説明

画像処理装置、画像処理方法及びコンピュータプログラム

【課題】原画像を拡大する際に、信頼度の高い補間画素を生成することで、拡大画像の画質低下を防止することができる画像処理装置、画像処理方法及びコンピュータプログラムを提供する。
【解決手段】映像信号に基づく映像を構成する複数の画素から、対象画素「5」を含む対象領域を抽出し、対象領域内の列方向、行方向及び対角方向に沿って配列された画素の輝度値の絶対値差分和の平均を方向毎に算出する。平均の昇順に各方向をエッジ方向の候補として順位付け、上位2つの方向に沿って配列された画素の輝度値に基づいて、対象画素「5」に対する補間画素「51」、「52」の輝度値を算出する。補間画素「51」、「52」に、上位2つの方向の重み付けを行って、補間画素「53」を生成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば画像を拡大する際に、画素間に補う補間画素を生成する画像処理装置、画像処理方法及びコンピュータプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、PDP(Plasma Display Panel)又はLCD(Liquid Crystal Display)等の表示装置は大画面化が進んでいる。表示装置は、映像を画素単位で表示しており、画面の大型化に伴い、入力映像を画面に合わせて拡大又は縮小するスケーリング処理を行う必要がある。スケーリング処理を行った場合、映像のエッジ付近に発生するジャギ(階段状のギザギザ)、又はオーバーシュート/アンダーシュート(映像波形の歪み)等により、画質が劣化する問題が発生する。
【0003】
特許文献1には、画像を拡大する際に発生するジャギ等を低減することができる画像変換方法が記載されている。特許文献1に記載の画像変換方法は、画像データの処理対象画素及びその近傍画素の画素値の差分を、方向毎(垂直、水平、右斜め及び左斜め方向)に算出し、算出した差分に基づき補間方向を決定する。そして、決定した補間方向にある近傍画素を用いて処理対象画素に対して補間する画素(以下、補間画素と言う)を生成することで、精度のよい拡大画像を得ることを可能としている。
【特許文献1】特開2002−24815号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1では、補間方向を決定する際に、算出した差分が閾値以上又は以下であるかを判定する処理を複数回繰り返しているが、閾値の設定方法によって、補間方向が適切に決定されない場合がある。この結果、違和感のある補間画素が生成され、精度のよい拡大画像が得られない場合がある。また、特許文献1では、処理対象の画素と近傍画素との差分値のみに基づいて補間方向を決定しているため、決定した補間方向の信頼度が低く、必ずしも精度のよい拡大画像が得られないといった問題がある。
【0005】
本発明は斯かる事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、原画像を拡大する際に、信頼度の高い補間画素を生成することで、拡大画像の画質低下を防止することができる画像処理装置、画像処理方法及びコンピュータプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る画像処理装置は、複数の画素から形成される原画像から対象画素を含む対象領域を抽出し、該対象領域内の画素の輝度値を用いて、前記対象画素と隣接する画素との間を補う補間画素を生成する画像処理装置において、前記対象領域内の複数の方向毎に、該方向に沿って配列された画素の輝度値に関する情報を取得する情報取得手段と、該情報取得手段が取得した情報に基づいて、前記複数の方向から原画像のエッジ方向の候補として複数決定する方向決定手段と、該方向決定手段が決定した方向毎に、該方向に沿って配列された画素の輝度値に基づいて、前記対象画素に対する補間画素の輝度値を算出する輝度値算出手段と、前記方向決定手段が決定した方向毎に算出した補間画素の輝度値に前記情報取得手段が取得した情報に基づく重み付けを行って前記対象画素に対する補間画素を生成する生成手段とを備えることを特徴とする。
【0007】
