説明

画像処理装置および方法、記録媒体、並びに、プログラム

【課題】生体の動態の定量的な評価をより容易に実現することができるようにする。
【解決手段】蛍光指示薬により染色された生体に流入する化学物質の濃度変化を表す蛍光像を解析し、蛍光の強度を示す蛍光強度データを算出する蛍光解析部と、前記生体の動きを表す位相差像を解析し、動き量を示す動き量データを算出する動き量解析部と、前記蛍光解析部により算出された前記蛍光強度データ、および、前記動き量算出部により算出された前記動き量データを用いた評価に関する処理を行う評価部とを備える。本開示は画像処理装置に適用することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、画像処理装置および方法、記録媒体、並びに、プログラムに関し、特に、生体の動態を定量的に評価することができるようにした画像処理装置および方法、記録媒体、並びに、プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、再生医療の分野においては、生体の動態を観察し、評価することが行われていた。例えば、生体として、細胞を培養して製造した培養細胞の動態を観察することが行われていた。このような培養細胞として製造できる細胞組織は多岐にわたるが、その中の1つに心筋細胞がある。心筋細胞の場合、例えばその拍動の様子が観察された。
【0003】
このような観察結果は、生体に関する様々な評価に利用可能であった。例えば、このような観察結果を解析することにより、疾患や投与した薬剤の生体への影響等を評価することが行われた。また、培養した細胞の品質評価も行われた。
【0004】
そして、生体の動態の評価方法として、様々な方法が考えられた。例えば、蛍光指示薬で染色することにより、心筋細胞内のカルシウム濃度の変化を観察する方法が考えられた(例えば、非特許文献1参照)。
【0005】
また、形態的特徴を同時に観察するために、蛍光像と位相差像とを重ねて観察する方法が考えられた。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Ilanit Itzhaki, Sophia Rapoport, Irit Huber, Itzhak Mizrahi, Limor Zwi-Dantsis, Gil Arbel, Jackie Schiller, Lior Gepstein, "Calcium Handling in Human Induced Pluripotent Stem Cell Derived Cardiomyocytes", April 2011
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、従来の方法の場合、基本的に観察結果を目視で評価するしかなく、定量的な評価を行う方法が無かった。
【0008】
また、蛍光像からのカルシウムの濃度変化と、位相差像からの収縮の状態を同時に観察するには、特殊な観察条件や光学系設備が必要であった。例えば、位相差像から収縮の状態を観察する場合、細胞内の横紋パターンを観察する必要があり、その横紋パターンが観察できない条件においては、動態の観察が困難であった。また、例えば、蛍光像と位相差像をそれぞれ観察するためには、蛍光像と位相差像を光学的に分離するフィルタ等が必要であった。
【0009】
さらに、そのような条件を整えたとしても、得られる収縮の情報は、振幅等に限られており、疾患や薬剤の評価等、多様な評価に適用することが困難であった。
【0010】
本開示は、このような状況に鑑みてなされたものであり、生体の動態の定量的な評価をより容易に実現することができるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本開示の一側面は、蛍光指示薬により染色された生体に流入する化学物質の濃度変化を表す蛍光像を解析し、蛍光の強度を示す蛍光強度データを算出する蛍光解析部と、前記生体の動きを表す位相差像を解析し、動き量を示す動き量データを算出する動き量解析部と、前記蛍光解析部により算出された前記蛍光強度データ、および、前記動き量算出部により算出された前記動き量データを用いた評価に関する処理を行う評価部とを備える画像処理装置である。
【0012】
前記評価部は、前記蛍光強度データおよび前記動き量データを表示する表示用データを生成する表示用データ生成部と、前記表示用データ生成部により生成された前記表示用データの画像を表示する表示部とを備えることができる。
【0013】
前記評価部は、前記蛍光強度データおよび前記動き量データを用いて評価対象を評価するための評価用パラメータを算出する評価用パラメータ算出部と、前記評価用パラメータ算出部により算出された前記評価用パラメータを用いて、前記評価対象の評価を行う判定部とを備えることができる。
【0014】
前記評価用パラメータは、前記蛍光強度データの時系列データのピークと、前記動き量データの時系列データのピークとの、タイミングのずれ量であるようにすることができる。
【0015】
前記評価用パラメータは、前記蛍光強度データの時系列データのピークと、前記動き量データの時系列データのピークとの、大きさのずれ量であるようにすることができる。
【0016】
前記判定部は、前記評価用パラメータを閾値判定することにより、前記評価対象の評価を行うことができる。
【0017】
前記評価対象は、所定の疾患であるようにすることができる。
【0018】
前記評価対象は、前記生体に投与された薬剤の影響であるようにすることができる。
【0019】
前記評価部は、前記判定部による前記評価対象の評価結果を表示する表示用データを生成する表示用データ生成部と、前記表示用データ生成部により生成された前記表示用データの画像を表示する表示部とをさらに備えることができる。
【0020】
前記評価部は、前記判定部による前記評価対象の評価結果を示すデータを出力する出力部をさらに備えることができる。
【0021】
前記蛍光解析部は、所定の注目領域の蛍光強度の平均値を前記蛍光強度データとして算出し、前記動き量解析部は、所定の注目領域の動き量の平均値を前記動き量データとして算出することができる。
【0022】
前記蛍光像および前記位相差像の両方を含む蛍光位相差画像を、画像処理によって、前記蛍光像を含む蛍光画像と、前記位相差像を含む位相差画像とに分離する画像分離部をさらに備えることができる。
【0023】
前記画像分離部は、前記蛍光位相差画像の画素値の時系列データの極小値を算出する極小値算出部と、前記極小値算出部により算出された極小値の回帰曲線を算出する回帰曲線算出部と、前記蛍光位相差画像の画素値の時系列データから、前記回帰曲線算出部により算出された前記回帰曲線分を減算することにより、前記蛍光画像を抽出する減算部と、前記蛍光位相差画像の画素値の時系列データから、前記減算部により抽出された前記蛍光画像分を減算することにより、前記位相差画像を抽出する演算部とを備えることができる。
【0024】
前記画像分離部は、前記蛍光位相差画像の所定の注目画素の周辺領域の平均輝度を算出する平均輝度算出部をさらに備え、前記極小値算出部は、前記平均輝度算出部により算出された前記平均輝度の時系列データの極小値を算出することができる。
【0025】
