説明

画像処理装置および画像処理方法

【課題】 アーチファクトの発生を抑制する。
【解決手段】 帯域制限信号を調整するパラメータに基づいて複数の帯域制限信号を処理することで処理画像を生成する処理手段と、原画像に対する前記処理画像の振幅応答が所定値以上になるようにパラメータを制御する制御手段とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は画像処理装置および画像処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、周波数処理を行って放射線画像の診断性能を向上させる数々の画像処理方法および装置が提案されている。周波数処理は、周波数強調前の原画像からそれぞれある限られた周波数帯域の周波数成分を表す複数の帯域制限画像(帯域制限信号)を作成し、この帯域制限画像毎に強調または抑制することで行われる。複数の帯域制限画像を作成する方法としてはラプラシアンピラミッド分解を用いた方法、ウェーブレット変換を用いた方法、アンシャープマスクを利用する方法等がある。アンシャープマスクを利用した場合、原画像をSorg、ボケ画像をSusLvとすると、帯域制限画像HLvは、式1のようになる。
【0003】
【数1】

【0004】
Lvは帯域制限画像のインデックスである。周波数応答特性の異なるボケ画像を作成することで、様々な帯域制限画像を得ることができる。帯域制限をした最も低周波な画像をLとすると、原画像との関係は、式2のようになる。
【0005】
【数2】

【0006】
分解された帯域制限画像を加算していくことで、原画像に再構成される。また、各帯域制限画像の周波数における振幅応答をF(HLv)とすると、原画像の振幅応答F(Sorg)は式3のように各帯域制限画像の応答の和で表わせる。
【0007】
【数3】

【0008】
帯域制限画像毎に振幅応答を調整することで、所望の周波数応答特性をつくることができる。
【0009】
ここで、周波数処理について式4を用いて説明する。Hは帯域制限画像を、Lvは帯域制限画像のインデックスを表す。α(≧0)は帯域制限画像を強調する係数である。またβ(≧0)はその強調度合いを調整する値である。
【0010】
【数4】

