説明

画像処理方法及びその装置

【課題】 ICCプロファイルを用いるカラーマッチング処理において、色変換時の量子化誤差を小さくする画像処理方法及びその装置を提供すること。
【解決手段】 入力デバイスの色空間に対応した入力デバイスICCプロファイル103と、出力デバイスの色空間に対応した出力デバイスICCプロファイル104とを用いて、色データの変換を行う。入力デバイスICCプロファイル103には、入力デバイスの色空間からデバイス非依存色空間への変換LUTとして、入力デバイスの色空間から出力デバイスに従属する第1の色空間への変換LUTが設定されており、また、出力デバイスICCプロファイル104には、デバイス非依存色空間から出力デバイスの色空間への変換LUTとして、出力デバイスに従属する第1の色空間から出力デバイスに従属する第2の色空間への変換LUTが設定されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像処理方法及びその装置に関し、より詳細には、異なる入出力デバイス間でのカラーマッチング処理を行う画像処理方法及びその装置に関するものである。特に、業界標準のカラープロファイルであるICC(International Color Consortium)プロファイルを用いたカラーマッチング技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、異なる入出力デバイス間でのカラーマッチングを行うために、マスキング法や3次元LUT(ルックアップテーブル)法が用いられている。
図4は、3次元LUTを用いた従来のカラーマッチング処理を説明するための構成図で、図中符号401はsRGB−dRGB変換部、402はdRGB−dCMYK変換部、403は2値化処理部、404は印字処理部、405,406は3DLUTを示している。
【0003】
この従来例における入力色データは、インターネットや各種OS,アプリケーションなどで標準的な色空間となっているsRGBとし、出力デバイスはインクジェットプリンタを仮定している。
【0004】
まず、sRGB−dRGB変換部401によりsRGBを出力デバイスRGBに変換し、さらにdRGB−dCMYK変換部402により、出力デバイスRGBを出力デバイスCMYKに変換する。その後、公知の誤差拡散法やディザ法による2値化処理部403によりCMYK2値データに変換され、インクジェットプリンタのプリントヘッドにみられる印字処理部404により、プリントメディアへの印字が行われる。
【0005】
出力デバイスRGB及び出力デバイスCMYKは、出力するデバイスに依存した色空間であり、デバイスの色再現範囲を最大限に利用する色空間となっている。sRGB−dRGB色変換,dRGB−dCMYK色変換は、3DLUT405,406を用いた3次元LUT法で行う。
【0006】
図6は、3DLUTによる色変換処理を説明するための図で、図中符号601は入力RGB値、602は格子点を示している。
sRGB−dRGB変換部401におけるパラメータである3DLUT405は、R,G,B各軸17点の格子を有する3次元LUTとなっており、あらかじめ17x17x17=4913個の格子点に対応する色変換値rgbを設定しておく。そして、入力RGB値601を取り囲む8点の格子点602を求め、それぞれの格子点位置をR0G0B0〜R1G1B1とする。それらの格子点における色変換値をrgb000〜rgb111とすると、任意の入力RGB値に対する色変換値rgbは、四面体補間により、以下のように求まる。
rgb=rgb000+c1*ΔR/(R1−R0)+c2*ΔG/(G1−G0)+c3*ΔB/(B1−B0)
ただし、ΔR=R−R0,ΔG=G−G0,ΔB=B−B0とする。
【0007】
ここで、c1,c2,c3は、以下の6つの場合に分けられる。
(1)ΔR>ΔG>ΔBの時
c1=rgb100−rgb000,c2=rgb110−rgb100,c3=rgb111−rgb110
(2)ΔR>ΔB>ΔGの時
c1=rgb100−rgb000,c2=rgb111−rgb101,c3=rgb101−rgb100
(3)ΔB>ΔR>ΔGの時
c1=rgb101−rgb001,c2=rgb111−rgb101,c3=rgb001−rgb000
(4)ΔG>ΔR>ΔBの時
c1=rgb110−rgb010,c2=rgb010−rgb000,c3=rgb111−rgb110
(5)ΔG>ΔB>ΔRの時
c1=rgb111−rgb011,c2=rgb010−rgb000,c3=rgb011−rgb010
(6)ΔB>ΔG>ΔRの時
c1=rgb111−rgb011,c2=rgb011−rgb001,c3=rgb001−rgb000
【0008】
dRGB−dCMYK変換部402についても、上述した数式において、rgbをcmykに置き換えて同様の説明がつく。3DLUTの405及び406の一例について、図7(a),(b)の符号701,702にそれぞれ示した。