前記画像分離部は、前記蛍光位相差画像の画素値の時系列データから高周波成分を抽出するハイパスフィルタを備えることができる。
【0026】
前記生体を撮像し、前記蛍光像および前記位相差像の両方を含む蛍光位相差画像を得る撮像部をさらに備えることができる。
【0027】
前記生体は、心筋細胞であるようにすることができる。
【0028】
本開示の一側面は、また、画像処理装置の画像処理方法であって、蛍光解析部が、蛍光指示薬により染色された生体に流入する化学物質の濃度変化を表す蛍光像を解析し、蛍光の強度を示す蛍光強度データを算出し、動き量解析部が、前記生体の動きを表す位相差像を解析し、動き量を示す動き量データを算出し、評価部が、算出された前記蛍光強度データ、および、前記動き量データを用いた評価に関する処理を行う画像処理方法である。
【0029】
本開示の一側面は、さらに、コンピュータを、蛍光指示薬により染色された生体に流入する化学物質の濃度変化を表す蛍光像を解析し、蛍光の強度を示す蛍光強度データを算出する蛍光解析部、前記生体の動きを表す位相差像を解析し、動き量を示す動き量データを算出する動き量解析部、算出された前記蛍光強度データ、および、前記動き量データを用いた評価に関する処理を行う評価部として機能させるためのプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体である。
【0030】
本開示の一側面は、また、コンピュータを、蛍光指示薬により染色された生体に流入する化学物質の濃度変化を表す蛍光像を解析し、蛍光の強度を示す蛍光強度データを算出する蛍光解析部、前記生体の動きを表す位相差像を解析し、動き量を示す動き量データを算出する動き量解析部、算出された前記蛍光強度データ、および、前記動き量データを用いた評価に関する処理を行う評価部として機能させるためのプログラムである。
【0031】
本開示の一側面においては、蛍光指示薬により染色された生体に流入する化学物質の濃度変化を表す蛍光像が解析され、蛍光の強度を示す蛍光強度データが算出され、生体の動きを表す位相差像が解析され、動き量を示す動き量データが算出され、算出された蛍光強度データ、および、動き量データを用いた評価に関する処理が行われる。
【発明の効果】
【0032】
本開示によれば、画像を処理することができる。特に、生体の動態の定量的な評価をより容易に実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】評価システムの主な構成例を示すブロック図である。
【図2】撮像装置の主な構成例を示す図である。
【図3】画像分離装置の主な構成例を示すブロック図である。
【図4】画像分離の様子を説明する図である。
【図5】蛍光画像解析装置の主な構成例を示すブロック図である。
【図6】蛍光画像の解析の様子の例を示す図である。
【図7】位相差画像解析装置の主な構成例を示すブロック図である。
【図8】位相差画像の解析の様子の例を示す図である。
【図9】解析結果評価装置の主な構成例を示すブロック図である。
【図10】表示用データの例を示す図である。
【図11】評価処理の流れの例を説明するフローチャートである。
【図12】画像分離処理の流れの例を説明するフローチャートである。
【図13】解析評価処理の流れの例を説明するフローチャートである。
【図14】蛍光画像解析処理の流れの例を説明するフローチャートである。
【図15】位相差画像解析処理の流れの例を説明するフローチャートである。
【図16】解析結果評価処理の流れの例を説明するフローチャートである。
【図17】解析結果評価装置の他の構成例を示すブロック図である。
【図18】ピーク検出の様子の例を説明する図である。
【図19】ピークのずれの検出の様子の例を説明する図である。
【図20】解析結果評価処理の流れの他の例を説明するフローチャートである。
【図21】パーソナルコンピュータの主な構成例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、本開示を実施するための形態(以下、実施の形態と称する)について説明する。説明は以下の順序により行う。
1.第1の実施の形態(評価システム)
2.第2の実施の形態(パーソナルコンピュータ)
【0035】
<1.第1の実施の形態>
[培養心筋細胞]
例えば再生医療においては、生体より採取された細胞を培養して製造される細胞組織である培養細胞を利用して各種の人体の組織、器官などを治療することが行われる。培養心筋細胞は、心筋細胞を培養し、成育させたものである。培養心筋細胞は、例えば、心臓の治療等に利用される可能性がある。また、創薬における心臓への毒性評価にも利用される。
【0036】
生体内において、心筋細胞は、常時収縮と弛緩を繰り返しながら拍動する。したがって、培養心筋細胞も、その全体が収縮と弛緩を繰り返すように、各部分の細胞が所定の方向に運動する。実際には、心筋細胞は、自律的に拍動する部分と、周囲の拍動に依存して拍動する部分とが存在する。つまり、部位によっては、心筋細胞が自律的に拍動しない場合も考えられる。このような場合、培養心筋細胞に対して電極を用いて外部から電圧を周期的に印加することにより拍動させることができる。このように外部からの電圧印加によってペースメークされた培養心筋細胞の拍動は、自律的に拍動する場合と基本的に同様である。つまり、培養心筋細胞が自律的に拍動する場合も、電圧印加により拍動する場合も、本技術を用いて同様に観察することができる。
【0037】
このような培養心筋細胞の動態を評価する方法の1つとして、従来、非特許文献1に記載のような、蛍光指示薬で染色することにより、細胞内のカルシウム濃度の変換を目視で観察する方法があった。しかしながら、この方法では、定量的な評価を行うことができなかった。
【0038】
また、一般的に、細胞は、電気的興奮によってカルシウムのような化学物質の濃度変化が引き起こされ、それによって収縮等の動きが発生する。したがって、このような化学物質の濃度変化と生体の動態との関連性の評価は、大変有意義なものである。しかしながら、上述した方法ではそのような高度な解析を行うことができなかった。
【0039】
また、形態的特徴を同時に観察するために、蛍光像と位相差像とを重ねて観察する方法が考えられた。
【0040】
しかしながら、この方法の場合、蛍光像と位相差像とを光学的に分離する必要があり、特殊な光学系設備が必要であり、容易に実現する事が困難であった。また、細胞の動きを観察するためには、細胞内の横紋パターンを観察する必要があり、そのために特殊な観察条件を必要とした。
【0041】
さらに、この方法は、一般的に、カルシウム濃度変化が生じる場所を特定するためのものであり、単に目視でその位置を確認する程度のことしかできなかった。例えば、上述したような、化学物質の濃度変化と生体の動態との関連性を定量的に評価する等といった高度な解析を行うことは困難であった。
【0042】
そこで、本開示においては、そのような生体の動態の定量的な評価をより容易に実現することができるシステムについて説明する。
【0043】
[評価システム]
図1に示される評価システム100は、生体を観察し、その生体に生じる化学物質の濃度変化や動態を解析することにより、生体の成長度、生体の疾患(の発病の有無)、または、生体に投与された薬剤の影響(効果や毒性等)等を評価するシステムである。
