画像処理装置、X線コンピュータ断層撮像装置及び画像処理プログラム
【課題】各部位それぞれの動きがどのように動いているのか、容易に把握することのできる医用画像を用いた臓器動態の画像処理装置、X線コンピュータ断層撮像装置及び画像処理プログラムを提供することである。
【解決手段】被検体の所定部位を撮像することで取得された複数の時相に対応する複数のボリュームデータを記憶する記憶ユニットと、前記複数のボリュームデータ間の位置合わせを行うことで、前記各ボリュームデータに含まれる各ボクセルにつき、空間的な移動ベクトルを算出する算出ユニットと、前記各ボクセルについての前記移動ベクトルを用いて、前記診断部位の局所的な動きを示す画像を生成する画像生成ユニットと、前記診断部位の局所的な動きを示す画像を表示する表示ユニットと、を具備する画像処理装置である。
【解決手段】被検体の所定部位を撮像することで取得された複数の時相に対応する複数のボリュームデータを記憶する記憶ユニットと、前記複数のボリュームデータ間の位置合わせを行うことで、前記各ボリュームデータに含まれる各ボクセルにつき、空間的な移動ベクトルを算出する算出ユニットと、前記各ボクセルについての前記移動ベクトルを用いて、前記診断部位の局所的な動きを示す画像を生成する画像生成ユニットと、前記診断部位の局所的な動きを示す画像を表示する表示ユニットと、を具備する画像処理装置である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像処理装置、X線コンピュータ断層撮像装置及び画像処理プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
画像処理装置、X線コンピュータ断層撮像装置及び画像処理プログラムに関し、より詳細には、X線コンピュータ断層撮影装置(X線CT装置)、磁気共鳴イメージング装置(MRI装置)等を用いて経時的に得られたデータから、各位相間の動き成分を求め、それらの結果を観察する医用画像を用いた臓器動態の画像処理装置、X線コンピュータ断層撮像装置及び画像処理プログラムに関するものである。
【0003】
X線コンピュータ断層撮影装置(X線CT装置)、磁気共鳴イメージング装置(MRI装置)等を用いて、例えば肺野に於ける複数の呼吸位相の画像データを取得し、組織の動態を確認して機能解析する方法は、疾患の診断及び早期発見の観点から非常に有効である。また、自動診断(CAD)の観点からも、機能解析結果は有効な方法である。
【0004】
前述した動態を把握して定量的な値として算出する方法は、一般的にも行われてきており、現在のCT、MRIのように広い領域を時系列でスキャンできる装置にとって注目されている。
【0005】
更に、従来の結果観察方法として、カラーマップや、断面変換(MPR)画像、3次元(3D)画像を動画で評価する方法がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、前述したカラーマップは、全ての時間情報を基に作られたデータであり、表示時にはその時間毎の情報が失われている。また、MPRや3D画像の動画では、被検体の各部位それぞれの動きがどのように動いているのか、把握しづらいという問題があった。
【0007】
上記実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、各部位それぞれの動きがどのように動いているのか、容易に把握することのできる医用画像を用いた臓器動態の画像処理装置、X線コンピュータ断層撮像装置及び画像処理プログラムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記目的を達成するため、次のような手段を講じている。
【0009】
請求項1に記載の発明は、被検体の所定部位を撮像することで取得された複数の時相に対応する複数のボリュームデータを記憶する記憶ユニットと、前記複数のボリュームデータ間の位置合わせを行うことで、前記各ボリュームデータに含まれる各ボクセルにつき、空間的な移動ベクトルを算出する算出ユニットと、前記各ボクセルについての前記移動ベクトルを用いて、前記診断部位の局所的な動きを示す画像を生成する画像生成ユニットと、前記診断部位の局所的な動きを示す画像を表示する表示ユニットと、を具備する画像処理装置である。
【発明の効果】
【0010】
各部位それぞれの動きがどのように動いているのか、容易に把握することのできる医用画像を用いた臓器動態の画像処理装置、X線コンピュータ断層撮像装置及び画像処理プログラムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】図1は、一実施形態に係るX線コンピュータ断層撮影装置の構成を示したブロック図である。
【図2】図2は、図1のX線CT装置1に於いて造影された血管について処理する場合の動作について説明するためのフローチャートである。
【図3】図3は、基準ボリュームを用いた位置合わせの概念を示した図である。
【図4A】図4Aは、動きベクトルの算出方法について説明するための図である。
【図4B】図4Bは、動きベクトルの算出方法について説明するための図である。
【図4C】図4Cは、動きベクトルの算出方法について説明するための図である。
【図5A】図5Aは、結果画像の例を示した図である。
【図5B】図5Bは、結果画像の例を示した図である。
【図6】図6は、第2の実施形態に係る動き情報の映像化処理の流れを示したフローチャートである。
【図7】図7は、それぞれステップS5aにおいて生成され表示されるベクトル場画像の例を示した図である。
【図8】図8は、それぞれステップS5aにおいて生成され表示されるベクトル場画像の例を示した図である。
【図9】図9は、第3の実施形態に係る動き情報の映像化処理の流れを示したフローチャートである。
【図10】図10は、ステップS5bにおいて生成され表示されるワイヤーフレーム画像の例を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して実施形態を説明する。なお、以下の説明においては、X線コンピュータ断層撮影装置を例とする実施形態について説明する。しかしながら、当該例に拘泥されず、他の医用画像診断装置(例えば、磁気共鳴イメージング装置、超音波診断装置、X線診断装置、核医学診断装置)、医用画像診断装置によって取得される医用画像を用いた画像処理装置に関する実施形態も、実現可能である。
【0013】
図1は、一実施形態に係るX線コンピュータ断層撮影装置の構成を示したブロック図である。
【0014】
尚、X線コンピュータ断層撮影装置1には、X線管とX線検出器とが一体として被検体の周囲を回転する回転/回転方式と、リング上に多数のX線検出器が配置され、X線管のみが被検体の周囲を回転する固定/回転方式とがあり、何れの方式にも適用可能である。回転/回転方式に関して、一対のX線管とX線検出器とが回転フレームに搭載された一管球型と、X線管とX線検出器との対が回転フレームに複数搭載されたいわゆる多管球型とがあるが、何れの型でも適用可能である。X線検出器に関して、被検体を透過したX線をシンチレータ等の蛍光体で光に変換してからフォトダイオード等の光電変換素子で電荷に変換する間接変換形と、X線による半導体内の電子正孔対の発生及びその電極への移動すなわち光導電現象を利用した直接変換形とがあるが、いずれの形を採用してもよい。
