説明

画像処理装置および画像形成システムおよび画像形成方法

【課題】画質や補正結果は保証し、かつ転送量をできるだけ小さくしたい。
【解決手段】
前段の画像処理装置205は、幾何学変換が指示された時に、その幾何学変換によって後段の補正処理結果が変わるか否か判定し、変わる場合、補正結果が変わらない範囲の幾何学変換に変更する。そしてその幾何学変換を対象画像に施して後段の画像処理装置206に送信する。それとともに補正処理の指示を示す指示情報および幾何学変換処理を指示された程度まで行うための幾何学変換処理の指示情報とを後段の画像処理装置206に送信する。後段の画像処理装置206は適宜画像処理の指示を加えた後、画像形成装置207に送信する。画像形成装置207は指示された補正処理および幾何学変換処理を行って画像を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は画像処理ワークフロー制御のための画像処理装置および画像形成システムおよび画像形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
最近、フォトレタッチアプリケーションと分類される画像の修正、補正を行うアプリケーションが増えてきている。このフォトレタッチアプリケーションを使用して、撮影した画像データを補正、調整して印刷する、Webにアップロードして共有する、公開するといった画像データの使用が盛んになっている。
【0003】
フォトレタッチアプリケーションの提供する機能は、撮影した画像データの不具合、例えば画角の調整、明るさ、色見の調整といった基本的な補正、調整機能がある。このような機能に加え、画像データを解析して自動的に補正を行うものまである。
【0004】
また最近では、写真やアルバムの印刷を店頭またはWeb上で注文するサービス(これをオンデマンド印刷サービスと呼ぶことにする)も増えてきている。例えば、写真の入ったメモリーカードを店頭にもっていき、店頭にある注文端末に差し込む。印刷形式を選び、印刷したい画像を選び注文する。注文はサーバーに集められ、注文内容や画像をオペレーターがチェックする。そして、注文内容にあった印刷をプリンタで実行し写真が出来上がる。
【0005】
フォトレタッチアプリケーションはこういったオンデマンド印刷サービスのワークフロー上で利用されてきている。一般的にフォトレタッチアプリケーションは、注文時にユーザーが写真を補正したり、印刷前にオペレーターが写真の仕上がりが良くなるように修正したりすることに利用されている。またアルバム印刷では、画像のトリミングや回転などの機能を持ったアプリケーションも利用されている。
【0006】
従来のオンデマンド印刷サービスのワークフローを図8で説明する。従来のワークフローは大きく分けて前段処理805、後段処理806、印刷装置807の3段階に分かれている。前段処理805は店頭端末やローカルPCなどの注文端末ある。前段処理805ではメモリーカードやハードディスクに保存してある画像801から印刷したい画像を選び、印刷サイズや印刷種類、補正処理などの指示802を入力して印刷を注文する。後段処理806は前段処理805からの注文を受信し、オペレーターが注文内容から画像の調整や印刷装置807への印刷指示を行う。その際、追加的な補正指示803を入力する場合もある。印刷装置807は後段処理806からの印刷指示に従って印刷処理804を実行する。
【0007】
このワークフローでは、前段処理805からの送信データ808と、後段処理806からの送信データ809のように、各段階の処理では、次段の処理にオリジナル画像データと属性情報とを送信する。印刷種類や補正指示など、送信元の段階の処理で入力されたユーザー指示802や指示803は属性情報に格納されて送信される。そして印刷装置807において、印刷直前に、属性情報に格納したユーザー指示に従ってオリジナル画像に補正処理を施す。こうすることによって補正処理の一貫性や補正画質を保つことができる。
【0008】
ワークフロー処理を進める技術のひとつとして、ジョブチケットを用いた方法が特許文献1に記載されている。特許文献1では、生成されたワークフローに対応するジョブチケットを生成し、ワークフロー生成装置から発行されたジョブチケットに従って必要な処理が行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2004−164570号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上記のオンデマンド印刷サービスにおける画像処理ワークフローは、枚葉の写真印刷だけでなく、アルバム印刷に適用されることもあり、また今後もアルバム印刷は機能を拡張しながら増えていくと予想される。このような状況では以下のような課題がある。
【0011】
アルバム印刷では、写真をレイアウトする機能が用意されている。写真をレイアウトするには、画像に対してトリミングや拡縮(変倍)、回転といった幾何学変換を施す必要もある。そうした場合、図8のワークフローでは、ある画像に対してそのまま或る補正処理を施した補正結果と、その画像に対して幾何学変換を行って同じ補正処理を施した補正結果とが一致しないような補正処理があるという問題がある。例としては、オリジナル画像にそのまま施した自動写真補正と、トリミング後の画像に施した自動写真補正の結果が一致しないことなどである。しかし一方で、幾何学変換を行ったとしても補正結果が変わらない補正処理もある。
【0012】
図8のワークフローと同じように幾何学変換の指示も属性情報として送信し、幾何学変換処理は、その他の補正処理の後で行われることを保証すれば補正後の画像画質を一定に保つことができる。しかし、幾何学変換が画像データ量を減らす変換、例えばトリミングや縮小である場合、無駄なデータを送信することになるし、その他の補正処理についても無駄に行われる場合があり、時間や資源を浪費することになる。特にアルバム印刷では大量の画像データを送信したりや画像の一部分だけを利用したりする可能性が大きいので、ワークフロー全体の最適化を考えるとデータの転送量が少なくなる幾何学変換は、データ送信や補正処理の前に行うべきである。
【0013】
また画像の検出結果や補正パラメータを後段処理に送り再利用することで、幾何学変換の有無によらず補正結果を一致させるという方法もある。例えば、顔検出を行ってその検出結果を用いて補正、たとえば赤目補正などを行うような場合である。この場合には、顔検出を前段処理時に行っておき、その検出結果とそれに応じた補正処理の指示パラメータを後段処理に送信することで、後段処理の負荷を減らしながら補正処理の結果を安定させることができる。
【0014】