【0009】
次に、他の従来方法として、ICCプロファイルを用いたカラーマッチング技術について説明する。ICCプロファイルとは、プロファイル構造が公開されている業界標準のカラープロファイルで、いくつかのOS、アプリケーションにおける色変換プロファイルとして、積極的に利用されてきている。
【0010】
図8は、ICCプロファイル構造を示す図で、図中符号801はヘッダー情報部、802は本体部を示している。
ICCプロファイル構造は、ヘッダー情報部801と本体部802とから構成されており、ヘッダー情報部801には、作成日時やデバイスクラス、PCS(Profile Connection Space)と呼ばれるデバイスに依存しない色空間の定義が記憶されている。PCSとしては、CIE XYZやCIE L*a*b*空間があげられる。本体部802には、デバイス色空間からPCSへの変換処理(A2B0,A2B1,A2B2)や、PCSからデバイス色空間への変換処理(B2A0,B2A1,B2A2)のテーブルが格納されている。また、これ以外にもデバイスの白色点(wtpt)や色再現範囲情報(gamt)、プロファイルのデスクリプション(desc)などが記憶されている。
【0011】
図9は、ICCプロファイルにおける色変換処理構造の一例を示す図で、A2BxやB2Axの構造の例を示している。図中符号901は3x3マトリクス、902は入力1次元LUT、903は3次元LUT、904は出力1次元LUTを示している。
【0012】
この色変換処理構造は、3x3マトリクス901と入力1次元LUT902と3次元LUT903と出力1次元LUT904とから構成されている。
【0013】
3次元LUT903では、上述した3次元LUT法の説明と同様に、例えば、各軸17格子点における変換係数を持っている。上述の説明と異なるのは、入力又は出力のどちらか一方が、必ずXYZやL*a*b*のPCS空間であるということである。
【0014】
図5は、従来の画像処理装置の画像処理部を説明するための構成図で、ICCプロファイルを用いたカラーマッチング処理について説明するための図である。図中符号501はRGB−PCS変換部、502はPCS−CMYK変換部、503は入力デバイスICCプロファイル群、504は出力デバイスICCプロファイル群、505はモジュールを示している。その他、図4と同じ機能を有する構成要素には同一の符号を付してある。
【0015】
まず、デバイスに依存した入力デバイスRGBが入力される。そして、入力デバイスICCプロファイル群503の中から、この入力デバイスRGBを定義したプロファイルを選択し、このプロファイル中のA2Bxの関係を用いてRGB−PCS変換部501により、L*a*b*又はXYZのPCS空間に変換される。次に、出力デバイスICCプロファイル群504の中から、出力デバイスCMYKを定義したプロファイルを選択し、このプロファイル中のB2Axの関係を用いてPCS−CMYK変換部502により、L*a*b*又はXYZのPCS空間から、出力デバイスCMYKに変換される。
【0016】
RGB−PCS変換部501による入力デバイス色−PCS変換と、PCS−CMYK変換部502によるPCS−出力デバイス色変換を行なうモジュール505は、CMM(Color Management Module)とよばれ、Windows(登録商標)やMacintoshなどの各OSに標準的に付属されている。また、デバイス色に独立なPCS色空間を用いているため、個々の入出力デバイスに対してICCプロファイルさえ用意すれば、異なるメーカのデバイス間でのカラーマッチングも容易に行うことが可能である。
【0017】
本発明に係る従来技術を記載したものとして、特許文献1が挙げられる。この特許文献1のものは、入力された画像データが出力先の出力デバイスで再現可能であるか否かを判断するに際し、再現不可能な画像データが入力された場合には、該画像データの再現が不可能であることを確実に判断できるようにしたもので、入力された画像データの出力先である出力デバイスの再現可能な色の是非を示す情報を3次元LUTで保持する場合に、少なくともその境界面に再現不可能な色を示す情報を配置して保持し、保持される次元LUTを参照して、入力された画像データで表現される色が、出力デバイスで再現可能であるか否かを判断するようにしたものである。
【0018】
【特許文献1】特開平9−326943号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
しかしながら、上述した2つの従来方法に関して、それぞれ課題が存在する。まず、図4に示した3DLUT法によるカラーマッチングでは、3DLUT405,406がICCプロファイルではないため、OS標準のCMMを利用することができず、専用の色変換モジュール401,402を設計する必要があった。また、例えば、入力色空間がsRGB以外のデバイスRGBであった場合に対応が困難であり、カラーマッチングシステムとしては十分でないという問題があった。
