説明

画像処理装置、画像形成装置、画像処理方法およびプログラム

【課題】 マルチヘッドあるいはマルチパス型の画像形成装置において、バンディングや
色むらの発生を低減する画像処理技術を提供すること。
【解決手段】 本発明は、データ上単一のドットに対してa個の印刷ヘッドを用いてb回
の走査により(a、bはいずれも自然数で、少なくとも一方は2以上)画像形成を行う画
像形成手段に接続する接続手段と、複数のドットの階調を示す画像データを記憶する画像
記憶手段と、前記画像記憶手段に記憶された画像データのうち処理対象ドットの位置に応
じて定められる分配率に従って、その処理対象ドットの階調値をn個(n=a×b)に分
配する画像分配手段と、前記画像分配手段により分配された画像データを、それぞれ異な
る印刷ヘッドに対して、またはそれぞれ異なる走査に対して出力する出力手段とを有する
画像処理装置を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2重の印刷ヘッドを有する画像形成装置、あるいはマルチパス型の画像形成
装置において、バンディングの発生を抑制する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェットプリンタ等、液滴吐出機構を有する画像形成装置において、印刷時にい
わゆるバンディング、色むら、擬似輪郭が発生することが知られている。これはインクの
液滴を吐出するノズルの設置位置、ノズルから吐出されるインク液滴の大きさ等、ノズル
の特性のばらつきに起因するものである。これは次のような理由による。インクジェット
プリンタは一般に複数のノズルを有している。複数のノズルのうち、一定数のノズルはヘ
ッドブロックと呼ばれる部材に設置される。このヘッドブロックを複数接合することによ
り印刷ヘッドが構成される。印刷ヘッドにおいて、理想的にはすべてのノズルが均一な間
隔で一列に配列されていることが望ましい。しかし、現実には製造技術上の問題からノズ
ルの間隔には一定のばらつきが存在する。また、2つのヘッドブロックの接合部における
接合の精度にも限界がある。したがって、単一の印刷ヘッドにおいてもノズル間隔には一
定のばらつきが存在する。
【0003】
このような印刷ヘッドを用いて印刷を行うと、ヘッドから吐出されたインクは、ノズル
間隔のばらつきに起因して着弾位置にばらつきが発生する。すなわち、用紙上に形成され
る画像(ドット)は、ノズル間隔のばらつきを反映したものとなってしまう。特にライン
ヘッド型インクジェットプリンタのような用紙送り方向のみの1パス型の画像形成装置に
おいては、このようなノズル間隔のばらつきはいわゆるバンディング現象を引き起こすこ
ととなる。
【0004】
1パス型の画像形成装置におけるバンディングの発生を抑制するための技術として、印
刷ヘッドを2重にする技術がある。2重の印刷ヘッドを有する画像形成装置における画像
処理方法として、例えば特許文献1に記載の技術がある。特許文献1は、処理対象画像を
一定の比率に分配し、分配した画像をそれぞれ別の印刷ヘッドを用いて画像形成する技術
を開示している。
【特許文献1】特開2001−150700号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1に記載の技術はノズル位置の誤差によるレジストレーションの変化
を抑えることを目的としており、バンディングの低減を目的としたものではない。また処
理対象画像を複数のヘッドに分配する際の分配比は固定であり、バンディングや色むらの
低減には効果が限られているという問題があった。
【0006】
本発明は上述の事情に鑑みてなされたものであり、マルチヘッドあるいはマルチパス型
の画像形成装置において、バンディングや色むらの発生を低減する画像処理技術を提供す
ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述の課題を解決するため、本発明は、データ上単一のドットに対してa個の印刷ヘッ
ドを用いてb回の走査により(a、bはいずれも自然数で、少なくとも一方は2以上)画
像形成を行う画像形成手段に接続する接続手段と、複数のドットの階調を示す画像データ
