画像処理装置、及びプログラム
【課題】白飛びや黒つぶれの少ない幅広いダイナミックレンジを持ち、かつ、彩度も適切に調整されたHDR合成画像を提供すること。
【解決手段】露出が各々異なる複数の画像のデータが、Y成分からなる複数のY画像のデータと、UV成分からなる複数のUV画像のデータとに分離されている場合、Y合成部21は、分離後の複数のY画像のデータを、所定の合成比率を用いて合成する。一方、UV合成部22は、分離後の複数のUV画像のデータを、Y合成部21と同一の(若しくは略等しい)合成比率を用いて合成する。
【解決手段】露出が各々異なる複数の画像のデータが、Y成分からなる複数のY画像のデータと、UV成分からなる複数のUV画像のデータとに分離されている場合、Y合成部21は、分離後の複数のY画像のデータを、所定の合成比率を用いて合成する。一方、UV合成部22は、分離後の複数のUV画像のデータを、Y合成部21と同一の(若しくは略等しい)合成比率を用いて合成する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像処理装置、及びプログラムに関し、特に、従来よりも、白飛びや黒つぶれの少ない幅広いダイナミックレンジを持ち、かつ、彩度も適切に調整されたHDR合成画像を提供することを可能にする技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、撮像等により得られた画像を鑑賞する際の演出効果を高める目的で、当該画像のデータに対して各種画像処理が施されるようになっている。
例えば、このような画像処理として従来、ハイダナミックレンジ合成が知られている(特許文献1参照)。ハイダナミックレンジ合成とは、露出が各々異なる複数の画像のデータを合成することで、幅広いダイナミックレンジを表現する画像、即ちいわゆるハイダイナミックレンジ合成画像(High Dinamic Range合成画像、以下、「HDR合成画像」と呼ぶ)のデータを生成する画像処理をいう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−345509号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、白飛びや黒つぶれの少ない幅広いダイナミックレンジを持ち、かつ、彩度も適切に調整されたHDR合成画像を提供することが要求されているが、上述した特許文献1も含めて従来の手法では、当該要求に充分に応えることができない状況である。
【0005】
本発明は、このような状況に鑑みてなされたものであり、従来よりも、白飛びや黒つぶれの少ない幅広いダイナミックレンジを持ち、かつ、彩度も適切に調整されたHDR合成画像を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的達成のため、請求項1に記載の発明は、露出が各々異なる複数の画像のデータが、所定の色空間において規定される輝度成分からなる複数の第1の画像のデータと、その他の成分からなる複数の第2の画像のデータとに分離されている場合、分離後の前記複数の第1の画像のデータを、所定の合成比率を用いて合成する第1の合成手段と、分離後の前記複数の第2画像のデータを、前記第1の合成手段で用いられた合成比率と略等しい合成比率を用いて合成する第2の合成手段と、を備える。
【0007】
また、請求項2に記載の発明は、上記請求項1に記載の発明において、前記第1の合成手段は、前記複数の第1の画像において同じ位置に存在する各画素のデータを、座標毎に異なる合成比率を用いて合成し、前記第2の合成手段は、前記複数の第2の画像において同じ位置に存在する各画素のデータを、当該位置と同じ前記第1の画像内の位置用の前記合成比率を用いて合成する。
【0008】
また、請求項3記載の発明は、上記請求項2に記載の発明において、前記第1の合成手段は、さらに、前記複数の第1の画像のデータを平均化して平滑化されたデータを、判定用画像のデータとして用いて、前記合成比率を、前記第1の画像を構成する各画素の位置毎に設定する。
【0009】
また、請求項4に記載の発明は、上記請求項1乃至3に記載の発明において、前記第1の合成手段は、さらに、合成後の第1の画像のデータの明るさを調整するゲインを、前記複数の第1の画像のデータ毎に設定し、設定された前記ゲインを前記合成比率にかけることで、前記合成比率を調整し、前記第2の合成手段は、前記第1の合成手段により調整された後の前記合成比率を用いて、前記第2の画像のデータを合成する。
【0010】
また、請求項5に記載の発明は、上記請求項1乃至4に記載の発明において、前記露出が各々異なる複数の画像のデータの少なくとも一つから顔画像領域を検出する第1の画像領域検出手段とを更に備え、前記第1の合成手段は、前記第1の画像領域検出手段によって顔画像領域を検出すると、この顔画像領域に対し適正な明るさになっている画像データの明るさに基づいて前記合成比率を調整する。
【0011】
また、請求項6に記載の発明は、上記請求項1乃至4に記載の発明において、撮像手段と、この撮像手段によって撮像されている画像データから顔画像領域を検出する第2の画像領域検出手段と、この第2の画像領域検出手段によって顔画像領域を検出するとこの顔画像領域に対し適正な明るさになるように露出値を調整するとともに、この調整された露出値を中心に露出が各々異なる複数の画像のデータを撮像するよう制御する撮像制御手段とを更に備える。
【0012】
また、請求項7に記載の発明は、上記請求項1乃至6に記載の発明において、前記第2の合成手段は、さらに、合成後の第2の画像のデータに対して、彩度を強調するゲインをかける。
【0013】
また、上記目的達成のため、請求項8に記載の発明は、画像のデータに対して画像処理を施す画像処理装置を制御するコンピュータに、露出が各々異なる複数の画像のデータが、所定の色空間において規定される輝度成分からなる複数の第1の画像のデータと、その他の成分からなる複数の第2の画像のデータとに分離されている場合、分離後の前記複数の第1の画像のデータを、所定の合成比率を用いて合成する第1の合成機能と、分離後の前記複数の第2画像のデータを、前記第1の合成機能で用いられた合成比率と略等しい合成比率を用いて合成する第2の合成機能と、を実現させる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、従来よりも、白飛びや黒つぶれの少ない幅広いダイナミックレンジを持ち、かつ、彩度も適切に調整されたHDR合成画像を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の一実施形態に係る撮像装置の回路構成図である。
【図2】本発明における合成処理を実行する機能についての機能的構成を示す機能ブロック図である。
【図3】図2の画像処理装置で用いられる合成比率を設定するテーブルの一例を示している図である。
【図4】図2の画像処理装置の合成部での具体的な処理結果を示している図である。
【図5】調整ゲインが反映された適正露出用合成比率Rm、合成比率のテーブルの一例を示している図である。
【図6】調整ゲインによる明るさの調整の効果を示している図である。
【図7】足しこみ量を設定するテーブルの一例を示している図である。
【図8】コントラスト強調の効果を示している図である。
【図9】図2の画像処理装置のエッジ強調部によるエッジ強調の処理で設定されるエッジ強調レベルのテーブルの一例を示している図である。
【図10】図2の画像処理装置の彩度強調部により用いられるゲインを設定するテーブルの一例を示している図である。
【図11】図2の画像処理装置のUV合成部が実行するUV成分合成処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【図12】露出が各々異なる画像のデータの一例を示している図である。
【図13】図2の画像処理装置の合成部によって図12の各画像のデータが合成された結果得られる、合成画像のデータの一例を示している図である。
【図14】フィルタの効果を示している図である。
【図15】本発明の画像処理装置の一実施形態に係る画像処理装置のハードウェアの構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。
【0017】
図1は、本発明の一実施形態に係る画像処理装置を備える撮像装置の回路構成図である。
この撮像装置は、撮像部1と、駆動制御部2と、CDS/ADC3と、キー入力部4と、表示部5と、画像記録部6と、プログラムメモリ7と、RAM8と、制御部9と、画像処理部10と、を備えている。
キー入力部4は、撮影者の記録指示を検出するためのシャッターキー41を備えている。画像処理部10は、本発明の特徴的構成に対応する合成部11を備えている。これらはバスラインを介して接続されている。
【0018】
同図において、撮像部1は、CMOS等のイメージセンサと、このイメージセンサ上に設けられたRGBのカラーフィルタと、駆動制御部2からの制御により、光の強度を電荷の蓄積として一定時間保持し、CDS/ADC3にアナログの撮像信号としてこれらを出力するドライバと、を内蔵する。
そして、撮像部1は、シャッターキー41、制御部9、駆動制御部2を経由した撮影者の撮影指示を検出することで、露光条件(シャッタースピード、若しくは絞り値)を変えながら、露出アンダー、適正露出、露出オーバーを含む複数の画像(カラー画像)を取得する。
CDS/ADC3は、撮像部1から出力される被写体の光学像に応じたアナログの撮像信号が入力される回路である。CDS/ADC3は、入力した撮像信号を保持するCDSと、その撮像信号を増幅するゲイン調整アンプ(AGC)と、増幅された撮像信号をデジタルの撮像信号に変換するA/D変換器(ADC)と、を含むように構成されている。
なお、ゲイン調整アンプの調整に関わる制御についても、駆動制御部2からの指示に基いて実行される。このため、露光条件(シャッタースピード、若しくは絞り値)を同じくして複数枚の画像を取得しても、RGBのゲイン調整アンプや画像の色味を順次変えることによる複数の条件の異なる画像を生成することができる。
【0019】
キー入力部4は、上述のシャッターキー41の他、本発明に係る画像の取得や記録を目的とする撮影モードへの切換、表示の切換等を検出するための各種キーを備えている。
表示部5は、合成処理された画像を表示する機能を有する。
画像記録部6は、本発明に係る合成処理が実行された後、JPEG方式で符号化された画像データ(画像ファイル)を記憶格納する。
プログラムメモリ7は、制御部9、画像処理部10にて実行されるプログラムを記憶し、必要に応じて制御部9が読み出す。
RAM8は、各種処理により発生する処理中のデータを一時的に保持する機能を有する。制御部9は撮像装置全体の処理動作を制御する。
画像処理部10は、画像データの符号化/復号化処理の他、本発明に係る合成処理を実行するための合成部11を備えている。
【0020】
次に合成処理を実行する機能について、図2の機能ブロック図を用いて説明する。
本実施形態でいう合成処理とは、露出が各々異なる複数の画像のデータを合成することで、HDR合成画像のデータを生成する処理をいう。
特に本実施形態のHDR合成処理では、撮像部1、CDS/ADC3を経て、露光条件(シャッタースピード、絞り値、若しくは、ゲイン調整値)を変えながら連写されて取得された複数の画像について、これらの画像のデータの各々が、YUV色空間で規定される輝度成分を示す輝度信号(Y)と、それ以外の成分、具体的には青色成分の差分信号(U)と、赤色成分の差分信号(V)との3要素の成分のうち、Y成分とUV成分とに分離されて与えられ、分離後の複数のY成分が合成されるのみならず、分離後の複数のUV成分が合成される。
このような合成後のY成分とUV成分をあわせた結果得られるHDR合成画像のデータは、従来よりも、白飛びや黒つぶれの少ない幅広いダイナミックレンジを持ち、かつ、彩度も適切に調整された画像のデータになる。
【0021】
合成部11は、適正露出の画像(以下、「適正露出画像」と呼ぶ)のデータと、適正露出を超えた露出の画像(以下、「露出オーバー画像」と呼ぶ)のデータと、適正露出未満の露出の画像(以下、「露出アンダー画像」と呼ぶ)のデータと、を合成する。
ここで、適正な露出とは、撮像条件にとって必ずしも適正な露出であることを意味せず、露出オーバー画像及び露出アンダー画像の各々を撮像した時に用いた2つの露出の間の中間的な露出を意味する。換言すると、露出オーバー画像及び露出アンダー画像の各々を撮像した時に用いた2つの露出と比較した場合に適正な露出が、ここでいう適正な露出である。
【0022】
ここで、以下、適正露出画像のデータのY成分を「適正露出Y画像のデータ」と呼び、露出オーバー画像のデータのY成分を「露出オーバーY画像のデータ」と呼び、露出アンダー画像のデータのY成分を「露出アンダーY画像のデータ」と呼ぶ。
一方、適正露出画像のデータのUV成分を「適正露出UV画像のデータ」と呼び、露出オーバー画像のデータのUV成分を「露出オーバーUV画像のデータ」と呼び、露出アンダー画像のデータのUV成分を「露出アンダーUV画像のデータ」と呼ぶ。
図2の例では、適正露出Y画像、露出オーバーY画像、及び、露出アンダーY画像の各データ、並びに、適正露出UV画像、露出オーバーUV画像、及び、露出アンダーUV画像の各データは、予め用意されているものとする。
【0023】
なお、Y合成部21の処理対象となる各画像のデータを、個々に区別せずに、UV合成部22の処理対象に対して区別をすることを主目的とする場合、これらをまとめて、単に「Y画像のデータ」と呼ぶ。即ち、Y成分を各画素値として構成されるデータの全体が、Y画像のデータになる。
一方、UV合成部22の処理対象となる各画像のデータを、個々に区別せずに、Y合成部21の処理対象に対して区別をすることを主目的とする場合、これらをまとめて、単に「UV画像のデータ」と呼ぶ。即ち、UV成分を各画素値として構成されるデータの全体が、UV画像のデータになる。
【0024】
図2に示すように、合成部11は、Y合成部21と、UV合成部22と、を備えている。
