画像処理装置、スクリーンパターンの選択方法及びプログラム
【課題】視覚的に画質劣化が軽減されるようにスクリーンパターンを選択する。
【解決手段】画像処理装置は、スクリーン処理によって出力可能な階調数より多い階調数に対応するスクリーンパターンと、当該スクリーンパターンのそれぞれに対し算出された出力特性の評価値とを記憶するスクリーンパターン記憶部と、ユーザにより入力された出力調整の指示値に対応する目標評価値を算出し、前記スクリーンパターン記憶部に記憶されているスクリーンパターンのうち、前記算出された目標評価値に近い評価値を有するスクリーンパターンを、スクリーン処理によって出力される階調数だけ選択するスクリーンパターン選択部と、を備える。
【解決手段】画像処理装置は、スクリーン処理によって出力可能な階調数より多い階調数に対応するスクリーンパターンと、当該スクリーンパターンのそれぞれに対し算出された出力特性の評価値とを記憶するスクリーンパターン記憶部と、ユーザにより入力された出力調整の指示値に対応する目標評価値を算出し、前記スクリーンパターン記憶部に記憶されているスクリーンパターンのうち、前記算出された目標評価値に近い評価値を有するスクリーンパターンを、スクリーン処理によって出力される階調数だけ選択するスクリーンパターン選択部と、を備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像処理装置、スクリーンパターンの選択方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
中間調の再現手法としては、ディザ法によるスクリーン処理がある。スクリーン処理に用いるスクリーンパターンには出力特性があり、スクリーンパターンの種類やスクリーンパターンが表す階調によって、スクリーン処理後の出力画像の画質が異なってくる。そこで、粒状性や階調性、安定性、テクスチャ等の出力特性を評価し、その評価を元に最適なスクリーンパターンを選択する方法が提案されている(例えば、特許文献1、2参照)。一般的には、各出力特性の評価値が最良となる組合せのスクリーンパターンが選択される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−208639号公報
【特許文献2】特開2007−208638号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、評価値が良好であるからといって、必ずしも最良の画質が得られるとは限らない。
例えば、印刷機器に特有のノイズ(例えば周期ムラ等)があった場合に、粒状性の評価が良く、ノイズが少ない又は無いスクリーンパターンを選択すると、かえって印刷機器に特有のノイズが目立つということが起こり得る。
【0005】
本発明の課題は、視覚的に画質劣化が軽減されるようにスクリーンパターンを選択することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の発明によれば、
スクリーン処理によって出力可能な階調数より多い階調数に対応するスクリーンパターンと、当該スクリーンパターンのそれぞれに対し算出された出力特性の評価値とを記憶するスクリーンパターン記憶部と、
ユーザにより入力された出力調整の指示値に対応する目標評価値を算出し、前記スクリーンパターン記憶部に記憶されているスクリーンパターンのうち、前記算出された目標評価値に近い評価値を有するスクリーンパターンを、スクリーン処理によって出力される階調数だけ選択するスクリーンパターン選択部と、
を備える画像処理装置が提供される。
【0007】
請求項2に記載の発明によれば、
前記スクリーンパターン選択部は、前記スクリーンパターン記憶部に記憶されたスクリーンパターンの全階調数を、スクリーン処理によって出力される階調数で除算した一定階調範囲毎に、前記目標評価値と最も近い評価値を有するスクリーンパターンを1つずつ選択する請求項1に記載の画像処理装置が提供される。
【0008】
請求項3に記載の発明によれば、
前記スクリーンパターン選択部は、前記一定階調範囲毎の評価値の平均値を、ユーザにより入力された指示値に対応して増減した値を一定階調範囲毎の目標評価値として算出し、当該一定階調範囲毎の目標評価値に最も近い評価値を有するスクリーンパターンを1つずつ選択する請求項2に記載の画像処理装置が提供される。
【0009】
請求項4に記載の発明によれば、
前記指示値は、全階調に対して入力された1つの指示値である請求項2又は3に記載の画像処理装置が提供される。
【0010】
請求項5に記載の発明によれば、
前記指示値は、前記一定階調範囲毎に入力された指示値である請求項2又は3に記載の画像処理装置が提供される。
【0011】
請求項6に記載の発明によれば、
前記スクリーンパターン選択部は、全階調の評価値の平均値を、ユーザにより入力された指示値に対応して増減した値を目標階調値として算出し、当該目標階調値に最も近い評価値を有するスクリーンパターンを、前記一定階調範囲毎に1つずつ選択する請求項2に記載の画像処理装置が提供される。
【0012】
請求項7に記載の発明によれば、
前記評価値は、ノイズの評価値である請求項1〜6の何れか一項に記載の画像処理装置が提供される。
【0013】
請求項8に記載の発明によれば、
スクリーン処理によって出力可能な階調数より多い階調数に対応するスクリーンパターンと、当該スクリーンパターンのそれぞれに対し算出された出力特性の評価値とを、スクリーンパターン記憶部に記憶し、保持させる工程と、
ユーザにより入力された出力調整の指示値に対応する目標評価値を算出する工程と、
前記スクリーンパターン記憶部に記憶されているスクリーンパターンのうち、前記算出された目標評価値に近い評価値を有するスクリーンパターンを、スクリーン処理によって出力される階調数だけ選択する工程と、
を含むスクリーンパターンの選択方法が提供される。
【0014】
請求項9に記載の発明によれば、
コンピュータを、
スクリーン処理によって出力可能な階調数より多い階調数に対応するスクリーンパターンと、当該スクリーンパターンのそれぞれに対し算出された出力特性の評価値とを記憶するスクリーンパターン記憶部、
ユーザにより入力された出力調整の指示値に対応する目標評価値を算出し、前記スクリーンパターン記憶部に記憶されているスクリーンパターンのうち、前記算出された目標評価値に近い評価値を有するスクリーンパターンを、スクリーン処理によって出力される階調数だけ選択するスクリーンパターン選択部、
として機能させるためのプログラムが提供される。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、印刷された出力画像に画質劣化が生じたとしても、ユーザの出力調整によって、画質劣化が視覚的に軽減されるようにスクリーンパターンを選択することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本実施形態におけるMFPの機能的構成を示す図である。
【図2】図1の画像処理部の構成の一部を示す図である。
【図3】スクリーンパターン選択処理を示すフローチャートである。
【図4】0〜4096階調のスクリーンパターンに対し算出されたVisual Power値をプロットしたグラフであり、一定階調範囲毎の平均値に最も近いVisual Power値を示す。
【図5】図4のグラフの一部を拡大した図である。
【図6】一定階調範囲毎の平均値に10加えたVisual Power値に最も近いVisual Power値を示すグラフである。
【図7】一定階調範囲毎の平均値を10減じたVisual Power値に最も近いVisual Power値を示すグラフである。
【図8】ノイズの出力調整を行う操作画面例を示す図である。
【図9】図5のグラフに目標Visual Power値を示した図である。
【図10】一定階調範囲毎にノイズの出力調整を行う場合の操作画面例を示す図である。
【図11】全階調の平均値に、ユーザにより入力された出力調整の指示値に応じた調整量を加えたVisual Power値を目標Visual Power値とした場合に、一定階調範囲毎に当該目標Visual Power値に最も近いVisual Power値を示すグラフである。
【図12】一定階調範囲毎に、ユーザにより入力された目標Visual Power値の指示値に最も近いVisual Power値を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。
【0018】
図1に、本実施形態におけるMFP(Multi Function Peripheral)100の機能的構成を示す。MFP100は、複写機能、印刷機能等の複数の機能を備えた複合型の画像処理装置である。
図1に示すように、MFP100はコントローラ20に接続されている。コントローラ20は、PC(パーソナルコンピュータ)等から印刷対象として送信されるPDL(Page Description Language)形式のデータをラスタライズ処理し、ビットマップ形式の画像データを生成する。生成された画像データは、MFP100に入力される。なお、コントローラ20はMFP100に内蔵される構成であってもよい。
【0019】
MFP100は、図1に示すように、画像処理部10、制御部11、読取部12、操作部13、表示部14、記憶部15、メモリ制御部16、画像メモリ17、印刷装置18、通信部19を備えて構成されている。
