説明

画像処理装置、画像処理方法及びプログラム

【課題】対象物体の三次元画像と断層画像との対応が分かりやすく、なお且つ、三次元画像の全体の中における断層画像の位置が分かりやすいように表示する仕組みを提供する。
【解決手段】対象物体の三次元画像を取得する医用画像取得部1001と、対象物体の断層画像を取得する断層画像取得部1002と、前記三次元画像における前記断層画像の断面を算出する算出部1004と、前記三次元画像を前記断面で分割し、当該分割した2つの分割三次元画像のうち、一方の分割三次元画像の前記断面を第1の視点から見た第1のレンダリング画像を生成するとともに、他方の分割三次元画像の前記断面を第2の視点から見た第2のレンダリング画像を生成する分割三次元画像生成部1005と、前記第1のレンダリング画像の前記断面の対応する位置に前記断層画像を重畳する重畳画像生成部1007を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、種々の医用画像収集装置(モダリティ)で撮影された医用画像を処理する画像処理装置及び画像処理方法、並びに、当該画像処理方法をコンピュータに実行させるためのプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
医療の分野において、医師は医用画像収集装置(モダリティ)を用いて患者を撮影し、得られた医用画像を読影して病変部の位置や状態、経時変化を観察する。医用画像を生成する医用画像収集装置としては、単純X線撮影装置、X線コンピュータ断層撮影装置(X線CT)、核磁気共鳴映像装置(MRI)、超音波断層画像診断装置(US)などが挙げられる。夫々の装置は特性が異なるため、撮影する部位や疾病などに適した装置を複数選択して用いる。例えばMRIを用いて患者を撮影し、MRIによって撮影された画像(MRI画像)を参照しながら超音波断層画像を撮影することで、病変部の位置や拡がりなどの診断に有効な情報を得ることができる。
【0003】
超音波断層画像とMRI画像との両画像間の対応する部位を対応付けて診断することは効果的であり、そのためには夫々の画像の位置や対応がわかりやすい表示をすることが必要である。
【0004】
この課題に対するアプローチの1つとして、三次元画像をわかりやすく表示するために、三次元画像を切断面で分割し、複数の視点から見た見開き状態としてボリュームレンダリングする方法がある。特許文献1には、ボリュームデータに切断面を設定して生成した複数の分割データ毎に、独立した光源を設け、独立したボクセル追跡処理を行い、得られた各投影画像を合成することで、各切断面が見開きとなる画像をリアルタイムで表示する技術が開示されている。この技術により、複雑な血管走行、臓器の構造や位置関係の観察が容易となる。そのため、医療における診断能力を向上させることができる。
【0005】
一方、異なるモダリティで撮影された医用画像の対応する組織を複合的に観察するために、夫々の画像中の特徴を利用して位置合わせして表示する技術が従来から検討されている。例えば、非特許文献1に開示されている手法では、CTによって撮影された画像(CT画像)の肝臓部分と対応する超音波断層画像とを位置合わせし、CT画像中の位置に超音波断層画像を重畳表示している。この技術により、あるモダリティで撮影された画像の注目する部分と、異なるモダリティで撮影された画像とを複合的に観察することが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2001−276066号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】W. Wein et al. "Simulation and fully automatic multimodal registration of medical ultrasound," Proc. MICCAI 2007, Part I, LNCS 4791, pp.136-143, 2007.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1に記載の従来例では、複数のモダリティで撮影された画像を対応付けて観察する場合には、その画像同士が重なる部分において画像間の対応が分かりにくいという課題があった。一方、非特許文献1に記載の従来例では、重畳した断層画像と三次元画像が重なる部位においては、いずれかの画像が見えなくなり、画像間の比較ができないという課題があった。
【0009】
本発明は上述した課題に鑑みてなされたものであり、対象物体の三次元画像と断層画像との対応が分かりやすく、なお且つ、三次元画像の全体の中における断層画像の位置が分かりやすいように表示する仕組みを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の画像処理装置は、対象物体の三次元画像を取得する三次元画像取得手段と、前記三次元画像とは異なる前記対象物体の断層画像を取得する断層画像取得手段と、前記三次元画像における前記断層画像の断面を算出する算出手段と、前記三次元画像を前記断面で分割し、当該分割した2つの分割三次元画像のうち、一方の分割三次元画像の前記断面を第1の視点から見た第1のレンダリング画像を生成するとともに、他方の分割三次元画像の前記断面を前記第1の視点とは異なる第2の視点から見た第2のレンダリング画像を生成するレンダリング画像生成手段と、前記三次元画像の前記断面における断面画像を生成する断面画像生成手段と、前記第1のレンダリング画像の前記断面の対応する位置に前記断層画像を重畳するとともに、前記第2のレンダリング画像の前記断面に前記断面画像を重畳する重畳手段とを有する。
また、本発明は、上述した画像処理装置による画像処理方法、及び、当該画像処理方法をコンピュータに実行させるためのプログラムを含む。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、対象物体の三次元画像と断層画像との対応が分かりやすく、なお且つ、三次元画像の全体の中における断層画像の位置が分かりやすいように表示する仕組みを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】第1の実施形態に係る画像処理システムの機能構成の一例を示す図である。
【図2】第1の実施形態に係る画像処理システムのハードウェア構成の一例を示す図である。
【図3】第1の実施形態に係る画像処理装置による画像処理方法の処理手順の一例を示すフローチャートである。
【図4】第1の実施形態を示し、図3のステップS305の処理により生成されたMRI断面画像を示す図である。
【図5】第1の実施形態を示し、超音波断層画像と超音波断層画像座標系を説明する図である。