を記憶する画像記憶手段と、前記画像記憶手段に記憶された画像データのうち処理対象ド
ットの位置に応じて定められる分配率に従って、その処理対象ドットの階調値をn個(n
=a×b)に分配する画像分配手段と、前記画像分配手段により分配された画像データを
、それぞれ異なる印刷ヘッドに対して、またはそれぞれ異なる走査に対して出力する出力
手段とを有する画像処理装置を提供する。
この画像処理装置によれば、同一のドットに対して2以上の印刷ヘッドあるいは2回以
上の走査により画像形成が行われる。また、2つのノズルへの階調値の分配率はドットの
位置により変化する。したがって、印刷ヘッドの製造上の誤差に起因するバンディングや
色むらの発生を抑制することができる。
【0008】
好ましい態様において、前記分配率が、前記画像形成手段の走査方向あるいは走査方向
と直交する方向における処理対象ドットの位置に応じて定められてもよい。
この態様において、前記分配率が、処理対象ドットの位置に対して直線的に変化しても
よい。
あるいはこの態様において、前記分配率が、処理対象ドットの位置に対して周期性を有
するよう変化してもよい。このとき、前記分配率が、処理対象ドットの位置に対して正弦
波的に変化してもよい。あるいは、前記分配率が、処理対象ドットの位置に対して変化す
る高周波および低周波の合成波的に変化してもよい。
【0009】
別の好ましい態様において、この画像処理装置は、前記出力手段により出力された画像
データの各々に対して異なる態様の2値化処理をおこなうn個の2値化処理手段をさらに
有してもよい。
【0010】
また、本発明は、上記いずれかの態様の画像処理装置を有する画像形成装置を提供する
。この態様において、前記画像形成装置がラインヘッド型インクジェットプリンタであっ
てもよい。
【0011】
また、本発明は、データ上単一のドットに対してa個の印刷ヘッドを用いてb回の走査
により(a、bはいずれも自然数で、少なくとも一方は2以上)画像形成を行う画像形成
装置またはこの画像形成装置に接続されたコンピュータ装置における画像処理方法であっ
て、複数のドットの階調を示す画像データを記憶する画像記憶ステップと、前記画像デー
タのうち処理対象ドットの位置に応じて定められる分配率に従って、その処理対象ドット
の階調値をn個(n=a×b)に分配する画像分配ステップと、前記画像分配ステップに
おいて分配された画像データを、それぞれ異なる印刷ヘッドに対して、またはそれぞれ異
なる走査に対して出力する出力ステップとを有する画像処理方法を提供する。
さらに、本発明は、データ上単一のドットに対してa個の印刷ヘッドを用いてb回の走
査により(a、bはいずれも自然数で、少なくとも一方は2以上)画像形成を行う画像形
成装置に接続されたコンピュータ装置に、上述の画像処理方法を実行させるプログラムを
提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、図面を参照して本発明の一実施形態について説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る画像形成装置10の機能構成を示すブロック図であ
る。画像形成装置10は、印刷ヘッド1および2の2つの印刷ヘッドを有している。画像
形成装置10は、入力画像(RGB(赤、緑、青)カラー多値)のデータを、CMYK(
シアン、マゼンタ、イエロー、黒)の色毎にノズルからのインクの吐出を指示するノズル
制御データに変換し、ノズル制御データに従ってインクを吐出し印刷をする装置である。
解像度変換部11は、入力されたカラー画像データを、画像形成装置10で処理可能な解
像度に解像度変換を行う。CMYK色変換部12は、RGB形式の画像データをCMYK
形式の画像データに変換する。画像分配部13は、CMYK形式の画像データを2つの画
像データに分配する。2値化部14は、分配された一方の画像データに対し2値化処理を
行い、個々のノズルからのインク吐出の要否を示すノズル制御データを生成する。2値化
部14は、生成したノズル制御データを印刷ヘッド1に出力する。2値化部15は、分配
された他方の画像データに対し2値化処理を行い、ノズル制御データを生成する。2値化
部15は、生成したノズル制御データを印刷ヘッド2に出力する。印刷ヘッド1、2はノ