しかし、たとえば前段処理で顔検出を行いその結果を後段処理に送ったとしても、トリミングで画像の顔領域が削られた時には顔検出結果があてはまる画像領域がないため、後段処理で顔検出結果が利用できない。ユーザーが顔を入れてトリミングしたとしても、顔検出が必要な顔領域とは違う可能性があり、この場合でも、トリミングで画像の顔領域が削られてしまい顔検出結果が利用できなくなってしまう。それに加え補正指示が多くなると、補正指示一つ一つにたいして補正パラメータを全て保持しておく必要があるため、転送量が増えてしまう可能性がある。
【0015】
本発明は上記従来例に鑑みてなされたもので、画像処理ワークフローにおいて補正後の画質を保証しつつ、かつ転送データ量や後段処理の負荷をできるだけ小さくして資源の浪費を抑えることが可能な画像処理装置および画像処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明の画像処理装置は、上記課題を解決するために、以下の構成を有する。すなわち、
対象画像データに対する処理の指示を受け付けて、後段の画像処理装置に対して画像データを処理の指示を含む指示情報とともに送信する画像処理装置であって、
指示された幾何学変換処理を前記対象画像データに施し、指示された補正処理を前記幾何学変換処理後の画像データに対して施した第一の画像データと、前記指示された補正処理を前記対象画像データに対して施した第二の画像データとの差を評価して、所定値を越える差があるか判定する判定手段と、
前記判定手段により差があると判定された場合には、前記第一の画像データと前記第二の画像データと差が、所定値以下となるように、前記幾何学変換処理のパラメータを再設定する再設定手段と、
前記再設定手段により再設定されたパラメータで前記対象画像データに対して前記幾何学変換処理を施し、当該処理後の画像データを、前記指示された補正処理の指示情報と前記指示された幾何学変換処理の指示情報とともに前記後段の画像処理装置に送信する送信手段とを備える。
【0017】
あるいは他の側面によれば、画像処理装置から画像データを当該画像データに対する処理の指示とともに受信する画像形成装置であって、
指示された補正処理を前記画像データに施し、当該処理後の画像データに対して指示された幾何学変換処理を施す処理手段と、
前記処理手段により処理された画像データを画像として形成する画像形成手段とを備え、
前記指示された補正処理に複数の種類の補正処理が含まれている場合、前記処理手段は、予め定められた順序で補正処理を実行する。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、補正処理後の画質を保証しながら、転送される画像データの量、および後段処理の負荷を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明を実行可能なハードウェア構成の図
【図2】第1実施形態におけるワークフロー図
【図3】第1実施形態における全体処理のフローチャート
【図4】属性情報例を示す図
【図5】第1実施形態における送信処理のフローチャート
【図6】第1実施形態における幾何学変換生成処理の一例を示す図
【図7】第2実施形態における属性情報変更を説明する図
【図8】従来の画像処理ワークフロー図
【図9A】効果を説明する図
【図9B】効果を説明する図
【図10】第1実施形態の効果を説明する図
【図11】第1実施形態におけるアルバム作成のワークフロー図
【図12】第1実施形態におけるアルバム作成UIを説明する図
【発明を実施するための形態】
【0020】
[実施形態1]
本発明における好適な第1実施形態について説明する。これはあくまで実施の1つの形態を例として示したものであり、本発明は以下の実施に限定されるものではない。
【0021】
(ハードウェア構成の説明)
図1は、第1実施形態に係わる情報処理装置すなわちコンピュータ(PCとも呼ぶ)のハードウェア構成例を説明するブロック図である。図1において、100はCPU(中央演算装置)であり、本実施形態で説明する情報処理方法をプログラムに従って実行する。101はROMであり、CPU100により実行されるプログラムが記憶されている。102はRAMで、CPU100によるプログラムの実行時に、各種情報を一時的に記憶するためのメモリを提供している。103はハードディスクであり、画像ファイルやパターン識別用のパラメータなどを保存するための記憶媒体である。104はディスプレイであり、本実施形態の処理結果をユーザーに提示する装置である。110は制御バス/データバスであり、上述の各部とCPU100とを接続する。このほかにオペレータが画像補正や幾何学変換の処理の指示等を入力するためのユーザインタフェース(UI)や、画像データを読み込むための画像スキャナ、あるいはネットワーク(通信)インタフェースを備えている。
【0022】
そして前段処理および後段処理のためにそれぞれこの情報処理装置を備え、それらに加えてさらに画像形成装置をネットワークで接続して、画像形成システムを構成する。前段処理の情報処理装置は、画像のプリントの発注者が、処理対象となる画像データの入力や、所望の画像処理や幾何学変換処理の指示情報、およびアルバムを作成するのであれば、アルバム用の編集情報を入力するための画像処理装置である。指定された画像データや入力された編集指示情報等は、プリントの受注者による後段処理の情報処理装置に送信され、そこでさらに印刷品質を高めるための画像処理などの指示情報が入力される。ただし本実施形態では、幾何学変換は前段処理で実行される。後段処理の情報処理装置も画像処理装置と呼ばれることがある。そして後段処理における補正処理の指示もさらに付加された情報がMFP等の画像形成装置(プリンタ)に送信される。画像形成装置は受信した画像データおよび補正指示情報等に基づいて補正や編集を実行し、その結果を印刷する。画像形成装置のハードウエアは、図1の構成に電子写真やインクジェット等の印刷ユニットを付加したものである。ただし、ソフトウェア(あるいはファームウエア)としては、画像処理や印刷ユニットの制御を実現するためのプログラムが必要である。
【0023】
本実施形態で想定する画像処理装置では、画像処理結果がUI操作の順番に依存しない画像処理装置を想定している。つまり、たとえば、自動写真補正を指示した後にRGB調整を指示した結果と、RGB調整を指示した後に自動写真補正を指示した場合とで、補正結果が同じになる。そのため、たとえば自動補正は必ず最初に行い、その他の補正は自動補正後の画像に対して施す、自動補正の2重実行は許容しない、などの制限が設けられており、それらの制限は、指示の入力の都度処理を実行せず、実行すべき指示の入力が完了してから初めて実行を開始することで実現されている。このように複数の種類の補正の指示がある場合、その実行の順序は予め定められており、その順序で補正処理は実行される。
【0024】
<ワークフローの例>