【0020】
逆に、図5に示したICCプロファイルを用いたカラーマッチングでは、OS標準のCMMの利用が可能であり、多様な入力デバイスRGBへの対応も容易である。しかしながら、色変換の途中でPCSを用いることによる色変換時の量子化誤差の問題が存在する。PCSをL*a*b*とすると、ICCプロファイルの定義により、L*:0〜100,a*:−128から127,b*:−128〜127という非常に広範囲な色空間を扱う必要がある。
【0021】
図10に示したように、各入出力デバイスでのdeviceRGBやdeviceCMYKの色体積302は、全L*a*b*空間301で通常1/2〜1/8程度を占めるにすぎない。したがって、図9に示した変換処理過程において、入力がL*a*b*で、出力がデバイスRGB又はデバイスCMYKの場合,3次元LUT903の格子数を大きな値にし、L*a*b*空間の分割ステップを細かくしないと、色変換時の量子化誤差が無視できなくなる。ただし、格子数を大きくすると、ICCプロファイルのファイルサイズも増大するという問題もあった。
【0022】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、ICCプロファイルを用いるカラーマッチング処理において、色変換時の量子化誤差を小さくする画像処理方法及びその装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0023】
本発明は、このような目的を達成するためになされたもので、請求項1に記載の発明は、入力デバイスの色空間に対応した入力プロファイルと、出力デバイスの色空間に対応した出力プロファイルとを用いて、色データの色変換処理を行なう画像処理方法において、前記入力プロファイルには、前記入力デバイスの色空間からデバイス非依存色空間への変換ルックアップテーブルとして、前記入力デバイスの色空間から前記出力デバイスに従属する第1の色空間への変換ルックアップテーブルが設定され、前記出力プロファイルには、前記デバイス非依存色空間から前記出力デバイスの色空間への変換ルックアップテーブルとして、前記出力デバイスに従属する第1の色空間から前記出力デバイスに従属する第2の色空間への変換ルックアップテーブルが設定されることを特徴とする。
【0024】
また、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記入力デバイスと前記出力デバイスとが、あらかじめ想定していた組み合わせである場合に限り、前記入力プロファイルと前記出力プロファイルとを用いることを特徴とする。
【0025】
また、請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の発明において、前記入力プロファイルと前記出力プロファイルとが、所定のカラープロファイルであるICCプロファイルであることを特徴とする。
【0026】
また、請求項4に記載の発明は、入力デバイスの色空間に対応した入力プロファイルと、出力デバイスの色空間に対応した出力プロファイルと、前記入力プロファイル及び前記出力プロファイルを用いて色データの変換を行う色変換手段とを備えた画像処理装置において、前記入力プロファイルには、前記入力デバイスの色空間からデバイス非依存色空間への変換ルックアップテーブルとして、前記入力デバイスの色空間から前記出力デバイスに従属する第1の色空間への変換ルックアップテーブルが設定されており、前記出力プロファイルには、前記デバイス非依存色空間から前記出力デバイスの色空間への変換ルックアップテーブルとして、前記出力デバイスに従属する第1の色空間から前記出力デバイスに従属する第2の色空間への変換ルックアップテーブルが設定されていることを特徴とする。
【0027】
また、請求項5に記載の発明は、請求項4に記載の発明において、前記入力デバイスと前記出力デバイスとが、あらかじめ想定していた組み合わせである場合に限り、前記入力プロファイルと前記出力プロファイルとを用いることを特徴とする。
【0028】
また、請求項6に記載の発明は、請求項4又5に記載の発明において、前記入力プロファイルと前記出力プロファイルとが、所定のカラープロファイルであるICCプロファイルであることを特徴とする。
【0029】