【0044】
図1に示されるように、評価システム100は、撮像装置111、画像分離装置112、蛍光画像解析装置113、位相差画像解析装置114、および解析結果評価装置115を有する。
【0045】
培養心筋細胞101は、心筋細胞が培養されたものであり、評価システム100における観察対象の生体である。培養心筋細胞101は、所定の化学物質に反応する蛍光指示薬で染色されている。例えば、培養心筋細胞101内で起きるカルシウム濃度変化を観察対象とし、蛍光指示薬としてfluo-5F AMが培養心筋細胞101に投与される。
【0046】
なお、観察対象とする生体は、任意であり、心筋細胞以外であってもよい。また、蛍光指示薬も任意であり、例えば、fluo-4 AM、Calcium Green-1、またはFura Red,AM等であってもよい。さらに、染色対象も任意であり、カルシウム以外の化学物質や、膜電位であってもよい。カルシウム以外の化学物質として、例えば、亜鉛、カリウム、またはナトリウム等があり、亜鉛の場合、蛍光指示薬としてFluoZin-3がある。また、カリウムの場合、蛍光指示薬としてFluxORがある。さらに、ナトリウムの場合、蛍光指示薬として9-anthroylがある。また、膜電位依存性の蛍光指示薬としてdi-8-ANEPPSがある。もちろん、これら以外の蛍光指示薬を用いるようにしてもよい。
【0047】
撮像装置111は、培養心筋細胞101を被写体として、動画像または静止画像の撮像を行う。撮像装置111は、所定の励起光を培養心筋細胞101に照射することにより、蛍光指示薬が化学物質に反応する様子を捉えた蛍光像(蛍光画像)を撮像する。また、撮像装置111は、それと同時に、励起光とは別の光源により、培養心筋細胞101の時間的変化(動き)を強調した位相差像(位相差画像)を撮像する。撮像装置111は、撮像により、蛍光像と位相差像の両方を含む画像データを得る。撮像装置111は、その画像データを画像分離装置112に供給する。
【0048】
画像分離装置112は、撮像装置111から供給される画像データの画像に含まれる蛍光像と位相差像を、画像処理によって分離する。画像分離装置112は、蛍光像の画像データ(蛍光画像データ)を蛍光画像解析装置113に供給し、位相差像の画像データ(位相差画像データ)を位相差画像解析装置114に供給する。
【0049】
蛍光画像解析装置113は、供給された蛍光画像データを解析し、指定された注目領域について、その蛍光強度(蛍光像の輝度値)を所定時間分求め、そのデータ(蛍光強度データ)を解析結果評価装置115に供給する。
【0050】
位相差画像解析装置114は、供給された位相差画像データを解析し、指定された注目領域について、培養心筋細胞101の動き量を所定時間分求め、そのデータ(動き量データ)を解析結果評価装置115に供給する。
【0051】
解析結果評価装置115は、供給される蛍光強度データと動き量データを用いて、例えば、それらの時間的変化を示すグラフ画像のような評価用データを生成し、その画像を表示する。このようにすることにより、ユーザは、培養心筋細胞101のカルシウムの濃度変化と収縮動作との関係等といった、高度な観察を、数値や画像等により、容易かつ定量的に行うことができる。
【0052】
なお、評価システム100の構成は、任意であり、上述した以外の装置を含むようにしてもよい。また、図1においては、各装置を1台ずつ有するように示しているが、各装置の数は任意である。さらに、例えば、インターネットやLAN等のネットワークを介して各装置が接続されるようにしてもよい。
【0053】
また、上述した複数の装置を1つの装置として構成するようにしてもよい。例えば、蛍光画像解析装置113、位相差画像解析装置114、および解析結果評価装置115を1つの装置(画像処理装置120)としてもよいし、さらに、画像分離装置112もまとめ、画像処理装置130としてもよい。
【0054】
次に、各装置の主な構成例について説明する。
【0055】
[撮像装置]
図2は、撮像装置111の光学系の主な構成例を示す図である。
【0056】
図2に示されるように、撮像装置111は、蛍光画像用の光源となる水銀ランプ151、励起光用のバンドパスフィルタ152、ダイクロイックミラー153、レンズ部154、および、位相差画像用の光源となるハロゲンランプ155を有する。また、撮像装置111は、蛍光画像用のバンドパスフィルタ156および撮像素子157を有する。
【0057】
水銀ランプ151から出射された励起光161は、励起光用バンドパスフィルタ152を透過し、ダイクロイックミラー153に反射され、レンズ部154を介して、培養心筋細胞101に照射される。カルシウムと反応する蛍光指示薬は、その励起光161のエネルギーを吸収して基底状態に戻るときに蛍光を発する。その蛍光は、レンズ部154、ダイクロイックミラー153、および蛍光画像用バンドパスフィルタ156を介して撮像素子157に照射される。
【0058】
また、ハロゲンランプ155から出射された光は、培養心筋細胞101、レンズ部154、ダイクロイックミラー153、蛍光画像用バンドパスフィルタ156を介して撮像素子157に照射される。
【0059】
つまり、撮像素子157は、撮像により、蛍光画像162と位相差画像163の両方を含む画像(蛍光位相差画像)を得る。撮像素子157は、撮像により得た蛍光位相差画像の画像データ(蛍光位相差画像データ)を画像分離装置112に供給する。
【0060】
以上のように、撮像装置111は、一般的な光学系設備により実現することができる。
【0061】
[画像分離装置]
図3は、画像分離装置112の主な構成例を示すブロック図である。図3に示されるように、画像分離装置112は、平均輝度算出部171、極小値検出部172、回帰曲線算出部173、減算部174、および演算部175を有する。
【0062】
平均輝度算出部171は、図4Aに示されるように、供給された蛍光位相差画像181の所定の注目画素182を中心とする所定の大きさの領域を平均値算出ブロック183とし、その平均値算出ブロック183内の各画素の輝度値の平均値を算出する。このように、注目画素の周辺領域の輝度値の平均を求めることにより、動きによる輝度変化を低減させることができる。
【0063】
このような処理を所定時間行うことにより、平均輝度算出部171は、図4Bに示されるグラフのような、平均輝度の時系列データを得ることが出来る。平均輝度算出部171は、その時系列データを極小値検出部172に供給する。
【0064】
極小値検出部172は、平均輝度の時系列データの高周波成分の極小値を検出する。この極小値の検出方法は任意である。例えば、所定の短時間毎に平均輝度の最小値を求めるようにしてもよいし、時系列データより低周波成分を抽出し、その低周波成分を極小値としてもよいし、時系列データの曲線を解析し、周囲より値が小さい極小の位置を特定し、その値を極小値として求めるようにしてもよい。極小値検出部172は、検出した極小値のデータを回帰曲線算出部173に供給する。
【0065】
回帰曲線算出部173は、例えば図4Cに示されるように、極小値の回帰曲線を算出する。回帰曲線算出部173は、その回帰曲線のデータを減算部174に供給する。
【0066】
