説明

画像処理装置、および画像処理方法、並びにプログラム

【課題】3次元画像としてのLR画像に基づく仮想視点画像の生成に際して、画像シフト処理を施すことで立体感を強調した視差画像を生成する。
【解決手段】3次元画像表示に適用する左眼用の画像信号であるL画像と、R画像を入力し、L画像とR画像と、LR画像の視差情報を入力して、快適視差範囲内の画像シフト量の最適値を算出する最適シフト量算出部と、入力LR画像の視点以外の視点画像を含む仮想視点画像を生成する仮想視点画像生成部を有する。最適シフト量算出部は、視差量と立体感との対応関係データと、視差量とクロストーク量との対応関係データを利用して、予め既定したクロストーク量以下の範囲内の最適シフト量を算出し、仮想視点画像生成部は、前記最適シフト量算出部の算出した最適シフト量に従った画像シフト処理を施して最終的な出力用仮想視点画像を生成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、画像処理装置、および画像処理方法、並びにプログラムに関する。特に、3次元(3D)画像表示に適用する多視点画像を生成する画像処理装置、および画像処理方法、並びにプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
3次元(3D)画像表示処理において、メガネを装着しないで立体画像を知覚できる裸眼型の3D表示装置が実用化され始めている。裸眼3D表示装置は、ディスプレイ面に例えばレンチキュラシートや、パララックスバリア(視差バリア)を備え、視聴位置によって左眼と右眼に入る画像を制御する。
すなわち、左眼には左目から観察した画像に相当する左視点画像が観察され、右眼には右目から観察した画像に相当する右視点画像が観察されるような制御を行う。
【0003】
しかしながら、このような方法では、ディスプレイに対して限定的な視聴位置でしか正しい立体視が得られない。従って、ユーザの観察位置が規定位置と異なる位置にある場合は、左眼に右眼用の画像(右視点画像)が、右眼に左眼用の画像(左視点画像)が入ってしまう逆視や、左視点画像と右視点画像が混ざるクロストークが発生する。
【0004】
この問題を解決するために、正規の1つの観察位置に対応する標準の左視点画像と右視点画像のみならず、その他の観察位置で観察した場合にクロストークの発生しない設定とした新たな視点からの画像を生成して表示する構成が提案されている。
【0005】
オリジナルの1組の左視点画像と右視点画像のみならず、その他の仮想視点の画像を多視点画像として生成し、これらの多視点画像の中からユーザの観察位置に応じて最適な左視点画像と右視点画像の組を観察位置に応じて選択可能として、逆視やクロストークを抑えた画像表示を行うものである。
すなわち、ユーザの観察位置に応じて異なる左視点画像と右視点画像のペアを観察させることで、ユーザの観察位置が変更された場合にも、観察者の左眼と右眼にそれぞれ観察位置に応じた左視点画像と右視点画像を観察させるものである。
【0006】
具体的には、表示装置や画像処理装置に入力されるオリジナルの2視点の画像、すなわち3D画像表示用の左視点画像(L画像)と右視点画像(R画像)の2つの視点画像に基づいて、これら2つの視点以外の仮想視点の視点画像を生成する。例えばオリジナルのLR画像を含めて10個の異なる視点の多視点画像を生成する。
【0007】
生成した多視点画像から、ディスプレイに対するユーザの観察位置に応じた最適な2つの画像を組み合わせて観察させることで、様々な観察位置において、左視点画像と右視点画像が混ざるクロストークを抑制した3D画像の表示、観察が可能となる。
【0008】
例えば特許文献1(特開2006−115198号公報)には、オリジナルの左視点画像(L画像)と右視点画像(R画像)を入力して、これらの2つの画像から視差検出を実行して、検出した視差情報に基づいて、複数の仮想視点の画像を生成する手法を開示している。具体的には、入力する左視点画像(L画像)と、右視点画像(R画像)の2つのオリジナル3D画像から視差を検出し、クロストーク量や融像視差範囲に基づいて入力LR画像と異なる仮想視点位置を決定する手法を開示している。
【0009】
しかし、この特許文献1に記載の処理などによって仮想視点画像を生成する場合、視差の小さい仮想視点画像を生成しても十分な立体感が享受できないという問題が発生する。
【0010】
特に、入力したオリジナルのLR画像の間の視点に対応する仮想視点画像、すなわち入力LR画像間に内挿した仮想視点画像を2つ適用して観察すると、これらの仮想視点画像の視差は、入力LR画像の視差より小さくなり、立体感が得られにくくなる。
しかし、この視差を調整する処理を行う構成を追加すれば、コストアップとなり、また視差調整による画質劣化などが生じ、生成された仮想視点画像の品質が低下してしまい、観察に耐えられない画像が表示される可能性がある。
【0011】
仮想視点位置と画像品質には密接な関係がある。
例えば、
入力L画像の視点位置を0.0、
入力R画像の視点位置を1.0、
とすると、
新たに生成する仮想視点の画像と画像品質との関係には、以下の特徴がある。
(特徴1)L画像(0.0)とR画像(1.0)間の0.0〜1.0の間の仮想視点位置では、
LR画像の中央位置である0.5の仮想視点画像が、他の仮想視点位置と比較して画像品質が最も低くなる。
(特徴2)L画像より左側、またはR画像より右側の0.0以下、1.0以上の仮想視点位置では,
L画像またはR画像から離れれば離れるほど映像の品質が低くなる
【0012】
このような仮想視点位置と画像品質との関係は、例えば、視差検出の精度や画像に含まれるオクルージョン領域の量などに起因するものである。
なお、視点位置=0.0ではオリジナルの入力左眼画像、視点位置=1.0ではオリジナルの入力右眼画像がそのまま利用可能であるため、画像品質は最も高くなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開2006−115198号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本開示は、例えば上記の問題点を解決するものであり、3D画像用の左視点画像(L画像)と右視点画像(R画像)に基づく品質の高い多視点画像の生成処理を行う画像処理装置、および画像処理方法、並びにプログラムを提供することを目的とする。
【0015】
また、本開示は、3D画像用の左視点画像(L画像)と右視点画像(R画像)に基づく多視点画像の生成処理を行う構成において、入力LR画像を適用して生成した仮想視点画像に対する大きな加工処理を施すことなく、立体感の強調を行うことを可能とした画像処理装置、および画像処理方法、並びにプログラムを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本開示の第1の側面は、
3次元画像表示に適用する左眼用の画像信号である左視点画像(L画像)を入力する左視点画像入力部と、
3次元画像表示に適用する右眼用の画像信号である右視点画像(R画像)を入力する右視点画像入力部と、
前記左視点画像(L画像)と、前記右視点画像(R画像)と、前記左視点画像(L画像)と右視点画像(R画像)の視差情報を入力して、快適視差範囲内の画像シフト量の最適値を算出する最適シフト量算出部と、