図2に本実施形態のワークフローを示している。図2を用いてワークフローの流れを説明する。図2のワークフローは説明を簡単にするため簡潔なワークフローの構成になっている。205は前段処理で、店頭端末やユーザーPCを想定している。206は後段処理で、印刷処理の受注者のオペレーター用PCを想定している。207は後段処理で、プリンタ本体を想定している。
【0025】
まず入力画像データ(対象画像データ)201が前段処理205に入力される。入力画像データ201はPC内のHDDから入力されても良いし、Web上にあるストレージから入力されても良いし、店頭端末に接続された記憶装置から入力されても良い。
【0026】
前段処理205ではユーザー指示202を受け付ける。ユーザー指示202とは画像補正やレイアウト編集などである。受け付けたユーザ指示は、指示された処理を一意的に再現可能なユーザ指示情報として保存される。ユーザー指示202が終わると、後段処理206へデータを送信する。ユーザ指示の終わりや送信もまたユーザの指示がきっかけとなる。送信するデータ208には、たとえば回転やトリミング、変倍等の幾何学変換が施された画像と、その他の編集の指示情報や補正の指示情報を含む属性情報とが含まれている。後段処理206にデータが渡ると、オペレーターから補正指示の変更や追加が行われ、送信データ209として印刷装置207へ送信される。印刷装置207では、送信データ209に格納されている幾何学変換後画像を対象として、属性情報に含まれた補正処理を実行し、補正結果を印刷ユニットへ送る。
【0027】
ここでいう幾何学変換とは、一般的には現在位置の座標を基準に別の位置の座標に変換するという意味である。例えば、拡縮、回転、ミラー反転などである。しかしここでは、画像の任意の所を切り抜くトリミングも含めて幾何学変換とする。
【0028】
属性情報は、図4の属性情報401のように、ユーザーからの補正処理指示や幾何学変換指示、検出結果などを示す情報を格納している。属性情報401は一例であり他の情報、例えばレイアウト情報や画像固有の情報などを格納していても良い。
【0029】
このワークフローでは前段処理205や後段処理206、印刷装置207はひとつずつしかないが、これは一例であり、前段処理や後段処理は複数あっても良い。
【0030】
<画像処理手順>
次に画像処理装置の処理フローを図3を用いて説明する。この処理は前段と後段とで共通である。
【0031】
まず受信ステップS302でデータを受信する。前段処理であれば受信データは画像データであり、受信とは限らず入力デバイスやメモリデバイスから読み取られる場合もある。ここではそれらの場合も含めて受信と呼ぶ。受信した画像データは格納部D309に格納する。ユーザーからの補正指示や検出指示、幾何学変換指示等の入力がある場合は、入力ステップS303でUIなどから補正等の種類およびそのパラメータ等の入力を受け付け、ユーザー指示情報としてD309に格納する。補正や検出、変換の種類は、例えば予め定義した自動写真補正のほか、赤目補正やコントラスト、色温度、アンチエイリアスやエッジ強調等の個別の補正や、トリミングや回転、変倍、等の幾何学変換、顔領域の検出等を含む。パラメータは指定された補正や変換毎のパラメータであり、たとえばトリミングであればその範囲、回転であれば中心と回転角、変倍であれば倍率などである。他の補正についても補正の程度を示すパラメータが指定される。
【0032】
その格納したユーザ指示情報を使い、プレビューのための補正処理S304、幾何学変換S305を行う。ステップS304,S305では、補正あるいは幾何学変換された画像データはプレビューされるが、格納部D309には格納されない。そのあとS306でUI入力が終了したかどうかを判断する。入力の終了はユーザの入力に応じて判定される。たとえばユーザがプレビューを見ながら補正やそのパラメータを変更し、確定するための入力があれば、その入力をもってS306でUI入力が終了したと判定する。また補正や幾何学変換は、後段処理での実行順序と同じ順序で実行されれば、実際の出力物に忠実なプレビューを表示できる。
【0033】
ユーザーからの入力が終了し、送信の指示が入力されたら送信ステップS307でD309のデータを送信し終了する。一方ユーザーからの入力が終了していなかったらUI入力S303に移り繰り返す。
【0034】
なお、補正や変換の結果の処理順序に対する依存性を取り除くために、プレビューのための補正や幾何学変換処理も、補正指示等の入力が完了してから一括して所定の順序で実行してもよい。
【0035】
ステップS304,S305はUIにプレビュー表示するためのステップである。このフローは一例であり、プレビュー表示を行わない場合には、補正処理S304と幾何学変換処理S305は実行する必要はない。この場合にはこれらの指示は指示情報として格納部S309に保存され、次段に送信されれば十分である。なお印刷を実行せずプレビューのみを行う場合には実行される。
【0036】
次に図3の処理フローの送信ステップS307を図5を用いて詳しく説明する。まずS502で格納部D309に格納されているユーザー指示の幾何学変換によって、その他に補正処理が指示されている場合にはその補正処理の補正結果が変わるかどうかを判断する。もしユーザー指示の幾何学変換によって補正結果が変わる場合、幾何学変換生成S503で新たに幾何学変換を自動生成し、自動生成した幾何学変換としてD309に格納する。幾何学変換S504で自動生成した幾何学変換を行い、S505でD309を送信データとして送信する。もし幾何学変換によって補正結果が変わらない場合、ユーザー指示の幾何学変換を幾何学変換S504で行い、送信S505でD309を送信データとして送信する。
【0037】
幾何学変換S504では、幾何学変換した画像のデータ量がオリジナル画像より小さくなる場合にのみ幾何学変換を行う。例えば、幾何学変換が拡大処理であった場合やオリジナル画像より大きな範囲のトリミング処理などである。幾何学変換を行った後の画像データをD309に格納して後段処理に送信する場合には、当該幾何学変換の指示およびパラメータは、格納部D309から削除し、送信対象から除外される。
【0038】
S502での幾何学変換によって補正結果が変化するかどうかの判断方法は、例えば、補正処理を幾何学変換前の画像データと後の画像データとについてそれぞれ行い、結果を比べても良い。なお前者を第二の画像データ、後者を第一の画像データと呼ぶこともある。あるいは、補正処理の種類や補正指示内容(補正のパラメータなど)、特定のオブジェクトの検出の結果(たとえば顔検出等)などから推定しても良い。推定は、たとえば補正や検出処理の種類と幾何学変換の種類とを関連付けて予め結果が変化し得る組み合わせを特定した表等を作成しておき、それに基づいて行うことができる。具体的には、画像全体の情報を使う補正たとえば輝度ヒストグラムを用いる補正や、画像のある一部分の領域を使う補正たとえば顔検出やその結果を用いる補正などは、トリミングの有無により結果が変わる可能性がある。そこでこれらの補正とトリミングとの組み合わせは、補正結果が変わる可能性があるものとして予め登録しておき、指示された補正がこれらの補正であり、トリミングが同時に指示されている場合には、補正結果が変化すると判断される。もちろんこれは一例であって、その他の組み合わせもあり得る。また表として持たなくとも、補正結果が変化するかどうかが判断できればよい。