ズル制御データに従って印刷処理を行う。
【0013】
図2は、画像形成装置10のハードウェア構成を示すブロック図である。本実施形態に
おいて、画像形成装置10はラインヘッド型インクジェットプリンタである。CPU(Ce
ntral Processing Unit)21は、ROM(Read Only Memory)22に記憶されている印
刷処理プログラムを読み出して実行する。RAM(Random Access Memory)23は、CP
U21がプログラムを実行する際の作業エリアとして機能する。I/F24は、他の機器
との間でデータや制御信号の送受信を行うためのインターフェースである。画像形成装置
10は例えば、パーソナルコンピュータ(以下、「PC」)やデジタルカメラ等の電子機
器からI/F24を介して画像データを受け取ることができる。RAM23はまた、I/
F24を介して受信したデータを記憶する。画像形成部25は、CPU21の制御下で、
ノズル制御データに従って用紙上に画像形成を行う。以上の各構成要素は、バス26で相
互に接続されている。CPU21が印刷処理プログラムを実行することにより、画像形成
装置10は、図1に示される各機能構成要素に相当する機能を具備する。
【0014】
画像形成部25は、図2に示すように、さらに以下で説明する構成を有している。ライ
ンヘッド31は、インクを吐出するノズルを複数有する印刷ヘッドである。ノズルは、圧
電体により液滴を吐出するピエゾ式のもの、加熱により吐出する加熱式のもの等、いかな
る構造のノズルでもよい。ラインヘッド31は、画像形成装置10が印刷可能な用紙の最
大幅以上の大きさを有している。インクタンク32はノズルにインクを供給するものであ
って、CMYKの色毎に設けられている。ページバッファ37は、画像1ページ分のノズ
ル制御データを記憶するメモリである。ヘッド駆動回路33は、制御部34の制御下で、
ラインヘッド31に搭載された複数のノズルのうち、指定されたノズルからインクの液滴
を吐出させるための制御信号をラインヘッド31に出力する。このように、指定されたノ
ズルから、用紙に対しインクの液滴が吐出される。ノズルから吐出されたインクの液滴は
、用紙上にドットを形成する。以下、説明の便宜上、ノズルからインクの液滴を吐出する
ことを「ドットのオン」、ノズルからインクの液滴を吐出しないことを「ドットのオフ」
と表現する。例えば「ドットのオン/オフを指定するデータ」とは、指定されたノズルに
ついてインクの液滴を吐出するか吐出しないかを指定するデータを意味する。
【0015】
ラインヘッド31は用紙幅以上のサイズを有しているので、1ライン分のドットを形成
することができる。モータ35は用紙を所定方向に移動(紙送り)させるモータである。
モータ駆動回路36は、制御部34の制御下でモータに駆動信号を出力する。モータ35
が用紙を1ライン分移動させると、次のラインの描画が行われる。画像形成装置10は、
このようにして1方向の走査(用紙の紙送り)のみで1枚の用紙に画像形成を行うことが
できる。
【0016】
図3は、ラインヘッド31の構造を示す模式図である。ラインヘッド31は、印刷ヘッ
ド1および印刷ヘッド2の2つのラインヘッドを有する。印刷ヘッド1および2はそれぞ
れ、CMYKの各色のインクを吐出する4つの印刷ヘッドから構成される。CMYK各色
の印刷ヘッドはそれぞれ、用紙幅以上のドットラインを形成するのに十分な数のノズルを
有している。印刷ヘッド1および2は、ノズルの列が紙送り方向(図3中A方向)と直行
するように配置されている。
【0017】
図4は、ラインヘッド31により形成されるドットの様子を示す模式図である。図4(
a)は、ラインヘッド31のうち印刷ヘッド1により形成されるドット(図中黒丸)を示
す。図4(b)は、印刷ヘッド1に加え印刷ヘッド2により形成されるドット(図中白抜
きの丸)を示す。印刷ヘッド1および2により形成されるドットは、用紙上のほぼ同一の
位置に形成される。理想的には、印刷ヘッド1および2により形成されるドットは用紙上
の同一の位置に形成されることが望ましいが、現実的には製造技術上印刷ヘッド1および
2の組み付け位置にはある程度の誤差が存在する。したがって、印刷ヘッド1および2に