入力LR画像の視点以外の視点画像を含む仮想視点画像を生成する仮想視点画像生成部を有し、
前記最適シフト量算出部は、視差量と立体感との対応関係データと、視差量とクロストーク量との対応関係データを利用して、予め既定したクロストーク量以下の範囲内の最適シフト量を算出し、
前記仮想視点画像生成部は、
入力LR画像に基づいて生成した仮想視点画像に対して、前記最適シフト量算出部の算出した最適シフト量に従った画像シフト処理を施して最終的な出力用仮想視点画像を生成する画像処理装置にある。
【0017】
さらに、本開示の画像処理装置の一実施態様において、前記最適シフト量算出部は、視差量と立体感との対応関係データと、視差量とクロストーク量との対応関係データを利用して、各画素対応の画素対応評価値sを算出し、さらに画像全体の構成画素の画素対応評価値sを加算した画像単位の画像単位評価値Sを算出して、画像単位評価値Sが最大となるシフト量を最適シフト量として算出する。
【0018】
さらに、本開示の画像処理装置の一実施態様において、前記最適シフト量算出部は、視差量と立体感との対応関係データと、視差量とクロストーク量との対応関係データを利用して、各画素対応の画素対応評価値sを算出し、さらに画像全体の構成画素の画素対応評価値sに対して、画像領域単位の重み付けを行う重み係数を乗算して加算した各シフト量に応じた画像単位評価値Sを算出して、画像単位評価値Sが最大となるシフト量を最適シフト量として算出する。
【0019】
さらに、本開示の画像処理装置の一実施態様において、前記最適シフト量算出部は、クロストーク量が予め規定した値以下の範囲を快適視差範囲として、該快適視差範囲内で、シフト量を変化させて、各シフト量に応じた画素対応評価値sを算出し、さらに画像全体の構成画素の画素対応評価値sを加算した、シフト量に応じた画像単位評価値Sを算出して、画像単位評価値Sが最大となるシフト量を最適シフト量として算出する。
【0020】
さらに、本開示の画像処理装置の一実施態様において、前記最適シフト量算出部は、クロストーク量が予め規定した値以下の範囲を快適視差範囲として、該快適視差範囲内で、シフト量を変化させて、各シフト量に応じた画素対応評価値sを算出し、さらに画像全体の構成画素の画素対応評価値sに対して、画像領域単位の重み付けを行う重み係数を乗算して加算した各シフト量に応じた画像単位評価値Sを算出して、画像単位評価値Sが最大となるシフト量を最適シフト量として算出する。
【0021】
さらに、本開示の画像処理装置の一実施態様において、前記画像処理装置は、さらに、前記左視点画像(L画像)と右視点画像(R画像)から視差情報を生成する視差推定部を有し、前記仮想視点画像生成部は、前記左視点画像(L画像)と、前記右視点画像(R画像)と、前記視差情報と、前記最適シフト量を入力して、入力LR画像の視点以外の視点画像を含む仮想視点画像を生成する。
【0022】
さらに、本開示の第2の側面は、
画像処理装置において実行する画像処理方法であり、
画像入力部を介して、3次元画像表示に適用する左眼用の画像信号である左視点画像(L画像)と、右眼用の画像信号である右視点画像(R画像)を入力し、
最適シフト量算出部が、前記左視点画像(L画像)と、前記右視点画像(R画像)と、前記左視点画像(L画像)と右視点画像(R画像)の視差情報を入力して、快適視差範囲内の画像シフト量の最適値を算出する最適シフト量算出処理と、
仮想視点画像生成部が、入力LR画像の視点以外の視点画像を含む仮想視点画像を生成する仮想視点画像生成処理を実行し、
前記最適シフト量算出処理は、
視差量と立体感との対応関係データと、視差量とクロストーク量との対応関係データを利用して、予め既定したクロストーク量以下の範囲内の最適シフト量を算出する処理であり、
前記仮想視点画像生成処理は、
入力LR画像に基づいて生成した仮想視点画像に対して、前記最適シフト量算出部の算出した最適シフト量に従った画像シフト処理を施して最終的な出力用仮想視点画像を生成する処理として実行する画像処理方法にある。
【0023】
さらに、本開示の第3の側面は、
画像処理装置において画像処理を実行させるプログラムであり、
画像入力部を介して、3次元画像表示に適用する左眼用の画像信号である左視点画像(L画像)と、右眼用の画像信号である右視点画像(R画像)を入力する処理と、
最適シフト量算出部が、前記左視点画像(L画像)と、前記右視点画像(R画像)と、前記左視点画像(L画像)と右視点画像(R画像)の視差情報を入力して、快適視差範囲内の画像シフト量の最適値を算出する最適シフト量算出処理と、
仮想視点画像生成部が、入力LR画像の視点以外の視点画像を含む仮想視点画像を生成する仮想視点画像生成処理を実行させ、
前記最適シフト量算出処理においては、
視差量と立体感との対応関係データと、視差量とクロストーク量との対応関係データを利用して、予め既定したクロストーク量以下の範囲内の最適シフト量を算出する処理を実行させ、
前記仮想視点画像生成処理においては、
入力LR画像に基づいて生成した仮想視点画像に対して、前記最適シフト量算出部の算出した最適シフト量に従った画像シフト処理を施して最終的な出力用仮想視点画像を生成する処理を実行させるプログラムにある。
【0024】
なお、本開示のプログラムは、例えば、様々なプログラム・コードを実行可能な汎用システムに対して、コンピュータ可読な形式で提供する記憶媒体、通信媒体によって提供可能なプログラムである。このようなプログラムをコンピュータ可読な形式で提供することにより、コンピュータ・システム上でプログラムに応じた処理が実現される。
【0025】
本開示のさらに他の目的、特徴や利点は、後述する本開示の実施例や添付する図面に基づくより詳細な説明によって明らかになるであろう。なお、本明細書においてシステムとは、複数の装置の論理的集合構成であり、各構成の装置が同一筐体内にあるものには限らない。
【発明の効果】
【0026】
本開示の一実施例構成によれば、3次元画像としてのLR画像に基づく仮想視点画像の生成に際して、画像シフト処理を施すことで立体感を強調した視差画像を生成することが可能となる。
具体的には、3次元画像表示に適用する左眼用の画像信号であるL画像と、R画像を入力し、L画像とR画像と、LR画像の視差情報を入力して、快適視差範囲内の画像シフト量の最適値を算出する最適シフト量算出部と、入力LR画像の視点以外の視点画像を含む仮想視点画像を生成する仮想視点画像生成部を有する。最適シフト量算出部は、視差量と立体感との対応関係データと、視差量とクロストーク量との対応関係データを利用して、予め既定したクロストーク量以下の範囲内の最適シフト量を算出し、仮想視点画像生成部は、前記最適シフト量算出部の算出した最適シフト量に従った画像シフト処理を施して最終的な出力用仮想視点画像を生成する。
この処理により、3次元画像としてのLR画像に基づく仮想視点画像の生成に際して、画像シフト処理を施すことで立体感を強調した視差画像を生成することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】画像処理装置の構成例について説明する図である。
【図2】画像処理装置の構成例について説明する図である。