【0020】
制御部11は、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)等から構成されている。制御部11は、記憶部15に記憶されている各種処理プログラムとの協働によって各種演算を行い、MFP100の各部を集中制御する。
【0021】
読取部12は、光学系やCCD(Charge Coupled Device)を有するスキャナを備え、原稿を光走査してアナログ画像信号を生成する。生成された画像信号は画像処理部10に出力される。
【0022】
操作部13は、ユーザの指示を入力するために用いられ、各種キーや表示部14と一体に構成されるタッチパネル等を備えて構成されている。操作部13は、入力操作に応じた操作信号を生成して制御部11に出力する。
表示部14は、制御部11の制御に従ってディスプレイ上に操作画面等を表示する。
記憶部15は、各種処理プログラムの他、処理に必要なパラメータや設定データ等を記憶している。記憶部15としてはハードディスクを用いることができる。
【0023】
メモリ制御部16は、画像メモリ17に対する画像データの入出力を制御する。例えば、メモリ制御部16は通信部19や画像処理部10から入力される画像データを画像メモリ17に保存する。また、メモリ制御部16は制御部11により印刷が指示された画像データを画像メモリ17から読み出して画像処理部10に出力する。
画像メモリ17は、画像データを記憶する。画像メモリ17としてはDRAM(Dynamic RAM)を用いることができる。
【0024】
印刷装置18は、画像処理部10から入力される画像データの印刷を行う。
印刷装置18は、電子写真方式による印刷を行い、例えば、給紙部、露光部、現像部、転写部、定着部等からなる。印刷時には、画像データがPWM(Pulse Width Modulation)変換されて得られたPWM信号に従って、露光部が感光ドラム上にレーザ光を照射し静電潜像を形成する。これを現像部がトナーを用いて現像処理し、感光ドラム上にトナー像を形成すると、給紙部から給紙された用紙上に転写部がトナー像を転写させ、定着部がトナー像の定着処理を行う。
【0025】
通信部19は通信用のインターフェイスを備え、コントローラ20と通信を行う。通信部19は、コントローラ20から印刷対象の画像データを受信し、メモリ制御部16に出力する。
【0026】
次に、図2を参照して画像処理部10について説明する。
画像処理部10は、読取部12から入力されたアナログ画像信号に輝度補正処理等の各種補正処理や色変換処理を施す。また、画像処理部10はデジタル変換によって、デジタル画像データを生成してメモリ制御部16に出力する。画像データはメモリ制御部16によって画像メモリ17に保存される。
【0027】
その後、制御部11により印刷指示があると、画像メモリ17に保存されている画像データが読み出されて画像処理部10に入力される。画像処理部10は当該画像データに印刷に必要な画像処理、例えば画像の濃度を補正するγ補正処理や、画像の画素値を2値に変換するスクリーン処理を施し、印刷用の画像データを生成する。
【0028】
図2は、スクリーン処理時に主に機能する画像処理部10の構成部分を示している。
画像処理部10は、図2に示すように、スクリーン処理部1、スクリーンパターン記憶部2、スクリーンパターン選択部3を含む。
【0029】
スクリーン処理部1は、スクリーンパターン選択部3から入力されるスクリーンパターンを用いて、画像データにスクリーン処理を施す。スクリーン処理において、スクリーン処理部1は画像を走査してスクリーンパターンを配置し、画像の各画素値がスクリーンパターンに設定された閾値より大きいか否かによって、画素値を2値化する。スクリーン処理された画像データは印刷装置18に出力される。
なお、スクリーン処理によって出力可能な階調数の範囲内であれば、実際に出力する階調数は変更可能である。例えば、出力可能な階調数が256であれば、実際に出力される階調数は256の場合もあるし、64の場合もある。
【0030】
スクリーンパターン記憶部2は、スクリーン処理によって出力可能な階調数よりも多い階調数に対応するスクリーンパターンを記憶している。このような各階調のスクリーンパターンは、スクリーン線数やスクリーンパターンのサイズ、形状が異なる複数の種類分準備して記憶してもよい。スクリーンパターン記憶部2は、各階調のスクリーンパターンに対しそれぞれ算出された出力特性の評価値を、各階調のスクリーンパターンに対応付けて記憶している。
【0031】
スクリーンパターン選択部3は、スクリーンパターン記憶部2に記憶されている複数の階調のスクリーンパターンのうち、スクリーン処理に用いられるスクリーンパターンを選択してスクリーン処理部1に出力する。
【0032】
図3は、スクリーンパターン選択部3によるスクリーンパターン選択処理を示すフローチャートである。
最初に、スクリーン処理によって出力可能な階調数より多い階調数に対応するスクリーンパターンが準備される。当該スクリーンパターンは、制御部11が作成してもよいし、予め作成され、コントローラ20を介して入力されたものを取得してもよい。準備された各階調のスクリーンパターンは、制御部11の制御によりスクリーンパターン選択部3に入力される。図3に示すように、スクリーンパターン選択部3は、入力された各階調のスクリーンパターンをスクリーンパターン記憶部2に記憶し、保持させる(ステップS1)。
【0033】
ここでは、スクリーン処理部1により出力可能な階調数が256であり、256より多い4096階調に対応するスクリーンパターンが保持される例を説明する。この4096階調分のスクリーンパターンは、例えば4095画素からなり、階調0から階調4095まで階調が1増加する毎に、各画素に出力されるドットが1つずつ増加するように閾値が設定されている。
【0034】
次いで、スクリーンパターン選択部3は、保持された全スクリーンパターンに対し、出力特性の評価値を算出する。評価値は、スクリーンパターンを用いることによって出力画像に生じる画質の評価値であり、スクリーンパターン自体の出力特性を示す。スクリーンパターン選択部3は、各階調のスクリーンパターンに対応付けて、それぞれ算出された評価値をスクリーンパターン記憶部2に記憶し、保持させる(ステップS2)。
【0035】
本実施形態では、出力特性の評価値の一例として、スクリーンパターンを用いてスクリーン処理して得られた出力画像のノイズの評価値を示すVisual Power値を算出する例を説明する。
Visual Power値は、出力画像の周波数特性に視覚特性を加えたノイズの推定値であり、次のように求めることができる(IMAGE NOISE EVALUATION METHOD FOR XEROGRAPHIC PRINTS OF DIGITIZED IAMGE,Yoshitsugu HIROSE他,JAPAN HARDCOPY,1988参照)。
【0036】
まず、出力画像に対し離散的2次元フーリエ変換が実行される。出力画像の離散的2次元フーリエ変換をF(u,v)により表すと、そのウィナースペクトラム(Wiener Spectrum)P(u,v)は下記式1のように表される。
P(u,v)=|F(u,v)|2 ・・・(1)
【0037】
得られたウィナースペクトラムP(u,v)は極座標p(fr,θ)に変換され、下記式に用いられる。
【数1】
式2において、frは動径(radial)周波数である。
【0038】
Visual Powerは、式2を拡張して下記式3のように求めることができる。式3は、出力画像のノイズの物理評価値に視覚特性を考慮した重み付けを行い、物理評価値に心理評価値を加えている。視覚特性としては視覚の空間周波数VTF(Visual Transfer Function)を用いている。
【数2】
式3において、Δfrは動径(radial)周波数の基本周波数を示し、cはスケール定数である。mはx及びy軸の画素数の半数を示している。
【0039】
図4は、0〜4095階調の各スクリーンパターンに対して算出されたVisual Power値をプロットしたグラフである。図5は図4の一部を拡大した図である。図4及び図5に示すように、スクリーンパターンによってVisual Power値に差異がある、つまりスクリーンパターンによって出力画像に現れるノイズ量に差異があることがわかる。例えば、図4に示すように0〜500階調あたりのノイズ量に比較して1000〜2000階調あたりのノイズ量は大きくなっている。また、図5に示すように0〜500階調の範囲の中でも階調が2,3異なるだけでノイズ量が異なっている。
【0040】
本実施形態では、後述する処理において、保持されている4096階調分のスクリーンパターンから、一定階調範囲毎にスクリーンパターンが1つ選択される。一定階調範囲は、全階調数4096を、スクリーン処理によって出力される階調数256で除算した16階調である。この16階調範囲毎に、1つずつスクリーンパターンが選択され、結果としてスクリーン処理の出力に必要な256階調分のスクリーンパターンが選択される。このとき、どのような選択基準でスクリーンパターンを選択するかによって、実際に出力されるノイズ量が変わってくる。
【0041】