本発明に係る画像処理装置は、前記情報取得手段は、前記対象領域内の複数の方向毎に、該方向に沿って配列された画素の輝度値の絶対値差分和を算出し、前記方向決定手段は、算出した前記絶対値差分和を、昇順にエッジ方向の候補として決定し、前記生成手段は、最上位の候補となるエッジ方向について算出した補間画素の輝度値に、他の方向における輝度値より大きい重み付けを行って補間画素を生成するようにしてあることを特徴とする。
【0008】
本発明に係る画像処理装置は、前記輝度値算出手段は、線形補間法、双3次補間法又はLanczos3法の何れかにより補間画素の輝度値を算出するようにしてあることを特徴とする。
【0009】
本発明に係る画像処理方法は、複数の画素から形成される原画像から対象画素を含む対象領域を抽出し、該対象領域内の画素の輝度値を用いて、前記対象画素と隣接する画素との間を補う補間画素を生成する画像処理方法において、前記対象領域内の複数の方向毎に、該方向に沿って配列された画素の輝度値に関する情報を取得し、取得した情報に基づいて、前記複数の方向から原画像のエッジ方向の候補として複数決定し、エッジ方向の候補として決定した方向毎に、該方向に沿って配列された画素の輝度値に基づいて、前記対象画素に対する補間画素の輝度値を算出し、エッジ方向の候補として決定した方向毎に算出した補間画素の輝度値に前記情報に基づく重み付けを行って前記対象画素に対する補間画素を生成することを特徴とする。
【0010】
本発明に係るコンピュータプログラムは、複数の画素から形成される原画像から対象画素を含む対象領域を抽出し、該対象領域内の画素の輝度値を用いて、前記対象画素と隣接する画素との間を補う補間画素を生成するコンピュータで実行するコンピュータプログラムにおいて、前記コンピュータを、前記対象領域内の複数の方向毎に、該方向に沿って配列された画素の輝度値に関する情報を取得する情報取得手段、該情報取得手段が取得した情報に基づいて、前記複数の方向から原画像のエッジ方向の候補として複数決定する方向決定手段、該方向決定手段が決定した方向毎に、該方向に沿って配列された画素の輝度値に基づいて、前記対象画素に対する補間画素の輝度値を算出する輝度値算出手段、及び、前記方向決定手段が決定した方向毎に算出した補間画素の輝度値に前記情報取得手段が取得した情報に基づく重み付けを行って前記対象画素に対する補間画素を生成する生成手段として機能させることを特徴とする。
【0011】
本発明では、原画像から抽出した対象領域内の複数の方向毎に、方向に沿って配列された画素の輝度値に関する情報を取得し、輝度値に関する情報に基づいて、複数の方向から原画像のエッジ方向の候補として複数決定する。エッジ方向の候補として決定した方向毎に、その方向に沿って配列された画素の輝度値に基づいて、対象画素に対する補間画素の輝度値を算出する。そして、エッジ方向の候補として決定した方向毎に、算出した補間画素に重み付けを行って対象画素に対する補間画素を生成する。このように、輝度値に関する情報を用いて原画像のエッジ(輪郭)を検出し、対象画素に補間する画素を検出したエッジ方向に重みをおいて生成する。この結果、エッジにおけるジャギ及びオーバーシュート/アンダーシュートが発生しないように原画像の拡大処理を行うことが可能となる。
【0012】
本発明では、対象領域内の複数の方向毎に、方向に沿って配列された画素の輝度値の絶対値差分和を算出し、算出した絶対値差分和を、昇順にエッジ方向の候補として決定する。これにより、エッジ方向の候補の信頼度がより高くなる。そして、信頼度の高い方向から大きな値を持つように重み付けを行うことにより、誤った方向及び曖昧な方向を補間方向に含めた場合であっても、より精度のよい補間画素を生成することができる。また、信頼度の高い複数の方向に重み付けを行うことで、候補とした方向以外の方向に基づく補間画素を生成することができる。この結果、エッジのジャギ及びオーバーシュート/アンダーシュート等を抑えることが可能となる。
【0013】
本発明では、公知の方法である線形補間法、双3次補間法又はLanczos3法の何れかにより補間画素の輝度値を算出することで、ジャギを目立たなくする補間処理を簡単に行うことができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、輝度値に関する情報を用いて原画像のエッジ(輪郭)を検出し、対象画素に補間する画素を検出したエッジ方向に重みをおいて生成する。この結果、エッジにおけるジャギ及びオーバーシュート/アンダーシュートが発生しないように原画像の拡大処理を行うことが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明に係る好適な実施形態について図面に基づいて詳述する。