より形成されるドットは、用紙上の完全に同一の位置ではなく「ほぼ」同一の位置に形成
される。
【0018】
図5は、画像形成装置10の動作を示すフローチャートである。画像形成装置10の図
示せぬ電源が投入されると、CPU21は、ROM22から印刷処理プログラムを読み出
して実行する。印刷処理プログラムを実行すると、CPU21は、画像データの入力待ち
状態となる。I/F24を介して画像データを受信すると、CPU21は入力画像データ
をRAM23に記憶する(ステップS100)。本実施形態において、入力画像データは
RGBカラー多値の画像データである。また、画像形成装置10はCMYK4色のインク
により画像形成を行うインクジェットプリンタである。したがって、画像形成装置10は
、RGBからCMYKへと画像データの色空間を変換する必要がある。また、入力される
画像データは画素ごとに階調値を有しているが、画像形成装置10のノズルから吐出され
るインクは、ドットのオン/オフ(ドットを打つ/打たない)の2階調のみで中間階調を
表現することができない。したがって画像形成装置10においては、画像データの1画素
に、m×mのドットマトリクスを対応させ、ドットマトリクスに描画されるドットの数で
階調表現を行っている。したがって、入力画像データをドットのオン/オフを指定するデ
ータに変換する必要がある。このために、以下で説明するように、画像データの解像度を
、ノズルの数に相当する解像度に変換する処理、および、多階調の画像データをドットの
オン/オフを指定する2階調のデータに変換する処理を行う必要がある。
【0019】
続いてCPU21は、入力画像データの解像度を判断する。CPU21は入力画像デー
タの解像度が画像形成装置10で処理可能な解像度と異なる場合には、入力画像データを
、画像形成装置10が処理可能な解像度とする解像度変換処理を行う(ステップS110
)。CPU21は、解像度変換後の画像データをRAM23に記憶する。続いてCPU2
1は、解像度変換後の画像データを画像形成装置10の色空間に適合させるため、RGB
形式の画像データをCMYK形式の画像データに変換する(ステップS120)。CPU
21は色変換後の画像データをRAM23に記憶する。続いてCPU21は、色変換後の
画像データに対し画像分配処理を行う(ステップS130)。画像分配処理の詳細につい
ては後述する。画像分配処理後、CPU21は、分配された画像データの各々に対してデ
ィザマトリクス法、誤差拡散法等による2値化(量子化)処理を行う(ステップS140
−1、2)。CPU21は、2値化した画像データを印刷ヘッド1および2に出力する(
ステップS150−1、2)。印刷ヘッド1および2は、2値画像データに従って画像形
成処理を行う。
【0020】
図6は、ステップS130における画像分配処理の詳細を示すフローチャートである。
画像分配処理は、CMYKの各色の画像データについて、1ドットずつ順番に行われる。
まず、CPU21は、処理対象となるドットを特定する(ステップS200)。例えば、
ドットの座標を示す変数をRAM23に記憶し、この変数に従ってCPU21は処理対象
ドットを特定する。続いてCPU21は、処理対象ドットにおける階調値の分配率を取得
する(ステップS210)。階調値の分配率は、処理対象ドットの位置によって変化する
。ROM22は、処理対象ドットの位置と階調値の分配率とを対応付けるテーブルあるい
は関数を記憶している。CPU21は、ROM22に記憶されたテーブルあるいは関数を
用いて、処理対象ドットの位置からそのドットにおける階調値の分配率を取得する。ここ
で、処理対象ドットの位置に応じて階調値を変化させる態様は種々のものが考えられる。
例えば、階調値の分配率をドットの位置に応じて直線的に(グラデーション状に)変化さ
せる態様がある。あるいは、正弦波等の周期性を有する関数に従って階調値の分配率を変
化させてもよい。これらの態様の具体例については後述する。
【0021】
次に、CPU21は、取得した分配率に従って処理対象ドットの階調値を分配する(ス
テップS220)。すなわち、処理対象ドットの階調値に、取得した分配率を乗じて印刷
ヘッド1および2に対する画像データの階調値を算出する。CPU21は、あらかじめR
