説明

画像処理装置およびその方法

【課題】 画像表示装置の画面上の基準位置の表示特性を容易に取得可能にする。
【解決手段】 画像表示装置の画面の表示特性のむらを示すむら情報を取得し(S501)、画像表示装置の画面上の基準位置および測色位置を示す情報を取得し(S502)、画像表示装置の画面の、測色位置における表示特性を取得する(S503)。そして、むら情報に基づき、測色位置の表示特性から基準位置の表示特性を計算する(S506)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像表示装置のハードウェアキャリブレーションを支援する画像処理に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、パーソナルコンピュータ(PC)の普及に加え、PCに接続可能なディジタルカメラ、ディジタルビデオ、モニタ、プロジェクタなどの周辺機器の開発が著しい。
【0003】
また、画像表示装置の高画質化が実現され、ハイエンドユーザからローエンドユーザの幅広い層に使用されている。高画質な画像表示装置は、家庭においては映画などの鑑賞に、オフィス環境においてはプレゼンテーションといった場面で活用される。
【0004】
画像表示装置の更なる高画質化が進む中、デバイスの安定性、および、高精度な色再現に対するユーザの要求レベルも日々高まってきている。高精度な色再現を実現するには、常に、同じ色再現結果が得られるよう、キャリブレーションが必須である。キャリブレーションの種類には、ハードウェアキャリブレーションとソフトウェアキャリブレーションがある。
【0005】
ハードウェアキャリブレーションは、画像表示装置の環境変動や経時変化などの影響により色再現特性が変動した場合に、ハードウェアが提供する調整機構を利用するものである。そして、ホワイトバランスやブライトネス、コントラストなどを調整することで、出力の色温度や輝度値、階調性の調整処理を行う。
【0006】
図1はハードウェアキャリブレーションの実施方法の一例を示す図で、プロジェクタ101をキャリブレーションの対象にする例を示している。
【0007】
PC 102は、プロジェクタ101、測色機103、モニタ104に接続されている。ユーザは、PC 102上でハードウェアキャリブレーション支援アプリケーション(以下、キャリブレータと呼ぶ)を起動する。
【0008】
キャリブレータは、プロジェクタ101を通してパッチ画像(以下、単にパッチと呼ぶ)108をスクリーン105に表示し、スクリーン105に表示されたパッチ108の測色値を測色機103から入力する。そして、パッチ108の測色値が、ユーザ求める出力特性か否かを判定する。もし、ユーザ求める出力特性ではない場合、キャリブレータは、プロジェクタ101に調整ウィンドウ106をスクリーン105に表示させる。ユーザは、キャリブレータがスクリーン105に表示する調整ガイド107を目安として、調整ウィンドウ106を操作して、プロジェクタ101の出力特性を調整する。ユーザは、調整ウィンドウ106を使用してプロジェクタ101の出力特性を調整する際、プロジェクタ101の操作部を直接操作するか、プロジェクタ101に付属するリモコンを操作する。
【0009】
一方、ソフトウェアキャリブレーションは、ハードウェアキャリブレーションの補助的な手段として利用される。そして、一次元ルックアップテーブル(以下、1DLUTと記す)や三次元ルックアップテーブル(以下、3DLUTと記す)などの補正テーブルを用いて、入出力関係を微調整する処理により、画像表示装置の出力特性を補正する。
【0010】
また、画像表示装置は、出力スクリーンにおいて輝度むらや色むら(以下、まとめて面内むらと呼ぶ)が発生する。そのため、パッチ108の表示位置や測色位置がスクリーン上で異なれば得られる測色値は異なる値になる。言い換えれば、パッチ108の測色値は表示位置や測色位置に依存する値になり、常に、同一の測色値を得て、同一の出力特性に調整するには困難が付き纏う。
【0011】
また、画像表示装置を製造するメーカや画像表示装置の機種によって、調整ウィンドウ106の表示位置や表示形態が異なる。
【0012】
図2と図3は画像表示装置メーカや画像表示装置の機種による、調整ウィンドウ106の表示位置の違い例を示す図である。図2、3の例は、ハードウェアが表示する調整ウィンドウ200と調整サブウィンドウ201、並びに、キャリブレータが表示する測色パッチ202と調整ガイド203がスクリーン105に表示された様子を示している。
