説明

画像処理方法および画像処理装置並びにそれを備えた画像形成装置、画像処理プログラム、記録媒体

【課題】 人の視覚特性に基づき階調再現がより滑らかな誤差拡散を行う。
【解決手段】 画像処理装置における階調再現処理部209において誤差算出部305を備えている。上記誤差算出部305にはレチネックス計算部A502、レチネックス計算部B503、差分絶対値計算部504、判定部505、拡散誤差計算部506を備えている。これにより、レチネックス計算部A502、レチネックス計算部B503でレチネックス値Rx・Rx’を計算した後、両値の差分絶対値を差分絶対値計算部504において算出し、判定部505において閾値との比較等をして適正な総誤差を求め拡散誤差を算出することで、より人の視覚特性に一致した滑らかな階調再現が可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、入力画像データに誤差拡散法により中間調処理を施す画像処理方法および画像処理装置並びにそれを備えた画像形成装置、画像処理プログラム、コンピュータ読み取り可能な記録媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
多値出力の出力装置を用いて中間調を含む階調画像を擬似的に形成するためには、階調再現性を考慮しつつ階調画像を多値画像に変換する階調再現処理を行う必要がある。このような多値化方法として、組織的ディザ法をはじめとして種々の方法が従来から用いられているが、その中でも誤差拡散法は、高画質の画像が得られる手法として広く知られている。
【0003】
誤差拡散法は、或る注目画素に関して、注目画素の濃度を所定の閾値と比較して量子化値を求める量子化を行い、量子化値に対して量子化前の濃度の差分を誤差として求め、求めた誤差を、注目画素の周辺に位置する量子化前の画素の濃度に拡散することにより階調数を削減し、かつ画像全体としての濃度階調を維持するものである。
【0004】
誤差拡散法は、2値化した画像に再現時においてモアレ模様が出にくく、ディザ法などと比較して画質が優れているという長所を有している(例えば、非特許文献1)。
【非特許文献1】角谷 繁明、”誤差拡散法における閾値操作手法”、電子写真学会誌、1998年、第37巻、第2号、p.186−192
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の構成では、誤差拡散法で用いられているCMYKの各値は測色値であるため、人の視覚特性と必ずしも線形関係を維持しておらず、また、人が画像を見る場合、注目している画素からの反射光だけではなく、その周辺に存在する画素の反射光の影響をうけるという空間的対比効果が考慮されていないため、人の視覚特性に一致する滑らかな階調再現が困難である。
【0006】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、人の視覚特性に基づいて、階調再現がより滑らかな誤差拡散を行うことができる画像処理方法および画像処理装置並びにそれを備えた画像形成装置、画像処理プログラム、コンピュータ読み取り可能な記録媒体を実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、本発明に係る画像処理装置は、入力画像データに誤差拡散処理を施して出力画像データとする階調再現処理部を備える画像処理装置において、上記階調再現処理部は、上記入力画像データ内にある所定の注目画素の注目画素画像データと、上記注目画素の周辺に存在する周辺画素の周辺画素画像データとを用いて、人の視覚特性における空間的対比効果に基づいて上記周辺画素画像データを修正するための拡散誤差を算出する誤差算出部を備えていることを特徴とする。
【0008】
上記の構成によれば、本発明の画像処理装置は、階調再現処理部において、空間的対比効果に基づいて周辺画素に拡散させる拡散誤差を算出する。この空間的対比効果とは、注目画素の階調が周辺画素の階調に対して差が大きい場合に、注目画素がより鮮明に見える効果がある。このように、空間的対比効果を考慮することで、従来よりも人の視覚特性に一致した滑らかな階調再現の誤差拡散を実現することができる。
【0009】
さらに、本発明に係る画像処理装置は、上記誤差算出部が、上記入力画像データに上記注目画素及び周辺画素の各拡散誤差の総和である蓄積誤差を加算した蓄積誤差画像データに対して、予め定められる評価関数を用いて第1評価値を求める第1計算部と、上記蓄積誤差画像データと上記蓄積誤差画像データを量子化処理した量子化処理画像データとに対して、予め定められている拡散係数及び上記周辺画素の各拡散誤差の総和とを用いて、周辺画素の各拡散誤差の総和を拡散後、上記注目画素画像データを求める誤差拡散部と、誤差拡散部で求められた各拡散誤差の総和を拡散後の上記注目画素画像データに対して、予め定められる評価関数を用いて第2評価値を求める第2計算部とを備えていることが好ましい。
【0010】
ここで、上記拡散誤差とは各画素における2値化処理によって生ずる誤差のことである。また、上記予め定められる評価関数とは、人の視覚特性を考慮したレチネックス理論に基づく関数(例えば、周辺分布関数としてガウシアン係数データを使った関数)のことである。また、上記予め定められている拡散係数とは、上記周辺画素に誤差を拡散させるための係数である。
【0011】
上記の構成によれば、さらに、上記第1計算部と第2計算部において第1評価値と第2評価値を求める計算をすることで、注目画素の値だけでなく周辺画素も含めた空間的対比効果を考慮することができる。つまり、上記第1計算部では、量子化前の空間的対比効果を考慮した注目画素における評価値を第1評価値として算出し、上記第2計算部では、量子化を施し一旦周辺画素へ誤差を拡散した後の空間的対比効果を考慮した注目画素における評価値を第2評価値として算出する。そして、これらの第1評価値と第2評価値が一致するよう量子化後の周辺画素へ拡散するための拡散誤差の総和を決定することで、人の視覚特性に一致した滑らかな階調再現を実現することができる。
【0012】
さらに、本発明に係る画像処理装置は、上記誤差算出部が、上記周辺画素画像データを修正するための拡散誤差の総和を変更する調整部を備えていることが好ましい。
【0013】
上記の構成によれば、上記第1評価値と第2評価値を比較し、第1評価値と第2評価値の差が所定の範囲内になるように、量子化後の周辺画素へ拡散するための拡散誤差の総和を変更することにより上記2つの評価値をほぼ等しい値に調整する。これにより、さらに人の視覚特性に一致したより滑らかな階調再現を実現することができる。
【0014】