【0015】
図1に於いて、架台10は、X線管11を有する。X線管11は、高電圧発生装置からスリップリング機構18を経由して管電圧の印加及びフィラメント電流の供給を受け、コーンビーム形のX線を発生する。X線管11は、回転軸(Z軸)を中心に回転自在に支持される回転フレーム12に、X線検出器13と共に搭載される。
【0016】
呼吸センサ17は、被検体の呼吸の動きを検出するために設けられている。尚、呼吸センサ17は、検査対象に応じて、被検体の心臓の動き(心拍)の時相を検出する心電計または拍動センサに置換されることができる。
【0017】
X線検出器13は、X線管11から被検体を透過したX線を検出する。X線検出器13は、コーンビームに対応するマルチスライス型または2次元アレイ型である。すなわち、X線検出器13は、回転軸にそって並列される複数のX線検出素子列を有する。各X線検出素子列は、回転軸RAに直交する方向に沿って一列に配列された複数のX線検出素子を有する。
【0018】
X線検出器13の出力は、チャンネル毎にデータ収集回路(DAS)14によって増幅され、デジタル信号に変換され、そして例えば非接触型のデータ伝送装置15を介して前処理装置16に送られ、そこで感度補正等の補正処理を受け、再構成処理の直前段階にあるいわゆる投影データとして投影データ/画像データ記憶部23に、それを収集した時期に対応する呼吸時相コードと共に記憶される。スキャンコントローラ20は、データ収集(スキャン)のために、回転駆動部、高電圧発生装置19、データ収集回路14、投影データ/画像データ記憶部23等を制御する。
【0019】
再構成部24は、ダイナミックスキャニングにより繰り返し収集された投影データに基づいて、呼吸時相の異なる複数の2次元または3次元の画像のデータを再構成する。呼吸時相の異なる複数の2次元又は3次元の画像のデータは、投影データ/画像データ記憶部23に、その再構成処理に用いた投影データのセットの例えば中心時相に対応する呼吸時相コードと共に記憶される。
【0020】
3次元の画像再構成処理法としては、典型的には、フェルドカンプ法(Feldkamp method)である。フェルドカンプ法は、周知の通り、ファンビームコンボリューション・バックプロジェクション法を基にした近似的再構成法であり、コンボリューション処理は、コーン角が比較的小さいことを前提として、データをファン投影データと見なして行われる。しかし、バックプロジェクション処理は、実際のレイ(ray)に沿って行われる。つまり、投影データにZ座標に依存した重みをかけ、その重みをかけた投影データに、ファンビーム再構成と同じ再構成関数をコンボリューションし、そのデータをコーン角を持つ斜めの実際のレイに沿って逆投影する、という手順で画像が再構成される。
【0021】
前述したように、本実施形態に係るX線CT装置1は画像処理装置を有する。画像処理装置は、上記投影データ/画像データ記憶部23と共に、特定位相決定部25、表示処理部26、基準点決定部27、関心点決定部28、ベクトル処理部29、肺機能指標計算部30、画像処理部31を有して構成される。
【0022】
特定位相決定部25は、投影データと共に記憶された流量時間曲線の例えば極大点と極小点の特定により最大吸気時相と最大呼気時相とを決定する。基準点決定部27は、前記最大吸気時相の画像と最大呼気時相の画像それぞれに対して、解剖学上同一部位に基準点を設定する。また、位置合わせの基準となるデータを設定する機能を有している。
【0023】
関心点決定部28は、例えば、肺野上(例えば、胸膜、気管支、細部気管支等の肺組織)に複数の関心点を設定する。呼吸に伴う基準点に対する関心点の移動距離等から肺機能指標が得られる。複数の関心点は、最大吸気時相の画像と、最大呼気時相の画像それぞれに対して設定される。また、複数の関心点は、肺の壁輪郭上、結節部上、腫瘍上に設定される。関心点決定部28は、最大吸気時相の画像と最大呼気時相の画像それぞれから、閾値処理、例えば領域成長処理(region growing)により肺領域を抽出する。抽出した肺領域の壁輪郭上に、基準点から一定角度毎に関心点を設定する。
【0024】
ベクトル処理部29は、最大吸気時相の画像上の複数の関心点各々についてベクトルを計算する。同様に、ベクトル処理部29は、最大呼気時相の画像上の複数の関心点各々についてもベクトルを計算する。更に、ベクトル処理部29は、最大吸気時相の画像上の複数の関心点についての複数のベクトルと、最大呼気時相の画像上の複数の関心点についての複数のベクトルとの間で、同じ角度同士でベクトル差分を計算する。つまり、呼吸運動による各関心点の移動距離が、比較的固定的な基準点を基準として定量的に求められる。また、ベクトル処理部29は、非線形位置合わせ時の変形量から、各ボクセルに於ける3次元の動きベクトル(x→,y→,z→)を算出する機能を有する。
【0025】
肺機能指標計算部30は、計算された呼吸運動による複数の関心点各々の移動距離から、各時相の肺体積の定量値、肺体積の変化率、その変化体積の定量値等の肺機能指標を計算する。表示処理部26は、計算された肺機能指標を画像と共に数値として、または画像の対応位置に指標値に応じた色相や輝度に対応付けて表示させるために必要な処理を行い、これを表示する。
【0026】
画像処理部31は、医用画像や部位モデル等の各種画像を処理する。この画像処理部31は、図示されないが、ソフトウェアまたはハードウェア(回路)、或いはそれらの両方により構成されているもので、画像及びモデルの位置合わせ機能を有している。更に、画像処理部31は、前記ベクトル処理部29で算出された動きベクトルの成分それぞれを正規化し、(R,G,B)カラーに割り付ける機能と、基準となるデータについて非線形位置合わせを行う機能を有している。
【0027】
次に、図2のフローチャートを参照して、造影された血管について処理する場合の動作について説明する。
【0028】
図1に示されるX線CT装置1を用いて得られた造影された画像が読み込まれる。尚、ここで読み込まれるデータは、少なくとも2位相以上のデータとする。続くステップS2にて、前記ステップS1で読み込まれたデータから、位置合わせの基準となるボリュームが選択される。これは、操作者による手動の選択でもよいし、各位相間の動きの差分等から、動きが最も少ないボリュームを自動で検出する方法等が用いられてもよい(図3参照)。なお、以下の説明においては、この基準ボリュームに対応する時相を「基準時相」と呼ぶことにする。
【0029】
