画像データに含まれる不要な色筋を除去するためにLUTを使用する。例えば、以下の3つの式のいずれかの条件を満たす入力値(RGB)、
|R−G|≧10、|G−B|≧10、|B−R|≧10
について、無彩色の出力値(カラーの画素値を輝度値に変換した値)を対応させたLUTを用いる。
【0097】
なお、色補正部32では、上記のように、カラーの画素値を輝度値に変換している。しかしながら、カラー/モノクロ原稿判定部24の後段に補正画素値算出部を設け、読取画像データに筋が発生している場合に、筋の画素値を補正画素値算出部にて求めたと画素値に置き換えるようにしてもよい。具体的には、カラー/モノクロ原稿判定部24において、読取画像データに筋が発生していると判定された場合に、補正画素値算出部により、筋であるカラー画素の周辺の画素の画素値、例えば筋であるカラー画素から2〜3画素離れた位置の画素値を求め、ドロップアウトカラー処理部31、あるいは色補正部32にて、筋のカラー画素値を補正画素値算出部にて求めた画素値に変換するようにしてもよい。
【0098】
次に、色筋除去処理を行う場合の画像処理装置12の動作について以下に説明する。画像処理装置12では、下記の(1)かつ(2)の場合に、色筋除去処理を行う。色筋の除去は、ドロップアウトカラー処理部31を備えている構成では、ドロップアウトカラー処理部31にて行う。一方、ドロップアウトカラー処理部31を備えていない構成では、色補正部32にて行う。
【0099】
(1)ADF機能による走行原稿読み取りモードにて原稿の読み取りが行われるとき
画像入力装置11において、走行原稿読み取りモードにて原稿の読み取りが行われるか否かは、次のようにして判定することができる。すなわち、例えば画像入力装置11の原稿セットトレイに原稿がセットされた状態(原稿セット検出センサで原稿が検知された状態)にて、入力装置18(操作パネル)のコピーボタンが押されたときは、走行読取モードにて原稿の読み取りが行われると判定する。この判定は、制御部17において行われる。
【0100】
(2)カラー/モノクロ原稿判定部24により原稿がモノクロ原稿と判定されたとき、あるいは、ユーザにより入力装置18において筋除去モードが指定されたとき
上記の構成において、色筋除去処理を行う場合の画像処理装置12の動作を図7のフローチャートに基づいて説明する。図7は、色筋除去処理を行う場合の画像処理装置12の動作を示すフローチャートである。
【0101】
まず、画像入力装置11のADF機能による走行原稿読み取りモードにて原稿の読み取りが行われる場合において、処理開始時にフラグFをF=0にリセットする。次に、入力装置18(操作パネル)においてユーザにより筋除去モードが指定された場合には、フラグFをF=1とし(S11)、S14の処理に進む。一方、ユーザにより筋除去モードが指定されなければ、フラグFをF=0としたまま、S14の処理に進む。
【0102】
次に、入力装置18においてユーザにより原稿カラー自動判別モードが指定されると(S14)、画像入力装置11から入力された読取画像データ(入力画像データ)に対してカラー/モノクロ原稿判定処理を行う(S15)。なお、画像処理装置12では、入力装置18へのユーザの入力操作により、カラーモードとして、フルカラーモード、モノクロモードおよび原稿カラー自動判別モード(自動モード)の選択が可能である。
【0103】
S15のカラー/モノクロ原稿判定処理において、原稿がモノクロ原稿であると判定されると(S16)、フラグFがF=1であるかどうかを判定し(S18)、フラグFがF=1であれば、ドロップアウトカラー処理部31または色補正部32により、色筋除去処理を行う(S19)。
【0104】
一方、S18において、フラグFがF=1でなければ(F=0であれば)、色筋除去処理を行うことなく、処理を終了する。また、S16において、原稿がモノクロ原稿でなければ、同様に、色筋除去処理を行うことなく、処理を終了する。
【0105】
また、S14において、ユーザにより原稿カラー自動判別モードが指定されず、モノクロモードが指定(モノクロ出力指定)されると(S17)、S18に進み、フラグFがF=1であれば、色筋除去処理を行う(S19)。一方、S18において、フラグFがF=1でなければ(F=0であれば)、色筋除去処理を行うことなく、処理を終了する。
【0106】
また、S17においてモノクロモードが指定(モノクロ出力指定)されなければ、色筋除去処理を行うことなく、処理を終了する。