【0011】
式4は帯域制限画像毎の強調係数αの値で基本的な周波数応答特性のバランスが定義され、そのバランスに対する効果の度合いを強調度βにて制御される。β=1としたときのαと帯域制限画像との関係は次のとおりである。α=1のとき、帯域制限画像は何も処理されずに出力される。α>1のとき、帯域制限画像は強調されて出力される。α<1のとき、帯域制限画像は抑制されて出力される。
【0012】
周波数応答特性を調整するための方法として、特許文献1には、ユーザがGUI上で周波数応答特性をプロットしプロット結果から周波数強調処理に必要なパラメータを得る方法が開示されている
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特許第3696339号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
しかしながら、周波数特性を自由に決定することができる場合、周波数特性によっては予期しないアーチファクトが発生してしまう可能性がある。例えば、ある周波数特性から求められたパラメータでは、上記式4においてβ×(α―1)<−1になり出力画像の位相が反転して位相反転アーチファクトが生じる可能性がある。
【0015】
本件の目的の一つは、アーチファクトの発生を抑制することである。
【0016】
なお、前記目的に限らず、後述する発明を実施するための形態に示す各構成により導かれる作用効果であって、従来の技術によっては得られない作用効果を奏することも本件の他の目的の1つとして位置付けることができる。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本画像処理装置は、原画像から複数の帯域制限信号を生成する生成手段と、前記帯域制限信号を調整するパラメータに基づいて前記複数の帯域制限信号を処理することで処理画像を生成する処理手段と、前記原画像に対する前記処理画像の振幅応答が所定値以上になるように前記パラメータを制御する制御手段と、を備える。
【0018】
さらに、本画像処理方法は、原画像から複数の帯域制限信号を生成する生成工程と、前記帯域制限信号を調整するパラメータに基づいて前記複数の帯域制限信号を処理することで処理画像を生成する処理工程と、前記原画像に対する前記処理画像の振幅応答が所定値以上になるように前記パラメータを制御する制御工程と、を有する。
【発明の効果】
【0019】
アーチファクトの発生を抑制することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】画像処理装置の機能的構成の一例を示す図である。
【図2】画像処理装置の構成の一例を模式的に示す図である。
【図3】画像処理装置の動作を説明するためのフローチャートである。
【図4】周波数特性の一例を示す図である。
【図5】帯域制限画像の特性の一例を示す図である。
【図6】強調度の制限方法の一例を説明するためのフローチャートである。
【図7】抑制された周波数特性の一例を示す図である。
【図8】強調度の制限方法の一例を説明するためのフローチャートである。
【図9】抑制された周波数特性の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図1は、本発明におけるX線画像処理装置(画像処理装置)の機能的構成の一例を示す。本X線画像処理装置は、例えば、帯域制限信号作成手段101、パラメータ出力手段102、ゲイン調整手段103および処理画像作成手段104を備えて構成される。
【0022】
帯域制限信号作成手段101は、X線センサにて取得されたX線画像に所定の前処理を施した画像(原画像)を入力とし、複数の帯域制限信号を作成し出力する。帯域信号は特定の周波数帯域の周波数成分を表す。すなわち、帯域制限信号作成手段101は、原画像から複数の帯域制限信号を生成する生成手段の一例に相当する。
【0023】
パラメータ出力手段102は、図示しない入力手段を介してユーザによって画像処理装置に入力される周波数強調をする強調係数(周波数応答特性)と強調度とを周波数強調処理に必要な強調パラメータとして出力する。
【0024】
ゲイン調整手段103は、帯域制限信号と周波数強調処理に必要な強調パラメータとを入力とし、強調パラメータを所定の周波数応答特性に収まるよう変換し、変換した強調パラメータにて帯域制限信号を調整する。
【0025】
処理画像作成手段104はゲイン調整手段103によって調整された帯域制限信号と、帯域制限信号作成手段101から出力された低周波画像信号とを入力とし、再構成を行い、再構成結果を出力する。すなわち、ゲイン調整手段103は、帯域制限信号を調整するパラメータに基づいて複数の帯域制限信号を処理することで処理画像を生成する処理手段の一例に相当する。また、ゲイン調整手段103は、原画像に対する処理画像の振幅応答が所定値以上になるようにパラメータを制御する制御手段の一例に相当する。
【0026】
図2は、画像処理装置の構成の一例を模式的に示す図である。図1の構成を、PC(Personal Computer)を使って実現する場合、例えば図2のようになる。コントロールPC201、X線センサ202、表示部209、X線発生装置210、記憶部211およびネットワークI/F212が光ファイバー222を介して相互に接続されている。信号線は光ファイバーでなくてもCAN(Controller Area Network)やギガビットイーサなどでもよい。コントロールPC201は例えば、CPU(Central Processing Unit)203、RAM(Random Access Memory)204、ROM(Read Only Memory)205、入力部206、表示部207、記憶部208およびバス221を備える。
【0027】