次に、ステップS3に於いて、前記ステップS2で設定された基準ボリュームを基に、各位相について位置合わせ処理が行われる。位相間の位置合わせには、周知の線形位置合わせや、非線形位置合わせ(例えば、特開2009−28362号公報、水田忍ら“3次元脳地図と医用頭部画像の自動非線形位置合わせ”,Medical Imaging Technology vol.16, No.3, 1998参照)が用いられる。したがって、これらの詳細な説明は省略する。
【0030】
次に、ステップS4にて、位置合わせする際の変形量から、各ボクセルに於ける動きベクトル成分(x→,y→,z→)がベクトル処理部29にて算出される。例えば、図4Aに示されるようなボクセル351 から、所定時間経過後の図4Bに示されるボクセル352 との間で、あるボクセル35a1 の移動量に注目する。すると、ボクセル35a1 から35a2 までの移動量Vn →については、図4Cに示されるような、動きベクトル成分Vn →=(x→n ,y→n ,z→n )が算出される。
【0031】
その後、ステップS5にて、前記ステップS4で得られた各ボクセルの動きベクトルの成分について正規化が行われ、画像処理部31にて、3次元上のxyz軸に対して(R,G,B)カラーの割り付け(すなわち、方向に応じて異なる色彩の割り当てると共に、各成分の大きさに対応した輝度値を割り当てる処理)が行われる。割り付けられた画像は、新規ボリュームとして保存される。(R,G,B)への割り付けには、絶対値(|x→|,|y→|,|z→|)を算出してもよいし、符号を持った値をそのまま割り付けてもよい。符号を持っている場合は、(x→,y→,z→)ベクトルの最小値から最大値までの中間値が、(R,G,B)でも中間値となる。
【0032】
次いで、ステップS6に於いて、前述したステップS3〜S5の処理動作が全ての元ボリュームについて行われ、最終ボリュームでない場合はステップS7に移行して、次のボリュームへシフトする。そして、位置合わせが行われるべく前記ステップS3に移行する。このようにして、動きベクトルの成分をRGB化したボリュームが作成される。
【0033】
最後に、ステップS8にて、前述したステップS3〜S6で得られたボリュームを用いてMPR画像が生成され、表示される。これは、一位相で表示しても構わないし、動画で表示しても構わない。
【0034】
図5A、図5Bは、本実施形態に於けるX線CT装置1による画像処理を行った画像の例を示した図である。尚、図5A、図5Bに於いては、便宜上、R成分を○印、G成分を□印、B成分を△印で表しており、それぞれの成分が密になっている部分はその色の成分が強い(濃い)状態を表し、当該成分が疎になっている部分はその色の成分が弱い(薄い)状態を表しているものとする。
【0035】
例えば、図5Aに示される肺の基準画像411 に対して入力画像412 を合わせると、結果画像413 は、全体としてRの成分が多いことがわかる。つまり、Rの成分はx軸方向に相当するので、この結果画像413 から、肺は、上側が主にx軸方向に動いていると判断される。
【0036】
また、図5Bに示される肺の基準画像431 に対して入力画像432 を合わせると、結果画像433 は、全体としてRの成分が多いが、右下側がややBの成分が多く表示されていることがわかる。つまり、全体としてはx軸方向(R成分)に動いているものの、右下側はz軸方向(B成分)に動いていると判断される。
【0037】
このように、3次元上の画像の動きを(R,G,B)カラーに割り当てて、動きベクトル成分をその方向に分けてR,G,B成分で表示するようにしたので、被検体の各部位それぞれの動きが容易に把握することができる。
【0038】
また、例えば癌部位は動きにくいため、前述した(R,G,B)カラー割り付けした場合、比較的黒く表示され、他の部位との識別ができると考えられる。
【0039】
(第2の実施形態)
次に、第2の実施形態について説明する。本実施形態では、診断部位の局所的な動きを、各位置における矢印によってベクトル場として表示(ベクトル場表示)するものである。
【0040】
図6は、第2の実施形態に係る動き情報の映像化処理の流れを示したフローチャートである。ステップS1〜ステップS4までの処理は、図2に示した第1の実施形態における処理を同様である。以下、ステップS5a、5bの各処理について説明する。
【0041】
画像処理部31は、算出された時相毎の各ボクセルの動きベクトルを用いて、予め選択された時相(選択時相)に対応する診断部位の局所的な動きを示す画像を生成する。具体的には、画像処理部31は、選択時相のボリュームデータに対して所定のMPR断面を設定し、算出された選択時相のボクセル毎の動きベクトルを用いて、当該MPR断面上の各位置における移動方向及び移動量を矢印で示したベクトル場画像を生成する。表示処理部26は、生成された選択時相に対応するベクトル場画像を所定の形態で表示する(ステップS5a)。
【0042】
図7、図8は、それぞれステップS5aにおいて生成され表示されるベクトル場画像の例を示した図である。各図に示すように、MPR画像の各位置につき、基準時相から選択時相までの期間において移動が発生した場合には、移動方向が矢印の向きによって、移動量が矢印の長さによって明示されている。また、動きが発生していない場合には、移動方向及び移動量を示す矢印が割り当てられていない。従って、ユーザは、表示されたベクトル場画像を観察することで、被検体の診断部位の各位置の動きを容易に把握することができる。
【0043】
続いて、他の時相のベクトル場画像の生成指示(他の時相の選択指示)が入力された場合には、新たに選択された時相につき、ステップS3〜S5aの処理が繰り返し実行される。また、他の時相の選択指示が入力されない場合には、動き情報の映像化処理を終了する(ステップS6a)。
【0044】
(第3の実施形態)
次に、第3の実施形態について説明する。本実施形態では、診断部位の局所的な動きを、ワイヤーフレーム、サーフェスモデル等によって表示するものである。
【0045】
図9は、第3の実施形態に係る動き情報の映像化処理の流れを示したフローチャートである。ステップS1〜ステップS4までの処理は、図2に示した第1の実施形態における処理を同様である。以下、ステップS5b、6bの各処理について説明する。
【0046】
画像処理部31は、基準ボリュームを用いて、診断部位の輪郭をワイヤーフレームで示すワイヤーフレーム画像(或いは、診断部位の表面を示すサーフェスモデル画像)を生成する。同様に、画像処理部31は、予め選択された時相(選択時相)に対応するボリュームを用いて、診断部位の輪郭をワイヤーフレームで示すワイヤーフレーム画像(或いは、診断部位の表面を示すサーフェスモデル画像)を生成する。また、画像処理部31は、生成された各ワイヤーフレーム画像と、基準時相から選択時相までの期間における各ボクセルについての移動ベクトルとを用いて、診断部位の局所的な動きを示す画像を生成する。すなわち、画像処理部31は、基準時相に対応するワイヤーフレームと選択時相に対応するワイヤーフレームとを位置合わせすると共に、選択時相に対応するワイヤーフレームに動きを示す情報を付加することで、診断部位の局所的な動きを示す画像を生成する。表示処理部26は、生成された選択時相に対応するワイヤーフレーム画像を所定の形態で表示する(ステップS5b)。