また、請求項7に記載の発明は、入力デバイスの色空間に対応した入力プロファイルと、出力デバイスの色空間に対応した出力プロファイルと、前記入力プロファイル及び前記出力プロファイルを用いて色データの変換を行う色変換手段とを備えた画像処理装置において、あらかじめ用意された複数の特殊プロファイルセットを有する入出力プロファイルセット群と、前記入力デバイスの種類及び前記出力デバイスの種類に関する情報が入力されている特殊プロファイル選択・設定処理部と、該特殊プロファイル選択・設定処理部に接続されたカラーマネージメントシステム部と、該カラーマネージメントシステム部から出力デバイスの色空間である画像データを入力する2値化処理部と、該2値化処理部からの画像データに基づいて印字する印字処理部とを備え、前記カラーマネージメントシステム部は、前記特殊プロファイル選択・設定処理部により設定される前記入力プロファイル及び前記出力プロファイルと、該入力プロファイルを用いて前記入力デバイスの色空間から前記出力デバイスに従属する第1の色空間へ変換する第1の色変換部と、前記出力デバイスプロファイルを用いて前記第1の色空間から前記出力デバイスに従属する第2の色空間へ変換する第2の色変換部とを備えていることを特徴とする。
【0030】
また、請求項8に記載の発明は、請求項7に記載の発明において、前記特殊な入出力プロファイルセット群中に、前記入出力デバイス情報が存在した場合、前記特殊プロファイル選択・設定処理部は、前記カラーマネージメントシステム部の前記入出力プロファイルとして、その特殊な入出力プロファイルを設定することを特徴とする。
【0031】
また、請求項9に記載の発明は、請求項7又は8に記載の発明において、前記特殊な入力プロファイルのデータ構造が、単位行列の3x3マトリクスと、リニアなルックアップテーブルである入力1次元ルックアップテーブル及び出力1次元ルックアップテーブルと、第1の色変換の変換ルックアップテーブルである3次元ルックアップテーブルとからなることを特徴とする。
【0032】
また、請求項10に記載の発明は、請求項7又は8に記載の発明において、前記特殊な出力プロファイルのデータ構造が、単位行列の3x3マトリクスと、リニアなルックアップテーブルである入力1次元ルックアップテーブル及び出力1次元ルックアップテーブルと、第2の色変換の変換ルックアップテーブルである3次元ルックアップテーブルとからなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0033】
本発明によれば、入力プロファイルには、入力デバイスの色空間からデバイス非依存色空間への変換ルックアップテーブルとして、入力デバイスの色空間から出力デバイスに従属する第1の色空間への変換ルックアップテーブルが設定され、出力プロファイルには、デバイス非依存色空間から出力デバイスの色空間への変換ルックアップテーブルとして、出力デバイスに従属する第1の色空間から出力デバイスに従属する第2の色空間への変換ルックアップテーブルが設定されるようにしたので、ICCプロファイルを用いたカラーマネージメントシステムにおいて、頻繁に利用される入出力デバイス間でのカラーマッチングを高精度に行うことが可能となる。また、ICCプロファイルを用いることで、OSやアプリケーションソフトに実装されているCMMを利用することが可能となり、専用の色変換モジュールの開発が必要なくなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
以下、図面を参照して本発明の実施例について説明する。
図1は、本発明に係る画像処理装置の画像処理部の一実施例を説明するための構成図で、図中符号101はRGB−PCS変換部、102はPCS−CMYK変換部、103,104は入出力デバイスICCプロファイル、105はカラーマネージメントシステム部、106は特殊ICCプロファイル選択・設定処理部、107は入出力プロファイルセット群、108は2値化処理部、109は印字処理部を示している。なお、本実施例においては、入力デバイスの色空間はsRGBとし、出力デバイスはインクジェットプリンタと仮定している。
【0035】
本発明の画像処理装置は、あらかじめ用意された複数の特殊プロファイルセット1〜Nを有する入出力プロファイルセット群107と、入力デバイスの種類及び出力デバイスの種類に関する情報が入力される特殊ICCプロファイル選択・設定処理部106と、この特殊ICCプロファイル選択・設定処理部106に接続されたカラーマネージメントシステム部105と、このカラーマネージメントシステム部105から出力デバイスの色空間であるCMYK値をもつ画像データを入力する2値化処理部108と、この2値化処理部108からの画像データに基づいて印字する印字処理部109とから構成されている。
【0036】
また、カラーマネージメントシステム部105には、特殊ICCプロファイル選択・設定処理部106により設定される入出力デバイスICCプロファイル103,104と、この入力デバイスICCプロファイル103を用いてRGB−PCS変換するRGB−PCS変換部101と、出力デバイスICCプロファイル104を用いてPCS−CMYK変換するPCS−CMYK変換部102とを備えている。