減算部174は、例えば図4Dに示されるように、平均輝度の時系列データから回帰曲線分を減算し、蛍光の輝度変化(すなわち蛍光画像)を抽出する。なお、蛍光画像の抽出方法はこれに限らず、任意である。例えば、ハイパスフィルタを用いて、平均輝度の時系列データから蛍光の輝度変化を抽出するようにしてもよい。減算部174は、この蛍光画像データを蛍光画像解析装置113に供給する。また減算部174は、蛍光画像データを演算部175にも供給する。
【0067】
演算部175は、蛍光位相差画像よりこの蛍光画像を減算することにより、位相差画像を抽出する。演算部175は、抽出した位相差画像データを位相差画像解析装置114に供給する。
【0068】
以上のように、画像分離装置112は、画像処理により蛍光画像と位相差画像を分離することができる。したがって、画像分離装置112は、特殊な光学系設備を用いずに、容易に蛍光画像と位相差画像を分離することができる。
【0069】
[蛍光画像解析装置]
図5は、蛍光画像解析装置113の主な構成例を示すブロック図である。図5に示されるように、蛍光画像解析装置113は、蛍光画像バッファ201、注目領域設定部202、および蛍光強度データ生成部203を有する。
【0070】
蛍光画像バッファ201は、画像分離装置112から供給された蛍光画像データを記憶する。
【0071】
注目領域設定部202は、ユーザ指示等に基づいて、例えば図6に示されるように、蛍光画像211の任意の位置の一部の領域を、蛍光強度を求める注目領域212として設定し、その注目領域を示す注目領域指定を蛍光強度データ生成部203に供給する。
【0072】
蛍光強度データ生成部203は、供給された注目領域指定に基づいて、指定された注目領域の蛍光画像データを、蛍光画像バッファ201から取得し、その蛍光画像データにおける注目領域の蛍光強度の時系列データ(蛍光強度データ)を生成する。蛍光強度データ生成部203は、生成した蛍光強度データを解析結果評価装置115に供給する。
【0073】
[位相差画像解析装置]
図7は、位相差画像解析装置114の主な構成例を示すブロック図である。図7に示されるように、位相差画像解析装置114は、位相差画像バッファ221、注目領域設定部222、および動き量データ生成部223を有する。
【0074】
位相差画像バッファ221は、画像分離装置112から供給された位相差画像データを記憶する。
【0075】
注目領域設定部222は、ユーザ指示等に基づいて、例えば図8に示されるように、位相差画像231の任意の位置の一部の領域を、動き量を求める注目領域232として設定し、その注目領域を示す注目領域指定を動き量データ生成部223に供給する。この注目領域232は、蛍光画像の注目領域212と同じ位置に指定される。
【0076】
動き量データ生成部223は、供給された注目領域指定に基づいて、指定された注目領域の位相差画像データを、位相差画像バッファ221から取得し、その位相差画像データにおける注目領域の動き量の時系列データ(動き量データ)を生成する。動き量データ生成部223は、生成した動き量データを解析結果評価装置115に供給する。
【0077】
[解析結果評価装置]
図9は、解析結果評価装置115の主な構成例を示すブロック図である。図9に示されるように、解析結果評価装置115は、蛍光強度データバッファ251、動き量データバッファ252、表示用データ生成部253、および表示部254を有する。
【0078】
蛍光強度データバッファ251は、蛍光画像解析装置113から供給される蛍光強度データを記憶する。動き量データバッファ252は、位相差画像解析装置114から供給される動き量データを記憶する。これらのバッファにより、両データの供給タイミングの差等を吸収することができる。
【0079】
表示用データ生成部253は、蛍光強度データバッファ251から蛍光強度データを適宜読み出し、動き量データバッファ252から動き量データを適宜読み出し、例えば、図10に示されるグラフのような表示用データを生成する。
【0080】
図10は、表示用データの例を示す図である。図10に示されるグラフは、蛍光強度と動き量の時間的推移を比較するグラフである。点線261が蛍光強度の時間的推移を示しており、実線262が動き量の時間的推移を示している。
【0081】
表示部254は、表示用データ生成部253により生成された表示用データの画像をモニタに表示する。例えば、表示部254は、図10に示されるようなグラフを表示する。このようにすることにより、ユーザは、蛍光強度と動き量の時間的推移を容易に比較することができる。また、例えば、各データの所定の時刻の値、または、両データのピークのずれや大きさ等、所望の情報を容易に求めることができる。つまり、ユーザは、容易に、培養心筋細胞101のカルシウムの濃度変化と収縮動作との関係を評価することができる。
【0082】
例えば、正常な状態の場合、培養心筋細胞101は、電気的興奮によりカルシウムが流入し、カルシウム濃度が上昇することにより収縮動作を行うが、疾患や薬剤投与の影響等により正常でない状態になると、カルシウム濃度が上昇しても収縮動作が行われなかったり、遅れたり、動作が小さかったりする場合がある。ユーザは、上述したような評価を行うことにより、このようなカルシウムの濃度変化と収縮動作との関係を評価することができるので、例えば、培養心筋細胞101の成長度や、培養心筋細胞101の疾患、投与した薬剤の影響等の評価を容易に行うことができる。
【0083】
なお、表示用データは、動き量と蛍光強度を比較する事ができるようなものであればどのようなものであってもよく、図10に示される例以外であってもよい。例えば、円グラフや分布図などであってもよいし、データ(数値)そのものを表示するようにしてもよい。
【0084】
各装置が以上のような構成を有することにより、評価システム100は、生体の動態の定量的な評価をより容易に実現することができる。
【0085】
[評価処理の流れ]
図11のフローチャートを参照して、評価システム100の各装置により実行される評価処理の流れの例を説明する。
【0086】
評価処理が開始されると、撮像装置111は、ステップS101において、観察対象である培養心筋細胞101を撮像し、蛍光位相差画像を得る。
【0087】
ステップS102において、画像分離装置102は、画像処理によって、蛍光位相差画像を蛍光画像と位相差画像に分離する。
【0088】
ステップS103において、画像処理装置120は、ステップS102において分離された蛍光画像および位相差画像をそれぞれ解析して評価する。
【0089】
ステップS103の処理を終了すると、画像処理装置120は、評価処理を終了する。
【0090】
[画像分離処理の流れ]
次に、図12のフローチャートを参照して、図11のステップS102において実行される画像分離処理の流れの例を説明する。
【0091】
画像分離処理が開始されると、平均輝度算出部171は、ステップS121において、蛍光位相差画像データを取得し、ステップS122において、所定の注目画素についてその周辺領域の平均輝度値を算出する。
【0092】
ステップS123において、極小値検出部172は、平均輝度値の時系列データから極小値を検出する。ステップS124において、回帰曲線算出部173は、検出された極小値の回帰曲線を算出する。
【0093】