AM23に分配画像データの記憶領域を確保している。CPU21は、分配された階調値
を出力する(ステップS230)。すなわち、CPU21は、分配された階調値をそれぞ
れの画像データの記憶領域に記憶する。
【0022】
以上の処理を行うと、CPU21は、処理対象画像データの全てのドットについて処理
が完了したか判断する(ステップS240)。処理が完了していない場合(ステップS2
40:NO)、CPU21は、すべてのドットについて処理が完了するまで、ステップS
200〜S240の処理を繰り返し実行する。全てのドットについて処理が完了した場合
(ステップS240:YES)、CPU21は画像分配処理を終了する。CMYK形式の
画像データの場合は、CPU21は以上の処理をCMYKの各色について行う。
【0023】
図7(a)は、階調値の分配率をドットの位置に応じて直線的に(グラデーション状に
)変化させる態様を説明する図である。図7(a)は、紙送り方向(図中A方向)と直行
する向きに階調値を変化させる態様を示している。ここで、画像の左端においては階調値
を印刷ヘッド1に80%、印刷ヘッド2に20%分配し、右端においては印刷ヘッド1に
20%、印刷ヘッド2に80%分配している。左端と右端の中間部分においては、ドット
位置に応じて分配率が直線的に変化する。図7(b)は、階調値の分配率の具体例を示す
図である。ここで、説明を簡単にするために、紙送り方向(図中A方向)と直行する方向
に7ドットの大きさを有する画像について考える。例えば、画像中央部のドット(ドット
位置「4」のドット)においては、印刷ヘッド1および2に共に50%の階調値が分配さ
れる。ROM22は、処理対象ドットの位置から階調値の分配率を取得するため、図7(
b)に示されるテーブルを記憶していてもよい。あるいは、ドット位置から階調値の分配
率を算出する関数を記憶していてもよい。ROM22がテーブルを記憶する場合、そのテ
ーブルは、必ずしもすべてのドットについての分配率を記憶しなくてもよい。例えば、紙
送り方向(図中A方向)と直行する方向に70ドットの大きさを有する画像について図7
(b)に示されるテーブルを記憶しておき、分配率が規定されていないドットについては
線形補間することとしてもよい。
【0024】
図8は、図7に示される態様による階調値分配の具体例を示す図である。図8において
、処理対象の画像データDは、7×3ドットの大きさを有する、8ビット(256階調)
の画像データである。図8中Aは紙送り方向を示している。処理対象の画像データDは、
印刷ヘッド1に対する画像データD1および印刷ヘッド2に対する画像データD2の2つ
の画像データに分配される。分配率は、図7(b)に示されるものを使用している。図8
に示されるように、画像データD1およびD2は、処理対象の画像データDを、ドットの
位置によって定められる分配率に従って分配したものである。したがって、画像データD
1およびD2を足し合わせると、元の処理対象の画像データDが得られる。
【0025】
図9(a)は、階調値の分配率をドットの位置に応じて正弦波的に変化させる態様を説
明する図である。図9(a)は、紙送り方向(図中A方向)と直行する向きに階調値の分
配率を変化させる態様を示している。図9(a)に示されるように、印刷ヘッド1の階調
値と印刷ヘッド2の階調値とは逆位相の正弦波の関係にある。図9(b)は、階調値の分
配率の具体例を示す図である。ここで、説明を簡単にするために、紙送り方向(図中A方
向)と直行する方向に7ドットの大きさを有する画像について考える。例えば、印刷ヘッ
ド1に分配される階調値は、左端のドットから順に30、80、60、20、30、80
、60と周期的に変化し、印刷ヘッド2に分配される階調値はそれと逆位相で周期的に変
化する。この態様においても、先ほど説明した階調値を直線的に変化させる態様と同様に
、ROM22は、処理対象ドットの位置から階調値の分配率を取得するため、図9(b)
に示されるテーブルを記憶していてもよい。あるいは、ドット位置に対して階調値の分配
率を与える正弦関数を記憶していてもよい。ROM22がテーブルを記憶する場合、必ず
しもすべてのドットについての分配率を記憶せず、分配率が規定されていないドットにつ
いては線形補間することとしてもよい。
