画像処理装置および方法、並びにプログラム
【課題】分光画像の撮像を高速で実現できるようにする。
【解決手段】偏光板21,23および可変波長板22は、可視光および非可視光を含む入射光を設定された分光透過率で変調し、撮像素子24は、変調された光を撮像し、分光輝度メモリ28は、前記既知の分光輝度からなる入射光と、前記既知の分光輝度からなる入射光が変調されて撮像された撮像結果とを記憶し、変換係数生成部29は、記憶された既知の分光輝度と撮像結果より一般化逆行列を含む線形式を生成して変換係数を求める演算を行い、変換係数メモリ30は、前記変換係数を記憶し、分光画像生成部25は、前記未知の分光輝度からなる入射光が変調されて撮像された撮像結果と、記憶された変換係数との積和により、前記帯域毎の分光画像を生成する。本発明は、分光撮像装置に適用することができる。
【解決手段】偏光板21,23および可変波長板22は、可視光および非可視光を含む入射光を設定された分光透過率で変調し、撮像素子24は、変調された光を撮像し、分光輝度メモリ28は、前記既知の分光輝度からなる入射光と、前記既知の分光輝度からなる入射光が変調されて撮像された撮像結果とを記憶し、変換係数生成部29は、記憶された既知の分光輝度と撮像結果より一般化逆行列を含む線形式を生成して変換係数を求める演算を行い、変換係数メモリ30は、前記変換係数を記憶し、分光画像生成部25は、前記未知の分光輝度からなる入射光が変調されて撮像された撮像結果と、記憶された変換係数との積和により、前記帯域毎の分光画像を生成する。本発明は、分光撮像装置に適用することができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像処理装置および方法、並びにプログラムに関し、特に、高速で分光画像を撮像できるようにした画像処理装置および方法、並びにプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
様々な帯域の分光画像を分光強度に応じて撮像する技術が一般に普及しつつある。
【0003】
分光強度を得る技術として、電気光学効果をもつ材料の可変波長板と2枚の偏光板からなり、印加電圧を可変波長板に印加することにより光の透過率を変化させ、複数の印加電圧に順次変化させつつ入射光の測定を行い、逆フーリエ変換を用いて入射光の分光強度を求める技術が提案されている(特許文献1参照)。
【0004】
この手法は、マイケルソン干渉計の機械的な可動部分を電気光学素子に置き換えることで、機械的な部分を排除し、装置の小型化やメンテナンスの軽減を実現している。
【0005】
【特許文献1】特開昭63−266321号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、マイケルソン干渉計はミラーとハーフミラーで構成されており、理想に近い光の干渉を実現できる。
【0007】
しかしながら、マイケルソン干渉計は、装置構成そのものが大きいため、分光測定すること自体が難しい。これに対して、電気光学素子を使った分光測定の場合、マイケルソン干渉計を用いるよりも分光測定を行うこと自体は容易であるが、一般的に光学的な特性は劣り、電気光学素子の材質の特性のばらつきなどが問題になるため、単にマイケルソン干渉計を電気光学素子に置き換えただけでは、電気光学素子によって新たに生じる問題に対処することができない。
【0008】
また、一般的に利用可能な電気光学素子である液晶パネルを使用する場合、通常、液晶の状態変化は低速であり、印加電圧の時間方向の変化によってその速度は非対称である。つまり、液晶に電圧を印加した場合、電気光学素子は高速で変化することができるが、印加していた電圧を停止させる場合は比較的ゆっくり元の状態に変化する。このように電気光学素子に対して電圧を印加無しから印加ありに変化させた時と、または、印加有りから印加無しに変化させた時とで液晶の複屈折率の変化速度の特性が異なるにもかかわらず、このような特性について考慮されていなかったため、効率よく短時間に高品質の分光画像を撮像することができなかった。
【0009】
本発明はこのような状況に鑑みてなされたものであり、特に、分光画像の撮像において使用される電気光学素子の材質の特性のばらつきなどの問題を考慮すると共に、印加電圧の変化における液晶の複屈折率の変化速度の特性を考慮することにより、効率よく短時間に高品質の分光画像の撮像を実現できるようにするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一側面の画像処理装置は、光を設定された分光透過率で変調する変調手段と、前記変調手段により変調された光を撮像する撮像手段と、既知の分光輝度からなる入射光の分光輝度と、前記既知の分光輝度からなる入射光が前記変調手段により変調されて前記撮像手段により撮像された撮像結果とを記憶する分光輝度記憶手段と、前記分光輝度記憶手段により記憶された情報から第一式を生成し、帯域毎の係数を変換係数として演算する変換係数演算手段と、未知の分光輝度からなる入射光が前記変調手段により変調されて前記撮像手段により撮像された撮像結果と、前記変換係数演算手段により計算された変換係数とから第二式を生成し演算することにより、前記未知の分光輝度からなる入射光の帯域毎の分光画像を生成する分光画像生成手段とを含む。
【0011】
前記第一式は一般化逆行列を含む式とすることができる。
【0012】
前記第二式は積和演算とすることができる。
【0013】
前記変換係数を記憶する変換係数記憶手段を設けるようにさせることができる。
【0014】
前記変調手段は、電気光学素子、および、前記電気光学素子の入射側および出射側に所定の偏向角に設定された偏光板から構成されるようにすることができ、前記電気光学素子の印加電圧により複屈折率が変化することで、分光透過率を変化させるようにすることができ、前記印加電圧により前記変調手段の複屈折率を制御する複屈折率制御手段をさらに設けるようにさせることができる。
【0015】
前記複屈折率制御手段には、前記印加電圧を上昇させながら変調手段の複屈折率を制御させるようにすることができる。
【0016】
前記複屈折率制御手段には、前記印加電圧を下降させながら変調手段の複屈折率を制御させるようにすることができる。
【0017】
本発明の一側面の画像処理方法は、光を設定された分光透過率で変調する変調手段を備える画像処理装置の画像処理方法であって、前記変調手段の分光透過率を設定する分光透過率設定ステップと、前記変調手段により変調された光を撮像する撮像ステップと、既知の分光輝度からなる入射光の分光輝度と、前記既知の分光輝度からなる入射光が前記変調手段により変調されて前記撮像ステップの処理により撮像された撮像結果とを記憶する分光輝度記憶ステップと、前記分光輝度記憶ステップの処理により記憶された情報から前記第一式を生成し、帯域毎の係数を変換係数として演算する変換係数演算ステップと、未知の分光輝度からなる入射光が前記変調手段により変調されて前記撮像ステップの処理により撮像された撮像結果と、前記変換係数とから前記第二式を生成し演算することにより、前記未知の分光輝度からなる入射光の帯域毎の分光画像を生成する分光画像生成ステップとを含む。
【0018】
前記変換係数を記憶する変換係数記憶ステップをさらに含ませるようにすることができ、前記分光画像生成ステップにおいて前記変換係数記憶ステップの処理により記憶された変換係数を用いるようにさせることができる。
【0019】
本発明の一側面のプログラムは、光を設定された分光透過率で変調する変調手段を備える画像処理装置を制御するコンピュータに、前記変調手段の分光透過率を設定する分光透過率設定ステップと、前記変調手段により変調された光を撮像する撮像ステップと、既知の分光輝度からなる入射光の分光輝度と、前記既知の分光輝度からなる入射光が前記変調手段により変調されて前記撮像ステップの処理により撮像された撮像結果とを記憶するする分光輝度記憶ステップと、前記分光輝度記憶ステップの処理により記憶された情報から前記第一式を生成し、帯域毎の係数を変換係数として演算する変換係数演算ステップと、未知の分光輝度からなる入射光が前記変調手段により変調されて前記撮像ステップの処理により撮像された撮像結果と、前記変換係数とから前記第二式を生成し演算することにより、前記未知の分光輝度からなる入射光の帯域毎の分光画像を生成する分光画像生成ステップとを含む処理を実行させる。
【0020】
前記変換係数を記憶する変換係数記憶ステップをさらに含ませるようにすることができ、前記分光画像生成ステップにおいて前記変換係数記憶ステップの処理により記憶された変換係数を用いるようにさせることができる。
【0021】
本発明のプログラム格納媒体は、請求項10に記載のプログラムが格納されている。
【0022】
本発明の一側面の画像処理装置および方法、並びにプログラムにおいては、光が設定された分光透過率で変調され、変調された光が撮像され、既知の分光輝度からなる入射光の分光輝度と、前記既知の分光輝度からなる入射光が変調されて撮像された撮像結果とが記憶され、記憶された情報から第一式が生成され、帯域毎の係数が変換係数として演算され、未知の分光輝度からなる入射光が変調されて撮像された撮像結果と、計算された変換係数とから第二式が生成され演算されることにより、前記未知の分光輝度からなる入射光の帯域毎の分光画像が生成される。
【発明の効果】
【0023】
本発明の一側面によれば、特に、分光画像の撮像において使用される電気光学素子の材質の特性のばらつきなどの問題を考慮すると共に、印加電圧の変化における液晶の複屈折率の変化速度の特性を考慮することにより、効率よく短時間に高品質の分光画像の撮像を実現することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
図1は、本発明を適用した一実施の形態の構成を示す分光撮像装置である。
【0025】
図1の分光撮像装置11は、動画または静止画の可視光および非可視光を含む分光画像を撮像する。分光画像とは、画素毎に複数の周波数帯域毎の輝度を記録した画像である。また、発光部12は、分光撮像装置11に対して、分光輝度が既知の複数の異なる分光輝度を有する光を発する。さらに、発光部12がp種類の分光輝度の光を発行可能である場合、図示しない内部もしくは外部にあるカウンタの操作によって順次異なる分光輝度の光を発光することができるものとする。発光部12が発する複数の異なる分光輝度を有する光は、可視光および非可視光を含む。さらに、分光輝度とは、分光される光の各帯域の強度を表している。なお、発光部12を所定の光源と複数の所定の色表で構成し、その光源から発し、複数の各色表で反射し、分光撮像装置11に向かう光の各分光輝度を校正済みの分光測定器で測定して、その各測定結果を分光輝度メモリ28に記憶させて、さらに分光撮像装置11に対して、それらの反射光を発光部12を発光した場合と同様に入光させてもよい。