【0016】
(実施形態1)
実施形態1に係る表示装置(画像処理装置)は、液晶テレビ等のデジタルディスプレイであって、入力された映像信号に基づく映像を出力表示する。映像信号は、映像を表示するための信号であって、明るさを表す輝度信号(Y)、輝度信号と赤との差である色差信号(Cb)、及び輝度信号と青との差である色差信号(Cr)の3つの情報で色を表現するYCbCr信号である。実施形態1では、表示装置は、入力された映像信号に基づく映像を、2倍に拡大して出力表示するものとして説明する。なお、表示装置に入力する映像信号は、DVD(Digital Versatile Disk)等の記録媒体から読み取られたものであってもよいし、ケーブル等を介して伝送されたものでもよい。
【0017】
図1(a)は、映像を構成する画素の一部を示す概念図であり、(b)は映像を2倍に拡大した際に補間される画素を説明するための概念図である。
【0018】
実施形態1では、図1(a)に示すように、4×4のマトリクス状に配列された画素に対し、1行1列目の画素を「0」とし「15」までの番号を各画素に付している。より具体的には、1行目の画素には「0」から「3」の番号が付され、2行目の画素には「4」から「7」の番号が付されている。以下の説明において、列方向に沿って画素の番号が増加する方向(例えば、画素「0」から画素「3」に向かう方向)を右方向とする。また、行方向に沿って画素の番号が増加する方向(例えば、画素「0」から画素「12」に向かう方向)を下方向とする。従って、右下方向とは、例えば画素「0」から画素「15」に向かう方向となる。
【0019】
表示装置は、映像を拡大する場合、画素「i」(i=0〜15)の周囲を補う最適な画素(以下、補間画素と言う)「i1」、「i2」、「i3」を生成する。例えば、処理対象が画素「5」の場合、表示装置は、補間画素「51」、「52」、「53」を生成する。映像を拡大することで、画素間の距離が大きくなるため、拡大後の映像の画質が低下する。このため、生成した補間画素を画素間に補うことで画素数を増やし、拡大後の映像の画質の低下を防ぐことができる。
【0020】
表示装置は、生成した補間画素「i1」、「i2」、「i3」を、画素「i」の右方向、下方向及び右下方向に隣接する画素との間に与える。具体的には、画素「5」を処理対象とした場合、図1(b)に示すように、表示装置は、補間画素「51」を画素「5」と画素「6」との間に与え、補間画素「52」を画素「5」と画素「9」との間に与える。さらに、表示装置は、補間画素「53」を画素「5」と画素「10」との間に与える。なお、補間画素「i1」、「i2」、「i3」の生成方法については後に詳述する。
【0021】
図2は、実施形態1に係る表示装置の構成を模式的に示すブロック図である。
【0022】
表示装置は、制御部10、メモリ11、操作部12、表示部13、映像信号取得部14及び映像信号処理部15を備えている。制御部10は、CPU(Central Processing Unit)及びROM(Read Only Memory)等を備え、ROMに記憶される制御プログラムをCPUにより実行して各部の制御を行う。メモリ11は、揮発性又は不揮発性のメモリであって、処理に必要な各種データを適宜記憶する。操作部12は、表示装置に対するユーザの操作を受け付ける。表示部13は、後述の映像信号処理部15により処理された映像信号に基づく映像を表示する。映像信号取得部14は、映像信号を取得する。
【0023】
映像信号処理部15は、映像信号取得部14が取得した映像信号に対する補間画素を生成し、映像を構成する各画素に与える等の処理を行う。図3は、映像信号処理部15が有する機能を模式的に示すブロック図である。映像信号処理部15は、記憶部150、領域抽出部151、輝度値取得部152、平均値算出部(情報取得手段)153、順位決定部(方向決定手段)154、スケーリング部(輝度値算出手段)155、重み付け部(生成手段)156及び映像信号出力部157を備えている。なお、映像信号処理部15が有する機能は、ハードウェア、ソフトウェア、又はハードウェアとソフトウェアとの両方により実現可能である。