【0107】
なお、上記の動作では、ユーザにより原稿カラー自動判別モードが指定されて(S14)、カラー/モノクロ原稿判定処理を行い(S15)、この処理において原稿がモノクロ原稿と判定された場合(S16)に、あるいはユーザによりモノクロモードが指定(モノクロ出力指定)された場合(S17)に、フラグFがF=1であるか否か(ユーザにより筋除去モードが指定されているか否か)を判定している(S17)。そして、フラグFがF=1である場合(ユーザにより筋除去モードが指定されている場合)に、S19において色筋除去処理を行っている。しかしながら、上記の動作において、カラー/モノクロ原稿判定処理において原稿がモノクロ原稿と判定された場合(S16)、あるいはユーザによりモノクロモードが指定(モノクロ出力指定)された場合(S17)には、S18においてフラグFがF=1であるか否か(筋除去モードが指定されているか否か)を判定せず、無条件にS19において色筋除去処理を行うようにしてもよい。
【0108】
また、S17において、ユーザによりカラーモードとしてモノクロモードが指定(モノクロ出力指定)された場合であっても、S18に進む代わりにS15に進み、S15においてカラー/モノクロ原稿判別処理を行うようにしてもよい。このような動作では、ユーザが誤ってカラーモードを設定した場合、あるいは複数の原稿(カラー原稿)の中にモノクロ原稿が混じっている場合であっても、読取画像データに筋が発生している場合に、その筋を除去することができる。
【0109】
画像処理装置12の各ブロックは、ハードウェアロジックによって構成してもよいし、次のようにCPUを用いてソフトウェアによって実現してもよい。
【0110】
すなわち、画像処理装置12は、各機能を実現する制御プログラムの命令を実行するCPU(central processing unit)、上記プログラムを格納したROM(read only memory)、上記プログラムを展開するRAM(random access memory)、上記プログラムおよび各種データを格納するメモリ等の記憶装置(記録媒体)などを備えている。そして、本発明の目的は、上述した機能を実現するソフトウェアである画像処理装置12の制御プログラムのプログラムコード(実行形式プログラム、中間コードプログラム、ソースプログラム)をコンピュータで読み取り可能に記録した記録媒体を、上記画像処理装置12に供給し、そのコンピュータ(またはCPUやMPU)が記録媒体に記録されているプログラムコードを読み出し実行することによっても、達成可能である。
【0111】
上記記録媒体としては、例えば、磁気テープやカセットテープ等のテープ系、フロッピー(登録商標)ディスク/ハードディスク等の磁気ディスクやCD−ROM/MO/MD/DVD/CD−R等の光ディスクを含むディスク系、ICカード(メモリカードを含む)/光カード等のカード系、あるいはマスクROM/EPROM/EEPROM/フラッシュROM等の半導体メモリ系などを用いることができる。
【0112】
また、画像処理装置12を通信ネットワークと接続可能に構成し、上記プログラムコードを通信ネットワークを介して供給してもよい。この通信ネットワークとしては、特に限定されず、例えば、インターネット、イントラネット、エキストラネット、LAN、ISDN、VAN、CATV通信網、仮想専用網(virtual private network)、電話回線網、移動体通信網、衛星通信網等が利用可能である。また、通信ネットワークを構成する伝送媒体としては、特に限定されず、例えば、IEEE1394、USB、電力線搬送、ケーブルTV回線、電話線、ADSL回線等の有線でも、IrDAやリモコンのような赤外線、Bluetooth(登録商標)、802.11無線、HDR、携帯電話網、衛星回線、地上波デジタル網等の無線でも利用可能である。なお、本発明は、上記プログラムコードが電子的な伝送で具現化された、搬送波に埋め込まれたコンピュータデータ信号の形態でも実現され得る。
【0113】
本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、実施形態に開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0114】
本発明は、画像読取装置、デジタル複写機およびデジタル複合機などに利用することができる。