【0039】
またここでの、幾何学変換の有無によって画像が変化しているかどうかの判定は、補正処理後の画像データのバイナリが一致すれば変化無しと判定してもよい。あるいは、幾何学変換を行ってから補正処理を施した画像と、幾何学変換無しで補正処理を施した画像とのPSNR(Peak Signal−to−Noise Ratio)を評価し、その値が所定値(たとえば50db)を越えるなどの実使用上問題ない範囲でもよい。なお、幾何学変換後の画像データに対して補正処理を施した補正結果と、オリジナル画像に対して補正処理を施した補正結果とを比較する場合、一方に幾何学変換が行われているために単純な比較は困難である。そこで、たとえば、オリジナル画像に対して補正処理を施した補正画像データに対して、比較対象である他方の画像データに施されている幾何学変換を施す。これによって対比する画像データ間では、画素と画素とが対応付けられるので、これを比較する。もちろんこれは一例であって、他の方法を採用することもできる。
【0040】
なおステップS502における比較判断に先行して、指示された幾何学変換処理が前記対象画像データのサイズを小さくする処理であるか否かを判定し、該当する場合に限ってS502以下を行っても良い。該当しない場合には、オリジナル画像データと属性情報とをそのまま送信する。
【0041】
<幾何学変換生成処理>
次に図5の幾何学変換生成処理S503の生成方法を詳しく説明する。補正処理には、(1)画像全体の情報を使う補正、(2)画像のある一部分の領域を使う補正、(3)画像の情報を使わない補正がある。(1)の例としては、画像のヒストグラムを利用する自動写真補正や画像全体の明るさを利用する明るさ補正などがある。(2)の例としては、顔検出結果をつかう自動美肌補正や、ユーザーが指定した領域を使うほくろ除去などがある。(3)の例としては、RGB調整やコントラスト調整などがある。このような補正処理の種類によって自動生成する幾何学変換も変わる。
【0042】
一例を図6を用いて説明する。オリジナル画像601に自動明るさ補正が実行され、そのあとにユーザーから縮小指示がされたとする。自動明るさ補正は画像全体の明るさの情報を使って補正を行うとする。ユーザーからの縮小指示に従ってオリジナル画像に縮小処理が施されると縮小画像603のような画像になる。このとき指示に応じて縮小したことによって画像全体の明るさが変化したとする。たとえば縮小を画素の間引きにより実現しており、間引かれる画素の平均輝度が縮小前の画像全体の平均輝度と相違しているなら輝度の変化は生じ得る。この場合に、後段で行う補正処理が画像全体の輝度に応じて結果が変わる処理であるとすれば、幾何学変換生成ステップS503では、画像全体の明るさが変化しない縮小処理パラメータを幾何学変換指示として生成する。こうすることで、後段の補正処理の結果が、縮小処理されたことで、オリジナル画像に対する補正処理と異なる結果となることを防止できる。たとえば、縮小による平均輝度の変化の許容値を予め定めて記憶しておく。そしてオリジナル画像の平均輝度と、縮小画像の平均輝度とを比較して、その差が所定値以下であれば変化はないものとして縮小画像を送信画像とする。しかし、輝度の差が所定値を越えている場合には、縮小率を下げ(すなわち縮小画像が大きくなる方向に縮小率を変更)、あらためて縮小処理を行ってオリジナル画像の輝度との差が所定値以内か否かを判定する。否であれば同様の動作を繰り返して、オリジナル画像の輝度との差が所定値以内であり、かつ指定された縮小率に最も近い縮小率を決定する。そして決定した縮小率で縮小した画像データを送信画像データ604とする。そうすることで送信画像データ604ができる。この場合には、後段処理において、指定縮小率まで更に縮小する必要があるので、更なる縮小処理の縮小率を計算し、縮小変換の指定を示す情報および画像データ604と共に後段処理の画像処理装置に送信する。もちろんこれは一例であって、他の補正処理と幾何学変換との組み合わせについても同様にパラメータの変更が行われる。
【0043】
なお、上記例では補正処理を試みずに、補正処理が参照する情報が変化しないように幾何学変換を行うことで、補正処理の結果が幾何学変換の有無によって変わらないようにしている。これに対してオリジナル画像データと幾何学変換後の画像データとに後段の画像処理を施し、その相違をPSNRなどで定量的に評価して、上記同様に、後段の補正処理の結果に影響を与えない幾何学変換のパラメータを探っても良い。
【0044】
しかしながらたとえば拡大処理では拡大によってデータ量が増大するので、オリジナル画像データと拡大処理の指示および拡大率を後段処理の画像処理装置に送信し、後段処理で幾何学変換を行う。このように、データが増大する幾何学変換処理は、後段処理で実行させる。
【0045】
また、前段処理においてオリジナル画像605に顔検出が行われて顔検出結果608があり、それに応じて後段処理で補正範囲607の自動美肌補正が実行されるとしよう。自動美肌補正とは、たとえば検出された顔領域内の色の変化やテクスチャを平滑にすることで、しみや汚れ等を除去したり、滑らかに見せかける機能である。すなわち美肌補正は顔領域という部分的な領域を対象として行われる補正である。美肌補正の指定と合わせてユーザーから領域606のトリミングが指示されているとする。このときユーザーからの指示通りにトリミングすると送信画像は画像609のような顔領域が一部欠損した画像になる。この画像データを後段処理に送って美肌補正を施すと、本来対象とすべき領域が欠落した状態で補正が実行され、トリミングされていないオリジナル画像に対して美肌補正した場合と異なる結果を生じる可能性がある。そこで幾何学変換生成S503は、自動美肌補正の補正範囲607が切り取られないようなトリミングのパラメータ(すなわち範囲)を幾何学変換指示として生成し、そのパラメータに従ってトリミングする。そしてその変換結果の画像データを格納部D309に格納する。そうすることで送信画像610ができる。それとともに、本来ユーザに指定されたトリミング範囲である領域606を示すパラメータもトリミングの指示と合わせて格納部S309に格納する。このパラメータも後段処理のために送信画像データ610とともに送信される。
【0046】
これは一例であり、重要なことは補正処理に必要な情報が幾何学変換前後で変化しないような幾何学変換を生成することである。
【0047】
またここでの、幾何学変換の有無によって画像が変化しているかどうかの基準は、上述したように画像データのバイナリ一致でもよいし、PSNRが50db以上などの実使用上問題ない範囲でもよい。