ステップS125において、減算部174は、平均輝度値の時系列データから回帰曲線分を減算し、蛍光画像を抽出する。ステップS126において、演算部175は、蛍光位相差画像から蛍光画像を減算して、位相差画像を抽出する。
【0094】
ステップS126の処理を終了すると、演算部175は、画像分離処理を終了し、処理を図11に戻す。
【0095】
[解析評価処理の流れ]
次に、図13のフローチャートを参照して、図11のステップS103において実行される解析評価処理の流れの例を説明する。
【0096】
解析評価処理が開始されると、ステップS141において、蛍光画像解析装置113は、蛍光画像データを解析する。ステップS142において、位相差画像解析装置114は、位相差画像データを解析する。ステップS143において、解析結果評価装置115は、ステップS141およびステップS142において行われた解析結果を評価する。
【0097】
ステップS143の処理が終了すると、解析結果評価装置115は、解析評価処理を終了し、処理を図11に戻す。
【0098】
[蛍光画像解析処理の流れ]
次に、図14のフローチャートを参照して、図13のステップS141において実行される蛍光画像解析処理の流れの例を説明する。
【0099】
蛍光画像解析処理が開始されると、ステップS161において、蛍光画像バッファ201は、蛍光位相差画像データより分離された蛍光画像データを取得し、記憶する。
【0100】
ステップS162において、注目領域設定部202は、注目領域を設定する。ステップS163において、蛍光強度データ生成部203は、注目領域の蛍光画像データを蛍光画像バッファ201から読み出す。
【0101】
蛍光強度データ生成部203は、ステップS164において、注目領域における蛍光画像データの画素値の平均値を算出する。蛍光強度データ生成部203は、このような平均値を所定時間分求める。蛍光強度データ生成部203は、ステップS165において、その平均値の時系列データを注目領域の蛍光強度データとして出力する。
【0102】
ステップS165の処理を終了すると、蛍光強度データ生成部203は、蛍光画像解析処理を終了し、処理を図13に戻す。
【0103】
[位相差画像解析処理の流れ]
次に、図15のフローチャートを参照して、図13のステップS142において実行される位相差画像解析処理の流れの例を説明する。
【0104】
位相差画像解析処理が開始されると、ステップS181において、位相差画像バッファ221は、蛍光位相差画像データより分離された位相差画像データを取得し、記憶する。
【0105】
ステップS182において、注目領域設定部222は、注目領域を設定する。ステップS183において、動き量データ生成部223は、注目領域の位相差画像データを位相差画像バッファ221から読み出す。
【0106】
動き量データ生成部223は、ステップS184において、注目領域における位相差画像データの画素値の平均値を算出する。動き量データ生成部223は、このような平均値を所定時間分求める。動き量データ生成部223は、ステップS185において、その平均値の時系列データを注目領域の動き量データとして出力する。
【0107】
ステップS185の処理を終了すると、動き量データ生成部223は、位相差画像解析処理を終了し、処理を図13に戻す。
【0108】
[解析結果評価処理の流れ]
次に、図16のフローチャートを参照して、図13のステップS143において実行される解析結果評価処理の流れの例を説明する。
【0109】
解析結果評価処理が開始されると、蛍光強度データバッファ251は、ステップS201において、蛍光画像解析装置113により生成された蛍光強度データを記憶する。ステップS202において、動き量データバッファ252は、位相差画像解析装置114により生成された動き量データを記憶する。
【0110】
ステップS203において、表示用データ生成部253は、ステップS201若しくはステップS202において記憶された蛍光強度データおよび動き量データを用いて、それらの表示用データを生成する。
【0111】
ステップS204において、表示部254は、ステップS203において生成された表示用データの画像を表示する。
【0112】
ステップS204の処理が終了すると、表示部254は、解析結果評価処理を終了し、処理を図13に戻す。
【0113】
以上のように各処理を実行することにより、評価システム100は、生体の動態の定量的な評価をより容易に実現することができる。
【0114】
[解析結果評価装置]
なお、解析結果評価装置115において、さらに高度な評価を行うようにしてもよい。図17は、解析結果評価装置115の他の構成例を示すブロック図である。図17に示される例の場合、解析結果評価装置115は、図9に示される構成に加え、さらに、演算部301、判定部302、および出力部303を有する。
【0115】
演算部301は、蛍光強度データバッファ251から蛍光強度データを読み出し、動き量データバッファ252から動き量データを読み出し、それらを用いて、蛍光強度および動き量のピークをそれぞれ検出したり、両者のタイミングや大きさのずれ量等の、評価対象を評価するための評価用パラメータを算出したりする。
【0116】
判定部302は、評価用パラメータ(例えば、ずれ量)に基づいて、培養心筋細胞101の成長度や疾患、または投与した薬剤等の評価対象を、例えば、閾値判定等により評価する。例えば、ずれ量が閾値より大きい場合、培養心筋細胞101の成長が十分でないと判定したり、培養心筋細胞101が所定の疾患を有していると判定したり、投与した薬剤の影響があると判定したりする。
【0117】
表示用データ生成部253は、このような判定結果(評価結果)を示す表示用データを生成し、表示部254にその画像を表示させる。
【0118】
出力部303は、例えば、外部端子、スピーカまたは、光ディスクやフラッシュメモリ等のリムーバブルメディア等よりなり、判定部302による判定結果(評価結果)を示すデータを、画像以外の情報として出力する。
【0119】
[役割]
この場合、解析結果評価装置115は、以下の2つを評価する。
【0120】
1.対象物評価
評価部は、入力された「蛍光強度データ」と「動き量データ」とに基づいて、興奮と収縮が連関しないような疾患や異常を検出する。ここで、興奮と収縮が連関しない場合とは例えば、カルシウム濃度の上昇が見られるにも関わらず、実際には収縮が起こらない場合等を指す。
【0121】
2.薬剤評価
評価部は入力された「蛍光強度データ」と「動き量データ」とに基づいて、投与した薬剤が作用しているか否かを検出する。
【0122】
[演算部]
演算部301は、動き量と蛍光強度のピークをそれぞれ検出する。また、演算部301は、動き量と蛍光強度とのずれ量を演算する。一例として、ピークタイミングのずれ、又はピークの大きさの相違を算出する。具体的には、例えば、図18に示されるように、一方のピークを検出した後、他方のピークが一方のピークの周辺の所定のピーク検出区間内にあるか否かを検出する。なお、演算部301が、算出するパラメータは任意であり、ピークのタイミングおよび大きさのずれ以外のパラメータを算出するようにしてもよい。また、その算出方法も任意である。
【0123】
[判定部]