【図3】視差推定部の処理例について説明する図である。
【図4】仮想視点画像の生成処理の一例について説明する図である。
【図5】仮想視点画像の生成処理の一例について説明する図である。
【図6】仮想視点画像の生成処理の一例について説明する図である。
【図7】最適シフト量算出部の実行する処理について説明する図である。
【図8】最適シフト量算出部の実行する処理について説明する図である。
【図9】最適シフト量算出部の実行する処理について説明する図である。
【図10】最適シフト量算出部の実行する処理について説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、図面を参照しながら本開示の画像処理装置、および画像処理方法、並びにプログラムの詳細について説明する。説明は以下の項目に従って行う。
1.画像処理装置の全体構成と処理の概要について
2.視差情報と、視差推定部の処理の詳細について
3.仮想視点画像生成部の実行する入力LR画像に基づく基本的な仮想視点画像の生成処理について
4.最適シフト量算出部の処理について
5.仮想視点画像生成部の処理について
6.本開示の構成のまとめ
【0029】
[1.画像処理装置の全体構成と処理の概要について]
まず、本開示の画像処理装置の全体構成と処理の概要について図1を参照して説明する。その後、各構成部の処理の詳細について説明する。
図1に示すように、画像処理装置100は、左視点画像(L画像)入力部101、右視点画像(R画像)入力部102、視差情報入力部103、最適シフト量算出部104、仮想視点画像生成部105、表示制御部106を有し、画像処理装置100において生成した画像が表示部110に出力される。
なお、図1に示す構成では、表示部110を画像処理装置100の外部構成として示しているが、画像処理装置100内に表示部110を有する構成としてもよい。
【0030】
なお、図1は、画像処理装置の主要構成を示すものであり、画像処理装置100には、図に示す構成の他、データ処理制御を実行するCPU等のプログラム実行機能を備えた制御部、制御部において実行するプログラムや、各種パラメータを格納した記憶部、パラメータや画像データなどを入力する入力部を有する。
例えば制御部は、以下に説明する処理を予め記憶部に格納したプログラムに従って実行する。
【0031】
左視点画像(L画像)入力部101と、右視点画像(R画像)入力部102は、予め生成された3次元(3D)画像表示用の左視点画像(L画像)と、右視点画像(R画像)を入力する。
左視点画像(L画像)は、左眼から観察される画像に相当し、右視点画像(R画像)は、右眼から観察される画像に相当する。
【0032】
ただし、これらの2つの画像は、標準的な2つのLR画像である。すなわち、ディスプレイ面に例えばレンチキュラシートや、パララックスバリア(視差バリア)を備えた裸眼3D表示装置において、規定位置、例えばディスプレイを正面中心位置から観察した際に正しい3D画像として観察されるLR画像である。
ユーザの観察位置が規定位置と異なる位置にある場合は、左眼に右眼用の画像(右視点画像)が、右眼に左眼用の画像(左視点画像)が入ってしまう逆視や、左視点画像と右視点画像が混ざるクロストークが発生する。
【0033】
画像処理装置100は、この問題を解決するために、正規の1つの観察位置に対応する入力LR画像、すなわち標準の左視点画像(L画像)と右視点画像(R画像)に基づいて、様々な観察位置で観察した場合にクロストークの発生しない新たな視点(仮想視点)からの画像を生成する。
【0034】
視差情報入力部103は、入力LR画像、すなわち、左視点画像(L画像)と、右視点画像(R画像)との2つの画像間の視差情報を入力する。
視差情報とは、入力LR画像に含まれる同一被写体の画像間のずれ(左右方向の画素ずれ)に相当し、被写体の距離に相当する情報となる。具体的には、例えば各画素単位や画素領域単位の視差情報(被写体距離情報)によって構成される。
【0035】
最適シフト量算出部104は、
左視点画像(L画像)入力部101からL画像、
右視点画像(R画像)入力部102からR画像、
視差情報入力部103から視差情報、
これらの各情報を入力して、既定のアルゴリズムに従って、最適視差量を算出する。この処理の詳細については後述する。
【0036】
仮想視点画像生成部105は、
左視点画像(L画像)入力部101からL画像、
右視点画像(R画像)入力部102からR画像、
視差情報入力部103から視差情報、
最適シフト量算出部104から最適視差量、
これらの各情報を入力して、仮想視点画像を生成する。
【0037】
仮想視点画像生成部105は、例えば最適シフト量算出部104から入力する最適視差量に従って、仮想視点位置の決定処理等を実行して、決定した仮想視点位置に対応する仮想視点画像を生成する。
【0038】
仮想視点画像生成部105は、入力LR画像の2視点の画像に加え、さらにその他の視点の画像を加えた計N視点の画像を生成して出力する。
仮想視点画像生成部105の生成した仮想視点画像は、表示制御部106を介して表示部110に出力表示される。
【0039】
本開示の画像処理装置の生成する表示画像は、ユーザがメガネを装着しなくても立体画像を視聴することができる裸眼3D表示装置における表示画像である。
【0040】
表示部110は、裸眼3D表示を行う表示部であり、ディスプレイ面に例えばレンチキュラシートや、パララックスバリア(視差バリア)を備え、視聴位置によって左眼と右眼に入る画像を制御可能とした表示部である。
表示制御部106は、仮想視点画像生成部105の生成したN視点の画像を表示部110に出力する。
なお、表示制御部106は、表示部110の表示構成に応じた表示情報を生成する。
【0041】
なお、画像処理装置100は、例えば撮像部を備えたカメラ等の撮像装置、PC、テレビなどの表示装置として構成することも可能であり、これらの装置として構成する場合は各装置に応じた機能を備えた構成とする。
例えばカメラの場合、異なる視点からの画像としてのLR画像を撮影する撮像部を有し、撮像部から入力するLR画像を利用して多視点画像を生成する構成とする。
【0042】
図1を示す画像処理装置の構成は、LR画像の入力に併せて、入力LR画像に対応する視差情報についても視差情報入力部103を介して入力する構成としている。
このように予め生成された視差情報を入力する構成ではなく、入力LR画像に対応する視差情報を画像処理装置の内部において生成する構成としてもよい。
このような画像処理装置の構成例を図2に示す。
【0043】
図2に示す画像処理装置120は、左視点画像(L画像)入力部101、右視点画像(R画像)入力部102、視差推定部115、最適シフト量算出部104、仮想視点画像生成部105、表示制御部106を有し、画像処理装置120において生成した画像が表示部110に出力される。
図1に示す画像処理装置100と異なる点は、図1に示す視差情報入力部103を持たずに、視差推定部115を有する点である。
その他の構成は図1に示す構成と同様である。
【0044】
視差推定部115は、左視点画像(L画像)と、右視点画像(R画像)を入力し、これらの画像に基づいて視差情報を生成する。