【0026】
偏光板21は、入射光を所定の角度に直線偏光して可変波長板22に出射させる。可変波長板22は、2枚のガラス板に挟まれた空間に満たされた液晶などの電気光学素子から構成され、例えば、2KHzの交流矩形波発信機などからなる可変波長板制御部27により印加される電圧により複屈折量が変化することにより、偏光板21より垂直に入射される直線偏光された入射光を、電圧に応じた角度で楕円偏光して、偏光板23に出射させる。尚、可変波長板22は、同様の機能を備えたものであれば液晶以外のものであってもよいし、複屈折量を電圧ではなく音波などで変化させる音響光学素子などにより構成するようにしてもよい。
【0027】
偏光板23は、可変波長板22より入射される楕円偏光された入射光を所定の角度に直線偏光して撮像素子24に向かって出射させる。撮像素子24は、CCD(Charge Coupled Devices)、またはCMOS(Complementary Metal-Oxide Semiconductor)などから構成されており、偏光板23からの入射光を撮像し、画像データとして分光画像生成部25および分光輝度メモリ28に供給する。偏光板21,23は、相互にクロスニコルまたはパラニコルに配置する。なお、光学レンズ31は一般的なカメラを構成する時に使われる像を結像させるためのレンズまたはレンズの組で良い。さらに、光学レンズ31には、絞りや特定の波長の光をさえぎる光学フィルタを含めて考えても良い。また、偏光板21、23および可変波長板22に対する光学レンズ31の位置は、カメラの光学系が正しく機能する限り任意である。
【0028】
このような構成により、偏光板21,23および可変波長板22は、入射光を、例えば、図2で示されるように変調処理し、撮像素子24に入射させる。尚、図2においては、偏光板21,23は、可変波長板22を構成する電気光学素子の配向方向に対して45°の角度をなしている。また、図2の上段の枠内において実線で示されるのは、比較的波長の長い入射光の直線偏光および楕円偏光を示しており、中段の枠内において点線で示されるのは、波長が中程度の入射光の直線偏光および楕円偏光を示しており、下段の枠内において一点鎖線で示されるのは、比較的波長が短い入射光の直線偏光および楕円偏光を示している。さらに、図2において、直線、点線、および一点鎖線で示される枠内の形状は、直線偏光および楕円偏光のそれぞれの図2の紙面に対して垂直方向に進行する光の電場ベクトルの軌跡を紙面上に投影したものである。
【0029】
すなわち、図中左から2番目の枠で示されるように、偏光板21は、波長に関わらず図2の実線、点線、および一点鎖線で示されるようにいずれも、入射光を45°に直線偏光して可変波長板22に入射させる。そして、可変波長板22は、可変波長板制御部27により印加される電圧に応じて、楕円偏光させる。この際、波長の長さに応じて、発生する位相差が異なるため、図中右から2番目の枠で示されるように、楕円形の長半径方向の角度が異なる楕円偏光を生じさせ、偏光板23に入射させる。図中右から1番目の枠で示されるように、偏光板23は、可変波長板22により楕円偏光された光を45°の角度に直線偏光させて出力する。図2で示されるように、楕円偏光により入射光の波長毎に楕円偏光を形成する楕円形の長半径方向の角度が異なるため、偏光板23の出射光の強度は、波長により異なる。図2においては、最も短波長の入射光に対応する一点鎖線の直線偏光による波形は大きいため、最も強い光となる。これに対して、最も長い波長の入射光に対応する実線の直線偏光による波形は小さいため、最も弱い光となる。このような原理により、図2においては、図中の下段の波長が比較的短い入射光の周波数帯域に属する光が最も良く透過し、図中の上段の波長が比較的長い入射光の周波数帯域に属する光が最も透過されない様に変調されて、撮像素子24の各画素により撮像されることになる。また、可変波長板22は、印加される電圧により複屈折が変化することで、楕円偏光により生じる長半径の角度が異なる。このため、印加電圧を切り替えることで様々な波長に依存した透過特性で光を変調することができる。
【0030】
分光輝度メモリ28は、変換係数生成処理がなされるときにのみ動作し、発光部12から入力される分光輝度と、撮像素子24により撮像された変調信号からなる画像信号と画素ごとに対応付けて記憶して、変換係数生成部29に供給する。
【0031】
変換係数生成部29は、一般化逆行列演算部29aを制御して、分光輝度メモリ28より供給されてきた画素ごとに対応付けられた分光輝度および画像信号より変換係数を求めて、変換係数メモリ30に記憶させる。変換係数メモリ30は、未知物体を撮影するたびに、変換係数生成部29が同じ変換係数を毎回計算する無駄を省くために用いられる。
【0032】
分光画像生成部25は、撮像素子24より供給されてくる変調光の強度の情報と、変換係数の積和演算により、分光画像を生成し、CRT(Cathode Ray Tube)やLCD(Liquid Crystal Display)などからなる表示部26に表示させる。なお、生成した分光画像データは他の画像処理等の用途に当然活用できる。また、データをハードディスク等にファイル等の形式でそのデータを保存して再利用してもよい。
【0033】
次に、図3のフローチャートを参照して、変換係数メモリ30に登録される変換係数生成処理について説明する。
【0034】
ステップS1において、発光部12は、p種類の異なる既知の分光輝度の光を発光できるものとし、そのp種類の内の最初の光を発すると共に、分光輝度の情報を分光輝度メモリ28に供給する。分光輝度メモリ28は、発光部12により発せられている光の分光輝度の情報を取得する。すなわち、発光部12が発する光の分光輝度の情報とは、例えば、光の波長を帯域幅200nm乃至800nmで10nm単位で区切った範囲を分光輝度の1つのバンドとみなす場合、全部で59バンドあり、波長が200nm以上210nm未満の帯域は、強度x1であり、波長が210nm以上220nm未満の帯域は、強度x2であり、・・・波長が790nm以上800nm未満の帯域は、m=59とすると強度xmといった帯域毎のx1乃至xmの強度の情報である。
【0035】
これらのx1乃至xmの情報に基づいて、以下の式(1)で示されるベクトルを生成し、分光輝度メモリ28に供給する。
【0036】
【数1】
・・・(1)
【0037】
また、このとき、発光部12により発光された光は、偏光板21に入射する。尚、ここでは、帯域幅は、200nm乃至800nmであるものとするが、発光部12、光学レンズ31、偏光板21、偏光板23、可変波長板22、撮像素子24、および可変波長板制御部27の性能により、当然のことながらそれ以外の帯域幅であってもよい。
【0038】
ステップS2において、可変波長板制御部27は、可変波長板22に対して印加する電圧を最低電圧に設定する。
【0039】
ステップS3において、可変波長板制御部27は、可変波長板22に対して、設定された電圧を印加する。これにより、図2で説明したように、可変波長板22は、偏光板21、偏光板23と共に組み合わされた光学系によって、印加電圧に応じた分光透過率が設定され、光を変調することができる。
【0040】
ステップS4において、撮像素子24は、発光部12が発した光が偏光板21、可変波長板22、偏光板23、光学レンズ31を通過して入射されてくる、変調された変調光に基づいて画像を撮像し、撮像結果となる変調信号を分光輝度メモリ28および分光画像生成部25に供給する。
【0041】
ステップS5において、分光輝度メモリ28は、撮像素子24より供給されてきた変調信号からなる撮像結果を画素毎に記憶する。
【0042】
ステップS6において、分光画像生成部25は、直前の設定電圧で印加された可変波長板22により変調された変調光の撮像が終了したことを可変波長板制御部27に通知する。これに応じて、可変波長板制御部27は、今現在設定されている印加電圧が最大値であるか、すなわち、印加可能な最大電圧であるか否かを判定し、例えば、最大値ではないと判定された場合、処理は、ステップS7に進む。
【0043】
ステップS7において、可変波長板制御部27は、所定電圧だけ印加電圧を上昇させて設定し、処理は、ステップS3に戻る。そして、ステップS6において、印加電圧が最大値であると判定されるまで、ステップS3乃至S7の処理が繰り返される。そして、ステップS6において、印加電圧が最大値であると判定された場合、処理は、ステップS8に進む。
【0044】
すなわち、所定電圧とは、複屈折率を1段階変化させるための印加電圧の上昇電圧であり、可変波長板22に印加される電圧が、例えば、最低電圧で撮像素子24により撮像された撮像結果y1を分光輝度メモリ28に供給して記憶させると、印加電圧を所定電圧だけ上昇させることにより、再び撮像素子24により撮像された撮像結果y2を分光輝度メモリ28に供給して記憶させる。そして、この処理が順次繰り返され、最高電圧において撮像素子24により撮像された撮像結果ynが分光輝度メモリ28に供給されて記憶されるまで繰り返される。この結果、y1乃至ynの撮像結果、すなわち、変調信号からなる観測結果に基づいて、以下の式(2)で示されるベクトルを生成し、これが画素単位で分光輝度メモリ28に供給される。
【0045】
【数2】
・・・(2)
【0046】
なお、この繰り返し毎の印加電圧の上昇間隔を、アプリケーションに応じて分光撮像結果が正しく得られる限りにおいて密にしたり疎にしたり可変にする校正を行い、この繰り返し回数が最小になるように調整してもよい。
【0047】
ステップS8において、分光画像生成部25は、発光部12が発した直前の光での撮像が終了したことを発光部12に通知する。これに応じて、発光部12は図示しない内部または外部にあるカウンタを1増加させる。このカウンタを1増加させる時にこのカウンタの最大値を超えたか、すなわち、発光可能なp種類の光をすべて発行済みか否かが判定され、例えば、最大値を超えてないと判定された場合、処理は、ステップS9に進む。
【0048】
ステップS9において、図示しない内部または外部にあるカウンタの直前とは異なる現在のカウンタ値に対応した次の既知の分光輝度の光の発光を開始し、処理は、ステップS2に戻る。そして、ステップS8において、カウンタ値が最大を超えたと判定されるまで、ステップS2乃至ステップS9の処理が繰り返される。そして、ステップS8において、カウンタ値が最大を超えたと判定された場合、処理は、ステップS10に進む。