ここで、バス221に対して、CPU203、RAM204、ROM205、入力部206、表示部207、記憶部208が接続される構成である。このコントロールPC201を用いて、センサ202や表示部209などにコマンドが送られる。コントロールPC201では、撮影モードごとの処理内容がソフトウェアモジュールとして記憶部208に格納され、不図示の指示手段によりRAM204に読み込まれ、CPU203によって実行される。図1に示した構成で101〜104は、ソフトウェアモジュールとして記憶部208に格納されている。もちろん本発明は図1に示した101〜104を専用の画像処理ボードとして実装してもよい。目的に応じて最適な実装を行うようにすればよい。
【0028】
以下、X線画像処理装置の詳細に関して実施形態にそって説明する。
【0029】
[実施例1]
図3に示すフローチャートを用い、画像処理装置の動作(画像処理方法)について説明する。
【0030】
まず、X線センサ202にてX線画像を取得する(ステップ301)。取得されたX線画像に対し前処理を行う(ステップ302)。前処理は、例えばオフセット補正、Log変換、ゲイン補正、欠陥補正などのセンサの特性を補正する処理と、グリッドモアレを抑制するグリッド縞抑制処理を行う。必要であれば、ランダムノイズを低減する処理などのS/Nを向上させる処理を行ってもよい。
【0031】
次に帯域制限信号作成手段101は、複数の周波数帯域制限信号を作成する(ステップ303:生成工程)。作成の方法としては、例えばラプラシアンピラミッド分解を用いた方法やウェーブレット変換を用いた方法等を利用する。ダウンサンプリングをすることで有効な得られる帯域制限信号数が制限される。
【0032】
次にパラメータ出力手段102が、強調係数と、強調度とを出力する(ステップ304)。強調係数と強調度とは例えば図示しないキーボードやマウス等の指示手段を介してユーザが指定する。強調係数と強調度とはユーザによって入力されたパラメータの一例に相当する。なお、ユーザが直接αの値を指定してもよいし、別手段として周波数応答特性作成ツールを用意し、αを意識せずに特性を作成したものを、αへと自動変換する方法で強調係数を指定してもよい。強調度は式1で示すβの値である。この値もα同様、直接指定してもよいし、別ツールにて設定した値を自動変換することで設定してもよい。
【0033】
ゲイン調整手段103は、パラメータ出力手段104から出力された強調係数αと強調度βとの値を用いて帯域制限信号を調整する(ステップ305:処理工程)。なお、この時ゲイン調整手段103は、指定された強調係数αおよび強調度βの値によって位相反転アーチファクトが発生しないかを確認する。例えば、ゲイン調整手段103はパラメータ出力手段104から出力された強調係数αと強調度βとを用いて帯域制限信号を調整した結果、帯域制限信号が0未満になると位相反転アーチファクトが発生しているものと判断する。また、ゲイン調整手段103は振幅応答を求め、求められた振幅応答が0未満の場合には位相反転アーチファクトが発生しているものと判断する。
【0034】
ゲイン調整手段103は、位相反転アーチファクトが発生する場合は例えば強調度βを制限する。強調度βの制限方法(制御工程)についての詳細は後述する。
【0035】
本実施例では一例として強調係数αは別ツールにて作成され、図4のように強調と抑制の効果が混ざり合っている周波数応答特性をもつものとする(振幅応答が1より大きい場合に強調、1より小さい場合に抑制となる)。位相反転アーチファクトは、図4の振幅の周波数応答特性を強調度βによって調整をする際に、応答が0未満になる場合に発生する。
【0036】
したがって全ての周波数において、振幅応答が0未満になる周波数がないように強調度βの最大値を計算し、強調度を制限する必要がある。原画像に対する処理画像(原画像に対して処理が行われた画像)の振幅応答は、式3,4から理解されるように、各帯域制限画像の振幅応答に強調係数αと強調度βを乗算したものを全て加算することで得られる。
【0037】
これらから、帯域制限信号が0未満にならないよう各帯域におけるβ×(α―1)の値を−1以上に制限することも可能であるが、1の帯域制限信号のみを考慮しており、他の帯域制限信号を考慮していないため強調度の制限が過度にかかる可能性がある。
【0038】
ここで、図5は帯域制限信号作成手段101によって出力される複数の帯域制限信号の一例を示す図である。帯域制限画像を作成する帯域制限フィルタは理想的なフィルタではないため、図5に示すように、ある帯域制限画像の帯域が、その他の帯域制限画像の帯域(特に隣接する帯域)と重複する。
【0039】
したがって、各帯域におけるβ×(α―1)が−1以下であっても、隣接する帯域におけるβ×(α―1)の値が大きな値であれば、処理画像の振幅応答としては0以下にはならないことが発生する。全ての帯域制限画像の影響を考慮してやることで、強調度の過度の制限を避けることができる。すなわち、本件における振幅応答は所定の周波数における各帯域制限信号の振幅応答を加算したものである。
【0040】
図6は、位相反転アーチファクトを起こらないように強調度を制限する方法を説明するための図である。
【0041】
まずゲイン調整手段103は帯域制限された各帯域での振幅応答特性を計算する(ステップ601,603)。サンプリングする数に応じた分だけ振幅応答特性を計算してもよいが、計算量は多くなる。よって計算する周波数の数をサンプリングした数よりも少なくし、特定の周波数(例えばピーク周波数)のみで振幅応答を計算することで高速化を図る(ステップ602,603)。ここで、ピーク周波数とは複数の帯域制限信号のそれぞれにおいて振幅応答が最大となるピ周波数である。
【0042】
計算量を少なくする方法として各帯域制限画像のピーク周波数を利用する。ピーク周波数とピーク周波数以外の周波数との関係を以下に示す。
【0043】
関係を簡単化するため、振幅応答R1Cの帯域制限画像と振幅応答R2Cの2つの帯域制限画像(例えば、ピーク周波数が異なるのみで同一の形状を有する2つの信号)だけがあるとする。なお、一例としてR1CとR2Cとは等しくそれぞれの帯域制限信号はそれぞれのピーク周波数において重なりを持っているものとする。各信号に対する上記式4におけるβ×(α―1)をk1,k2とすると、各ピーク周波数f1,f2(例えば、f1<f2)と、ピーク周波数以外の周波数fc(例えば、f1<fc<f2)でのトータルの振幅応答Rは、式5のようになる。
【0044】
【数5】