視差情報とは、入力LR画像に含まれる同一被写体の画像間のずれ(左右方向の画素ずれ)に相当し、被写体の距離に相当する情報となる。具体的には、例えば各画素単位や画素領域単位の視差情報(被写体距離情報)を持つデータを生成する。
【0045】
その他の構成は、図1に示す構成と同様である。
最適シフト量算出部104は、
左視点画像(L画像)入力部101からL画像、
右視点画像(R画像)入力部102からR画像、
視差推定部115から視差情報、
これらの各情報を入力して、既定のアルゴリズムに従って、最適視差量を算出する。この処理の詳細については後述する。
【0046】
仮想視点画像生成部105は、
左視点画像(L画像)入力部101からL画像、
右視点画像(R画像)入力部102からR画像、
視差推定部115から視差情報、
最適シフト量算出部104から最適視差量、
これらの各情報を入力して、仮想視点画像を生成する。
【0047】
[2.視差情報と、視差推定部の処理の詳細について]
次に、視差情報と、視差推定部の処理の詳細について説明する。
図1に示す画像処理装置100では、外部から入力LR画像に対応する視差情報を入力し、図2に示す画像処理装置120は、視差推定部115において、入力LR画像に対応する視差情報を生成する。
視差推定部115は、左視点画像(L画像)と、右視点画像(R画像)を入力し、これらの画像に基づいて視差情報を生成する。
前述したように、視差情報とは、標準LR画像に含まれる同一被写体の画像間のずれ(左右方向の画素ずれ)に相当し、被写体の距離に相当する情報となる。具体的には、例えば各画素単位の視差情報(被写体距離情報)を持つデータを生成する。
【0048】
この視差情報の取得は、例えば、以下のような既存の手法によって実行される。
(a)ブロックマッチングベースの視差情報取得処理
(b)DP(ダイナミックプログラミング)マッチングベースの視差情報取得処理
(c)セグメンテーションベースの視差情報取得処理
(d)学習ベースの視差情報取得処理
(e)上記各手法の組み合わせによる視差情報取得処理
例えば、上記(a)〜(e)のいずれかの手法で視差情報を取得する。
【0049】
図3を参照してブロックマッチングベースの視差情報取得処理について簡単に説明する。
図3に示すように、入力したオリジナルの標準画像である、
(a)左視点画像(L画像)と、
(b)右視点画像(R画像)、
これらの入力LR画像を利用し、例えばL画像の画素領域(ブロック)121を選択し、その選択ブロックと類似するブロックをR画像中から検出する。すなわち、同一被写体の撮影領域であると判断されるブロック(マッチングブロック)をLR画像から選択する。さらに、LR画像間におけるマッチングブロックの位置ずれ(水平方向の画素数等)を測定する。
【0050】
図3において、例えばL画像の画素領域(ブロック)121の注目画素LP=(5,3)の、R画像における対応画素は、RP=(7,3)である。
この場合、L画像の画素位置(x,y)=(5,3)のLR画像間の視差d(5,3)は以下のように算出される。
視差d(5,3)=(7,3)−(5,3)=(2,0)、
すなわち、
L画像の画素位置(x,y)=(5,3)の視差dは2画素[pixel]となる。
【0051】
ブロックの位置ずれは、そのブロックに撮影されている被写体の距離に応じて変動する。
すなわち、ブロックの位置ずれが被写体距離に対応し、この位置ずれ情報を視差情報として取得する。
なお、この視差情報の表現形式として例えばデプスマップ(距離画像あるいは視差マップ)がある。デプスマップ(視差マップ)は、例えばL画像、R画像の各画素単位の視差(被写体距離)を画素単位の輝度によって表現した画像であり、例えば高輝度領域は、近い(カメラに近い)被写体、低輝度領域は、遠い(カメラから遠い)被写体を示す。すなわち被写体距離が輝度によって示された画像である。
【0052】
[3.仮想視点画像生成部の実行する入力LR画像に基づく基本的な仮想視点画像の生成処理について]
次に、仮想視点画像生成部105の実行する入力LR画像に基づく基本的な仮想視点画像の生成処理について説明する。
仮想視点画像生成部105は、
左視点画像(L画像)入力部101からL画像、
右視点画像(R画像)入力部102からR画像、
視差推定部103から視差情報、
信頼度算出部104から信頼度情報、
これらの各情報を入力して、仮想視点画像を生成する。
【0053】
例えば予め設定した数(例えば10)の仮想視点を決定し、これらの各仮想視点に対応する仮想視点画像を生成する。仮想視点画像は、入力した標準LR画像を利用して生成する。すなわち、入力画像である左視点画像(L画像)と右視点画像(R画像)を利用して生成する。
具体的な仮想視点画像の生成処理例について、図4以下を参照して説明する。
【0054】
図4には、画像処理装置に入力するオリジナルの左視点画像(L画像)131と右視点画像(R画像)132、さらに、これらのLR画像に基づいて生成する仮想視点画像133を示している。
左視点画像(L画像)131は標準位置における左眼視点位置から観察した画像であり、右視点画像(R画像)132は標準位置における右眼視点位置から観察した画像である。
左視点画像(L画像)131の視点位置を0.0、
右視点画像(R画像)132の視点位置を1.0とする。
【0055】
図4は、例えばこの視点位置0.0〜1.0の間の視点位置=0.3からの観察画像を仮想視点画像133として生成する場合の処理例を示している。
左視点画像(L画像)131と右視点画像(R画像)132にはそれぞれ異なる位置に同一被写体(リンゴ)が撮影されている。L画像と、R画像において、この同一被写体の位置は、視点位置が異なるために、異なる位置となっている。
視点位置=0.0と視点位置1.0の間の視点位置=0.3の仮想視点画像103を生成する場合、この被写体(リンゴ)の位置を線型補間によって設定する。図4に示す直線L1に沿って被写体位置を変更することによって、各仮想視点における仮想視点画像の被写体位置を決定して仮想視点画像を生成することができる。
このように入力LR画像に基づく線形補間処理によって各仮想視点位置の仮想視点画像を生成する。
【0056】
なお、仮想視点画像を生成する場合、入力LR画像の双方を利用して2つの画像をブレンドする処理によって生成することができる。
あるいは、L画像のみ、あるいはR画像のみを利用して仮想視点位置に応じて被写体位置をずらす処理によって、1つの画像のみを利用して生成することもできる。
あるいは、L画像側に近い仮想視点位置ではL画像のみを利用して仮想視点画像を生成し、R画像に近い位置ではR画像のみを利用して仮想視点画像を生成するといった処理を行ってもよい。
【0057】
入力LR画像のブレンド処理に基づく仮想視点画像131の画素値の決定処理例について図5を参照して説明する。
図5には、
視点位置=0である入力左視点画像(L画像)の画素P(x,y)141、
視点位置=1である入力右視点画像(R画像)におけるL画像の画素Pの対応画素142、
視点位置=Φである仮想視点画像におけるL画像の画素Pの対応画素143、
これらを示している。
なお、
Φ=0〜1
である。
【0058】
左視点画像(L画像)の画素P(x,y)141の視差がd(x,y)[pixel]である場合、
仮想視点画像におけるL画像の画素P(x,y)の対応画素143の画素位置は、