【0049】
ステップS10において、変換係数生成部29は、発光部12の分光輝度の式(1)の情報と、画素毎の観測結果である式(2)に基づいて、以下の式(3)で示される線形式を生成し、一般化逆行列演算部29aに供給する。
【0050】
【数3】
・・・(3)
【0051】
式(3)の右辺の行列Yの右上にマイナス記号はその行列が一般化逆行列であることを表す。変換係数生成部29は、一般化逆行列演算部29aを制御して、供給されてきた式(3)の行列Yについて例えば、最小二乗法により、その一般化逆行列の数値解を求め、そして左辺のベクトルb1乃至bmからなる行列Bを行列Xと行列Yの積の演算により求める。
【0052】
求められた一般化逆行列である行列Yは、最小二乗法を応用した演算により逆行列に近い尤もらしい行列として求められる。行列Yは、一般化逆行列であるため、図3のフローチャートの例においては、また、測定回数nと既知の分光輝度の数pが一致しない場合でも、帯域毎のベクトルb1乃至bmとして求めることが可能である。
【0053】
ステップS11において、変換係数生成部29は、求められた帯域毎のベクトルb1乃至bmからなる行列Bを変換係数メモリ30に記憶する。なお、変換係数メモリ30は、未知物体を撮影するたびに、ステップS1からステップS10によって同じ変換係数を毎回計算する無駄を省くために用いられる。
【0054】
以上の処理により可変波長板22の特性に応じた既知の分光輝度の画像と撮像素子24による撮像結果との対応関係を示す変換係数が、画素単位で求められて変換係数メモリ30に登録される。すなわち、変換係数は、撮像素子24により撮像された全帯域の撮像結果を用いて分光輝度を求める逆問題を解くための係数として求められる。
【0055】
次に、図4のフローチャートを参照して、静止画撮像時の分光画像撮像処理について説明する。
【0056】
ステップS21において、可変波長板制御部27は、可変波長板22に対して印加する電圧を最低電圧に設定する。
【0057】
ステップS22において、可変波長板制御部27は、可変波長板22に対して、設定された電圧を印加する。これにより、図2で説明したように、可変波長板22は、偏光板21、偏光板23と共に組み合わされた光学系によって、印加電圧に応じた分光透過率が設定され、光を変調することができる。
【0058】
ステップS23において、撮像素子24には、発光部12が発した光が偏光板21、可変波長板22、偏光板23、光学レンズ31を通過して入射されてくる、変調光に基づいて画像を撮像し、撮像結果となる変調信号を画素毎に分光画像生成部25に供給する。
【0059】
ステップS24において、分光画像生成部25は、撮像素子24より供給されてきた変調信号からなる撮像結果を観測結果として画素毎に記憶する。
【0060】
ステップS25において、分光画像生成部25は、直前の設定電圧で印加された可変波長板22により変調された光の撮像が終了したことを可変波長板制御部27に通知する。これに応じて、可変波長板制御部27は、今現在設定されている印加電圧が最大値であるか、すなわち、印加可能な最大電圧であるか否かを判定し、例えば、最大値ではないと判定された場合、処理は、ステップS26に進む。
【0061】
ステップS26において、可変波長板制御部27は、所定電圧だけ印加電圧を上昇させて設定し、処理は、ステップS22に戻る。そして、ステップS25において、印加電圧が最大値であると判定されるまで、ステップS22乃至S26の処理が繰り返される。すなわち、印加電圧を切り替えながら、複屈折率を変化させ、変調光により画像を撮像する。そして、ステップS25において、印加電圧が最大値であると判定された場合、すなわち、全ての撮像が完了したとみなされた場合、処理は、ステップS27に進む。
【0062】
なお、この繰り返し毎の印加電圧の上昇間隔は、図3のフローチャートにおける変換係数生成処理と同じ間隔を再現するように行う。これにより、可変波長板22の透過特性を、変換係数生成処理を行う時と分光画像撮像処理を行う時と同一にすることができ、それによって同一条件で撮像することができる。
【0063】
ステップS27において、分光画像生成部25は、図3のフローチャートを参照して説明した処理により、分光係数メモリ30に記憶されている分光係数を読み出す。
【0064】
ステップS28において、分光画像生成部25は、ステップS22乃至S26の処理により記憶された変調信号からなる観測結果y1乃至ynと、読み出した変換係数であるベクトルb1乃至bmとを用いて、以下の式(4)に示す積和演算により、画素毎に各バンドの分光強度x1乃至xmを求め、表示部26に供給する。すなわち、例えば、上述の例と同様の場合、行列Bの各帯域に対応する要素がベクトルb1乃至bmであるので、分光画像生成部25は、所定の画素の200nm以上210nm未満の帯域の分光強度x1を、ベクトルb1の各要素と全帯域の変調信号である観測結果y1乃至ynとの積和により演算し、所定の画素の210nm以上220nm未満の帯域の分光強度x2を、ベクトルb2の各要素と全帯域の変調信号である観測結果y1乃至ynとの積和により演算し、・・・所定の画素の790nm以上800nm未満の帯域の分光強度xmを、ベクトルbmの各要素と全帯域の変調信号である観測結果y1乃至ynとの積和により演算する。
【0065】
【数4】
・・・(4)
【0066】
ステップS29において、表示部26は、分光画像生成部25より供給されてきた画素毎の分光結果を表示する。この際、表示部26は、例えば、表示する分光強度のうち、図示せぬ入力装置が使用者に操作されることにより指定された特定の帯域の分光強度のみからなる1枚の画像を全画面表示するようにしても良いし、全ての帯域の分光強度により生成される画面をマルチウィンドウのように全て表示するようにしても良い。なお、生成した分光画像データは他の画像処理等の用途に当然活用できる。また、データをハードディスク等にファイル等の形式でそのデータを保存して再利用してもよい。
【0067】
ステップS30において、分光画像生成部25は、次の画像が存在するか否かを判定し、次の画像が存在する場合、処理は、ステップS21に戻り、それ以降の処理が繰り返される。また、ステップS30において、次の画像が存在しないと判定された場合、処理は、終了する。
【0068】
以上の処理により従来行われていたような逆フーリエ変換を用いることなく、光学素子の特性のばらつき等があっても柔軟に分光画像を撮像することが可能となる。また、例えば、マイケルソン干渉計などのような大型の装置を動作させることなく容易に分光画像を撮像することが可能となる。
【0069】
ここで、マイケルソン干渉計は、例えば、図5で示されるように、ハーフミラーHMI、固定型ミラーM1、可動型ミラーM2、およびディテクタDより構成される。図5で示されるようなマイケルソン干渉計を用いた分光計測を行う場合、点光源L1により発せられた光は、光路r1乃至r4、および光路r1+r11乃至r13を介してディテクタDにより観測される。この際、ハーフミラーHMIと固定型ミラーM1との距離はd1で一定であるが、ハーフミラーHMIと可動型ミラーM2との距離は可変のd2となる。そこで、光路差は、(2×|d2−d1|)として表現される。この光路差により生じる光の干渉によりディテクタDにより観測される強度が逆フーリエ変換されることにより分光強度が求められることになる。しかしながら、図5で示されるようなマイケルソン干渉計を用いた場合、光路差を精密に実現する機械的な装置構成が大きくなると共に、点光源から1画素ごとにマイケルソン干渉計を構成する必要があるため、装置の構成が大型化すると共に、極めて煩雑な動作をさせる必要があった。
【0070】
これに対して、上述した手法によれば、観測に必要とされるのは、既存の2次元状の撮像素子で可能となるので、装置構成を安価で容易なものとすることが可能となる。さらに、可変波長板22における電気光学素子の材質の特性のばらつきなどに起因する個体差が発生しても、変換係数生成処理により可変波長板22の特性に応じた係数を求めることが可能となるので、可変波長板22における特性による測定の誤差を小さくすることが可能となり、効率よく短時間に高品質の分光画像を撮像することが可能となる。
【0071】
図4のフローチャートにおいては、ステップS26の処理により、徐々に可変波長板22への印加電圧が上昇されていく例について説明してきたが、全てのバンドに対して観測が行えればよいので、必ずしも徐々に上昇させる必要はなく、ランダムに電圧を変位させるようにしても良いし、下降させるようにしても良い。
【0072】
ところで、可変波長板22を構成する物質に液晶を用いた場合、電圧の印加無しから印加有りに変化させた時での液晶の特性変化の挙動と、印加有りから印加無しに変化させた時での液晶の特性変化の挙動とが異なる。すなわち、可変波長板22は、図6の下部の時刻taで示されるように、電圧の印加が印加有りから印加無しに変化すると、図6の上部の時刻taで示されるように、緩やかに液晶の特性変化が起こる。一方、可変波長板22は、図7の下部の時刻tbで示されるように、電圧の印加が印加無しから印加有りに変化すると、図7の上部の時刻tbで示されるように、急峻に液晶の状態は変化する。
【0073】
尚、図6,図7においては、図中の上部が可変波長板22における液晶の複屈折率Δnを表している。また、図中の下部は、波長板22に印加される電圧Vを表しており、上下の電圧は印加電圧を表しており、交流動作が示されている状態が印加状態を表し、0Vの状態が印加が停止されている状態を表している。
【0074】
以上のような特性から、図4のフローチャートの処理において、ステップS22乃至S26の処理が繰り返されると、図8の下部で示されるように印加電圧Vは時刻t1乃至t4で示されるように徐々に上昇し、図8の上部で示されるように、印加電圧の電圧値に対応して可変波長板22の複屈折率Δnも変化していくことになる。例えば、時刻t0乃至t5の処理で、1枚の分光画像が撮像されるものとし、図8の下部の時刻t5で示されるように、印加電圧を停止させた場合、図8の上部の時刻t5乃至t6で示されるように、可変波長板22の複屈折率Δnは、緩やかに減衰していく。この動作により、静止画撮影時には静止画を最小時間で撮影できる。一方、この動作は、静止画においては、次の画像が存在しないので、問題がないが、連続的に画像を切り替えて表示させるような場合、時刻t5で示されるように、印加電圧Vが停止した後に、可変波長板22の動作状態Δnが一定値に戻るまでに撮影のための露光ができない時間ができるため、動画の時間的な連続性が損なわれ表示画像に動きがカクカクした印象の不連続性が現れる恐れがある。
【0075】