【図6】第1の実施形態を示し、図3のステップS304の処理を説明する図である。
【図7】第1の実施形態を示し、図6に示す座標系において2つの視点の位置を示した図である。
【図8】第1の実施形態を示し、図7に示す超音波断面と2つの視点との位置関係を示す図である。
【図9】第1の実施形態を示し、図3のステップS308の処理結果を説明する図である。
【図10】第2の実施形態に係る画像処理システムの機能構成の一例を示す図である。
【図11】第2の実施形態に係る画像処理装置による画像処理方法の処理手順の一例を示すフローチャートである。
【図12】第2の実施形態を示し、超音波断層画像が表示された超音波断面、第1の視点及び病変の位置関係の一例を示す図である。
【図13】第2の実施形態を示し、第1の視点の位置から一方の分割MRI画像を見て生成された第1のレンダリング画像の図である。
【図14】第2の実施形態を示し、図11のステップS1109の処理を説明するための図である。
【図15】第2の実施形態に係る変形例2−3で行われる処理を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、図面を参照しながら、本発明を実施するための形態(実施形態)について説明する。
【0014】
[第1の実施形態]
本実施形態に係る画像処理装置は、超音波プローブで指定した断面で三次元画像(MRI画像)を切り開いた2つの分割MRI画像を生成する。そして、本実施形態に係る画像処理装置は、一方の分割MRI画像の断面部分には超音波断層画像を重畳し、他方の分割MRI画像の断面部分には三次元画像の断面画像を重畳し、夫々生成した画像を表示する。本実施形態では、人体の乳房を対象物体とする場合を例として説明する。
【0015】
図1は、第1の実施形態に係る画像処理システムの機能構成の一例を示す図である。この図1には、特に、画像処理システムに含まれる画像処理装置100の機能構成の一例が示されている。
【0016】
医用画像撮影装置110は、MRIで対象物体の所定の三次元領域を撮影して医用画像として三次元MRI画像を生成する。医用画像撮影装置110の撮影により得られた三次元MRI画像は、画像処理装置100内部の医用画像取得部1001に入力される。なお、本実施形態では、MRI画像中の対象物体の形状は、超音波検査時の形状と略同一であるものとする。これは、例えば、超音波検査時と同一の体位でMRI撮影を行っているものとする。あるいは、伏臥位での乳房形状から仰臥位での乳房形状への変形を公知の物理変形シミュレーション等の技術により推定することで、伏臥位で撮影されたMRI画像と仰臥位で撮影した超音波画像との間の補正処理が既に行われているものとする。
【0017】
超音波断層画像撮影装置120は、超音波を送受信する不図示の超音波プローブを対象物体に接触させることで、対象物体の内部を超音波撮影して超音波断層画像を生成する。本実施形態では、超音波断層画像撮影装置120は、対象物体の所定の二次元領域を撮影して二次元のBモード超音波断層画像を生成する。超音波断層画像撮影装置120の撮影により得られた二次元のBモード超音波断層画像は、画像処理装置100内部の超音波断層画像取得部1002に入力される。
【0018】
位置姿勢計測装置130は、超音波断層画像撮影装置120が持つ不図示の超音波プローブの位置と姿勢を計測する。例えば、位置姿勢計測装置130は、米国Polhemus社のFASTRAK等によって構成され、センサ座標系(位置姿勢計測装置130が基準として定める座標系)における超音波プローブの位置と姿勢を計測する。なお、位置姿勢計測装置130は、超音波プローブの位置と姿勢が計測できるのであれば、どのように構成されていても良い。位置姿勢計測装置130で計測された超音波プローブの位置と姿勢の計測値は、画像処理装置100内部の位置姿勢計測値取得部1003に入力される。
【0019】
画像処理装置100は、医用画像撮影装置110、超音波断層画像撮影装置120、位置姿勢計測装置130と接続される。
【0020】
画像処理装置100内部の医用画像取得部1001は、医用画像撮影装置110で撮影された医用画像である対象物体の三次元MRI画像を取得し、これを分割三次元画像生成部1005及び断面画像生成部1006へ出力する。
【0021】
画像処理装置100内部の超音波断層画像取得部1002は、超音波断層画像撮影装置120で撮影された対象物体の超音波断層画像を取得し、これを重畳画像生成部1007へ出力する。
【0022】
画像処理装置100内部の位置姿勢計測値取得部1003は、位置姿勢計測装置130で計測された超音波プローブの位置と姿勢の計測値を取得し、これを切断面算出部1004へ出力する。
【0023】
画像処理装置100内部の切断面算出部1004は、位置姿勢計測値取得部1003から得た超音波プローブの位置と姿勢の計測値から、MRI画像中の超音波プローブの位置と姿勢を求め、そこから超音波断層画像がMRI画像を分割する切断面を算出する。そして、切断面算出部1004は、算出した切断面に係る情報を、分割三次元画像生成部1005、断面画像生成部1006、重畳画像生成部1007へ出力する。
【0024】
画像処理装置100内部の分割三次元画像生成部1005は、医用画像取得部1001から得たMRI画像と、切断面算出部1004から得たMRI画像の切断面に係る情報に基づき、三次元画像(MRI画像)を切り開いて2つの分割MRI画像を生成する。そして、分割三次元画像生成部1005は、生成した分割三次元画像である2つの分割MRI画像を重畳画像生成部1007へ出力する。
【0025】
画像処理装置100内部の断面画像生成部1006は、医用画像取得部1001から得たMRI画像と、切断面算出部1004から得たMRI画像の切断面に係る情報に基づき、前記切断面に対応するMRI画像の断面画像を生成する。そして、断面画像生成部1006は、生成したMRI画像の断面画像(MRI断面画像)を重畳画像生成部1007へ出力する。
【0026】
画像処理装置100内部の重畳画像生成部1007は、超音波断層画像取得部1002から得た超音波断層画像と、切断面算出部1004から得た切断面に係る情報と、分割三次元画像生成部1005から得た2つの分割MRI画像と、断面画像生成部1006から得たMRI断面画像に基づき、一方の分割MRI画像の断面に超音波断層画像を重畳し、他方の分割MRI画像の断面にMRI断面画像を重畳した画像(重畳画像)を生成する。そして、重畳画像生成部1007は、生成した重畳画像を画像表示部1008へ出力する。
【0027】
画像処理装置100内部の画像表示部1008は、重畳画像生成部1007が生成した重畳画像を表示する処理を実行する。
【0028】