画素Q(x+Φ・d(x,y),y)とする。
すなわち、仮想視点画像における画素Q(x+Φ・d(x,y),y)の画素値を、左視点画像(L画像)の画素P(x,y)141の画素値に設定する。
仮想視点画像の各画素の画素値は、このように、左視点画像(L画像)の画素の視差情報に基づいて設定する。
なお、この処理によって、仮想視点画像の埋まらなかった画素は、右視点画像(R画像)を適用した処理や隣接画素の画素値による補間処理、左視点画像の同一座標の画素で補間する処理などによって画素値を決定する。
【0059】
図6には、
左視点画像(L画像)の水平ライン151、
右視点画像(R画像)の水平ライン152
仮想視点画像の水平ライン153、
を示している。
図に示す矢印は、仮想視点画像の水平ライン153の画素値を決定するために適用可能な左視点画像(L画像)の画素位置と、右視点画像(R画像)の画素位置を結ぶラインである。
【0060】
図6に示す仮想視点画像の水平ライン153において、
1=左視点画像(L画像)の水平ライン151の構成画素値によって画素値の設定された領域
2=右視点画像(R画像)の水平ライン153の構成画素値によって画素値の設定された領域
3=その他の領域
である。
【0061】
このように、仮想視点画像の画素値の設定は、例えば、以下の3つの処理によって実行される。
1.左視点画像(L画像)の各画素に対して、出力視点位置で対応する画素位置を求め、その画素位置に左視点画像(L画像)の画素値を補間する。
2.右視点画像(R画像)の各画素に対して、出力視点位置で対応する画素位置を求め、その画素位置に右視点画像(R画像)の画素値を補間する。
3.上記1,2の処理でも補間されない出力視点画像の画素は、隣接画素に基づく補間処理を行う。
【0062】
なお、図5、図6を参照して説明した処理は入力LR画像に基づいてこれらのLR画像と異なる仮想視点からの画像を生成する基本的な処理である。
本開示の画像処理装置の仮想視点画像生成部105は、この基本的な処理をベースとして、さらに、最適シフト量算出部104から入力する最適シフト量情報を適用して、画像シフトを実行して立体感を強調した最終的な仮想視点画像を生成する。
【0063】
[4.最適シフト量算出部の処理について]
次に、最適シフト量算出部104の実行する処理について説明する。
最適シフト量算出部104は、
左視点画像(L画像)入力部101からL画像、
右視点画像(R画像)入力部102からR画像、
視差情報入力部103、または視差推定部115から視差情報、
これらの各情報を入力して、既定のアルゴリズムに従って、最適視差量を算出する。
【0064】
具体的には、最適シフト量算出部104は、図1の構成では外部から入力する視差情報、また図2に示す構成では視差推定部115から入力する視差情報に基づいて、
クロストーク量、
奥行き感(≒観察者の認識する被写体距離)
これらの情報を考慮して、仮想視点画像に対する最適なシフト量を決定する処理を実行する。
【0065】
最適シフト量算出部104は、予め記憶部に保持された例えば図7に示すデータを記憶部から取得して、このデータに基づいて最適視差量の算出を実行する。
図7に示すデータについて説明する。
図7は、入力LR画像におけるある1つの対応点の1画素に関するデータ例を示している。
例えば視差の設定された画像のある画素、すなわち、視差:x=dの画素について、様々なシフト量Δdを設定した場合の奥行き感D(=観察者の認識する被写体距離)の変化と、クロストーク量Cの変化を示す図である。
クロストークは、先に説明したように、左眼に右眼用の画像(右視点画像)が、右眼に左眼用の画像(左視点画像)が入ってしまう逆視や、左視点画像と右視点画像が混ざる現象である。従って、クロストーク量が少ない方が好ましい画像である。
【0066】
横軸に「視差x=d+Δd」
縦軸に「奥行き感D」と、「クロストーク量C」
これらの関係データを示している。
シフト量は、例えば、画素を水平方向に左移動するシフト処理を−方向のシフト処理、右方向に移動するシフト処理を+方向のシフト処理として示している。
さらに、クロストーク量が、予め既定した値以下の範囲を快適視差範囲として規定する。
この快適視差範囲は、例えば図に示すように、
視差x=x1〜x2
この範囲に設定する。
【0067】
視差と奥行き感D(=観察者の認識する被写体距離)との対応関係について、図8を参照して説明する。
図8には、
(a)視差<0
(b)視差=0
(c)視差>0
これらの3つの態様の視差を持つLR画像の観察状態を示している。
【0068】
図に示す表示面301は、ディスプレイの表示面である。
この表示面に、左視点画像(L画像)と、右視点画像(R画像)の同一被写体の画像が水平方向に位置をずらして表示されることで視差が発生し、観察位置が表示面の前後に設定されることになる。
【0069】
図8(b)の視差=0の場合は、2次元表示と同様の表示であり、左視点画像(L画像)と、右視点画像(R画像)の同一被写体の画像が表示面上で位置ずれなく表示される。この場合は、その表示オブジェクトの観察位置312は表示面上となる。
【0070】
一方、図8(a)の視差<0の場合は、左視点画像(L画像)が左側、右視点画像(R画像)が右側にずれて表示面上で表示される。この表示位置の「ずれ」が視差となり、この場合は、その表示オブジェクトの観察位置は表示面より遠い位置となる。図8(a)に示す観察位置311となる。
【0071】
一方、図8(c)の視差>0の場合は、左視点画像(L画像)が右側、右視点画像(R画像)が左側にずれて表示面上で表示される。この表示位置の「ずれ」が視差となり、この場合は、その表示オブジェクトの観察位置は表示面より近い位置となる。図8(c)に示す観察位置313となる。
【0072】
このように視差に応じて奥行き感D(=観察者の認識する被写体距離)が変更される。
図8に示す3つのデータから理解されるように、視差を決定しているのは、表示面301に表示されるLR画像の対応画素の位置である。
例えば図8(a)に示す左視点画像(L画像)と右視点画像(R画像)の表示位置を水平方向にシフトすることで、図8(b)の設定や図8(c)の設定が可能となる。すなわちシフト処理によって、奥行き感を変化させることができる。
このシフト処理と奥行き感の対応を示しているのが、図7に示す奥行き感Dのラインである。
【0073】
また、例えば入力LR画像に基づいて生成した1つの仮想視点画像に対するシフト処理によって、奥行きレンジを拡大することが可能となる。
この例について図9を参照して説明する。
【0074】
図9には以下の3つのLR画像の視差範囲(奥行きレンジ)を示している。
(1)入力LR画像の視差範囲(奥行きレンジ)
(2)視点内挿処理による仮想視点画像の視差範囲(奥行きレンジ)
(3)上記の(2)の視点内挿処理による仮想視点画像に対してシフト処理を実行して生成したシフト画像の視差範囲(奥行きレンジ)
【0075】
図9(2)は、入力LR画像の視点より、内側に視点を設定した仮想視点画像における視差範囲(奥行きレンジ)を示している。この視差範囲は、入力LR画像の視差範囲より小さくなる。つまり、視点内挿による仮想視点画像は、奥行きレンジを縮小した画像となる。
【0076】
