説明

画像処理装置および画像処理プログラム

【課題】複数の人物を被写体として含む画像中で人物間に何らかのコミュニケーションが発生している場面を的確に抽出する。
【解決手段】画像に含まれる複数の人物の顔を検出する顔検出部と、顔検出部が検出した顔の目線を推定する目線推定部と、目線推定部が推定した目線のターゲットが画像に含まれる人物であるか否かを量的に示すターゲット係数を目線元の人物とこの人物のターゲット候補である人物との全ての組み合わせに対して算出するターゲット係数算出部と、顔の表情が所定の表情と類似している度合いを量的に示す表情係数を複数の人物の顔に対してそれぞれ算出する表情係数算出部と、ターゲット係数算出部が算出したターゲット係数および表情係数算出部が算出した表情係数を用いることにより、他の人物から注目されている度合いを量的に示す主人公度を複数の人物に対してそれぞれ算出する主人公度算出部とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像信号に対して所定の処理を施す画像処理装置および画像処理プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、撮像機能を備えたデジタルカメラ等の画像処理装置においては、被写体が人間である場合にその人間の顔を検出し、この検出した顔の位置にピントを合わせる技術が知られている。また、近年では、被写体である人間が笑顔等の撮影に好適な表情を見せているタイミングを自動的に認識することによって撮影を行う技術も知られている。
【0003】
このような状況の下、複数の人物を対象とした撮影を行う際、個々の人物の顔の向きや黒目の位置を判定することによってカメラ目線の画像を抽出する技術が開示されている(例えば、特許文献1を参照)。また、映像から検出した人物の目線方向を推定し、この目線方向の特徴を抽出することによってその人物の行動意図を判定する技術も開示されている(例えば、特許文献2を参照)。さらに、前述した従来技術以外にも、画像中の人物の顔や目線の向きを解析するための様々な技術が開示されている(例えば、特許文献3〜5を参照)。
【0004】
【特許文献1】特開2007−96440号公報
【特許文献2】特開2001−51338号公報
【特許文献3】特開2000−322577号公報
【特許文献4】特開2006−74368号公報
【特許文献5】特開2007−26387号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述した従来技術では、個々の人物の顔や目線を個別に判定するだけであるため、画像中に複数の人物が存在している場合、人物間に会話や話しかけ等の何らかのコミュニケーションが発生している場面を抽出することができなかった。
【0006】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、複数の人物を被写体として含む画像中で人物間に何らかのコミュニケーションが発生している場面を的確に抽出することができる画像処理装置および画像処理プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係る画像処理装置は、画像信号に対応する画像のパターンに基づいて前記画像に含まれる複数の人物の顔を検出する顔検出部と、前記顔検出部が検出した顔の目線を推定する目線推定部と、前記目線推定部が推定した目線のターゲットが前記画像に含まれる人物であるか否かを量的に示すターゲット係数を目線元の人物と該人物のターゲット候補である人物との全ての組み合わせに対して算出するターゲット係数算出部と、顔の表情が所定の表情と類似している度合いを量的に示す表情係数を前記複数の人物の顔に対してそれぞれ算出する表情係数算出部と、前記ターゲット係数算出部が算出したターゲット係数および前記表情係数算出部が算出した表情係数を用いることにより、前記画像に含まれる他の人物から注目されている度合いを量的に示す主人公度を前記複数の人物に対してそれぞれ算出する主人公度算出部と、を備えたことを特徴とする。
【0008】
また、本発明に係る画像処理装置は、上記発明において、前記主人公度は、当該主人公度の算出対象である人物を前記ターゲット候補とする前記ターゲット係数と該ターゲット係数における前記目線元の人物の表情係数との積を全ての前記目線元の人物について足し合わせた量であることを特徴とする。
【0009】
また、本発明に係る画像処理装置は、上記発明において、前記目線推定部が目線を推定した人物までの距離を算出する距離算出部を備え、前記ターゲット係数算出部は、前記目線推定部の推定結果および前記距離算出部の算出結果を用いることによって前記目線元の人物と前記ターゲット候補の人物とが所定の位置関係を満たしているか否かを判定し、この判定結果に応じたターゲット係数を算出することを特徴とする。