【0013】
キャリブレータは、測色パッチの測色値を入力して画像表示装置の出力特性を計算して、調整ガイドに現在の画像表示装置の調整状態が表示する。しかし、図2と図3のように、調整ウィンドウ200と調整サブウィンドウ201の表示位置が異なると、キャリブレータは、異なる位置に表示した測色パッチ202の測色値を入力する。つまり、面内むらに起因する、表示位置や測色位置に依存する測色値を入力することになる。その結果、画像表示装置の出力特性を良好に調整することが難しい。
【0014】
また、スクリーンの最も輝度が高い場所は多くの場合、画面中央部である。そこで、画面中央部で調整を行いたいところであるが、調整ウィンドウ200、201も多くの場合、画面中央部に表示され、測色パッチ202に調整ウィンドウ200、201の表示位置が重複するケースが多々ある。このような場合は、必要に応じて、調整ウィンドウ200、201の表示/非表示を切り替えるなど面倒で時間が掛かる作業が発生する。
【0015】
特許文献1は、有効画面に補正領域を設定し、補正領域を、補正中心点を共通とする四つの矩形領域に分割し、補正画素が属す矩形領域と、矩形領域における画素位置を特定する。そして、補正中心点の補正データと画素位置に基づき、各画素を補間処理して面内むらを補正する技術を開示する。
【0016】
しかし、特許文献1の技術は、面内むらを補正することは可能ではあるが、ハードウェアキャリブレーションが適切に実施されていない場合、所望の補正結果を得ることはできない。言い換えれば、特許文献1の技術は、ハードウェアキャリブレーションを適切に行うことが前提になるが、その点についての記載はない。
【0017】
【特許文献1】特開平11-113019号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
本発明は、画像表示装置の画面上の基準位置の表示特性を容易に取得可能にすることを目的とする。
【0019】
また、画像表示装置の適切なキャリブレーションを支援することを他の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明にかかる画像処理装置は、画像表示装置の画面の表示特性のむらを示すむら情報を取得する第一の特性取得手段と、前記画像表示装置の画面上の基準位置および測色位置を示す情報を取得する位置情報取得手段と、前記画像表示装置の画面の、前記測色位置における表示特性を取得する第二の特性取得手段と、前記第一の特性取得手段が取得したむら情報に基づき、前記第二の特性取得手段が取得した表示特性から前記基準位置の表示特性を計算する特性計算手段とを有することを特徴とする。
【0021】
好ましくは、さらに、前記画像表示装置の出力特性を調整可能な最小単位で変更した場合の前記測色位置における表示特性の変化量を取得する第三の特性取得手段と、前記基準位置の目標表示特性と、前記特性計算手段が計算した前記基準位置の表示特性の差分を計算する差分計算手段と、前記表示特性の変化量に基づき設定した閾値と、前記差分計算手段が計算した差分を比較して、前記画像表示装置のキャリブレーションの終了を判定する判定手段を有することを特徴とする。
【0022】
本発明にかかる画像処理方法は、画像表示装置の画面の表示特性のむらを示すむら情報を取得し、前記画像表示装置の画面上の基準位置および測色位置を示す情報を取得し、前記画像表示装置の画面の、前記測色位置における表示特性を取得し、前記むら情報に基づき、前記測色位置の表示特性から前記基準位置の表示特性を計算することを特徴とする。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、画像表示装置の画面上の基準位置の表示特性を容易に取得可能にすることができる。
【0024】
また、画像表示装置の適切なキャリブレーションを支援することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、本発明にかかる実施例の画像処理を図面を参照して詳細に説明する。また、以下では、プロジェクタのハードウェアキャリブレーションを行って、スクリーンの明るさ(ブライトネス)を調整する例を説明する。しかし、本発明はプロジェクタに限らず、CRT、LCD、PDPなどの画像表示装置のハードウェアキャリブレーションに適用可能である。また、調整対象の特性は明るさに限らず、コントラスト、ホワイトバランス、色温度、ガンマ値、RGB各ゲイン率も調整対象にすることができる。