Y合成部21は、適正露出Y画像、露出オーバーY画像、及び露出アンダーY画像の各々のデータを合成することによって、合成画像のデータを生成する。このようなY合成部21により生成される合成画像のデータを、以下、「合成Y画像のデータ」と呼び、合成Y画像のデータが生成される一連の処理を、以下、「Y成分合成処理」と呼ぶ。このようなY成分合成処理により生成された合成Y画像のデータは、白飛びや黒つぶれがなく、かつ広いダイナミックレンジを持ったY成分となる。
一方、UV合成部22は、適正露出UV画像のデータ、露出オーバーUV画像のデータ、及び露出アンダーUV画像のデータを合成することによって、合成画像のデータ(以下、「合成UV画像のデータ」と呼ぶ)を生成する。このようなUV合成部22により生成される合成画像のデータを、以下、「合成UV画像のデータ」と呼び、合成UV画像のデータが生成される一連の処理を、以下、「UV成分合成処理」と呼ぶ。このようなUV成分合成処理により生成された合成UV画像のデータは、適切な色身に調整されたUV成分となる。
このようにして、合成部11からは、Y合成部21のY成分合成処理によって生成された合成Y画像のデータが出力されると共に、UV合成部22のUV成分合成処理によって生成された合成UV画像のデータが出力される。
【0025】
ここで、本実施形態では、Y成分合成処理において、適正露出Y画像、露出オーバーY画像、及び露出アンダーY画像の各々のデータは、所定の合成比率に従って合成される。
合成比率とは、2以上の画像のデータが合成される場合、各々の画像のデータの混合の割合をいう。例えば、適正露出Y画像、露出オーバーY画像、及び露出アンダーY画像の各々のデータの合成比率の各々が、70%、30%、0%の各々である場合には、適正露出Y画像のデータの70%と、露出オーバーY画像のデータの30%とが混合された結果得られるデータが、合成Y画像のデータになる。なお、本例では、露出アンダーY画像のデータは、混合比率は0%であるため、合成に用いられない。
一方、UV成分合成処理においても、適正露出UV画像、露出オーバーUV画像、及び露出アンダーUV画像の各々のデータは、所定の合成比率に従って合成される。
ここで、UV成分合成処理に用いられる合成比率は、Y成分合成処理に用いられる合成比率と独立に設定されてもよいが、本実施形態では、Y成分合成処理に用いられる合成比率がそのまま用いられる。
このように、輝度(コントラスト)が調整された合成Y画像のデータのみならず、彩度が調整された合成UV画像のデータも得られるため、これらをあわせた結果得られるHDR合成画像のデータは、従来よりも、白飛びや黒つぶれの少ない幅広いダイナミックレンジを持ち、かつ、彩度も適切に調整された画像のデータになる。
【0026】
以下、このような合成部11を構成するY合成部21及びUV合成部22の詳細について、その順番に個別に説明する。
はじめに、Y合成部21の詳細について説明する。
【0027】
Y合成部21は、平均化部31と、εフィルタ部32と、合成部33と、ゲイン設定部34と、減算部35と、コントラスト強調部36と、エッジ強調部37と、を備えている。
【0028】
平均化部31は、適正露出Y画像、露出オーバーY画像、及び露出アンダーY画像の各々のデータを平均化し、その結果得られる画像のデータ(以下、「平均Y画像のデータ」と呼ぶ)をεフィルタ部32に供給する。
【0029】
εフィルタ部32は、平均化部31から供給された平均Y画像のデータに対して、εフィルタをかけることによって、平滑化された画像のデータを生成し、合成部33及び減算部35に供給する。
ここで、εフィルタ部32から出力される画像のデータ、即ち、平均Y画像のデータに対してεフィルタをかけることによって得られる画像のデータは、後述するように、合成部33において判定用のデータとして用いられる。そこで、以下、当該データを、判定用Y画像のデータと呼ぶ。
【0030】
合成部33は、適正露出Y画像、露出オーバーY画像、及び露出アンダーY画像の各々のデータを合成する。
具体的には例えば、合成部33は、適正露出Y画像、露出オーバーY画像、及び露出アンダーY画像の各々を構成する各画素のうち、処理の対象として注目すべき同一位置(座標)に存在する画素を、注目画素として設定する。
合成部33は、適正露出Y画像、露出オーバーY画像、及び露出アンダーY画像の各々の注目画素に対して合成比率をそれぞれ設定し、設定された各々の合成比率で、各々の注目画素の画素値を合成する。
【0031】
図3は、合成比率を設定するテーブルの一例を示している。
図3において、横軸は、判定用Y画像の輝度値(0乃至255の範囲内の値)を示しており、縦軸は、合成比率(%)を示している。
実線は、適正露出Y画像に適用される合成比率Rm(以下、「適正露出用合成比率Rm」と呼ぶ)を示している。点線は、露出オーバーY画像に適用される合成比率Ro(以下、「露出オーバー用合成比率Ro」と呼ぶ)を示している。一点鎖線は、露出アンダーY画像に適用される合成比率Ru(以下、「露出アンダー用合成比率Ru」と呼ぶ)を示している。
図3に示すように、合成部33は、判定用Y画像(平滑化された画像)データの明るさ、即ち、判定用Y画像の輝度値に基づいて、適正露出用合成比率Rm、露出オーバー用合成比率Ro、及び露出アンダー用合成比率Ruの各々を設定する。
具体的には例えば、判定用Y画像の輝度値が低い場合(暗い場合)、明るく撮影された画像の合成比率が高くなるように、即ちここでは露出オーバー合成比率Roが高くなるように、適正露出用合成比率Rm、露出オーバー用合成比率Ro、及び露出アンダー用合成比率Ruの各々が設定される。
逆に、例えば、判定用Y画像の輝度値が高い場合(明るい場合)、暗く撮影された画像の合成比率が高くなるように、即ちここでは露出アンダー合成比率Ruが高くなるように、適正露出用合成比率Rm、露出オーバー用合成比率Ro、及び露出アンダー用合成比率Ruの各々が設定される。
【0032】
ここで、適正露出Y画像の注目画素の画素値を「Ym」と記述し、露出アンダーY画像の注目画素の画素値を「Yu」と記述し、露出オーバーY画像の注目画素の画素値を「Yo」と記述し、各々の注目画素の合成値「Ymix」と記述する。
この場合、合成部33は、次の式(1)を演算することで、各々の注目画素の合成値Ymixを演算することができる。
Ymix=Ru×Yu+Rm×Ym+Ro×Yo ・・・(1)
【0033】
合成部33は、適正露出Y画像、露出オーバーY画像、及び露出アンダーY画像の各々の同一座標の画素を注目画素に順次設定し、その都度、上述した一連の処理を繰り返すことによって、合成Y画像のデータを生成する。
【0034】
図4は、合成部33の具体的な処理結果を示している。
図4(A)は、露出アンダーY画像のデータの一例を示している。
図4(B)は、適正露出Y画像のデータの一例を示している。
図4(C)は、露出オーバーY画像のデータの一例を示している。
図4(D)は、平均Y画像のデータの一例を示している。即ち、図4(A)の露出アンダーY画像、図4(B)の適正露出Y画像、図4(C)の露出オーバーY画像の各々のデータが平均化部31により平均化された結果として、図4(D)の平均Y画像のデータが得られた。
図4(E)は、判定用Y画像のデータの一例を示している。即ち、図4(D)の平均Y画像のデータに対してεフィルタがεフィルタ部32によってかけられることによって、図4(E)の平滑化された画像のデータが得られ、これが判定用Y画像のデータとして用いられた。
図4(F)は、合成画像のデータの一例を示している。即ち、図4(E)の判定用Y画像のデータと図3のテーブルとに基づいて合成比率が設定され、当該合成比率で、図4(A)の露出アンダーY画像、図4(B)の適正露出Y画像、図4(C)の露出オーバーY画像の各々のデータが合成部33により合成された結果として、図4(F)の合成画像のデータが得られた。
【0035】
さらに、合成部33は、このようにして生成される合成Y画像のデータの明るさを調整することができる。
具体的には、ゲイン設定部34は、合成Y画像のデータの明るさを調整するゲインとして、適正露出Y画像に適用される調整ゲインGmと、露出オーバーY画像に適用される調整ゲインGoと、露出アンダーY画像に適用される調整ゲインGuと、を設定する。
ゲイン設定部34により設定された調整ゲインGm,Go,Guの各々は、適正露出用合成比率Rm、露出オーバー用合成比率Ro、及び露出アンダー用合成比率Ruの各々に乗算される。これにより、結果として、合成Y画像のデータの明るさが調整される。
【0036】
図5は、調整ゲインGm,Go,Guの各々が反映された適正露出用合成比率Rm、露出オーバー用合成比率Ro、及び露出アンダー用合成比率Ruのテーブルの一例を示している。
図5のテーブルは、図3のテーブルに対して、調整ゲインGm=2.0、調整ゲインGo=1.5、調整ゲインGu=1.0が適用された結果として、得られたものである。このため、横軸や縦軸等の前提事項は、図3と同様であるため、ここではその説明を省略する。
【0037】
図6は、このような調整ゲインGm,Go,Guによる明るさの調整の効果を示している。
図6(A)は、このような調整ゲインGm,Go,Guによる調整が無い場合の合成画像のデータ、即ち、図3のテーブルに基づいて生成された合成画像のデータの一例を示している。
図6(B)は、このような調整ゲインGm,Go,Guによる調整がなされた場合の合成画像のデータ、即ち、図5のテーブルに基づいて生成された合成画像のデータの一例を示している。
図6(B)の合成画像のデータは、図5(B)の合成画像のデータと比較して、暗部を中心に明るくなるように調整されていることがわかる。
【0038】
図2に戻り、減算部35には、平均化部31から平均Y画像のデータが供給される。
減算部35にはまた、εフィルタ部32から判定用Y画像のデータとして合成部33に供給される、平滑化された画像のデータ、即ち、平均Y画像のデータに対してεフィルタがかけられた画像のデータも供給される。
そこで、減算部35は、平均Y画像のデータと、それに対してεフィルタがかけられた画像のデータとの差分を演算し、その結果得られるデータをコントラスト成分として、コントラスト強調部36に出力する。
【0039】
コントラスト強調部36は、合成部33から出力された合成Y画像のデータに対して、減算部35から出力されたコントラスト成分を足しこむ。ここで、コントラスト強調部36の処理単位も注目画素であり、注目画素に設定される画素によって、減算部35から出力されるコントラスト成分も異なることになるため、足しこむ量も異なることになる。このようにして、局所的にコントラストを強調することが必要に応じて可能になる。
さらに、コントラスト強調部36は、コントラスト成分を足しこむことによる白飛びや黒つぶれの発生を防止すべく、合成Y画像の明るさ(輝度値)に応じて、コントラスト成分の足しこみ量を調整する。
【0040】
図7は、足しこみ量を設定するテーブルの一例を示している。
図7において、横軸は、合成Y画像の輝度値(0乃至255の範囲内の値)を示しており、縦軸は、足しこみ量(%)を示している。
【0041】
ここで、足しこまれるコントラスト成分を「Yc」と記述し、平均化部31から出力される平均Y画像のデータを「Ya」と記述し、εフィルタ部32から出力されるデータ、即ち、平均Y画像のデータYaに対してεフィルタがかけられた画像のデータを「Yaε」と記述する。
この場合、コントラスト成分Ycは、次の式(2)により示される。
Yc=Ya−Yaε+C ・・・(2)
式(2)において、Cは、定数を表わしており、本実施形態では127であるものとする。
即ち、減算部35は、式(2)に従って、コントラスト成分Ycを生成する。
なお、減算部35の処理の単位は、注目画素となるため、注目画素についてのコントラスト成分Ycが式(2)により演算されることになる。
【0042】
また、コントラスト強調後の合成画像の注目画素の画素値を「Yr」と記述し、当該注目画素についての足しこみ量を「add_lev」と記述すると、コントラスト強調後の合成画像の注目画素の画素値Yrは、次の式(3)により示される。
Yr=Ymix+(Yc−C)×add_lev ・・・(3)
即ち、コントラスト強調部36は、式(3)に従って、コントラスト強調後の合成画像の注目画素の画素値Yrを演算する。
この場合の足しこみ量add_levは、合成部33から出力される合成Y画像の注目画素の輝度値と、図7のテーブルとによって設定される。
コントラスト強調部36は、合成部33から出力される合成Y画像を構成する各画素を注目画素に順次設定し、その都度、式(3)を演算する。このようにして、コントラスト強調後の合成Y画像のデータが生成される。
【0043】
図8は、このようなコントラスト強調の効果を示している。
図8(A)は、コントラスト成分のデータの一例を示している。
図8(B)は、コントラスト強調前の合成画像のデータ、即ち、合成部33の出力データの一例を示している。
図8(C)は、コントラスト強調後の合成画像のデータ、即ち、コントラスト強調部36の出力データの一例を示している。
【0044】
このようにしてコントラスト強調部36により生成されたコントラスト強調後の合成Y画像のデータは、エッジ強調部37に供給される。
エッジ強調部37は、平均化によりエッジが低下してしまった合成Y画像のデータに対して、エッジ強調の処理を施す。
なお、この場合のエッジ強調部37の処理単位も注目画素になり、注目画素として設定される画素毎に、異なったエッジ強調の度合(以下、「エッジ強調レベル」)が設定される。
【0045】
図9は、エッジ強調部37によるエッジ強調の処理で設定されるエッジ強調レベルのテーブルの一例を示している。
図9(A)は、合成比率のテーブルの一例であって、図3と同一の例を示している。
図9(B)は、エッジ強調レベルのテーブルの一例を示している。
図9(B)において、横軸は、判定用Y画像の輝度値(0乃至255の範囲内の値)を示しており、縦軸は、エッジ強調レベルを示している。
図9(B)の例では、平均化の度合が大きくなるほど、即ち、適正露出用合成比率Rmと露出オーバー用合成比率Roとの比率が1:1に近づくほど、或いはまた、適正露出用合成比率Rmと露出アンダー用合成比率Ruとの比率が1:1に近づくほど、大きなエッジ強調レベルが設定される。
なお、エッジ強調部37の処理量を減少させる必要がある場合、又は省略する必要がある場合、合成部33による合成前のY画像のデータ、ここでは、適正露出Y画像、露出オーバーY画像、及び露出アンダーY画像の各データとして、予め強めのエッジ強調が施されたデータを用意しておくよい。