例えば、一定階調範囲に属する各スクリーンパターンのVisual Power値の平均値に最も近いVisual Power値を持つスクリーンパターンを選択する場合、図4又は図5において丸印が示すVisual Power値を有するスクリーンパターンが選択される。なお、図4及び図5において、16階調範囲毎の各スクリーンパターンのVisual Power値を平均した平均値を実線で示している。
【0042】
一方、平均値に10加えたVisual Power値に最も近いVisual Power値を持つスクリーンパターンを選択する場合、図6において丸印が示すVisual Power値を有するスクリーンパターンが選択される。平均値を10減じたVisual Power値に最も近いVisual Power値を持つスクリーンパターンを選択する場合は、図7において丸印が示すVisual Power値を有するスクリーンパターンが選択される。
【0043】
図4、図6、図7を比較すれば分かるように、平均値を基準とするのか、平均値±10のVisual Power値を基準とするのかによって、選択されるスクリーンパターンは異なってくる。平均値より大きいVisual Power値を基準とすれば、図6に示すように全体的にVisual Power値が大きく、出力されるノイズが大きい出力特性を持つスクリーンパターンが選択される。逆に、平均値より小さいVisual Power値を基準とすれば、図7に示すように全体的にVisual Power値が小さく、出力されるノイズが小さい出力特性を持つスクリーンパターンが選択される。
言い換えれば、スクリーンパターンの選択基準を調整することによって、実際にスクリーン処理に用いられるスクリーンパターンの出力特性を調整し、ひいては出力されるノイズ量を調整することが可能である。MFP100においては、ノイズの出力調整をユーザが行うことができ、ユーザによるノイズの出力調整に従ってスクリーンパターンの選択基準が決定される。
【0044】
図3に示すように、スクリーンパターン選択部3は、ユーザによるノイズの出力調整の指示値を取得する(ステップS3)。ノイズの出力調整時、例えば制御部11の制御によって表示部14には図8に示すような操作画面D1が表示される。操作画面D1には、スクリーンパターンの種類を選択する選択キーd1、選択された種類のスクリーンパターンについてノイズの出力調整の指示値を入力できる入力領域d2が表示されている。
【0045】
ユーザは、選択キーd1によって出力調整したいスクリーンパターンの種類を選択操作した後、キーd3を操作して入力領域d2に所望のノイズの出力調整量(−5〜+5)を指示値として入力する。このとき、ユーザは各階調のパッチ画像をテスト印刷し、選択したスクリーンパターンによって得られた実際の出力画像によってノイズの出力状況を確認した後、ノイズの出力調整量を決定すればよい。例えば、出力画像のノイズがまばらでかえってノイズが目立つ場合、このノイズにさらにノイズを付加して元のノイズが目立たなくなるよう、+1〜+5の何れかの指示値を入力すればよい。このようにして操作部13を介してユーザにより入力されたノイズの出力調整の指示値は、制御部11によってスクリーンパターン選択部3に入力される。
【0046】
スクリーンパターン選択部3は、取得したノイズの出力調整の指示値に対応する目標Visual Power値を算出し、設定する(ステップS4)。目標Visual Power値はスクリーンパターンの選択基準となる。
目標Visual Power値は、ノイズの出力調整の指示値に応じて、一定階調範囲毎のVisual Power値の平均値を増減することにより求められる。ノイズの出力調整の指示値に対し、平均値をどの程度増減するかは、各スクリーンパターンについて算出されたVisual Power値の一定階調範囲における変動量を元に決定すればよい。
【0047】
例えば、図4に示すVisual Power値の算出結果によれば、各一定階調範囲内でのVisual Power値の変動量は約20である。これに対し、ユーザによるノイズの出力調整は±5の範囲で可能である。すなわち、20のVisual Power値の変動量に対し10の出力調整量が割り当てられるので、±1の指示値に対応して、Visual Power値は平均値から±2調整されることになる。仮に、ノイズの出力調整の指示値が+2であったとすると、図9において点線で示すように、一定階調範囲毎に求められた平均値+4のVisual Power値が目標Visual Power値として設定される。
【0048】
次に、スクリーンパターン選択部3は、4096階調の各スクリーンパターンのVisual Power値と、目標Visual Power値との差分を算出する(ステップS5)。スクリーンパターン選択部3は、算出した差分が最小となるスクリーンパターンを、一定階調範囲毎に1つずつ選択する。結果として、スクリーン処理によって出力される階調数分だけスクリーンパターンが選択される(ステップS6)。具体的には、4096階調分のスクリーンパターンの中から、16階調範囲毎に目標Visual Power値との差分が最小となるスクリーンパターンが1つずつ選択され、最終的にはスクリーン処理によって出力される256階調分のスクリーンパターンが選択される。
【0049】
なお、図9に示す例では、0〜4095階調の全階調に対し、入力されるノイズの出力調整の指示値が1つであり、一定階調範囲毎に求められた各平均値に、指示値に応じたVisual Power値を加えて(或いは減じて)、目標Visual Power値を求めている。つまり、全階調に対して一律に同じ調整量で出力調整が行われているが、ユーザが一定階調範囲毎にノイズの出力調整の指示値を入力できる構成とし、一定階調範囲毎に異なる調整量での出力調整を可能としてもよい。
【0050】
例えば、図10に示すように一定階調範囲毎にノイズの出力調整の指示値を入力できる操作画面D2が表示部14上に表示される。この操作画面D2において、0〜15階調について指示値+2、16〜31階調については指示値+1とするように、16階調範囲毎にユーザはノイズの出力調整の指示値を入力する。スクリーンパターン選択部3は、16階調範囲毎に指示値に応じた目標Visual Power値を算出し、各16階調範囲でそれぞれ算出された目標Visual Power値との差が小さいスクリーンパターンを選択すればよい。上記例の場合、0〜15階調の一定階調範囲では目標Visual Power値は0〜15階調の平均値+4であり、16〜31階調の一定階調範囲では目標Visual Power値が16〜31階調の平均値+2であるので、それぞれの目標Visual Power値に最も近いVisual Power値を有するスクリーンパターンが各一定階調範囲内から選択される。
【0051】
一定階調範囲毎に指示値の入力が可能な場合、より詳細なノイズ調整が可能となる。前述のように、階調によってスクリーンパターンが生み出すノイズ量には差がある。そこで、一定階調範囲毎にノイズの出力調整を行うことにより、ノイズ量が小さい低階調範囲はノイズ調整量を+3と指示し、ノイズ量が大きい中階調範囲はノイズ調整量を−2と指示する等して、全階調にわたって同程度のノイズ量となるようにノイズ調整をすることができる。
【0052】
スクリーンパターン選択部3は、選択された256階調分のスクリーンパターンをスクリーン処理部1に出力する(ステップS7)。
【0053】
以上のように、本実施形態によれば、スクリーンパターン記憶部2は、スクリーン処理によって出力可能な階調数より多い階調数に対応するスクリーンパターンと、各階調の当該スクリーンパターンのそれぞれに対して算出されたVisual Power値とを記憶する。また、スクリーンパターン選択部3は、ユーザにより入力されたノイズの出力調整の指示値に対応する目標Visual Power値を算出する。スクリーンパターン選択部3は、スクリーンパターン記憶部2に記憶されているスクリーンパターンのうち、算出された目標Visual Power値に近い評価値を有するスクリーンパターンを、スクリーン処理によって出力される階調数だけ選択する。
【0054】
本実施形態によれば、スクリーンパターンの選択基準となる目標評価値をユーザが調整することができる。すなわち、スクリーンパターンの出力特性の評価値であるVisual Power値だけでスクリーンパターンを選択するのではなく、ユーザによる出力調整を加えた目標Visual Power値によってスクリーンパターンを選択することができる。これにより、実際に印刷された出力画像においてユーザの見た目にノイズが軽減されるように、スクリーンパターンを選択することが可能となる。
【0055】
Visual Power値のような客観的な評価値だけでスクリーンパターンを選択する場合、印刷された出力画像の画質がかえって低下する場合がある。例えば、Visual Power値によってノイズが最も小さいスクリーンパターンが選択され、スクリーン処理により生じるノイズが減少した結果、印刷特性によって生じるノイズがかえって目立つような場合である。このような現象が起こるのは、印刷特性や印刷対象の画像の特性等の理由によって生じるノイズが、評価値には考慮されずにスクリーンパターンが選択されるためと考えられる。
【0056】
しかしながら、本実施形態によれば、客観的な評価値だけでなく、ユーザによる出力調整によって、故意に画質を劣化させるようなスクリーンパターンをも選択することができる。ノイズの場合は、ノイズが多いスクリーンパターンが選択されるように出力調整することにより、印刷特性によるノイズに、スクリーン処理によって生じるノイズを付加し、印刷特性によるノイズを見た目に分散して目立たなくすることができる。