【0037】
このような構成により、まず、入力デバイスの種類及び出力デバイスの種類に関する情報が、特殊ICCプロファイル選択・設定処理部106に入力される。本実施例においては、入力デバイスの色空間としてsRGB、出力デバイスとしてインクジェットプリンタAがその情報となっている。あらかじめ用意してある特殊な入出力プロファイルセット群107中にこの入出力デバイス情報が存在した場合、特殊ICCプロファイル選択・設定処理部106は、カラーマネージメントシステム部105の入出力デバイスICCプロファイル103,104として、その特殊な入出力プロファイルを設定する。
【0038】
このように、本発明の画像処理装置は、入力デバイスの色空間に対応した入力デバイスICCプロファイル103と、出力デバイスの色空間に対応した出力デバイスICCプロファイル104とを用いて、色データの変換を行う色変換手段を備えた画像処理装置である。
【0039】
入力デバイスICCプロファイル103は、入力デバイスの色空間からデバイス非依存色空間への変換LUTとして、入力デバイスの色空間から出力デバイスに従属する第1の色空間への変換LUTが設定されており、また、出力デバイスICCプロファイル104は、デバイス非依存色空間から出力デバイスの色空間への変換LUTとして、出力デバイスに従属する第1の色空間から出力デバイスに従属する第2の色空間への変換LUTが設定されている。
【0040】
そして、入力デバイスと出力デバイスとが、あらかじめ想定していた組み合わせである場合に限り、入力デバイスICCプロファイル103と出力デバイスICCプロファイル104とを用いるように構成されている。また、入力デバイスICCプロファイル103と出力デバイスICCプロファイル104とが、業界標準のカラープロファイルであるICCプロファイルである。
【0041】
次に、この特殊な入出力プロファイルの構造について以下に説明する。
図2は、本実施例における特殊な入力デバイスICCプロファイルのA2Bxデータ構造を示す図で、特殊な入力デバイスICCプロファイル中の色変換処理構造の一例を示す図である。図中符号201は3x3マトリクス、202は入力1次元LUT(ルックアップテーブル)、203は3次元LUT、204は出力1次元LUTを示している。
【0042】
入力となるデバイス色空間はRGB、出力のPCSは、L*a*b*という定義をICCプロファイルのヘッダーに記録しておく。そして、3x3マトリクス201として単位行列、入力1次元LUT202及び出力1次元LUT204としてリニアなLUT、3次元LUT203として図7(a)に示したような、sRGB−dRGBの変換LUT701を設定しておく。
【0043】
通常のICCプロファイルであれば、3次元LUT203は、sRGB−L*a*b*の関係を設定すべきであるが、本実施例における「特殊な」入力デバイスICCプロファイルでは、あえてsRGB−dRGBの関係を設定する。ここで重要なことは、ICCプロファイルのフォーマット構造上は、あくまでも通常のRGB−L*a*b*のプロファイルであるという点である。
【0044】
図3は、本実施例における特殊な出力デバイスICCプロファイルのB2Axデータ構造を示す図で、特殊な出力デバイスICCプロファイル中の色変換処理構造の一例を示す図である。
【0045】
入力となるPCSはL*a*b*、出力のデバイス色空間は、CMYKのという定義をICCプロファイルのヘッダーに記録しておく。そして、3x3マトリクス201として単位行列、入力1次元LUT202及び出力1次元LUT204としてリニアなLUT、3次元LUT203として図7(b)に示したような、dRGB−dCMYKの変換LUT702を設定しておく。
【0046】
通常のICCプロファイルであれば、3次元LUT203は、L*a*b*−dCMYKの関係を設定すべきであるが、本実施例における「特殊な」出力デバイスICCプロファイルでは、あえてdRGB−dCMYKの関係を設定する。ここでも重要なことは、ICCプロファイルのフォーマット構造上は、あくまでも通常のL*a*b*−CMYKのプロファイルであるという点である。
【0047】
次に、以上の「特殊な」入出力デバイスICCプロファイルを用いた場合の、色変換の動作について以下に説明する。
図1において入力されたsRGB値をもつ画像データは、入力デバイスICCプロファイル103を用いて、OS標準のCMMによりRGB−PCS変換部101でRGB−PCS変換される。このRGB−PCS変換部101により変換された後の表面上のPCSは、あくまでヘッダー情報に記録されたL*a*b*であるが、実際の画像データとしては、図7(a)に示された変換LUT701にもとづく出力デバイスRGB値をもつ画像データとなっている。
【0048】