図2は、第1の実施形態に係る画像処理システムのハードウェア構成の一例を示す図である。ここで、図2において、図1に示す構成と同様の構成については、同じ符号を付している。
【0029】
本実施形態の画像処理システムは、画像処理装置100、医用画像撮影装置110、超音波断層画像撮影装置120、位置姿勢計測装置130、医用画像記録装置230、及び、ローカルエリアネットワーク(LAN)240を有して構成される。
【0030】
画像処理装置100は、例えば、パーソナルコンピュータ(PC)などで実現することができる。画像処理装置100は、中央演算処理装置(CPU)211、主メモリ212、磁気ディスク213、表示メモリ214、モニタ215、マウス216、キーボード217、及び、共通バス218のハードウェアを有して構成されている。
【0031】
CPU211は、主として画像処理装置100の各構成要素の動作を制御して、画像処理装置100の動作を統括的に制御する。
【0032】
主メモリ212は、CPU211が実行する制御プログラムを格納したり、CPU211によるプログラム実行時の作業領域を提供したりする。
【0033】
磁気ディスク213は、オペレーティングシステム(OS)、周辺機器のデバイスドライブ、各種アプリケーションソフト等を格納する。
【0034】
表示メモリ214は、モニタ215に表示するための表示用データを一時記憶する。
【0035】
モニタ215は、例えばCRTモニタや液晶モニタ等であり、表示メモリ214からの表示用データに基づいて画像を表示する。
【0036】
マウス216及びキーボード217は、ユーザによるポインティング入力及び文字やコマンド等の入力をそれぞれ行う。
【0037】
共通バス218は、画像処理装置100の上記各構成要素を互いに通信可能に接続する。
【0038】
本実施形態においては、画像処理装置100は、LAN240を介して医用画像記録装置230から医用画像データ等を読み出して取得することができる。また、画像処理装置100は、LAN240を経由して医用画像撮影装置110から直接に医用画像データ等を取得できるようにしても良い。なお、本発明の実施形態はこれに限定されず、例えば、画像処理装置100にUSBメモリ等の外部記憶装置を接続し、この外部記憶装置から医用画像データ等を読み込んで取得するようにしても良い。また、この外部記憶装置に本実施形態に係る画像処理システムの処理結果を保存するようにしても良い。また、超音波断層画像撮影装置120で撮影した超音波断層画像と、位置姿勢計測装置130で計測された位置・姿勢データを医用画像記録装置230に記録しておいて、画像処理装置100が医用画像記録装置230から超音波断層画像と位置・姿勢データを読み出して取得できるようにしても良い。
【0039】
次に、本実施形態に係る画像処理装置100が行う全体の動作に関して、図3のフローチャートを用いて詳しく説明する。
図3は、第1の実施形態に係る画像処理装置100による画像処理方法の処理手順の一例を示すフローチャートである。本実施形態では、主メモリ212に格納されている、各機能構成(図1)の機能を実現するためのプログラムを、CPU211が実行することにより、図3に示すフローチャートの処理が実現される。
【0040】
(ステップS300):MRI画像(三次元画像)の取得
ステップS300において、医用画像取得部1001は、医用画像撮影装置110によって対象物体を撮影した結果得られた医用画像である三次元MRI画像を取得する。医用画像である三次元MRI画像を取得する医用画像取得部1001は、「三次元画像取得手段」を構成し、また、ステップS300は、「三次元画像取得ステップ」を構成する。このステップS300で取得されるMRI画像の座標系としては、Z軸を人体の足から頭への方向、Y軸を人体の胸部から背中への方向、X軸を人体の左右方向と定義したMRI画像座標系601(後述する図6)とする。また、撮影の対象物体が人体の乳房であるため、このステップS300で取得されるMRI画像は、後述する図6に示すように、皮膚602や乳頭603のような表面構造と、乳腺604や骨605、大胸筋606といった内部構造からなるものである。
【0041】
(ステップS301):超音波断層画像の取得
ステップS301において、超音波断層画像取得部1002は、超音波断層画像撮影装置120によって対象物体を撮影することにより得られた超音波断層画像501(後述する図5)を取得する。なお、この超音波断層画像501は、ドップラーや、エラストグラフィなどでも良い。本実施形態では、取得する超音波断層画像501が対象物体の二次元Bモード超音波断層画像である場合を例として説明を行う。
【0042】
図5は、第1の実施形態を示し、超音波断層画像と超音波断層画像座標系を説明する図である。
図5には、超音波断層画像501として乳房領域の超音波断層画像の一例が示されている。取得する超音波断層画像501の座標としては、超音波断層画像を含む平面をXY平面とし、それと直行する軸をZ軸と定義した超音波断層画像座標系502を用いる。本実施形態では、超音波断層画像501の画像情報は、z=0の平面上のみに存在することになる。ここで、XUSを、超音波断層画像座標系502における三次元の位置座標を表すベクトルとし、本実施形態では、4次元の拡張ベクトルとして表現されているものとする。
【0043】
(ステップS302):超音波プローブの位置・姿勢の取得
ステップS302において、位置姿勢計測値取得部1003は、位置姿勢計測装置130によって計測された、対象物体を超音波断層画像撮影装置120で撮影している際の超音波プローブのセンサ座標系における位置と姿勢を取得する。ここで、センサ座標系における超音波プローブの位置・姿勢を、4行4列の行列TPROBE_SENSORで表すものとする。
【0044】
(ステップS303):MRI画像における超音波断層画像の断面(切断面)の算出
ステップS303において、切断面算出部1004は、まず、ステップS302で取得したセンサ座標系における超音波プローブの位置と姿勢を、センサ座標系と対象物体との位置関係に基づいて、MRI画像座標系601(後述する図6)における超音波プローブの位置と姿勢に変換する。そして、切断面算出部1004は、MRI画像における超音波断層画像の断面(切断面)を算出する。
【0045】