すなわち、本実施形態によれば、印刷された出力画像に何らかの理由によって画質劣化が生じたとしても、ユーザの出力調整によって、画質劣化が視覚的に軽減されるようにスクリーンパターンを選択することができる。
一般的に、ノイズを付加する場合にはノイズ付加用の処理回路が設けられるが、本実施形態によればそのような処理回路は不要であり、スクリーン処理によってノイズ付加が簡単に実現できる。
【0057】
また、スクリーンパターン選択部3は、スクリーンパターン記憶部2に記憶されているスクリーンパターンの全階調数を、スクリーン処理によって出力される階調数で除算した一定階調範囲毎に、目標Visual Power値と最も近いVisual Power値を有するスクリーンパターンを1つずつ選択する。
一定階調範囲毎に1つずつ選択することにより、ある階調範囲に偏ることなく、各階調範囲から均一にスクリーンパターンを選択することができ、スクリーン処理後の出力画像の階調性を確保することができる。
【0058】
また、スクリーンパターン選択部3は、一定階調範囲毎のスクリーンパターンのVisual Power値の平均値を、ユーザにより入力された指示値に対応して増減した値を一定階調範囲毎の目標Visual Power値として算出し、当該一定階調範囲毎の目標Visual Power値に最も近い評価値を有するスクリーンパターンを1つずつ選択する。
【0059】
ユーザにより入力される指示値が、全階調に対して入力された1つの指示値である場合、目標Visual Power値は階調に拘わらず同じ調整量で全階調に対して一律に同じノイズ量の出力調整が可能となる。
一方、ユーザにより入力される指示値が、一定階調範囲毎に入力された指示値である場合、より詳細なノイズの出力調整が可能となる。
【0060】
なお、上記実施形態は本発明の好適な一例であり、これに限定されない。
例えば、ノイズの評価値としてVisual Powerを用いたが、ノイズを評価できるのであれば、他の評価値を用いてもよい。例えば、実際に印刷された出力画像の濃度分布Diの標準偏差であるRMS粒状度を、ノイズの評価値として用いてもよい。
【0061】
また、ノイズだけでなく、スクリーンパターンの出力特性を評価できるであれば他の評価値であってもよい。他の評価値としては、例えばテクスチャ、鮮鋭性、階調性等の評価値が挙げられる。テクスチャの評価値としては、濃度共起行列等を用いたテクスチャ解析により求める濃度の一様性、方向性、コントラスト変化等の特徴量が挙げられる。また、鮮鋭性の評価値としては、MTF(Modulation Transfer Function)値が挙げられる。階調性の評価値としては、例えば理想とする階調(例えば、入力値と出力値の変換曲線が傾き1の濃度リニアな階調)との差分値(又はその二乗和)が、定量的な評価値として挙げられる。目視的な評価値としては、階調が連続でなく飛び飛びとなるトーンジャンプの有無を示す値等が挙げられる。
【0062】
他の評価値についても、上記のノイズの評価値と同様に、ユーザにより出力調整された目標評価値に最も近い評価値を有するスクリーンパターンを選択することにより、視覚的に画質劣化が軽減されるスクリーンパターンを選択することができる。例えば、印刷特性や出力する画像の特性上、ジャギー(文字や線画のエッジのギザギザ状)が目立ち、故意に鮮鋭性が低い評価値を持つスクリーンパターンを用いて全体的に出力画像の鮮鋭性を低くし、視覚的にジャギーが目立たないようにしたい場合、鮮鋭性が低い評価値のスクリーンパターンが選択されるようユーザが出力調整することができる。
【0063】
また、上述の実施形態では、各一定階調範囲の平均値を基準にユーザがノイズの出力調整できる構成を説明したが、全階調の平均値を基準にユーザがノイズの出力調整をする構成としてもよい。
例えば、図11に示すようにスクリーンパターン選択部3は、全階調における各スクリーンパターンのVisual Power値の平均値を算出する。ユーザにより+3のノイズの出力調整が指示された場合、スクリーンパターン選択部3は、平均値+6を目標Visual Power値に設定し、一定階調範囲毎に目標Visual Power値に最も近いVisual Power値を有するスクリーンパターンを選択する。これにより、全階調を通して一定のVisual Power値を持つスクリーンパターンを選択することができ、階調に拘わらず出力画像のノイズ量を一定とすることができる。
【0064】
また、目標Visual Power値をユーザが直接指示できる構成としてもよい。例えば、各階調のスクリーンパターンのVisual Power値をプロットしたグラフを表示部14に表示し、ユーザがこのグラフを参考に目標Visual Power値を決定できるように構成する。ユーザにより入力された目標Visual Power値の指示値が、例えば32であれば、スクリーンパターン選択部3により、図12に示すように目標Visual Power値32に最も近いVisual Power値を持つスクリーンパターンが、一定階調範囲毎に1つずつ選択される。これにより、全階調を通して一定のVisual Power値を持つスクリーンパターンを選択することができ、階調に拘わらず出力画像のノイズ量を一定とすることができる。
【0065】
また、上述したスクリーンパターン選択処理をプログラム化し、ソフトウェア処理することとしてもよい。当該プログラムを記憶した記憶媒体をコンピュータに搭載し、コンピュータに搭載されているCPU等によって記憶媒体からプログラムを読み出し実行することによって上述したスクリーンパターンの選択を実現することができる。プログラムのコンピュータ読み取り可能な媒体としては、ROM(Read Only Memory)、フラッシュメモリ等の不揮発性メモリ、CD-ROM等の可搬型記録媒体を適用することが可能である。
また、当該プログラムのデータを通信回線を介して提供する媒体として、キャリアウエーブ(搬送波)も本発明に適用される。
【符号の説明】
【0066】
100 MFP
10 画像処理部
1 スクリーン処理部
2 スクリーンパターン記憶部
3 スクリーンパターン選択部
11 制御部
12 読取部
13 操作部
14 表示部
15 記憶部
16 メモリ制御部
17 画像メモリ
18 印刷装置
19 通信部
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像処理装置、スクリーンパターンの選択方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
中間調の再現手法としては、ディザ法によるスクリーン処理がある。スクリーン処理に用いるスクリーンパターンには出力特性があり、スクリーンパターンの種類やスクリーンパターンが表す階調によって、スクリーン処理後の出力画像の画質が異なってくる。そこで、粒状性や階調性、安定性、テクスチャ等の出力特性を評価し、その評価を元に最適なスクリーンパターンを選択する方法が提案されている(例えば、特許文献1、2参照)。一般的には、各出力特性の評価値が最良となる組合せのスクリーンパターンが選択される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−208639号公報
【特許文献2】特開2007−208638号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、評価値が良好であるからといって、必ずしも最良の画質が得られるとは限らない。
例えば、印刷機器に特有のノイズ(例えば周期ムラ等)があった場合に、粒状性の評価が良く、ノイズが少ない又は無いスクリーンパターンを選択すると、かえって印刷機器に特有のノイズが目立つということが起こり得る。
【0005】
本発明の課題は、視覚的に画質劣化が軽減されるようにスクリーンパターンを選択することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の発明によれば、
スクリーン処理によって出力可能な階調数より多い階調数に対応するスクリーンパターンと、当該スクリーンパターンのそれぞれに対し算出された出力特性の評価値とを記憶するスクリーンパターン記憶部と、
ユーザにより入力された出力調整の指示値に対応する目標評価値を算出し、前記スクリーンパターン記憶部に記憶されているスクリーンパターンのうち、前記算出された目標評価値に近い評価値を有するスクリーンパターンを、スクリーン処理によって出力される階調数だけ選択するスクリーンパターン選択部と、
を備える画像処理装置が提供される。
【0007】
請求項2に記載の発明によれば、
前記スクリーンパターン選択部は、前記スクリーンパターン記憶部に記憶されたスクリーンパターンの全階調数を、スクリーン処理によって出力される階調数で除算した一定階調範囲毎に、前記目標評価値と最も近い評価値を有するスクリーンパターンを1つずつ選択する請求項1に記載の画像処理装置が提供される。
【0008】
請求項3に記載の発明によれば、
前記スクリーンパターン選択部は、前記一定階調範囲毎の評価値の平均値を、ユーザにより入力された指示値に対応して増減した値を一定階調範囲毎の目標評価値として算出し、当該一定階調範囲毎の目標評価値に最も近い評価値を有するスクリーンパターンを1つずつ選択する請求項2に記載の画像処理装置が提供される。
【0009】