さらに、本発明に係る画像処理装置は、上記誤差算出部が、蓄積誤差を加算した画像データ内の注目画素における第1のレチネックス値および各拡散誤差の総和を拡散した後の画像データ内の注目画素における第2のレチネックス値を算出し、両者の差分の絶対値を閾値と比較して、各拡散誤差の総和の最適値を求めることが好ましい。
【0015】
これにより、さらに、人の視覚特性を考慮した階調再現処理(人の視覚特性を考慮した量子化と周辺画素へ総誤差の拡散)を行うことができる。なお、第1のレチネックス値とは、蓄積誤差を加算した画像データ内の注目画素における第1評価値として、レチネックス理論に基づき算出したレチネックス値である。また、第2のレチネックス値とは、各拡散誤差の総和を拡散した後の画像データ内の注目画素における第2評価値として、レチネックス理論に基づき算出したレチネックス値である。
【0016】
また、本発明に係る画像形成装置は、上記画像処理装置を備えていることを特徴としている。これにより、注目画素に対する周辺画素が人の視覚特性に一致した滑らかな階調再現を実現することができるので、品質のよい画像を出力(形成)することが可能となる。
【0017】
また、本発明の画像処理方法は、入力画像データに誤差拡散処理を施して出力画像データとする階調再現処理工程を備える画像処理方法において、上記階調再現処理工程は、上記入力画像データ内にある上記注目画素画像データと、上記周辺画素画像データとを用いて、人の視覚特性における空間的対比効果に基づいて上記周辺画素画像データを修正するための拡散誤差を算出する誤差算出工程を含むことを特徴とする。
【0018】
さらに、本発明の画像処理方法は、上記誤差算出工程にて、上記入力画像データに蓄積誤差を加算した蓄積誤差画像データに対して、予め定められる評価関数を用いて第1評価値を求める第1計算工程と、上記蓄積誤差画像データと上記蓄積誤差画像データを量子化処理した量子化処理画像データとに対して、予め定められている拡散係数及び上記周辺画素の各拡散誤差の総和とを用いて、上記周辺画素の各拡散誤差の総和を拡散後の上記注目画素画像データを求める誤差拡散工程で求められた各拡散誤差の総和を、拡散後の上記注目画素画像データに対して、予め定められる評価関数を用いて第2評価値を求める第2計算工程とを含むことが好ましい。
【0019】
さらに、本発明の画像処理方法は、上記誤差算出工程にて、上記周辺画素画像データを修正するための各拡散誤差の総和を変更して算出する調整工程を含むことが好ましい。
【0020】
なお、上記画像処理装置は、コンピュータによって実現してもよく、この場合には、コンピュータを上記の各部として動作させることにより上記画像処理装置をコンピュータにて実現させる画像処理装置の画像処理制御プログラム、およびそれを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体も、本発明の範疇に入る。
【発明の効果】
【0021】
以上のように、本発明に係る画像処理装置は、上記階調再現処理部が上記入力画像データ内にある所定の注目画素の注目画素画像データと、上記注目画素の周辺に存在する周辺画素の周辺画素画像データとを用いて、人の視覚特性における空間的対比効果に基づいて上記周辺画素画像データを修正するための拡散誤差を算出する誤差算出部を備えていることを特徴とする。
【0022】
それゆえ、人の視覚特性に基づき階調再現がより滑らかな誤差拡散を行うことで、入力画像データにおける所定の注目画素だけでなく周辺画素も考慮し、人の視覚特性における空間的対比効果に基づいて滑らかな階調再現性を実現することができるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
本発明の一実施の形態について図面に基づいて説明すると以下の通りである。
【0024】
図2を参照して、本発明のカラー画像処理装置を備えたデジタルカラー複写機の構成を説明する。
【0025】
図2に示すように、デジタルカラー複写機100は、カラー画像入力装置101とカラー画像処理装置102とカラー画像出力装置103と操作パネル104とを含んだ構成となっている。
【0026】
カラー画像入力装置101は例えばCCD(Charge Coupled Device)を備えたスキャナ部より構成され、原稿からの反射光像を、RGB(R:赤・G:緑・B:青)のアナログ信号としてCCDにて読み取り、カラー画像処理装置102に入力するものである。
【0027】
カラー画像処理装置102は、上記カラー画像入力装置101で取り込んだ画像データをカラー画像出力装置103に対応するデータに変換するための装置である。具体的には、後述するように、カラー画像処理装置102は、カラー画像入力装置101にて読み取られたアナログ信号をA/D変換部201、シェーディング補正部202、入力階調補正部203、領域分離処理部204、色補正部205、黒生成下色除去部206、空間フィルタ処理部207、出力階調補正部208、及び階調再現処理部209の順で処理し、CMYKのデジタルカラー信号として、カラー画像出力装置103へ出力する。
【0028】
カラー画像出力装置103は、上記カラー画像処理装置102によって処理された画像データを出力する装置である。
【0029】
操作パネル104は、デジタル複写機の動作モードを設定する設定ボタンやテンキー、液晶ディスプレイなどを備える表示部より構成されるものである。
【0030】
以下にカラー画像処理装置102内の各処理部について詳述する。
【0031】
カラー画像処理装置102は、A/D変換部201、シェーディング補正部202、入力階調補正部203、領域分離処理部204、色補正部205、黒生成下色除去部206、空間フィルタ処理部207、出力階調補正部208、階調再現処理部209、及び記憶部302を備えた構成となっている。
【0032】
A/D(アナログ/デジタル)変換部201は、RGBのアナログ信号をデジタル信号に変換する。
【0033】
シェーディング補正部202は、A/D変換部201より送られてきたデジタルのRGB信号に対して、カラー画像入力装置101の照明系、結像系、撮像系で生じる各種の歪みを取り除く処理を施す。
【0034】
入力階調補正部203は、シェーディング補正部202にて各種の歪みが取り除かれたRGB信号(RGBの反射率信号)に対して、カラーバランスを整えると同時に、濃度信号などカラー画像処理装置102に採用されている画像処理システムの扱い易い信号に変換する処理を施す。
【0035】
領域分離処理部204は、RGB信号より、入力画像中の各画素を文字領域、網点領域、写真領域の何れかに分離する。領域分離処理部204は、分離結果に基づき、画素がどの領域に属しているかを示す領域識別信号を、黒生成下色除去部206、空間フィルタ処理部207、及び階調再現処理部209へと出力すると共に、入力階調補正部203より出力された入力信号をそのまま後段の色補正部205に出力する。