この図9(2)に示す仮想視点画像に対して、画像シフトを実行して生成したシフト画像は、図9(3)に示すように、奥行きレンジが拡大される。
すなわち、観察者は画像に含まれるもっとも遠い被写体と最も近い被写体の距離間隔をより大きく感じることが可能となる。
【0077】
なお、図10に示すように、
観察者の眼の位置からの被写体距離をLdとしたとき、
被写体距離Ldは、以下の式によって算出される。
Ld=(Ls・de)/(de+x)
ただし、
Ls:観察者の眼から表示面間の距離
de:観察者の左右の眼の間隔
x:d+Δd
d:入力LR画像における視差
Δd:シフト量
である。
【0078】
図8〜図10を参照して説明したように、所定の視差を持つ画像に対して、画像のシフト処理を施すことによって、奥行きレンジの拡大効果が得られる。
ただし、シフト量によっては、クロストーク量が増大してしまい、快適な3D画像の観察ができなくなる場合がある。クロストーク量Cは、先に説明したように、左眼に右眼用の画像(右視点画像)が、右眼に左眼用の画像(左視点画像)が入ってしまう逆視や、左視点画像と右視点画像が混ざる現象である。
このクロストーク量Cは、図7に示すように視差の絶対値が大きくなるにつれ、すなわち、視差=0の位置から離れるにしたがって大きくなる傾向がある。
ただし、このクロストーク量は、3D画像を表示するディスプレイによって異なる。
【0079】
最適シフト量算出部104は、図7に示すデータ、すなわち、
シフト量(Δd)のシフト処理によって調整可能な視差(x)と奥行き感(D)との対応関係、
シフト量(Δd)のシフト処理によって調整可能な視差(x)とクロストーク量(C)との対応関係、
これらの対応データを考慮して、快適視差範囲でのシフト量を決定する。
なお、図7に示すデータ、すなわち、
視差xと、奥行き感Dとの対応関係データ、
視差xと、クロストーク量Cとの対応関係データ、
これらの関係データは、予め計測あるいは算出して、画像処理装置の記憶部に格納しておく。
また、所定の奥行き感Dが得られ、さらに、クロストーク量が所定の値以下となる視差範囲を快適視差範囲として規定しておく。例えば、図7に示す視差x=x1〜x2の範囲を快適視差範囲として、この快適視差範囲情報を記憶部に格納しておく。
【0080】
最適シフト量算出部104は、これらのデータ、すなわち、
視差xと、奥行き感Dとの対応関係データ、
視差xと、クロストーク量Cとの対応関係データ、
快適視差範囲情報:視差x=x1〜x2、
これらのデータを記憶部から取得して、最適なシフト量を決定する。
【0081】
シフト量の決定処理は、以下のアルゴリズムに従って行う。
(ステップ1)既定の評価関数を使用して画素ごとに評価値sを算出する。
(ステップ2)各画素の評価値sを合計して1フレームの評価値Sを算出する。
(ステップ3)画像の視差調整のために実行するLR画像のいずれか一方の画像の水平方向のシフト量をΔdとして、図7に示す既定の快適視差範囲内の設定可能なシフト量Δdに基づく画像フレーム単位の評価値S(Δd)を算出する。
(ステップ4)快適視差範囲内の設定可能なシフト量Δdに応じて算出される画像フレーム単位の評価値S(Δd)中、最大の評価値となるシフト量Δd'を、最適シフト量とする。
【0082】
最適シフト量算出部104は、上記のアルゴリズムに従って、最適シフト量Δd'を生成して仮想視点画像生成部105に出力する。
仮想視点画像生成部105は、入力LR画像に基づいて生成した仮想視点画像に対して、最適シフト量Δd'を適用した水平方向シフト処理を実行して最終的な仮想視点画像を生成する。
【0083】
上記の(ステップ1)において利用する評価関数について説明する。画素単位の評価値sは、例えば以下の評価関数によって算出する。
s=α・D(d+Δd)−β・C(d+Δd)
なお、
α,βは、予め設定した重み係数
Dは奥行き感データ(図7参照)、
Cはクロストーク量(図7参照)、
dは視差情報、
Δdはシフト量を示す変数、
である。
図7に示す設定で、
視差x=d+Δdであり、
x=x1〜x2の範囲で、変数Δdを設定して各シフト量Δdの値に対応する評価値sを算出する。
【0084】
視差情報dは、画素単位の視差情報であり、図1の構成では、視差情報入力部1103から入力され、図2の構成では視差推定部115から入力される。
奥行き感データDと、クロストーク量Cは、入力される視差情報dに基づいて、記憶部から取得する図7に示す関係データに基づいて算出される。
【0085】
Δdは変数であり、図7に示す既定の快適視差範囲内で設定される。
各シフト量Δdに基づく画像フレームの画素単位の評価値s(Δd)を算出し、さらに、1フレームの画像全体の画素の評価値s(Δd)の加算値を、画像フレーム単位の評価値S(Δd)として算出する。
【0086】
なお、画素単位の評価値s(Δd)の単純な加算値を、画像フレーム単位の評価値S(Δd)として算出する構成としてもよいが、各画素の評価値に対してさらに重み付けを行って重み付け後の評価値の加算値を画像フレーム全体の評価値として算出してもよい。
重み付けは、例えば、注目領域、例えば画像の中心部分やあるいは人物領域などに対する重みを大きくする設定などが有効である。具体的には、「Visual Attention」の「saliency map」などを利用して注目領域に大きい重み例数を設定して加算する処理などが可能である。
【0087】
このようにして、快適視差範囲内で設定可能なシフト量Δdに応じて算出される画像フレーム単位の評価値S(Δd)中、最大の評価値となるシフト量Δd'を、最適シフト量とする。
【0088】
最適シフト量算出部104は、このように、最適シフト量Δd'を生成して、仮想視点画像生成部105に出力する。仮想視点画像生成部105は、最適シフト量Δd'をLR画像に基づいて生成した仮想視点画像に対する水平方向シフト量として適用したシフト画像を生成し、これを最終的に出力する仮想視点画像とする。
【0089】
このような画像シフトにより、クロストーク量を所定値以下に抑えた快適視差範囲内で、所定の奥行き感を実現する仮想視点画像の生成が可能となる。
【0090】
最適シフト量算出部104は、先に図7に示す快適視差範囲内のシフト量であり、かつ画像フレームの構成画素の評価値sのトータルとして得られる画像単位の評価値Sが最大となるシフト量Δd'を決定する。
【0091】
このシフト量Δd'を適用したシフト処理によって、快適視差範囲内でかつ十分な奥行き感を持つ仮想視点画像を生成して出力することが可能となる。
【0092】
[5.仮想視点画像生成部の処理について]
次に、図1、図2に示す仮想視点画像生成部105の具体的処理例について説明する。
仮想視点画像生成部105は、
左視点画像(L画像)入力部101からL画像、
右視点画像(R画像)入力部102からR画像、
視差推定部103から視差情報、
最適シフト量算出部104から最適シフト量、
これらの各情報を入力して、仮想視点画像を生成する。
【0093】
仮想視点画像生成部105は、左視点画像(L画像)入力部101からL画像と、右視点画像(R画像)入力部102からR画像を適用して仮想視点画像を生成する。まず、先に、図4〜図6を参照して説明した処理に従って、予め決められた数(N)の仮想視点画像を生成する。