【0010】
また、本発明に係る画像処理装置は、上記発明において、前記画像を表示する表示部を備え、前記表示部は、前記主人公度算出部の算出結果に基づく情報を前記画像に重畳して表示することを特徴とする。
【0011】
また、本発明に係る画像処理装置は、上記発明において、所定の視野領域内の被写体を撮像して画像信号を生成する撮像部と、前記撮像部が撮像している被写体を撮影する制御を行う制御部と、を備えたことを特徴とする。
【0012】
また、本発明に係る画像処理装置は、上記発明において、前記制御部は、前記主人公度算出部が算出した前記複数の人物の各々の主人公度に応じて前記画像の露出およびピントを調整する制御を行うことを特徴とする。
【0013】
また、本発明に係る画像処理装置は、上記発明において、前記制御部は、露出およびピントを調整した前記画像を自動的に撮影する制御を行うことを特徴とする。
【0014】
また、本発明に係る画像処理装置は、上記発明において、前記複数の人物のうち前記主人公度が最大の人物を少なくとも残して前記画像のトリミングを行うトリミング部を備えたことを特徴とする。
【0015】
また、本発明に係る画像処理プログラムは、画像信号に対して処理を施す画像処理装置に、前記画像信号に対応する画像のパターンに基づいて前記画像に含まれる複数の人物の顔を検出する顔検出ステップ、前記顔検出ステップで検出した顔の目線を推定する目線推定ステップ、前記目線推定ステップで推定した目線のターゲットが前記画像に含まれる人物であるか否かを量的に示すターゲット係数を目線元の人物と該人物のターゲット候補である人物との全ての組み合わせに対して算出し、この算出したターゲット係数を前記画像処理装置が備える記憶部へ格納するターゲット係数算出ステップ、顔の表情が所定の表情と類似している度合いを量的に示す表情係数を前記複数の人物の顔に対してそれぞれ算出し、この算出した表情係数を前記記憶部へ格納する表情係数算出ステップ、前記ターゲット係数算出ステップで算出したターゲット係数および前記表情係数算出ステップで算出した表情係数を前記記憶部から読み出し、この読み出したターゲット係数および表情係数を用いることにより、前記画像に含まれる他の人物から注目されている度合いを量的に示す主人公度を前記複数の人物に対してそれぞれ算出する主人公度算出ステップ、を実行させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、画像に含まれる人物の目線のターゲットが同じ画像に含まれる人物であるか否かを量的に示すターゲット係数と、顔の表情が所定の表情と類似している度合いを量的に示す表情係数とを用いることにより、画像中の他の人物から注目されている度合いを量的に示す主人公度を算出しているため、画像に含まれる人物間に何らかのコミュニケーションが発生している場合には、主人公度が他の人物よりも大きい値を有する人物が存在することとなる。したがって、複数の人物を被写体として含む画像中で人物間に何らかのコミュニケーションが発生している場面を的確に抽出することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、添付図面を参照して本発明を実施するための最良の形態(以後、「実施の形態」と称する)を説明する。
【0018】
図1は、本発明の一実施の形態に係る画像処理装置である撮像装置1の構成を模式的に示す図である。撮像装置1は、所定の視野領域内の被写体を撮像して画像信号を生成する撮像部2、撮像部2の視野領域の状態を検出するセンサ部3、撮像部2が出力した画像信号に対して画像処理を施す画像処理部4、画像処理部4が出力する画像データを含む情報を表示する表示部5、表示部5の表示を制御する表示制御部6、画像データの圧縮および伸張を行う圧縮伸張部7、撮像装置1に外部から装着されるメモリカード等の記録媒体100に対して画像データ等の情報を記録する一方、記録媒体100が記録する情報を読み出す記録媒体インターフェース8、撮像装置1の操作指示信号が入力される入力部9、警告を含む各種情報の音声出力を行う音声出力部10、撮像領域へ向けて補助光を投射する補助光投射部11、撮像装置1の動作を制御する制御部12、撮像装置1の動作に関する各種情報を記憶する記憶部13を備える。
【0019】
撮像部2は、所定の視野領域にある被写体からの光を集光する撮影レンズ21、撮影レンズ21が集光した光の入射量を調整する絞り22、絞り22を通過した入射光を受光して電気信号に変換するCCD等の撮像素子23、撮像素子23から出力されるアナログ信号に対して感度補正やホワイトバランスを含む各種処理を施すアナログ信号処理部24、アナログ信号処理部24が出力した信号からデジタルの画像データを生成するA/D変換部25を有する。このうち、撮影レンズ21は、一または複数のレンズによって構成される光学系であり、レンズ駆動部14によって駆動される。また、絞り22は絞り駆動部15によって駆動される。