判定部302は、演算部にて算出されたずれ量が所定の閾値以上(又は以下)であるか否かを検出する。例えば、判定部302は、図19に示されるように、ピークタイミングのずれ、又はピークの大きさの相違が所定の閾値以上(又は以下)であるか否かを判定することにより、興奮と収縮が連関しないような疾患や異常が見られるか否かを判定する。
【0124】
また、判定部302は、演算部にて算出されたずれ量が所定の閾値以上(又は以下)であるか否かを検出する。例えば、判定部302は、図19に示されるように、ピークタイミングのずれ、又はピークの大きさの相違が所定の閾値以上(又は以下)であるか否かを判定することにより、投与した薬剤が対象物に対して効果又は副作用を及ぼしているか否かを判定する。
【0125】
なお、判定部302が行う評価の、対象、方法、および基準は任意である。
【0126】
[解析結果評価処理の流れ]
図20のフローチャートを参照して、この場合の解析結果評価処理の流れの例を説明する。
【0127】
ステップS301およびステップS302の各処理は、図16のステップS201およびステップS202の各処理と同様に実行される。
【0128】
演算部301は、ステップS303において、蛍光強度のピークを検出し、ステップS304において、動き量のピークを検出する。
【0129】
演算部301は、さらに、ステップS305において、蛍光強度と動き量との間でピークタイミングのずれ量を算出し、ステップS306において、蛍光強度と動き量との間でピークの大きさのずれ量を算出する。
【0130】
判定部302は、ステップS307において、ピークのタイミングや大きさのずれ量に基づいて、観察対象を評価する。例えば、判定部302は、ピークのタイミングや大きさのずれ量を閾値判定し、培養心筋細胞101が疾患を有するか否かを判定する。なお、この評価方法は任意であり、閾値判定以外であってもよい。例えばずれ量によって培養心筋細胞101の正常度を評価したり、所定の関数を用いて所定のパラメータを算出したりしてもよい。
【0131】
さらに、判定部302は、ステップS308において、ピークのタイミングや大きさのずれ量に基づいて、投与した薬剤を評価する。例えば、判定部302は、ピークのタイミングや大きさのずれ量を閾値判定し、培養心筋細胞101に投与した薬剤の影響の有無を判定する。なお、この評価方法は任意であり、閾値判定以外であってもよい。例えばずれ量によって薬剤の影響度を評価したり、所定の関数を用いて所定のパラメータを算出したりしてもよい。
【0132】
ステップS309において、表示用データ生成部253は、ステップS307またはステップS308において得られた評価結果の表示用データを生成する。ステップS310において、表示部254は、その表示用データの画像を表示する。
【0133】
ステップS311において、出力部303は、評価結果のデータを出力する。
【0134】
以上のように各処理を行うことにより、評価システム100は、生体の動態の定量的な、より高度な評価をより容易に実現することができる。
【0135】
さらに、これらの評価方法は、現在も研究が進められており、今後新たな評価の仕方や評価基準が提案される可能性がある。本技術の場合、非侵襲に、観察対象の状態を観察することができるので、より多様な評価方法や評価基準への適用が容易である。
【0136】
本技術は、さらに、培養心筋細胞を観察することにより評価可能なものであればどのようなものを評価する場合にも適用することができる。例えば、気体であってもよいし、液体であってもよいし、固体であってもよい。また、観察時の環境条件(例えば、温度、湿度、気圧、明度、振動、磁場等)であってもよい。
【0137】
なお、本技術は、拍動の伝搬を容易に観察することができるので、蛍光色素を入れ込み、細胞の興奮(活動電位)によって変動するカルシウム濃度を検出することで細胞の拍動リズムを検出し、細胞の情報伝搬パターンを評価する方法にも適用することができる。
【0138】
<2.第2の実施の形態>
[パーソナルコンピュータ]
上述した一連の処理は、ハードウエアにより実行させることもできるし、ソフトウエアにより実行させることもできる。この場合、例えば、図22に示されるようなパーソナルコンピュータとして構成されるようにしてもよい。
【0139】
図21において、パーソナルコンピュータ900のCPU(Central Processing Unit)901は、ROM(Read Only Memory)902に記憶されているプログラム、または記憶部913からRAM(Random Access Memory)903にロードされたプログラムに従って各種の処理を実行する。RAM903にはまた、CPU901が各種の処理を実行する上において必要なデータなども適宜記憶される。
【0140】
CPU901、ROM902、およびRAM903は、バス904を介して相互に接続されている。このバス904にはまた、入出力インタフェース910も接続されている。
【0141】
入出力インタフェース910には、キーボード、マウスなどよりなる入力部911、CRT(Cathode Ray Tube)やLCD(Liquid Crystal Display)などよりなるディスプレイ、並びにスピーカなどよりなる出力部912、ハードディスクなどより構成される記憶部913、モデムなどより構成される通信部914が接続されている。通信部914は、インターネットを含むネットワークを介しての通信処理を行う。
【0142】
入出力インタフェース910にはまた、必要に応じてドライブ915が接続され、磁気ディスク、光ディスク、光磁気ディスク、或いは半導体メモリなどのリムーバブルメディア921が適宜装着され、それらから読み出されたコンピュータプログラムが、必要に応じて記憶部913にインストールされる。
【0143】
上述した一連の処理をソフトウエアにより実行させる場合には、そのソフトウエアを構成するプログラムが、ネットワークや記録媒体からインストールされる。
【0144】
この記録媒体は、例えば、図21に示されるように、装置本体とは別に、ユーザにプログラムを配信するために配布される、プログラムが記録されている磁気ディスク(フレキシブルディスクを含む)、光ディスク(CD-ROM(Compact Disc - Read Only Memory),DVD(Digital Versatile Disc)を含む)、光磁気ディスク(MD(Mini Disc)を含む)、若しくは半導体メモリなどよりなるリムーバブルメディア921により構成されるだけでなく、装置本体に予め組み込まれた状態でユーザに配信される、プログラムが記録されているROM902や、記憶部913に含まれるハードディスクなどで構成される。
【0145】
なお、コンピュータが実行するプログラムは、本明細書で説明する順序に沿って時系列に処理が行われるプログラムであっても良いし、並列に、あるいは呼び出しが行われたとき等の必要なタイミングで処理が行われるプログラムであっても良い。
【0146】
また、本明細書において、記録媒体に記録されるプログラムを記述するステップは、記載された順序に沿って時系列的に行われる処理はもちろん、必ずしも時系列的に処理されなくとも、並列的あるいは個別に実行される処理をも含むものである。
【0147】
また、本明細書において、システムとは、複数のデバイス(装置)により構成される装置全体を表すものである。