そこで、印加電圧を最大値から所定電圧だけ降下させながら上述した動作を実行させることにより、動画に対応させるようにしても良い。
【0076】
ここで、図9のフローチャートを参照して、印加電圧を最大値から所定電圧だけ降下させながら上述した動作を実行させるときの動画撮像時の分光画像撮像処理を説明する。尚、図9のフローチャートにおいては、ステップS42乃至S44,S47乃至S50の動作は、図4におけるフローチャートのステップS22乃至S24,S27乃至S30の動作と同様であるので、その説明は省略する。
【0077】
すなわち、ステップS41において、可変波長板制御部27は、可変波長板22に対して印加する電圧を最高電圧に設定する。
【0078】
そして、ステップS42乃至S44において、所定の電圧において変調画像が測定され、ステップS45において、可変波長板制御部27が、最小値ではないと判定した場合、ステップS46において、印加電圧を所定電圧だけ降下させ、処理は、ステップS42に戻る。すなわち、可変波長板22に印加される印加電圧が最高電圧から所定電圧ごとに降下しながらステップS42乃至S46の処理が繰り返される。そして、ステップS45において、印加電圧が最小値であると判定された場合、ステップS47乃至S50の処理により、変換係数と観測結果との積和演算により、画素毎に分光強度が計算されて、分光画像が表示される。
【0079】
このような処理により、図10の下部の時刻t11乃至t16で示されるように、1フレーム分の分光画像が撮像される場合、図10の上部で示されるように、時刻t12,t13,t14,t15のそれぞれの直後のタイミングにおいて印加電圧が変化するが、降下電圧が所定電圧分のみであることにより、液晶の複屈折率が緩やかに減衰する期間を短くすることが可能となり、印加電圧の変化による影響を小さくすることが可能となる。また、図10の下部の時刻t16で示されるように、1フレーム分の画像を表示し終えるタイミングにおいては、その直前で印加電圧が最低電圧まで低下した状態となるので、さらに、次のフレームの分光画像を撮像するタイミングで印加電圧を最高電圧にしたとき、急峻に液晶の複屈折率を変化させることが可能となるため、短時間で次の分光画像の撮像を開始することが可能となる。
【0080】
以上によれば、分光画像の撮像において使用される電気光学素子の材質の特性のばらつきなどの問題を考慮すると共に、印加電圧の変化における液晶の複屈折率の変化速度の特性を考慮することにより、高品質な分光画像の撮像を静止画においては短時間で撮影し、動画撮影時においては時間的な連続性を保ちつつ撮影するが可能となる。
【0081】
ところで、上述した一連の情報処理は、ハードウェアにより実行させることもできるが、ソフトウェアにより実行させることもできる。一連の処理をソフトウェアにより実行させる場合には、そのソフトウェアを構成するプログラムが、専用のハードウェアに組み込まれているコンピュータ、または、各種のプログラムをインストールすることで、各種の機能を実行することが可能な、例えば汎用のパーソナルコンピュータなどに、記録媒体からインストールされる。
【0082】
図11は、汎用のパーソナルコンピュータの構成例を示している。このパーソナルコンピュータは、CPU(Central Processing Unit)1001を内蔵している。CPU1001にはバス1004を介して、入出力インタフェース1005が接続されている。バス1004には、ROM(Read Only Memory)1002およびRAM(Random Access Memory)1003が接続されている。
【0083】
入出力インタフェース1005には、ユーザが操作コマンドを入力するキーボード、マウスなどの入力デバイスよりなる入力部1006、処理操作画面や処理結果の画像を表示デバイスに出力する出力部1007、プログラムや各種データを格納するハードディスクドライブなどよりなる記憶部1008、LAN(Local Area Network)アダプタなどよりなり、インターネットに代表されるネットワークを介した通信処理を実行する通信部1009が接続されている。また、磁気ディスク(フレキシブルディスクを含む)、光ディスク(CD-ROM(Compact Disc-Read Only Memory)、DVD(Digital Versatile Disc)を含む)、光磁気ディスク(MD(Mini Disc)を含む)、もしくは半導体メモリなどのリムーバブルメディア1011に対してデータを読み書きするドライブ1010が接続されている。
【0084】
CPU1001は、ROM1002に記憶されているプログラム、または磁気ディスク、光ディスク、光磁気ディスク、もしくは半導体メモリ等のリムーバブルメディア1011から読み出されて記憶部1008にインストールされ、記憶部1008からRAM1003にロードされたプログラムに従って各種の処理を実行する。RAM1003にはまた、CPU1001が各種の処理を実行する上において必要なデータなども適宜記憶される。
【0085】
尚、本明細書において、記録媒体に記録されるプログラムを記述するステップは、記載された順序に沿って時系列的に行われる処理は、もちろん、必ずしも時系列的に処理されなくとも、並列的あるいは個別に実行される処理を含むものである。
【図面の簡単な説明】
【0086】
【図1】本発明を適用した分光撮像装置の構成例を示すブロック図である。
【図2】分光画像の撮像の原理を説明する図である。
【図3】変換係数生成処理を説明するフローチャートである。
【図4】静止画撮像時の分光画像撮像処理を説明するフローチャートである。
【図5】マイケルソン干渉計による分光測定を説明する図である。
【図6】可変波長板の動作特性を説明する図である。
【図7】可変波長板の動作特性を説明する図である。
【図8】図4の分光画像撮像処理における可変波長板の複屈折率の特性を説明する図である。
【図9】動画撮像時の分光画像撮像処理を説明するフローチャートである。
【図10】図9の分光画像撮像処理における可変波長板の複屈折率の特性を説明する図である。
【図11】パーソナルコンピュータの構成例を説明する図である。
【符号の説明】
【0087】
11 分光撮像装置, 12 発光部, 21 偏光板, 22 可変波長板, 23 偏光板, 24 撮像素子, 25 分光画像生成部, 26 表示部, 27 可変波長板制御部, 28 分光輝度メモリ, 29 変換係数生成部, 29a 一般化逆行列演算部, 30 変換係数メモリ、31 光学レンズ
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像処理装置および方法、並びにプログラムに関し、特に、高速で分光画像を撮像できるようにした画像処理装置および方法、並びにプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
様々な帯域の分光画像を分光強度に応じて撮像する技術が一般に普及しつつある。
【0003】
分光強度を得る技術として、電気光学効果をもつ材料の可変波長板と2枚の偏光板からなり、印加電圧を可変波長板に印加することにより光の透過率を変化させ、複数の印加電圧に順次変化させつつ入射光の測定を行い、逆フーリエ変換を用いて入射光の分光強度を求める技術が提案されている(特許文献1参照)。
【0004】
この手法は、マイケルソン干渉計の機械的な可動部分を電気光学素子に置き換えることで、機械的な部分を排除し、装置の小型化やメンテナンスの軽減を実現している。
【0005】
【特許文献1】特開昭63−266321号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、マイケルソン干渉計はミラーとハーフミラーで構成されており、理想に近い光の干渉を実現できる。
【0007】
しかしながら、マイケルソン干渉計は、装置構成そのものが大きいため、分光測定すること自体が難しい。これに対して、電気光学素子を使った分光測定の場合、マイケルソン干渉計を用いるよりも分光測定を行うこと自体は容易であるが、一般的に光学的な特性は劣り、電気光学素子の材質の特性のばらつきなどが問題になるため、単にマイケルソン干渉計を電気光学素子に置き換えただけでは、電気光学素子によって新たに生じる問題に対処することができない。
【0008】
また、一般的に利用可能な電気光学素子である液晶パネルを使用する場合、通常、液晶の状態変化は低速であり、印加電圧の時間方向の変化によってその速度は非対称である。つまり、液晶に電圧を印加した場合、電気光学素子は高速で変化することができるが、印加していた電圧を停止させる場合は比較的ゆっくり元の状態に変化する。このように電気光学素子に対して電圧を印加無しから印加ありに変化させた時と、または、印加有りから印加無しに変化させた時とで液晶の複屈折率の変化速度の特性が異なるにもかかわらず、このような特性について考慮されていなかったため、効率よく短時間に高品質の分光画像を撮像することができなかった。
【0009】
本発明はこのような状況に鑑みてなされたものであり、特に、分光画像の撮像において使用される電気光学素子の材質の特性のばらつきなどの問題を考慮すると共に、印加電圧の変化における液晶の複屈折率の変化速度の特性を考慮することにより、効率よく短時間に高品質の分光画像の撮像を実現できるようにするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一側面の画像処理装置は、光を設定された分光透過率で変調する変調手段と、前記変調手段により変調された光を撮像する撮像手段と、既知の分光輝度からなる入射光の分光輝度と、前記既知の分光輝度からなる入射光が前記変調手段により変調されて前記撮像手段により撮像された撮像結果とを記憶する分光輝度記憶手段と、前記分光輝度記憶手段により記憶された情報から第一式を生成し、帯域毎の係数を変換係数として演算する変換係数演算手段と、未知の分光輝度からなる入射光が前記変調手段により変調されて前記撮像手段により撮像された撮像結果と、前記変換係数演算手段により計算された変換係数とから第二式を生成し演算することにより、前記未知の分光輝度からなる入射光の帯域毎の分光画像を生成する分光画像生成手段とを含む。
【0011】
前記第一式は一般化逆行列を含む式とすることができる。
【0012】
前記第二式は積和演算とすることができる。
【0013】
前記変換係数を記憶する変換係数記憶手段を設けるようにさせることができる。
【0014】
前記変調手段は、電気光学素子、および、前記電気光学素子の入射側および出射側に所定の偏向角に設定された偏光板から構成されるようにすることができ、前記電気光学素子の印加電圧により複屈折率が変化することで、分光透過率を変化させるようにすることができ、前記印加電圧により前記変調手段の複屈折率を制御する複屈折率制御手段をさらに設けるようにさせることができる。