【0046】
エッジ強調部37によりエッジ強調の処理が施された合成Y画像のデータは、Y合成部21の出力データとして、外部に出力される。
【0047】
以上、Y合成部21の詳細について説明した。
次に、UV合成部22の詳細について説明する。具体的には、先ず、図2及び図10を参照して、UV合成部22の構成について説明する。次に、図11を参照して、UV合成部22が実行するUV成分合成処理の流れについて説明する。
【0048】
図2に示すように、UV合成部22は、合成比率取得部41と、合成部42と、彩度強調部43と、を備えている。
【0049】
ここで、UV合成部22の処理単位も、注目画素であるとする。即ち、適正露出UV画像、露出オーバーUV画像、及び、露出アンダーUV画像の各々を構成する画素が、注目画素として設定される。
ここで、後述するように、UV合成部22は、Y合成部21と必ずしも同期して実行する必要はないが、説明の便宜上、UV画像における注目画素と、Y画像における注目画素とは、同一座標の各々対応する画素であるものとして、以下の説明を行う。即ち、以下の説明では、Y画像と、それに対応するUV画像との各々において、同一座標に位置する各々対応する画素が、注目画素に設定されるものとする。
【0050】
この場合、合成比率取得部41は、Y合成部21の合成部33において注目画素の合成に用いられた合成比率を取得する。
ここで、合成比率取得部41により取得される合成比率とは、適正露出用合成比率Rm、露出オーバー用合成比率Ro、及び露出アンダー用合成比率Ruの組である。
また、本実施形態では、合成比率取得部41は、ゲイン設定部34により設定される調整ゲインを用いた明るさ調整後の合成比率、即ち、図5のテーブルに基づいて設定された合成比率を取得する。
ただし、合成比率取得部41は、必要に応じて、図3のテーブルに基づいて設定された合成比率、即ち、ゲイン設定部34により設定される調整ゲインを用いた明るさ調整前の合成比率を取得するようにしてもよい。
【0051】
合成部42は、合成比率取得部41により取得された合成比率、即ち、Y合成部21の合成部33において注目画素の合成に用いられた合成比率をそのまま用いて、適正露出UV画像、露出オーバーUV画像、及び露出アンダーUV画像の各々の注目画素の画素値を合成する。
【0052】
ここで、適正露出UV画像の注目画素の画素値を「UVm」と記述し、露出アンダーUV画像の注目画素の画素値を「UVu」と記述し、露出オーバーY画像の注目画素の画素値を「UVo」と記述し、各々の注目画素の合成値「UVmix」と記述する。
この場合、合成部42は、次の式(4)を演算することで、各々の注目画素の合成値UVmixを演算することができる。
UVmix=Ru×UVu+Rm×UVm+Ro×UVo ・・・(4)
【0053】
式(4)において、Ru,Rm,Roは、Y合成部21の合成部33が注目画素の合成値Ymixを上述した式(1)に従って演算した際に用いられたパラメータである。即ち、合成比率取得部41に取得された、適正露出用合成比率Rm、露出オーバー用合成比率Ro、及び露出アンダー用合成比率Ruが、式(4)に代入される。
例えば、合成比率取得部41により取得された合成比率、即ち、Y合成部21の合成部33において注目画素の合成のための式(1)に用いられた、適正露出用合成比率Rm=0.7(70%)、露出オーバー用合成比率Ro=0.3(30%)、露出アンダー用合成比率Ru=0(0%)であるとする。この場合、式(4)においても、Rmに0,7が代入され、Roに0.3が代入され、かつ、Roに0が代入されて、合成部42により演算され、注目画素の合成値UVmixが算出される。
【0054】
以上まとめると、合成部42は、適正露出UV画像、露出オーバーUV画像、及び露出アンダーUV画像の各々の同一座標の画素であって、Y合成部21により注目画素として設定されている画素の座標と同一座標の画素を注目画素に順次設定する。
そして、合成部42は、注目画素に設定された画素毎に、合成比率取得部41により取得された合成比率、即ち、Y合成部21の合成部33において注目画素の合成に用いられた合成比率をそのまま用いて、上述した一連の処理を繰り返すことによって、合成画像のデータを生成する。
このようにしてUV合成部22の合成部42により生成された合成画像のデータを、以下、「合成UV画像のデータ」と呼ぶ。
【0055】
なお、UV合成部22は、UV画像側の注目画素と同一座標のY画像内の画素に対して、適用された合成比率を利用することができれば足りるのであって、当該Y画像内の画素が現在Y合成部21において注目画素に設定されている必要はない。即ち、UV合成部22は、Y合成部21と同期して動作してもよいが、非同期で動作しなくてもよい。
非同期で動作する場合には、例えば、Y合成部21において用いられた合成比率はバッファ(図示せず)に一時的に蓄積され、合成比率取得部41は、当該バッファに蓄積された合成比率を取得する。この場合、バッファに蓄積された1以上の画素毎の合成比率の中から、UV画像側の注目画素と同一座標のY画像内の画素に対して適用された合成比率を合成部42が認識できる仕組みが、合成部11に設けられる。
【0056】
合成部42により生成された合成UV画像のデータは、彩度強調部43に供給される。
彩度強調部43は、合成UV画像の注目画素の画素値に対して所定のゲインを乗算することによって、注目画素の彩度を強調する。
このように、彩度強調部43の処理単位も注目画素であり、注目画素として設定された画素毎に、ゲインが設定されることになる。
【0057】
図10は、彩度強調部43により用いられるゲインを設定するテーブルの一例を示している。
図10において、横軸は、彩度レベル(0乃至255の範囲内の値)を示しており、縦軸は、ゲイン(%)を示している。
ここで、彩度レベルとしては、YUV空間から変換されたHSV空間において算出されたS値を採用してもよいが、本実施形態では、処理負荷軽減のため、式(5)に示すように、U値とV値の各々の絶対値のうちの大きい方を採用する。
S_lev=max(|U_mix|,|V_mix|) ・・・(5)
式(5)において、S_levは、彩度レベルを示している。max(α,β)は、αとβのうちの最大値を出力する関数を示している。U_mixは、合成UV画像の注目画素のU値を示している。V_mixは、合成UV画像の注目画素のV値を示している。
図10の例では、彩度レベルS_levが低い場合と高い場合にゲインが抑えられる。即ち、合成UV画像のうち低彩度と高彩度の領域の画素が注目画素に設定された場合に、ゲインが抑えられる。これにより、ゲインによる色飽和や、グレー領域に対する不要な彩度強調を防止することが可能になる。
【0058】
彩度強調部43により彩度が強調された合成UV画像のデータは、UV合成部22の出力データとして、外部に出力される。
【0059】
次に、図11のフローチャートを参照して、このような構成を有する図2のUV合成部22が実行するUV成分合成処理について説明する。
図11は、合成処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【0060】
ステップS1において、UV合成部22は、適正露出UV画像、露出オーバーUV画像、及び、露出アンダーUV画像の各々を構成する画素のうち、所定の座標に位置する画素を注目画素として設定する。
なお、図11の説明においても、UV画像の注目画素の座標と同一座標に位置するY画像内の画素も、Y画像の注目画素として設定されているものとする。
【0061】
ステップS2において、UV合成部22は、Y画像の注目画素に対するY成分合成処理が実行されたか否かを判定する。
Y画像の注目画素に対するY成分合成処理が実行中の場合には、ステップS2においてNOであると判定されて、処理はステップS2に戻さる。即ち、Y画像の注目画素に対するY成分合成処理が実行中の場合には、ステップS2の判定処理が繰り返し実行されて、UV成分合成処理は待機状態になる。
その後、Y画像の注目画素に対するY成分合成処理が終了した場合には、ステップS2においてYESであると判定されて、処理はステップS3に進む。
【0062】
ステップS3において、UV合成部22の合成比率取得部41は、Y画像の注目画素に対するY成分合成処理で用いられる合成比率を取得する。即ち、注目画素について上述した式(1)が演算される際に、パラメータRm,Ro,Ruの各々に代入された、適正露出用合成比率Rm、露出オーバー用合成比率Ro、及び露出アンダー用合成比率Ruの各々が合成比率取得部41により取得される。
【0063】
ステップS4において、合成比率取得部41は、露出が各々異なる複数のUV画像の各注目画素のデータを取得する。
即ち、本実施形態では、適正露出UV画像、露出オーバーUV画像、及び、露出アンダーUV画像の各注目画素のデータが取得される。
【0064】
ステップS5において、合成比率取得部41は、ステップS3の処理で取得された合成比率を用いて、即ち、Y画像の注目画素に対して用いられた合成比率をそのまま用いて、露出が各々異なる複数のUV画像のデータを合成することによって、合成UV画像のデータを生成する。
【0065】
ステップS6において、彩度強調部43は、合成UV画像のデータに対して、彩度強調処理を施す。
【0066】
ステップS7において、UV合成部22は、全ての画素を注目画素に設定したか否かを判定する。
適正露出UV画像、露出オーバーUV画像、及び、露出アンダーUV画像の各々を構成する画素のうち、注目画素に未だ設定されていない画素が存在する場合、ステップS7においてNOであると判定されて、処理はステップS2に戻され、それ以降の処理が繰り返される。
即ち、適正露出UV画像、露出オーバーUV画像、及び、露出アンダーUV画像の各々を構成する画素が注目画素として順次設定される毎に、ステップS1乃至S7のループ処理が繰り返し実行されて、合成UV画像のデータが生成されていく。
そして、最後の画素がステップS1の処理で注目画素に設定されて、ステップS2乃至S6の処理が実行されると、合成UV画像のデータが完成するので、次のステップS7においてYESであると判定されて、UV成分合成処理は終了となる。そしてこの後、合成処理された画像はファイル化され、画像記録部6に記録される。
【0067】
なお、以上説明した図11のフローチャートの流れは、UV成分合成処理の例示に過ぎない。
例えば、合成比率を取得するステップS3の処理タイミングは、図11の例に特に限定されず、取得すべき合成比率が既知である段階であれば足りる。換言すると、ステップS3以降の処理は、Y画像の注目画素に対するY成分合成処理で用いられる合成比率が設定された後であればいつでも実行することが可能である。
また例えば、ステップS3乃至S6の処理は、図11の例では画素を単位として実行されたが、図11の例に特に限定されず、所定数の画素からなるブロックを単位として実行してもよいし、画像全体を単位として実行してもよい。
【0068】
以上説明したように、露出が各々異なる複数の画像のデータが、Y成分からなる複数のY画像のデータと、UV成分からなる複数のUV画像のデータとに分離されている場合、図2のY合成部21は、分離後の複数のY画像のデータを、所定の合成比率を用いて合成する。一方、UV合成部22は、分離後の複数のUV画像のデータを、Y合成部21と同一(若しくは略等しい)の合成比率を用いて合成する。
これにより、輝度(コントラスト)が調整された合成Y画像のデータのみならず、彩度が調整された合成UV画像のデータも得られるため、これらをあわせた結果得られるHDR合成画像のデータは、従来よりも、白飛びや黒つぶれの少ない幅広いダイナミックレンジを持ち、かつ、彩度も適切に調整された画像のデータになる。
特に、Y合成部21が、複数のY画像内の同一座標の各画素のデータを、座標毎に異なる合成比率を用いて合成し、UV合成部22が、複数のUV画像内の同一座標の各画素のデータを、当該座標と同一のUV画像内の座標用の合成比率を用いて合成することによって、画素毎の適応的な調整が可能になるため、当該効果が顕著なものとなる。
このような効果は、図12と図13を比較することで明確にわかる。
【0069】
図12は、露出が各々異なる画像のデータの一例を示している。
図12(A)は、露出アンダーの画像のデータの一例を示している。
図12(B)は、適正露出の画像のデータの一例を示している。
図12(C)は、露出オーバーの画像のデータの一例を示している。
【0070】
図13は、図2の合成部11によって図12の各画像のデータが合成された結果得られる、合成画像のデータの一例を示している。
図13に示す合成画像は、図12の合成前の何れの画像と比較しても、広いダイナミックレンジを持った画像、即ちコントラストのはっきりとしたメリハリのある画像になっていることがわかる。
また、図13は、カラー画像を白黒画像に変換したために示すことが困難であるが、変換前のカラー画像では、彩度が適切に調整された画像になっていることが確認された。
【0071】
なお、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
【0072】
例えば、上述した実施形態では、Y成分合成処理の際に用いる判定用Y画像のデータとしては、露出が異なる複数のY画像のデータが平均化された平均Y画像のデータに対して、εフィルタがかけられたデータが用いられた。
しかしながら、判定用Y画像のデータは、特にこれに限定されず、平均Y画像のデータに対して、εフィルタの代わりに通常のLPF(Low Pass Filter)がかけられたデータを用いてもよい。
【0073】
ただし、通常のLPFよりも、本実施形態のようにεフィルタを採用した方が好適である。以下、好適な理由について説明する。
即ち、Y合成部21によるY成分合成処理においては、コントラスト強調部36によるコントラスト強調や、その前段の合成部33による合成Y画像のデータの生成のときに、オーバーシュート又はアンダーシュートが発生する。