【実施例1】
【0026】
[装置の構成]
図4は実施例の画像処理装置401の構成例を示すブロック図である。
【0027】
画像処理装置401は、上述したキャリブレータなどのアプリケーションソフトウェアによって実現される機能部として、面内むら判定部403、測色位置制御部406、調整制御部409、ガイド表示部418を有する。なお、画像処理装置401は、例えばハードディスクドライブ(HDD)に格納したキャリブレータなどのアプリケーションソフトウェアを、RAMをワークメモリとして実行することは言うまでもない。
【0028】
面内むら判定部403は、面内むら情報格納部404、面内むら判定用の測色値を格納する測色値格納部405を有する。測色位置制御部406は、基準位置を示す情報を格納する基準位置格納部407、調整用の測色位置を示す情報を格納する測色位置格納部408を有する。
【0029】
調整制御部409は、測色値格納部410、基準位置測色値格納部411、調整目標格納部412、誤差D格納部413、閾値A格納部414を有する。ガイド表示部418は、プロジェクタ416のスクリーンに表示する各種調整ガイドの画像情報が格納されたガイド格納部419を有する。なお、各格納部は、画像処理装置401が備えるRAMやHDDなどの所定領域に割り当てられる。
【0030】
また、画像処理装置401には、所定のインタフェイスを介して、モニタ415、プロジェクタ416、測色機417などが接続される。
【0031】
[装置の動作]
図5はキャリブレータを実行した場合の画像処理装置401の動作を説明するフローチャートである。ここでは、一例として、明るさを調整する処理を説明する。明るさの調整以外にも、RGBの混色パッチを表示し測色することでコントラスト、ホワイトバランス、色温度、ガンマ値、RGB各ゲイン率も所定のアルゴリズムにより調整することが可能である。
【0032】
まず、面内むら判定部403は、詳細は後述するが、プロジェクタ416のスクリーンの表示特性のむら(面内むら)を示す面内むら情報を取得する(S501)。一般に、プロジェクタ416は、発光した光をスクリーンに投射する表示形態である。そのため、図6に示すように、スクリーンの中心の輝度値が最も高く、中心から離れるに連れて同心円状に輝度値が低下する傾向を示す。面内むらの解析は、図6に示すような面内むらの状態を把握する処理である。
【0033】
次に、測色位置制御部406は、詳細は後述するが、ユーザが指定する、ハードウェアキャリブレーションを実施する際のスクリーン上の基準位置と調整用の測色位置を取得する。測色位置制御部406は、基準位置を基準位置格納部407に、調整用の測色位置を測色位置格納部408にそれぞれ格納する(S502)。
【0034】
次に、調整制御部409は、詳細は後述するが、閾値A格納部414に格納された閾値Aを、プロジェクタ416の特性に合わせて調整する(S503)。
【0035】
次に、ガイド表示部418は、ハードウェアキャリブレーションにおいてユーザが参照する調整ガイドの画像データを生成してプロジェクタ416に出力し、スクリーンに表示させる(S504)。
【0036】
図7は調整ガイドの一例を示す図で、明るさ調整ガイド701を示している。明るさ調整ガイド701は、例えば文字列ウィンドウ702、目標ガイド703、調整ガイド704を備える。ユーザは、ハードウェアキャリブレーションを行う際、調整ガイド704が目標ガイド703に近付くように調整を行う。
【0037】
次に、調整制御部409は、プロジェクタ416のスクリーンのユーザ指定の測色位置に白色パッチを表示し、測色機417を制御して、白色パッチを測色値を入力し、測色値格納部410に格納する(S505)。
【0038】
次に、調整制御部409は、詳細は後述するが、面内むら情報に基づき、測色値格納部410に格納した測色値から基準位置の測色値を計算し、基準位置測色値格納部411に格納する(S506)。
【0039】
次に、調整制御部409は、誤差D格納部413に格納する誤差Dとして、例えば式(1)を用いて差分を算出する(S507)。なお、目標表示特性を示す調整目標値Tは、ユーザが任意に設定可能な定数である。