さらに、この仮想視点画像に対するシフト処理を実行する。すなわち、最適シフト量算出部104から入力する最適シフト量Δd'を仮想視点画像の構成画素の水平方向のシフト量として適用したシフト処理を実行して、これを出力する仮想視点画像とする。
【0094】
この処理により、快適視差範囲内でかつ十分な奥行き感を持つ仮想視点画像を生成して出力することが可能となる。
【0095】
なお、前述したように、本開示の画像処理装置の生成する表示画像は、ユーザがメガネを装着しなくても立体画像を視聴することができる裸眼3D表示装置における表示画像である。
【0096】
図1、図2に示す表示部110は、裸眼3D表示を行う表示部であり、ディスプレイ面に例えばレンチキュラシートや、パララックスバリア(視差バリア)を備え、視聴位置によって左眼と右眼に入る画像を制御可能とした表示部である。
表示制御部106は、仮想視点画像生成部105の生成した仮想視点画像を表示部110に出力する。
なお、表示制御部106は、表示部110の表示構成に応じた表示情報を生成する。
【0097】
なお、画像処理装置は、例えば撮像部を備えたカメラ等の撮像装置、PC、テレビなどの表示装置として構成することも可能であり、これらの装置として構成する場合は各装置に応じた機能を備えた構成とする。
例えばカメラの場合、異なる視点からの画像としてのLR画像を撮影する撮像部を有し、撮像部から入力するLR画像を利用して多視点画像を生成する構成とする。
【0098】
[6.本開示の構成のまとめ]
以上、特定の実施例を参照しながら、本開示の実施例について詳解してきた。しかしながら、本開示の要旨を逸脱しない範囲で当業者が実施例の修正や代用を成し得ることは自明である。すなわち、例示という形態で本発明を開示してきたのであり、限定的に解釈されるべきではない。本開示の要旨を判断するためには、特許請求の範囲の欄を参酌すべきである。
【0099】
なお、本明細書において開示した技術は、以下のような構成をとることができる。
(1) 3次元画像表示に適用する左眼用の画像信号である左視点画像(L画像)を入力する左視点画像入力部と、
3次元画像表示に適用する右眼用の画像信号である右視点画像(R画像)を入力する右視点画像入力部と、
前記左視点画像(L画像)と、前記右視点画像(R画像)と、前記左視点画像(L画像)と右視点画像(R画像)の視差情報を入力して、快適視差範囲内の画像シフト量の最適値を算出する最適シフト量算出部と、
入力LR画像の視点以外の視点画像を含む仮想視点画像を生成する仮想視点画像生成部を有し、
前記最適シフト量算出部は、視差量と立体感との対応関係データと、視差量とクロストーク量との対応関係データを利用して、予め既定したクロストーク量以下の範囲内の最適シフト量を算出し、
前記仮想視点画像生成部は、
入力LR画像に基づいて生成した仮想視点画像に対して、前記最適シフト量算出部の算出した最適シフト量に従った画像シフト処理を施して最終的な出力用仮想視点画像を生成する画像処理装置。
【0100】
(2)前記最適シフト量算出部は、視差量と立体感との対応関係データと、視差量とクロストーク量との対応関係データを利用して、各画素対応の画素対応評価値sを算出し、さらに画像全体の構成画素の画素対応評価値sを加算した画像単位の画像単位評価値Sを算出して、画像単位評価値Sが最大となるシフト量を最適シフト量として算出する前記(1)に記載の画像処理装置。
(3)前記最適シフト量算出部は、視差量と立体感との対応関係データと、視差量とクロストーク量との対応関係データを利用して、各画素対応の画素対応評価値sを算出し、さらに画像全体の構成画素の画素対応評価値sに対して、画像領域単位の重み付けを行う重み係数を乗算して加算した各シフト量に応じた画像単位評価値Sを算出して、画像単位評価値Sが最大となるシフト量を最適シフト量として算出する前記(1)または(2)に記載の画像処理装置。
【0101】
(4)前記最適シフト量算出部は、クロストーク量が予め規定した値以下の範囲を快適視差範囲として、該快適視差範囲内で、シフト量を変化させて、各シフト量に応じた画素対応評価値sを算出し、さらに画像全体の構成画素の画素対応評価値sを加算した、シフト量に応じた画像単位評価値Sを算出して、画像単位評価値Sが最大となるシフト量を最適シフト量として算出する前記(1)〜(3)いずれかに記載の画像処理装置。
(5)前記最適シフト量算出部は、クロストーク量が予め規定した値以下の範囲を快適視差範囲として、該快適視差範囲内で、シフト量を変化させて、各シフト量に応じた画素対応評価値sを算出し、さらに画像全体の構成画素の画素対応評価値sに対して、画像領域単位の重み付けを行う重み係数を乗算して加算した各シフト量に応じた画像単位評価値Sを算出して、画像単位評価値Sが最大となるシフト量を最適シフト量として算出する前記(1)〜(4)いずれかに記載の画像処理装置。
【0102】
(6)前記画像処理装置は、さらに、前記左視点画像(L画像)と右視点画像(R画像)から視差情報を生成する視差推定部を有し、前記仮想視点画像生成部は、前記左視点画像(L画像)と、前記右視点画像(R画像)と、前記視差情報と、前記最適シフト量を入力して、入力LR画像の視点以外の視点画像を含む仮想視点画像を生成する前記(1)〜(5)いずれかに記載の画像処理装置。
【0103】
さらに、上記した装置等において実行する処理の方法や、処理を実行させるプログラムも本開示の構成に含まれる。
【0104】
また、明細書中において説明した一連の処理はハードウェア、またはソフトウェア、あるいは両者の複合構成によって実行することが可能である。ソフトウェアによる処理を実行する場合は、処理シーケンスを記録したプログラムを、専用のハードウェアに組み込まれたコンピュータ内のメモリにインストールして実行させるか、あるいは、各種処理が実行可能な汎用コンピュータにプログラムをインストールして実行させることが可能である。例えば、プログラムは記録媒体に予め記録しておくことができる。記録媒体からコンピュータにインストールする他、LAN(Local Area Network)、インターネットといったネットワークを介してプログラムを受信し、内蔵するハードディスク等の記録媒体にインストールすることができる。
【0105】
なお、明細書に記載された各種の処理は、記載に従って時系列に実行されるのみならず、処理を実行する装置の処理能力あるいは必要に応じて並列的にあるいは個別に実行されてもよい。また、本明細書においてシステムとは、複数の装置の論理的集合構成であり、各構成の装置が同一筐体内にあるものには限らない。
【産業上の利用可能性】
【0106】
以上、説明したように、本開示の一実施例構成によれば、3次元画像としてのLR画像に基づく仮想視点画像の生成に際して、画像シフト処理を施すことで立体感を強調した視差画像を生成することが可能となる。
具体的には、3次元画像表示に適用する左眼用の画像信号であるL画像と、R画像を入力し、L画像とR画像と、LR画像の視差情報を入力して、快適視差範囲内の画像シフト量の最適値を算出する最適シフト量算出部と、入力LR画像の視点以外の視点画像を含む仮想視点画像を生成する仮想視点画像生成部を有する。最適シフト量算出部は、視差量と立体感との対応関係データと、視差量とクロストーク量との対応関係データを利用して、予め既定したクロストーク量以下の範囲内の最適シフト量を算出し、仮想視点画像生成部は、前記最適シフト量算出部の算出した最適シフト量に従った画像シフト処理を施して最終的な出力用仮想視点画像を生成する。