このようなオーバーシュートやアンダーシュートの発生を軽減する効果を果たすのが、εフィルタである。即ち、εフィルタは、注目画素とその周辺の画素との間の画素値の差分を局所情報として用いることで、通常のLPFと比較して、輝度差の大きい領域を維持したまま、輝度差の小さい領域のみを効果的にボカすことができる。これにより、オーバーシュートやアンダーシュートの発生の軽減効果を奏することが可能になる。
【0074】
図14は、このようなεフィルタの効果を示している。
図14(A)は、図4(D)の平均Y画像のデータに対して、通常のLPFをかけた結果得られるデータの一例を示している。
図14(B)は、図4(D)の平均Y画像のデータに対して、εフィルタをかけた結果得られるデータ、即ち、εフィルタ部32の出力データの一例を示している。
図14(C)は、図14(A)の通常のLPFがかけられたデータを判定用Y画像のデータとして用いた場合に、合成部33から出力される合成Y画像のデータの一例を示している。
図14(D)は、図14(B)のεフィルタがかけられたデータ(εフィルタ部32の出力データ)を判定用Y画像のデータとして用いた場合に、合成部33から出力される合成Y画像のデータの一例を示している。
図14(C)の領域101Cと図14(D)の領域101Dとを見比べたり、図9(C)の領域102Cと図9(D)の領域102Dとを見比べることで、εフィルタによるオーバーシュート及びアンダーシュートの軽減の効果を認めることができる。
【0075】
このように、Y合成部21がY成分合成処理を実行して好適な合成Y画像のデータを生成するためには、ボケ量が大きい判定用Y画像のデータが必要になる。このような判定用Y画像のデータを生成するためのεフィルタとしては、大きなサイズが要求されるため、処理量と処理時間の増加が問題となる場合がある。
このような問題を発生させないか又は軽減させる必要がある場合には、図示はしないが、平均化部31から出力された平均Y画像のデータのサイズを、例えばQVGA(Quarter VGA)に縮小させる縮小部を合成部11に設けるようにしてもよい。この場合、εフィルタ部32は、縮小後の画像のデータに対してεフィルタをかけることになるため、当該εフィルタのサイズを小さくすることができ、その結果、処理量と処理時間を減少させることが可能になる。なお、εフィルタ部32の出力データのサイズもQVGAのままのため、当該出力データのサイズを元のサイズに拡大する拡大部も合成部11に設ける必要がある。
なお、この場合には、縮小部の縮小率及び拡大部の拡大率が大きくなるに従って、判定用Y画像のエッジが緩慢になってしまうため、上述のεフィルタによる効果、即ちオーバーシュートとアンダーシュートの軽減の効果が若干弱まる点に注意が必要である。
【0076】
また例えば、上述した実施形態では、露出が各々異なる複数の画像のデータとして、3枚の画像のデータが合成されたが、合成対象の画像のデータ数は、特にこれに限定されない。即ち、本発明は、2枚以上の任意の数の画像のデータを合成する場合に広く適用することができる。
【0077】
また、上述した実施形態では、合成処理時において顔画像領域の存在を考慮していないが、公知の顔画像領域検出技術を用いて、少なくとも撮像時と合成処理時との一方において顔画像領域を検出させ、この検出された顔画像の明るさを考慮した撮像制御、または、合成処理制御を行ってもよい。
【0078】
撮影時において顔画像領域を検出するケースにおいては、顔の明るさを最適にする露出設定を中心にして適正露出、露出アンダー、及び、露出オーバー画像データを撮像により取得するよう制御する。そして合成時は、顔部分については適正露出で取得されたY画像データが採用されるよう、合成比率を設定することができる。
【0079】
また、合成処理時においては、取得した全ての画像データについて顔画像領域の検出を試みてもよい。
少なくとも一つから顔画像領域を検出できればよいが、複数枚検出した場合であっても、その中から顔画像領域が含まれている画像データのうち、適正露出になっている画像データに最も近いものを選択する。
なお、上記選択処理を軽減させるため、適正露出値で撮影された画像データに露出値が近くかつ明るめの画像を選択するようにしてもよい。
そして、選択された画像データにおける顔画像領域の明るさ平均を計測し、この計測された露出に合わせて、非線形ガンマ変換等を適用することで、複数枚の画像データのうち、合成処理に採用する露出オーバー、及び、露出アンダーの各Y画像データを選択する。
また合成比率については、顔画像領域の明るさを中心にしたものに設定する。
【0080】
そしてこのようにY画像データについて合成比率を設定した後、この合成比率に合わせてUV画像についても合成処理し、彩度強調を加える。
【0081】
なお、合成対象となる、露出が各々異なる複数の画像のデータは、上述の各図に示される具体例に特に限定されない。例えば合成対象となる複数の画像のデータが撮像される際の露出の設定は、上述の各図に示される具体例に限定されず、露出が各々異なれば任意でよい。
また、上述の実施形態では特に言及しなかったが、露出が各々異なる複数の画像のデータは、合成されることを考慮すると、位置ズレが予め補正されていると好適である。
【0082】
また例えば、上述した実施形態では、本発明が適用される画像処理装置は、デジタルカメラとして構成される例として説明した。
しかしながら、本発明は、特にこれに限定されず、画像処理機能を有する電子機器一般に適用することができ、例えば、本発明は、デジタルフォトフレーム、パーソナルコンピュータ、携帯型ナビゲーション装置、ポータブルゲーム機等に幅広く適用可能である。
【0083】
換言すると、上述した一連の処理は、ハードウェアにより実行させることもできるし、ソフトウェアにより実行させることもできる。
【0084】
図15は、上述した一連の処理をソフトウェアにより実行させる場合の、本発明が適用される画像処理装置のハードウェア構成を示すブロック図である。
【0085】
図15の例では、画像処理装置は、CPU(Central Processing Unit)201と、ROM(Read Only Memory)202と、RAM(Random Access Memory)203と、バス204と、入出力インターフェース205と、入力部206と、出力部207と、記憶部208と、通信部209と、ドライブ210と、を備えている。
【0086】
CPU201は、ROM202に記録されているプログラムに従って各種の処理を実行する。又は、CPU201は、記憶部208からRAM203にロードされたプログラムに従って各種の処理を実行する。
RAM203にはまた、CPU201が各種の処理を実行する上において必要なデータ等も適宜記憶される。
【0087】
例えば本実施形態では、合成部11の機能を実現するプログラムが、ROM202や記憶部208に記憶されている。従って、CPU201が、これらのプログラムに従った処理を実行することで、合成部11の機能を実現することができる。
【0088】
CPU201、ROM202、及びRAM203は、バス204を介して相互に接続されている。このバス204にはまた、入出力インターフェース205も接続されている。入出力インターフェース205には、入力部206、出力部207、記憶部208、及び通信部209が接続されている。
【0089】
入力部206は、各種釦等の操作部で構成され、ユーザの指示操作を受け付ける他、各種情報を入力する。
出力部207は、各種情報を出力する。例えば、出力部207には、図示しない表示部が設けられており、合成部11の出力データにより表わされる合成画像が表示される。
記憶部208は、ハードディスクやDRAM(Dynamic Random Access Memory)等で構成され、各種データを記憶する。
通信部209は、インターネットを含むネットワークを介して他の装置(図示せず)との間で行う通信を制御する。
【0090】
入出力インターフェース205にはまた、必要に応じてドライブ210が接続され、磁気ディスク、光ディスク、光磁気ディスク、或いは半導体メモリ等よりなるリムーバブルメディア211が適宜装着される。ドライブ210によってリムーバブルメディア211から読み出されたプログラムは、必要に応じて記憶部208にインストールされる。また、リムーバブルメディア211は、記憶部208に記憶されている画像データ等の各種データも、記憶部208と同様に記憶することができる。
【0091】
一連の処理をソフトウェアにより実行させる場合には、そのソフトウェアを構成するプログラムが、コンピュータ等にネットワークや記録媒体からインストールされる。コンピュータは、専用のハードウェアに組み込まれているコンピュータであってもよい。また、コンピュータは、各種のプログラムをインストールすることで、各種の機能を実行することが可能なコンピュータ、例えば汎用のパーソナルコンピュータであってもよい。
【0092】
このようなプログラムを含む記録媒体は、ユーザにプログラムを提供するために装置本体とは別に配布されるリムーバブルメディア211により構成されるだけでなく、装置本体に予め組み込まれた状態でユーザに提供される記録媒体等で構成される。リムーバブルメディア211は、例えば、磁気ディスク(フロッピディスクを含む)、光ディスク、又は光磁気ディスク等により構成される。光ディスクは、例えば、CD−ROM(Compact Disk−Read Only Memory),DVD(Digital Versatile Disk)等により構成される。光磁気ディスクは、MD(Mini−Disk)等により構成される。また、装置本体に予め組み込まれた状態でユーザに提供される記録媒体は、例えば、プログラムが記録されているROM202や記憶部208に含まれるハードディスク等で構成される。
【0093】
なお、本明細書において、記録媒体に記録されるプログラムを記述するステップは、その順序に沿って時系列的に行われる処理はもちろん、必ずしも時系列的に処理されなくとも、並列的或いは個別に実行される処理をも含むものである。
【符号の説明】
【0094】
1・・・撮像部、2・・・撮像制御部、11・・・合成部、21・・・Y合成部、22・・・UV合成部、31・・・平均化部、32・・・εフィルタ部、33・・・合成部、34・・・ゲイン設定部、35・・・減算部、36・・・コントラスト強調部、37・・・エッジ強調部、41・・・合成比率取得部、42・・・合成部、43・・・彩度強調部、201・・・CPU、202・・・ROM、203・・・RAM、204・・・バス、205・・・入出力インターフェース、206・・・入力部、207・・・出力部、208・・・記憶部、209・・・通信部、210・・・ドライブ、211・・・リムーバブルメディア
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像処理装置、及びプログラムに関し、特に、従来よりも、白飛びや黒つぶれの少ない幅広いダイナミックレンジを持ち、かつ、彩度も適切に調整されたHDR合成画像を提供することを可能にする技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、撮像等により得られた画像を鑑賞する際の演出効果を高める目的で、当該画像のデータに対して各種画像処理が施されるようになっている。
例えば、このような画像処理として従来、ハイダナミックレンジ合成が知られている(特許文献1参照)。ハイダナミックレンジ合成とは、露出が各々異なる複数の画像のデータを合成することで、幅広いダイナミックレンジを表現する画像、即ちいわゆるハイダイナミックレンジ合成画像(High Dinamic Range合成画像、以下、「HDR合成画像」と呼ぶ)のデータを生成する画像処理をいう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−345509号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、白飛びや黒つぶれの少ない幅広いダイナミックレンジを持ち、かつ、彩度も適切に調整されたHDR合成画像を提供することが要求されているが、上述した特許文献1も含めて従来の手法では、当該要求に充分に応えることができない状況である。
【0005】
本発明は、このような状況に鑑みてなされたものであり、従来よりも、白飛びや黒つぶれの少ない幅広いダイナミックレンジを持ち、かつ、彩度も適切に調整されたHDR合成画像を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的達成のため、請求項1に記載の発明は、露出が各々異なる複数の画像のデータが、所定の色空間において規定される輝度成分からなる複数の第1の画像のデータと、その他の成分からなる複数の第2の画像のデータとに分離されている場合、分離後の前記複数の第1の画像のデータを、所定の合成比率を用いて合成する第1の合成手段と、分離後の前記複数の第2画像のデータを、前記第1の合成手段で用いられた合成比率と略等しい合成比率を用いて合成する第2の合成手段と、を備える。
【0007】
また、請求項2に記載の発明は、上記請求項1に記載の発明において、前記第1の合成手段は、前記複数の第1の画像において同じ位置に存在する各画素のデータを、座標毎に異なる合成比率を用いて合成し、前記第2の合成手段は、前記複数の第2の画像において同じ位置に存在する各画素のデータを、当該位置と同じ前記第1の画像内の位置用の前記合成比率を用いて合成する。
【0008】
また、請求項3記載の発明は、上記請求項2に記載の発明において、前記第1の合成手段は、さらに、前記複数の第1の画像のデータを平均化して平滑化されたデータを、判定用画像のデータとして用いて、前記合成比率を、前記第1の画像を構成する各画素の位置毎に設定する。
【0009】
また、請求項4に記載の発明は、上記請求項1乃至3に記載の発明において、前記第1の合成手段は、さらに、合成後の第1の画像のデータの明るさを調整するゲインを、前記複数の第1の画像のデータ毎に設定し、設定された前記ゲインを前記合成比率にかけることで、前記合成比率を調整し、前記第2の合成手段は、前記第1の合成手段により調整された後の前記合成比率を用いて、前記第2の画像のデータを合成する。
【0010】
また、請求項5に記載の発明は、上記請求項1乃至4に記載の発明において、前記露出が各々異なる複数の画像のデータの少なくとも一つから顔画像領域を検出する第1の画像領域検出手段とを更に備え、前記第1の合成手段は、前記第1の画像領域検出手段によって顔画像領域を検出すると、この顔画像領域に対し適正な明るさになっている画像データの明るさに基づいて前記合成比率を調整する。