【0024】
記憶部150は、映像信号取得部14が取得した映像信号の各画素を記憶し得る記憶容量を有するラインメモリである。領域抽出部151は、映像を構成する複数の画素から、補間画素を生成する対象の画素を含む領域を抽出する。実施形態1では、領域抽出部151は、図1で説明したように、4×4のマトリクス状に配列された画素からなる領域を抽出する。
【0025】
輝度値取得部152は、記憶部150からY信号(輝度信号)を取得し、映像を構成する各画素の輝度値「Yi」(i=0〜15)を取得する。輝度値「Yi」は画素「i」に対応しており、例えば画素「5」の輝度値は「Y5」となる。
【0026】
平均値算出部153は、処理対象の画素「i」及びそれに隣接する8つの画素の計9つに関して、列方向、行方向及び対角方向における画素の輝度値の絶対値差分和を平均した平均値S1〜S4を算出する。9つの画素は、処理対象を画素「5」とした場合、画素「0」、「1」、「2」、「4」、「5」、「6」、「8」、「9」、「10」である。
【0027】
図4は、各方向における輝度値の絶対値差分和の平均値の算出について説明するための模式図である。平均値S1は、列方向に沿った画素の輝度値の絶対値差分和を平均した値である。具体的には、平均値S1は、図4(a)に示すように、画素「0」、「2」の輝度値の絶対値差分、画素「4」、「5」の輝度値の絶対値差分、画素「5」、「6」の輝度値の絶対値差分、及び、画素「8」、「10」の輝度値の絶対値差分をそれぞれ加算して平均した値であり、以下の式で算出できる。
【数1】

【0028】
同様に、平均値S2は、図4(b)に示すように、行方向に沿った画素の輝度値の絶対値差分和を平均した値であり、以下の式で算出できる。
【数2】

【0029】
平均値S3は、図4(c)に示すように、右上方向に傾斜する対角方向(以下、右上対角方向と言う)に沿った画素の輝度値の絶対値差分和を平均した値であり、以下の式で算出できる。
【数3】

【0030】
平均値S4は、図4(d)に示すように、右下方向に傾斜する対角方向(以下、右下対角方向と言う)に沿った画素の輝度値の絶対値差分和を平均した値であり、以下の式で算出できる。
【数4】

【0031】
なお、平均値算出部153は、計9つの画素に関して各方向の平均値を算出しているが、平均値を算出する際に採用する画素の数は適宜変更可能である。また、平均値算出部153は、4差分の合計の平均値を算出しているが、6差分又は8差分の合計の平均値を算出してもよいし、4差分の合計の平均値に加え、6差分又は8差分の合計の平均値を算出するようにしてもよい。例えば、平均値算出部153は、以下の式により6差分の合計の平均値を算出することができる。
【数5】

【0032】
順位決定部154は、平均値算出部153が算出した平均値S1〜S4の昇順に、列方向、行方向、右上対角方向及び右下対角方向をエッジ方向の候補として順位付けする。例えば平均値S1が最小値である場合、順位決定部154は、列方向の順位を1位、即ち、列方向がエッジ方向の1番の候補として決定する。順位決定部154は、決定した方向の順位をスケーリング部155と重み付け部156とへ出力する。
【0033】
また、順位決定部154は、平均値S1〜S4の最小値をSD1とし、次に小さい値をSD2とし、SD1及びSD2をスケーリング部155と重み付け部156とへ出力する。即ち、SD1は、順位決定部154が1位に順位付けた方向における輝度値の絶対値差分和の平均値であり、SD2は、2位に順位付けた方向における輝度値の絶対値差分和の平均値である。
【0034】
スケーリング部155は、線形補間法、双3次補間法又はLanczos3法等を用いて、処理対象の画素「i」の右方向及び下方向に与える補間画素「i1」、「i2」を生成する。例えば、スケーリング部155は、映像信号に基づいて映像を構成する各画素が配置されている画像領域の平坦性を算出する。平坦性とは、映像内での視覚的な平坦度合いを示す指標であって、近傍画素との輝度値の差分値によって示される指標である。平坦性は、例えば隣接画素との輝度信号の差分値(一次微分値)、左(上)方向の隣接画素と右(下)方向の隣接画素との差分値の差分値(二次微分値)、あるいはその左右(上下)方向の差分値の積分値などである。そして、スケーリング部155は、算出した一次又は二次微分値等から、画素ごとに平坦性を算出し、適用するフィルタのタップ数を切り替える。