ここで、図5に示す超音波断層画像座標系502から超音波プローブの座標系への変換規則をTUS_PROBEとし、既知の校正手法によって、回転・並進・スケーリングで表現される4行4列の行列として予め算出されているものとする。超音波断層画像座標系502からセンサ座標系への変換規則TUS_SENSORは、下記の(1)式で示されるように、TUS_PROBEとTPROBE_SENSORの乗算で算出される。また、センサ座標系からMRI画像座標系601(後述する図6)への変換規則TSENSOR_MRIを乳房の剛体部分などを用いて予め求めておくことで、下記の(2)式を用いて、超音波断層画像座標系502からMRI画像座標系601への変換規則TUS_MRIが求められる。超音波断層画像501の四隅の座標をX1US,X2US,X3US、X4USとする。この四隅の座標と変換規則TUS_MRIとの乗算から得られる4点で囲まれる領域を、MRI画像中での超音波断層画像の断面(後述する図6の超音波断面607)とし、超音波断面607を部分領域として含む平面を指定断面608(後述する図6)とする。
US_SENSOR=TUS_PROBE・TPROBE_SENSOR ・・・(1)
US_MRI=TUS_SENSOR・TSENSOR_MRI ・・・(2)
【0046】
(ステップS304):切断面(指定断面)でMRI画像を分割した分割MRI画像(分割三次元画像)の生成
ステップS304において、分割三次元画像生成部1005は、ステップS303で得られた切断面(後述する図6の指定断面608)で、ステップS300で得られたMRI画像を2つに分割した分割MRI画像(分割三次元画像)を生成する。
【0047】
図6は、第1の実施形態を示し、図3のステップS304の処理を説明する図である。具体的に、図6は、指定断面608でMRI画像を2つに分割した図である。本実施形態では、超音波断層画像座標系502のZ座標が負の方を分割MRI画像609、超音波断層画像座標系502のZ座標が正の方を分割MRI画像610と定義する。図6では、分割MRI画像609は人体の足側、分割MRI画像610は人体の頭側の画像となっている。なお、説明の都合上、図6では、分割MRI画像609と分割MRI画像610が離れたように描かれているが、実際には前記2つの分割MRI画像の位置関係は、指定断面608を介して一体となっている。分割三次元画像生成部1005は、前記2つの分割MRI画像に対して異なる2つの位置に仮想的な視点を設定する処理を実行する。
【0048】
図7は、第1の実施形態を示し、図6に示す座標系において2つの視点の位置を示した図である。図7において、超音波断層画像座標系502のZ座標が負になる方の視点を第1の視点701、超音波断層画像座標系502のZ座標が正になる方の視点を第2の視点702と定義する。ここで、分割三次元画像生成部1005は、以下に述べる複数の条件を満たす位置に視点を設定する。
【0049】
図8は、第1の実施形態を示し、図7に示す超音波断面607と2つの視点701及び702との位置関係を示す図である。
【0050】
図8(a)は2つの視点701及び702の位置関係を示したものであり、それぞれの見る方向を視線801及び視線802とすると、これらは、超音波断面607の中心部に向かっている。これを第1の視点設定の条件とする。
【0051】
また、図8(b)は超音波断層画像座標系502のY座標が負の方向から見た図であり、それぞれの視点701及び702からの視線801及び802と超音波断面607とのなす角度はθとなり、超音波断面607を中心として対称の位置になっている。これを第2の視点設定の条件とする。
【0052】
また、図8(c)はX座標が正の方向から見た図であり、超音波断面607と2つの視点701及び702との距離は等しくなっている。これを第3の視点設定の条件とする。
【0053】
分割三次元画像生成部1005は、上記第1から第3の視点設定の条件を満たす位置に第1の視点701及び第2の視点702を設定する処理を実行する。
次に、分割三次元画像生成部1005は、第1の視点701の位置から一方の分割MRI画像610を観察した第1のレンダリング画像Irender1を、ボリュームレンダリング手法を用いて生成する。同様にして、分割三次元画像生成部1005は、第2の視点702の位置から他方の分割MRI画像609を観察した第2のレンダリング画像Irender2を生成する。第1のレンダリング画像Irender1及び第2のレンダリング画像Irender2を生成する分割三次元画像生成部1005は、「レンダリング画像生成手段」を構成し、また、ステップS304は、「レンダリング画像生成ステップ」を構成する。
【0054】
(ステップS305):切断面に対応したMRI断面画像の生成
ステップS305において、断面画像生成部1006は、ステップS303で得られた切断面(図6の指定断面608)をMRI画像の断面とするMRI断面画像を生成する。
図4は、第1の実施形態を示し、図3のステップS305の処理により生成されたMRI断面画像を示す図である。図4に示すMRI断面画像401は、MRI画像の前記切断面(図6の指定断面608)に含まれる各画素に基づいて描画した画像となっている。図4のMRI断面画像座標系402は、MRI断面画像401を含む平面をXY平面とし、それと直行する軸をZ軸と定義している。
【0055】
(ステップS306):レンダリング画像Irender1に超音波断層画像501を重畳
ステップS306において、重畳画像生成部1007は、ステップS301で取得された超音波断層画像501を、ステップS304で生成した第1のレンダリング画像Irender1(一方の分割MRI画像610)の断面上に重畳し、重畳画像I1を生成する。具体的に、超音波断層画像501は、ステップS302で取得した超音波プローブの位置・姿勢、ステップS303で取得した超音波断面607、及び、ステップS304で設定した第1の視点701に基づいて、重畳される。超音波断層画像501の各画素は、超音波断層画像座標系502におけるそれぞれの座標XUSと、ステップS303で求めた変換規則TUS_MRIから求められるMRI画像座標系601における座標XMRIで示される位置に重畳される。
【0056】
(ステップS307):レンダリング画像Irender2にMRI断面画像401を重畳
ステップS307において、重畳画像生成部1007は、ステップS305で生成されたMRI断面画像401を、ステップS304で生成した第2のレンダリング画像Irender2(他方の分割MRI画像609)の断面上に重畳し、重畳画像I2を生成する。具体的に、MRI断面画像401は、ステップS303で取得した指定断面608と、ステップS304で設定した第2の視点702に基づいて、重畳される。その結果、MRI断面画像401は、MRI画像座標系601と、MRI断面画像座標系402のそれぞれの軸と方向が一致するように重畳される。なお、重畳画像生成部1007は、前記MRI断面画像401から体内領域の抽出を行い、前記体内領域だけを重畳する。
【0057】
(ステップS308):重畳画像の表示
ステップS308において、画像表示部1008は、ステップS306で生成された重畳画像I1と、ステップS307で生成された重畳画像I2とを並べて表示する。