【0026】
図10は、図9に示される態様による階調値分配の具体例を示す図である。図10にお
いて、処理対象の画像データDは、7×3ドットの大きさを有する、8ビット(256階
調)の画像データである。図10中Aは紙送り方向を示している。処理対象の画像データ
Dは、印刷ヘッド1に対する画像データD1および印刷ヘッド2に対する画像データD2
の2つの画像データに分配される。分配率は、図9(b)に示されるものを使用している
。図10に示されるように、画像データD1およびD2は、処理対象の画像データDを、
ドットの位置によって定められる分配率に従って分配したものである。したがって、画像
データD1およびD2を足し合わせると、元の処理対象の画像データDが得られる。
【0027】
図11は、階調値の分配率をドットの位置に応じて正弦波的に変化させる態様において
、形成される画像を示す図である。ここでは、説明を簡単にするため、すべてのドットの
階調値が同一である画像(いわゆるベタ画像)を形成する態様について説明する。図11
(a)は印刷ヘッド1により形成される画像を、図11(b)は印刷ヘッド2により形成
される画像を、図11(c)は印刷ヘッド1および2の双方により形成される画像を示す
。なお、図11(a)および(b)は説明のために用いる図であって、画像形成装置10
のように2重の印刷ヘッドを有するインクジェットプリンタにおいて、現実にそれぞれの
画像が単独で形成されるわけではない。図11(a)に示されるように、印刷ヘッド1に
より形成される画像は、紙送り方向(図中A方向)と直行する方向に、正弦波状に階調値
が分配されている。図11(b)に示される印刷ヘッド2により形成される画像は、印刷
ヘッド1により形成される画像と逆位相を有する正弦波状に階調値が分配されている。印
刷ヘッド1により形成される画像と印刷ヘッド2により形成される画像とを合わせると、
図11(c)に示される画像が得られる。
【0028】
以上で説明したように、本発明によれば、印刷ヘッド1および2の2つの印刷ヘッドに
対し、ドットの位置に応じて分配率を変化させた階調値を有する画像データを用いること
により、片方の印刷ヘッドにより発生するバンディングや色むらの階調値がドットの位置
に応じて変化することとなる。したがって、バンディングや色むらが目立ちにくくなり、
高画質の画像を得ることができる。
【0029】
図12は、階調値の分配率の別の実施形態を示す図である。この態様において、階調値
の分配率は図9(a)に示される例と同様に正弦波状に変化する。ここで、図12に示さ
れる態様において、分配率を示す関数は、高周波成分と低周波成分とを合成した合成波と
なっている。例えば、高周波成分の正弦波としてヘッドブロックの長さと同程度の波長を
有する波を用い、低周波成分の正弦波として個々のノズルの大きさと同程度の波を用いる
ことができる。このような合成波形を用いることにより、高周波成分によりヘッドブロッ
ク間のばらつきを、低周波成分によりノズル間のばらつきを補償することができる。
【0030】
<変形例>
本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、種々の変形実施が可能である。
上述の実施形態においては、紙送り方向と直行する向きに階調値の分配率を変化させる
態様について説明したが、紙送り方向に階調値の分配率を変化させる態様としてもよい。
【0031】
例えば図7に示される階調値の分配率を直線的に変化させる態様において、端部におけ
る分配率(図7の例では80:20および20:80)は、CMYKの各色について同一
である必要は無い。各色に対して異なったテーブル(関数)を用いて分配率を決定しても
よい。あるいはYに対しては直線的、Mに対しては正弦波的というように、色によって階
調値分配の態様を変化させてもよい。
【0032】
また、図5のステップS140−1およびS140−2において、分配されたデータの
それぞれに対し同一の2値化処理を行う必要は無い。それぞれのデータに対し異なった2
値化処理を行ってもよい。異なる2値化処理の態様としては、例えば、以下の(1)〜(
4)のうちいずれか2つの態様の組み合わせが考えられる。(1)狭い拡散領域を用いた