【0015】
前記複屈折率制御手段には、前記印加電圧を上昇させながら変調手段の複屈折率を制御させるようにすることができる。
【0016】
前記複屈折率制御手段には、前記印加電圧を下降させながら変調手段の複屈折率を制御させるようにすることができる。
【0017】
本発明の一側面の画像処理方法は、光を設定された分光透過率で変調する変調手段を備える画像処理装置の画像処理方法であって、前記変調手段の分光透過率を設定する分光透過率設定ステップと、前記変調手段により変調された光を撮像する撮像ステップと、既知の分光輝度からなる入射光の分光輝度と、前記既知の分光輝度からなる入射光が前記変調手段により変調されて前記撮像ステップの処理により撮像された撮像結果とを記憶する分光輝度記憶ステップと、前記分光輝度記憶ステップの処理により記憶された情報から前記第一式を生成し、帯域毎の係数を変換係数として演算する変換係数演算ステップと、未知の分光輝度からなる入射光が前記変調手段により変調されて前記撮像ステップの処理により撮像された撮像結果と、前記変換係数とから前記第二式を生成し演算することにより、前記未知の分光輝度からなる入射光の帯域毎の分光画像を生成する分光画像生成ステップとを含む。
【0018】
前記変換係数を記憶する変換係数記憶ステップをさらに含ませるようにすることができ、前記分光画像生成ステップにおいて前記変換係数記憶ステップの処理により記憶された変換係数を用いるようにさせることができる。
【0019】
本発明の一側面のプログラムは、光を設定された分光透過率で変調する変調手段を備える画像処理装置を制御するコンピュータに、前記変調手段の分光透過率を設定する分光透過率設定ステップと、前記変調手段により変調された光を撮像する撮像ステップと、既知の分光輝度からなる入射光の分光輝度と、前記既知の分光輝度からなる入射光が前記変調手段により変調されて前記撮像ステップの処理により撮像された撮像結果とを記憶するする分光輝度記憶ステップと、前記分光輝度記憶ステップの処理により記憶された情報から前記第一式を生成し、帯域毎の係数を変換係数として演算する変換係数演算ステップと、未知の分光輝度からなる入射光が前記変調手段により変調されて前記撮像ステップの処理により撮像された撮像結果と、前記変換係数とから前記第二式を生成し演算することにより、前記未知の分光輝度からなる入射光の帯域毎の分光画像を生成する分光画像生成ステップとを含む処理を実行させる。
【0020】
前記変換係数を記憶する変換係数記憶ステップをさらに含ませるようにすることができ、前記分光画像生成ステップにおいて前記変換係数記憶ステップの処理により記憶された変換係数を用いるようにさせることができる。
【0021】
本発明のプログラム格納媒体は、請求項10に記載のプログラムが格納されている。
【0022】
本発明の一側面の画像処理装置および方法、並びにプログラムにおいては、光が設定された分光透過率で変調され、変調された光が撮像され、既知の分光輝度からなる入射光の分光輝度と、前記既知の分光輝度からなる入射光が変調されて撮像された撮像結果とが記憶され、記憶された情報から第一式が生成され、帯域毎の係数が変換係数として演算され、未知の分光輝度からなる入射光が変調されて撮像された撮像結果と、計算された変換係数とから第二式が生成され演算されることにより、前記未知の分光輝度からなる入射光の帯域毎の分光画像が生成される。
【発明の効果】
【0023】
本発明の一側面によれば、特に、分光画像の撮像において使用される電気光学素子の材質の特性のばらつきなどの問題を考慮すると共に、印加電圧の変化における液晶の複屈折率の変化速度の特性を考慮することにより、効率よく短時間に高品質の分光画像の撮像を実現することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
図1は、本発明を適用した一実施の形態の構成を示す分光撮像装置である。
【0025】
図1の分光撮像装置11は、動画または静止画の可視光および非可視光を含む分光画像を撮像する。分光画像とは、画素毎に複数の周波数帯域毎の輝度を記録した画像である。また、発光部12は、分光撮像装置11に対して、分光輝度が既知の複数の異なる分光輝度を有する光を発する。さらに、発光部12がp種類の分光輝度の光を発行可能である場合、図示しない内部もしくは外部にあるカウンタの操作によって順次異なる分光輝度の光を発光することができるものとする。発光部12が発する複数の異なる分光輝度を有する光は、可視光および非可視光を含む。さらに、分光輝度とは、分光される光の各帯域の強度を表している。なお、発光部12を所定の光源と複数の所定の色表で構成し、その光源から発し、複数の各色表で反射し、分光撮像装置11に向かう光の各分光輝度を校正済みの分光測定器で測定して、その各測定結果を分光輝度メモリ28に記憶させて、さらに分光撮像装置11に対して、それらの反射光を発光部12を発光した場合と同様に入光させてもよい。
【0026】
偏光板21は、入射光を所定の角度に直線偏光して可変波長板22に出射させる。可変波長板22は、2枚のガラス板に挟まれた空間に満たされた液晶などの電気光学素子から構成され、例えば、2KHzの交流矩形波発信機などからなる可変波長板制御部27により印加される電圧により複屈折量が変化することにより、偏光板21より垂直に入射される直線偏光された入射光を、電圧に応じた角度で楕円偏光して、偏光板23に出射させる。尚、可変波長板22は、同様の機能を備えたものであれば液晶以外のものであってもよいし、複屈折量を電圧ではなく音波などで変化させる音響光学素子などにより構成するようにしてもよい。
【0027】
偏光板23は、可変波長板22より入射される楕円偏光された入射光を所定の角度に直線偏光して撮像素子24に向かって出射させる。撮像素子24は、CCD(Charge Coupled Devices)、またはCMOS(Complementary Metal-Oxide Semiconductor)などから構成されており、偏光板23からの入射光を撮像し、画像データとして分光画像生成部25および分光輝度メモリ28に供給する。偏光板21,23は、相互にクロスニコルまたはパラニコルに配置する。なお、光学レンズ31は一般的なカメラを構成する時に使われる像を結像させるためのレンズまたはレンズの組で良い。さらに、光学レンズ31には、絞りや特定の波長の光をさえぎる光学フィルタを含めて考えても良い。また、偏光板21、23および可変波長板22に対する光学レンズ31の位置は、カメラの光学系が正しく機能する限り任意である。
【0028】
このような構成により、偏光板21,23および可変波長板22は、入射光を、例えば、図2で示されるように変調処理し、撮像素子24に入射させる。尚、図2においては、偏光板21,23は、可変波長板22を構成する電気光学素子の配向方向に対して45°の角度をなしている。また、図2の上段の枠内において実線で示されるのは、比較的波長の長い入射光の直線偏光および楕円偏光を示しており、中段の枠内において点線で示されるのは、波長が中程度の入射光の直線偏光および楕円偏光を示しており、下段の枠内において一点鎖線で示されるのは、比較的波長が短い入射光の直線偏光および楕円偏光を示している。さらに、図2において、直線、点線、および一点鎖線で示される枠内の形状は、直線偏光および楕円偏光のそれぞれの図2の紙面に対して垂直方向に進行する光の電場ベクトルの軌跡を紙面上に投影したものである。
【0029】
すなわち、図中左から2番目の枠で示されるように、偏光板21は、波長に関わらず図2の実線、点線、および一点鎖線で示されるようにいずれも、入射光を45°に直線偏光して可変波長板22に入射させる。そして、可変波長板22は、可変波長板制御部27により印加される電圧に応じて、楕円偏光させる。この際、波長の長さに応じて、発生する位相差が異なるため、図中右から2番目の枠で示されるように、楕円形の長半径方向の角度が異なる楕円偏光を生じさせ、偏光板23に入射させる。図中右から1番目の枠で示されるように、偏光板23は、可変波長板22により楕円偏光された光を45°の角度に直線偏光させて出力する。図2で示されるように、楕円偏光により入射光の波長毎に楕円偏光を形成する楕円形の長半径方向の角度が異なるため、偏光板23の出射光の強度は、波長により異なる。図2においては、最も短波長の入射光に対応する一点鎖線の直線偏光による波形は大きいため、最も強い光となる。これに対して、最も長い波長の入射光に対応する実線の直線偏光による波形は小さいため、最も弱い光となる。このような原理により、図2においては、図中の下段の波長が比較的短い入射光の周波数帯域に属する光が最も良く透過し、図中の上段の波長が比較的長い入射光の周波数帯域に属する光が最も透過されない様に変調されて、撮像素子24の各画素により撮像されることになる。また、可変波長板22は、印加される電圧により複屈折が変化することで、楕円偏光により生じる長半径の角度が異なる。このため、印加電圧を切り替えることで様々な波長に依存した透過特性で光を変調することができる。
【0030】
分光輝度メモリ28は、変換係数生成処理がなされるときにのみ動作し、発光部12から入力される分光輝度と、撮像素子24により撮像された変調信号からなる画像信号と画素ごとに対応付けて記憶して、変換係数生成部29に供給する。
【0031】
変換係数生成部29は、一般化逆行列演算部29aを制御して、分光輝度メモリ28より供給されてきた画素ごとに対応付けられた分光輝度および画像信号より変換係数を求めて、変換係数メモリ30に記憶させる。変換係数メモリ30は、未知物体を撮影するたびに、変換係数生成部29が同じ変換係数を毎回計算する無駄を省くために用いられる。
【0032】
分光画像生成部25は、撮像素子24より供給されてくる変調光の強度の情報と、変換係数の積和演算により、分光画像を生成し、CRT(Cathode Ray Tube)やLCD(Liquid Crystal Display)などからなる表示部26に表示させる。なお、生成した分光画像データは他の画像処理等の用途に当然活用できる。また、データをハードディスク等にファイル等の形式でそのデータを保存して再利用してもよい。
【0033】
次に、図3のフローチャートを参照して、変換係数メモリ30に登録される変換係数生成処理について説明する。
【0034】