【0047】
なお、選択時相に対応するワイヤーフレームに付加される動きを示す情報は、どのようなものであってもよい。例えば、ワイヤーフレーム上の各位置について、第1の実施形態において説明した(R,G,B)の割り当てを行ってもよい。また、ワイヤーフレーム上の各位置について、第2の実施形態において説明したベクトル場表示を行うようにしてもよい。さらに、各位置毎の動き表示ではなく、所定の範囲について平均的な動きの大きさ、動きの方向を矢印等によって表示するようにしてもよい。
【0048】
図10は、ステップS5bにおいて生成され表示されるワイヤーフレーム画像の例を示した図である。同図に示すように、ワイヤーフレーム画像を観察することで、輪郭上の各位置が基準時相から選択時相までの期間においてどのように移動したのかを容易且つ迅速に視認することができる。
【0049】
続いて、他の時相のワイヤーフレーム画像の生成指示(他の時相の選択指示)が入力された場合には、新たに選択された時相につき、ステップS3〜S5bの処理が繰り返し実行される。また、他の時相の選択指示が入力されない場合には、動き情報の映像化処理を終了する(ステップS6b)。
【0050】
以上述べた各実施形態において、各部位に対して1つの結果画像を表示するようにしている。しかしながら、これに限られるものではなく、例えば、オーバーレイ表示されるものであってもよい。また、各実施形態では静止画を例として説明したが、これに限られるものではなく、動画でも適用が可能である。
【0051】
また、上記実施形態においては、ステップS2において基準ボリュームを設定し、当該基準ボリュームに対する位置合わせを行うことで、各ボクセルについて基準ボリュームに対応する時相からの動きベクトルを算出した。しかしながら、当該例に拘泥されず、例えば時間的に隣り合うボリューム間において位置合わせを行うことで、各ボクセルについての時相間の移動ベクトルを算出するようにしてもよい。
【0052】
なお、本発明は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、本実施形態に係る各機能は、当該処理を実行するプログラムをワークステーション等のコンピュータにインストールし、これらをメモリ上で展開することによっても実現することができる。このとき、コンピュータに当該手法を実行させることのできるプログラムは、磁気ディスク(フロッピー(登録商標)ディスク、ハードディスクなど)、光ディスク(CD−ROM、DVDなど)、半導体メモリなどの記録媒体に格納して頒布することも可能である。また、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0053】
1…X線コンピュータ断層撮影装置(X線CT装置)、10…架台、11…X線管、12…回転フレーム、13…X線検出器、14…データ収集回路(DAS)、15…データ伝送装置、16…前処理装置、17…呼吸センサ、18…スリップリング機構、19…高電圧発生装置、20…スキャンコントローラ、23…投影データ/画像データ記憶部、24…再構成部、25…特定位相決定部、26…表示処理部、27…基準点決定部、28…関心点決定部、29…ベクトル処理部、30…肺機能指標計算部、31…画像処理部。
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像処理装置、X線コンピュータ断層撮像装置及び画像処理プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
画像処理装置、X線コンピュータ断層撮像装置及び画像処理プログラムに関し、より詳細には、X線コンピュータ断層撮影装置(X線CT装置)、磁気共鳴イメージング装置(MRI装置)等を用いて経時的に得られたデータから、各位相間の動き成分を求め、それらの結果を観察する医用画像を用いた臓器動態の画像処理装置、X線コンピュータ断層撮像装置及び画像処理プログラムに関するものである。
【0003】
X線コンピュータ断層撮影装置(X線CT装置)、磁気共鳴イメージング装置(MRI装置)等を用いて、例えば肺野に於ける複数の呼吸位相の画像データを取得し、組織の動態を確認して機能解析する方法は、疾患の診断及び早期発見の観点から非常に有効である。また、自動診断(CAD)の観点からも、機能解析結果は有効な方法である。
【0004】
前述した動態を把握して定量的な値として算出する方法は、一般的にも行われてきており、現在のCT、MRIのように広い領域を時系列でスキャンできる装置にとって注目されている。
【0005】
更に、従来の結果観察方法として、カラーマップや、断面変換(MPR)画像、3次元(3D)画像を動画で評価する方法がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、前述したカラーマップは、全ての時間情報を基に作られたデータであり、表示時にはその時間毎の情報が失われている。また、MPRや3D画像の動画では、被検体の各部位それぞれの動きがどのように動いているのか、把握しづらいという問題があった。
【0007】
上記実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、各部位それぞれの動きがどのように動いているのか、容易に把握することのできる医用画像を用いた臓器動態の画像処理装置、X線コンピュータ断層撮像装置及び画像処理プログラムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記目的を達成するため、次のような手段を講じている。
【0009】
請求項1に記載の発明は、被検体の所定部位を撮像することで取得された複数の時相に対応する複数のボリュームデータを記憶する記憶ユニットと、前記複数のボリュームデータ間の位置合わせを行うことで、前記各ボリュームデータに含まれる各ボクセルにつき、空間的な移動ベクトルを算出する算出ユニットと、前記各ボクセルについての前記移動ベクトルを用いて、前記診断部位の局所的な動きを示す画像を生成する画像生成ユニットと、前記診断部位の局所的な動きを示す画像を表示する表示ユニットと、を具備する画像処理装置である。
【発明の効果】
【0010】
各部位それぞれの動きがどのように動いているのか、容易に把握することのできる医用画像を用いた臓器動態の画像処理装置、X線コンピュータ断層撮像装置及び画像処理プログラムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】図1は、一実施形態に係るX線コンピュータ断層撮影装置の構成を示したブロック図である。
【図2】図2は、図1のX線CT装置1に於いて造影された血管について処理する場合の動作について説明するためのフローチャートである。
【図3】図3は、基準ボリュームを用いた位置合わせの概念を示した図である。