誤差拡散法、(2)広い拡散領域を用いた誤差拡散処理、(3)網点ディザ法、(4)分
散ディザ法。
【0033】
また、上述の実施形態においては、インクジェットプリンタ等の画像形成装置が上述の
画像処理を行う態様について説明したが、画像処理を行う動作主体は画像形成装置に限定
されるものではない。例えば、画像形成装置にPC等のコンピュータ装置を接続した画像
形成システムにおいて、図5のステップS100〜S140の処理の一部または全部をそ
のコンピュータ装置に実行させてもよい。すなわち、図2に示される構成のうち画像形成
部25以外の構成要素を有するコンピュータ装置に、図5のステップS100〜S140
の処理の一部または全部を実行させてもよい。
【0034】
また、上述の実施形態においては、階調値の分配率を示す関数として、直線的な態様(
図7)、正弦波的な態様(図9)、高周波と低周波の合成波的な態様(図12)について
説明したが、階調値の分配方法はこれらのものに限定されない。例えば、いわゆるノコギ
リ波や矩形波等、正弦波以外の波を用いてもよい。あるいは、いわゆるベジェ曲線、1/
fゆらぎのような関数を用いてもよい。
【0035】
また、上述の実施形態においては、画像形成装置10がラインヘッド型のインクジェッ
トプリンタである態様について説明したが、用紙幅より小さいヘッドを有するマルチパス
型のインクジェットプリンタに本発明を適用してもよい。
また、上述の実施形態においては、画像形成装置10が1色のインクに対して2つの印
刷ヘッドを有する2重ヘッドの構造を有する態様について説明したが、画像形成装置の構
造はこれに限定されるものではない。1つの印刷ヘッドで用紙を2回走査し、1つのドッ
トを2回の走査に分けて画像形成を行う画像形成装置に本発明を適用してもよい。この場
合、上述の実施形態において印刷ヘッド1および2に対して分配した階調値を、1回目の
走査および2回目の走査に対して分配すればよい。
また、上述の実施形態では、ラインヘッド31が印刷ヘッド1および印刷ヘッド2の2
つのヘッドから構成される態様について説明したが、ラインヘッド31が3つ以上のヘッ
ドから構成されてもよい。例えばラインヘッド31が3つのヘッドから構成される場合、
処理対象画像データを3つに分配すればよい。要は、データ上単一のドットに対してa個
の印刷ヘッドを用いてb回の走査により(a、bはいずれも自然数で、少なくとも一方は
2以上)画像形成を行う画像形成装置において、処理対象画像データをn個(n=a×b
)に分配するものであればよい。
【0036】
また、例えば図7に示される階調値の分配率を直線的に変化させる態様において、使用
するテーブル(関数)は処理対象画像のすべてのページに対して同一のものでなくてもよ
い。ROM22に複数のテーブル(関数)を記憶しておき、印刷するページに応じて使用
するテーブル(関数)を切り換えて使用する態様としてもよい。この場合、例えば見開き
の左右ページにおいて階調値の分配率が連続的になるようにテーブル(関数)を選択する
態様としてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明の一実施形態に係る画像形成装置10の機能構成を示すブロック図である。
【図2】画像形成装置10のハードウェア構成を示すブロック図である。
【図3】ラインヘッド31の構造を示す模式図である。
【図4】ラインヘッド31により形成されるドットの様子を示す模式図である。
【図5】画像形成装置10の動作を示すフローチャートである。
【図6】画像分配処理の詳細を示すフローチャートである。
【図7】階調値の分配率を直線的に変化させる態様を説明する図である。
【図8】図7に示される態様による階調値分配の具体例を示す図である。
【図9】階調値の分配率を正弦波的に変化させる態様を説明する図である。
【図10】図9に示される態様による階調値分配の具体例を示す図である。
【図11】図9に示される態様において形成される画像を示す図である。
【図12】階調値の分配率の別の実施形態を示す図である。
【符号の説明】
【0038】
1…印刷ヘッド、2…印刷ヘッド、10…画像形成装置、12…CMYK色変換部、13
…画像分割部、14…2値化部、15…2値化部、21…CPU、22…ROM、23…