ステップS1において、発光部12は、p種類の異なる既知の分光輝度の光を発光できるものとし、そのp種類の内の最初の光を発すると共に、分光輝度の情報を分光輝度メモリ28に供給する。分光輝度メモリ28は、発光部12により発せられている光の分光輝度の情報を取得する。すなわち、発光部12が発する光の分光輝度の情報とは、例えば、光の波長を帯域幅200nm乃至800nmで10nm単位で区切った範囲を分光輝度の1つのバンドとみなす場合、全部で59バンドあり、波長が200nm以上210nm未満の帯域は、強度x1であり、波長が210nm以上220nm未満の帯域は、強度x2であり、・・・波長が790nm以上800nm未満の帯域は、m=59とすると強度xmといった帯域毎のx1乃至xmの強度の情報である。
【0035】
これらのx1乃至xmの情報に基づいて、以下の式(1)で示されるベクトルを生成し、分光輝度メモリ28に供給する。
【0036】
【数1】
・・・(1)
【0037】
また、このとき、発光部12により発光された光は、偏光板21に入射する。尚、ここでは、帯域幅は、200nm乃至800nmであるものとするが、発光部12、光学レンズ31、偏光板21、偏光板23、可変波長板22、撮像素子24、および可変波長板制御部27の性能により、当然のことながらそれ以外の帯域幅であってもよい。
【0038】
ステップS2において、可変波長板制御部27は、可変波長板22に対して印加する電圧を最低電圧に設定する。
【0039】
ステップS3において、可変波長板制御部27は、可変波長板22に対して、設定された電圧を印加する。これにより、図2で説明したように、可変波長板22は、偏光板21、偏光板23と共に組み合わされた光学系によって、印加電圧に応じた分光透過率が設定され、光を変調することができる。
【0040】
ステップS4において、撮像素子24は、発光部12が発した光が偏光板21、可変波長板22、偏光板23、光学レンズ31を通過して入射されてくる、変調された変調光に基づいて画像を撮像し、撮像結果となる変調信号を分光輝度メモリ28および分光画像生成部25に供給する。
【0041】
ステップS5において、分光輝度メモリ28は、撮像素子24より供給されてきた変調信号からなる撮像結果を画素毎に記憶する。
【0042】
ステップS6において、分光画像生成部25は、直前の設定電圧で印加された可変波長板22により変調された変調光の撮像が終了したことを可変波長板制御部27に通知する。これに応じて、可変波長板制御部27は、今現在設定されている印加電圧が最大値であるか、すなわち、印加可能な最大電圧であるか否かを判定し、例えば、最大値ではないと判定された場合、処理は、ステップS7に進む。
【0043】
ステップS7において、可変波長板制御部27は、所定電圧だけ印加電圧を上昇させて設定し、処理は、ステップS3に戻る。そして、ステップS6において、印加電圧が最大値であると判定されるまで、ステップS3乃至S7の処理が繰り返される。そして、ステップS6において、印加電圧が最大値であると判定された場合、処理は、ステップS8に進む。
【0044】
すなわち、所定電圧とは、複屈折率を1段階変化させるための印加電圧の上昇電圧であり、可変波長板22に印加される電圧が、例えば、最低電圧で撮像素子24により撮像された撮像結果y1を分光輝度メモリ28に供給して記憶させると、印加電圧を所定電圧だけ上昇させることにより、再び撮像素子24により撮像された撮像結果y2を分光輝度メモリ28に供給して記憶させる。そして、この処理が順次繰り返され、最高電圧において撮像素子24により撮像された撮像結果ynが分光輝度メモリ28に供給されて記憶されるまで繰り返される。この結果、y1乃至ynの撮像結果、すなわち、変調信号からなる観測結果に基づいて、以下の式(2)で示されるベクトルを生成し、これが画素単位で分光輝度メモリ28に供給される。
【0045】
【数2】
・・・(2)
【0046】
なお、この繰り返し毎の印加電圧の上昇間隔を、アプリケーションに応じて分光撮像結果が正しく得られる限りにおいて密にしたり疎にしたり可変にする校正を行い、この繰り返し回数が最小になるように調整してもよい。
【0047】
ステップS8において、分光画像生成部25は、発光部12が発した直前の光での撮像が終了したことを発光部12に通知する。これに応じて、発光部12は図示しない内部または外部にあるカウンタを1増加させる。このカウンタを1増加させる時にこのカウンタの最大値を超えたか、すなわち、発光可能なp種類の光をすべて発行済みか否かが判定され、例えば、最大値を超えてないと判定された場合、処理は、ステップS9に進む。
【0048】
ステップS9において、図示しない内部または外部にあるカウンタの直前とは異なる現在のカウンタ値に対応した次の既知の分光輝度の光の発光を開始し、処理は、ステップS2に戻る。そして、ステップS8において、カウンタ値が最大を超えたと判定されるまで、ステップS2乃至ステップS9の処理が繰り返される。そして、ステップS8において、カウンタ値が最大を超えたと判定された場合、処理は、ステップS10に進む。
【0049】
ステップS10において、変換係数生成部29は、発光部12の分光輝度の式(1)の情報と、画素毎の観測結果である式(2)に基づいて、以下の式(3)で示される線形式を生成し、一般化逆行列演算部29aに供給する。
【0050】
【数3】
・・・(3)
【0051】
式(3)の右辺の行列Yの右上にマイナス記号はその行列が一般化逆行列であることを表す。変換係数生成部29は、一般化逆行列演算部29aを制御して、供給されてきた式(3)の行列Yについて例えば、最小二乗法により、その一般化逆行列の数値解を求め、そして左辺のベクトルb1乃至bmからなる行列Bを行列Xと行列Yの積の演算により求める。
【0052】
求められた一般化逆行列である行列Yは、最小二乗法を応用した演算により逆行列に近い尤もらしい行列として求められる。行列Yは、一般化逆行列であるため、図3のフローチャートの例においては、また、測定回数nと既知の分光輝度の数pが一致しない場合でも、帯域毎のベクトルb1乃至bmとして求めることが可能である。
【0053】
ステップS11において、変換係数生成部29は、求められた帯域毎のベクトルb1乃至bmからなる行列Bを変換係数メモリ30に記憶する。なお、変換係数メモリ30は、未知物体を撮影するたびに、ステップS1からステップS10によって同じ変換係数を毎回計算する無駄を省くために用いられる。
【0054】
以上の処理により可変波長板22の特性に応じた既知の分光輝度の画像と撮像素子24による撮像結果との対応関係を示す変換係数が、画素単位で求められて変換係数メモリ30に登録される。すなわち、変換係数は、撮像素子24により撮像された全帯域の撮像結果を用いて分光輝度を求める逆問題を解くための係数として求められる。
【0055】
次に、図4のフローチャートを参照して、静止画撮像時の分光画像撮像処理について説明する。
【0056】
ステップS21において、可変波長板制御部27は、可変波長板22に対して印加する電圧を最低電圧に設定する。
【0057】
ステップS22において、可変波長板制御部27は、可変波長板22に対して、設定された電圧を印加する。これにより、図2で説明したように、可変波長板22は、偏光板21、偏光板23と共に組み合わされた光学系によって、印加電圧に応じた分光透過率が設定され、光を変調することができる。
【0058】
ステップS23において、撮像素子24には、発光部12が発した光が偏光板21、可変波長板22、偏光板23、光学レンズ31を通過して入射されてくる、変調光に基づいて画像を撮像し、撮像結果となる変調信号を画素毎に分光画像生成部25に供給する。
【0059】
ステップS24において、分光画像生成部25は、撮像素子24より供給されてきた変調信号からなる撮像結果を観測結果として画素毎に記憶する。
【0060】
ステップS25において、分光画像生成部25は、直前の設定電圧で印加された可変波長板22により変調された光の撮像が終了したことを可変波長板制御部27に通知する。これに応じて、可変波長板制御部27は、今現在設定されている印加電圧が最大値であるか、すなわち、印加可能な最大電圧であるか否かを判定し、例えば、最大値ではないと判定された場合、処理は、ステップS26に進む。
【0061】
ステップS26において、可変波長板制御部27は、所定電圧だけ印加電圧を上昇させて設定し、処理は、ステップS22に戻る。そして、ステップS25において、印加電圧が最大値であると判定されるまで、ステップS22乃至S26の処理が繰り返される。すなわち、印加電圧を切り替えながら、複屈折率を変化させ、変調光により画像を撮像する。そして、ステップS25において、印加電圧が最大値であると判定された場合、すなわち、全ての撮像が完了したとみなされた場合、処理は、ステップS27に進む。
【0062】
なお、この繰り返し毎の印加電圧の上昇間隔は、図3のフローチャートにおける変換係数生成処理と同じ間隔を再現するように行う。これにより、可変波長板22の透過特性を、変換係数生成処理を行う時と分光画像撮像処理を行う時と同一にすることができ、それによって同一条件で撮像することができる。
【0063】
ステップS27において、分光画像生成部25は、図3のフローチャートを参照して説明した処理により、分光係数メモリ30に記憶されている分光係数を読み出す。
【0064】
ステップS28において、分光画像生成部25は、ステップS22乃至S26の処理により記憶された変調信号からなる観測結果y1乃至ynと、読み出した変換係数であるベクトルb1乃至bmとを用いて、以下の式(4)に示す積和演算により、画素毎に各バンドの分光強度x1乃至xmを求め、表示部26に供給する。すなわち、例えば、上述の例と同様の場合、行列Bの各帯域に対応する要素がベクトルb1乃至bmであるので、分光画像生成部25は、所定の画素の200nm以上210nm未満の帯域の分光強度x1を、ベクトルb1の各要素と全帯域の変調信号である観測結果y1乃至ynとの積和により演算し、所定の画素の210nm以上220nm未満の帯域の分光強度x2を、ベクトルb2の各要素と全帯域の変調信号である観測結果y1乃至ynとの積和により演算し、・・・所定の画素の790nm以上800nm未満の帯域の分光強度xmを、ベクトルbmの各要素と全帯域の変調信号である観測結果y1乃至ynとの積和により演算する。
【0065】
【数4】
・・・(4)
【0066】
ステップS29において、表示部26は、分光画像生成部25より供給されてきた画素毎の分光結果を表示する。この際、表示部26は、例えば、表示する分光強度のうち、図示せぬ入力装置が使用者に操作されることにより指定された特定の帯域の分光強度のみからなる1枚の画像を全画面表示するようにしても良いし、全ての帯域の分光強度により生成される画面をマルチウィンドウのように全て表示するようにしても良い。なお、生成した分光画像データは他の画像処理等の用途に当然活用できる。また、データをハードディスク等にファイル等の形式でそのデータを保存して再利用してもよい。