【0011】
また、請求項6に記載の発明は、上記請求項1乃至4に記載の発明において、撮像手段と、この撮像手段によって撮像されている画像データから顔画像領域を検出する第2の画像領域検出手段と、この第2の画像領域検出手段によって顔画像領域を検出するとこの顔画像領域に対し適正な明るさになるように露出値を調整するとともに、この調整された露出値を中心に露出が各々異なる複数の画像のデータを撮像するよう制御する撮像制御手段とを更に備える。
【0012】
また、請求項7に記載の発明は、上記請求項1乃至6に記載の発明において、前記第2の合成手段は、さらに、合成後の第2の画像のデータに対して、彩度を強調するゲインをかける。
【0013】
また、上記目的達成のため、請求項8に記載の発明は、画像のデータに対して画像処理を施す画像処理装置を制御するコンピュータに、露出が各々異なる複数の画像のデータが、所定の色空間において規定される輝度成分からなる複数の第1の画像のデータと、その他の成分からなる複数の第2の画像のデータとに分離されている場合、分離後の前記複数の第1の画像のデータを、所定の合成比率を用いて合成する第1の合成機能と、分離後の前記複数の第2画像のデータを、前記第1の合成機能で用いられた合成比率と略等しい合成比率を用いて合成する第2の合成機能と、を実現させる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、従来よりも、白飛びや黒つぶれの少ない幅広いダイナミックレンジを持ち、かつ、彩度も適切に調整されたHDR合成画像を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の一実施形態に係る撮像装置の回路構成図である。
【図2】本発明における合成処理を実行する機能についての機能的構成を示す機能ブロック図である。
【図3】図2の画像処理装置で用いられる合成比率を設定するテーブルの一例を示している図である。
【図4】図2の画像処理装置の合成部での具体的な処理結果を示している図である。
【図5】調整ゲインが反映された適正露出用合成比率Rm、合成比率のテーブルの一例を示している図である。
【図6】調整ゲインによる明るさの調整の効果を示している図である。
【図7】足しこみ量を設定するテーブルの一例を示している図である。
【図8】コントラスト強調の効果を示している図である。
【図9】図2の画像処理装置のエッジ強調部によるエッジ強調の処理で設定されるエッジ強調レベルのテーブルの一例を示している図である。
【図10】図2の画像処理装置の彩度強調部により用いられるゲインを設定するテーブルの一例を示している図である。
【図11】図2の画像処理装置のUV合成部が実行するUV成分合成処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【図12】露出が各々異なる画像のデータの一例を示している図である。
【図13】図2の画像処理装置の合成部によって図12の各画像のデータが合成された結果得られる、合成画像のデータの一例を示している図である。
【図14】フィルタの効果を示している図である。
【図15】本発明の画像処理装置の一実施形態に係る画像処理装置のハードウェアの構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。
【0017】
図1は、本発明の一実施形態に係る画像処理装置を備える撮像装置の回路構成図である。
この撮像装置は、撮像部1と、駆動制御部2と、CDS/ADC3と、キー入力部4と、表示部5と、画像記録部6と、プログラムメモリ7と、RAM8と、制御部9と、画像処理部10と、を備えている。
キー入力部4は、撮影者の記録指示を検出するためのシャッターキー41を備えている。画像処理部10は、本発明の特徴的構成に対応する合成部11を備えている。これらはバスラインを介して接続されている。
【0018】
同図において、撮像部1は、CMOS等のイメージセンサと、このイメージセンサ上に設けられたRGBのカラーフィルタと、駆動制御部2からの制御により、光の強度を電荷の蓄積として一定時間保持し、CDS/ADC3にアナログの撮像信号としてこれらを出力するドライバと、を内蔵する。
そして、撮像部1は、シャッターキー41、制御部9、駆動制御部2を経由した撮影者の撮影指示を検出することで、露光条件(シャッタースピード、若しくは絞り値)を変えながら、露出アンダー、適正露出、露出オーバーを含む複数の画像(カラー画像)を取得する。
CDS/ADC3は、撮像部1から出力される被写体の光学像に応じたアナログの撮像信号が入力される回路である。CDS/ADC3は、入力した撮像信号を保持するCDSと、その撮像信号を増幅するゲイン調整アンプ(AGC)と、増幅された撮像信号をデジタルの撮像信号に変換するA/D変換器(ADC)と、を含むように構成されている。
なお、ゲイン調整アンプの調整に関わる制御についても、駆動制御部2からの指示に基いて実行される。このため、露光条件(シャッタースピード、若しくは絞り値)を同じくして複数枚の画像を取得しても、RGBのゲイン調整アンプや画像の色味を順次変えることによる複数の条件の異なる画像を生成することができる。
【0019】
キー入力部4は、上述のシャッターキー41の他、本発明に係る画像の取得や記録を目的とする撮影モードへの切換、表示の切換等を検出するための各種キーを備えている。
表示部5は、合成処理された画像を表示する機能を有する。
画像記録部6は、本発明に係る合成処理が実行された後、JPEG方式で符号化された画像データ(画像ファイル)を記憶格納する。
プログラムメモリ7は、制御部9、画像処理部10にて実行されるプログラムを記憶し、必要に応じて制御部9が読み出す。
RAM8は、各種処理により発生する処理中のデータを一時的に保持する機能を有する。制御部9は撮像装置全体の処理動作を制御する。
画像処理部10は、画像データの符号化/復号化処理の他、本発明に係る合成処理を実行するための合成部11を備えている。
【0020】
次に合成処理を実行する機能について、図2の機能ブロック図を用いて説明する。
本実施形態でいう合成処理とは、露出が各々異なる複数の画像のデータを合成することで、HDR合成画像のデータを生成する処理をいう。
特に本実施形態のHDR合成処理では、撮像部1、CDS/ADC3を経て、露光条件(シャッタースピード、絞り値、若しくは、ゲイン調整値)を変えながら連写されて取得された複数の画像について、これらの画像のデータの各々が、YUV色空間で規定される輝度成分を示す輝度信号(Y)と、それ以外の成分、具体的には青色成分の差分信号(U)と、赤色成分の差分信号(V)との3要素の成分のうち、Y成分とUV成分とに分離されて与えられ、分離後の複数のY成分が合成されるのみならず、分離後の複数のUV成分が合成される。
このような合成後のY成分とUV成分をあわせた結果得られるHDR合成画像のデータは、従来よりも、白飛びや黒つぶれの少ない幅広いダイナミックレンジを持ち、かつ、彩度も適切に調整された画像のデータになる。
【0021】
合成部11は、適正露出の画像(以下、「適正露出画像」と呼ぶ)のデータと、適正露出を超えた露出の画像(以下、「露出オーバー画像」と呼ぶ)のデータと、適正露出未満の露出の画像(以下、「露出アンダー画像」と呼ぶ)のデータと、を合成する。
ここで、適正な露出とは、撮像条件にとって必ずしも適正な露出であることを意味せず、露出オーバー画像及び露出アンダー画像の各々を撮像した時に用いた2つの露出の間の中間的な露出を意味する。換言すると、露出オーバー画像及び露出アンダー画像の各々を撮像した時に用いた2つの露出と比較した場合に適正な露出が、ここでいう適正な露出である。
【0022】
ここで、以下、適正露出画像のデータのY成分を「適正露出Y画像のデータ」と呼び、露出オーバー画像のデータのY成分を「露出オーバーY画像のデータ」と呼び、露出アンダー画像のデータのY成分を「露出アンダーY画像のデータ」と呼ぶ。
一方、適正露出画像のデータのUV成分を「適正露出UV画像のデータ」と呼び、露出オーバー画像のデータのUV成分を「露出オーバーUV画像のデータ」と呼び、露出アンダー画像のデータのUV成分を「露出アンダーUV画像のデータ」と呼ぶ。
図2の例では、適正露出Y画像、露出オーバーY画像、及び、露出アンダーY画像の各データ、並びに、適正露出UV画像、露出オーバーUV画像、及び、露出アンダーUV画像の各データは、予め用意されているものとする。
【0023】
なお、Y合成部21の処理対象となる各画像のデータを、個々に区別せずに、UV合成部22の処理対象に対して区別をすることを主目的とする場合、これらをまとめて、単に「Y画像のデータ」と呼ぶ。即ち、Y成分を各画素値として構成されるデータの全体が、Y画像のデータになる。
一方、UV合成部22の処理対象となる各画像のデータを、個々に区別せずに、Y合成部21の処理対象に対して区別をすることを主目的とする場合、これらをまとめて、単に「UV画像のデータ」と呼ぶ。即ち、UV成分を各画素値として構成されるデータの全体が、UV画像のデータになる。
【0024】
図2に示すように、合成部11は、Y合成部21と、UV合成部22と、を備えている。
Y合成部21は、適正露出Y画像、露出オーバーY画像、及び露出アンダーY画像の各々のデータを合成することによって、合成画像のデータを生成する。このようなY合成部21により生成される合成画像のデータを、以下、「合成Y画像のデータ」と呼び、合成Y画像のデータが生成される一連の処理を、以下、「Y成分合成処理」と呼ぶ。このようなY成分合成処理により生成された合成Y画像のデータは、白飛びや黒つぶれがなく、かつ広いダイナミックレンジを持ったY成分となる。
一方、UV合成部22は、適正露出UV画像のデータ、露出オーバーUV画像のデータ、及び露出アンダーUV画像のデータを合成することによって、合成画像のデータ(以下、「合成UV画像のデータ」と呼ぶ)を生成する。このようなUV合成部22により生成される合成画像のデータを、以下、「合成UV画像のデータ」と呼び、合成UV画像のデータが生成される一連の処理を、以下、「UV成分合成処理」と呼ぶ。このようなUV成分合成処理により生成された合成UV画像のデータは、適切な色身に調整されたUV成分となる。
このようにして、合成部11からは、Y合成部21のY成分合成処理によって生成された合成Y画像のデータが出力されると共に、UV合成部22のUV成分合成処理によって生成された合成UV画像のデータが出力される。
【0025】
ここで、本実施形態では、Y成分合成処理において、適正露出Y画像、露出オーバーY画像、及び露出アンダーY画像の各々のデータは、所定の合成比率に従って合成される。
合成比率とは、2以上の画像のデータが合成される場合、各々の画像のデータの混合の割合をいう。例えば、適正露出Y画像、露出オーバーY画像、及び露出アンダーY画像の各々のデータの合成比率の各々が、70%、30%、0%の各々である場合には、適正露出Y画像のデータの70%と、露出オーバーY画像のデータの30%とが混合された結果得られるデータが、合成Y画像のデータになる。なお、本例では、露出アンダーY画像のデータは、混合比率は0%であるため、合成に用いられない。
一方、UV成分合成処理においても、適正露出UV画像、露出オーバーUV画像、及び露出アンダーUV画像の各々のデータは、所定の合成比率に従って合成される。
ここで、UV成分合成処理に用いられる合成比率は、Y成分合成処理に用いられる合成比率と独立に設定されてもよいが、本実施形態では、Y成分合成処理に用いられる合成比率がそのまま用いられる。
このように、輝度(コントラスト)が調整された合成Y画像のデータのみならず、彩度が調整された合成UV画像のデータも得られるため、これらをあわせた結果得られるHDR合成画像のデータは、従来よりも、白飛びや黒つぶれの少ない幅広いダイナミックレンジを持ち、かつ、彩度も適切に調整された画像のデータになる。
【0026】
以下、このような合成部11を構成するY合成部21及びUV合成部22の詳細について、その順番に個別に説明する。
はじめに、Y合成部21の詳細について説明する。
【0027】
Y合成部21は、平均化部31と、εフィルタ部32と、合成部33と、ゲイン設定部34と、減算部35と、コントラスト強調部36と、エッジ強調部37と、を備えている。
【0028】
平均化部31は、適正露出Y画像、露出オーバーY画像、及び露出アンダーY画像の各々のデータを平均化し、その結果得られる画像のデータ(以下、「平均Y画像のデータ」と呼ぶ)をεフィルタ部32に供給する。
【0029】
εフィルタ部32は、平均化部31から供給された平均Y画像のデータに対して、εフィルタをかけることによって、平滑化された画像のデータを生成し、合成部33及び減算部35に供給する。
ここで、εフィルタ部32から出力される画像のデータ、即ち、平均Y画像のデータに対してεフィルタをかけることによって得られる画像のデータは、後述するように、合成部33において判定用のデータとして用いられる。そこで、以下、当該データを、判定用Y画像のデータと呼ぶ。
【0030】
合成部33は、適正露出Y画像、露出オーバーY画像、及び露出アンダーY画像の各々のデータを合成する。
具体的には例えば、合成部33は、適正露出Y画像、露出オーバーY画像、及び露出アンダーY画像の各々を構成する各画素のうち、処理の対象として注目すべき同一位置(座標)に存在する画素を、注目画素として設定する。
合成部33は、適正露出Y画像、露出オーバーY画像、及び露出アンダーY画像の各々の注目画素に対して合成比率をそれぞれ設定し、設定された各々の合成比率で、各々の注目画素の画素値を合成する。
【0031】
図3は、合成比率を設定するテーブルの一例を示している。
図3において、横軸は、判定用Y画像の輝度値(0乃至255の範囲内の値)を示しており、縦軸は、合成比率(%)を示している。
実線は、適正露出Y画像に適用される合成比率Rm(以下、「適正露出用合成比率Rm」と呼ぶ)を示している。点線は、露出オーバーY画像に適用される合成比率Ro(以下、「露出オーバー用合成比率Ro」と呼ぶ)を示している。一点鎖線は、露出アンダーY画像に適用される合成比率Ru(以下、「露出アンダー用合成比率Ru」と呼ぶ)を示している。