【図4A】図4Aは、動きベクトルの算出方法について説明するための図である。
【図4B】図4Bは、動きベクトルの算出方法について説明するための図である。
【図4C】図4Cは、動きベクトルの算出方法について説明するための図である。
【図5A】図5Aは、結果画像の例を示した図である。
【図5B】図5Bは、結果画像の例を示した図である。
【図6】図6は、第2の実施形態に係る動き情報の映像化処理の流れを示したフローチャートである。
【図7】図7は、それぞれステップS5aにおいて生成され表示されるベクトル場画像の例を示した図である。
【図8】図8は、それぞれステップS5aにおいて生成され表示されるベクトル場画像の例を示した図である。
【図9】図9は、第3の実施形態に係る動き情報の映像化処理の流れを示したフローチャートである。
【図10】図10は、ステップS5bにおいて生成され表示されるワイヤーフレーム画像の例を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して実施形態を説明する。なお、以下の説明においては、X線コンピュータ断層撮影装置を例とする実施形態について説明する。しかしながら、当該例に拘泥されず、他の医用画像診断装置(例えば、磁気共鳴イメージング装置、超音波診断装置、X線診断装置、核医学診断装置)、医用画像診断装置によって取得される医用画像を用いた画像処理装置に関する実施形態も、実現可能である。
【0013】
図1は、一実施形態に係るX線コンピュータ断層撮影装置の構成を示したブロック図である。
【0014】
尚、X線コンピュータ断層撮影装置1には、X線管とX線検出器とが一体として被検体の周囲を回転する回転/回転方式と、リング上に多数のX線検出器が配置され、X線管のみが被検体の周囲を回転する固定/回転方式とがあり、何れの方式にも適用可能である。回転/回転方式に関して、一対のX線管とX線検出器とが回転フレームに搭載された一管球型と、X線管とX線検出器との対が回転フレームに複数搭載されたいわゆる多管球型とがあるが、何れの型でも適用可能である。X線検出器に関して、被検体を透過したX線をシンチレータ等の蛍光体で光に変換してからフォトダイオード等の光電変換素子で電荷に変換する間接変換形と、X線による半導体内の電子正孔対の発生及びその電極への移動すなわち光導電現象を利用した直接変換形とがあるが、いずれの形を採用してもよい。
【0015】
図1に於いて、架台10は、X線管11を有する。X線管11は、高電圧発生装置からスリップリング機構18を経由して管電圧の印加及びフィラメント電流の供給を受け、コーンビーム形のX線を発生する。X線管11は、回転軸(Z軸)を中心に回転自在に支持される回転フレーム12に、X線検出器13と共に搭載される。
【0016】
呼吸センサ17は、被検体の呼吸の動きを検出するために設けられている。尚、呼吸センサ17は、検査対象に応じて、被検体の心臓の動き(心拍)の時相を検出する心電計または拍動センサに置換されることができる。
【0017】
X線検出器13は、X線管11から被検体を透過したX線を検出する。X線検出器13は、コーンビームに対応するマルチスライス型または2次元アレイ型である。すなわち、X線検出器13は、回転軸にそって並列される複数のX線検出素子列を有する。各X線検出素子列は、回転軸RAに直交する方向に沿って一列に配列された複数のX線検出素子を有する。
【0018】
X線検出器13の出力は、チャンネル毎にデータ収集回路(DAS)14によって増幅され、デジタル信号に変換され、そして例えば非接触型のデータ伝送装置15を介して前処理装置16に送られ、そこで感度補正等の補正処理を受け、再構成処理の直前段階にあるいわゆる投影データとして投影データ/画像データ記憶部23に、それを収集した時期に対応する呼吸時相コードと共に記憶される。スキャンコントローラ20は、データ収集(スキャン)のために、回転駆動部、高電圧発生装置19、データ収集回路14、投影データ/画像データ記憶部23等を制御する。
【0019】
再構成部24は、ダイナミックスキャニングにより繰り返し収集された投影データに基づいて、呼吸時相の異なる複数の2次元または3次元の画像のデータを再構成する。呼吸時相の異なる複数の2次元又は3次元の画像のデータは、投影データ/画像データ記憶部23に、その再構成処理に用いた投影データのセットの例えば中心時相に対応する呼吸時相コードと共に記憶される。
【0020】
3次元の画像再構成処理法としては、典型的には、フェルドカンプ法(Feldkamp method)である。フェルドカンプ法は、周知の通り、ファンビームコンボリューション・バックプロジェクション法を基にした近似的再構成法であり、コンボリューション処理は、コーン角が比較的小さいことを前提として、データをファン投影データと見なして行われる。しかし、バックプロジェクション処理は、実際のレイ(ray)に沿って行われる。つまり、投影データにZ座標に依存した重みをかけ、その重みをかけた投影データに、ファンビーム再構成と同じ再構成関数をコンボリューションし、そのデータをコーン角を持つ斜めの実際のレイに沿って逆投影する、という手順で画像が再構成される。
【0021】
前述したように、本実施形態に係るX線CT装置1は画像処理装置を有する。画像処理装置は、上記投影データ/画像データ記憶部23と共に、特定位相決定部25、表示処理部26、基準点決定部27、関心点決定部28、ベクトル処理部29、肺機能指標計算部30、画像処理部31を有して構成される。
【0022】
特定位相決定部25は、投影データと共に記憶された流量時間曲線の例えば極大点と極小点の特定により最大吸気時相と最大呼気時相とを決定する。基準点決定部27は、前記最大吸気時相の画像と最大呼気時相の画像それぞれに対して、解剖学上同一部位に基準点を設定する。また、位置合わせの基準となるデータを設定する機能を有している。
【0023】
関心点決定部28は、例えば、肺野上(例えば、胸膜、気管支、細部気管支等の肺組織)に複数の関心点を設定する。呼吸に伴う基準点に対する関心点の移動距離等から肺機能指標が得られる。複数の関心点は、最大吸気時相の画像と、最大呼気時相の画像それぞれに対して設定される。また、複数の関心点は、肺の壁輪郭上、結節部上、腫瘍上に設定される。関心点決定部28は、最大吸気時相の画像と最大呼気時相の画像それぞれから、閾値処理、例えば領域成長処理(region growing)により肺領域を抽出する。抽出した肺領域の壁輪郭上に、基準点から一定角度毎に関心点を設定する。
【0024】
ベクトル処理部29は、最大吸気時相の画像上の複数の関心点各々についてベクトルを計算する。同様に、ベクトル処理部29は、最大呼気時相の画像上の複数の関心点各々についてもベクトルを計算する。更に、ベクトル処理部29は、最大吸気時相の画像上の複数の関心点についての複数のベクトルと、最大呼気時相の画像上の複数の関心点についての複数のベクトルとの間で、同じ角度同士でベクトル差分を計算する。つまり、呼吸運動による各関心点の移動距離が、比較的固定的な基準点を基準として定量的に求められる。また、ベクトル処理部29は、非線形位置合わせ時の変形量から、各ボクセルに於ける3次元の動きベクトル(x→,y→,z→)を算出する機能を有する。