【0067】
ステップS30において、分光画像生成部25は、次の画像が存在するか否かを判定し、次の画像が存在する場合、処理は、ステップS21に戻り、それ以降の処理が繰り返される。また、ステップS30において、次の画像が存在しないと判定された場合、処理は、終了する。
【0068】
以上の処理により従来行われていたような逆フーリエ変換を用いることなく、光学素子の特性のばらつき等があっても柔軟に分光画像を撮像することが可能となる。また、例えば、マイケルソン干渉計などのような大型の装置を動作させることなく容易に分光画像を撮像することが可能となる。
【0069】
ここで、マイケルソン干渉計は、例えば、図5で示されるように、ハーフミラーHMI、固定型ミラーM1、可動型ミラーM2、およびディテクタDより構成される。図5で示されるようなマイケルソン干渉計を用いた分光計測を行う場合、点光源L1により発せられた光は、光路r1乃至r4、および光路r1+r11乃至r13を介してディテクタDにより観測される。この際、ハーフミラーHMIと固定型ミラーM1との距離はd1で一定であるが、ハーフミラーHMIと可動型ミラーM2との距離は可変のd2となる。そこで、光路差は、(2×|d2−d1|)として表現される。この光路差により生じる光の干渉によりディテクタDにより観測される強度が逆フーリエ変換されることにより分光強度が求められることになる。しかしながら、図5で示されるようなマイケルソン干渉計を用いた場合、光路差を精密に実現する機械的な装置構成が大きくなると共に、点光源から1画素ごとにマイケルソン干渉計を構成する必要があるため、装置の構成が大型化すると共に、極めて煩雑な動作をさせる必要があった。
【0070】
これに対して、上述した手法によれば、観測に必要とされるのは、既存の2次元状の撮像素子で可能となるので、装置構成を安価で容易なものとすることが可能となる。さらに、可変波長板22における電気光学素子の材質の特性のばらつきなどに起因する個体差が発生しても、変換係数生成処理により可変波長板22の特性に応じた係数を求めることが可能となるので、可変波長板22における特性による測定の誤差を小さくすることが可能となり、効率よく短時間に高品質の分光画像を撮像することが可能となる。
【0071】
図4のフローチャートにおいては、ステップS26の処理により、徐々に可変波長板22への印加電圧が上昇されていく例について説明してきたが、全てのバンドに対して観測が行えればよいので、必ずしも徐々に上昇させる必要はなく、ランダムに電圧を変位させるようにしても良いし、下降させるようにしても良い。
【0072】
ところで、可変波長板22を構成する物質に液晶を用いた場合、電圧の印加無しから印加有りに変化させた時での液晶の特性変化の挙動と、印加有りから印加無しに変化させた時での液晶の特性変化の挙動とが異なる。すなわち、可変波長板22は、図6の下部の時刻taで示されるように、電圧の印加が印加有りから印加無しに変化すると、図6の上部の時刻taで示されるように、緩やかに液晶の特性変化が起こる。一方、可変波長板22は、図7の下部の時刻tbで示されるように、電圧の印加が印加無しから印加有りに変化すると、図7の上部の時刻tbで示されるように、急峻に液晶の状態は変化する。
【0073】
尚、図6,図7においては、図中の上部が可変波長板22における液晶の複屈折率Δnを表している。また、図中の下部は、波長板22に印加される電圧Vを表しており、上下の電圧は印加電圧を表しており、交流動作が示されている状態が印加状態を表し、0Vの状態が印加が停止されている状態を表している。
【0074】
以上のような特性から、図4のフローチャートの処理において、ステップS22乃至S26の処理が繰り返されると、図8の下部で示されるように印加電圧Vは時刻t1乃至t4で示されるように徐々に上昇し、図8の上部で示されるように、印加電圧の電圧値に対応して可変波長板22の複屈折率Δnも変化していくことになる。例えば、時刻t0乃至t5の処理で、1枚の分光画像が撮像されるものとし、図8の下部の時刻t5で示されるように、印加電圧を停止させた場合、図8の上部の時刻t5乃至t6で示されるように、可変波長板22の複屈折率Δnは、緩やかに減衰していく。この動作により、静止画撮影時には静止画を最小時間で撮影できる。一方、この動作は、静止画においては、次の画像が存在しないので、問題がないが、連続的に画像を切り替えて表示させるような場合、時刻t5で示されるように、印加電圧Vが停止した後に、可変波長板22の動作状態Δnが一定値に戻るまでに撮影のための露光ができない時間ができるため、動画の時間的な連続性が損なわれ表示画像に動きがカクカクした印象の不連続性が現れる恐れがある。
【0075】
そこで、印加電圧を最大値から所定電圧だけ降下させながら上述した動作を実行させることにより、動画に対応させるようにしても良い。
【0076】
ここで、図9のフローチャートを参照して、印加電圧を最大値から所定電圧だけ降下させながら上述した動作を実行させるときの動画撮像時の分光画像撮像処理を説明する。尚、図9のフローチャートにおいては、ステップS42乃至S44,S47乃至S50の動作は、図4におけるフローチャートのステップS22乃至S24,S27乃至S30の動作と同様であるので、その説明は省略する。
【0077】
すなわち、ステップS41において、可変波長板制御部27は、可変波長板22に対して印加する電圧を最高電圧に設定する。
【0078】
そして、ステップS42乃至S44において、所定の電圧において変調画像が測定され、ステップS45において、可変波長板制御部27が、最小値ではないと判定した場合、ステップS46において、印加電圧を所定電圧だけ降下させ、処理は、ステップS42に戻る。すなわち、可変波長板22に印加される印加電圧が最高電圧から所定電圧ごとに降下しながらステップS42乃至S46の処理が繰り返される。そして、ステップS45において、印加電圧が最小値であると判定された場合、ステップS47乃至S50の処理により、変換係数と観測結果との積和演算により、画素毎に分光強度が計算されて、分光画像が表示される。
【0079】
このような処理により、図10の下部の時刻t11乃至t16で示されるように、1フレーム分の分光画像が撮像される場合、図10の上部で示されるように、時刻t12,t13,t14,t15のそれぞれの直後のタイミングにおいて印加電圧が変化するが、降下電圧が所定電圧分のみであることにより、液晶の複屈折率が緩やかに減衰する期間を短くすることが可能となり、印加電圧の変化による影響を小さくすることが可能となる。また、図10の下部の時刻t16で示されるように、1フレーム分の画像を表示し終えるタイミングにおいては、その直前で印加電圧が最低電圧まで低下した状態となるので、さらに、次のフレームの分光画像を撮像するタイミングで印加電圧を最高電圧にしたとき、急峻に液晶の複屈折率を変化させることが可能となるため、短時間で次の分光画像の撮像を開始することが可能となる。
【0080】
以上によれば、分光画像の撮像において使用される電気光学素子の材質の特性のばらつきなどの問題を考慮すると共に、印加電圧の変化における液晶の複屈折率の変化速度の特性を考慮することにより、高品質な分光画像の撮像を静止画においては短時間で撮影し、動画撮影時においては時間的な連続性を保ちつつ撮影するが可能となる。
【0081】
ところで、上述した一連の情報処理は、ハードウェアにより実行させることもできるが、ソフトウェアにより実行させることもできる。一連の処理をソフトウェアにより実行させる場合には、そのソフトウェアを構成するプログラムが、専用のハードウェアに組み込まれているコンピュータ、または、各種のプログラムをインストールすることで、各種の機能を実行することが可能な、例えば汎用のパーソナルコンピュータなどに、記録媒体からインストールされる。
【0082】
図11は、汎用のパーソナルコンピュータの構成例を示している。このパーソナルコンピュータは、CPU(Central Processing Unit)1001を内蔵している。CPU1001にはバス1004を介して、入出力インタフェース1005が接続されている。バス1004には、ROM(Read Only Memory)1002およびRAM(Random Access Memory)1003が接続されている。
【0083】
入出力インタフェース1005には、ユーザが操作コマンドを入力するキーボード、マウスなどの入力デバイスよりなる入力部1006、処理操作画面や処理結果の画像を表示デバイスに出力する出力部1007、プログラムや各種データを格納するハードディスクドライブなどよりなる記憶部1008、LAN(Local Area Network)アダプタなどよりなり、インターネットに代表されるネットワークを介した通信処理を実行する通信部1009が接続されている。また、磁気ディスク(フレキシブルディスクを含む)、光ディスク(CD-ROM(Compact Disc-Read Only Memory)、DVD(Digital Versatile Disc)を含む)、光磁気ディスク(MD(Mini Disc)を含む)、もしくは半導体メモリなどのリムーバブルメディア1011に対してデータを読み書きするドライブ1010が接続されている。
【0084】
CPU1001は、ROM1002に記憶されているプログラム、または磁気ディスク、光ディスク、光磁気ディスク、もしくは半導体メモリ等のリムーバブルメディア1011から読み出されて記憶部1008にインストールされ、記憶部1008からRAM1003にロードされたプログラムに従って各種の処理を実行する。RAM1003にはまた、CPU1001が各種の処理を実行する上において必要なデータなども適宜記憶される。
【0085】
尚、本明細書において、記録媒体に記録されるプログラムを記述するステップは、記載された順序に沿って時系列的に行われる処理は、もちろん、必ずしも時系列的に処理されなくとも、並列的あるいは個別に実行される処理を含むものである。
【図面の簡単な説明】
【0086】
【図1】本発明を適用した分光撮像装置の構成例を示すブロック図である。
【図2】分光画像の撮像の原理を説明する図である。
【図3】変換係数生成処理を説明するフローチャートである。
【図4】静止画撮像時の分光画像撮像処理を説明するフローチャートである。
【図5】マイケルソン干渉計による分光測定を説明する図である。
【図6】可変波長板の動作特性を説明する図である。
【図7】可変波長板の動作特性を説明する図である。