図3に示すように、合成部33は、判定用Y画像(平滑化された画像)データの明るさ、即ち、判定用Y画像の輝度値に基づいて、適正露出用合成比率Rm、露出オーバー用合成比率Ro、及び露出アンダー用合成比率Ruの各々を設定する。
具体的には例えば、判定用Y画像の輝度値が低い場合(暗い場合)、明るく撮影された画像の合成比率が高くなるように、即ちここでは露出オーバー合成比率Roが高くなるように、適正露出用合成比率Rm、露出オーバー用合成比率Ro、及び露出アンダー用合成比率Ruの各々が設定される。
逆に、例えば、判定用Y画像の輝度値が高い場合(明るい場合)、暗く撮影された画像の合成比率が高くなるように、即ちここでは露出アンダー合成比率Ruが高くなるように、適正露出用合成比率Rm、露出オーバー用合成比率Ro、及び露出アンダー用合成比率Ruの各々が設定される。
【0032】
ここで、適正露出Y画像の注目画素の画素値を「Ym」と記述し、露出アンダーY画像の注目画素の画素値を「Yu」と記述し、露出オーバーY画像の注目画素の画素値を「Yo」と記述し、各々の注目画素の合成値「Ymix」と記述する。
この場合、合成部33は、次の式(1)を演算することで、各々の注目画素の合成値Ymixを演算することができる。
Ymix=Ru×Yu+Rm×Ym+Ro×Yo ・・・(1)
【0033】
合成部33は、適正露出Y画像、露出オーバーY画像、及び露出アンダーY画像の各々の同一座標の画素を注目画素に順次設定し、その都度、上述した一連の処理を繰り返すことによって、合成Y画像のデータを生成する。
【0034】
図4は、合成部33の具体的な処理結果を示している。
図4(A)は、露出アンダーY画像のデータの一例を示している。
図4(B)は、適正露出Y画像のデータの一例を示している。
図4(C)は、露出オーバーY画像のデータの一例を示している。
図4(D)は、平均Y画像のデータの一例を示している。即ち、図4(A)の露出アンダーY画像、図4(B)の適正露出Y画像、図4(C)の露出オーバーY画像の各々のデータが平均化部31により平均化された結果として、図4(D)の平均Y画像のデータが得られた。
図4(E)は、判定用Y画像のデータの一例を示している。即ち、図4(D)の平均Y画像のデータに対してεフィルタがεフィルタ部32によってかけられることによって、図4(E)の平滑化された画像のデータが得られ、これが判定用Y画像のデータとして用いられた。
図4(F)は、合成画像のデータの一例を示している。即ち、図4(E)の判定用Y画像のデータと図3のテーブルとに基づいて合成比率が設定され、当該合成比率で、図4(A)の露出アンダーY画像、図4(B)の適正露出Y画像、図4(C)の露出オーバーY画像の各々のデータが合成部33により合成された結果として、図4(F)の合成画像のデータが得られた。
【0035】
さらに、合成部33は、このようにして生成される合成Y画像のデータの明るさを調整することができる。
具体的には、ゲイン設定部34は、合成Y画像のデータの明るさを調整するゲインとして、適正露出Y画像に適用される調整ゲインGmと、露出オーバーY画像に適用される調整ゲインGoと、露出アンダーY画像に適用される調整ゲインGuと、を設定する。
ゲイン設定部34により設定された調整ゲインGm,Go,Guの各々は、適正露出用合成比率Rm、露出オーバー用合成比率Ro、及び露出アンダー用合成比率Ruの各々に乗算される。これにより、結果として、合成Y画像のデータの明るさが調整される。
【0036】
図5は、調整ゲインGm,Go,Guの各々が反映された適正露出用合成比率Rm、露出オーバー用合成比率Ro、及び露出アンダー用合成比率Ruのテーブルの一例を示している。
図5のテーブルは、図3のテーブルに対して、調整ゲインGm=2.0、調整ゲインGo=1.5、調整ゲインGu=1.0が適用された結果として、得られたものである。このため、横軸や縦軸等の前提事項は、図3と同様であるため、ここではその説明を省略する。
【0037】
図6は、このような調整ゲインGm,Go,Guによる明るさの調整の効果を示している。
図6(A)は、このような調整ゲインGm,Go,Guによる調整が無い場合の合成画像のデータ、即ち、図3のテーブルに基づいて生成された合成画像のデータの一例を示している。
図6(B)は、このような調整ゲインGm,Go,Guによる調整がなされた場合の合成画像のデータ、即ち、図5のテーブルに基づいて生成された合成画像のデータの一例を示している。
図6(B)の合成画像のデータは、図5(B)の合成画像のデータと比較して、暗部を中心に明るくなるように調整されていることがわかる。
【0038】
図2に戻り、減算部35には、平均化部31から平均Y画像のデータが供給される。
減算部35にはまた、εフィルタ部32から判定用Y画像のデータとして合成部33に供給される、平滑化された画像のデータ、即ち、平均Y画像のデータに対してεフィルタがかけられた画像のデータも供給される。
そこで、減算部35は、平均Y画像のデータと、それに対してεフィルタがかけられた画像のデータとの差分を演算し、その結果得られるデータをコントラスト成分として、コントラスト強調部36に出力する。
【0039】
コントラスト強調部36は、合成部33から出力された合成Y画像のデータに対して、減算部35から出力されたコントラスト成分を足しこむ。ここで、コントラスト強調部36の処理単位も注目画素であり、注目画素に設定される画素によって、減算部35から出力されるコントラスト成分も異なることになるため、足しこむ量も異なることになる。このようにして、局所的にコントラストを強調することが必要に応じて可能になる。
さらに、コントラスト強調部36は、コントラスト成分を足しこむことによる白飛びや黒つぶれの発生を防止すべく、合成Y画像の明るさ(輝度値)に応じて、コントラスト成分の足しこみ量を調整する。
【0040】
図7は、足しこみ量を設定するテーブルの一例を示している。
図7において、横軸は、合成Y画像の輝度値(0乃至255の範囲内の値)を示しており、縦軸は、足しこみ量(%)を示している。
【0041】
ここで、足しこまれるコントラスト成分を「Yc」と記述し、平均化部31から出力される平均Y画像のデータを「Ya」と記述し、εフィルタ部32から出力されるデータ、即ち、平均Y画像のデータYaに対してεフィルタがかけられた画像のデータを「Yaε」と記述する。
この場合、コントラスト成分Ycは、次の式(2)により示される。
Yc=Ya−Yaε+C ・・・(2)
式(2)において、Cは、定数を表わしており、本実施形態では127であるものとする。
即ち、減算部35は、式(2)に従って、コントラスト成分Ycを生成する。
なお、減算部35の処理の単位は、注目画素となるため、注目画素についてのコントラスト成分Ycが式(2)により演算されることになる。
【0042】
また、コントラスト強調後の合成画像の注目画素の画素値を「Yr」と記述し、当該注目画素についての足しこみ量を「add_lev」と記述すると、コントラスト強調後の合成画像の注目画素の画素値Yrは、次の式(3)により示される。
Yr=Ymix+(Yc−C)×add_lev ・・・(3)
即ち、コントラスト強調部36は、式(3)に従って、コントラスト強調後の合成画像の注目画素の画素値Yrを演算する。
この場合の足しこみ量add_levは、合成部33から出力される合成Y画像の注目画素の輝度値と、図7のテーブルとによって設定される。
コントラスト強調部36は、合成部33から出力される合成Y画像を構成する各画素を注目画素に順次設定し、その都度、式(3)を演算する。このようにして、コントラスト強調後の合成Y画像のデータが生成される。
【0043】
図8は、このようなコントラスト強調の効果を示している。
図8(A)は、コントラスト成分のデータの一例を示している。
図8(B)は、コントラスト強調前の合成画像のデータ、即ち、合成部33の出力データの一例を示している。
図8(C)は、コントラスト強調後の合成画像のデータ、即ち、コントラスト強調部36の出力データの一例を示している。
【0044】
このようにしてコントラスト強調部36により生成されたコントラスト強調後の合成Y画像のデータは、エッジ強調部37に供給される。
エッジ強調部37は、平均化によりエッジが低下してしまった合成Y画像のデータに対して、エッジ強調の処理を施す。
なお、この場合のエッジ強調部37の処理単位も注目画素になり、注目画素として設定される画素毎に、異なったエッジ強調の度合(以下、「エッジ強調レベル」)が設定される。
【0045】
図9は、エッジ強調部37によるエッジ強調の処理で設定されるエッジ強調レベルのテーブルの一例を示している。
図9(A)は、合成比率のテーブルの一例であって、図3と同一の例を示している。
図9(B)は、エッジ強調レベルのテーブルの一例を示している。
図9(B)において、横軸は、判定用Y画像の輝度値(0乃至255の範囲内の値)を示しており、縦軸は、エッジ強調レベルを示している。
図9(B)の例では、平均化の度合が大きくなるほど、即ち、適正露出用合成比率Rmと露出オーバー用合成比率Roとの比率が1:1に近づくほど、或いはまた、適正露出用合成比率Rmと露出アンダー用合成比率Ruとの比率が1:1に近づくほど、大きなエッジ強調レベルが設定される。
なお、エッジ強調部37の処理量を減少させる必要がある場合、又は省略する必要がある場合、合成部33による合成前のY画像のデータ、ここでは、適正露出Y画像、露出オーバーY画像、及び露出アンダーY画像の各データとして、予め強めのエッジ強調が施されたデータを用意しておくよい。
【0046】
エッジ強調部37によりエッジ強調の処理が施された合成Y画像のデータは、Y合成部21の出力データとして、外部に出力される。
【0047】
以上、Y合成部21の詳細について説明した。
次に、UV合成部22の詳細について説明する。具体的には、先ず、図2及び図10を参照して、UV合成部22の構成について説明する。次に、図11を参照して、UV合成部22が実行するUV成分合成処理の流れについて説明する。
【0048】
図2に示すように、UV合成部22は、合成比率取得部41と、合成部42と、彩度強調部43と、を備えている。
【0049】
ここで、UV合成部22の処理単位も、注目画素であるとする。即ち、適正露出UV画像、露出オーバーUV画像、及び、露出アンダーUV画像の各々を構成する画素が、注目画素として設定される。
ここで、後述するように、UV合成部22は、Y合成部21と必ずしも同期して実行する必要はないが、説明の便宜上、UV画像における注目画素と、Y画像における注目画素とは、同一座標の各々対応する画素であるものとして、以下の説明を行う。即ち、以下の説明では、Y画像と、それに対応するUV画像との各々において、同一座標に位置する各々対応する画素が、注目画素に設定されるものとする。
【0050】
この場合、合成比率取得部41は、Y合成部21の合成部33において注目画素の合成に用いられた合成比率を取得する。
ここで、合成比率取得部41により取得される合成比率とは、適正露出用合成比率Rm、露出オーバー用合成比率Ro、及び露出アンダー用合成比率Ruの組である。
また、本実施形態では、合成比率取得部41は、ゲイン設定部34により設定される調整ゲインを用いた明るさ調整後の合成比率、即ち、図5のテーブルに基づいて設定された合成比率を取得する。
ただし、合成比率取得部41は、必要に応じて、図3のテーブルに基づいて設定された合成比率、即ち、ゲイン設定部34により設定される調整ゲインを用いた明るさ調整前の合成比率を取得するようにしてもよい。
【0051】
合成部42は、合成比率取得部41により取得された合成比率、即ち、Y合成部21の合成部33において注目画素の合成に用いられた合成比率をそのまま用いて、適正露出UV画像、露出オーバーUV画像、及び露出アンダーUV画像の各々の注目画素の画素値を合成する。
【0052】
ここで、適正露出UV画像の注目画素の画素値を「UVm」と記述し、露出アンダーUV画像の注目画素の画素値を「UVu」と記述し、露出オーバーY画像の注目画素の画素値を「UVo」と記述し、各々の注目画素の合成値「UVmix」と記述する。
この場合、合成部42は、次の式(4)を演算することで、各々の注目画素の合成値UVmixを演算することができる。
UVmix=Ru×UVu+Rm×UVm+Ro×UVo ・・・(4)
【0053】
式(4)において、Ru,Rm,Roは、Y合成部21の合成部33が注目画素の合成値Ymixを上述した式(1)に従って演算した際に用いられたパラメータである。即ち、合成比率取得部41に取得された、適正露出用合成比率Rm、露出オーバー用合成比率Ro、及び露出アンダー用合成比率Ruが、式(4)に代入される。
例えば、合成比率取得部41により取得された合成比率、即ち、Y合成部21の合成部33において注目画素の合成のための式(1)に用いられた、適正露出用合成比率Rm=0.7(70%)、露出オーバー用合成比率Ro=0.3(30%)、露出アンダー用合成比率Ru=0(0%)であるとする。この場合、式(4)においても、Rmに0,7が代入され、Roに0.3が代入され、かつ、Roに0が代入されて、合成部42により演算され、注目画素の合成値UVmixが算出される。
【0054】
以上まとめると、合成部42は、適正露出UV画像、露出オーバーUV画像、及び露出アンダーUV画像の各々の同一座標の画素であって、Y合成部21により注目画素として設定されている画素の座標と同一座標の画素を注目画素に順次設定する。
そして、合成部42は、注目画素に設定された画素毎に、合成比率取得部41により取得された合成比率、即ち、Y合成部21の合成部33において注目画素の合成に用いられた合成比率をそのまま用いて、上述した一連の処理を繰り返すことによって、合成画像のデータを生成する。
このようにしてUV合成部22の合成部42により生成された合成画像のデータを、以下、「合成UV画像のデータ」と呼ぶ。
【0055】
なお、UV合成部22は、UV画像側の注目画素と同一座標のY画像内の画素に対して、適用された合成比率を利用することができれば足りるのであって、当該Y画像内の画素が現在Y合成部21において注目画素に設定されている必要はない。即ち、UV合成部22は、Y合成部21と同期して動作してもよいが、非同期で動作しなくてもよい。