次に、出力デバイスICCプロファイル104を用いて、OS標準のCMMによりPCS−CMYK変換部102でPCS−CMYK変換される。このPCS−CMYK変換部102により変換される前の表面上のPCSは、あくまでヘッダー情報に記録されたL*a*b*であるが、実際の画像データとしては、図7(b)に示された変換LUT702にもとづく出力デバイスRGB値をもつ画像データとなっている。これらの色変換を行うCMMとしては、上述したような「特殊な」事情に関与することなく、あくまでも通常のICCプロファイルとして処理を行えばよい。
【0049】
以上の特殊な入出力デバイスICCプロファイルを用いることで、ICCプロファイルによるカラーマネージメントシステム部105上で、図1に示したような、出力デバイス色空間を最大限に利用した色変換の実現が可能となる。色変換途中のPCS色空間としては、結果的にはL*a*b*ではなくデバイスRGB色空間となるため、色変換時の量子化誤差が発生しにくい。また、あくまでもICCプロファイルの構造をとるため、OSやアプリケーションに付属のCMMをそのまま用いることが可能である。
【0050】
本実施例における特殊な入出力デバイスICCプロファイルは、実際にはPCSとして出力デバイスRGBとなっているため、それぞれを一般のICCプロファイルとして単独で利用しようとすると問題が生じる。あくまでも入力・出力のセットで用いる必要がある。したがって、頻繁に利用されるような入力デバイスや出力デバイスの組み合わせを抽出し、特殊プロファイルセット群107として登録しておき、この組み合わせの場合においてのみ、以上の特殊な設定がされている入出力デバイスICCプロファイルを利用することが大切である。
【0051】
また、指定された入出力デバイスが、あらかじめ抽出して組み合わせでない場合は、図2に示したように、一般のICCプロファイルを入出力デバイスICCプロファイルとしてセットして処理を行うようにすれば良い。
【0052】
以上の方法を採ることで、ICCプロファイルを用いたカラーマネージメントシステム上で、頻繁に利用される入出力デバイス間でのカラーマッチングを高精度に行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本発明に係る画像処理装置の画像処理部の一実施例を説明するための構成図である。
【図2】本実施例における特殊な入力デバイスICCプロファイルのA2Bxデータ構造を示す図である。
【図3】本実施例における特殊な出力デバイスICCプロファイルのB2Axデータ構造を示す図である。
【図4】3次元LUTを用いた従来のカラーマッチング処理を説明するための構成図である。
【図5】従来の画像処理装置を説明するための構成図である。
【図6】3DLUTによる色変換処理を説明するための図である。
【図7】sRGB−dRGBの関係とdRGB−dCMYKの関係の一例を示す図である。
【図8】ICCプロファイル構造を示す図である。
【図9】ICCプロファイルにおける色変換処理構造の一例を示す図である。
【図10】L*a*b*空間中でのデバイスRGB及びデバイスCMYKの色再現範囲を示す図である。
【符号の説明】
【0054】
101 RGB−PCS変換部
102 PCS−CMYK変換部
103,104 入出力デバイスICCプロファイル
105 カラーマネージメントシステム部
106 特殊ICCプロファイル選択・設定処理部
107 入出力プロファイルセット群
108 2値化処理部
109 印字処理部
201 3x3マトリクス
202 入力1次元LUT(ルックアップテーブル)
203 3次元LUT
204 出力1次元LUT
401 sRGB−dRGB変換部
402 dRGB−dCMYK変換部
403 2値化処理部
404 印字処理部
405,406 3DLUT
501 RGB−PCS変換部
502 PCS−CMYK変換部
503 入力デバイスICCプロファイル群
504 出力デバイスICCプロファイル群
505 モジュール
601 入力RGB値
602 格子点
701 sRGB−dRGBの変換LUT
702 変換LUT
801 ヘッダー情報部
802 本体部
901 3x3マトリクス
902 入力1次元LUT
903 3次元LUT
904 出力1次元LUT

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力デバイスの色空間に対応した入力プロファイルと、出力デバイスの色空間に対応した出力プロファイルとを用いて、色データの色変換処理を行なう画像処理方法において、
前記入力プロファイルには、前記入力デバイスの色空間からデバイス非依存色空間への変換ルックアップテーブルとして、前記入力デバイスの色空間から前記出力デバイスに従属する第1の色空間への変換ルックアップテーブルが設定され、