この処理により、3次元画像としてのLR画像に基づく仮想視点画像の生成に際して、画像シフト処理を施すことで立体感を強調した視差画像を生成することが可能となる。
【符号の説明】
【0107】
100 画像処理装置
101 左視点画像(L画像)入力部
102 右視点画像(R画像)入力部
103 視差情報入力部
104 最適シフト量算出部
105 仮想視点画像生成部
106 表示制御部
107 表示部
115 視差推定部
121 ブロック
131 入力L画像
132 入力R画像
133 仮想視点画像
301 表示面
311〜313 観察位置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
3次元画像表示に適用する左眼用の画像信号である左視点画像(L画像)を入力する左視点画像入力部と、
3次元画像表示に適用する右眼用の画像信号である右視点画像(R画像)を入力する右視点画像入力部と、
前記左視点画像(L画像)と、前記右視点画像(R画像)と、前記左視点画像(L画像)と右視点画像(R画像)の視差情報を入力して、快適視差範囲内の画像シフト量の最適値を算出する最適シフト量算出部と、
入力LR画像の視点以外の視点画像を含む仮想視点画像を生成する仮想視点画像生成部を有し、
前記最適シフト量算出部は、視差量と立体感との対応関係データと、視差量とクロストーク量との対応関係データを利用して、予め既定したクロストーク量以下の範囲内の最適シフト量を算出し、
前記仮想視点画像生成部は、
入力LR画像に基づいて生成した仮想視点画像に対して、前記最適シフト量算出部の算出した最適シフト量に従った画像シフト処理を施して最終的な出力用仮想視点画像を生成する画像処理装置。
【請求項2】
前記最適シフト量算出部は、
視差量と立体感との対応関係データと、視差量とクロストーク量との対応関係データを利用して、各画素対応の画素対応評価値sを算出し、
さらに画像全体の構成画素の画素対応評価値sを加算した画像単位の画像単位評価値Sを算出して、画像単位評価値Sが最大となるシフト量を最適シフト量として算出する請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項3】
前記最適シフト量算出部は、
視差量と立体感との対応関係データと、視差量とクロストーク量との対応関係データを利用して、各画素対応の画素対応評価値sを算出し、
さらに画像全体の構成画素の画素対応評価値sに対して、画像領域単位の重み付けを行う重み係数を乗算して加算した各シフト量に応じた画像単位評価値Sを算出して、画像単位評価値Sが最大となるシフト量を最適シフト量として算出する請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項4】
前記最適シフト量算出部は、
クロストーク量が予め規定した値以下の範囲を快適視差範囲として、該快適視差範囲内で、シフト量を変化させて、各シフト量に応じた画素対応評価値sを算出し、
さらに画像全体の構成画素の画素対応評価値sを加算した、シフト量に応じた画像単位評価値Sを算出して、画像単位評価値Sが最大となるシフト量を最適シフト量として算出する請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項5】
前記最適シフト量算出部は、
クロストーク量が予め規定した値以下の範囲を快適視差範囲として、該快適視差範囲内で、シフト量を変化させて、各シフト量に応じた画素対応評価値sを算出し、
さらに画像全体の構成画素の画素対応評価値sに対して、画像領域単位の重み付けを行う重み係数を乗算して加算した各シフト量に応じた画像単位評価値Sを算出して、画像単位評価値Sが最大となるシフト量を最適シフト量として算出する請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項6】
前記画像処理装置は、さらに、
前記左視点画像(L画像)と右視点画像(R画像)から視差情報を生成する視差推定部を有し、
前記仮想視点画像生成部は、
前記左視点画像(L画像)と、前記右視点画像(R画像)と、前記視差情報と、前記最適シフト量を入力して、入力LR画像の視点以外の視点画像を含む仮想視点画像を生成する請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項7】
画像処理装置において実行する画像処理方法であり、
画像入力部を介して、3次元画像表示に適用する左眼用の画像信号である左視点画像(L画像)と、右眼用の画像信号である右視点画像(R画像)を入力し、
最適シフト量算出部が、前記左視点画像(L画像)と、前記右視点画像(R画像)と、前記左視点画像(L画像)と右視点画像(R画像)の視差情報を入力して、快適視差範囲内の画像シフト量の最適値を算出する最適シフト量算出処理と、
仮想視点画像生成部が、入力LR画像の視点以外の視点画像を含む仮想視点画像を生成する仮想視点画像生成処理を実行し、
前記最適シフト量算出処理は、
視差量と立体感との対応関係データと、視差量とクロストーク量との対応関係データを利用して、予め既定したクロストーク量以下の範囲内の最適シフト量を算出する処理であり、
前記仮想視点画像生成処理は、
入力LR画像に基づいて生成した仮想視点画像に対して、前記最適シフト量算出部の算出した最適シフト量に従った画像シフト処理を施して最終的な出力用仮想視点画像を生成する処理として実行する画像処理方法。
【請求項8】
画像処理装置において画像処理を実行させるプログラムであり、
画像入力部を介して、3次元画像表示に適用する左眼用の画像信号である左視点画像(L画像)と、右眼用の画像信号である右視点画像(R画像)を入力する処理と、
最適シフト量算出部が、前記左視点画像(L画像)と、前記右視点画像(R画像)と、前記左視点画像(L画像)と右視点画像(R画像)の視差情報を入力して、快適視差範囲内の画像シフト量の最適値を算出する最適シフト量算出処理と、
仮想視点画像生成部が、入力LR画像の視点以外の視点画像を含む仮想視点画像を生成する仮想視点画像生成処理を実行させ、
前記最適シフト量算出処理においては、
視差量と立体感との対応関係データと、視差量とクロストーク量との対応関係データを利用して、予め既定したクロストーク量以下の範囲内の最適シフト量を算出する処理を実行させ、
前記仮想視点画像生成処理においては、
入力LR画像に基づいて生成した仮想視点画像に対して、前記最適シフト量算出部の算出した最適シフト量に従った画像シフト処理を施して最終的な出力用仮想視点画像を生成する処理を実行させるプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−90129(P2013−90129A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−228698(P2011−228698)
【出願日】平成23年10月18日(2011.10.18)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】