D = |Lc - T| …(1)
ここで、Lc:基準位置測色値格納部411に格納された測色値、
T:調整目標格納部412に格納された調整目標値
【0040】
次に、調整制御部409は、誤差D格納部413に格納された誤差Dと、閾値A格納部414に格納された閾値Aを比較して(S508)、誤差D<閾値Aの場合、プロジェクタ416の出力特性が調整目標値Tに達したと判定する。そして、プロジェクタ416のスクリーンに「基準位置の表示特性が目標値に達したので、ハードウェアキャリブレーションを終了します」のようなメッセージを表示し(S511)、処理を終了する。
【0041】
また、誤差D≧閾値Aの場合、調整制御部409は、プロジェクタ416の出力特性を更に調整する必要があると判定して処理をステップS509に進める。
【0042】
調整制御部409が出力特性を更に調整する必要がある判断した場合、ガイド表示部418は、詳細は後述するが、プロジェクタ416のスクリーンに表示する調整ガイドを更新する(S509)。そして、調整制御部409は、更新された調整ガイドに従うユーザの調整が終了するのを待ち(S510)、ユーザの調整が終わると処理をステップS505に戻す。
【0043】
●面内むら情報の取得(S501)
図8は面内むら判定部403が実行する面内むら情報の取得処理を示すフローチャートである。
【0044】
面内むら判定部403は、図9に一例を示す面内むら測定用の測定画面901をプロジェクタ416のスクリーンに表示する(S801)。図9に示すように、測定画面901には、面内むら測定用のパッチ902、903、904が表示される。
【0045】
次に、面内むら判定部403は、測色機417を制御して、プロジェクタ416のスクリーンに表示した面内むら測定用のパッチの測色値を入力する。そして、入力した測色値を測色値格納部405に格納する(S802)。
【0046】
次に、面内むら判定部403は、面内むら測定用の全パッチの測色が終了したか否かを判定し(S803)、全パッチの測色が終了するまでステップS802の測色を繰り返す。
【0047】
面内むら測定用の全パッチの測色が終了すると、面内むら判定部403は、面内むらの解析を行う(S804)。つまり、測色値格納部405に格納された測色値に基づき、図6に示すような同心円状の面内むら情報を生成し、面内むら情報格納部404に格納する。
【0048】
図9に示す測定画面901の例では、測色値格納部405に格納される測色値は三つのパッチ分である。この場合、図6に示すように、スクリーンの中心から同心円状の面内むらが存在すると仮定し、パッチ902、903、904の測色値を当該パッチを含む領域905、906、907の情報として、同心円状の面内むら情報を生成する。勿論、図9に示す三つのパッチだけではなく、パッチ数を増やして測定画面901に均等配置するなどすれば、より詳細な面内むら情報を生成することができる。
【0049】
●基準位置と測色位置の取得(S502)
図10は測色位置制御部406が実行する基準位置と測色位置のユーザ指定を取得する処理を示すフローチャートである。
【0050】
測色位置制御部406は、図11に示す位置指定画面1101をプロジェクタ416のスクリーンに表示して、スクリーン上の基準位置を示すユーザ指定を入力し、入力した基準位置を基準位置格納部407に格納する(S1001)。
【0051】
位置指定画面1101は、文字列ウィンドウ1102と位置指定アイコン1103を有する。ユーザは、位置指定アイコン1103を、画像処理装置401に接続された図示しないマウスなどにより、所望する位置に移動し、画像処理装置401に接続された図示しないキーボードのリターンキーを押すなどして、基準の測色位置を入力する。なお、文字列ウィンドウ1102は非表示でもよいし、文字列ウィンドウ1102を移動可能にしてもよい。
【0052】
基準の測色位置とは、ハードウェアキャリブレーションを行う際に、測色の基準となるスクリーン上の位置である。例えば、基準の測色位置がスクリーンの中央に指定されたとする。この場合、調整制御部409は、スクリーンの中央にパッチを表示した場合に当該パッチの測色値が調整目標格納部412に格納された目標範囲に収まるまでステップS505からS507の処理を繰り返すように制御する。