RAM、24…I/F、25…画像形成部、26…バス、31…ラインヘッド、32…イ
ンクタンク、33…ヘッド駆動回路、34…制御部、35…モータ、36…モータ駆動回
路、37…ページバッファ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
データ上単一のドットに対してa個の印刷ヘッドを用いてb回の走査により(a、bは
いずれも自然数で、少なくとも一方は2以上)画像形成を行う画像形成手段に接続する接
続手段と、
複数のドットの階調を示す画像データを記憶する画像記憶手段と、
前記画像記憶手段に記憶された画像データのうち処理対象ドットの位置に応じて定めら
れる分配率に従って、その処理対象ドットの階調値をn個(n=a×b)に分配する画像
分配手段と、
前記画像分配手段により分配された画像データを、それぞれ異なる印刷ヘッドに対して
、またはそれぞれ異なる走査に対して出力する出力手段と
を有する画像処理装置。
【請求項2】
前記分配率が、前記画像形成手段の走査方向あるいは走査方向と直交する方向における
処理対象ドットの位置に応じて定められることを特徴とする請求項1に記載の画像処理装
置。
【請求項3】
前記分配率が、処理対象ドットの位置に対して直線的に変化することを特徴とする請求
項2に記載の画像処理装置。
【請求項4】
前記分配率が、処理対象ドットの位置に対して周期性を有するよう変化することを特徴
とする請求項2に記載の画像処理装置。
【請求項5】
前記分配率が、処理対象ドットの位置に対して正弦波的に変化することを特徴とする請
求項4に記載の画像処理装置。
【請求項6】
前記分配率が、処理対象ドットの位置に対して変化する高周波および低周波の合成波的
に変化することを特徴とする請求項4に記載の画像処理装置。
【請求項7】
前記出力手段により出力された画像データの各々に対して異なる態様の2値化処理をお
こなうn個の2値化処理手段をさらに有する請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれかの項に記載の画像処理装置を有する画像形成装置。
【請求項9】
前記画像形成装置がラインヘッド型インクジェットプリンタであることを特徴とする請
求項8に記載の画像形成装置。
【請求項10】
データ上単一のドットに対してa個の印刷ヘッドを用いてb回の走査により(a、bは
いずれも自然数で、少なくとも一方は2以上)画像形成を行う画像形成装置またはこの画
像形成装置に接続されたコンピュータ装置における画像処理方法であって、
複数のドットの階調を示す画像データを記憶する画像記憶ステップと、
前記画像データのうち処理対象ドットの位置に応じて定められる分配率に従って、その
処理対象ドットの階調値をn個(n=a×b)に分配する画像分配ステップと、
前記画像分配ステップにおいて分配された画像データを、それぞれ異なる印刷ヘッドに
対して、またはそれぞれ異なる走査に対して出力する出力ステップと
を有する画像処理方法。
【請求項11】
データ上単一のドットに対してa個の印刷ヘッドを用いてb回の走査により(a、bは
いずれも自然数で、少なくとも一方は2以上)画像形成を行う画像形成装置またはこの画
像形成装置に接続されたコンピュータ装置に、
複数のドットの階調を示す画像データを記憶する画像記憶ステップと、
前記画像データのうち処理対象ドットの位置に応じて定められる分配率に従って、その
処理対象ドットの階調値をn個(n=a×b)に分配する画像分配ステップと、
前記画像分配ステップにおいて分配された画像データを、それぞれ異なる印刷ヘッドに
対して、またはそれぞれ異なる走査に対して出力する出力ステップと
を実行させるプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2006−231736(P2006−231736A)
【公開日】平成18年9月7日(2006.9.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−50339(P2005−50339)
【出願日】平成17年2月25日(2005.2.25)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】