【0020】
画像処理部4は、画像信号に対応する画像のパターンに基づいて画像に含まれる複数の人物の顔を検出する顔検出部41、顔検出部41が検出した顔の目線を推定する目線推定部42、顔検出部41が検出した顔までの距離を算出する距離算出部43、顔の表情が所定の表情と類似している度合いを量的に示す表情係数を複数の人物の顔に対してそれぞれ算出する表情係数算出部44、目線推定部42が推定した目線のターゲットが画像信号中に含まれる人物であるか否かを量的に示すターゲット係数を目線元の人物とこの人物のターゲット候補である人物との全ての組み合わせに対して算出するターゲット係数算出部45、表情係数算出部44およびターゲット係数算出部45の算出結果を用いることにより、画像に含まれる他の人物から注目されている度合いを量的に示す主人公度を複数の人物に対してそれぞれ算出する主人公度算出部46、主人公度算出部46の算出結果に基づいて画像データのトリミングを行うトリミング部47、を有する。
【0021】
入力部9は、撮像装置1の電源ボタン、撮像指示を与えるシャッターボタン、撮像装置1が有する各種動作モードの切替を行うモード切替ボタン、画像データの再生や編集の指示を含む制御ボタンなどを有する。
【0022】
制御部12は、撮影日時の判定等を行う時計121を有しており、センサ部3の検知結果や入力部9で入力された操作指示信号に応じて撮像装置1の動作を制御する。制御部12は、MPUを用いて実現され、制御対象の各部とバスラインを介して接続されている。
【0023】
記憶部13は、撮像装置1が実行する各種プログラムを記憶するプログラム記憶部131と、画像処理部4の顔検出部41および目線推定部42が参照する顔、目、口などのパターンを記憶するパターン情報記憶部132と、画像処理部4が画像信号中の人物の顔に対して行った処理の結果を顔情報として記憶する顔情報記憶部133とを有する。記憶部13は、撮像装置1の内部に固定的に設けられるフラッシュメモリやRAM等の半導体メモリを用いて実現される。
【0024】
図2は、撮像装置1で設定可能な動作モードの一部を示す図である。図2では、撮像装置1に特有の動作モードを中心に記載し、従来の撮像装置で設定可能な動作モードと同じ動作モードについては記載を省略している。撮像装置1が撮影モードに設定されている場合、撮影前に主人公度を算出する処理を行う撮影前主人公度算出モードを設定することができる。また、撮影モードでは、撮影後に主人公度を算出し、この算出結果に基づいて画像のトリミングを行う撮影後主人公度算出トリミングモードを設定することができる。撮像装置1が撮影前主人公度算出モードに設定されている場合、画像のトリミングを行うトリミングモードおよび/または自動撮影をさらに設定することができる。
【0025】
一方、撮像装置1が再生モードに設定されている場合、記録媒体100が記録する画像データを再生した後で主人公度を算出し、この算出結果に基づいて画像のトリミングを行う再生後主人公度算出トリミングモードを設定することができる。また、再生モードでは、主人公度がすでに算出されている画像のトリミングを行う主人公度算出済画像再生トリミングモードを設定することができる。
【0026】
図3は、撮像装置1が上述した各種モードに設定されている場合の処理の流れを示すフローチャートである。まず、撮像装置1が撮影モードに設定され(ステップS1,撮影モード)、かつ撮影前主人公度算出モードに設定されている場合(ステップS2,Yes)を説明する。この場合、顔検出部41は、撮像部2から出力された画像信号に対応する画像に存在する人物の顔を検出する(ステップS3)。顔検出部41は、パターン情報記憶部132が記憶する人物の顔のパターンを用いてパターンマッチングを行うことにより、人物の顔の検出を行う。顔検出部41は、検出した顔の目や口の位置、形状、歯の有無、眉間の皺の有無等の情報を顔情報記憶部133に書き込む。
【0027】
顔検出部41が所定時間内に複数の顔を検出した場合(ステップS4,Yes)、検出した全ての顔に対して目線を推定し、撮像装置1からの距離を算出し、顔の表情係数を算出する処理を行う(ステップS5)。一方、顔検出部41が所定時間内に複数の顔を検出しなかった場合(ステップS4,No)、撮像装置1は一連の処理を終了する。
【0028】
ステップS5において、まず目線推定部42が、顔検出部41が検出した顔の目線方向を推定する(ステップS51)。具体的には、目線推定部42は、顔情報記憶部133から目の情報とパターン情報記憶部132が記憶する目のパターン情報とを読み出してパターンマッチングを行うことによって目線方向を推定する。なお、両目の目線方向が異なる場合には、顔の角度等の条件に応じて左右の目線方向に重み付けしたものを推定値として算出すればよい。例えば、顔が右方(撮像装置1から見て撮影レンズ21の光軸に対して左方)を向いている場合、左目の重みを右目の重みよりも大きくして推定値を算出する。また、顔が正面付近を向いている時は、両目の目線方向の平均を推定値として算出する。