請求項4に記載の発明によれば、
前記指示値は、全階調に対して入力された1つの指示値である請求項2又は3に記載の画像処理装置が提供される。
【0010】
請求項5に記載の発明によれば、
前記指示値は、前記一定階調範囲毎に入力された指示値である請求項2又は3に記載の画像処理装置が提供される。
【0011】
請求項6に記載の発明によれば、
前記スクリーンパターン選択部は、全階調の評価値の平均値を、ユーザにより入力された指示値に対応して増減した値を目標階調値として算出し、当該目標階調値に最も近い評価値を有するスクリーンパターンを、前記一定階調範囲毎に1つずつ選択する請求項2に記載の画像処理装置が提供される。
【0012】
請求項7に記載の発明によれば、
前記評価値は、ノイズの評価値である請求項1〜6の何れか一項に記載の画像処理装置が提供される。
【0013】
請求項8に記載の発明によれば、
スクリーン処理によって出力可能な階調数より多い階調数に対応するスクリーンパターンと、当該スクリーンパターンのそれぞれに対し算出された出力特性の評価値とを、スクリーンパターン記憶部に記憶し、保持させる工程と、
ユーザにより入力された出力調整の指示値に対応する目標評価値を算出する工程と、
前記スクリーンパターン記憶部に記憶されているスクリーンパターンのうち、前記算出された目標評価値に近い評価値を有するスクリーンパターンを、スクリーン処理によって出力される階調数だけ選択する工程と、
を含むスクリーンパターンの選択方法が提供される。
【0014】
請求項9に記載の発明によれば、
コンピュータを、
スクリーン処理によって出力可能な階調数より多い階調数に対応するスクリーンパターンと、当該スクリーンパターンのそれぞれに対し算出された出力特性の評価値とを記憶するスクリーンパターン記憶部、
ユーザにより入力された出力調整の指示値に対応する目標評価値を算出し、前記スクリーンパターン記憶部に記憶されているスクリーンパターンのうち、前記算出された目標評価値に近い評価値を有するスクリーンパターンを、スクリーン処理によって出力される階調数だけ選択するスクリーンパターン選択部、
として機能させるためのプログラムが提供される。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、印刷された出力画像に画質劣化が生じたとしても、ユーザの出力調整によって、画質劣化が視覚的に軽減されるようにスクリーンパターンを選択することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本実施形態におけるMFPの機能的構成を示す図である。
【図2】図1の画像処理部の構成の一部を示す図である。
【図3】スクリーンパターン選択処理を示すフローチャートである。
【図4】0〜4096階調のスクリーンパターンに対し算出されたVisual Power値をプロットしたグラフであり、一定階調範囲毎の平均値に最も近いVisual Power値を示す。
【図5】図4のグラフの一部を拡大した図である。
【図6】一定階調範囲毎の平均値に10加えたVisual Power値に最も近いVisual Power値を示すグラフである。
【図7】一定階調範囲毎の平均値を10減じたVisual Power値に最も近いVisual Power値を示すグラフである。
【図8】ノイズの出力調整を行う操作画面例を示す図である。
【図9】図5のグラフに目標Visual Power値を示した図である。
【図10】一定階調範囲毎にノイズの出力調整を行う場合の操作画面例を示す図である。
【図11】全階調の平均値に、ユーザにより入力された出力調整の指示値に応じた調整量を加えたVisual Power値を目標Visual Power値とした場合に、一定階調範囲毎に当該目標Visual Power値に最も近いVisual Power値を示すグラフである。
【図12】一定階調範囲毎に、ユーザにより入力された目標Visual Power値の指示値に最も近いVisual Power値を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。
【0018】
図1に、本実施形態におけるMFP(Multi Function Peripheral)100の機能的構成を示す。MFP100は、複写機能、印刷機能等の複数の機能を備えた複合型の画像処理装置である。
図1に示すように、MFP100はコントローラ20に接続されている。コントローラ20は、PC(パーソナルコンピュータ)等から印刷対象として送信されるPDL(Page Description Language)形式のデータをラスタライズ処理し、ビットマップ形式の画像データを生成する。生成された画像データは、MFP100に入力される。なお、コントローラ20はMFP100に内蔵される構成であってもよい。
【0019】
MFP100は、図1に示すように、画像処理部10、制御部11、読取部12、操作部13、表示部14、記憶部15、メモリ制御部16、画像メモリ17、印刷装置18、通信部19を備えて構成されている。
【0020】
制御部11は、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)等から構成されている。制御部11は、記憶部15に記憶されている各種処理プログラムとの協働によって各種演算を行い、MFP100の各部を集中制御する。
【0021】
読取部12は、光学系やCCD(Charge Coupled Device)を有するスキャナを備え、原稿を光走査してアナログ画像信号を生成する。生成された画像信号は画像処理部10に出力される。
【0022】
操作部13は、ユーザの指示を入力するために用いられ、各種キーや表示部14と一体に構成されるタッチパネル等を備えて構成されている。操作部13は、入力操作に応じた操作信号を生成して制御部11に出力する。
表示部14は、制御部11の制御に従ってディスプレイ上に操作画面等を表示する。
記憶部15は、各種処理プログラムの他、処理に必要なパラメータや設定データ等を記憶している。記憶部15としてはハードディスクを用いることができる。
【0023】
メモリ制御部16は、画像メモリ17に対する画像データの入出力を制御する。例えば、メモリ制御部16は通信部19や画像処理部10から入力される画像データを画像メモリ17に保存する。また、メモリ制御部16は制御部11により印刷が指示された画像データを画像メモリ17から読み出して画像処理部10に出力する。
画像メモリ17は、画像データを記憶する。画像メモリ17としてはDRAM(Dynamic RAM)を用いることができる。
【0024】
印刷装置18は、画像処理部10から入力される画像データの印刷を行う。
印刷装置18は、電子写真方式による印刷を行い、例えば、給紙部、露光部、現像部、転写部、定着部等からなる。印刷時には、画像データがPWM(Pulse Width Modulation)変換されて得られたPWM信号に従って、露光部が感光ドラム上にレーザ光を照射し静電潜像を形成する。これを現像部がトナーを用いて現像処理し、感光ドラム上にトナー像を形成すると、給紙部から給紙された用紙上に転写部がトナー像を転写させ、定着部がトナー像の定着処理を行う。
【0025】
通信部19は通信用のインターフェイスを備え、コントローラ20と通信を行う。通信部19は、コントローラ20から印刷対象の画像データを受信し、メモリ制御部16に出力する。
【0026】
次に、図2を参照して画像処理部10について説明する。
画像処理部10は、読取部12から入力されたアナログ画像信号に輝度補正処理等の各種補正処理や色変換処理を施す。また、画像処理部10はデジタル変換によって、デジタル画像データを生成してメモリ制御部16に出力する。画像データはメモリ制御部16によって画像メモリ17に保存される。
【0027】
その後、制御部11により印刷指示があると、画像メモリ17に保存されている画像データが読み出されて画像処理部10に入力される。画像処理部10は当該画像データに印刷に必要な画像処理、例えば画像の濃度を補正するγ補正処理や、画像の画素値を2値に変換するスクリーン処理を施し、印刷用の画像データを生成する。
【0028】
図2は、スクリーン処理時に主に機能する画像処理部10の構成部分を示している。
画像処理部10は、図2に示すように、スクリーン処理部1、スクリーンパターン記憶部2、スクリーンパターン選択部3を含む。
【0029】
スクリーン処理部1は、スクリーンパターン選択部3から入力されるスクリーンパターンを用いて、画像データにスクリーン処理を施す。スクリーン処理において、スクリーン処理部1は画像を走査してスクリーンパターンを配置し、画像の各画素値がスクリーンパターンに設定された閾値より大きいか否かによって、画素値を2値化する。スクリーン処理された画像データは印刷装置18に出力される。
なお、スクリーン処理によって出力可能な階調数の範囲内であれば、実際に出力する階調数は変更可能である。例えば、出力可能な階調数が256であれば、実際に出力される階調数は256の場合もあるし、64の場合もある。
【0030】
スクリーンパターン記憶部2は、スクリーン処理によって出力可能な階調数よりも多い階調数に対応するスクリーンパターンを記憶している。このような各階調のスクリーンパターンは、スクリーン線数やスクリーンパターンのサイズ、形状が異なる複数の種類分準備して記憶してもよい。スクリーンパターン記憶部2は、各階調のスクリーンパターンに対しそれぞれ算出された出力特性の評価値を、各階調のスクリーンパターンに対応付けて記憶している。