前記出力プロファイルには、前記デバイス非依存色空間から前記出力デバイスの色空間への変換ルックアップテーブルとして、前記出力デバイスに従属する第1の色空間から前記出力デバイスに従属する第2の色空間への変換ルックアップテーブルが設定されることを特徴とする画像処理方法。
【請求項2】
前記入力デバイスと前記出力デバイスとが、あらかじめ想定していた組み合わせである場合に限り、前記入力プロファイルと前記出力プロファイルとを用いることを特徴とする請求項1に記載の画像処理方法。
【請求項3】
前記入力プロファイルと前記出力プロファイルとが、所定のカラープロファイルであるICCプロファイルであることを特徴とする請求項1又は2に記載の画像処理方法。
【請求項4】
入力デバイスの色空間に対応した入力プロファイルと、出力デバイスの色空間に対応した出力プロファイルと、前記入力プロファイル及び前記出力プロファイルを用いて色データの変換を行う色変換手段とを備えた画像処理装置において、
前記入力プロファイルには、前記入力デバイスの色空間からデバイス非依存色空間への変換ルックアップテーブルとして、前記入力デバイスの色空間から前記出力デバイスに従属する第1の色空間への変換ルックアップテーブルが設定されており、
前記出力プロファイルには、前記デバイス非依存色空間から前記出力デバイスの色空間への変換ルックアップテーブルとして、前記出力デバイスに従属する第1の色空間から前記出力デバイスに従属する第2の色空間への変換ルックアップテーブルが設定されていることを特徴とする画像処理装置。
【請求項5】
前記入力デバイスと前記出力デバイスとが、あらかじめ想定していた組み合わせである場合に限り、前記入力プロファイルと前記出力プロファイルとを用いることを特徴とする請求項4に記載の画像処理装置。
【請求項6】
前記入力プロファイルと前記出力プロファイルとが、所定のカラープロファイルであるICCプロファイルであることを特徴とする請求項4又は5に記載の画像処理装置。
【請求項7】
入力デバイスの色空間に対応した入力プロファイルと、出力デバイスの色空間に対応した出力プロファイルと、前記入力プロファイル及び前記出力プロファイルを用いて色データの変換を行う色変換手段とを備えた画像処理装置において、
あらかじめ用意された複数の特殊プロファイルセットを有する入出力プロファイルセット群と、前記入力デバイスの種類及び前記出力デバイスの種類に関する情報が入力されている特殊プロファイル選択・設定処理部と、該特殊プロファイル選択・設定処理部に接続されたカラーマネージメントシステム部と、該カラーマネージメントシステム部から出力デバイスの色空間である画像データを入力する2値化処理部と、該2値化処理部からの画像データに基づいて印字する印字処理部とを備え、
前記カラーマネージメントシステム部は、前記特殊プロファイル選択・設定処理部により設定される前記入力プロファイル及び前記出力プロファイルと、該入力プロファイルを用いて前記入力デバイスの色空間から前記出力デバイスに従属する第1の色空間へ変換する第1の色変換部と、前記出力デバイスプロファイルを用いて前記第1の色空間から前記出力デバイスに従属する第2の色空間へ変換する第2の色変換部とを備えていることを特徴とする画像処理装置。
【請求項8】
前記特殊な入出力プロファイルセット群中に、前記入出力デバイス情報が存在した場合、前記特殊プロファイル選択・設定処理部は、前記カラーマネージメントシステム部の前記入出力プロファイルとして、その特殊な入出力プロファイルを設定することを特徴とする請求項7に記載の画像処理装置。
【請求項9】
前記特殊な入力プロファイルのデータ構造が、単位行列の3x3マトリクスと、リニアなルックアップテーブルである入力1次元ルックアップテーブル及び出力1次元ルックアップテーブルと、第1の色変換の変換ルックアップテーブルである3次元ルックアップテーブルとからなることを特徴とする請求項7又は8に記載の画像処理装置。
【請求項10】
前記特殊な出力プロファイルのデータ構造が、単位行列の3x3マトリクスと、リニアなルックアップテーブルである入力1次元ルックアップテーブル及び出力1次元ルックアップテーブルと、第2の色変換の変換ルックアップテーブルである3次元ルックアップテーブルとからなることを特徴とする請求項7又は8に記載の画像処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2006−197395(P2006−197395A)
【公開日】平成18年7月27日(2006.7.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−8185(P2005−8185)
【出願日】平成17年1月14日(2005.1.14)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.Macintosh
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】