図9は、第1の実施形態を示し、図3のステップS308の処理結果を説明する図である。ステップS308の処理により、図9に示すようなMRI画像を指定断面608で切り開いた重畳画像I1及びI2を有する画像が得られる。具体的に、図9に示すように、重畳画像I1は、一方の分割MRI画像610の超音波断面607に超音波断層画像501が重畳されている。また、重畳画像I2は、他方の分割MRI画像609の指定断面608にMRI断面画像401が重畳されている。そして、各重畳画像I1及びI2は、切断面(指定断面608)を見せるようにそれぞれ表示されている。
【0058】
以上のステップS300〜S308の処理を経ることによって、画像処理装置100による画像処理方法の処理が実施される。
【0059】
上述した第1の実施形態に係る画像処理システムによれば、2つの分割MRI画像609及び610の両方を表示するようにしたので、どちらか一方のみを表示する場合と比べて、対象物体全体における切断面の位置を確認し易くすることができる。
また、一方の分割MRI画像610の超音波断面607に超音波断層画像501を重畳して表示するようにしたので、MRI画像中における超音波断層画像501の位置・姿勢を把握することができる。
加えて、他方の分割MRI画像609の指定断面608にMRI断面画像401を重畳して表示するようにしたので、撮影した超音波断層画像501と対応するMRI断面画像401との比較が容易になる。これにより、超音波断層画像501とMRI断面画像401の両方による詳細な診断を容易に行うことができる。
MRIと超音波断層画像撮影装置で撮影された医用画像について、画像同士の比較と、画像間の位置関係の把握とが同時に可能になることが本実施形態の最大の特徴と言える。
【0060】
次に、第1の実施形態における変形例について以下に説明する。
【0061】
<変形例1−1>:三次元画像がMRI画像以外の場合
上述した第1の実施形態では、三次元画像がMRI画像である場合を例として説明したが、本発明の実施形態においてはこれに限らない。例えば、医用画像撮影装置110は、X線CTや、光音響トモグラフィ装置、三次元超音波装置であっても良く、これらの装置で撮影された三次元画像を適用しても良い。
【0062】
<変形例1−2>:両側にMRI断面画像を重畳する
上述した第1の実施形態では、MRI画像における指定断面608に対応するMRI断面画像401を第2のレンダリング画像Irender2(他方の分割MRI画像609)のみに重畳したが、本発明の実施形態においてはこれに限らない。例えば、第1のレンダリング画像Irender1(一方の分割MRI画像610)、及び、第2のレンダリング画像Irender2(他方の分割MRI画像609)のそれぞれについて、指定断面608に対応するMRI断面画像を矛盾しないように対応付けて重畳することも可能である。そして、第1のレンダリング画像Irender1(一方の分割MRI画像610)の対応する位置に超音波断層画像501を重畳しても良い。これにより、超音波断層画像501と、超音波断層画像501で注目している領域に対応するMRI断面画像とを比較できるだけでなく、注目している領域外におけるMRI断面画像についても把握でき、より多くの臨床情報を画像として示すことが可能になる。
【0063】
<変形例1−3>:MRI断面画像を重畳しない
上述した第1の実施形態では、第2のレンダリング画像Irender2(他方の分割MRI画像609)について、指定断面608に対応するMRI断面画像を重畳したが、MRI断面画像を重畳しなくても良い。これにより、第2のレンダリング画像Irender2(他方の分割MRI画像609)における、超音波断層画像座標系502のZ座標が負となる方向に存在する内部構造を観察することが可能となる。さらに、組織の三次元的位置や構造を把握しながら、超音波断層画像501を観察することができる。
【0064】
<変形例1−4>:超音波断層画像重畳側に手前側の内部構造を描画
分割MRI画像609中に含まれる骨605について、指定断面608にMRI断面画像401を重畳した場合、第2の視点702から観察するとMRI断面画像401の裏に隠れてしまい、見えない状態となる。上述した第1の実施形態では、分割MRI画像610において、超音波断層画像座標系502のZ座標が負となる領域(「手前領域」とする)については何も描画しないが、本発明の実施形態においてはこれに限らない。例えば、分割MRI画像610の手前領域における分割MRI画像609中の骨605などの内部構造データを取得する内部構造データ取得手段を更に設け、取得した内部構造データに基づく内部構造を分割MRI画像610の手前領域に描画しても良い。ここで、分割MRI画像610の手前領域に分割MRI画像609に含まれる骨605を描画すると、指定断面608から骨605が突出しているような画像となる。第1のレンダリング画像Irender1(一方の分割MRI画像610)には超音波断層画像501が重畳されているが、超音波断面607はMRI画像に対して小さいため、超音波断層画像501と骨605とが重なる部分は少ない。そのため、両者が重なる部分は、超音波断層画像501を描画するとしても、骨605を観察することへの影響は少ない。これにより、MRI断面画像401、骨605の構造、超音波断層画像501の3者の比較が可能になる。また、手前領域に描画するMRI画像の内部構造は骨605に限らず、大胸筋606などでも良い。さらに、骨605と大胸筋606の両方を描画しても良い。
【0065】
<変形例1−5>:ボリュームレンダリング以外の描画方法
上述した第1の実施形態では、分割MRI画像609及び分割MRI画像610の描画方法としてボリュームレンダリングを用いたが、本発明の実施形態においてはこれに限らない。例えば、対象とするMRI画像の皮膚602などの体表表面情報のみを抽出して三次元画像を構築するサーフェスレンダリングなどの描画方法でも良い。加えて、大胸筋606などの表面情報を更に抽出して体表表面情報と合わせてサーフェスレンダリングして描画しても良い。
【0066】
[第2の実施形態]
以下に示す第2の実施形態の説明では、上述した第1の実施形態と異なる部分を中心に説明を行う。
【0067】
本実施形態に係る画像処理装置は、まず、乳房領域におけるMRI画像について、超音波プローブで指定した指定断面608によって画像を分割することで、切り開いた2つの分割MRI画像を生成する。続いて、本実施形態に係る画像処理装置は、撮影した超音波断層画像501を一方の分割MRI画像の対応する位置に重畳表示する。そして、本実施形態に係る画像処理装置は、MRI画像中の注目領域を分割MRI画像中に表示する。さらに、本実施形態に係る画像処理装置は、分割MRI画像をボリュームレンダリングする際の視点と、重畳した超音波断層画像501と、病変の位置によって、どちらの分割MRI画像に超音波断層画像501を重畳するかを判断し、必要に応じて超音波断層画像501を重畳する分割MRI画像を切り替える。本実施形態では、MRI画像中で病変が1つ検出され、その病変を注目領域とした場合について説明する。