【0031】
スクリーンパターン選択部3は、スクリーンパターン記憶部2に記憶されている複数の階調のスクリーンパターンのうち、スクリーン処理に用いられるスクリーンパターンを選択してスクリーン処理部1に出力する。
【0032】
図3は、スクリーンパターン選択部3によるスクリーンパターン選択処理を示すフローチャートである。
最初に、スクリーン処理によって出力可能な階調数より多い階調数に対応するスクリーンパターンが準備される。当該スクリーンパターンは、制御部11が作成してもよいし、予め作成され、コントローラ20を介して入力されたものを取得してもよい。準備された各階調のスクリーンパターンは、制御部11の制御によりスクリーンパターン選択部3に入力される。図3に示すように、スクリーンパターン選択部3は、入力された各階調のスクリーンパターンをスクリーンパターン記憶部2に記憶し、保持させる(ステップS1)。
【0033】
ここでは、スクリーン処理部1により出力可能な階調数が256であり、256より多い4096階調に対応するスクリーンパターンが保持される例を説明する。この4096階調分のスクリーンパターンは、例えば4095画素からなり、階調0から階調4095まで階調が1増加する毎に、各画素に出力されるドットが1つずつ増加するように閾値が設定されている。
【0034】
次いで、スクリーンパターン選択部3は、保持された全スクリーンパターンに対し、出力特性の評価値を算出する。評価値は、スクリーンパターンを用いることによって出力画像に生じる画質の評価値であり、スクリーンパターン自体の出力特性を示す。スクリーンパターン選択部3は、各階調のスクリーンパターンに対応付けて、それぞれ算出された評価値をスクリーンパターン記憶部2に記憶し、保持させる(ステップS2)。
【0035】
本実施形態では、出力特性の評価値の一例として、スクリーンパターンを用いてスクリーン処理して得られた出力画像のノイズの評価値を示すVisual Power値を算出する例を説明する。
Visual Power値は、出力画像の周波数特性に視覚特性を加えたノイズの推定値であり、次のように求めることができる(IMAGE NOISE EVALUATION METHOD FOR XEROGRAPHIC PRINTS OF DIGITIZED IAMGE,Yoshitsugu HIROSE他,JAPAN HARDCOPY,1988参照)。
【0036】
まず、出力画像に対し離散的2次元フーリエ変換が実行される。出力画像の離散的2次元フーリエ変換をF(u,v)により表すと、そのウィナースペクトラム(Wiener Spectrum)P(u,v)は下記式1のように表される。
P(u,v)=|F(u,v)|2 ・・・(1)
【0037】
得られたウィナースペクトラムP(u,v)は極座標p(fr,θ)に変換され、下記式に用いられる。
【数1】
式2において、frは動径(radial)周波数である。
【0038】
Visual Powerは、式2を拡張して下記式3のように求めることができる。式3は、出力画像のノイズの物理評価値に視覚特性を考慮した重み付けを行い、物理評価値に心理評価値を加えている。視覚特性としては視覚の空間周波数VTF(Visual Transfer Function)を用いている。
【数2】
式3において、Δfrは動径(radial)周波数の基本周波数を示し、cはスケール定数である。mはx及びy軸の画素数の半数を示している。
【0039】
図4は、0〜4095階調の各スクリーンパターンに対して算出されたVisual Power値をプロットしたグラフである。図5は図4の一部を拡大した図である。図4及び図5に示すように、スクリーンパターンによってVisual Power値に差異がある、つまりスクリーンパターンによって出力画像に現れるノイズ量に差異があることがわかる。例えば、図4に示すように0〜500階調あたりのノイズ量に比較して1000〜2000階調あたりのノイズ量は大きくなっている。また、図5に示すように0〜500階調の範囲の中でも階調が2,3異なるだけでノイズ量が異なっている。
【0040】
本実施形態では、後述する処理において、保持されている4096階調分のスクリーンパターンから、一定階調範囲毎にスクリーンパターンが1つ選択される。一定階調範囲は、全階調数4096を、スクリーン処理によって出力される階調数256で除算した16階調である。この16階調範囲毎に、1つずつスクリーンパターンが選択され、結果としてスクリーン処理の出力に必要な256階調分のスクリーンパターンが選択される。このとき、どのような選択基準でスクリーンパターンを選択するかによって、実際に出力されるノイズ量が変わってくる。
【0041】
例えば、一定階調範囲に属する各スクリーンパターンのVisual Power値の平均値に最も近いVisual Power値を持つスクリーンパターンを選択する場合、図4又は図5において丸印が示すVisual Power値を有するスクリーンパターンが選択される。なお、図4及び図5において、16階調範囲毎の各スクリーンパターンのVisual Power値を平均した平均値を実線で示している。
【0042】
一方、平均値に10加えたVisual Power値に最も近いVisual Power値を持つスクリーンパターンを選択する場合、図6において丸印が示すVisual Power値を有するスクリーンパターンが選択される。平均値を10減じたVisual Power値に最も近いVisual Power値を持つスクリーンパターンを選択する場合は、図7において丸印が示すVisual Power値を有するスクリーンパターンが選択される。
【0043】
図4、図6、図7を比較すれば分かるように、平均値を基準とするのか、平均値±10のVisual Power値を基準とするのかによって、選択されるスクリーンパターンは異なってくる。平均値より大きいVisual Power値を基準とすれば、図6に示すように全体的にVisual Power値が大きく、出力されるノイズが大きい出力特性を持つスクリーンパターンが選択される。逆に、平均値より小さいVisual Power値を基準とすれば、図7に示すように全体的にVisual Power値が小さく、出力されるノイズが小さい出力特性を持つスクリーンパターンが選択される。
言い換えれば、スクリーンパターンの選択基準を調整することによって、実際にスクリーン処理に用いられるスクリーンパターンの出力特性を調整し、ひいては出力されるノイズ量を調整することが可能である。MFP100においては、ノイズの出力調整をユーザが行うことができ、ユーザによるノイズの出力調整に従ってスクリーンパターンの選択基準が決定される。
【0044】
図3に示すように、スクリーンパターン選択部3は、ユーザによるノイズの出力調整の指示値を取得する(ステップS3)。ノイズの出力調整時、例えば制御部11の制御によって表示部14には図8に示すような操作画面D1が表示される。操作画面D1には、スクリーンパターンの種類を選択する選択キーd1、選択された種類のスクリーンパターンについてノイズの出力調整の指示値を入力できる入力領域d2が表示されている。
【0045】
ユーザは、選択キーd1によって出力調整したいスクリーンパターンの種類を選択操作した後、キーd3を操作して入力領域d2に所望のノイズの出力調整量(−5〜+5)を指示値として入力する。このとき、ユーザは各階調のパッチ画像をテスト印刷し、選択したスクリーンパターンによって得られた実際の出力画像によってノイズの出力状況を確認した後、ノイズの出力調整量を決定すればよい。例えば、出力画像のノイズがまばらでかえってノイズが目立つ場合、このノイズにさらにノイズを付加して元のノイズが目立たなくなるよう、+1〜+5の何れかの指示値を入力すればよい。このようにして操作部13を介してユーザにより入力されたノイズの出力調整の指示値は、制御部11によってスクリーンパターン選択部3に入力される。
【0046】
スクリーンパターン選択部3は、取得したノイズの出力調整の指示値に対応する目標Visual Power値を算出し、設定する(ステップS4)。目標Visual Power値はスクリーンパターンの選択基準となる。
目標Visual Power値は、ノイズの出力調整の指示値に応じて、一定階調範囲毎のVisual Power値の平均値を増減することにより求められる。ノイズの出力調整の指示値に対し、平均値をどの程度増減するかは、各スクリーンパターンについて算出されたVisual Power値の一定階調範囲における変動量を元に決定すればよい。
【0047】
例えば、図4に示すVisual Power値の算出結果によれば、各一定階調範囲内でのVisual Power値の変動量は約20である。これに対し、ユーザによるノイズの出力調整は±5の範囲で可能である。すなわち、20のVisual Power値の変動量に対し10の出力調整量が割り当てられるので、±1の指示値に対応して、Visual Power値は平均値から±2調整されることになる。仮に、ノイズの出力調整の指示値が+2であったとすると、図9において点線で示すように、一定階調範囲毎に求められた平均値+4のVisual Power値が目標Visual Power値として設定される。
【0048】