【0035】
また、スケーリング部155は、算出した平坦性に応じてスケーリング用のフィルタのタップ数を選択してスケーリング処理を実行する。「スケーリング用のフィルタ」とは、補間画素を生成するために利用される関数を言い、補間画素の周囲にある画素を入力値として重み付け平均を実行する関数である。「タップ数」とは、その関数に入力される周囲画素の数である。
【0036】
図5は、スケーリング用のフィルタの一例を表す図である。
【0037】
図5(a)は、線形補間法において用いられるフィルタであり、2タップフィルタを表し、例えば中心にある画素Aを補間画素として生成する際には、隣接する2画素(2タップ)を入力信号として補間画素を生成する。また、図5(b)は、双3次補間法において用いられるフィルタであり、4タップフィルタを表し、画素Aを補間画素として生成する際には、隣接する4画素(4タップ)を入力信号として補間画素を生成する。図5(c)は、Lanczos3法において用いられるフィルタであり、6タップフィルタを表し、画素Aを補間画素として生成する際には、隣接する6画素(6タップ)を入力信号として補間画素を生成する。
【0038】
スケーリング部155は、順位決定部154が1位及び2位に順位付けた方向と、SD1及びSD2とに基づいて、処理対象の画素「i」の右下方向に与える補間画素「i3」を生成する。スケーリング部155は、補間画素「i3」を生成するために、順位決定部154が1位及び2位に順位付けた方向の4画素に基づいて補間画素SA1、SA2を生成する。
【0039】
補間画素SA1、SA2は、画素「i」に対して補間する画素であり、例えば、処理対象を画素「5」とした場合、行方向が1位のとき、補間画素SA1は、画素「5」と画素「9」との間に補間する画素となる。このとき、補間画素SA1は、行方向に沿ってある4画素、即ち、画素「1」、「5」、「9」、「13」に基づいて、双3次補間法を用いて輝度値が算出されることで生成される。なお、補間画素SA1は、双3次補間法を用いたために4画素に基づいて生成されているが、線形補間法又はLanczos3法を用いる場合、補間画素SA1は、行方向に沿ってある2画素又は6画素に基づいて生成される。
【0040】
また、処理対象を画素「5」とした場合、列方向が1位のとき、画素SA1は、画素「5」と画素「6」との間に補間する画素となる。このとき、補間画素SA1は、列方向に沿ってある画素「4」、「5」、「6」、「7」に基づいて生成される。右上対角方向が1位のとき、画素SA1は、画素「5」と画素「10」との間に補間する画素となり、右上対角方向画素に沿ってある画素「3」、「6」、「9」、「12」に基づいて生成される。右下対角方向が1位のとき、補間画素SA1は、画素「5」と画素「10」との間に補間する画素となり、右下対角方向画素に沿ってある画素「0」、「5」、「10」、「15」に基づいて生成される。なお、補間画素SA2については、補間画素SA1と同様である。
【0041】
重み付け部156は、候補としたエッジ方向に沿って配列された画素が補間に寄与する度合いが大きくなるよう、スケーリング部155が生成した補間画素SA1、SA2それぞれに、SD1、SD2に基づくエッジ方向の重みを積算した結果を合計することで、補間画素「i3」を生成する。具体的には、重み付け部156は、下記の式に基づいて補間画素「i3」を生成する。
【数6】

【0042】
なお、重み付け部156は、生成した補間画素「i3」において、画素「1」〜「15」の輝度値の最小値と最大値との範囲内でない場合、補間画素「i3」の輝度値を、画素「1」〜「15」の輝度値の最小値又は最大値に設定する。これにより、補間画素が周辺の画素に比べて極端に明るく又は暗くなり、画質が低下するおそれを低減できる場合がある。
【0043】
このように、上位二つに順位付けたエッジ方向に沿って配列された画素が補間に寄与する度合いが大きくなるよう重み付けすることで、候補とした二つの方向以外の方向をエッジ方向として補間画素を生成することができる。例えば、右下対角方向及び行方向をエッジ方向の候補とし、各方向に積算する重みがそれぞれ0.5である場合、生成した補間画素は、各方向の補間画素に重みを積算した結果の合計和となるため、各方向の真ん中の方向をエッジ方向として生成されたとみなすことができる。