【0036】
色補正部205は、色再現の忠実化実現のために、不要吸収成分を含むCMY(C:シアン・M:マゼンタ・Y:イエロー)色材の分光特性に基づいた色濁りを取り除く処理を行う。
【0037】
黒生成下色除去部206は、色補正後のCMYの3色信号から黒(K)信号を生成して、元のCMY信号から得られたK信号を差し引いて新たなCMY信号を生成する処理を行い、CMYの3色信号をCMYKの4色信号に変換する。
【0038】
黒生成処理の一例として、スケルトンブラックによる黒生成を行う方法(一般的方法)がある。この方法では、スケルトンカーブの入出力特性をy=f(x)、入力されるデータをC、M、Y、出力されるデータをC’、M’、Y’、K’、UCR(Under Color Removal)率をα(0<α<1)とすると、黒生成/下色除去処理は以下の数式(1)として表すことができる。
【0039】
K’=f{min(C,M,Y)}
C’=C−αK’
M’=M−αK’ (1)
Y’=Y−αK’
空間フィルタ処理部207は、黒生成下色除去部206から入力されるCMYK信号の画像データに対して、領域識別信号を基にデジタルフィルタによる空間フィルタ処理を行い、空間周波数特性を補正することによって出力画像のぼやけや粒状性劣化を防ぐように処理する。
【0040】
例えば、領域分離処理部204にて文字に分離された領域は、特に黒文字あるいは色文字の再現性を高めるために、空間フィルタ処理部207による空間フィルタ処理における鮮鋭強調処理で高周波数の強調量を大きくする。同時に、階調再現処理部209においては、高域周波数の再現に適した高解像度のスクリーンでの二値化または多値化処理を選択する。また、領域分離処理部204にて網点に分離された領域に関しては、空間フィルタ処理部207において、入力網点成分を除去するためのローパス・フィルタ処理を施す。
【0041】
そして出力階調補正部208では、濃度信号などの信号をカラー画像出力装置の特性値である網点面積率に変換する出力階調補正処理を行った後、階調再現処理部209で、最終的に画像を画素に分離してそれぞれの階調を再現できるように処理する階調再現処理(中間調生成)を施す。領域分離処理部204にて写真に分離された領域に関しては、階調再現性を重視したスクリーンでの2値化または多値化処理を行う。
【0042】
また階調再現処理部209では、空間フィルタ処理部207と同様に、CMYK信号の画像データに対して、領域識別信号を基に所定の処理を施す。階調再現処理部209の詳細については後述する。
【0043】
カラー画像処理装置102は、上記一連の処理を施した画像データを一旦記憶手段(図示せず)に記憶し、所定のタイミングで読み出してカラー画像出力装置103に入力する。
【0044】
このカラー画像出力装置103は、画像データを記録媒体(例えば紙等)上に出力するもので、例えば、電子写真方式やインクジェット方式を用いたカラー画像形成装置等を挙げることができるが特に限定されるものではない。尚、以上の処理は図示しないCPU(Central Processing Unit)により制御される。
【0045】
また、図3に示すように、上記階調再現処理部209及び記憶部302は、以下を備えた構成となっている。
【0046】
階調再現処理部209は、画像処理部303と、加算処理部304と、誤差算出部305と、量子化処理部306と、判定部313を備えている。また、上記記憶部302は、ラインメモリ307と、誤差格納部308と、総誤差メモリ309と、関数係数格納部310と、拡散係数格納部311と、量子化閾値格納部312とを備えている。
【0047】
画像処理部303は、出力階調補正部208から出力された画像データをラインメモリ307へ書き込む。
【0048】
加算処理部304は、上記ラインメモリ307から入力画像データを画素毎に抽出し、誤差格納部308に格納された注目画素を中心とする蓄積誤差を加算し、その結果を次の処理に移行させる。加算処理部304の詳細については後述する。
【0049】
誤差算出部305は、上記蓄積誤差を加算した画像データと量子化された注目画素の値(出力画像データ)とを入力し、人の視覚特性に関する関数の係数データならびに拡散係数を用いて、上記蓄積誤差を加算した画像データの注目画素の周辺に存在する周辺画素に拡散するための誤差の総和(以下、総誤差とする)を一旦求める。その後その総誤差を上記総誤差メモリ309に保存する。そして、上記蓄積誤差を加算した画像データの上記周辺画素に拡散するための拡散誤差値を、上記総誤差メモリ309に一旦保存した総誤差と拡散係数格納部311に格納されているあらかじめ定められた拡散係数とを用いて算出し、その値を蓄積誤差加算処理部314へ送る。誤差算出部305の詳細については後述する。
【0050】
量子化処理部306は、蓄積誤差を加算した画像データの注目画素の値を、量子化閾値格納部312に格納されている量子化閾値と比較して量子化を行う。
【0051】
判定部313は、注目画素が終点にあるかを判定する。注目画素が終点にある場合、処理が終了し、判定部313は画像データをカラー画像出力装置103へ送る。また、注目画素が終点にない場合、判定部313は画像データを画像処理部303へ送る。
【0052】
蓄積誤差加算処理部314は上記誤差算出部305から得られた拡散誤差と誤差格納部308に格納されている蓄積誤差とを加算する。その後加算された蓄積誤差を誤差格納部308に格納されている蓄積誤差に上書き保存する。加算処理部304はこの蓄積誤差を読み出す。
【0053】
上記ラインメモリ307は複数用いられ、入力画像データを保持するものである。例えば、図4に示すように、画像処理部303は入力画像データを複数のラインメモリを用いて保持し、加算処理部304は注目画素を中心としたM×N画素のマスク(例えば、5×5画素)のデータを抽出する。以下の処理では、特にことわらない限り、M×N画素のブロック単位で処理を行うものとして説明する。また本実施の形態では、入力画像データとは、図4に示すように、注目画素を中心としたM×N画素よりなるブロックの画像データを意味する。
【0054】
誤差格納部308は、注目画素及び周辺画素の誤差の総和である蓄積誤差を格納するものである。
【0055】
総誤差メモリ309は、誤差算出部305において算出された上記総誤差を格納するものである。
【0056】
関数係数格納部310は、ガウシアン周辺関数に相当するガウシアン係数データを格納するものである。
【0057】
拡散係数格納部311は、予め定められた上記拡散係数を格納するものである。
【0058】
量子化閾値格納部312は、量子化閾値を格納するものである。また、量子化閾値は注目画素の濃度を量子化処理する際に使われる閾値である。
【0059】