【0029】
次に、距離算出部43は、撮影レンズ21を起点として目線推定を行った人物Ai(i=1,2,3,…)までの距離Liを算出し、算出結果を顔情報記憶部133へ書き込む(ステップS52)。この際には、絞り駆動部15が絞り22を小さくして焦点の深度を深くすることにより、撮影レンズ21からの距離が異なる複数の被写体にピント合わせを行う。
【0030】
図4は、以下の説明において参照する画像の表示例を示す図であり、撮像装置1が撮像している画像(スルー画像)の表示部5における表示例を模式的に示す図である。また、図5は、図4に示す表示画像31と撮像装置1との位置関係を模式的に示す図である。図5では、撮像装置1からの距離が最も遠い人物A1の位置を座標原点Oとして撮影レンズ21の光軸Pと平行な軸をL軸とする一方、撮影レンズ21の光軸Pと直交する軸をX軸としている。また、図5では、人物A1〜A3の光軸Pに対する水平方向の目線角度をそれぞれφ1〜φ3とし、撮影レンズ21の画角をθXとしている。なお、図5に示す場合、人物A2の水平方向の目線角度φ2は0(度)である。目線角度φ1〜φ3の値は、上記ステップS51で目線推定部42が推定した値である。
【0031】
この後、表情係数算出部44は、画像に含まれる人物の顔の表情係数を算出する(ステップS53)。図6は、表情係数算出部44が行う表情係数算出処理の概要を示すフローチャートである。まず、表情係数算出部44は、人物Aiの目の形状や位置に関する情報を顔情報記憶部133から読み出し、この読み出した顔情報から人物Aiの目の両端を結ぶ直線(直線eiという)より上方に位置する目の部分の面積(目面積)EAiおよび直線eiより下方に位置する目面積EBiをそれぞれ算出する(ステップS531)。
【0032】
続いて、表情係数算出部44は、人物Aiの目部笑顔度REiを算出する(ステップS532)。図7は、人物Aiの顔が笑っている状態を示す図である。図7に示す場合、目面積EAiは目面積EBiよりも大きい。これに対して、図8は人物Aiが顔をしかめている状態を示す図である。図8に示す場合、目面積EAiは目面積EBiと同程度である。目部笑顔度REiは、図7および図8に示すような特徴をふまえた上で、
【数1】

と定義される。式(1)から明らかなように、目部笑顔度REiは人物Aiの顔が笑顔である場合の方が大きい。
【0033】
次に、表情係数算出部44は、人物Aiの口の形状や位置に関する情報を顔情報記憶部133から読み出し、この読み出した顔情報から人物Aiの口の両端を結ぶ直線(直線miという)の上方に位置する唇の部分の面積(唇面積)LAiおよび直線miの下方に位置する唇面積LBiを算出する(ステップS533)。
【0034】
この後、表情係数算出部44は、人物Aiの口部笑顔度RLiを算出する(ステップS534)。人物Aiの顔が笑っている場合、唇面積LBiの方が唇面積LAiよりも大きい(図7を参照)。これに対して、人物Aiが顔をしかめている場合、唇面積LAiは唇面積LBiと同程度である(図8を参照)。このような特徴をふまえ、口部笑顔度RLiは、
【数2】

と定義される。式(2)から明らかなように、口部笑顔度RLiは人物Aiの顔が笑顔である場合の方が大きい。
【0035】
続いて、表情係数算出部44は、目部笑顔度REiと口部笑顔度RLiとの和として定義される人物Aiの表情係数Ri=REi+RLiを算出し、この和を顔情報記憶部133に書き込む(ステップS535)。
【0036】
なお、パターン情報記憶部132において目の形状と目部笑顔度REi、および口の形状と口部笑顔度RLiをそれぞれ対応付けたテーブルを予め記憶部13で記憶しておき、表情係数算出部44がそのテーブルを参照することによって目部笑顔度REiや口部笑顔度RLiを算出するようにしてもよい。
【0037】
ステップS535の後、表情係数算出部44は、顔検出部41によって人物Aiの口の中に歯が検出されている場合(ステップS536,Yes)、表情係数Riに正の定数αを加えた和Ri+αを新たな表情係数Riとする(ステップS537)。定数αの値は任意に設定可能であるが、表情係数Riは0<Ri≦2であるため、定数αの値も0<α≦2であることが望ましい。
【0038】
続いて、表情係数算出部44は、顔検出部41によって人物Aiの眉間に皺が検出されている場合(ステップS538,Yes)、表情係数Riから定数βを引いた差Ri−βを新たな表情係数Riとする(ステップS539)。定数β(>0)は任意であるが、定数αと同程度の値であればよく、定数αと等しくてもよい。