【0048】
以上で説明したように、本実施形態においては、補正処理の種類に応じてユーザーが指定した幾何学変換指示を変更することで、幾何学変換によって補正結果が変化することを防ぎ、かつ転送される画像データ量を抑えている。
【0049】
図10はそのような処理が行われるワークフローの一例を示している。まずオリジナル画像データ1006が前段処理の画像処理装置(単に前段処理と呼ぶ)1001に入力される。オリジナル画像データ1006に対してオペレータはトリミングおよび自動写真補正を指定する。ここで自動写真補正には顔検出および美肌補正を含む。そこで前段処理では、図3の手順で入力された補正指示(顔検出および美肌補正)および幾何学変換指示(トリミング)およびそれぞれの処理パラメータに従って、指定されたトリミングを行うか否かによって美肌補正の結果が変わるか判定する。
【0050】
もし、変わる、と判定されたなら、図5のS503で幾何学変換のパラメータすなわちトリミングの範囲が、変わらない、と判定されるように変更される。本例では、美肌補正の対象範囲が検出された顔領域であるとすれば、まず顔検出を行って対象となる顔領域を特定し、特定した顔領域がトリミング範囲に含まれているか否かが判定される。トリミングによって一部分が失われる顔領域があれば、トリミング範囲は再生成される。トリミングによって失われる顔領域があるとしても、ひとまとまりの顔領域を単位として失われるのであれば、補正の対象自体がなくなることからトリミング範囲は指定されたままでよい。そのため、トリミングによって一部分が失われる顔領域があれば、その一部分が失われる顔領域の全体を送信画像に含むようにトリミングの範囲を再設定する。そして、顔検出の結果(すなわち顔領域)と、自動写真補正の指示(on)と、トリミングの指示および再設定された範囲と、再生成されたトリミング指示に基づくトリミング後の画像データとを組とした送信データ1004を後段処理の画像処理装置1002に送信する。
【0051】
後段処理では、受信した画像データおよび処理パラメータ(ここでは補正指示および幾何学変換指示とそのパラメータとを含む)にしたがって予め定めた順序で処理を実行し、その結果1008を得る。なお予め定めた順序とは、たとえば、自動生成した幾何学変換処理がある場合には、その幾何学変換を行うと結果が影響される補正処理をまず行い、その後で幾何学変換を行い、その後でその他の補正処理を行う、というものである。後段処理で受信した処理パラメータに幾何学変換指示が含まれている場合には、その幾何学変換の前に行う補正処理と後に行う補正処理とは、幾何学変換の種類ごとにそれぞれ予め定めておけばよい。
【0052】
一方、指定されたトリミングを行うか否かによって美肌補正の結果が変わらないと判定されれば、前段処理でトリミングを施し、ユーザに指示されたトリミング処理を施した画像データと、その他指示された補正処理、たとえば自動補正処理の指示とを処理パラメータ1007として後段処理1003に送信する。後段処理では、すでに幾何学変換が施された画像データを対象として指定された補正処理を施してその画像1009を得る。
【0053】
なお図10の説明では、後段処理を印刷装置で行うものとし、受注者の端末による補正処理の指定は省略した。
【0054】
以上のようにユーザー指定の幾何学変換を行ったときに前段処理での補正結果1007と後段処理での補正結果1009が変化する場合、ユーザー指定の補正結果は送信データ1004に格納し、補正結果が変化しない幾何学変換を自動生成する。送信画像に自動生成した幾何学変換を行って送信する。
【0055】
<アルバム作成時のワークフロー>
図11を用いてアルバム作成時のワークフローを説明する。アルバム作成では複数の画像を入力し、レイアウトする。レイアウトをするUI例を図12に示す。
U1202がアルバムの1ページになる。そこに写真をはめ込む領域がU1203、U1204、U1205、U1206とある。このはめ込む領域は、ユーザーが任意で決めても良いし、テンプレートとしてアプリ側で用意しても良い。U1210にはユーザーが入力した画像のプレビューが表示されている。ユーザーはこのプレビューを見ながら、好きなところに好きな画像をレイアウトしていく。このようにアルバムの印刷を指示する場合には、ユーザはレイアウトする画像データを特定し、そのトリミングやレイアウト、補正処理などを含むレイアウトパラメータ(属性情報)も合わせて特定する。
【0056】
図12の例では、画像U1209が拡大処理をされてレイアウトU1203に、画像U1207が縮小処理をされてレイアウトU1204に、画像U1208がトリミング処理をされてレイアウトU1206に配置される。このとき画像に自動写真補正が指示されている場合、美肌補正が指示されている場合、モノクロ補正が指示されている場合をそれぞれ説明する。
【0057】
まず自動写真補正が指示されている場合を説明する。拡大処理が指示されているレイアウトU1203は、前段処理で拡大してしまうと入力画像より転送データ量が多くなる。そこで、ユーザー指定の幾何学変換指示を属性情報に格納し、幾何学変換は行わず画像データはそのまま送信される。このときの属性情報には、自動写真補正の補正指示とユーザー指示の拡大指示が格納されている。
【0058】
縮小処理が指示されているレイアウトU1204は、ユーザー指定の縮小処理の有無によって後段処理での自動写真補正処理の結果が変わる場合、縮小後の自動写真補正の補正結果が、縮小せずに補正した処理の結果と一致するような縮小率に、ユーザー指定の縮小率を変更する。この縮小率は、縮小処理によって補正処理の結果を変えることのない縮小率のうち、ユーザ指定の縮小率に最も近くかつユーザ指定の縮小率を越えない値である。この縮小率で縮小処理がオリジナル画像データに施される。このとき縮小処理がされない場合もありうる。変更後の縮小率がユーザ指定の縮小率に達していない場合には、その差分の縮小率が、縮小指示のパラメータとして属性情報に格納され、後段処理に送信される。このように、ユーザー指定の幾何学変換指示は属性情報に格納され、入力画像に自動生成された幾何学変換がかけられ、後段処理に送信される。この例では、属性情報には、自動写真補正の補正指示とユーザー指定の縮小指示およびそのパラメータが格納されている。ユーザー指定の縮小処理をした画像を送っても後段処理での補正結果がオリジナル画像に対する補正結果と一致する場合、入力画像にユーザー指定の縮小処理が施され、送信される。このときの属性情報には、自動写真補正の補正指示が格納されている。
【0059】