以下に上記加算処理部304について詳述する。
【0060】
加算処理部304は、上記誤差格納部308に蓄積されている蓄積誤差の中から注目画素を中心とするM×N画素の蓄積誤差を読み出す。そして、M×N画素の入力画像データに対して、画素毎に上記蓄積誤差を加算する。具体的には、M×N画素の入力画像データをData_P(i,j)とし、M×N画素の蓄積誤差データをData_S(i,j)とし、蓄積誤差拡散マスクをED_Mask(i,j)とすると、蓄積誤差が加算された画像データData_X(i,j)は、
Data_X(i,j)
=Data_P(i,j)+Data_S(i,j)×ED_Mask(i,j)
と表すことができる。ただし、i,jはM×Nマスク内の座標とする。
【0061】
このとき、どの画素へ上記蓄積誤差データを加算するかは、上記蓄積誤差拡散マスクED_Maskを用いて決定する。
【0062】
図5は、蓄積誤差拡散マスクED_Maskを示す図である。図5に示すように、このマスクは、例として注目画素を中心とする5×5画素のデータを処理する。ただし、これに限定されない。
【0063】
加算処理部304が、注目画素を中心とする蓄積誤差データData_Sを上記入力画像データData_Pに加算するとき、加算すべき座標に関しては、上記蓄積誤差拡散マスクED_Mask内に各座標に「1」をセットしておき、加算する必要がない各座標については、「0」をセットしておく。図5では、未処理の画像データに対して「1」がセットされている。これにより、注目画素以降の周辺画素にのみ蓄積誤差が加算される。
【0064】
また、以下に上記誤差算出部305について詳述する。
【0065】
誤差算出部305は、図1に示すように、誤差拡散部501、レチネックス計算部A(第1計算部)502、レチネックス計算部B(第2計算部)503、差分絶対値計算部504、判定部505、拡散誤差計算部506、調整部507を備えている。また、記憶部302の一部である総誤差メモリ309、関数係数格納部310、拡散係数格納部311は上記と同様であるため説明は省略する。
【0066】
誤差拡散部501では、上記蓄積誤差を加算した画像データと、上記量子化した注目画素のデータ(出力画像データ)と、総誤差メモリ309に保存されている上記注目画素の周辺画素における総誤差値とを用いて、上記拡散係数格納部311に予め格納されている上記拡散係数データに基づき上記総誤差を拡散した後の注目画素を中心とした画像データを算出する。
【0067】
ここで、蓄積誤差が加算された画像データをData_X(i,j)とし、量子化処理した注目画素のデータ(出力画像データ)をX’とし、拡散係数データをED_X(i,j)とし、総誤差値をEとすると、総誤差を注目画素周辺へ拡散した後の注目画素を中心とした画像データ(総誤差を拡散した後の画像データ)であるData_X’(i,j)は、
Data_X’(i_roi,j_roi)=X’
Data_X’(i,j)=Data_X(i,j)+ED_X(i,j)×E
と表せる。ただし、i,jはM×Nマスク内の座標であり、i_roi,j_roiは注目画素の座標であり、i≠i_roi,j≠j_roiである。
【0068】
上記数式で表されるように、総誤差を拡散した後の画像データの注目画素の値は、量子化画像データを用いる。このとき、総誤差Eは、後述する拡散誤差計算部506で利用されるため総誤差メモリ309に格納される。例えば、注目画素を中心とする5×5画素のデータを処理している場合、拡散係数ED_Xの比率は、図6に示すような値を用いる。実際は、上記比率に基づき、各画素の拡散係数データED_Xの総和が1になるような拡散係数データED_Xが用いられる。また、この拡散係数データとしては、従来の誤差拡散で用いられる拡散係数を用いることができる。具体的には、注目画素に近い画素の拡散係数を大きく設定し、遠い画素程小さい値に設定する。
【0069】
上記レチネックス計算部A502、レチネックス計算部B503は、蓄積誤差が加算された画像データおよび上記総誤差を拡散した後の画像データを用いて、関数係数格納部310に予め格納されている係数を用いて、視覚特性を考慮したレチネックス(Retinex)理論に基づく関数(以下、レチネックス関数とする)により、それぞれの注目画素に対する値(以下、レチネックス値とする)を算出する。つまり、レチネックス計算部A502においては、蓄積誤差を加算した画像データData_X内の注目画素におけるレチネックス値Rxを算出し、レチネックス計算部B503においては、上記総誤差を拡散した後の画像データData_X’内の注目画素におけるレチネックス値Rx’を算出する。レチネックス理論およびそのモデルについては後述する。
【0070】
具体的には、レチネックス計算部A502において、蓄積誤差を加算した画像データData_X(i,j)内における注目画素(i_roi,j_roi)のレチネックス値Rxは、
【0071】
【数1】

【0072】
となる。ただし、Xは蓄積誤差を加算した注目画素のデータであり、G(i,j)は予め関数係数格納部310に格納されているガウシアン周辺関数に相当するガウシアン係数データである。このガウシアン係数データG(i,j)は、
【0073】
【数2】

【0074】
を満たす。
【0075】
例えば、注目画素を中心とする5×5画素のデータの場合、上記ガウシアン係数データG(i,j)の比率は、図7に示すような値を用いる。実際は、上記比率に基づき、上記式を満たすように上記ガウシアン係数データG(i,j)の総和が1となるような設定しておく。また、上記ガウシアン係数データは、注目画素に対する値を大きくし、注目画素から離れる程小さい値に設定しておく。
【0076】
同様に、レチネックス計算部B503において、総誤差を拡散した後の画像データData_X’(i,j)内における注目画素(i_roi,j_roi)のレチネックス値Rx’は、
【0077】
【数3】

【0078】
である。ただし、X’は量子化された注目画素のデータ(出力画像データ)である。
【0079】
今回、本発明のレチネックス計算部A502・レチネックス計算部B503には、後述するレチネックス理論をモデル化した1手法であるSSRモデルを適用したが、レチネックス理論を表現している手法であるならば、他の手法であっても同様に適用可能である。
【0080】
差分絶対値計算部504では、注目画素の上記両レチネックス値Rx、Rx’の差分値の絶対値|h|(以下、レチネックス差分絶対値とする)を算出する。レチネックス差分絶対値|h|は、
|h|=|Rx−Rx’|
と表せる。
【0081】
判定部505では、上記レチネックス差分絶対値|h|は、
|h| ≦ Th