【0045】
ここで、k1≧0かつk2≧0の場合、すなわち共に強調される場合、3つの応答全てが0以上になる。次にk1≧0, k2<0の場合、ピーク周波数での振幅応答R(f2)が隣接する帯域制限信号の影響でR(f2)≧0であるとすると、式6が成り立つ。
【0046】
【数6】

【0047】
なお、k2≧0, k1<0の場合も同様である。次にk1<0, k2<0の場合、他の帯域制限信号の影響により、ピーク周波数での振幅応答R(f1)がR(f1)≧0、R(f2)がR(f2)≧0であるとすると、式7が成り立つ。
【0048】
【数7】

【0049】
すなわち、一定の場合において(各帯域制限信号の重なり具合によっては)、ピーク周波数での振幅応答が0未満にならないようにすることで全ての周波数において振幅応答が0未満にならないことが言える。
【0050】
サンプリング数は一般的に256〜1024である。一方、ピーク周波数をあらかじめ算出しておけば、振幅応答を算出するのは帯域数分だけでよい。一般的な医療画像サイズから求めると多くて12個ほどと考えられる。すなわち10倍以上の高速化が見込める。
【0051】
ある帯域に関して各帯域のピーク周波数における振幅応答を算出する処理を、各帯域で行うことによって、ゲイン調整手段103は各帯域のピーク周波数fiにおける各帯域の振幅応答RLv(fi)を算出する(ステップ601〜603)。
【0052】
次に強調度を制限する。ゲイン調整手段103は各帯域のピーク周波数における処理画像の振幅応答において、閾値以下にならない最大強調度βmaxを算出する(ステップ604〜607)。以下に述べるステップ605〜607の処理をピーク周波数の数分繰り返す(ステップ604)。ゲイン調整手段103は、ステップ603で得られたある帯域制限信号のピーク周波数における振幅応答に対して強調係数を乗算する(ステップ605)。より具体的には、ゲイン調整手段103はあるピーク周波数における各帯域の振幅応答それぞれに対して、対応する係数(α−1)を乗算する。次に、ゲイン調整手段103は、これらの乗算結果を用いて、あるピーク周波数における原画像に対する処理画像の振幅応答特性を得る(ステップ606)。より具体的には、ゲイン調整手段103は、ステップ605の乗算結果に対して強調度βを乗算した結果とステップ603で得られた振幅応答との和を求めることでトータルの応答を求める。すなわち、ゲイン調整手段103は後述する式8におけるthを得る。
【0053】
次に、ゲイン調整手段103はあるピーク周波数における処理画像の振幅応答が閾値以上になるような最大強調度を計算する(ステップ607)。閾値とは位相反転アーチファクトが起こらないための閾値であり、すなわち振幅応答=0である。ピーク周波数の演算誤差、もしくは、振幅応答の演算誤差によるマージンを含め、閾値を0よりも大きな値にしてもよい。最大強調度は以下に示す式8のように得られる。ピーク周波数分ステップ605〜607が繰り返されることによりβmaxが更新されることとなる。
【0054】
【数8】