【0053】
次に、測色位置制御部406は、図12に示す位置指定画面1201をプロジェクタ416のスクリーンに表示して、スクリーン上の調整用の測色位置のユーザ指定を入力し、入力した調整用の測色位置を測色位置格納部408に格納する(S1002)。
【0054】
位置指定画面1201は、文字列ウィンドウ1202と位置指定アイコン1203を有する。ユーザは、位置指定アイコン1203を、画像処理装置401に接続された図示しないマウスなどにより、所望する位置に移動し、画像処理装置401に接続された図示しないキーボードのリターンキーを押すなどして、調整用の測色位置を入力する。なお、文字列ウィンドウ1202は非表示でもよいし、文字列ウィンドウ1202を移動可能にしてもよい。
【0055】
調整用の測色位置とは、ハードウェアキャリブレーションを行う際に、図1に示す調整ウィンドウ106のようなプロジェクタ416が表示する調整ウィンドウを避けて測色が可能な位置のことである。調整制御部409は、測色用のパッチを調整用の測色位置に表示する。勿論、図13に一例を示すように、調整ウィンドウ1204が表示された状態で、位置指定画面1201を表示して、調整ウィンドウ1204に重ならない調整用の測色位置を確実に設定できるようにしてもよい。
【0056】
●閾値Aの調整(S503)
図14は調整制御部409が実行する閾値Aを調整する処理を示すフローチャートである。なお、実施例においては、閾値Aは、プロジェクタ416のハードウェア調整項目において、変更可能な最小単位の変化量から算出される値とする。また、閾値A格納部414に格納された閾値Aの初期値は、事前に任意の値を設定しておくものとする。
【0057】
ハードウェアキャリブレーションを行う場合、例えば図2に示す調整サブウィンドウ201において、ホワイトバランスのR値を55%から56%に変更した場合の出力特性の変化量は、プロジェクタ416を作製したメーカやプロジェクタの機種によって異なる。従って、ハードウェアキャリブレーションが正確に行われたか否かを判定する閾値Aを、プロジェクタメーカやプロジェクタ機種の出力特性の変化量に応じて調整することで、更なる精度向上が期待できる。
【0058】
調整制御部409は、図15に示す測色画面1501をプロジェクタ416のスクリーンに表示する(S1401)。
【0059】
図15に一例を示す測色画面1501は、文字列ウィンドウ1502、測色ウィンドウ1504を有する。測色ウィンドウ1504の位置は、測色位置格納部408に格納された調整用の測色位置に対応する。さらに、測色画面1501に重畳して、調整ウィンドウ1503aと調整サブウィンドウ1503bが表示されている。この調整ウィンドウ1503aと調整サブウィンドウ1503bは、プロジェクタ416によって直接表示されたものである。
【0060】
次に、調整制御部409は、測色画面1501の測色ウィンドウ1504にパッチを表示する(S1402)。実施例1では、明るさ調整を例に挙げるため白色、つまり(R, G, B)=(255, 255, 255)のパッチのみを表示する。なお、明るさ調整以外の調整を行う場合は、混色のパッチを測色ウィンドウ1504に表示すればよい。
【0061】
次に、調整制御部409は、測色機417を制御して、測色画面1501の測色ウィンドウ1504に表示したパッチの測色値を入力して、入力した測色値を測色値格納部410に格納する(S1403)。
【0062】
次に、調整制御部409は、プロジェクタ416を制御して出力特性を変更する処理を行う(S1404)。出力特性の変更は、ハードウェアが変更可能な最小単位で行う。例えば、明るさを変更する場合、図16(a)に示す明るさの度合い55%を、図16(b)に示すように56%に変更する。この例の場合、ハードウェアが変更可能な最小単位は1%である。
【0063】
次に、調整制御部409は、再び、測色機417を制御して、測色画面1501の測色ウィンドウ1504に表示したパッチの測色値を入力して、入力した測色値を測色値格納部410に格納する(S1405)。
【0064】
次に、調整制御部409は、閾値A格納部414に格納された閾値Aを調整する(S1406)。閾値Aの調整は、例えば次のようになる。まず、以下の式(2)によって変化量Vを計算する。
V = |La - Lb| …(2)
ここで、La:ステップS1403の測色値、