を満たすか否か判定する。上式を満たさない場合は、上記調整部507において、上記総誤差メモリ309に格納されている総誤差Eを読み出し、その値を変化させて、再び上記誤差拡散部501に入力する。上式を満たす場合は、拡散誤差計算部506で次の処理が行われる。
【0082】
ここで、Thは限りなくゼロに近い正値を設定する。例えば、Th=0.001などである。そして差分絶対値|h|が閾値Th以下になるということは、上記レチネックス計算部A502、レチネックス計算部B503で算出した上記レチネックス値RxとRx’がほぼ等しいということである。これは、誤差拡散前後で、注目画素が後述するレチネックス理論的に一致するということを意味しており、レチネックス理論に基づき、人の視覚特性を考慮した量子化と、周辺画素に総誤差の拡散が行われることを意味している。
【0083】
また、誤差算出部305では、量子化前後のレチネックス値を比較することにより、適正な総誤差を求め、拡散誤差を算出する。なお、従来の誤差算出部における誤差拡散法では、注目画素の量子化後の値と量子化前の値の差分値を誤差として、予め決められた誤差拡散係数に基づき周辺画素へ拡散していた。
【0084】
その後、上記調整部507で上記総誤差Eを変化させ、|h|≦Thを満たすように調整することにより、後述するレチネックス理論に基づき、人の視覚特性を考慮した量子化後の周辺画素に拡散すべき総誤差の最適値Et(以下、総誤差最適値とする)を見つけ出すことが可能となる。この総誤差最適値Etが総誤差Eとして総誤差メモリ309に格納される。すなわち、総誤差Eは注目画素が処理される毎に更新される。
【0085】
拡散誤差計算部506は、算出した上記総誤差最適値Etを用いて、拡散係数格納部311に格納されている予め定められた拡散係数ED_X(i,j)に応じた注目画素の周辺の各画素における拡散すべき誤差Data_E(i,j)を求めると、
Data_E(i,j)=ED_X(i,j)×Et
ただし、i≠i_roi,j≠j_roi
と表すことができる。
【0086】
調整部507は、上記判定部505において|h|≦Thを満たさない場合に総誤差メモリ309から総誤差Eを読み出し、値を変化させて誤差拡散部501に入力する。
【0087】
これは、例えば、注目画素値Xが135、注目画素の量子化値が120とする。この時、初期の総誤差Eは、135−120=15となる。そして、図1に示すように、誤差拡散部501にて、一旦、予め決められた誤差拡散係数データを用いて、周辺画素へ誤差を拡散する。量子化前の注目画素及び誤差拡散する前の周辺画素を含めたデータをData_Xとし、量子化後の注目画素および誤差拡散した後の周辺画素を含めたデータをData_X’とする。その後、レチネックス計算部A502で、Data_Xを用いて、量子化前の注目画素のレチネックス値Rxを算出し、同様に、レチネックス計算部B503でData_X’を用いて、量子化後の注目画素のレチネックス値Rx’を算出する。ここで、仮に、レチネックス値Rxが130、レチネックス値Rx’が124とすると、レチネックスの差分値は130−124=6となる。そこで、これらのレチネックスの差分値である6が、閾値より大きい場合は、調整部507へ処理が移行する。
【0088】
調整部507では、例えば、レチネックス差分値6の半分である3を、総誤差メモリに格納されている総誤差E(この場合、初期の総誤差Eの15である)に3を加算した18を新たな総誤差とし、再び総誤差メモリに、新たな総誤差18を格納する。レチネックス差分値を用いて総誤差をどのように変化させるかは事前に定めておく。そして、再び、その新たな総誤差18を用いて、誤差拡散部501にて、周辺画素へ誤差を拡散する。この時、初期に算出された誤差とは異なる値が周辺画素へ拡散される。そして、再度、レチネックス計算部B503で、レチネックス値Rx’を算出する。このように、判定部505において、レチネックスの差分値が予め定められた閾値以下になるまで、上記の処理を繰り返す。例えば、レチネックス差分値が、マイナスになれば、調整部507では、総誤差メモリに格納されている総誤差Eからマイナス値を加算することになり、結果として総誤差メモリに格納されている総誤差Eより小さな値を、再格納することになる。
【0089】
上記は、単色の場合を示したが、CMYKそれぞれ独立に、同様の処理を施すことにより画像全体としての階調再現処理が可能となる。
【0090】
ここに上記レチネックス理論について詳述する。
【0091】
レチネックス理論は、1971年にE.ランドとJ.マッキャンにより提案された視覚系の色や明るさに対する色恒常性についての新しい色彩理論である。
【0092】
色恒常性とは、人間の視覚系には、照明の変化に対して物体の色の見えが大きく変化しないという能力があり、その現象のことを言う。例えば、木々の葉は、昼光の青空の下でも、夕方の赤い空の下でも、緑に見える。このような色恒常性を成立させるメカニズムとして、色順応、空間的対比効果、色の記憶という3つの要素が挙げられる。
【0093】
これらの中で、上記空間的対比効果は、注目している場所(例えば、注目画素)からの反射光だけではなく、その周辺に存在する画素の反射光の影響をうけるというメカニズムのことである。例えば、図8のような白黒のパターンは、白から黒へなだらかに背景の明るさが変化しているパターンの上に、小さな灰色の四角形を5つ載せられている。小さな灰色の四角はどれも同じ中程度の明るさの灰色である(中央の一つは、背景と同じ明度のためほとんど見えない)。しかしながら、背景が黒(右端)の時には背景が白(左端)の時よりも明るく見える。
【0094】
また、以下に上記レチネックスモデルについて詳述する。
【0095】
1997年Jobsonらは、上記レチネックス理論を画質改善(色補正やコントラスト最適化)へ応用する目的で、SSR(Single-Scale Retinex)モデルを提案した。SSRモデルは、上記空間的対比効果のメカニズムも含まれる。上記SSRモデルは、下記の式により表される。
【0096】
【数4】

【0097】
ここで、I(x,y)は座標(x,y)におけるRGBの画素値とし、「*」はコンボリューション積分である。
【0098】
F(x,y)は周辺関数であり、次式で表される。
【0099】
【数5】

【0100】
cはガウス周辺関数の標準偏差であり、周辺領域の面積によって決められる。
【0101】
(x,y)は、レチネックス値の対数であり、レチネックス変換した後の画像I(x,y)は、次式で表せる。
【0102】
【数6】

【0103】
ここで、aは、ゲインを示す係数であり、画像のダイナミックレンジを調整するときに使用する。I(x,y)は、レチネックス理論に基づき周辺画像情報(空間的対比効果)を考慮した後のRGB画像のiプレーン画像である。つまり、I(x,y)は、レチネックス理論に基づき周辺画像情報が加味されたI(x,y)画像であり、I(x,y)と同等の使用が可能である。