非同期で動作する場合には、例えば、Y合成部21において用いられた合成比率はバッファ(図示せず)に一時的に蓄積され、合成比率取得部41は、当該バッファに蓄積された合成比率を取得する。この場合、バッファに蓄積された1以上の画素毎の合成比率の中から、UV画像側の注目画素と同一座標のY画像内の画素に対して適用された合成比率を合成部42が認識できる仕組みが、合成部11に設けられる。
【0056】
合成部42により生成された合成UV画像のデータは、彩度強調部43に供給される。
彩度強調部43は、合成UV画像の注目画素の画素値に対して所定のゲインを乗算することによって、注目画素の彩度を強調する。
このように、彩度強調部43の処理単位も注目画素であり、注目画素として設定された画素毎に、ゲインが設定されることになる。
【0057】
図10は、彩度強調部43により用いられるゲインを設定するテーブルの一例を示している。
図10において、横軸は、彩度レベル(0乃至255の範囲内の値)を示しており、縦軸は、ゲイン(%)を示している。
ここで、彩度レベルとしては、YUV空間から変換されたHSV空間において算出されたS値を採用してもよいが、本実施形態では、処理負荷軽減のため、式(5)に示すように、U値とV値の各々の絶対値のうちの大きい方を採用する。
S_lev=max(|U_mix|,|V_mix|) ・・・(5)
式(5)において、S_levは、彩度レベルを示している。max(α,β)は、αとβのうちの最大値を出力する関数を示している。U_mixは、合成UV画像の注目画素のU値を示している。V_mixは、合成UV画像の注目画素のV値を示している。
図10の例では、彩度レベルS_levが低い場合と高い場合にゲインが抑えられる。即ち、合成UV画像のうち低彩度と高彩度の領域の画素が注目画素に設定された場合に、ゲインが抑えられる。これにより、ゲインによる色飽和や、グレー領域に対する不要な彩度強調を防止することが可能になる。
【0058】
彩度強調部43により彩度が強調された合成UV画像のデータは、UV合成部22の出力データとして、外部に出力される。
【0059】
次に、図11のフローチャートを参照して、このような構成を有する図2のUV合成部22が実行するUV成分合成処理について説明する。
図11は、合成処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【0060】
ステップS1において、UV合成部22は、適正露出UV画像、露出オーバーUV画像、及び、露出アンダーUV画像の各々を構成する画素のうち、所定の座標に位置する画素を注目画素として設定する。
なお、図11の説明においても、UV画像の注目画素の座標と同一座標に位置するY画像内の画素も、Y画像の注目画素として設定されているものとする。
【0061】
ステップS2において、UV合成部22は、Y画像の注目画素に対するY成分合成処理が実行されたか否かを判定する。
Y画像の注目画素に対するY成分合成処理が実行中の場合には、ステップS2においてNOであると判定されて、処理はステップS2に戻さる。即ち、Y画像の注目画素に対するY成分合成処理が実行中の場合には、ステップS2の判定処理が繰り返し実行されて、UV成分合成処理は待機状態になる。
その後、Y画像の注目画素に対するY成分合成処理が終了した場合には、ステップS2においてYESであると判定されて、処理はステップS3に進む。
【0062】
ステップS3において、UV合成部22の合成比率取得部41は、Y画像の注目画素に対するY成分合成処理で用いられる合成比率を取得する。即ち、注目画素について上述した式(1)が演算される際に、パラメータRm,Ro,Ruの各々に代入された、適正露出用合成比率Rm、露出オーバー用合成比率Ro、及び露出アンダー用合成比率Ruの各々が合成比率取得部41により取得される。
【0063】
ステップS4において、合成比率取得部41は、露出が各々異なる複数のUV画像の各注目画素のデータを取得する。
即ち、本実施形態では、適正露出UV画像、露出オーバーUV画像、及び、露出アンダーUV画像の各注目画素のデータが取得される。
【0064】
ステップS5において、合成比率取得部41は、ステップS3の処理で取得された合成比率を用いて、即ち、Y画像の注目画素に対して用いられた合成比率をそのまま用いて、露出が各々異なる複数のUV画像のデータを合成することによって、合成UV画像のデータを生成する。
【0065】
ステップS6において、彩度強調部43は、合成UV画像のデータに対して、彩度強調処理を施す。
【0066】
ステップS7において、UV合成部22は、全ての画素を注目画素に設定したか否かを判定する。
適正露出UV画像、露出オーバーUV画像、及び、露出アンダーUV画像の各々を構成する画素のうち、注目画素に未だ設定されていない画素が存在する場合、ステップS7においてNOであると判定されて、処理はステップS2に戻され、それ以降の処理が繰り返される。
即ち、適正露出UV画像、露出オーバーUV画像、及び、露出アンダーUV画像の各々を構成する画素が注目画素として順次設定される毎に、ステップS1乃至S7のループ処理が繰り返し実行されて、合成UV画像のデータが生成されていく。
そして、最後の画素がステップS1の処理で注目画素に設定されて、ステップS2乃至S6の処理が実行されると、合成UV画像のデータが完成するので、次のステップS7においてYESであると判定されて、UV成分合成処理は終了となる。そしてこの後、合成処理された画像はファイル化され、画像記録部6に記録される。
【0067】
なお、以上説明した図11のフローチャートの流れは、UV成分合成処理の例示に過ぎない。
例えば、合成比率を取得するステップS3の処理タイミングは、図11の例に特に限定されず、取得すべき合成比率が既知である段階であれば足りる。換言すると、ステップS3以降の処理は、Y画像の注目画素に対するY成分合成処理で用いられる合成比率が設定された後であればいつでも実行することが可能である。
また例えば、ステップS3乃至S6の処理は、図11の例では画素を単位として実行されたが、図11の例に特に限定されず、所定数の画素からなるブロックを単位として実行してもよいし、画像全体を単位として実行してもよい。
【0068】
以上説明したように、露出が各々異なる複数の画像のデータが、Y成分からなる複数のY画像のデータと、UV成分からなる複数のUV画像のデータとに分離されている場合、図2のY合成部21は、分離後の複数のY画像のデータを、所定の合成比率を用いて合成する。一方、UV合成部22は、分離後の複数のUV画像のデータを、Y合成部21と同一(若しくは略等しい)の合成比率を用いて合成する。
これにより、輝度(コントラスト)が調整された合成Y画像のデータのみならず、彩度が調整された合成UV画像のデータも得られるため、これらをあわせた結果得られるHDR合成画像のデータは、従来よりも、白飛びや黒つぶれの少ない幅広いダイナミックレンジを持ち、かつ、彩度も適切に調整された画像のデータになる。
特に、Y合成部21が、複数のY画像内の同一座標の各画素のデータを、座標毎に異なる合成比率を用いて合成し、UV合成部22が、複数のUV画像内の同一座標の各画素のデータを、当該座標と同一のUV画像内の座標用の合成比率を用いて合成することによって、画素毎の適応的な調整が可能になるため、当該効果が顕著なものとなる。
このような効果は、図12と図13を比較することで明確にわかる。
【0069】
図12は、露出が各々異なる画像のデータの一例を示している。
図12(A)は、露出アンダーの画像のデータの一例を示している。
図12(B)は、適正露出の画像のデータの一例を示している。
図12(C)は、露出オーバーの画像のデータの一例を示している。
【0070】
図13は、図2の合成部11によって図12の各画像のデータが合成された結果得られる、合成画像のデータの一例を示している。
図13に示す合成画像は、図12の合成前の何れの画像と比較しても、広いダイナミックレンジを持った画像、即ちコントラストのはっきりとしたメリハリのある画像になっていることがわかる。
また、図13は、カラー画像を白黒画像に変換したために示すことが困難であるが、変換前のカラー画像では、彩度が適切に調整された画像になっていることが確認された。
【0071】
なお、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
【0072】
例えば、上述した実施形態では、Y成分合成処理の際に用いる判定用Y画像のデータとしては、露出が異なる複数のY画像のデータが平均化された平均Y画像のデータに対して、εフィルタがかけられたデータが用いられた。
しかしながら、判定用Y画像のデータは、特にこれに限定されず、平均Y画像のデータに対して、εフィルタの代わりに通常のLPF(Low Pass Filter)がかけられたデータを用いてもよい。
【0073】
ただし、通常のLPFよりも、本実施形態のようにεフィルタを採用した方が好適である。以下、好適な理由について説明する。
即ち、Y合成部21によるY成分合成処理においては、コントラスト強調部36によるコントラスト強調や、その前段の合成部33による合成Y画像のデータの生成のときに、オーバーシュート又はアンダーシュートが発生する。
このようなオーバーシュートやアンダーシュートの発生を軽減する効果を果たすのが、εフィルタである。即ち、εフィルタは、注目画素とその周辺の画素との間の画素値の差分を局所情報として用いることで、通常のLPFと比較して、輝度差の大きい領域を維持したまま、輝度差の小さい領域のみを効果的にボカすことができる。これにより、オーバーシュートやアンダーシュートの発生の軽減効果を奏することが可能になる。
【0074】
図14は、このようなεフィルタの効果を示している。
図14(A)は、図4(D)の平均Y画像のデータに対して、通常のLPFをかけた結果得られるデータの一例を示している。
図14(B)は、図4(D)の平均Y画像のデータに対して、εフィルタをかけた結果得られるデータ、即ち、εフィルタ部32の出力データの一例を示している。
図14(C)は、図14(A)の通常のLPFがかけられたデータを判定用Y画像のデータとして用いた場合に、合成部33から出力される合成Y画像のデータの一例を示している。
図14(D)は、図14(B)のεフィルタがかけられたデータ(εフィルタ部32の出力データ)を判定用Y画像のデータとして用いた場合に、合成部33から出力される合成Y画像のデータの一例を示している。
図14(C)の領域101Cと図14(D)の領域101Dとを見比べたり、図9(C)の領域102Cと図9(D)の領域102Dとを見比べることで、εフィルタによるオーバーシュート及びアンダーシュートの軽減の効果を認めることができる。
【0075】
このように、Y合成部21がY成分合成処理を実行して好適な合成Y画像のデータを生成するためには、ボケ量が大きい判定用Y画像のデータが必要になる。このような判定用Y画像のデータを生成するためのεフィルタとしては、大きなサイズが要求されるため、処理量と処理時間の増加が問題となる場合がある。
このような問題を発生させないか又は軽減させる必要がある場合には、図示はしないが、平均化部31から出力された平均Y画像のデータのサイズを、例えばQVGA(Quarter VGA)に縮小させる縮小部を合成部11に設けるようにしてもよい。この場合、εフィルタ部32は、縮小後の画像のデータに対してεフィルタをかけることになるため、当該εフィルタのサイズを小さくすることができ、その結果、処理量と処理時間を減少させることが可能になる。なお、εフィルタ部32の出力データのサイズもQVGAのままのため、当該出力データのサイズを元のサイズに拡大する拡大部も合成部11に設ける必要がある。
なお、この場合には、縮小部の縮小率及び拡大部の拡大率が大きくなるに従って、判定用Y画像のエッジが緩慢になってしまうため、上述のεフィルタによる効果、即ちオーバーシュートとアンダーシュートの軽減の効果が若干弱まる点に注意が必要である。
【0076】
また例えば、上述した実施形態では、露出が各々異なる複数の画像のデータとして、3枚の画像のデータが合成されたが、合成対象の画像のデータ数は、特にこれに限定されない。即ち、本発明は、2枚以上の任意の数の画像のデータを合成する場合に広く適用することができる。
【0077】
また、上述した実施形態では、合成処理時において顔画像領域の存在を考慮していないが、公知の顔画像領域検出技術を用いて、少なくとも撮像時と合成処理時との一方において顔画像領域を検出させ、この検出された顔画像の明るさを考慮した撮像制御、または、合成処理制御を行ってもよい。
【0078】
撮影時において顔画像領域を検出するケースにおいては、顔の明るさを最適にする露出設定を中心にして適正露出、露出アンダー、及び、露出オーバー画像データを撮像により取得するよう制御する。そして合成時は、顔部分については適正露出で取得されたY画像データが採用されるよう、合成比率を設定することができる。
【0079】
また、合成処理時においては、取得した全ての画像データについて顔画像領域の検出を試みてもよい。
少なくとも一つから顔画像領域を検出できればよいが、複数枚検出した場合であっても、その中から顔画像領域が含まれている画像データのうち、適正露出になっている画像データに最も近いものを選択する。
なお、上記選択処理を軽減させるため、適正露出値で撮影された画像データに露出値が近くかつ明るめの画像を選択するようにしてもよい。
そして、選択された画像データにおける顔画像領域の明るさ平均を計測し、この計測された露出に合わせて、非線形ガンマ変換等を適用することで、複数枚の画像データのうち、合成処理に採用する露出オーバー、及び、露出アンダーの各Y画像データを選択する。
また合成比率については、顔画像領域の明るさを中心にしたものに設定する。
【0080】
そしてこのようにY画像データについて合成比率を設定した後、この合成比率に合わせてUV画像についても合成処理し、彩度強調を加える。
【0081】
なお、合成対象となる、露出が各々異なる複数の画像のデータは、上述の各図に示される具体例に特に限定されない。例えば合成対象となる複数の画像のデータが撮像される際の露出の設定は、上述の各図に示される具体例に限定されず、露出が各々異なれば任意でよい。