【図8】図4の分光画像撮像処理における可変波長板の複屈折率の特性を説明する図である。
【図9】動画撮像時の分光画像撮像処理を説明するフローチャートである。
【図10】図9の分光画像撮像処理における可変波長板の複屈折率の特性を説明する図である。
【図11】パーソナルコンピュータの構成例を説明する図である。
【符号の説明】
【0087】
11 分光撮像装置, 12 発光部, 21 偏光板, 22 可変波長板, 23 偏光板, 24 撮像素子, 25 分光画像生成部, 26 表示部, 27 可変波長板制御部, 28 分光輝度メモリ, 29 変換係数生成部, 29a 一般化逆行列演算部, 30 変換係数メモリ、31 光学レンズ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光を設定された分光透過率で変調する変調手段と、
前記変調手段により変調された光を撮像する撮像手段と、
既知の分光輝度からなる入射光の分光輝度と、前記既知の分光輝度からなる入射光が前記変調手段により変調されて前記撮像手段により撮像された撮像結果とを記憶する分光輝度記憶手段と、
前記分光輝度記憶手段により記憶された情報から第一式を生成し、帯域毎の係数を変換係数として演算する変換係数演算手段と、
未知の分光輝度からなる入射光が前記変調手段により変調されて前記撮像手段により撮像された撮像結果と、前記変換係数演算手段により計算された変換係数とから第二式を生成し演算することにより、前記未知の分光輝度からなる入射光の帯域毎の分光画像を生成する分光画像生成手段と
を含む画像処理装置。
【請求項2】
前記第一式は一般化逆行列を含む式である
請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項3】
前記第二式は積和演算である
請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項4】
前記変換係数を記憶する変換係数記憶手段を有する
請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項5】
前記変調手段は、電気光学素子、および、前記電気光学素子の入射側および出射側に所定の偏向角に設定された偏光板から構成され、前記電気光学素子の印加電圧により複屈折率が変化することで、分光透過率を変化させ、
前記印加電圧により前記変調手段の複屈折率を制御する複屈折率制御手段をさらに含む
請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項6】
前記複屈折率制御手段は、前記印加電圧を上昇させながら変調手段の複屈折率を制御する
請求項5に記載の画像処理装置。
【請求項7】
前記複屈折率制御手段は、前記印加電圧を下降させながら変調手段の複屈折率を制御する
請求項5に記載の画像処理装置。
【請求項8】
光を設定された分光透過率で変調する変調手段を備える画像処理装置の画像処理方法において、
前記変調手段の分光透過率を設定する分光透過率設定ステップと、
前記変調手段により変調された光を撮像する撮像ステップと、
既知の分光輝度からなる入射光の分光輝度と、前記既知の分光輝度からなる入射光が前記変調手段により変調されて前記撮像ステップの処理により撮像された撮像結果とを記憶する分光輝度記憶ステップと、
前記分光輝度記憶ステップの処理により記憶された情報から前記第一式を生成し、帯域毎の係数を変換係数として演算する変換係数演算ステップと、
未知の分光輝度からなる入射光が前記変調手段により変調されて前記撮像ステップの処理により撮像された撮像結果と、前記変換係数とから前記第二式を生成し演算することにより、前記未知の分光輝度からなる入射光の帯域毎の分光画像を生成する分光画像生成ステップと
を含む画像処理方法。
【請求項9】
前記変換係数を記憶する変換係数記憶ステップを有し、前記分光画像生成ステップにおいて前記変換係数記憶ステップの処理により記憶された変換係数を用いる
請求項8記載の画像処理方法。
【請求項10】
光を設定された分光透過率で変調する変調手段を備える画像処理装置を制御するコンピュータに、
前記変調手段の分光透過率を設定する分光透過率設定ステップと、
前記変調手段により変調された光を撮像する撮像ステップと、
既知の分光輝度からなる入射光の分光輝度と、前記既知の分光輝度からなる入射光が前記変調手段により変調されて前記撮像ステップの処理により撮像された撮像結果とを記憶するする分光輝度記憶ステップと、
前記分光輝度記憶ステップの処理により記憶された情報から前記第一式を生成し、帯域毎の係数を変換係数として演算する変換係数演算ステップと、
未知の分光輝度からなる入射光が前記変調手段により変調されて前記撮像ステップの処理により撮像された撮像結果と、前記変換係数とから前記第二式を生成し演算することにより、前記未知の分光輝度からなる入射光の帯域毎の分光画像を生成する分光画像生成ステップと
を含む処理を実行させるプログラム。
【請求項11】
前記変換係数を記憶する変換係数記憶ステップを有し、前記分光画像生成ステップにおいて前記変換係数記憶ステップの処理により記憶された変換係数を用いる
請求項10記載のプログラム。
【請求項12】
請求項10に記載のプログラムが格納されているプログラム格納媒体。
【請求項1】
光を設定された分光透過率で変調する変調手段と、
前記変調手段により変調された光を撮像する撮像手段と、
既知の分光輝度からなる入射光の分光輝度と、前記既知の分光輝度からなる入射光が前記変調手段により変調されて前記撮像手段により撮像された撮像結果とを記憶する分光輝度記憶手段と、
前記分光輝度記憶手段により記憶された情報から第一式を生成し、帯域毎の係数を変換係数として演算する変換係数演算手段と、
未知の分光輝度からなる入射光が前記変調手段により変調されて前記撮像手段により撮像された撮像結果と、前記変換係数演算手段により計算された変換係数とから第二式を生成し演算することにより、前記未知の分光輝度からなる入射光の帯域毎の分光画像を生成する分光画像生成手段と
を含む画像処理装置。
【請求項2】
前記第一式は一般化逆行列を含む式である
請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項3】
前記第二式は積和演算である
請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項4】
前記変換係数を記憶する変換係数記憶手段を有する
請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項5】
前記変調手段は、電気光学素子、および、前記電気光学素子の入射側および出射側に所定の偏向角に設定された偏光板から構成され、前記電気光学素子の印加電圧により複屈折率が変化することで、分光透過率を変化させ、
前記印加電圧により前記変調手段の複屈折率を制御する複屈折率制御手段をさらに含む
請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項6】
前記複屈折率制御手段は、前記印加電圧を上昇させながら変調手段の複屈折率を制御する
請求項5に記載の画像処理装置。
【請求項7】
前記複屈折率制御手段は、前記印加電圧を下降させながら変調手段の複屈折率を制御する
請求項5に記載の画像処理装置。
【請求項8】
光を設定された分光透過率で変調する変調手段を備える画像処理装置の画像処理方法において、
前記変調手段の分光透過率を設定する分光透過率設定ステップと、
前記変調手段により変調された光を撮像する撮像ステップと、
既知の分光輝度からなる入射光の分光輝度と、前記既知の分光輝度からなる入射光が前記変調手段により変調されて前記撮像ステップの処理により撮像された撮像結果とを記憶する分光輝度記憶ステップと、
前記分光輝度記憶ステップの処理により記憶された情報から前記第一式を生成し、帯域毎の係数を変換係数として演算する変換係数演算ステップと、
未知の分光輝度からなる入射光が前記変調手段により変調されて前記撮像ステップの処理により撮像された撮像結果と、前記変換係数とから前記第二式を生成し演算することにより、前記未知の分光輝度からなる入射光の帯域毎の分光画像を生成する分光画像生成ステップと
を含む画像処理方法。
【請求項9】
前記変換係数を記憶する変換係数記憶ステップを有し、前記分光画像生成ステップにおいて前記変換係数記憶ステップの処理により記憶された変換係数を用いる
請求項8記載の画像処理方法。
【請求項10】
光を設定された分光透過率で変調する変調手段を備える画像処理装置を制御するコンピュータに、
前記変調手段の分光透過率を設定する分光透過率設定ステップと、
前記変調手段により変調された光を撮像する撮像ステップと、
既知の分光輝度からなる入射光の分光輝度と、前記既知の分光輝度からなる入射光が前記変調手段により変調されて前記撮像ステップの処理により撮像された撮像結果とを記憶するする分光輝度記憶ステップと、
前記分光輝度記憶ステップの処理により記憶された情報から前記第一式を生成し、帯域毎の係数を変換係数として演算する変換係数演算ステップと、
未知の分光輝度からなる入射光が前記変調手段により変調されて前記撮像ステップの処理により撮像された撮像結果と、前記変換係数とから前記第二式を生成し演算することにより、前記未知の分光輝度からなる入射光の帯域毎の分光画像を生成する分光画像生成ステップと
を含む処理を実行させるプログラム。
【請求項11】
前記変換係数を記憶する変換係数記憶ステップを有し、前記分光画像生成ステップにおいて前記変換係数記憶ステップの処理により記憶された変換係数を用いる
請求項10記載のプログラム。
【請求項12】
請求項10に記載のプログラムが格納されているプログラム格納媒体。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2009−186448(P2009−186448A)
【公開日】平成21年8月20日(2009.8.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−38475(P2008−38475)
【出願日】平成20年2月20日(2008.2.20)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年8月20日(2009.8.20)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年2月20日(2008.2.20)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]