【0104】
この手法により注目画素値だけでなく周辺画素も考慮した空間的対比効果を表すことができ、上記SSRモデルを階調再現処理に応用することにより、人の視覚特性の一つである色恒常性(上記空間対比効果)に基づく、注目画素値だけでなく周辺画素も考慮した照明光に依存しにくい滑らかな階調再現性が実現でき、結果として、デジタル複写機・複合機・プリンタなどの画像形成装置から出力される画像品質が改善できる。
【0105】
次に図9に示すフローチャートを参照して、階調再現処理部209における画像データの流れについて説明する。
【0106】
まず、画像処理部303は画像データ内の注目画素の位置を決定する(S101)。例えば、5×5マスクの場合、x方向(主走査方向)へ3画素、y方向(副走査方向)へ3ライン走査した地点を始点位置とする。
【0107】
S102において、画像処理部303は誤差格納用のメモリを初期化する。つまり、各画素にゼロを入れる。また、画像処理部303は上記注目画素の位置を決定したM×Nマスクの画像データをラインメモリ307に書き込む。
【0108】
次にS103において、加算処理部304は上記M×Nマスクの画像データをラインメモリ307から抽出する。
【0109】
また、S104にて、加算処理部304は上記蓄積誤差を上記M×Nマスクの画像データに加算する。その後、加算処理部304は上記蓄積誤差を加算したM×Nマスクの画像データを量子化処理部306へ送る。
【0110】
S105にて、量子化処理部306は注目画素を量子化する。
【0111】
S106において、誤差算出部305は誤差算出処理を行う。誤差算出部305における誤差算出処理工程については後に記述する。
【0112】
また、S107において、蓄積誤差加算処理部314は拡散誤差を蓄積誤差に加算する。これにより蓄積誤差加算処理部314は、誤差格納部308に格納されている蓄積誤差を更新する。
【0113】
その後S108にて、蓄積誤差加算処理部314は加算した蓄積誤差を格納する。上記更新された蓄積誤差を誤差格納部308に格納することにより、誤差算出部305より算出した結果が反映されることになる。
【0114】
S109において、判定部313は注目画素が終点にあるか否かを判定する。このとき、注目画素が終点にある場合、処理を完了する。また、終点にない場合、処理はS110へ移行する。
【0115】
例えば、5×5マスクの場合、x方向(主走査方向)への残り3画素、y方向(副走査方向)への残り3ラインに達した時を終点位置とする。
【0116】
S110にて、判定部313は注目画素を1画素隣りへ移動する。その後、処理はS103へ移行し、一連の処理を繰り返す。
【0117】
図10は、誤差算出処理の流れを示すフローチャートである。以下、各ステップについて詳細を説明する。
【0118】
まずS201において、誤差拡散部501は総誤差メモリ309を初期化(ゼロにセット)する。
【0119】
次にS202において、誤差拡散部501は総誤差を総誤差メモリ309に格納する。
【0120】
S203にて、誤差拡散部501は蓄積誤差を加算した画像データに対して、総誤差および拡散係数を用いて誤差拡散処理を行う。
【0121】
S204において、レチネックス計算部B503はS203で求めた誤差拡散後の注目画素のレチネックス値Rx’を計算する。その後、処理はS206へ移行する。
【0122】
また、レチネックス計算部A502は上記レチネックス計算部B503と平行して蓄積誤差を加算した画像データ内の注目画素のレチネックス値Rxを計算する(S205)。
【0123】
S206において、差分絶対値計算部504はS204とS205で求められた注目画素のレチネックス値RxとRx’の差分を計算する。
【0124】
S207において、差分絶対値計算部504は上記差分の絶対値を算出する。
【0125】
S208において、判定部505は注目画素のレチネックス値の差分絶対値が閾値以下か否かを判定する。差分絶対値が閾値以下の場合、判定部505はレチネックス値RxとRx’の値がほぼ等しいと判断し、処理はS210へ移行する。また、閾値以上の場合、判定部505はレチネックス値RxとRx’の値の差が大きいと判断し、処理はS209へ移行する。
【0126】
S209において、調整部507は総誤差メモリ309から総誤差値を読み出し、総誤差値を変更し、誤差拡散部501に総誤差値を送る。このように調整後にまたレチネックス計算を行うことでレチネックス値RxとRx’の値がほぼ等しくなるまで繰り返す。
【0127】
S210において、拡散誤差計算部506は格納されている総誤差値を総誤差メモリ309から読み出す。その後、処理はS211へ移行する。
【0128】
S211において、拡散誤差計算部506は注目画素の周囲にある周辺画素への拡散誤差を計算する。この計算後、誤差算出部305は、拡散誤差計算部506で計算した拡散誤差を蓄積誤差加算処理部314へ送る。つまり、処理は上記S107へ移行する。
【0129】
次に、図11を参照しながら、階調再現処理部209の機能を備えたプリンタ・ドライバについて説明する。
【0130】
コンピュータ900において、プリンタ・ドライバ901と通信ポートドライバ904と通信ポート905を備えており、コンピュータ900はプリンタ(画像出力装置)906へ画像データを送り、画像データを出力する。
【0131】
プリンタ・ドライバ901は、色補正部902と階調再現処理部209とプリンタ言語翻訳部903と記憶部302を備えており、各種のアプリケーションプログラムを実行することにより生成された画像データは、色補正部902で色補正処理、階調再現処理部209で中間調生成処理がなされる。また、色補正部902には黒生成/下色除去処理も含まれる。
【0132】
上記処理がなされた画像データは、プリンタ言語翻訳部903でプリンタ言語に変換され、通信ポートドライバ904・通信ポート905(RS232C・LAN等)を介してプリンタ(画像出力装置)906に入力される。プリンタ906は、プリンタ機能の他にコピー機能およびファックス機能を有するデジタル複合機であっても良い。
【0133】
このように、上記階調再現処理部209は、プリンタ等にも適用できる。
【0134】
また、本発明はコンピュータに実行させるためのプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体に、画像処理方法を記録するものとすることもできる。
【0135】
この結果、画像処理方法を行うプログラムを記録した記録媒体を持ち運び自在に提供することができる。
【0136】
上記カラー画像処理装置102は、CPUが記憶装置に格納されたプログラムを実行し、図示しない入出力回路などの周辺回路を制御することによって実現される機能ブロックである。