【0025】
肺機能指標計算部30は、計算された呼吸運動による複数の関心点各々の移動距離から、各時相の肺体積の定量値、肺体積の変化率、その変化体積の定量値等の肺機能指標を計算する。表示処理部26は、計算された肺機能指標を画像と共に数値として、または画像の対応位置に指標値に応じた色相や輝度に対応付けて表示させるために必要な処理を行い、これを表示する。
【0026】
画像処理部31は、医用画像や部位モデル等の各種画像を処理する。この画像処理部31は、図示されないが、ソフトウェアまたはハードウェア(回路)、或いはそれらの両方により構成されているもので、画像及びモデルの位置合わせ機能を有している。更に、画像処理部31は、前記ベクトル処理部29で算出された動きベクトルの成分それぞれを正規化し、(R,G,B)カラーに割り付ける機能と、基準となるデータについて非線形位置合わせを行う機能を有している。
【0027】
次に、図2のフローチャートを参照して、造影された血管について処理する場合の動作について説明する。
【0028】
図1に示されるX線CT装置1を用いて得られた造影された画像が読み込まれる。尚、ここで読み込まれるデータは、少なくとも2位相以上のデータとする。続くステップS2にて、前記ステップS1で読み込まれたデータから、位置合わせの基準となるボリュームが選択される。これは、操作者による手動の選択でもよいし、各位相間の動きの差分等から、動きが最も少ないボリュームを自動で検出する方法等が用いられてもよい(図3参照)。なお、以下の説明においては、この基準ボリュームに対応する時相を「基準時相」と呼ぶことにする。
【0029】
次に、ステップS3に於いて、前記ステップS2で設定された基準ボリュームを基に、各位相について位置合わせ処理が行われる。位相間の位置合わせには、周知の線形位置合わせや、非線形位置合わせ(例えば、特開2009−28362号公報、水田忍ら“3次元脳地図と医用頭部画像の自動非線形位置合わせ”,Medical Imaging Technology vol.16, No.3, 1998参照)が用いられる。したがって、これらの詳細な説明は省略する。
【0030】
次に、ステップS4にて、位置合わせする際の変形量から、各ボクセルに於ける動きベクトル成分(x→,y→,z→)がベクトル処理部29にて算出される。例えば、図4Aに示されるようなボクセル351 から、所定時間経過後の図4Bに示されるボクセル352 との間で、あるボクセル35a1 の移動量に注目する。すると、ボクセル35a1 から35a2 までの移動量Vn →については、図4Cに示されるような、動きベクトル成分Vn →=(x→n ,y→n ,z→n )が算出される。
【0031】
その後、ステップS5にて、前記ステップS4で得られた各ボクセルの動きベクトルの成分について正規化が行われ、画像処理部31にて、3次元上のxyz軸に対して(R,G,B)カラーの割り付け(すなわち、方向に応じて異なる色彩の割り当てると共に、各成分の大きさに対応した輝度値を割り当てる処理)が行われる。割り付けられた画像は、新規ボリュームとして保存される。(R,G,B)への割り付けには、絶対値(|x→|,|y→|,|z→|)を算出してもよいし、符号を持った値をそのまま割り付けてもよい。符号を持っている場合は、(x→,y→,z→)ベクトルの最小値から最大値までの中間値が、(R,G,B)でも中間値となる。
【0032】
次いで、ステップS6に於いて、前述したステップS3〜S5の処理動作が全ての元ボリュームについて行われ、最終ボリュームでない場合はステップS7に移行して、次のボリュームへシフトする。そして、位置合わせが行われるべく前記ステップS3に移行する。このようにして、動きベクトルの成分をRGB化したボリュームが作成される。
【0033】
最後に、ステップS8にて、前述したステップS3〜S6で得られたボリュームを用いてMPR画像が生成され、表示される。これは、一位相で表示しても構わないし、動画で表示しても構わない。
【0034】
図5A、図5Bは、本実施形態に於けるX線CT装置1による画像処理を行った画像の例を示した図である。尚、図5A、図5Bに於いては、便宜上、R成分を○印、G成分を□印、B成分を△印で表しており、それぞれの成分が密になっている部分はその色の成分が強い(濃い)状態を表し、当該成分が疎になっている部分はその色の成分が弱い(薄い)状態を表しているものとする。
【0035】
例えば、図5Aに示される肺の基準画像411 に対して入力画像412 を合わせると、結果画像413 は、全体としてRの成分が多いことがわかる。つまり、Rの成分はx軸方向に相当するので、この結果画像413 から、肺は、上側が主にx軸方向に動いていると判断される。
【0036】
また、図5Bに示される肺の基準画像431 に対して入力画像432 を合わせると、結果画像433 は、全体としてRの成分が多いが、右下側がややBの成分が多く表示されていることがわかる。つまり、全体としてはx軸方向(R成分)に動いているものの、右下側はz軸方向(B成分)に動いていると判断される。
【0037】
このように、3次元上の画像の動きを(R,G,B)カラーに割り当てて、動きベクトル成分をその方向に分けてR,G,B成分で表示するようにしたので、被検体の各部位それぞれの動きが容易に把握することができる。
【0038】
また、例えば癌部位は動きにくいため、前述した(R,G,B)カラー割り付けした場合、比較的黒く表示され、他の部位との識別ができると考えられる。
【0039】
(第2の実施形態)
次に、第2の実施形態について説明する。本実施形態では、診断部位の局所的な動きを、各位置における矢印によってベクトル場として表示(ベクトル場表示)するものである。
【0040】
図6は、第2の実施形態に係る動き情報の映像化処理の流れを示したフローチャートである。ステップS1〜ステップS4までの処理は、図2に示した第1の実施形態における処理を同様である。以下、ステップS5a、5bの各処理について説明する。
【0041】
画像処理部31は、算出された時相毎の各ボクセルの動きベクトルを用いて、予め選択された時相(選択時相)に対応する診断部位の局所的な動きを示す画像を生成する。具体的には、画像処理部31は、選択時相のボリュームデータに対して所定のMPR断面を設定し、算出された選択時相のボクセル毎の動きベクトルを用いて、当該MPR断面上の各位置における移動方向及び移動量を矢印で示したベクトル場画像を生成する。表示処理部26は、生成された選択時相に対応するベクトル場画像を所定の形態で表示する(ステップS5a)。
【0042】