次に、スクリーンパターン選択部3は、4096階調の各スクリーンパターンのVisual Power値と、目標Visual Power値との差分を算出する(ステップS5)。スクリーンパターン選択部3は、算出した差分が最小となるスクリーンパターンを、一定階調範囲毎に1つずつ選択する。結果として、スクリーン処理によって出力される階調数分だけスクリーンパターンが選択される(ステップS6)。具体的には、4096階調分のスクリーンパターンの中から、16階調範囲毎に目標Visual Power値との差分が最小となるスクリーンパターンが1つずつ選択され、最終的にはスクリーン処理によって出力される256階調分のスクリーンパターンが選択される。
【0049】
なお、図9に示す例では、0〜4095階調の全階調に対し、入力されるノイズの出力調整の指示値が1つであり、一定階調範囲毎に求められた各平均値に、指示値に応じたVisual Power値を加えて(或いは減じて)、目標Visual Power値を求めている。つまり、全階調に対して一律に同じ調整量で出力調整が行われているが、ユーザが一定階調範囲毎にノイズの出力調整の指示値を入力できる構成とし、一定階調範囲毎に異なる調整量での出力調整を可能としてもよい。
【0050】
例えば、図10に示すように一定階調範囲毎にノイズの出力調整の指示値を入力できる操作画面D2が表示部14上に表示される。この操作画面D2において、0〜15階調について指示値+2、16〜31階調については指示値+1とするように、16階調範囲毎にユーザはノイズの出力調整の指示値を入力する。スクリーンパターン選択部3は、16階調範囲毎に指示値に応じた目標Visual Power値を算出し、各16階調範囲でそれぞれ算出された目標Visual Power値との差が小さいスクリーンパターンを選択すればよい。上記例の場合、0〜15階調の一定階調範囲では目標Visual Power値は0〜15階調の平均値+4であり、16〜31階調の一定階調範囲では目標Visual Power値が16〜31階調の平均値+2であるので、それぞれの目標Visual Power値に最も近いVisual Power値を有するスクリーンパターンが各一定階調範囲内から選択される。
【0051】
一定階調範囲毎に指示値の入力が可能な場合、より詳細なノイズ調整が可能となる。前述のように、階調によってスクリーンパターンが生み出すノイズ量には差がある。そこで、一定階調範囲毎にノイズの出力調整を行うことにより、ノイズ量が小さい低階調範囲はノイズ調整量を+3と指示し、ノイズ量が大きい中階調範囲はノイズ調整量を−2と指示する等して、全階調にわたって同程度のノイズ量となるようにノイズ調整をすることができる。
【0052】
スクリーンパターン選択部3は、選択された256階調分のスクリーンパターンをスクリーン処理部1に出力する(ステップS7)。
【0053】
以上のように、本実施形態によれば、スクリーンパターン記憶部2は、スクリーン処理によって出力可能な階調数より多い階調数に対応するスクリーンパターンと、各階調の当該スクリーンパターンのそれぞれに対して算出されたVisual Power値とを記憶する。また、スクリーンパターン選択部3は、ユーザにより入力されたノイズの出力調整の指示値に対応する目標Visual Power値を算出する。スクリーンパターン選択部3は、スクリーンパターン記憶部2に記憶されているスクリーンパターンのうち、算出された目標Visual Power値に近い評価値を有するスクリーンパターンを、スクリーン処理によって出力される階調数だけ選択する。
【0054】
本実施形態によれば、スクリーンパターンの選択基準となる目標評価値をユーザが調整することができる。すなわち、スクリーンパターンの出力特性の評価値であるVisual Power値だけでスクリーンパターンを選択するのではなく、ユーザによる出力調整を加えた目標Visual Power値によってスクリーンパターンを選択することができる。これにより、実際に印刷された出力画像においてユーザの見た目にノイズが軽減されるように、スクリーンパターンを選択することが可能となる。
【0055】
Visual Power値のような客観的な評価値だけでスクリーンパターンを選択する場合、印刷された出力画像の画質がかえって低下する場合がある。例えば、Visual Power値によってノイズが最も小さいスクリーンパターンが選択され、スクリーン処理により生じるノイズが減少した結果、印刷特性によって生じるノイズがかえって目立つような場合である。このような現象が起こるのは、印刷特性や印刷対象の画像の特性等の理由によって生じるノイズが、評価値には考慮されずにスクリーンパターンが選択されるためと考えられる。
【0056】
しかしながら、本実施形態によれば、客観的な評価値だけでなく、ユーザによる出力調整によって、故意に画質を劣化させるようなスクリーンパターンをも選択することができる。ノイズの場合は、ノイズが多いスクリーンパターンが選択されるように出力調整することにより、印刷特性によるノイズに、スクリーン処理によって生じるノイズを付加し、印刷特性によるノイズを見た目に分散して目立たなくすることができる。
すなわち、本実施形態によれば、印刷された出力画像に何らかの理由によって画質劣化が生じたとしても、ユーザの出力調整によって、画質劣化が視覚的に軽減されるようにスクリーンパターンを選択することができる。
一般的に、ノイズを付加する場合にはノイズ付加用の処理回路が設けられるが、本実施形態によればそのような処理回路は不要であり、スクリーン処理によってノイズ付加が簡単に実現できる。
【0057】
また、スクリーンパターン選択部3は、スクリーンパターン記憶部2に記憶されているスクリーンパターンの全階調数を、スクリーン処理によって出力される階調数で除算した一定階調範囲毎に、目標Visual Power値と最も近いVisual Power値を有するスクリーンパターンを1つずつ選択する。
一定階調範囲毎に1つずつ選択することにより、ある階調範囲に偏ることなく、各階調範囲から均一にスクリーンパターンを選択することができ、スクリーン処理後の出力画像の階調性を確保することができる。
【0058】
また、スクリーンパターン選択部3は、一定階調範囲毎のスクリーンパターンのVisual Power値の平均値を、ユーザにより入力された指示値に対応して増減した値を一定階調範囲毎の目標Visual Power値として算出し、当該一定階調範囲毎の目標Visual Power値に最も近い評価値を有するスクリーンパターンを1つずつ選択する。
【0059】
ユーザにより入力される指示値が、全階調に対して入力された1つの指示値である場合、目標Visual Power値は階調に拘わらず同じ調整量で全階調に対して一律に同じノイズ量の出力調整が可能となる。
一方、ユーザにより入力される指示値が、一定階調範囲毎に入力された指示値である場合、より詳細なノイズの出力調整が可能となる。
【0060】
なお、上記実施形態は本発明の好適な一例であり、これに限定されない。
例えば、ノイズの評価値としてVisual Powerを用いたが、ノイズを評価できるのであれば、他の評価値を用いてもよい。例えば、実際に印刷された出力画像の濃度分布Diの標準偏差であるRMS粒状度を、ノイズの評価値として用いてもよい。
【0061】
また、ノイズだけでなく、スクリーンパターンの出力特性を評価できるであれば他の評価値であってもよい。他の評価値としては、例えばテクスチャ、鮮鋭性、階調性等の評価値が挙げられる。テクスチャの評価値としては、濃度共起行列等を用いたテクスチャ解析により求める濃度の一様性、方向性、コントラスト変化等の特徴量が挙げられる。また、鮮鋭性の評価値としては、MTF(Modulation Transfer Function)値が挙げられる。階調性の評価値としては、例えば理想とする階調(例えば、入力値と出力値の変換曲線が傾き1の濃度リニアな階調)との差分値(又はその二乗和)が、定量的な評価値として挙げられる。目視的な評価値としては、階調が連続でなく飛び飛びとなるトーンジャンプの有無を示す値等が挙げられる。
【0062】
他の評価値についても、上記のノイズの評価値と同様に、ユーザにより出力調整された目標評価値に最も近い評価値を有するスクリーンパターンを選択することにより、視覚的に画質劣化が軽減されるスクリーンパターンを選択することができる。例えば、印刷特性や出力する画像の特性上、ジャギー(文字や線画のエッジのギザギザ状)が目立ち、故意に鮮鋭性が低い評価値を持つスクリーンパターンを用いて全体的に出力画像の鮮鋭性を低くし、視覚的にジャギーが目立たないようにしたい場合、鮮鋭性が低い評価値のスクリーンパターンが選択されるようユーザが出力調整することができる。
【0063】
また、上述の実施形態では、各一定階調範囲の平均値を基準にユーザがノイズの出力調整できる構成を説明したが、全階調の平均値を基準にユーザがノイズの出力調整をする構成としてもよい。
例えば、図11に示すようにスクリーンパターン選択部3は、全階調における各スクリーンパターンのVisual Power値の平均値を算出する。ユーザにより+3のノイズの出力調整が指示された場合、スクリーンパターン選択部3は、平均値+6を目標Visual Power値に設定し、一定階調範囲毎に目標Visual Power値に最も近いVisual Power値を有するスクリーンパターンを選択する。これにより、全階調を通して一定のVisual Power値を持つスクリーンパターンを選択することができ、階調に拘わらず出力画像のノイズ量を一定とすることができる。