【0137】
また、上記実施形態では、カラー画像処理装置102を構成する各部が、「CPUなどの演算手段がROMやRAMなどの記録媒体に格納されたプログラムコードを実行することで実現される機能ブロックである」場合を例にして説明したが、同様の処理を行うハードウェアで実現してもよい。また、処理の一部を行うハードウェアと、当該ハードウェアの制御や残余の処理を行うプログラムコードを実行する上記演算手段とを組み合わせても実現することができる。さらに、上記各部のうち、ハードウェアとして説明した部分であっても、処理の一部を行うハードウェアと、当該ハードウェアの制御や残余の処理を行うプログラムコードを実行する上記演算手段とを組み合わせても実現することができる。なお、上記演算手段は、単体であってもよいし、装置内部のバスや種々の通信路を介して接続された複数の演算手段が共同してプログラムコードを実行してもよい。また、上記各部のうちの記憶部302は、メモリなどの記憶装置自体であってもよい。
【0138】
上記演算手段によって直接実行可能なプログラムコード自体、または、後述する解凍などの処理によってプログラムコードを生成可能なデータとしてのプログラムは、当該プログラム(プログラムコードまたは上記データ)を記録媒体に格納し、当該記録媒体を配付したり、あるいは、上記プログラムを、有線または無線の通信路を介して伝送するための通信手段で送信したりして配付され、上記演算手段で実行される。
【0139】
なお、通信路を介して伝送する場合、通信路を構成する各伝送媒体が、プログラムを示す信号列を伝搬し合うことによって、当該通信路を介して、上記プログラムが伝送される。また、信号列を伝送する際、送信装置が、プログラムを示す信号列により搬送波を変調することによって、上記信号列を搬送波に重畳してもよい。この場合、受信装置が搬送波を復調することによって信号列が復元される。一方、上記信号列を伝送する際、送信装置が、デジタルデータ列としての信号列をパケット分割して伝送してもよい。この場合、受信装置は、受信したパケット群を連結して、上記信号列を復元する。また、送信装置が、信号列を送信する際、時分割/周波数分割/符号分割などの方法で、信号列を他の信号列と多重化して伝送してもよい。この場合、受信装置は、多重化された信号列から、個々の信号列を抽出して復元する。いずれの場合であっても、通信路を介してプログラムを伝送できれば、同様の効果が得られる。
【0140】
ここで、プログラムを配付する際の記録媒体は、取外し可能である方が好ましいが、プログラムを配付した後の記録媒体は、取外し可能か否かを問わない。また、上記記録媒体は、プログラムが記憶されていれば、書換え(書き込み)可能か否か、揮発性か否か、記録方法および形状を問わない。記録媒体の一例として、磁気テープやカセットテープなどのテープ、あるいは、フロッピー(登録商標)ディスクやハードディスクなどの磁気ディスク、または、CD−ROMや光磁気ディスク(MO)、ミニディスク(MD)やデジタルビデオディスク(DVD)などのディスクが挙げられる。また、記録媒体は、ICカー
ドや光カードのようなカード、あるいは、マスクROMやEPROM、EEPROMまたはフラッシュROMなどのような半導体メモリであってもよい。あるいは、CPUなどの演算手段内に形成されたメモリであってもよい。
【0141】
なお、上記プログラムコードは、上記各処理の全手順を上記演算手段へ指示するコードであってもよいし、所定の手順で呼び出すことで、上記各処理の一部または全部を実行可能な基本プログラム(例えば、オペレーティングシステムやライブラリなど)が既に存在していれば、当該基本プログラムの呼び出しを上記演算手段へ指示するコードやポインタなどで、上記全手順の一部または全部を置き換えてもよい。
【0142】
また、上記記録媒体にプログラムを格納する際の形式は、例えば、実メモリに配置した状態のように、演算手段がアクセスして実行可能な格納形式であってもよいし、実メモリに配置する前で、演算手段が常時アクセス可能なローカルな記録媒体(例えば、実メモリやハードディスクなど)にインストールした後の格納形式、あるいは、ネットワークや搬送可能な記録媒体などから上記ローカルな記録媒体にインストールする前の格納形式などであってもよい。また、プログラムは、コンパイル後のオブジェクトコードに限るものではなく、ソースコードや、インタプリトまたはコンパイルの途中で生成される中間コードとして格納されていてもよい。いずれの場合であっても、圧縮された情報の解凍、符号化された情報の復号、インタプリト、コンパイル、リンク、または、実メモリへの配置などの処理、あるいは、各処理の組み合わせによって、上記演算手段が実行可能な形式に変換可能であれば、プログラムを記録媒体に格納する際の形式に拘わらず、同様の効果を得ることができる。
【0143】
なお、本発明の画像処理装置は、入力画像データに誤差拡散処理を施して出力画像データとする階調再現処理部が備えられる画像処理装置において、階調再現処理部には、入力画像データのある注目画素と、注目画素の周辺に存在する周辺画素の画像データとを用い、人の視覚特性に基づいて周辺画素に拡散させる拡散誤差を算出する誤差算出部が備えられていてもよい。
【0144】
これにより、注目画素値だけでなく周辺画素も考慮し、人の視覚特性的に一致した滑らかな階調再現性が実現することができる。
【0145】
さらに、本発明の画像処理装置は、誤差算出部は、入力画像データに誤差(蓄積誤差)が加算された画像データと誤差(蓄積誤差)が加算された注目画素を量子化処理した注目画素のデータに対して、予め定められる拡散係数および上記周辺画素に拡散される各拡散誤差の総和(総誤差)を用いて、各拡散誤差の総和が拡散された後の注目画素を中心とする画像データを求める誤差拡散部と、入力画像データに誤差(蓄積誤差)が加算された画像データに対して、予め定められる評価関数を用いて第1評価値を求める第1計算部(レチネックス計算部A)と、誤差拡散部で求められた拡散誤差の総和が拡散された後の注目画素を中心とする画像データに対して、予め定められる評価関数を用いて第2評価値を求める第2計算部(レチネックス計算部B)と、第1評価値と第2評価値の差分の絶対値を求める差分絶対値計算部と、第1評価値と第2評価値の差分の絶対値と予め定められる閾値との比較を行う判定部と、第1評価値と第2評価値の差分の絶対値が上記閾値より大きい時、上記周辺画素に拡散される拡散誤差の総和の値を変更して誤差拡散部に入力する調整部と、第1評価値と第2評価値の差分の絶対値が上記閾値以下の時、上記周辺画素に拡散される拡散誤差を算出する拡散誤差計算部よりなっていてもよい。
【0146】
ここで、上記評価関数は、レチネックス理論に基づく関数で、例えば、SSRモデルで表される。一般式として、以下の式として与えられる。