【0044】
より具体的には、列方向に対して右下対角方向が45度、行方向が90度方向であるため、補間画素は、列方向に対して約70度方向をエッジ方向として生成されたとみなすことができる。同様に、右下対角方向及び行方向に積算する重みがそれぞれ0.1及び0.9である場合、補間画素は、ほぼ行方向をエッジ方向として生成されたとみなすことができる。一方で、右下対角方向及び行方向に積算する重みがそれぞれ0.9及び0.1である場合、補間画素は、ほぼ右下対角方向をエッジ方向として生成されたとみなすことができる。
【0045】
映像信号出力部157は、スケーリング部155及び重み付け部156が生成した補間画素「i1」、「i2」、「i3」を映像信号取得部14が取得した映像信号に与え、表示部13へ出力する。これにより、表示部13は、2倍に拡大した映像を出力表示できる。
【0046】
なお、映像信号処理部15は、平均値算出部153により輝度値差分の平均値を算出し、算出した平均値の順位を用いて補間画素を生成しているが、輝度値差分の平均値でなく、輝度値差分の合計値を用いて補間画素を生成するようにしてもよい。また、映像信号処理部15は、平均値算出部153において4差分の平均値に加え、6差分又は8差分の平均値S5,S6を算出し、算出した平均値S1〜S6を用いて補間画素を生成するようにしてもよい。この場合、より精度の高い補間画素を生成することができる場合がある。
【0047】
以上のように構成された表示装置における動作について説明する。図6は、表示装置の動作を示すフローチャートである。図6に示す処理は、制御部10により実行される。
【0048】
制御部10は、映像信号を取得し(S1)、各画素の輝度値を取得する(S2)。制御部10は、対象領域を抽出し(S3)、対象領域内の画素「i」を処理対象に設定する(S4)。ここで、「i」は、初期値が「0」として設定されており、制御部10は、最初にS3を実行した場合、画素「0」を処理対象とする。次に、制御部10は、画素「i」を中心として列方向、行方向、右上対角方向及び右下方向における輝度値の絶対値差分和の平均値S1〜S4を算出する(S5)。
【0049】
制御部10は、算出した平均値S1〜S4に基づいて、平均値の昇順に、列方向、行方向、右上対角方向及び右下対角方向の順位を決定する(S6)。続いて、制御部10は、平均値S1〜S4の最小値をSD1とし、次に小さい値をSD2とする(S7)。制御部10は、補間画素SA1及びSA2を生成する(S8)。補間画素SA1及びSA2は、上述のように、1位及び2位に順位付けされた方向にある4画素に基づいて生成される。
【0050】
次に、制御部10は、補間画素「i1」、「i2」を生成する(S9)。具体的には、制御部10は、線形補間法、双3次補間法又はLanczos3法等により補間画素「i1」、「i2」を生成する。なお、補間画素「i1」、「i2」を生成するタイミングは、画素「i」を処理対象に設定した後のS4〜S9までのどのタイミングで行ってもよい。
【0051】
制御部10は、補間画素SA1及びSA2と、1位及び2位に順位付けた方向の重みを加算することで、補間画素「i3」を生成する(S10)。その後、制御部10は、S3で抽出した対象領域内の全画素に対して補間画素を生成する処理を行ったか否かを判定する(S11)。全画素について終了していない場合(S11:NO)、制御部10は、処理をS4に移す。対象領域内の全画素に対して補間画素を生成した場合(S11:YES)、制御部10は、映像を構成する全画素に対して補間画素を生成したか否かを判定する(S12)。映像を構成する全画素に対して補間画素を生成していない場合(S12:NO)、制御部10は、S3に戻り、補間画素を生成していない画素を含む対象領域を抽出し上述の処理を繰り返す。映像を構成する全画素に対して補間画素を生成した場合(S12:YES)、制御部10は、本処理を終了する。なお、制御部10は、画素「i」及び生成した補間画素「i1」、「i2」、「i3」をメモリ等に記憶しておき、随時表示部13へ出力し、映像を表示する。
【0052】