【0064】
また、目標Visual Power値をユーザが直接指示できる構成としてもよい。例えば、各階調のスクリーンパターンのVisual Power値をプロットしたグラフを表示部14に表示し、ユーザがこのグラフを参考に目標Visual Power値を決定できるように構成する。ユーザにより入力された目標Visual Power値の指示値が、例えば32であれば、スクリーンパターン選択部3により、図12に示すように目標Visual Power値32に最も近いVisual Power値を持つスクリーンパターンが、一定階調範囲毎に1つずつ選択される。これにより、全階調を通して一定のVisual Power値を持つスクリーンパターンを選択することができ、階調に拘わらず出力画像のノイズ量を一定とすることができる。
【0065】
また、上述したスクリーンパターン選択処理をプログラム化し、ソフトウェア処理することとしてもよい。当該プログラムを記憶した記憶媒体をコンピュータに搭載し、コンピュータに搭載されているCPU等によって記憶媒体からプログラムを読み出し実行することによって上述したスクリーンパターンの選択を実現することができる。プログラムのコンピュータ読み取り可能な媒体としては、ROM(Read Only Memory)、フラッシュメモリ等の不揮発性メモリ、CD-ROM等の可搬型記録媒体を適用することが可能である。
また、当該プログラムのデータを通信回線を介して提供する媒体として、キャリアウエーブ(搬送波)も本発明に適用される。
【符号の説明】
【0066】
100 MFP
10 画像処理部
1 スクリーン処理部
2 スクリーンパターン記憶部
3 スクリーンパターン選択部
11 制御部
12 読取部
13 操作部
14 表示部
15 記憶部
16 メモリ制御部
17 画像メモリ
18 印刷装置
19 通信部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
スクリーン処理によって出力可能な階調数より多い階調数に対応するスクリーンパターンと、当該スクリーンパターンのそれぞれに対し算出された出力特性の評価値とを記憶するスクリーンパターン記憶部と、
ユーザにより入力された出力調整の指示値に対応する目標評価値を算出し、前記スクリーンパターン記憶部に記憶されているスクリーンパターンのうち、前記算出された目標評価値に近い評価値を有するスクリーンパターンを、スクリーン処理によって出力される階調数だけ選択するスクリーンパターン選択部と、
を備える画像処理装置。
【請求項2】
前記スクリーンパターン選択部は、前記スクリーンパターン記憶部に記憶されたスクリーンパターンの全階調数を、スクリーン処理によって出力される階調数で除算した一定階調範囲毎に、前記目標評価値と最も近い評価値を有するスクリーンパターンを1つずつ選択する請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項3】
前記スクリーンパターン選択部は、前記一定階調範囲毎の評価値の平均値を、ユーザにより入力された指示値に対応して増減した値を一定階調範囲毎の目標評価値として算出し、当該一定階調範囲毎の目標評価値に最も近い評価値を有するスクリーンパターンを1つずつ選択する請求項2に記載の画像処理装置。
【請求項4】
前記指示値は、全階調に対して入力された1つの指示値である請求項2又は3に記載の画像処理装置。
【請求項5】
前記指示値は、前記一定階調範囲毎に入力された指示値である請求項2又は3に記載の画像処理装置。
【請求項6】
前記スクリーンパターン選択部は、全階調の評価値の平均値を、ユーザにより入力された指示値に対応して増減した値を目標階調値として算出し、当該目標階調値に最も近い評価値を有するスクリーンパターンを、前記一定階調範囲毎に1つずつ選択する請求項2に記載の画像処理装置。
【請求項7】
前記評価値は、ノイズの評価値である請求項1〜6の何れか一項に記載の画像処理装置。
【請求項8】
スクリーン処理によって出力可能な階調数より多い階調数に対応するスクリーンパターンと、当該スクリーンパターンのそれぞれに対し算出された出力特性の評価値とを、スクリーンパターン記憶部に記憶し、保持させる工程と、
ユーザにより入力された出力調整の指示値に対応する目標評価値を算出する工程と、
前記スクリーンパターン記憶部に記憶されているスクリーンパターンのうち、前記算出された目標評価値に近い評価値を有するスクリーンパターンを、スクリーン処理によって出力される階調数だけ選択する工程と、
を含むスクリーンパターンの選択方法。
【請求項9】
コンピュータを、
スクリーン処理によって出力可能な階調数より多い階調数に対応するスクリーンパターンと、当該スクリーンパターンのそれぞれに対し算出された出力特性の評価値とを記憶するスクリーンパターン記憶部、
ユーザにより入力された出力調整の指示値に対応する目標評価値を算出し、前記スクリーンパターン記憶部に記憶されているスクリーンパターンのうち、前記算出された目標評価値に近い評価値を有するスクリーンパターンを、スクリーン処理によって出力される階調数だけ選択するスクリーンパターン選択部、
として機能させるためのプログラム。
【請求項1】
スクリーン処理によって出力可能な階調数より多い階調数に対応するスクリーンパターンと、当該スクリーンパターンのそれぞれに対し算出された出力特性の評価値とを記憶するスクリーンパターン記憶部と、
ユーザにより入力された出力調整の指示値に対応する目標評価値を算出し、前記スクリーンパターン記憶部に記憶されているスクリーンパターンのうち、前記算出された目標評価値に近い評価値を有するスクリーンパターンを、スクリーン処理によって出力される階調数だけ選択するスクリーンパターン選択部と、
を備える画像処理装置。
【請求項2】
前記スクリーンパターン選択部は、前記スクリーンパターン記憶部に記憶されたスクリーンパターンの全階調数を、スクリーン処理によって出力される階調数で除算した一定階調範囲毎に、前記目標評価値と最も近い評価値を有するスクリーンパターンを1つずつ選択する請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項3】
前記スクリーンパターン選択部は、前記一定階調範囲毎の評価値の平均値を、ユーザにより入力された指示値に対応して増減した値を一定階調範囲毎の目標評価値として算出し、当該一定階調範囲毎の目標評価値に最も近い評価値を有するスクリーンパターンを1つずつ選択する請求項2に記載の画像処理装置。
【請求項4】
前記指示値は、全階調に対して入力された1つの指示値である請求項2又は3に記載の画像処理装置。
【請求項5】
前記指示値は、前記一定階調範囲毎に入力された指示値である請求項2又は3に記載の画像処理装置。
【請求項6】
前記スクリーンパターン選択部は、全階調の評価値の平均値を、ユーザにより入力された指示値に対応して増減した値を目標階調値として算出し、当該目標階調値に最も近い評価値を有するスクリーンパターンを、前記一定階調範囲毎に1つずつ選択する請求項2に記載の画像処理装置。
【請求項7】
前記評価値は、ノイズの評価値である請求項1〜6の何れか一項に記載の画像処理装置。
【請求項8】
スクリーン処理によって出力可能な階調数より多い階調数に対応するスクリーンパターンと、当該スクリーンパターンのそれぞれに対し算出された出力特性の評価値とを、スクリーンパターン記憶部に記憶し、保持させる工程と、
ユーザにより入力された出力調整の指示値に対応する目標評価値を算出する工程と、
前記スクリーンパターン記憶部に記憶されているスクリーンパターンのうち、前記算出された目標評価値に近い評価値を有するスクリーンパターンを、スクリーン処理によって出力される階調数だけ選択する工程と、
を含むスクリーンパターンの選択方法。
【請求項9】
コンピュータを、
スクリーン処理によって出力可能な階調数より多い階調数に対応するスクリーンパターンと、当該スクリーンパターンのそれぞれに対し算出された出力特性の評価値とを記憶するスクリーンパターン記憶部、
ユーザにより入力された出力調整の指示値に対応する目標評価値を算出し、前記スクリーンパターン記憶部に記憶されているスクリーンパターンのうち、前記算出された目標評価値に近い評価値を有するスクリーンパターンを、スクリーン処理によって出力される階調数だけ選択するスクリーンパターン選択部、
として機能させるためのプログラム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2011−15132(P2011−15132A)
【公開日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−156852(P2009−156852)
【出願日】平成21年7月1日(2009.7.1)
【出願人】(303000372)コニカミノルタビジネステクノロジーズ株式会社 (12,802)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年7月1日(2009.7.1)
【出願人】(303000372)コニカミノルタビジネステクノロジーズ株式会社 (12,802)
【Fターム(参考)】
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