図7、図8は、それぞれステップS5aにおいて生成され表示されるベクトル場画像の例を示した図である。各図に示すように、MPR画像の各位置につき、基準時相から選択時相までの期間において移動が発生した場合には、移動方向が矢印の向きによって、移動量が矢印の長さによって明示されている。また、動きが発生していない場合には、移動方向及び移動量を示す矢印が割り当てられていない。従って、ユーザは、表示されたベクトル場画像を観察することで、被検体の診断部位の各位置の動きを容易に把握することができる。
【0043】
続いて、他の時相のベクトル場画像の生成指示(他の時相の選択指示)が入力された場合には、新たに選択された時相につき、ステップS3〜S5aの処理が繰り返し実行される。また、他の時相の選択指示が入力されない場合には、動き情報の映像化処理を終了する(ステップS6a)。
【0044】
(第3の実施形態)
次に、第3の実施形態について説明する。本実施形態では、診断部位の局所的な動きを、ワイヤーフレーム、サーフェスモデル等によって表示するものである。
【0045】
図9は、第3の実施形態に係る動き情報の映像化処理の流れを示したフローチャートである。ステップS1〜ステップS4までの処理は、図2に示した第1の実施形態における処理を同様である。以下、ステップS5b、6bの各処理について説明する。
【0046】
画像処理部31は、基準ボリュームを用いて、診断部位の輪郭をワイヤーフレームで示すワイヤーフレーム画像(或いは、診断部位の表面を示すサーフェスモデル画像)を生成する。同様に、画像処理部31は、予め選択された時相(選択時相)に対応するボリュームを用いて、診断部位の輪郭をワイヤーフレームで示すワイヤーフレーム画像(或いは、診断部位の表面を示すサーフェスモデル画像)を生成する。また、画像処理部31は、生成された各ワイヤーフレーム画像と、基準時相から選択時相までの期間における各ボクセルについての移動ベクトルとを用いて、診断部位の局所的な動きを示す画像を生成する。すなわち、画像処理部31は、基準時相に対応するワイヤーフレームと選択時相に対応するワイヤーフレームとを位置合わせすると共に、選択時相に対応するワイヤーフレームに動きを示す情報を付加することで、診断部位の局所的な動きを示す画像を生成する。表示処理部26は、生成された選択時相に対応するワイヤーフレーム画像を所定の形態で表示する(ステップS5b)。
【0047】
なお、選択時相に対応するワイヤーフレームに付加される動きを示す情報は、どのようなものであってもよい。例えば、ワイヤーフレーム上の各位置について、第1の実施形態において説明した(R,G,B)の割り当てを行ってもよい。また、ワイヤーフレーム上の各位置について、第2の実施形態において説明したベクトル場表示を行うようにしてもよい。さらに、各位置毎の動き表示ではなく、所定の範囲について平均的な動きの大きさ、動きの方向を矢印等によって表示するようにしてもよい。
【0048】
図10は、ステップS5bにおいて生成され表示されるワイヤーフレーム画像の例を示した図である。同図に示すように、ワイヤーフレーム画像を観察することで、輪郭上の各位置が基準時相から選択時相までの期間においてどのように移動したのかを容易且つ迅速に視認することができる。
【0049】
続いて、他の時相のワイヤーフレーム画像の生成指示(他の時相の選択指示)が入力された場合には、新たに選択された時相につき、ステップS3〜S5bの処理が繰り返し実行される。また、他の時相の選択指示が入力されない場合には、動き情報の映像化処理を終了する(ステップS6b)。
【0050】
以上述べた各実施形態において、各部位に対して1つの結果画像を表示するようにしている。しかしながら、これに限られるものではなく、例えば、オーバーレイ表示されるものであってもよい。また、各実施形態では静止画を例として説明したが、これに限られるものではなく、動画でも適用が可能である。
【0051】
また、上記実施形態においては、ステップS2において基準ボリュームを設定し、当該基準ボリュームに対する位置合わせを行うことで、各ボクセルについて基準ボリュームに対応する時相からの動きベクトルを算出した。しかしながら、当該例に拘泥されず、例えば時間的に隣り合うボリューム間において位置合わせを行うことで、各ボクセルについての時相間の移動ベクトルを算出するようにしてもよい。
【0052】
なお、本発明は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、本実施形態に係る各機能は、当該処理を実行するプログラムをワークステーション等のコンピュータにインストールし、これらをメモリ上で展開することによっても実現することができる。このとき、コンピュータに当該手法を実行させることのできるプログラムは、磁気ディスク(フロッピー(登録商標)ディスク、ハードディスクなど)、光ディスク(CD−ROM、DVDなど)、半導体メモリなどの記録媒体に格納して頒布することも可能である。また、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0053】
1…X線コンピュータ断層撮影装置(X線CT装置)、10…架台、11…X線管、12…回転フレーム、13…X線検出器、14…データ収集回路(DAS)、15…データ伝送装置、16…前処理装置、17…呼吸センサ、18…スリップリング機構、19…高電圧発生装置、20…スキャンコントローラ、23…投影データ/画像データ記憶部、24…再構成部、25…特定位相決定部、26…表示処理部、27…基準点決定部、28…関心点決定部、29…ベクトル処理部、30…肺機能指標計算部、31…画像処理部。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体の所定部位を撮像することで取得された複数の時相に対応する複数のボリュームデータを記憶する記憶ユニットと、
前記複数のボリュームデータ間の位置合わせを行うことで、前記各ボリュームデータに含まれる各ボクセルにつき、空間的な移動ベクトルを算出する算出ユニットと、
前記各ボクセルについての前記移動ベクトルを用いて、前記診断部位の局所的な動きを示す画像を生成する画像生成ユニットと、
前記診断部位の局所的な動きを示す画像を表示する表示ユニットと、
を具備する画像処理装置。
【請求項2】
前記算出ユニットは、前記複数のボリュームデータのうちから選択された所定のボリュームデータを基準とした位置合わせを行うことで、前記移動ベクトルを算出する請求項1記載の画像処理装置。
【請求項3】
前記算出ユニットは、時間的に隣り合うボリューム間において位置合わせを行うことで、前記移動ベクトルを算出する請求項1記載の画像処理装置。
【請求項4】
前記算出ユニットは、前記移動ベクトルを規格化する請求項1乃至3のうちいずれか一項記載の画像処理装置。
【請求項5】
前記画像生成ユニットは、前記移動ベクトルの各成分の大きさに応じて、成分毎に異なる色彩及び輝度を割り当てることで、前記診断部位の局所的な動きを示す画像を生成する請求項1乃至4のうちいずれか一項記載の画像処理装置。
【請求項6】
記前記画像生成ユニットは、前記移動ベクトルの各成分を(R,G,B)に割り当てることで、前記診断部位の局所的な動きを示す画像を生成する請求項5記載の画像処理装置。