【0068】
図10は、第2の実施形態に係る画像処理システムの機能構成の一例を示す図である。図10において、図1に示す第1の実施形態に係る画像処理システムの機能構成と同様の機能構成については、同じ名称を付しており、その詳細な説明は省略する。
【0069】
画像処理装置1000内部の切断面算出部10004は、位置姿勢計測値取得部10003から得た超音波プローブの位置と姿勢の計測値から、MRI画像中の超音波プローブの位置と姿勢を求め、そこから超音波断層画像がMRI画像を分割する切断面(指定断面608)を算出する。そして、切断面算出部10004は、算出した切断面に係る情報を、分割三次元画像生成部10005、重畳画像生成部10007及び切り替え判定部10010に出力する。
【0070】
画像処理装置1000内部の分割三次元画像生成部10005は、医用画像取得部10001から得たMRI画像と、切断面算出部10004から得たMRI画像の切断面に係る情報に基づき、三次元画像(MRI画像)を切り開いて2つの分割MRI画像を生成する。そして、分割三次元画像生成部10005は、生成した分割三次元画像である2つの分割MRI画像を重畳画像生成部10007及び切り替え判定部10010へ出力する。
【0071】
画像処理装置1000内部の病変位置取得部10009は、医用画像取得部10001が出力する医用画像のMRI画像に含まれる病変について、MRI画像座標系601での位置を取得する。そして、病変位置取得部10009は、取得した病変位置に係る情報を、重畳画像生成部10007及び切り替え判定部10010へ出力する。
【0072】
画像処理装置1000内部の切り替え判定部10010は、切断面算出部10004から出力された切断面に係る情報と、分割三次元画像生成部10005から出力された分割MRI画像と、病変位置取得部10009から出力されたMRI画像座標系601における病変位置に係る情報に基づいて、超音波断層画像501を重畳する分割MRI画像の切り替え判定を行う。そして、切り替え判定部10010は、判定結果を重畳画像生成部10007へ出力する。
【0073】
画像処理装置1000内部の重畳画像生成部10007は、入力された超音波断層画像501と、分割MRI画像と、切断面(指定断面608)に係る情報と、病変位置に係る情報に基づき、重畳画像を生成する。また、重畳画像生成部10007は、切り替え判定部10010から得た切り替え判定結果に基づき、以下の処理を行う。
【0074】
具体的に重畳画像生成部10007は、切り替え判定結果が示す方の分割MRI画像の対応する位置に超音波断層画像501を重畳し、他方の分割MRI画像の対応する位置に病変を描画し、2つの分割MRI画像を並べた画像を生成する。そして、重畳画像生成部10007は、生成した画像を画像表示部10008へ出力する。
【0075】
また、第2の実施形態に係る画像処理装置1000のハードウェア構成については、図2に示す第1の実施形態に係る画像処理装置100のハードウェア構成と同様のため、その説明は省略する。
【0076】
次に、本実施形態に係る画像処理装置1000が行う全体の動作に関して、図11のフローチャートを用いて詳しく説明する。
図11は、第2の実施形態に係る画像処理装置1000による画像処理方法の処理手順の一例を示すフローチャートである。なお、図11において、S1100〜S1102、S1104〜S1105及びS1110の処理は、それぞれ、図3に示す第1の実施形態におけるS300〜S302、S303〜S304及びS308の処理と共通する部分であるので、その説明は省略する。
【0077】
まず、図11に示す本実施形態に係る画像処理装置1000による処理では、図3に示すS300〜S302に対応するS1100〜S1102を経る。その後、以下に示すS1103に進む。
【0078】
(ステップS1103):MRI画像中の病変位置の取得
ステップS1103において、病変位置取得部10009は、ステップS1100で得られたMRI画像から病変位置を取得する。ここで、病変位置は、医師等がMRI画像を見ながら操作部を介して病変であると指定した位置であり、その位置は、MRI画像座標系601における座標で表された位置とする。注目領域である病変の位置を取得する病変位置取得部10009は、「注目領域位置取得手段」を構成し、また、ステップS1103は、「注目領域位置取得ステップ」を構成する。
【0079】
ステップS1103の処理が終了すると、続いて、図3に示すS303〜S304に対応するS1104〜S1105を経る。その後、以下に示すS1106に進む。
【0080】
(ステップS1106):分割MRI画像に超音波断層画像を重畳
ステップS1106において、重畳画像生成部10007は、ステップS1104で得た切断面(超音波断面607)に係る情報に基づいて、ステップS1101で得た超音波断層画像501を、第1のレンダリング画像Irender1(一方の分割MRI画像610)に重畳した画像を生成する。
【0081】
(ステップS1107):分割MRI画像に病変を描画
ステップS1107において、重畳画像生成部10007は、まず、ステップS1105で得られた2つの分割MRI画像のうち、ステップS1103で得られた病変位置に基づいて病変が含まれる方の分割MRI画像を判断する。そして、重畳画像生成部10007は、病変が含まれる方の分割MRI画像中の対応する位置に病変を描画する。ここでは、病変は、第1のレンダリング画像Irender1(一方の分割MRI画像610)の内部に含まれるものとして説明する。
【0082】
(ステップS1108):超音波断層画像の切り替えを判断
ステップS1108において、切り替え判定部10010は、ステップS1104で得た切断面(超音波断面607)に係る情報と、ステップS1103で得た病変位置に係る情報と、ステップS1105で設定される第1の視点701の位置に基づいて、超音波断層画像501を重畳表示する分割MRI画像を切り替えるか否かの判断を行う。具体的に、切り替え判定部10010は、第1の視点701から病変を見た際に、超音波断層画像501が当該病変を隠しているか否かの判断に応じて、超音波断層画像501を重畳表示する分割MRI画像を切り替えるか否かの判断を行う。
【0083】
図12は、第2の実施形態を示し、超音波断層画像501が表示された超音波断面607、第1の視点701及び病変1201の位置関係の一例を示す図である。また、図13は、第2の実施形態を示し、第1の視点701の位置から一方の分割MRI画像610を見て生成された第1のレンダリング画像Irender1の図である。