以上説明したように、実施形態1では、複数の方向において輝度値の絶対差分和の平均値S1〜S4を算出し、平均値S1〜S4を昇順とした上位2つに係る方向をエッジ方向としている。そして、斯かる方向に重み付けをして補間画素を生成しているため、エッジのジャギ及びオーバーシュート/アンダーシュートが発生しないように、精度の高い補間画素を生成することができる。
【0053】
(実施形態2)
次に、本発明に係る実施形態2について説明する。実施形態1に係る表示装置は、制御部10が有するROM等に制御プログラムを予め記憶しており、映像の拡大処理を行っているが、実施形態2に係る表示装置は、着脱可能な記録媒体に記憶された制御プログラムを読み取って映像の拡大処理を行っている。
【0054】
図7は、実施形態2に係る表示装置の構成を模式的に示すブロック図である。実施形態2に係る表示装置は、実施形態1の映像信号処理部15を備えておらず、CD−ROM17aの記録内容を読み取る読取部17を備えている。CD−ROM17aには、実施形態1で説明した領域抽出部、輝度値取得部、平均値算出部、順位決定部、スケーリング部及び重み付け部を表示装置に実行させる制御プログラム(PG)が記憶されている。表示装置は、読取部17からCD−ROM17aに記録される制御プログラムを読み取り、実行することで実施形態1の映像信号処理部15と同様の機能を有する。この場合、表示装置は、CD−ROM17aからプログラムを読み取り、RAM(Random Access Memory)にロードしつつ実行してもよいし、ハードディスクドライブ等にインストールして、実行してもよい。なお、制御プログラムを実行した表示装置の動作については実施形態1と同様であるため説明は省略する。
【0055】
なお、実施形態2で説明した表示装置の他、パーソナルコンピュータで実行させるようなコンピュータプログラムにおいても、上述の動作を実行することができる。また、コンピュータプログラムを記録する記録媒体は、DVD−ROM、USB(Universal Serial Bus)、FD(フレキシブルディスク)、又はその他任意の記録媒体が利用可能である。さらに、コンピュータプログラムは、インターネット等の通信網を介してダウンロードすることも可能である。
【0056】
以上、本発明の好適な実施形態について、具体的に説明したが、各構成及び処理動作等は適宜変更可能であって、上述の実施形態に限定されることはない。例えば、実施形態1及び2では、本発明の画像処理装置を液晶ディスプレイ等の表示装置としているが、映像をスクリーンへ照射するプロジェクタであってもよいし、画像処理が可能なパーソナルコンピュータであってもよい。パーソナルコンピュータとした場合、例えばデジタルカメラ又はスキャナ等で取り込んだ画像データを拡大する場合等に適用させることができる。
【0057】
また、実施形態1及び2では、映像信号はYCbCr信号としているが、赤(R)・緑(G)・青(B)の三原色の組合せとして表現するRGB信号であってもよい。RGB信号の場合、順位決定部154は、例えば、RGBそれぞれにおいて方向検出を行い、各結果の平均を取ることで方向順位を決定するようにしてもよい。また、RGB信号の場合、順位決定部154は、他の要素として、例えば映像中の画素の輝度値の分布を示すヒストグラムを用い、映像上で最も頻度の高い要素を代表として使用するができる。
【0058】
実施形態1及び2では、エッジ方向の候補として決定した上位2つを用いて補間画素を生成しているが、補間画素の精度を向上させるため、上位2つ以上を用いて補間画素を生成するようにしてもよい。その他、実施形態1及び2で説明した具体的な数値、手段及び方法などは適宜変更可能である。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】(a)は、映像を構成する画素を示す概念図であり、(b)は映像を2倍に拡大した際に補間される画素を説明するための概念図である。
【図2】実施形態1に係る表示装置の構成を模式的に示すブロック図である。
【図3】映像信号処理部が有する機能を模式的に示すブロック図である。
【図4】各方向における輝度値の絶対値差分和の平均値の算出について説明するための模式図である。
【図5】スケーリング用のフィルタの一例を表す図である。
【図6】表示装置の動作を示すフローチャートである。
【図7】実施形態2に係る表示装置の構成を模式的に示すブロック図である。
【符号の説明】
【0060】
15 映像信号処理部
151 領域抽出部
152 輝度値取得部