【0148】
また、以上において、1つの装置(または処理部)として説明した構成を分割し、複数の装置(または処理部)として構成するようにしてもよい。逆に、以上において複数の装置(または処理部)として説明した構成をまとめて1つの装置(または処理部)として構成されるようにしてもよい。また、各装置(または各処理部)の構成に上述した以外の構成を付加するようにしてももちろんよい。さらに、システム全体としての構成や動作が実質的に同じであれば、ある装置(または処理部)の構成の一部を他の装置(または他の処理部)の構成に含めるようにしてもよい。つまり、本技術は、上述した実施の形態に限定されるものではなく、本技術の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能である。
【0149】
なお、本技術は以下のような構成も取ることができる。
(1) 蛍光指示薬により染色された生体に流入する化学物質の濃度変化を表す蛍光像を解析し、蛍光の強度を示す蛍光強度データを算出する蛍光解析部と、
前記生体の動きを表す位相差像を解析し、動き量を示す動き量データを算出する動き量解析部と、
前記蛍光解析部により算出された前記蛍光強度データ、および、前記動き量算出部により算出された前記動き量データを用いた評価に関する処理を行う評価部と
を備える画像処理装置。
(2) 前記評価部は、
前記蛍光強度データおよび前記動き量データを表示する表示用データを生成する表示用データ生成部と、
前記表示用データ生成部により生成された前記表示用データの画像を表示する表示部と
を備える前記(1)に記載の画像処理装置。
(3) 前記評価部は、
前記蛍光強度データおよび前記動き量データを用いて評価対象を評価するための評価用パラメータを算出する評価用パラメータ算出部と、
前記評価用パラメータ算出部により算出された前記評価用パラメータを用いて、前記評価対象の評価を行う判定部と
を備える前記(1)に記載の画像処理装置。
(4) 前記評価用パラメータは、前記蛍光強度データの時系列データのピークと、前記動き量データの時系列データのピークとの、タイミングのずれ量である
前記(3)に記載の画像処理装置。
(5) 前記評価用パラメータは、前記蛍光強度データの時系列データのピークと、前記動き量データの時系列データのピークとの、大きさのずれ量である
前記(3)または(4)に記載の画像処理装置。
(6) 前記判定部は、前記評価用パラメータを閾値判定することにより、前記評価対象の評価を行う
前記(3)乃至(5)のいずれかに記載の画像処理装置。
(7) 前記評価対象は、所定の疾患である
前記(3)乃至(6)のいずれかに記載の画像処理装置。
(8) 前記評価対象は、前記生体に投与された薬剤の影響である
前記(3)乃至(7)のいずれかに記載の画像処理装置。
(9) 前記評価部は、
前記判定部による前記評価対象の評価結果を表示する表示用データを生成する表示用データ生成部と、
前記表示用データ生成部により生成された前記表示用データの画像を表示する表示部と
をさらに備える前記(3)乃至(8)のいずれかに記載の画像処理装置。
(10) 前記評価部は、
前記判定部による前記評価対象の評価結果を示すデータを出力する出力部をさらに備える
前記(3)乃至(10)のいずれかに記載の画像処理装置。
(11) 前記蛍光解析部は、所定の注目領域の蛍光強度の平均値を前記蛍光強度データとして算出し、
前記動き量解析部は、所定の注目領域の動き量の平均値を前記動き量データとして算出する
前記(1)乃至(10)のいずれかに記載の画像処理装置。
(12) 前記蛍光像および前記位相差像の両方を含む蛍光位相差画像を、画像処理によって、前記蛍光像を含む蛍光画像と、前記位相差像を含む位相差画像とに分離する画像分離部をさらに備える
前記(1)乃至(11)のいずれかに記載の画像処理装置。
(13) 前記画像分離部は、
前記蛍光位相差画像の画素値の時系列データの極小値を算出する極小値算出部と、
前記極小値算出部により算出された極小値の回帰曲線を算出する回帰曲線算出部と、
前記蛍光位相差画像の画素値の時系列データから、前記回帰曲線算出部により算出された前記回帰曲線分を減算することにより、前記蛍光画像を抽出する減算部と、
前記蛍光位相差画像の画素値の時系列データから、前記減算部により抽出された前記蛍光画像分を減算することにより、前記位相差画像を抽出する演算部と
を備える前記(1)乃至(12)のいずれかに記載の画像処理装置。
(14) 前記画像分離部は、
前記蛍光位相差画像の所定の注目画素の周辺領域の平均輝度を算出する平均輝度算出部をさらに備え、
前記極小値算出部は、前記平均輝度算出部により算出された前記平均輝度の時系列データの極小値を算出する
前記(13)に記載の画像処理装置。
(15) 前記画像分離部は、前記蛍光位相差画像の画素値の時系列データから高周波成分を抽出するハイパスフィルタを備える
前記(12)に記載の画像処理装置。
(16) 前記生体を撮像し、前記蛍光像および前記位相差像の両方を含む蛍光位相差画像を得る撮像部をさらに備える
前記(1)乃至(15)のいずれかに記載の画像処理装置。
(17) 前記生体は、心筋細胞である
前記(1)乃至(16)のいずれかに記載の画像処理装置。
(18) 画像処理装置の画像処理方法であって、
蛍光解析部が、蛍光指示薬により染色された生体に流入する化学物質の濃度変化を表す蛍光像を解析し、蛍光の強度を示す蛍光強度データを算出し、
動き量解析部が、前記生体の動きを表す位相差像を解析し、動き量を示す動き量データを算出し、
評価部が、算出された前記蛍光強度データ、および、前記動き量データを用いた評価に関する処理を行う
画像処理方法。
(19) コンピュータを、
蛍光指示薬により染色された生体に流入する化学物質の濃度変化を表す蛍光像を解析し、蛍光の強度を示す蛍光強度データを算出する蛍光解析部、
前記生体の動きを表す位相差像を解析し、動き量を示す動き量データを算出する動き量解析部、
算出された前記蛍光強度データ、および、前記動き量データを用いた評価に関する処理を行う評価部
として機能させるためのプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体。
(20) コンピュータを、
蛍光指示薬により染色された生体に流入する化学物質の濃度変化を表す蛍光像を解析し、蛍光の強度を示す蛍光強度データを算出する蛍光解析部、
前記生体の動きを表す位相差像を解析し、動き量を示す動き量データを算出する動き量解析部、
算出された前記蛍光強度データ、および、前記動き量データを用いた評価に関する処理を行う評価部
として機能させるためのプログラム。
【符号の説明】
【0150】
100 評価システム, 101 培養心筋細胞, 111 撮像装置, 112 画像分離装置, 113 蛍光画像解析装置, 114 位相差画像解析装置, 115 解析結果評価装置, 120 画像処理装置,130 画像処理装置, 171 平均輝度算出部, 172 極小値検出部, 173 回帰曲線算出部, 174 減算部, 175 演算部, 201 蛍光画像バッファ, 202 注目領域設定部, 203 蛍光強度データ生成部, 221 位相差画像バッファ, 222 注目領域設定部, 223 動き量データ生成部, 251 蛍光強度データバッファ, 252 動き量データバッファ, 253 表示用データ生成部, 254 表示部, 301 演算部, 302 判定部, 303 出力部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