トリミング処理を指示されたレイアウトU1206は、ユーザー指定のトリミングを前段処理で行った画像を後段処理に送ると、後段処理での補正結果がトリミングしていない場合と一致しない。そのため、トリミングした画像に対する自動写真補正の補正結果が、オリジナル画像に対する補正結果と一致するように、ユーザー指定のトリミング範囲より広いトリミング範囲が自動生成される。このときトリミングがされない場合もありうる。ユーザー指定の幾何学変換指示は属性情報に格納され、入力画像に自動生成された幾何学変換が施されて送信される。このときの属性情報には、自動写真補正の補正指示とユーザー指示のトリミング指示が格納されている。
【0060】
次に美肌補正がかかっている場合を説明する。拡大処理が指示されているレイアウトU1203は、拡大処理によって入力画像より転送データ量が多くなるので、ユーザー指定の幾何学変換指示を属性情報に格納し、前段処理では幾何学変換は行わず送信する。このときの属性情報には、美肌補正の補正指示とユーザー指示の拡大指示が格納されている。
【0061】
縮小処理を指示されているレイアウトU1204は、ユーザー指定の縮小処理を前段で行った画像を送っても後段処理での補正結果が縮小していない場合と一致するので、入力画像にユーザー指定の縮小処理をかけられ、送信される。このときの属性情報には、美肌補正の補正指示が格納されている。
【0062】
トリミング処理を指示されたレイアウトU1206は、ユーザー指定のトリミングをした画像を送ると後段処理で補正結果がオリジナル画像に対する補正結果と一致しない場合、オリジナル画像に対する美肌補正の補正結果に一致するようにユーザー指定のトリミング範囲より広いトリミング範囲が自動生成される。この自動生成では、上述の例のように、たとえば顔領域を検出してその顔領域がユーザに指定された範囲のトリミングにより分割されないように、トリミング範囲が再設定される。この再設定はトリミング範囲を広げる方向に行われる。すなわち、顔領域が分断される場合、当該顔領域全体がトリミング範囲に含まれるよう範囲が再設定される。ユーザー指定の幾何学変換指示は属性情報に格納され、入力画像に自動生成された幾何学変換がかけられ、送信される。このときの属性情報には、美肌補正の補正指示とユーザー指示のトリミング指示が格納されている。ユーザー指示のトリミングした画像を送っても後段処理で補正結果が一致する場合、ユーザ指定のトリミングが入力画像にかけられ、送信される。このときの属性情報には、美肌補正の補正指示が格納されている。
次にモノクロ補正が指示されている場合を説明するモノクロ補正とはたとえばカラー画像をモノクロームに変換する補正であり、幾何学変換に影響を受けることはない。図12において、拡大処理を指示されているレイアウトU1203は前段での拡大処理により入力画像より転送データ量が多くなるので、ユーザー指定の幾何学変換指示を属性情報に格納し、幾何学変換は行わず送信する。このときの属性情報には、モノクロ補正の補正指示とユーザー指示の拡大指示が格納されている。
【0063】
縮小処理を指示されているレイアウトU1204は、前段でユーザー指定の縮小処理をした画像を送っても後段処理での補正結果が縮小していない場合と一致するので、入力画像にユーザー指定の縮小処理を施され、送信される。このときの属性情報には、モノクロ補正の補正指示が格納されている。
【0064】
トリミング処理を指示されたレイアウトU1206は、ユーザー指示のトリミングした画像を送っても後段処理で補正結果がオリジナル画像に対する補正結果と一致する。そのためユーザ指定のトリミングが入力画像にかけられ、送信される。このときの属性情報には、モノクロ補正の補正指示が格納されている。このように幾何学変換に影響を受けない、すなわち幾何学変換から独立していることがわかっている補正処理に関しては、予め前段処理の画像処理装置に登録しておく。そして指示された補正が幾何学変換から独立したもののみであれば、その処理に関しては結果を比較するまでもなく、前段処理で幾何学変換を行っておく。
【0065】
以上の通り個々の画像データについては幾何学変換処理や補正処理のパラメータが画像データと共に前段から後段に送信される。それとともに、アルバムを構成するためのレイアウトを指定する情報も含めたアルバムデータが前段から後段に送信される。
【0066】
次にモノクロ補正が指示されている場合を説明する。モノクロ補正とは、カラー画像データをモノクロームに変換する処理である。
【0067】
このように原画像データ1101を対象として、指示1102に基づき前段処理1105でアルバムが作成される。このアルバムデータ1108を後段処理1106で受け取った場合、前段処理での処理結果がプレビューとして表示される。このときの表示フローを説明する。まず受信データの属性情報に格納されている補正指示を受信画像に対して処理する。そのあとに、ユーザー指定幾何学変換指示があった場合、補正後画像に対して幾何学変換を行いプレビューとして表示する。ここではオペレータが画像の色合いやアルバム全体の調整などを行う。その結果は属性情報に格納される。もし後段処理1106でも幾何学変換がされた場合は、前段処理1105で行ったのと同様の処理を行う。
【0068】
後段処理1106で調整指示1103に応じた調整処理が終わったアルバムデータ1109は印刷装置1107に送信される。印刷装置1107では、属性情報に格納されている補正指示を受信画像に対して行う。そのあとにユーザー指定幾何学変換指示があった場合、補正後画像に対して幾何学変換処理を行い、結果をアルバムにレイアウトし印刷する。
【0069】
<実施形態の効果>
このようにすることで、オリジナル画像に対して補正処理を施した場合と同程度の画質を保証しつつ、前段処理から後段処理への転送データ量を抑えることができる。
【0070】
例えば、図9A、図9Bのような状況を考える。従来では、図8のように幾何学変換がおこなわれていたとしても、自動写真補正と明るさ調整の両補正とも前段から後段にオリジナル画像を送っていた。本実施形態では、図9Bのように明るさ調整は幾何学変換が行われたとしても前段処理910での補正結果912と後段処理911での補正結果914とが変わらない。そこで、ユーザー指示のトリミングを前段処理910で実行して幾何学変換後の画像を送信データ913として後段処理911に送信する。
【0071】
一方、本実施形態では前段処理903で実施した補正結果905が指示901によるユーザー指示のトリミングによって変化する場合、補正結果が変わらないようなトリミングを自動生成し、送信画像906に自動生成したトリミングを行う。ユーザー指示のトリミングは送信データ906に格納される。
【0072】
このように本発明では、補正処理に必要な画像だけを送ることができ、従来に比べ、画質を保証しながら転送量を抑えることができる。
【0073】
[実施形態2]
実施形態1では、幾何学変換後の画像が前段処理の画像処理装置から送信データとして送信される。そのためその送信データを受け取った後段処理の画像処理装置では、幾何学変換後の画像が補正処理の対象になる。このためこのままでは属性情報のうち、座標系に依存する検出結果や補正指示が画像と一致しないことになる。
【0074】