【0055】
式8に示すように、ゲイン調整手段103は各帯域のピーク周波数での最大強調度の中で最も小さな値を最終的な最大強調度βmaxとして出力する。ゲイン調整手段103は最大強調度βmaxと、ユーザが指定した強調度βとを比較し(ステップ608)、ゲイン調整手段103は、β>βmaxであれば、β=βmaxと置換して位相反転アーチファクトが発生しないように強調度に制限を設ける(ステップ609)。すなわち、ゲイン調整手段103(制御手段)、振幅応答が所定値未満(例えば0未満)になる場合に、ラメータを変更する。
【0056】
図7に強調度が制限された場合の振幅応答特性と強調度が制限されていない場合の振幅応答特性とを示す。帯域が全体的に制限され、所望の周波数バランスを保持しながら表現されていることがわかる。β=βmaxと置換することで、ユーザが指定した振幅応答特性自体は崩すことなく、振幅が制限されることになる。
【0057】
すなわち、ゲイン調整手段103(制御手段)は、複数の帯域制限信号のそれぞれにおいて振幅応答が所定値以上となるようにパラメータ(例えば、強調度β)を制御する。より具体的には、ゲイン調整手段103(制御手段)は、複数の帯域制限信号のそれぞれにおける特定の周波数(例えば、ピーク周波数)において振幅応答が所定値(例えば0)以上となるようにパラメータを制御する。
【0058】
最後に処理画像作成手段104は帯域制限画像を調整した結果を用いて、式2で表わしたように画像再構成を行う(ステップ306)。そして処理画像作成手段104は、階調変換や幾何変換等の後処理を行った後に再構成結果を周波数強調された画像として出力する(ステップ307,308)。出力された処理画像は例えば表示部207,209の少なくとも一方に表示される。
【0059】
また、本実施例においてGUI上で強調度を変更することができることとしても良い。この場合、ある強調度からはGUIを用いて強調度変更をしても画質が変わらなくなる。したがって、強調度に制限がかかって変わらなくなっているという情報をユーザに対して表示してもよい。なお、この場合GUIが表示されている表示部に強調度に制限がかかって変わらなくなっているという情報をCPU203が表示させる。もしくは、選択しても画質が変わらない強調度のインデックスは選択させないようにするようにしてもよい。また、選択可能な強調度のインデックスのみを表示するようにしてもよい。強調度に制限がかかっている場合には選択できる強調度が強調度に制限がかかっていない場合に比べて少なくなるため、インデックスを細かく表示するようにしてもよい。
【0060】
このように本実施例によれば、アーチファクトの発生を抑制することが可能となる。
【0061】
また、本実施例によれば、1の帯域制限信号のみを考慮して強調度を制限するのではなく、複数の帯域制限信号を考慮した振幅応答を用いて強調度を制限しているため、必要以上に強調度を制限してしまうことを避けることができる。加えて、複数の帯域制限信号を考慮して強調度を制限しているため、より確実にアーチファクトの発生を抑制することができる。
【0062】
さらに本実施例によれば、出力画像における周波数バランスを崩すことなく強調度を制限することができ、強調度を制限することによる画像を壊すリスクはない。
【0063】
そして、本実施例によれば計算対象とする周波数をピーク周波数に限定することで高速に処理が可能となる。従って、透視撮影等の低線量下の撮影においても処理時間の高速化が可能となる。
【0064】
なお、本実施例ではピーク周波数に限定したが、演算誤差等を考慮して、ピーク周波数近傍の周波数も利用してもよい。CPU203の計算量が多くなるため処理速度は下がるが、その分アーチファクトの発生するリスクは軽減する。
【0065】
[実施例2]
実施例1において、高速化を図るためサンプリング数の分だけ特性を計算するのではなく、各帯域のピーク周波数の数だけ振幅応答特性を計算することを行った。実施例2ではさらに高速化を図る。
【0066】
例えば、ユーザが入力した強調係数αから、計算に使用する周波数の数を決定する。実施例1でも述べたように、周波数の強調を行うとき位相反転アーチファクトは生じない。したがって、強調係数αが1以上である帯域制限画像のピーク周波数においては計算対象から外し、計算量を削減する。例えば図4の振幅応答特性では、図5の帯域制限画像に対して1未満の強調係数が乗算されているのは4つの帯域制限画像のみである。図4の帯域制限画像は全部で11個であるため、計算量は半分以下になる。なお、図4の振幅応答特性は各帯域制限信号に対する強調係数を合成したものに相当するため、図4における振幅特性が1未満の範囲に含まれる図5に示す帯域制限信号の数は4つではない。
【0067】
更に強調係数1未満である帯域に関しては、各ピーク周波数における最大強調度βiを計算する量を削減する。図5に帯域制限画像の振幅応答特性を示している。実施例1でも述べたように、ある帯域制限画像の帯域はその他の帯域制限画像の帯域(特に隣接する帯域)と重複する。精度よく計算するためには実施例1のように全ての帯域制限画像の振幅応答を加算することが必要であるが、計算速度を重視する場合には、ある閾値以下の帯域制限画像の応答を無視してもそれほど大きな誤差は生じない。
【0068】
例えば、この閾値を第1の帯域制限画像のピーク周波数における振幅応答に対する第1の帯域制限画像のピーク周波数における他の帯域制限画像の振幅応答の割合で決定する。例えば、閾値を20%と決定すると、第1の帯域制限画像のピーク周波数における振幅応答に対して第1の帯域制限画像のピーク周波数における振幅応答が20%以下の帯域制限画像の振幅応答は考慮しないこととなる。例えば、この閾値はある帯域制限画像に隣接する2の帯域制限画像のみを考慮するような値とする。この閾値の値は、帯域制限信号の重なり具合に応じて決定されるものであって、例えば帯域制限信号作成手段101の性能に応じて決定される。なお、閾値の値および決定方法はこれに限定されるものではない。ここで、図5においては、閾値を20%とすると隣接する帯域制限画像の影響のみを考慮すればよいことになる。
【0069】
【数9】