【0039】
顔検出部41が人物Aiの口の中に歯を検出していない場合(ステップS537,No)、表情係数算出部44はステップS538へ進む。また、顔検出部41が人物Aiの眉間に皺を検出していない場合(ステップS538,No)、表情係数算出部44は一連の表情係数算出処理を終了する。
【0040】
なお、表情係数算出部44は、上記以外の顔の情報、例えば鼻や眉毛の形状、口端部の影の有無などの情報を用いることによって表情係数を算出するようにしてもよい。
【0041】
以上説明したステップS5の処理を顔検出部41が検出した全ての顔に対して行った後、ターゲット係数算出部45は、目線元の人物とこの人物のターゲット候補である人物との全ての組み合わせに対してターゲット係数を算出する(ステップS6)。まず、ターゲット係数算出部45は、距離算出部43が算出した距離Liを顔情報記憶部133から読み出し、人物Aiと人物Aj(i≠j)のL座標の差分ΔLijおよびX座標の差分ΔXijを以下に示す式(3)、(4)にしたがってそれぞれ算出する。
ΔLij=Li−Lj …(3)
ΔXij=Li・tan(ρi)+Lj・tan(ρj) …(4)
ここで、式(4)のρi(<θX)は、撮影レンズ21から見た人物Aiの方向と撮影レンズ21の光軸Pとのなす角度である。なお、図5に示す場合には、ρ2=0(度)である。
【0042】
続いて、ターゲット係数算出部45は、人物Aiの水平方向の目線角度φiを用いることにより、L座標の差分ΔLijとX座標の差分ΔXijとが、
ΔXij=ΔLij・tan(φi) …(5)
を満たしているか否かを判定する。ΔLijとΔXijが式(5)を満たしている場合、ターゲット係数算出部45は、人物Aiの目線の真のターゲットが人物Ajであると判定する。図5に示す場合には、(i,j)=(1,2),(3,2)のときに式(5)が満たされる。なお、式(5)で用いるΔLij,ΔXij,φiは推定値であることに鑑み、ターゲット係数算出部45は、式(5)の左辺と右辺とが厳密に一致していなくても所定の範囲内に入っていれば等号が成立しているとみなす。
【0043】
ターゲット係数算出部45は、式(5)を用いた判定結果に基づいてターゲット係数Tijを算出する。ターゲット係数Tijの値は、式(5)の等号が成立している場合にゼロでない定数(例えば1)を有する一方、式(5)の等号が成立していない場合にゼロである。ターゲット係数算出部45は、画像中にN人の人物がいる場合、N(N−1)通りのターゲット係数を算出する。したがって、図5に示す場合、ターゲット係数算出部45は3×2=6通りのターゲット係数を算出する。
【0044】
ステップS6に続いて、主人公度算出部46は人物Aiの主人公度Hiを算出する(ステップS7)。人物Aiの主人公度Hiは、
【数3】

と定義される。式(6)の右辺は、目線元の人物Ajの表情係数Rjとターゲット候補が人物Ajである場合のターゲット係数Tijとの積を全ての目線元の人物Aj(j≠i)について足し合わせた量である。図5に示す場合、ターゲット係数はT12,T32以外はゼロである。したがって、ターゲット係数T12,T32をそれぞれ1と定義すると、人物A1〜A3の主人公度は、H1=H3=0、H2=R1+R2となる。
【0045】
この後、制御部12は、主人公度算出部46が算出した結果に基づいて露出およびピントを調整する(ステップS8)。具体的には、制御部12は、主人公度が最大の人物(図5に示す場合には人物A2)とその人物を目線のターゲットとしている人物(図5に示す場合には人物A1、A3)に露出およびピントを合わせる。なお、制御部12は、主人公度が最大の人物にのみ露出およびピントを合わせるようにしてもよい。
【0046】
ステップS8に続く処理は、撮像装置1が自動撮影モードに設定されているか否かによって異なる。撮像装置1が自動撮影モードに設定されていない場合(ステップS9,No)、表示部5はOK表示を表示する(ステップS10)。図9は、表示部5におけるOK表示の表示例を示す図であり、図4および図5に示す状況に対応したOK表示の表示例を示す図である。図9に示す表示画像32では、3人の人物A1〜A3のうち人物A2が主人公であると判定されたため、画像の中央部上方に「タイミングOK」という文字列が重畳して表示されている。OK表示を見た撮影者は、入力部9を介して撮影指示信号を入力する。所定時間内に撮影指示信号が入力された場合(ステップS11,Yes)、撮像装置1は制御部12の制御のもとで撮影を行う(ステップS12)。一方、所定時間内に撮影指示信号が入力されない場合(ステップS11,No)、撮像装置1はステップS3に戻る。なお、表示部5でOK表示を表示する際には、主人公度が最大である人物(図9に示す場合には人物A2)を識別できる情報をさらに表示してもよい。
【0047】