【0147】
【数7】

【0148】
これにより、蓄積誤差が加算された画像データ内の注目画素におけるレチネックス値Rxおよび拡散誤差の総和(総誤差)が拡散された後の画像データ内の注目画素におけるレチネックス値Rx’を算出し、両者の差分の絶対値を閾値と比較して、拡散誤差の総和の最適値を求めることにより、人の視覚特性を考慮した階調再現処理(人の視覚特性を考慮した量子化と周辺画素へ総誤差の拡散)を行うことができる。
【0149】
本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能である。すなわち、請求項に示した範囲で適宜変更した技術的手段を組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0150】
本発明に係る画像処理装置は、人の視覚特性に基づき階調再現がより滑らかな誤差拡散を行うことができるため、誤差拡散を行うものに広く適用可能であり、特に、デジタル複写機やスキャナ等に好適に利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0151】
【図1】図3に示した階調再現処理部が備える誤差算出部のブロック図である。
【図2】本発明に係る一実施の形態のデジタルカラー画像形成装置に用いられる画像処理装置のブロック図である。
【図3】図2に示した画像処理装置が備える階調再現処理部のブロック図である。
【図4】M×N画素マスクの模式図である。
【図5】蓄積誤差拡散マスクの模式図である。
【図6】誤差拡散係数データの比率の例を示す模式図である。
【図7】ガウシアン係数データの比率の例を示す模式図である。
【図8】色恒常性の一つのメカニズムである空間的対比効果を示す画像の例である。
【図9】画像処理装置における階調再現処理の全体の流れを示すフローチャートである。
【図10】画像処理装置における誤差算出処理の流れを示すフローチャートである。
【図11】図3に示した階調再現処理部を搭載したプリンタ・ドライバの構成図である。
【符号の説明】
【0152】
209 階調再現処理部
302 記憶部
303 画像処理部
305 誤差算出部
309 総誤差メモリ
310 関数係数格納部
311 拡散係数格納部
501 誤差拡散部
502 レチネックス計算部A(第1計算部)
503 レチネックス計算部B(第2計算部)
504 差分絶対値計算部
505 判定部
506 拡散誤差計算部
507 調整部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力画像データに誤差拡散処理を施して出力画像データとする階調再現処理部を備える画像処理装置において、
上記階調再現処理部は、上記入力画像データ内にある所定の注目画素の注目画素画像データと、上記注目画素の周辺に存在する周辺画素の周辺画素画像データとを用いて、人の視覚特性における空間的対比効果に基づいて上記周辺画素画像データを修正するための拡散誤差を算出する誤差算出部を備えていることを特徴とする画像処理装置。
【請求項2】
上記誤差算出部は、
上記入力画像データに上記注目画素及び周辺画素の拡散誤差の総和である蓄積誤差を加算した蓄積誤差画像データに対して、予め定められる評価関数を用いて第1評価値を求める第1計算部と、
上記蓄積誤差画像データと当該蓄積誤差画像データを量子化処理した量子化処理画像データとに対して、予め定められている拡散係数及び上記周辺画素の各拡散誤差の総和とを用いて、上記周辺画素の各拡散誤差の総和を拡散後、上記注目画素画像データを求める誤差拡散部と、
上記誤差拡散部で求められた上記注目画素画像データに対して、予め定められる評価関数を用いて第2評価値を求める第2計算部とを備えており、
上記第1評価値と第2評価値を用いて拡散誤差を算出することを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項3】
上記誤差算出部は、
上記周辺画素画像データを修正するための各拡散誤差の総和を変化させる調整部を備えていることを特徴とする請求項2に記載の画像処理装置。
【請求項4】
上記誤差算出部は、蓄積誤差を加算した画像データ内の注目画素における第1のレチネックス値及び各拡散誤差の総和を拡散後、画像データ内の注目画素における第2のレチネックス値を算出し、両者の差分の絶対値を閾値と比較して、各拡散誤差の総和の最適値を求めるものであることを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項に記載の画像処理装置を備えることを特徴とする画像形成装置。
【請求項6】
入力画像データに誤差拡散処理を施して出力画像データとする画像処理方法において、
上記入力画像データ内にある上記注目画素画像データと、上記周辺画素画像データとを用いて、人の視覚特性における空間的対比効果に基づいて上記周辺画素画像データを修正するための拡散誤差を算出する誤差算出工程を含むことを特徴とする画像処理方法。
【請求項7】
上記誤差算出工程にて、
上記入力画像データに上記注目画素及び周辺画素の各拡散誤差の総和である蓄積誤差を加算した蓄積誤差画像データに対して、予め定められる評価関数を用いて第1評価値を求める第1計算工程と、
上記蓄積誤差画像データと当該蓄積誤差画像データを量子化処理した量子化処理画像データとに対して、予め定められている拡散係数及び上記周辺画素の各拡散誤差の総和とを用いて、上記周辺画素の各拡散誤差の総和を拡散後、上記注目画素画像データを求める誤差拡散工程と、
上記誤差拡散工程で求められた上記注目画素画像データに対して、予め定められる評価関数を用いて第2評価値を求める第2計算工程とを含むことを特徴とする請求項6に記載の画像処理方法。
【請求項8】
上記誤差算出工程にて、
上記周辺画素画像データを修正するための各拡散誤差の総和を変更する調整工程を含むことを特徴とする請求項7に記載の画像処理方法。
【請求項9】
請求項1から4のいずれか1項に記載の画像処理装置が備える各部をコンピュータに実行させるための画像処理プログラム。
【請求項10】
請求項9に記載の画像処理プログラムを記録したことを特徴とするコンピュータ読み取り可能な記録媒体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−25378(P2006−25378A)
【公開日】平成18年1月26日(2006.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−203953(P2004−203953)
【出願日】平成16年7月9日(2004.7.9)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】