【0070】
従って、閾値を設けない場合1つの帯域制限画像に対して、11回の計算をしていたのが、式9に示すように3回の計算に削減されるため、計算量としては1/3になる。これらを組み合わせることで、さらなる高速の処理が可能となる。
【0071】
このように、本実施例によれば実施例1と同様の効果が得られる他、実施例1に比べてより高速に最大強調度を求めることができる。
【0072】
[実施例3]
実施例1において、位相反転アーチファクトを起こらないように強調度を制限する方法として、全ての帯域制限画像に対する強調度を一律で制限を行った。本実施例では帯域制限画像毎に制限を行う。個々に制限を行うことで、強調度を変更することによって作られる画像が増え、ユーザの選択の幅を広げることができる。
【0073】
位相反転アーチファクトを起こらないように強調度を制限する方法を図8に示す。ステップ701〜ステップ706までは図6におけるステップ601〜606と同様であるため詳細な説明は省略する。
【0074】
ステップ707にて、各帯域のピーク周波数におけるトータルの周波数応答において、閾値以下にならない最大強調度βmaxを算出する。
【0075】
【数10】

【0076】
式10に示すように、ゲイン調整手段103は帯域毎(ピーク周波数毎)に最大強調度βmaxiを得る。そして、ゲイン調整手段103は、この計算結果とユーザ指定のβiの値とを比較し、βi>βmaxiであれば、βi=βmaxiと置換し、位相反転アーチファクトが発生しないように、強調度に制限を設ける(ステップ708、709)。
【0077】
式4およびユーザが指定する強調度βは全ての帯域制限画像に対して一律の値としているが、本実施例では、強調度の制限の結果、帯域毎に別々の強調度が振幅応答に乗算されることになる。
【0078】
図9に制限された振幅応答特性と制限されていない振幅応答特性とを示す。一部の周波数帯域のみが制限され、他の帯域では所望の強調度で表現されていることがわかる。
【0079】
また、本実施例においてGUI上で強調度を変更することができることとしてもよい。この場合ある強調度の範囲ではGUIで強調度を変更すると、画質の周波数バランスが変化する。一方、最大強調度以上の範囲ではGUIで強調度を変更しても画質の周波数バランスが変化しない。そこで、制限がかかっている強調度以上を示すGUIの領域の色やデザインを変えることで、制限がかかっていることを知らせてもよい。
【0080】
また、実施例1と同様のGUIを用いることとしてもよい。
【0081】
このように、本実施例によれば実施例1と同様の効果が得られる他、帯域制限画像毎に最大強調度求めているため、強調度を変更することによって作られる画像が増え、ユーザの選択の幅を広げることができる
[実施例4]
実施例1〜3においては、パラメータ出力手段102が出力する強調度βを制御をしていたが、本実施例では周波数応答特性αを制御する。式11に示すように周波数応答特性αに対し、cという係数を乗算することで制御をおこなう。
【0082】
【数11】