撮像装置1が自動撮影モードに設定されている場合(ステップS9,Yes)、撮像装置1は制御部12の制御のもとで自動的に撮影を行う(ステップS12)。
【0048】
撮像装置1が撮影した後の処理を説明する。撮像装置1がトリミングモードに設定されている場合(ステップS13,Yes)、トリミング部47は、主人公度が最大の人物とその人物を目線のターゲットとする人物を残して画像のトリミングを行う(ステップS14)。なお、トリミング部47が、主人公度が最大の人物のみを残して画像のトリミングを行うようにしてもよい。
【0049】
続いて、表示部5は、トリミング部47によってトリミングされた結果を表示する(ステップS15)。図10は、表示部5におけるトリミング結果の表示例を示す図である。同図に示すトリミング結果表示画像33は、4人の人物A4〜A7のうち、目線が他の3人とは無関係の方向を向いている人物A7を除いた領域をトリミング領域33aとして破線を用いて表示している。なお、ステップS15では、表示部5がトリミング結果表示画像33を表示する代わりに、トリミング領域33aのみを表示するようにしてもよい。また、トリミング結果表示画像33の適当な位置に、トリミング画像を記録するか否かを問合わせるメッセージを出力し、撮影者に入力部9からの選択入力を促すようにしてもよい。
【0050】
入力部9からトリミング画像を記録する操作指示信号が所定時間内に入力された場合(ステップS16,Yes)、撮像装置1はトリミング後の画像データを圧縮伸張部7で所定のサイズに圧縮し、この圧縮したトリミング画像データを、記録媒体インターフェース8を介して記録媒体100へ記録する(ステップS17)。トリミング画像データには、トリミング画像に含まれる人物の主人公度が追加情報として書き込まれる。トリミング画像を記録する操作指示信号が所定時間内に入力されなかった場合(ステップS16,No)、撮像装置1は一連の処理を終了する。
【0051】
撮像装置1がトリミングモードに設定されていない場合(ステップS13,No)、撮像装置1は一連の処理を終了する。
【0052】
次に、撮像装置1が撮影モードに設定されており(ステップS1,撮影モード)、かつ撮影前主人公度算出モードに設定されていない場合(ステップS2,No)を説明する。この場合、撮像装置1は通常撮影処理を行う(ステップS18)。以後、通常撮影処理において1枚の画像が撮影され、この画像の画像データが記録媒体インターフェース8を介して記録媒体100へ書き込まれたものとする。
【0053】
通常撮影処理に続く処理は、撮像装置1が撮影後主人公度算出トリミングモードに設定されているか否かによって異なる。撮像装置1が撮影後主人公度算出トリミングモードに設定されている場合(ステップS19,Yes)、顔検出部41は、ステップS18で記録媒体100に記録された画像データを読み出し、この読み出した画像データに対してステップS3と同じ顔検出処理を行う(ステップS20)。これに対して、撮像装置1が撮影後主人公度算出トリミングモードに設定されていない場合(ステップS19,No)、撮像装置1は一連の処理を終了する。
【0054】
以下、撮像装置1が撮影後主人公度算出トリミングモードに設定されている場合を説明する。この場合、まず顔検出部41が撮影した画像に存在する人物の顔を検出する(ステップS20)。顔検出部41が所定時間内に複数の顔を検出した場合(ステップS21,Yes)、撮像装置1はステップS5と同じループ処理を行う(ステップS22)。すなわち、撮像装置1は、ステップS51に対応する目線推定処理(ステップS221)、ステップS52に対応する距離算出処理(ステップS222)およびステップS53に対応する表情係数算出処理(ステップS223)を顔検出部41が検出した全ての顔に対して行う。なお、ステップS21において顔検出部41が複数の顔を所定時間内に検出しなかった場合(ステップS21,No)、撮像装置1は一連の処理を終了する。
【0055】
この後、ターゲット係数算出部45が目線元の人物とこの人物のターゲット候補である人物との全ての組み合わせに対してターゲット係数を算出し(ステップS23)、主人公度算出部46が画像に含まれる全ての人物の主人公度を算出する(ステップS24)。ステップS23およびS24の処理は、上述したステップS6およびS7の処理とそれぞれ同じである。
【0056】
続いて、撮像装置1は、撮影した画像に対して主人公度の算出結果に応じたトリミングを行う(ステップS14〜S17)。
【0057】
次に、撮像装置1が再生モードに設定されている場合(ステップS1,再生モード)を説明する。まず、撮像装置1は、記録媒体100が記憶する画像データから撮影者によって選択された画像データを読み出して表示部5で再生表示する(ステップS25)。
【0058】