【0084】
図12(a)には、超音波断面607、第1の視点701及び病変1201の位置関係の一例を示されている。この場合、図12(b)に示すように、第1の視点701と病変1201とを結ぶ直線1202上に超音波断面607があるとき、生成される画像は、図13に示すように、病変1201が超音波断層画像501の裏に隠れ、観察することができないものになる。超音波断層画像撮影装置やMRIなどの複数のモダリティで撮影された画像を複合して観察することの大きな目的は、病変1201を探索し異なるモダリティ画像同士を比較するということにあるので、上記のような状況では、その目的を達成することは難しい。そこで、このような場合には、一方の分割MRI画像に重畳している超音波断層画像501を他方の分割MRI画像に重畳するように切り替えるという判断になる。
【0085】
ステップS1108の判断の結果、超音波断層画像501が病変1201を隠していない場合には、ステップS1110に進み、画像表示部1008は、重畳画像生成部10007で生成された画像を表示する。
一方、ステップS1108の判断の結果、超音波断層画像501が病変1201を隠している場合には、ステップS1109に進む。
【0086】
(ステップS1109):超音波断層画像を重畳する分割MRI画像を切り替えた画像を生成
ステップS1109において、重畳画像生成部10007は、ステップS1108の判断の結果に基づいて、超音波断層画像501を重畳するレンダリング画像(分割MRI画像)の切り替えを行う。
【0087】
図14は、第2の実施形態を示し、図11のステップS1109の処理を説明するための図である。具体的に、図14には、図13の場合から、超音波断層画像501を重畳するレンダリング画像(分割MRI画像)の切り替えを行った場合を示している。この切り替えを行うと、新たに重畳される超音波断層画像501は、切り替え先の分割MRI画像のMRI画像座標系601と矛盾しないように重畳される。つまり、2つの分割MRI画像は指定断面608に対して鏡像の関係にあるので、新たに重畳される超音波断層画像501は、元々重畳されていた超音波断層画像501とは鏡像の関係にあるような画像となる。
【0088】
ステップS1109の処理が終了すると、ステップS1110に進み、画像表示部1008は、重畳画像生成部10007で生成された画像を表示する。
【0089】
以上のステップS1100〜S1110の処理を経ることによって、画像処理装置1000による画像処理方法の処理が実施される。
【0090】
上述した第2の実施形態係る画像処理システムによれば、MRI画像から検出した病変1201を、重畳した超音波断層画像501で隠すことなく表示することが可能となる。
MRIで撮影された三次元画像のMRI画像における注目領域と、超音波断層画像撮影装置で撮影された二次元画像の超音波断層画像との位置関係に基づき、二次元画像を重畳する位置を切り替えることが本実施形態の最大の特徴と言える。
【0091】
次に、第2の実施形態における変形例について以下に説明する。
【0092】
<変形例2−1>:注目領域は複数でも良い
上述した第2の実施形態では、注目領域として取得された1つの病変1201と超音波断層画像501との位置関係に基づいて、超音波断層画像501を重畳するレンダリング画像(分割MRI画像)を切り替えるようにしたが、本発明の実施形態においてはこれに限らない。例えば、MRI画像中から取得された注目領域が複数ある場合、医師等のユーザが1つの注目領域をマウスやキーボード等の操作部を用いて指定し、指定された1つの注目領域と超音波断面607との位置関係に応じて超音波断層画像501を重畳するレンダリング画像(分割MRI画像)の切り替えを行うなどしても良い。
【0093】
<変形例2−2>:一方の分割MRI画像に超音波断層画像を重畳し、他方の分割MRI画像にMRI断面画像を重畳し、MRI断面画像が病変を隠さないように切り替え
上述した第2の実施形態では、第1の視点701と超音波断層画像501と分割MRI画像610中の病変1201との位置関係に基づきどちらの分割MRI画像に超音波断層画像501を重畳するかを切り替えるとしたが、本発明の実施形態においてはこれに限らない。例えば、分割MRI画像のどちらに病変1201が含まれているかに基づいて、超音波断層画像501とMRI断面画像401をどちらに重畳するかという判定をしても良い。この場合、図10の構成に、図1の断面画像生成部1006に相当する「断面画像生成部10006」を追加することになる。
【0094】
仮に、第2のレンダリング画像Irender2(他方の分割MRI画像609)中にMRI断面画像401と病変1201を描画する場合には、病変1201がMRI断面画像401の裏側に隠れ、第2の視点702からは観察することができなくなってしまう。そこで、この場合、本変形例では、MRI断面画像401を第1のレンダリング画像Irender1(一方の分割MRI画像610)に重畳し、超音波断層画像501を第2のレンダリング画像Irender2(他方の分割MRI画像609)に重畳する。そうすることで、MRI断面画像401と比較して超音波断層画像501の方が画像の面積が小さいため、病変1201を隠すことが少なくなる。そのため、病変位置を確認しながら超音波断層画像501を撮影しやすくなるという効果がある。
【0095】
<変形例2−3>:超音波断層画像を重畳する分割MRI画像はそのままで、病変の表示位置を切り替え
上述した第2の実施形態では、視点と超音波断層画像501と分割MRI画像中の病変1201との位置関係に基づいて超音波断層画像501を重畳するレンダリング画像(分割MRI画像)を切り替えるとしたが、本発明の実施形態においてはこれに限らない。例えば、超音波断層画像501の裏側に病変1201が隠れて、視点から観察することができない場合に、病変1201を描画するレンダリング画像(分割MRI画像)を切り替えても良い。
【0096】
図15は、第2の実施形態に係る変形例2−3で行われる処理を説明する図である。
図13では、病変1201が第1のレンダリング画像Irender1(一方の分割MRI画像610)の側に描画されており、第1の視点701から見ると超音波断層画像501の裏側に病変1201が隠れ観察することができない。そこで、図12(b)に示すように直線1202上に超音波断面607がある場合、図15に示すように、病変1201を第2のレンダリング画像Irender2(他方の分割MRI画像609)の側に描画する。なお、この場合には、病変1201は、指定断面608と第2の視点702との間に表示されることになる。このような画像を表示することで、超音波断面607と病変1201との位置関係を把握しながら超音波断層画像501を撮影することが可能になる。