Lb:ステップS1405の測色値
【0065】
次に、閾値A格納部414に格納された閾値Aと変化量Vを比較して、変化量V>閾値Aの場合は、閾値Aの値を変化量Vの値で置き換える。また、変化量V≦閾値Aの場合は閾値Aを変更しない。
【0066】
●測色(S505)
図17は調整制御部409が実行する測色を示すフローチャートである。
【0067】
調整制御部409は、図15に示す測色画面1501をプロジェクタ416のスクリーンに表示する(S1801)。そして、測色画面1501の測色ウィンドウ1504にパッチを表示する(S1802)。実施例1では、明るさ調整を例に挙げるため、明るさ情報の取得が可能な白色パッチのみを表示する。なお、明るさ調整以外の調整を行う場合は、混色のパッチを測色ウィンドウ1504に表示すればよい。
【0068】
次に、調整制御部409は、測色機417を制御して、測色画面1501の測色ウィンドウ1504に表示したパッチの測色値を入力して、入力した測色値を測色値格納部410に格納する(S1803)。
【0069】
●基準位置の測色値の計算(S506)
次に、調整制御部409が実行する基準位置の測色値の計算処理を説明する。
【0070】
図18は面内むら情報格納部404に格納された面内むら情報を模式的に表す図である。図18の例は、輝度が異なる三つの同心円状の領域があり、中心の領域から輝度がL1>L2>L3と変化することを示している。
【0071】
図19は基準位置格納部407と測色位置格納部408に格納された、スクリーン2001上の基準位置2002と調整用の測色位置2003の一例を示す図である。
【0072】
ここでは、簡単のために、測色値格納部410に格納された測色値は輝度値Lとして説明する。測色値Lは、図19に示すスクリーン2001上の調整用の測色位置2003に表示されたパッチを測色したものである。
【0073】
面内むら情報が示す、調整用の測色位置2003の輝度値はL2であり、基準位置2002の輝度値はL1である。従って、調整制御部409は、式(3)に示すように、L1とL2の差分L1-L2をLに加えて基準位置の測色値Lcにする。
Lc = L + (L1 - L2) …(3)
【0074】
●調整ガイドの更新(S509)
次に、ガイド表示部418が実行する調整ガイドの更新処理を説明する。なお、実施例1は明るさ調整を例に挙げているため、明るさ調整ガイドを更新する例を説明する。
【0075】
ガイド表示部418は、基準位置測色値格納部411に格納された基準位置の測色値Lcと、調整目標格納部412に格納された調整目標値Tに基づき、図7に示す明るさ調整ガイド701を更新する。ガイド表示部418は、LcとTの差分Δを計算し、表示位置が固定の目標ガイド703に対して、差分Δ分ずらした位置に調整ガイド704を表示する。つまり、図7の例は、T<Lcの状態にあることを示している。もし、Lc<Tならば、調整ガイド704は目標ガイドの左側に表示される。
【0076】
このように、画像表示装置の画面上の、ユーザが指定する基準位置の表示特性を、ユーザが指定する測色位置の表示特性から計算することができる。従って、画像表示装置が表示する調整ウィンドウと基準位置が重なる場合でも、調整ウィンドウに邪魔されることなく測色位置の表示特性を測定して、測色位置の表示特性から基準位置の表示特性を把握することができる。
【0077】
また、ユーザが調整ウィンドウを用いてハードウェア調整項目を操作した場合、基準位置の表示特性が目標値に達したか否かを判断する。さらに、目標値に達していない場合は、調整ガイドにより目標値からのずれを表示する。
【0078】
従って、画像表示装置のメーカや機種に影響されずに、常に適切なキャリブレーション結果が得られるように、画像表示装置のキャリブレーションを支援することができる。
【図面の簡単な説明】
【0079】
【図1】ハードウェアキャリブレーションの実施方法の一例を示す図、
【図2】画像表示装置メーカや画像表示装置の機種による、調整ウィンドウの表示位置の違い例を示す図、
【図3】画像表示装置メーカや画像表示装置の機種による、調整ウィンドウの表示位置の違い例を示す図、
【図4】実施例の画像処理装置の構成例を示すブロック図、
【図5】キャリブレータを実行した場合の画像処理装置の動作を説明するフローチャート、
【図6】面内むらの特性例を示す図、