蛍光指示薬により染色された生体に流入する化学物質の濃度変化を表す蛍光像を解析し、蛍光の強度を示す蛍光強度データを算出する蛍光解析部と、
前記生体の動きを表す位相差像を解析し、動き量を示す動き量データを算出する動き量解析部と、
前記蛍光解析部により算出された前記蛍光強度データ、および、前記動き量算出部により算出された前記動き量データを用いた評価に関する処理を行う評価部と
を備える画像処理装置。
【請求項2】
前記評価部は、
前記蛍光強度データおよび前記動き量データを表示する表示用データを生成する表示用データ生成部と、
前記表示用データ生成部により生成された前記表示用データの画像を表示する表示部と
を備える請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項3】
前記評価部は、
前記蛍光強度データおよび前記動き量データを用いて評価対象を評価するための評価用パラメータを算出する評価用パラメータ算出部と、
前記評価用パラメータ算出部により算出された前記評価用パラメータを用いて、前記評価対象の評価を行う判定部と
を備える請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項4】
前記評価用パラメータは、前記蛍光強度データの時系列データのピークと、前記動き量データの時系列データのピークとの、タイミングのずれ量である
請求項3に記載の画像処理装置。
【請求項5】
前記評価用パラメータは、前記蛍光強度データの時系列データのピークと、前記動き量データの時系列データのピークとの、大きさのずれ量である
請求項3に記載の画像処理装置。
【請求項6】
前記判定部は、前記評価用パラメータを閾値判定することにより、前記評価対象の評価を行う
請求項3に記載の画像処理装置。
【請求項7】
前記評価対象は、所定の疾患である
請求項3に記載の画像処理装置。
【請求項8】
前記評価対象は、前記生体に投与された薬剤の影響である
請求項3に記載の画像処理装置。
【請求項9】
前記評価部は、
前記判定部による前記評価対象の評価結果を表示する表示用データを生成する表示用データ生成部と、
前記表示用データ生成部により生成された前記表示用データの画像を表示する表示部と
をさらに備える請求項3に記載の画像処理装置。
【請求項10】
前記評価部は、
前記判定部による前記評価対象の評価結果を示すデータを出力する出力部をさらに備える
請求項3に記載の画像処理装置。
【請求項11】
前記蛍光解析部は、所定の注目領域の蛍光強度の平均値を前記蛍光強度データとして算出し、
前記動き量解析部は、所定の注目領域の動き量の平均値を前記動き量データとして算出する
請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項12】
前記蛍光像および前記位相差像の両方を含む蛍光位相差画像を、画像処理によって、前記蛍光像を含む蛍光画像と、前記位相差像を含む位相差画像とに分離する画像分離部をさらに備える
請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項13】
前記画像分離部は、
前記蛍光位相差画像の画素値の時系列データの極小値を算出する極小値算出部と、
前記極小値算出部により算出された極小値の回帰曲線を算出する回帰曲線算出部と、
前記蛍光位相差画像の画素値の時系列データから、前記回帰曲線算出部により算出された前記回帰曲線分を減算することにより、前記蛍光画像を抽出する減算部と、
前記蛍光位相差画像の画素値の時系列データから、前記減算部により抽出された前記蛍光画像分を減算することにより、前記位相差画像を抽出する演算部と
を備える請求項12に記載の画像処理装置。
【請求項14】
前記画像分離部は、
前記蛍光位相差画像の所定の注目画素の周辺領域の平均輝度を算出する平均輝度算出部をさらに備え、
前記極小値算出部は、前記平均輝度算出部により算出された前記平均輝度の時系列データの極小値を算出する
請求項13に記載の画像処理装置。
【請求項15】
前記画像分離部は、前記蛍光位相差画像の画素値の時系列データから高周波成分を抽出するハイパスフィルタを備える
請求項12に記載の画像処理装置。
【請求項16】
前記生体を撮像し、前記蛍光像および前記位相差像の両方を含む蛍光位相差画像を得る撮像部をさらに備える
請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項17】
前記生体は、心筋細胞である
請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項18】
画像処理装置の画像処理方法であって、
蛍光解析部が、蛍光指示薬により染色された生体に流入する化学物質の濃度変化を表す蛍光像を解析し、蛍光の強度を示す蛍光強度データを算出し、
動き量解析部が、前記生体の動きを表す位相差像を解析し、動き量を示す動き量データを算出し、
評価部が、算出された前記蛍光強度データ、および、前記動き量データを用いた評価に関する処理を行う
画像処理方法。
【請求項19】
コンピュータを、
蛍光指示薬により染色された生体に流入する化学物質の濃度変化を表す蛍光像を解析し、蛍光の強度を示す蛍光強度データを算出する蛍光解析部、
前記生体の動きを表す位相差像を解析し、動き量を示す動き量データを算出する動き量解析部、
算出された前記蛍光強度データ、および、前記動き量データを用いた評価に関する処理を行う評価部
として機能させるためのプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体。
【請求項20】
コンピュータを、
蛍光指示薬により染色された生体に流入する化学物質の濃度変化を表す蛍光像を解析し、蛍光の強度を示す蛍光強度データを算出する蛍光解析部、
前記生体の動きを表す位相差像を解析し、動き量を示す動き量データを算出する動き量解析部、
算出された前記蛍光強度データ、および、前記動き量データを用いた評価に関する処理を行う評価部
として機能させるためのプログラム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate

【図20】
image rotate

【図21】
image rotate


【公開番号】特開2013−53854(P2013−53854A)
【公開日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−190105(P2011−190105)
【出願日】平成23年8月31日(2011.8.31)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 平成23年3月1日 東京女子医科大学 先端生命科学研究所主催の「第10回 日本再生医療学会総会」において文書をもって発表
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】