【0097】
[その他の実施形態]
その他、上述の実施形態において、ユーザは、キーボード217の特定のキーを押下する操作等により、(a)表示された超音波断層画像のオン/オフ、(b)超音波断層画像を重畳表示するボリューム画像の切り替え、(c)超音波断層画像の位置を画面上でずらす処理、をそれぞれ行うことができる。これにより、注目位置に応じて配置された超音波断層画像が診断者にとって望ましいものではなかった場合に診断者にとって好ましい表示態様へと修正することができる。また超音波断層画像とともにMRI断面画像も重畳表示されている場合には、(d)MRI断面画像と超音波断層画像を個別にまたは一括でオン/オフ、(e)MRI断面画像と超音波断層画像とで重畳の対象とするボリューム画像を交換する処理、(f)MRI断面画像と超音波断層画像とを個別にまたは一括で表示位置を変更することができる。これによってMRI断面画像の表示態様に関しても超音波断層画像の表示態様と同様に変更することができる。
また、本発明は、以下の処理を実行することによっても実現される。
即ち、上述した実施形態の機能を実現するソフトウェア(プログラム)を、ネットワーク又は各種記憶媒体を介してシステム或いは装置に供給し、そのシステム或いは装置のコンピュータ(またはCPUやMPU等)がプログラムを読み出して実行する処理である。
このプログラム及び当該プログラムを記憶したコンピュータ読み取り可能な記録媒体は、本発明に含まれる。
【0098】
なお、上述した本発明の実施形態は、何れも本発明を実施するにあたっての具体化の例を示したものに過ぎず、これらによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。即ち、本発明はその技術思想、又はその主要な特徴から逸脱することなく、様々な形で実施することができる。
【符号の説明】
【0099】
100 画像処理装置、110 医用画像撮影装置、120 超音波断層画像撮影装置、130 位置姿勢計測装置、1001 医用画像取得部、1002 超音波断層画像取得部、1003 位置姿勢計測値取得部、1004 切断面算出部、1005 分割三次元画像生成部、1006 断面画像生成部、1007 重畳画像生成部、1008 画像表示部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象物体の三次元画像を取得する三次元画像取得手段と、
前記三次元画像とは異なる前記対象物体の断層画像を取得する断層画像取得手段と、
前記三次元画像における前記断層画像の断面を算出する算出手段と、
前記三次元画像を前記断面で分割し、当該分割した2つの分割三次元画像のうち、一方の分割三次元画像の前記断面を第1の視点から見た第1のレンダリング画像を生成するとともに、他方の分割三次元画像の前記断面を前記第1の視点とは異なる第2の視点から見た第2のレンダリング画像を生成するレンダリング画像生成手段と、
前記三次元画像の前記断面における断面画像を生成する断面画像生成手段と、
前記第1のレンダリング画像の前記断面の対応する位置に前記断層画像を重畳するとともに、前記第2のレンダリング画像の前記断面に前記断面画像を重畳する重畳手段と
を有することを特徴とする画像処理装置。
【請求項2】
前記重畳手段は、前記第1のレンダリング画像の前記断面に前記断面画像を更に重畳し、その後、前記第1のレンダリング画像の前記断面の対応する位置に前記断層画像を重畳することを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項3】
前記他方の分割三次元画像における内部構造データを取得する内部構造データ取得手段と、
前記第1のレンダリング画像の前記断面における手前領域に前記内部構造データに基づく内部構造を描画する描画手段と
を更に有することを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項4】
前記第1の視点は、前記一方の分割三次元画像の前記断面を見せる位置に設定され、前記第2の視点は、前記他方の分割三次元画像の前記断面を見せる位置に設定されることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の画像処理装置。
【請求項5】
対象物体の三次元画像を取得する三次元画像取得ステップと、
前記三次元画像とは異なる前記対象物体の断層画像を取得する断層画像取得ステップと、
前記三次元画像における前記断層画像の断面を算出する算出ステップと、
前記三次元画像を前記断面で分割し、当該分割した2つの分割三次元画像のうち、一方の分割三次元画像の前記断面を第1の視点から見た第1のレンダリング画像を生成するとともに、他方の分割三次元画像の前記断面を前記第1の視点とは異なる第2の視点から見た第2のレンダリング画像を生成するレンダリング画像生成ステップと、
前記三次元画像の前記断面における断面画像を生成する断面画像生成ステップと、
前記第1のレンダリング画像の前記断面の対応する位置に前記断層画像を重畳するとともに、前記第2のレンダリング画像の前記断面に前記断面画像を重畳する重畳ステップと
を有することを特徴とする画像処理方法。
【請求項6】
対象物体の三次元画像を取得する三次元画像取得ステップと、
前記三次元画像とは異なる前記対象物体の断層画像を取得する断層画像取得ステップと、
前記三次元画像における前記断層画像の断面を算出する算出ステップと、
前記三次元画像を前記断面で分割し、当該分割した2つの分割三次元画像のうち、一方の分割三次元画像の前記断面を第1の視点から見た第1のレンダリング画像を生成するとともに、他方の分割三次元画像の前記断面を前記第1の視点とは異なる第2の視点から見た第2のレンダリング画像を生成するレンダリング画像生成ステップと、
前記三次元画像の前記断面における断面画像を生成する断面画像生成ステップと、
前記第1のレンダリング画像の前記断面の対応する位置に前記断層画像を重畳するとともに、前記第2のレンダリング画像の前記断面に前記断面画像を重畳する重畳ステップと
をコンピュータに実行させるためのプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2013−48688(P2013−48688A)
【公開日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−187808(P2011−187808)
【出願日】平成23年8月30日(2011.8.30)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】