【図7】調整ガイドの一例を示す図、
【図8】面内むら判定部が実行する面内むら情報を取得する処理を示すフローチャート、
【図9】面内むら測定用の測定画面の一例を示す図、
【図10】測色位置制御部が実行する基準位置と測色位置のユーザ指定を取得する処理を示すフローチャート、
【図11】位置指定画面の一例を示す図、
【図12】位置指定画面の一例を示す図、
【図13】位置指定画面の表示方法の一例を示す図、
【図14】調整制御部が実行する閾値Aを調整する処理を示すフローチャート、
【図15】測色画面の一例を示す図、
【図16】ハードウェアが変更可能な出力特性の最小単位を説明する図、
【図17】調整制御部が実行する測色を示すフローチャート、
【図18】面内むら情報を模式的に表す図、
【図19】スクリーン上の基準の測色位置と調整用の測色位置の一例を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像表示装置の画面の表示特性のむらを示すむら情報を取得する第一の特性取得手段と、
前記画像表示装置の画面上の基準位置および測色位置を示す情報を取得する位置情報取得手段と、
前記画像表示装置の画面の、前記測色位置における表示特性を取得する第二の特性取得手段と、
前記第一の特性取得手段が取得したむら情報に基づき、前記第二の特性取得手段が取得した表示特性から前記基準位置の表示特性を計算する特性計算手段とを有することを特徴とする画像処理装置。
【請求項2】
さらに、前記画像表示装置の出力特性を調整可能な最小単位で変更した場合の前記測色位置における表示特性の変化量を取得する第三の特性取得手段と、
前記基準位置の目標表示特性と、前記特性計算手段が計算した前記基準位置の表示特性の差分を計算する差分計算手段と、
前記表示特性の変化量に基づき設定した閾値と、前記差分計算手段が計算した差分を比較して、前記画像表示装置のキャリブレーションの終了を判定する判定手段を有することを特徴とする請求項1に記載された画像処理装置。
【請求項3】
前記差分計算手段が計算した差分に基づき、前記画像表示装置のキャリブレーションを支援するための調整ガイド画像を生成して、前記画像表示装置に出力する生成手段を有することを特徴とする請求項2に記載された画像処理装置。
【請求項4】
前記第一の特性取得手段は、前記画像表示装置に複数のパッチ画像を有するむら測定画面を表示させる測定画面表示手段、および、測色機を介して前記複数のパッチ画像の測色値を入力する測色値入力手段とを有することを特徴とする請求項1に記載された画像処理装置。
【請求項5】
前記第二の特性取得手段は、前記画像表示装置の画面上の前記測色位置にパッチ画像を有する測色画面を表示させる測色画面表示手段、および、測色機を介して前記パッチ画像の測色値を入力する測色値入力手段とを有することを特徴とする請求項1に記載された画像処理装置。
【請求項6】
前記特性計算手段は、前記むら情報から前記基準位置と前記測色位置の表示特性の差分を計算し、前記差分を前記第二の特性取得手段が取得した表示特性に加えて前記基準位置の表示特性にすることを特徴とする請求項1に記載された画像処理装置。
【請求項7】
画像表示装置の画面の表示特性のむらを示すむら情報を取得し、
前記画像表示装置の画面上の基準位置および測色位置を示す情報を取得し、
前記画像表示装置の画面の、前記測色位置における表示特性を取得し、
前記むら情報に基づき、前記測色位置の表示特性から前記基準位置の表示特性を計算することを特徴とする画像処理方法。
【請求項8】
画像処理装置を制御して、請求項7に記載された画像処理を実行することを特徴とするコンピュータプログラム。
【請求項9】
請求項8に記載されたコンピュータプログラムが記録されたことを特徴とするコンピュータが読み取り可能な記憶媒体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2008−147889(P2008−147889A)
【公開日】平成20年6月26日(2008.6.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−331140(P2006−331140)
【出願日】平成18年12月7日(2006.12.7)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】