また、上述の実施形態では特に言及しなかったが、露出が各々異なる複数の画像のデータは、合成されることを考慮すると、位置ズレが予め補正されていると好適である。
【0082】
また例えば、上述した実施形態では、本発明が適用される画像処理装置は、デジタルカメラとして構成される例として説明した。
しかしながら、本発明は、特にこれに限定されず、画像処理機能を有する電子機器一般に適用することができ、例えば、本発明は、デジタルフォトフレーム、パーソナルコンピュータ、携帯型ナビゲーション装置、ポータブルゲーム機等に幅広く適用可能である。
【0083】
換言すると、上述した一連の処理は、ハードウェアにより実行させることもできるし、ソフトウェアにより実行させることもできる。
【0084】
図15は、上述した一連の処理をソフトウェアにより実行させる場合の、本発明が適用される画像処理装置のハードウェア構成を示すブロック図である。
【0085】
図15の例では、画像処理装置は、CPU(Central Processing Unit)201と、ROM(Read Only Memory)202と、RAM(Random Access Memory)203と、バス204と、入出力インターフェース205と、入力部206と、出力部207と、記憶部208と、通信部209と、ドライブ210と、を備えている。
【0086】
CPU201は、ROM202に記録されているプログラムに従って各種の処理を実行する。又は、CPU201は、記憶部208からRAM203にロードされたプログラムに従って各種の処理を実行する。
RAM203にはまた、CPU201が各種の処理を実行する上において必要なデータ等も適宜記憶される。
【0087】
例えば本実施形態では、合成部11の機能を実現するプログラムが、ROM202や記憶部208に記憶されている。従って、CPU201が、これらのプログラムに従った処理を実行することで、合成部11の機能を実現することができる。
【0088】
CPU201、ROM202、及びRAM203は、バス204を介して相互に接続されている。このバス204にはまた、入出力インターフェース205も接続されている。入出力インターフェース205には、入力部206、出力部207、記憶部208、及び通信部209が接続されている。
【0089】
入力部206は、各種釦等の操作部で構成され、ユーザの指示操作を受け付ける他、各種情報を入力する。
出力部207は、各種情報を出力する。例えば、出力部207には、図示しない表示部が設けられており、合成部11の出力データにより表わされる合成画像が表示される。
記憶部208は、ハードディスクやDRAM(Dynamic Random Access Memory)等で構成され、各種データを記憶する。
通信部209は、インターネットを含むネットワークを介して他の装置(図示せず)との間で行う通信を制御する。
【0090】
入出力インターフェース205にはまた、必要に応じてドライブ210が接続され、磁気ディスク、光ディスク、光磁気ディスク、或いは半導体メモリ等よりなるリムーバブルメディア211が適宜装着される。ドライブ210によってリムーバブルメディア211から読み出されたプログラムは、必要に応じて記憶部208にインストールされる。また、リムーバブルメディア211は、記憶部208に記憶されている画像データ等の各種データも、記憶部208と同様に記憶することができる。
【0091】
一連の処理をソフトウェアにより実行させる場合には、そのソフトウェアを構成するプログラムが、コンピュータ等にネットワークや記録媒体からインストールされる。コンピュータは、専用のハードウェアに組み込まれているコンピュータであってもよい。また、コンピュータは、各種のプログラムをインストールすることで、各種の機能を実行することが可能なコンピュータ、例えば汎用のパーソナルコンピュータであってもよい。
【0092】
このようなプログラムを含む記録媒体は、ユーザにプログラムを提供するために装置本体とは別に配布されるリムーバブルメディア211により構成されるだけでなく、装置本体に予め組み込まれた状態でユーザに提供される記録媒体等で構成される。リムーバブルメディア211は、例えば、磁気ディスク(フロッピディスクを含む)、光ディスク、又は光磁気ディスク等により構成される。光ディスクは、例えば、CD−ROM(Compact Disk−Read Only Memory),DVD(Digital Versatile Disk)等により構成される。光磁気ディスクは、MD(Mini−Disk)等により構成される。また、装置本体に予め組み込まれた状態でユーザに提供される記録媒体は、例えば、プログラムが記録されているROM202や記憶部208に含まれるハードディスク等で構成される。
【0093】
なお、本明細書において、記録媒体に記録されるプログラムを記述するステップは、その順序に沿って時系列的に行われる処理はもちろん、必ずしも時系列的に処理されなくとも、並列的或いは個別に実行される処理をも含むものである。
【符号の説明】
【0094】
1・・・撮像部、2・・・撮像制御部、11・・・合成部、21・・・Y合成部、22・・・UV合成部、31・・・平均化部、32・・・εフィルタ部、33・・・合成部、34・・・ゲイン設定部、35・・・減算部、36・・・コントラスト強調部、37・・・エッジ強調部、41・・・合成比率取得部、42・・・合成部、43・・・彩度強調部、201・・・CPU、202・・・ROM、203・・・RAM、204・・・バス、205・・・入出力インターフェース、206・・・入力部、207・・・出力部、208・・・記憶部、209・・・通信部、210・・・ドライブ、211・・・リムーバブルメディア
【特許請求の範囲】
【請求項1】
露出が各々異なる複数の画像のデータが、所定の色空間において規定される輝度成分からなる複数の第1の画像のデータと、その他の成分からなる複数の第2の画像のデータとに分離されている場合、分離後の前記複数の第1の画像のデータを、所定の合成比率を用いて合成する第1の合成手段と、
分離後の前記複数の第2画像のデータを、前記第1の合成手段で用いられた合成比率と略等しい合成比率を用いて合成する第2の合成手段と、
を備えることを特徴とする画像処理装置。
【請求項2】
前記第1の合成手段は、前記複数の第1の画像において同じ位置に存在する各画素のデータを、座標毎に異なる合成比率を用いて合成し、
前記第2の合成手段は、前記複数の第2において同じ位置に存在する各画素のデータを、当該位置と同じ前記第1の画像内の位置用の前記合成比率を用いて合成することを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項3】
前記第1の合成手段は、さらに、前記複数の第1の画像のデータを平均化して平滑化されたデータを、判定用画像のデータとして用いて、前記合成比率を、前記第1の画像を構成する各画素の位置毎に設定することを特徴とする請求項2に記載の画像処理装置。
【請求項4】
前記第1の合成手段は、さらに、合成後の第1の画像のデータの明るさを調整するゲインを、前記複数の第1の画像のデータ毎に設定し、設定された前記ゲインを前記合成比率にかけることで、前記合成比率を調整し、
前記第2の合成手段は、前記第1の合成手段により調整された後の前記合成比率を用いて、前記第2の画像のデータを合成することを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載の画像処理装置。
【請求項5】
前記露出が各々異なる複数の画像のデータの少なくとも一つから顔画像領域を検出する第1の画像領域検出手段とを更に備え、
前記第1の合成手段は、前記第1の画像領域検出手段によって顔画像領域を検出すると、この顔画像領域に対し適正な明るさになっている画像データの明るさに基づいて前記合成比率を調整することを特徴とする請求項1乃至4の何れか1項に記載の画像処理装置。
【請求項6】
撮像手段と、
この撮像手段によって撮像されている画像データから顔画像領域を検出する第2の画像領域検出手段と、
この第2の画像領域検出手段によって顔画像領域を検出するとこの顔画像領域に対し適正な明るさになるように露出値を調整するとともに、この調整された露出値を中心に露出が各々異なる複数の画像のデータを撮像するよう制御する撮像制御手段とを更に備えることを特徴とする請求項1乃至4の何れか1項に記載の画像処理装置。
【請求項7】
前記第2の合成手段は、さらに、合成後の第2の画像のデータに対して、彩度を強調するゲインをかけることを特徴とする請求項1乃至6の何れか1項に記載の画像処理装置。
【請求項8】
画像のデータに対して画像処理を施す画像処理装置を制御するコンピュータに、
露出が各々異なる複数の画像のデータが、所定の色空間において規定される輝度成分からなる複数の第1の画像のデータと、その他の成分からなる複数の第2の画像のデータとに分離されている場合、分離後の前記複数の第1の画像のデータを、所定の合成比率を用いて合成する第1の合成機能と、
分離後の前記複数の第2画像のデータを、前記第1の合成機能で用いられた合成比率と略等しい合成比率を用いて合成する第2の合成機能と、
を実現させることを特徴とするプログラム。
【請求項1】
露出が各々異なる複数の画像のデータが、所定の色空間において規定される輝度成分からなる複数の第1の画像のデータと、その他の成分からなる複数の第2の画像のデータとに分離されている場合、分離後の前記複数の第1の画像のデータを、所定の合成比率を用いて合成する第1の合成手段と、
分離後の前記複数の第2画像のデータを、前記第1の合成手段で用いられた合成比率と略等しい合成比率を用いて合成する第2の合成手段と、
を備えることを特徴とする画像処理装置。
【請求項2】
前記第1の合成手段は、前記複数の第1の画像において同じ位置に存在する各画素のデータを、座標毎に異なる合成比率を用いて合成し、
前記第2の合成手段は、前記複数の第2において同じ位置に存在する各画素のデータを、当該位置と同じ前記第1の画像内の位置用の前記合成比率を用いて合成することを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項3】
前記第1の合成手段は、さらに、前記複数の第1の画像のデータを平均化して平滑化されたデータを、判定用画像のデータとして用いて、前記合成比率を、前記第1の画像を構成する各画素の位置毎に設定することを特徴とする請求項2に記載の画像処理装置。
【請求項4】
前記第1の合成手段は、さらに、合成後の第1の画像のデータの明るさを調整するゲインを、前記複数の第1の画像のデータ毎に設定し、設定された前記ゲインを前記合成比率にかけることで、前記合成比率を調整し、
前記第2の合成手段は、前記第1の合成手段により調整された後の前記合成比率を用いて、前記第2の画像のデータを合成することを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載の画像処理装置。
【請求項5】
前記露出が各々異なる複数の画像のデータの少なくとも一つから顔画像領域を検出する第1の画像領域検出手段とを更に備え、
前記第1の合成手段は、前記第1の画像領域検出手段によって顔画像領域を検出すると、この顔画像領域に対し適正な明るさになっている画像データの明るさに基づいて前記合成比率を調整することを特徴とする請求項1乃至4の何れか1項に記載の画像処理装置。
【請求項6】
撮像手段と、
この撮像手段によって撮像されている画像データから顔画像領域を検出する第2の画像領域検出手段と、
この第2の画像領域検出手段によって顔画像領域を検出するとこの顔画像領域に対し適正な明るさになるように露出値を調整するとともに、この調整された露出値を中心に露出が各々異なる複数の画像のデータを撮像するよう制御する撮像制御手段とを更に備えることを特徴とする請求項1乃至4の何れか1項に記載の画像処理装置。
【請求項7】
前記第2の合成手段は、さらに、合成後の第2の画像のデータに対して、彩度を強調するゲインをかけることを特徴とする請求項1乃至6の何れか1項に記載の画像処理装置。
【請求項8】
画像のデータに対して画像処理を施す画像処理装置を制御するコンピュータに、
露出が各々異なる複数の画像のデータが、所定の色空間において規定される輝度成分からなる複数の第1の画像のデータと、その他の成分からなる複数の第2の画像のデータとに分離されている場合、分離後の前記複数の第1の画像のデータを、所定の合成比率を用いて合成する第1の合成機能と、
分離後の前記複数の第2画像のデータを、前記第1の合成機能で用いられた合成比率と略等しい合成比率を用いて合成する第2の合成機能と、
を実現させることを特徴とするプログラム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図5】
【図7】
【図9】
【図10】
【図11】
【図15】
【図4】
【図6】
【図8】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図5】
【図7】
【図9】
【図10】
【図11】
【図15】
【図4】
【図6】
【図8】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2012−34340(P2012−34340A)
【公開日】平成24年2月16日(2012.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−44529(P2011−44529)
【出願日】平成23年3月1日(2011.3.1)
【出願人】(000001443)カシオ計算機株式会社 (8,748)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年2月16日(2012.2.16)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年3月1日(2011.3.1)
【出願人】(000001443)カシオ計算機株式会社 (8,748)
【Fターム(参考)】
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