本実施形態では、以上の課題を解決するため、第1実施形態に加え、属性情報を送信画像に実施した幾何学変換によって変更する手段を追加する。ここでいう座標系に依存する検出結果や補正指示とは、顔検出座標やほくろ除去で指定した補正範囲などである。
【0075】
例として図7を用いて説明する。オリジナル画像702に対して顔検出座標703と顔検出座標704があったとする。そのオリジナル画像702をトリミング範囲704でトリミングをする。当初顔検出座標703と704はオリジナル画像座標系701で表現されている。しかしトリミング後の画像では、顔検出座標703と704はトリミング画像座標系706で表さないと正確な位置を表現できない。そのため顔検出座標703と704はオリジナル画像座標系701からトリミング後画像座標系706へ座標変換をする必要がある。
【0076】
ここでの変換方法は、座標系変換の算術処理で求めることができる。一例として、図7を用いて説明する。
【0077】
トリミングの場合、トリミング範囲の左上の点が原点となるように顔検出座標703と705を平行移動する座標変換となる。トリミング範囲の左上の点を(xLT,yLT)とし、顔検出座標703を(faceXLT,faceYLT)、(faceXRB,faceYRB)の2点を対角とし、座標軸に平行な辺を持つ方形領域で表しているとする。変換後の顔検出座標は、(faceXLT−xLT,faceYLT−yLT)、(faceXRB−xLT,faceYRB−yLT)となる。
【0078】
拡縮変換の場合、変換後画像の左上の点からの距離を拡縮する。拡縮処理の倍率をN、顔検出座標703を(faceXLT,faceYLT)、(faceXRB,faceYRB)の2点で表しているとする。変換後の顔検出座標は(faceXLT×N,faceYLT×N)、(faceXRB×N,faceYRB×N)となる。ここでは縦方向、横方向とも同じ倍率で計算したが、違う場合でもよく、その場合はx座標に掛ける倍率とy座標に掛ける倍率が変わる。
【0079】
回転変換の場合、回転中心が原点、すなわち画像の左上の点となるようまず平行移動し、その後平行移動による新たな原点を回転中心として回転変換を行う。回転角度を(deg)、回転の中心を(xLT,yLT)とし、顔検出座標703を(faceXLT,faceYLT)、(faceXRB,faceYRB)の2点を対角とする方形領域で表しているとする。変換後の顔検出座標は、
((faceXLT−xLT)xcos(deg)+(faceYLT−yLT)×sin(deg),−(faceXLT−xLT)×sin(deg)+(faceYLT−yLT)×cos(deg))、
((faceXLT−xLT)×cos(deg)+(faceYRB−yLT)×sin(deg),−(faceXLT−xLT)×sin(deg)+(faceYRB−yLT)×cos(deg))、
((faceXRB−xLT)×cos(deg)+(faceYLT−yLT)×sin(deg),−(faceXRB−xLT)×sin(deg)+(faceYLT−yLT)×cos(deg))、
((faceXRB−xLT)×cos(deg)+(faceYRB−yLT)×sin(deg),−(faceXRB−xLT)×sin(deg)+(faceYRB−yLT)×cos(deg))
という4点を頂点とする領域となる。
【0080】
これは一例であり、他の計算方法を用いても良く、幾何学変換後でも検出座標を正しく表現していることが重要である。
【0081】
以上で説明したように、本実施形態においては、座標変換をすることで画像に対して正しい顔検出座標を表すことができ、幾何学変換後でも検出結果が利用でき、また補正結果を一致させることができる。
【0082】
例えば、図2おいて前段処理205で顔検出処理を行い顔検出座標を取得した。顔検出座標は属性情報に格納する。ユーザー指示202で幾何学変換が指示された場合、送信データ208の画像は幾何学変換後の画像となる。このとき顔検出座標をそのまま送ると画像と不一致になり、補正結果が一致しないもしくは顔検出を再実行する必要がある。しかし、顔検出座標を幾何学変換後の画像にあわせて変換を行うことで、後段処理206でも補正結果が一致するので顔検出も再実行する必要もない。
【0083】
座標系の変換は送信前に行っても良いし、受信後もしくは補正処理前に行っても良い。受信後もしくは補正処理前に行う場合には、送信画像に対して行った幾何学変換指示も属性情報に格納して送信する。
【0084】
以上で説明したように、本実施形態においては、送信画像に幾何学変換を行ったとしても、座標系に依存する検出結果や補正指示を幾何学変換後の画像の座標系に座標変換することで、検出結果の再利用と補正画質の確保ができる。
【0085】
[その他の実施形態]
また、本発明は、以下の処理を実行することによっても実現される。即ち、上述した実施形態の機能を実現するソフトウェア(プログラム)を、ネットワーク又は各種記憶媒体を介してシステム或いは装置に供給し、そのシステム或いは装置のコンピュータ(またはCPUやMPU等)がプログラムを読み出して実行する処理である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象画像データに対する処理の指示を受け付けて、後段の画像処理装置に対して画像データを処理の指示を含む指示情報とともに送信する画像処理装置であって、
指示された幾何学変換処理を前記対象画像データに施し、指示された補正処理を前記幾何学変換処理された画像データに対して施した第一の画像データと、前記指示された補正処理を前記対象画像データに対して施した第二の画像データとの差を評価して、所定値を越える差があるか判定する判定手段と、
前記判定手段により差があると判定された場合には、前記第一の画像データと前記第二の画像データと差が、所定値以下となるように、前記幾何学変換処理のパラメータを再設定する再設定手段と、
前記再設定手段により再設定されたパラメータで前記対象画像データに対して前記幾何学変換処理を施し、当該処理後の画像データを、前記指示された補正処理の指示情報と前記指示された幾何学変換処理の指示情報とともに前記後段の画像処理装置に送信する送信手段と
を備えることを特徴とする画像処理装置。
【請求項2】
前記幾何学変換処理には、変倍とトリミングと回転のうち少なくともいずれかを含むことを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項3】
前記指示情報には、さらに特定のオブジェクトの検出処理を行った検出結果を含むことを特徴とする請求項1または2に記載の画像処理装置。
【請求項4】
前記再設定手段は、前記指示された補正処理が前記対象画像データの一部分を使う補正処理であった場合、前記一部分が前記幾何学変換処理された画像データに含まれるように前記パラメータを再設定することを特徴とする請求項3に記載の画像処理装置。