【符号の説明】
【0115】
11 画像入力装置
12 画像処理装置
13 画像出力装置
17 制御部
18 入力装置
24 カラー/モノクロ原稿判定部
31 ドロップアウトカラー処理部(画素値変換部)
32 色補正部(色補正部)
38 出力カラーモード指定部
41 輝度彩度算出部
42 有彩無彩判定部
43 画素値変更部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
原稿自動送り装置により搬送される原稿の画像を読み取って得られた読取画像データを処理する画像処理装置において、
前記読取画像データがモノクロ原稿のものであることを示す入力に基づき、画素変換処理として、前記読取画像データに含まれる有彩色の画素を検出し、前記有彩色の画素値を無彩色の画素値に変換する画素値変換部を備えていることを特徴とする画像処理装置。
【請求項2】
前記画素値変換部は、前記有彩色の画素の画素値を輝度値に置き換えることを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項3】
前記画素値変換部は、前記有彩色の画素の画素値を前記有彩色の画素の周辺における無彩色の画素の画素値に置き換えることを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項4】
第1の判定動作として、前記読取画像データがカラー原稿のものであるかモノクロ原稿のものであるかを判定するカラー/モノクロ原稿判定部を備え、
前記画素値変換部は、前記カラー/モノクロ原稿判定部による前記第1の判定動作の判定結果を入力し、前記カラー/モノクロ原稿判定部により、前記読取画像データがモノクロ原稿のものと判定された場合に、前記画素変換処理を行うことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の画像処理装置。
【請求項5】
前記カラー/モノクロ原稿判定部は、前記第1の判定動作に加えて、第2の判定動作として、前記読取画像データの画素毎にカラー画素かモノクロ画素かを判定するとともに、第3の判定動作として、前記第2の判定動作によりカラー画素と判定された画素数が前記読取画像データに色筋が発生していると判断できる所定の範囲内であるか否かを判定し、
前記画素値変換部は、前記カラー/モノクロ原稿判定部における前記第1の判定動作により、前記読取画像データがモノクロ原稿のものと判定され、かつ前記第3の判定動作により、カラー画素数が所定の範囲内であると判定された場合に、前記画素値変換処理を行うことを特徴とする請求項4に記載の画像処理装置。
【請求項6】
前記画素値変換部は、前記読取画像データから、有彩色あるいは指定された色を消去するドロップアウトカラー処理部であることを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項7】
前記画素値変換部は、前記読取画像データの色空間を読取画像データの出力先である画像出力装置の色空間に変換する色補正部であることを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項8】
請求項1から7の何れか1項に記載の画像処理装置を備えていることを特徴とする画像形成装置。
【請求項9】
原稿自動送り装置により搬送される原稿の画像を読み取って得られた読取画像データを処理する画像処理方法において、
前記読取画像データがモノクロ原稿のものであることを示す入力に基づき、画素変換処理として、前記読取画像データに含まれる有彩色の画素を検出し、前記有彩色の画素値を無彩色の画素値に変換する画素値変換工程を備えていることを特徴とする画像処理方法。
【請求項10】
請求項1から7のいずれか1項に記載の画像処理装置の前記の各部としてコンピュータを機能させるためのプログラム。
【請求項11】
請求項10に記載のプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−21457(P2013−21457A)
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−152198(P2011−152198)
【出願日】平成23年7月8日(2011.7.8)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】