【請求項7】
前記画像生成ユニットは、前記各移動ベクトルを空間位置毎に矢印で図示することで、前記診断部位の局所的な動きを示す画像を生成する請求項1乃至4のうちいずれか一項記載の画像処理装置。
【請求項8】
前記画像生成ユニットは、第1の時相における前記所定部位の輪郭と、前記第1の時相から所定期間経過後の第2の時相における前記所定部位の輪郭と、を映像化することで、前記診断部位の局所的な動きを示す画像を生成する請求項1乃至4のうちいずれか一項記載の画像処理装置。
【請求項9】
前記画像生成ユニットは、前記診断部位の局所的な動きを示す画像をMPR画像として生成する請求項1乃至8のうちいずれか一項記載の画像処理装置。
【請求項10】
被検体の所定部位に関するボリュームデータを複数の時相に亘って撮像する撮像ユニットと、
前記複数のボリュームデータ間の位置合わせを行うことで、前記各ボリュームデータに含まれる各ボクセルにつき、時相間における空間的な移動ベクトルを算出する算出ユニットと、
前記各ボクセルについての前記移動ベクトルを用いて、前記診断部位の局所的な動きを示す画像を生成する画像生成ユニットと、
前記診断部位の局所的な動きを示す画像を表示する表示ユニットと、
を具備するX線コンピュータ断層撮像装置。
【請求項11】
前記診断部位は胸膜、気管支、細気管支の少なくともいずれかである請求項1乃至10のうちいずれか一項記載の画像処理装置。
【請求項12】
コンピュータに、
画像処理装置を用いて、被検体の所定部位を撮像することで取得された複数の時相に対応する複数のボリュームデータ間の位置合わせを実行させる位置合わせ機能と、
前記各ボリュームデータに含まれる各ボクセルにつき、時相間における空間的な移動ベクトルを算出させる算出機能と、
前記各ボクセルについての前記移動ベクトルを用いて、前記診断部位の局所的な動きを示す画像を生成させる生成機能と、
前記診断部位の局所的な動きを示す画像を表示させる表示機能と、
を実現させる画像処理プログラム。
【請求項1】
被検体の所定部位を撮像することで取得された複数の時相に対応する複数のボリュームデータを記憶する記憶ユニットと、
前記複数のボリュームデータ間の位置合わせを行うことで、前記各ボリュームデータに含まれる各ボクセルにつき、空間的な移動ベクトルを算出する算出ユニットと、
前記各ボクセルについての前記移動ベクトルを用いて、前記診断部位の局所的な動きを示す画像を生成する画像生成ユニットと、
前記診断部位の局所的な動きを示す画像を表示する表示ユニットと、
を具備する画像処理装置。
【請求項2】
前記算出ユニットは、前記複数のボリュームデータのうちから選択された所定のボリュームデータを基準とした位置合わせを行うことで、前記移動ベクトルを算出する請求項1記載の画像処理装置。
【請求項3】
前記算出ユニットは、時間的に隣り合うボリューム間において位置合わせを行うことで、前記移動ベクトルを算出する請求項1記載の画像処理装置。
【請求項4】
前記算出ユニットは、前記移動ベクトルを規格化する請求項1乃至3のうちいずれか一項記載の画像処理装置。
【請求項5】
前記画像生成ユニットは、前記移動ベクトルの各成分の大きさに応じて、成分毎に異なる色彩及び輝度を割り当てることで、前記診断部位の局所的な動きを示す画像を生成する請求項1乃至4のうちいずれか一項記載の画像処理装置。
【請求項6】
記前記画像生成ユニットは、前記移動ベクトルの各成分を(R,G,B)に割り当てることで、前記診断部位の局所的な動きを示す画像を生成する請求項5記載の画像処理装置。
【請求項7】
前記画像生成ユニットは、前記各移動ベクトルを空間位置毎に矢印で図示することで、前記診断部位の局所的な動きを示す画像を生成する請求項1乃至4のうちいずれか一項記載の画像処理装置。
【請求項8】
前記画像生成ユニットは、第1の時相における前記所定部位の輪郭と、前記第1の時相から所定期間経過後の第2の時相における前記所定部位の輪郭と、を映像化することで、前記診断部位の局所的な動きを示す画像を生成する請求項1乃至4のうちいずれか一項記載の画像処理装置。
【請求項9】
前記画像生成ユニットは、前記診断部位の局所的な動きを示す画像をMPR画像として生成する請求項1乃至8のうちいずれか一項記載の画像処理装置。
【請求項10】
被検体の所定部位に関するボリュームデータを複数の時相に亘って撮像する撮像ユニットと、
前記複数のボリュームデータ間の位置合わせを行うことで、前記各ボリュームデータに含まれる各ボクセルにつき、時相間における空間的な移動ベクトルを算出する算出ユニットと、
前記各ボクセルについての前記移動ベクトルを用いて、前記診断部位の局所的な動きを示す画像を生成する画像生成ユニットと、
前記診断部位の局所的な動きを示す画像を表示する表示ユニットと、
を具備するX線コンピュータ断層撮像装置。
【請求項11】
前記診断部位は胸膜、気管支、細気管支の少なくともいずれかである請求項1乃至10のうちいずれか一項記載の画像処理装置。
【請求項12】
コンピュータに、
画像処理装置を用いて、被検体の所定部位を撮像することで取得された複数の時相に対応する複数のボリュームデータ間の位置合わせを実行させる位置合わせ機能と、
前記各ボリュームデータに含まれる各ボクセルにつき、時相間における空間的な移動ベクトルを算出させる算出機能と、
前記各ボクセルについての前記移動ベクトルを用いて、前記診断部位の局所的な動きを示す画像を生成させる生成機能と、
前記診断部位の局所的な動きを示す画像を表示させる表示機能と、
を実現させる画像処理プログラム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4A】
【図4B】
【図4C】
【図5A】
【図5B】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図2】
【図3】
【図4A】
【図4B】
【図4C】
【図5A】
【図5B】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【公開番号】特開2011−161220(P2011−161220A)
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−1617(P2011−1617)
【出願日】平成23年1月7日(2011.1.7)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(594164542)東芝メディカルシステムズ株式会社 (4,066)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年1月7日(2011.1.7)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(594164542)東芝メディカルシステムズ株式会社 (4,066)
【Fターム(参考)】
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