【請求項5】
前記一部分は、検出処理より検出された前記特定のオブジェクトの座標と、前記指示された補正処理の対象となる範囲の少なくともいずれか一方を含むことを特徴とする請求項4に記載の画像処理装置。
【請求項6】
前記判定手段による判定に先行して、前記指示された幾何学変換処理が前記対象画像データのサイズを小さくするか否かを判定する手段を更に備え、小さくしない場合には、前記送信手段により、前記対象画像データを、前記指示された補正処理の指示情報と前記指示された幾何学変換処理の指示情報とを含む指示情報とともに前記後段の画像処理装置に送信することを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載の画像処理装置。
【請求項7】
前記送信手段は、前記指示情報に含まれる幾何学変換処理のパラメータを、前記対象画像データに施された幾何学変換処理に応じて変換することを特徴とする請求項1乃至6のいずれか一項に記載の画像処理装置。
【請求項8】
前記指示された補正処理に顔領域を対象とする補正処理が含まれている場合には、前記判定手段は、前記顔領域を検出して前記顔領域を対象とした補正結果が、前記指示された幾何学変換処理を行ったか否かに応じて変わる場合に、前記第一の画像データと前記第二の画像データとに差があると判定することを特徴とする請求項1乃至7のいずれか一項に記載の画像処理装置。
【請求項9】
前記判定手段は、前記第二の画像データに対して前記第一の画像データに施されている幾何学変換処理を施した画像データを、前記第一の画像データと比較することを特徴とする請求項1乃至8のいずれか一項に記載の画像処理装置。
【請求項10】
画像処理装置から画像データを当該画像データに対する処理の指示とともに受信する画像形成装置であって、
指示された補正処理を前記画像データに施し、当該処理後の画像データに対して指示された幾何学変換処理を施す処理手段と、
前記処理手段により処理された画像データを画像として形成する画像形成手段とを備え、
前記指示された補正処理に複数の種類の補正処理が含まれている場合、前記処理手段は、予め定められた順序で補正処理を実行することを特徴とする画像形成装置。
【請求項11】
コンピュータを、
指示された幾何学変換処理を対象画像データに施し、指示された補正処理を前記幾何学変換処理された画像データに対して施した第一の画像データと、前記指示された補正処理を前記対象画像データに対して施した第二の画像データとの差を評価して、所定値を越える差があるか判定する判定手段と、
前記判定手段により差があると判定された場合には、前記第一の画像データと前記第二の画像データと差が、所定値以下となるように、前記幾何学変換処理のパラメータを再設定する再設定手段と、
前記再設定手段により再設定されたパラメータで前記対象画像データに対して前記幾何学変換処理を施し、当該処理後の画像データを、前記指示された補正処理の指示情報と前記指示された幾何学変換処理の指示情報とともに前記後段の画像処理装置に送信する送信手段と
して機能させるためのプログラム。
【請求項12】
対象画像データに対する処理の指示を受け付けて、後段の画像処理装置に対して画像データを処理の指示を含む指示情報とともに送信する前段の画像処理装置と、後段の画像処理装置と、前記後段の画像処理装置から画像データを当該画像データに対する処理の指示とともに受信する画像形成装置とを接続した画像形成システムであって、
前記前段の画像処理装置は、
指示された幾何学変換処理を前記対象画像データに施し、指示された補正処理を前記幾何学変換処理された画像データに対して施した第一の画像データと、前記指示された補正処理を前記対象画像データに対して施した第二の画像データとの差を評価して、所定値を越える差があるか判定する判定手段と、
前記判定手段により差があると判定された場合には、前記第一の画像データと前記第二の画像データと差が、所定値以下となるように、前記幾何学変換処理のパラメータを再設定する再設定手段と、
前記再設定手段により再設定されたパラメータで前記対象画像データに対して前記幾何学変換処理を施し、当該処理後の画像データを、前記指示された補正処理の指示情報と前記指示された幾何学変換処理の指示情報とともに前記後段の画像処理装置に送信する送信手段とを備え、
前記画像形成装置は、
前記指示された補正処理を前記画像データに施し、当該処理後の画像データに対して指示された幾何学変換処理を施す処理手段と、
前記処理手段により処理された画像データを画像として形成する画像形成手段とを備えることを特徴とする画像形成システム。
【請求項13】
対象画像データに対する処理の指示を受け付けて、後段の画像処理装置に対して画像データを処理の指示を含む指示情報とともに送信する前段の画像処理装置と、後段の画像処理装置と、前記後段の画像処理装置から画像データを当該画像データに対する処理の指示とともに受信する画像形成装置とを接続した画像形成システムによる画像形成方法であって、
前記前段の画像処理装置が、
指示された幾何学変換処理を前記対象画像データに施し、指示された補正処理を前記幾何学変換処理された画像データに対して施した第一の画像データと、前記指示された補正処理を前記対象画像データに対して施した第二の画像データとの差を評価して、所定値を越える差があるか判定する判定工程と、
前記判定工程により差があると判定された場合には、前記第一の画像データと前記第二の画像データと差が、所定値以下となるように、前記幾何学変換処理のパラメータを再設定する再設定工程と、
前記再設定工程により再設定されたパラメータで前記対象画像データに対して前記幾何学変換処理を施し、当該処理後の画像データを、前記指示された補正処理の指示情報と前記指示された幾何学変換処理の指示情報とともに前記後段の画像処理装置に送信する送信工程と、
前記画像形成装置が、
前記指示された補正処理を前記画像データに施し、当該処理後の画像データに対して指示された幾何学変換処理を施す処理工程と、
前記処理工程により処理された画像データを画像として形成する画像形成工程とを有することを特徴とする画像形成方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9A】
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【図9B】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−63946(P2012−63946A)
【公開日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−207156(P2010−207156)
【出願日】平成22年9月15日(2010.9.15)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】