153 平均値算出部(情報取得手段)
154 順位決定部(方向決定手段)
155 スケーリング部(輝度値算出手段)
156 重み付け部(生成手段)
157 映像信号出力部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の画素から形成される原画像から対象画素を含む対象領域を抽出し、該対象領域内の画素の輝度値を用いて、前記対象画素と隣接する画素との間を補う補間画素を生成する画像処理装置において、
前記対象領域内の複数の方向毎に、該方向に沿って配列された画素の輝度値に関する情報を取得する情報取得手段と、
該情報取得手段が取得した情報に基づいて、前記複数の方向から原画像のエッジ方向の候補として複数決定する方向決定手段と、
該方向決定手段が決定した方向毎に、該方向に沿って配列された画素の輝度値に基づいて、前記対象画素に対する補間画素の輝度値を算出する輝度値算出手段と、
前記方向決定手段が決定した方向毎に算出した補間画素の輝度値に前記情報取得手段が取得した情報に基づく重み付けを行って前記対象画素に対する補間画素を生成する生成手段と
を備えることを特徴とする画像処理装置。
【請求項2】
前記情報取得手段は、
前記対象領域内の複数の方向毎に、該方向に沿って配列された画素の輝度値の絶対値差分和を算出し、
前記方向決定手段は、
算出した前記絶対値差分和を、昇順にエッジ方向の候補として決定し、
前記生成手段は、
最上位の候補となるエッジ方向について算出した補間画素の輝度値に、他の方向における輝度値より大きい重み付けを行って補間画素を生成するようにしてある
ことを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項3】
前記輝度値算出手段は、
線形補間法、双3次補間法又はLanczos3法の何れかにより補間画素の輝度値を算出するようにしてある
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の画像処理装置。
【請求項4】
複数の画素から形成される原画像から対象画素を含む対象領域を抽出し、該対象領域内の画素の輝度値を用いて、前記対象画素と隣接する画素との間を補う補間画素を生成する画像処理方法において、
前記対象領域内の複数の方向毎に、該方向に沿って配列された画素の輝度値に関する情報を取得し、
取得した情報に基づいて、前記複数の方向から原画像のエッジ方向の候補として複数決定し、
エッジ方向の候補として決定した方向毎に、該方向に沿って配列された画素の輝度値に基づいて、前記対象画素に対する補間画素の輝度値を算出し、
エッジ方向の候補として決定した方向毎に算出した補間画素の輝度値に前記情報に基づく重み付けを行って前記対象画素に対する補間画素を生成する
ことを特徴とする画像処理方法。
【請求項5】
複数の画素から形成される原画像から対象画素を含む対象領域を抽出し、該対象領域内の画素の輝度値を用いて、前記対象画素と隣接する画素との間を補う補間画素を生成するコンピュータで実行するコンピュータプログラムにおいて、
前記コンピュータを、
前記対象領域内の複数の方向毎に、該方向に沿って配列された画素の輝度値に関する情報を取得する情報取得手段、
該情報取得手段が取得した情報に基づいて、前記複数の方向から原画像のエッジ方向の候補として複数決定する方向決定手段、
該方向決定手段が決定した方向毎に、該方向に沿って配列された画素の輝度値に基づいて、前記対象画素に対する補間画素の輝度値を算出する輝度値算出手段、及び、
前記方向決定手段が決定した方向毎に算出した補間画素の輝度値に前記情報取得手段が取得した情報に基づく重み付けを行って前記対象画素に対する補間画素を生成する生成手段
として機能させることを特徴とするコンピュータプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−157877(P2010−157877A)
【公開日】平成22年7月15日(2010.7.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−334690(P2008−334690)
【出願日】平成20年12月26日(2008.12.26)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】