【0083】
この場合、ゲイン調整手段103は、パラメータ出力手段102から出力された強度係数αおよび強調度βの値を用いた場合に、位相反転アーチファクトが発生しないかを確認する。発生する場合は周波数バランスを制限する。位相反転アーチファクトは、図7の細線で示される応答のように、振幅応答が0未満になる場合に発生する。したがって全ての周波数において、図7の太線で示される応答のように、振幅応答特性が0未満になる周波数がない周波数バランスに制限する必要がある。
【0084】
ゲイン調整手段103は、原画像に対する処理画像の振幅応答において、各帯域のピーク周波数で0未満にならないように乗ずる係数cmaxを算出する。ピーク周波数の演算誤差、もしくは、振幅応答の演算誤差によるマージンを含め、0よりも大きな値にしてもよい。
【0085】
【数12】

【0086】
式12に示すように、ゲイン調整手段103は、各帯域のピーク周波数での係数の中で最も小さな値cmaxを式12のcとして算出する。すなわち、この係数が乗算されていれば、原画像に対する処理画像の振幅応答は0以上に保たれることになるため、入力された周強調係数αにcを乗算された値を、制限された周波数応答特性とする。所望の応答特性より強調の効果は弱いが、周波数の強調バランスは保たれているため、画像を壊すリスクは低い。なお、上述の実施例3のようにcを帯域毎に求めることとしてもよい。
【0087】
このように、本実施例によっても実施例1と略同様の効果が得られる。
【0088】
(その他)
また、本件は、以下の処理を実行することによっても実現される。即ち、上述した実施形態の機能を実現するソフトウェア(プログラム)を、ネットワーク又は各種記憶媒体を介してシステム或いは装置に供給し、そのシステム或いは装置のコンピュータ(またはCPUやMPU等)がプログラムを読み出して実行する処理である。
【0089】
なお、開示の技術は上述した実施形態に限定されるものではなく、本実施形態の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。
【符号の説明】
【0090】
101 帯域制限信号作成手段
102 パラメータ出力手段
103 ゲイン調整手段
104 処理画像作成手段
201 コントロールPC
202 X線センサ
203 CPU
204 RAM
205 ROM
206 入力部
207 表示部
208 記憶部
209 表示部
210 X線発生装置
211 記憶部
212 ネットワークI/F
221 バス
222 光ファイバー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
原画像から複数の帯域制限信号を生成する生成手段と、
前記帯域制限信号を調整するパラメータに基づいて前記複数の帯域制限信号を処理することで処理画像を生成する処理手段と、
前記原画像に対する前記処理画像の振幅応答が所定値以上になるように前記パラメータを制御する制御手段と、
を備えたことを特徴とする画像処理装置。
【請求項2】
前記制御手段は前記複数の帯域制限信号のそれぞれにおいて前記振幅応答が前記所定値以上となるように前記パラメータを制御することを特徴とする請求項1記載の画像処理装置。
【請求項3】
前記制御手段は前記複数の帯域制限信号のそれぞれにおける特定の周波数において前記振幅応答が前記所定値以上となるように前記パラメータを制御することを特徴とする請求項2記載の画像処理装置。
【請求項4】
前記特定の周波数とは、前記複数の帯域制限信号のそれぞれにおいて前記振幅応答が最大となるピーク周波数であることを特徴とする請求項3記載の画像処理装置。
【請求項5】
前記制御手段は、前記振幅応答が前記所定値未満になる場合に、前記パラメータを変更することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の画像処理装置。
【請求項6】
前記制御手段は前記振幅応答が0以上となるように前記パラメータを制御することを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の画像処理装置。
【請求項7】
前記振幅応答は所定の周波数における各帯域制限信号の振幅応答を加算したものであることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の画像処理装置。
【請求項8】
前記パラメータはユーザによって入力されたものであることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の画像処理装置。
【請求項9】
前記原画像はX線画像であることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の画像処理装置。
【請求項10】
原画像から複数の帯域制限信号を生成する生成工程と、
前記帯域制限信号を調整するパラメータに基づいて前記複数の帯域制限信号を処理することで処理画像を生成する処理工程と、
前記原画像に対する前記処理画像の振幅応答が所定値以上になるように前記パラメータを制御する制御工程と、
を有することを特徴とする画像処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−74306(P2013−74306A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−209462(P2011−209462)
【出願日】平成23年9月26日(2011.9.26)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】