撮像装置1が再生後主人公度算出トリミングモードに設定されている場合(ステップS26,Yes)、撮像装置1はステップS20の顔検出処理へ進む。ステップS20以降の処理は、上述した通りである。
【0059】
一方、撮像装置1が再生後主人公度算出トリミングモードに設定されていない場合(ステップS26,No)、撮像装置1が主人公度算出済画像再生トリミングモードに設定されていれば(ステップS27,Yes)、撮像装置1は再生画像に含まれる人物の主人公度に基づいてトリミング処理を行う(ステップS14〜S17)。これに対して、撮像装置1が主人公度算出済画像再生トリミングモードに設定されていなければ(ステップS27,No)、撮像装置1は一連の処理を終了する。
【0060】
以上説明した本発明の一実施の形態によれば、画像に含まれる人物の目線のターゲットが同じ画像に含まれる人物であるか否かを量的に示すターゲット係数と、顔の表情が所定の表情と類似している度合いを量的に示す表情係数とを用いることにより、画像中の他の人物から注目されている度合いを量的に示す主人公度を算出しているため、画像に含まれる人物間に何らかのコミュニケーションが発生している場合には、主人公度が他の人物よりも大きい値を有する人物が存在することとなる。したがって、複数の人物を被写体として含む画像中で人物間に何らかのコミュニケーションが発生している場面を的確に抽出することが可能となる。
【0061】
ここまで、本発明を実施するための最良の形態を詳述してきたが、本発明は上述した一実施の形態によってのみ限定されるべきものではない。例えば、撮像装置が撮影モードに設定されている場合に連写モードを設定できるようにしてもよい。撮像装置が連写モードに設定されている場合には、連写した全ての画像に対して画像に含まれる人物の主人公度を算出するようにしてもよいし、連写した画像のうち一部の画像に対して画像に含まれる主人公度を算出するようにしてもよい。また、撮像装置が連写モードおよびトリミングモードに設定されている場合には、連写した複数の画像の中で最大の主人公度を有する人物が含まれている画像をトリミング対象としてもよいし、撮影者にトリミング対象の画像を選択させるようにしてもよい。
【0062】
また、本発明は、動画を撮影するデジタルビデオカメラ等にも適用可能である。この場合には、上述した連写モードの場合と同様、全てのフレーム画像に対して順次主人公度算出処理を行ってもよいし、一部のフレーム画像に対して主人公度算出処理を行ってもよい。
【0063】
また、本発明で適用する表情係数は笑顔に関するものに限られるわけではない。例えば、驚いている表情の表情係数や、怒っている表情の表情係数を定義して主人公度の算出に適用してもよいし、複数の表情に対して定義される表情係数をそれぞれ算出し、この算出した表情係数のうち最大値を有する表情を採用して主人公度を算出するようにしてもよい。
【0064】
このように、本発明は、ここでは記載していない様々な実施の形態等を含みうるものであり、特許請求の範囲により特定される技術的思想を逸脱しない範囲内において種々の設計変更等を施すことが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】本発明の一実施の形態に係る画像処理装置(撮像装置)の構成を模式的に示す図である。
【図2】本発明の一実施の形態に係る画像処理装置(撮像装置)で設定可能な動作モードの一部を示す図である。
【図3】本発明の一実施の形態に係る画像処理装置(撮像装置)が行う処理の外洋を示すフローチャートである。
【図4】撮像領域の一例を模式的に示す図である。
【図5】本発明の一実施の形態に係る画像処理装置(撮像装置)と図4に示す撮像領域との位置関係を模式的に示す図である。
【図6】表情検出算出処理の概要を示すフローチャートである。
【図7】画像に含まれる人物の顔が笑っている状態を示す図である。
【図8】画像に含まれる人物が顔をしかめている状態を示す図である。
【図9】OK表示の表示例を示す図である。
【図10】トリミング結果の表示例を示す図である。
【符号の説明】
【0066】
1 撮像装置(画像処理装置)
2 撮像部
3 センサ部
4 画像処理部
5 表示部
6 表示制御部
7 圧縮伸張部
8 記録媒体インターフェース
9 入力部
10 音声出力部
11 補助光投射部
12 制御部
13 記憶部
14 レンズ駆動部
15 絞り駆動部
21 撮影レンズ
22 絞り
23 撮像素子
24 アナログ信号処理部
25 A/D変換部
31、32 表示領域
33 トリミング結果表示画像
33a トリミング領域
41 顔検出部
42 目線推定部
43 距離算出部
44 表情係数算出部
45 ターゲット係数算出部
46 主人公度算出部
47 トリミング部
100 記録媒体
121 時計
131 プログラム記憶部
132 パターン情報記憶部
133 顔情報記憶部
A1〜A7 人物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像信号に対応する画像のパターンに基づいて前記画像に含まれる複数の人物の顔を検出する顔検出部と、
前記顔検出部が検出した顔の目線を推定する目線推定部と、
前記目線推定部が推定した目線のターゲットが前記画像に含まれる人物であるか否かを量的に示すターゲット係数を目線元の人物と該人物のターゲット候補である人物との全ての組み合わせに対して算出するターゲット係数算出部と、
顔の表情が所定の表情と類似している度合いを量的に示す表情係数を前記複数の人物の顔に対してそれぞれ算出する表情係数算出部と、
前記ターゲット係数算出部が算出したターゲット係数および前記表情係数算出部が算出した表情係数を用いることにより、前記画像に含まれる他の人物から注目されている度合いを量的に示す主人公度を前記複数の人物に対してそれぞれ算出する主人公度算出部と、
を備えたことを特徴とする画像処理装置。
【請求項2】
前記主人公度は、
当該主人公度の算出対象である人物を前記ターゲット候補とする前記ターゲット係数と該ターゲット係数における前記目線元の人物の表情係数との積を全ての前記目線元の人物について足し合わせた量であることを特徴とする請求項1記載の画像処理装置。
【請求項3】
前記目線推定部が目線を推定した人物までの距離を算出する距離算出部を備え、
前記ターゲット係数算出部は、
前記目線推定部の推定結果および前記距離算出部の算出結果を用いることによって前記目線元の人物と前記ターゲット候補の人物とが所定の位置関係を満たしているか否かを判定し、この判定結果に応じたターゲット係数を算出することを特徴とする請求項1または2記載の画像処理装置。
【請求項4】
前記画像を表示する表示部を備え、
前記表示部は、前記主人公度算出部の算出結果に基づく情報を前記画像に重畳して表示することを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項記載の画像処理装置。
【請求項5】
所定の視野領域内の被写体を撮像して画像信号を生成する撮像部と、
前記撮像部が撮像している被写体を撮影する制御を行う制御部と、
を備えたことを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項記載の画像処理装置。
【請求項6】
前記制御部は、
前記主人公度算出部が算出した前記複数の人物の各々の主人公度に応じて前記画像の露出およびピントを調整する制御を行うことを特徴とする請求項5記載の画像処理装置。
【請求項7】
前記制御部は、
露出およびピントを調整した前記画像を自動的に撮影する制御を行うことを特徴とする請求項6記載の画像処理装置。
【請求項8】
前記複数の人物のうち前記主人公度が最大の人物を少なくとも残して前記画像のトリミングを行うトリミング部を備えたことを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項記載の画像処理装置。
【請求項9】
画像信号に対して処理を施す画像処理装置に、
前記画像信号に対応する画像のパターンに基づいて前記画像に含まれる複数の人物の顔を検出する顔検出ステップ、
前記顔検出ステップで検出した顔の目線を推定する目線推定ステップ、
前記目線推定ステップで推定した目線のターゲットが前記画像に含まれる人物であるか否かを量的に示すターゲット係数を目線元の人物と該人物のターゲット候補である人物との全ての組み合わせに対して算出し、この算出したターゲット係数を前記画像処理装置が備える記憶部へ格納するターゲット係数算出ステップ、
顔の表情が所定の表情と類似している度合いを量的に示す表情係数を前記複数の人物の顔に対してそれぞれ算出し、この算出した表情係数を前記記憶部へ格納する表情係数算出ステップ、
前記ターゲット係数算出ステップで算出したターゲット係数および前記表情係数算出ステップで算出した表情係数を前記記憶部から読み出し、この読み出したターゲット係数および表情係数を用いることにより、前記画像に含まれる他の人物から注目されている度合いを量的に示す主人公度を前記複数の人物に対してそれぞれ算出する主人公度算出ステップ、
を実行させることを特徴とする画像処理プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−44506(P2010−44506A)
【公開日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−207160(P2008−207160)
【出願日】平成20年8月11日(2008.8.11)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【出願人】(504371974)オリンパスイメージング株式会社 (2,647)
【Fターム(参考)】