説明

画像処理装置および画像形成装置

【課題】 色弱者が識別しづらい特定色の色文字について、背景色およびフォントサイズの両方を考慮して色文字についての対応処理を決定することで、画像内のほとんどすべての色文字を、色弱者にとって区別しやすくかつ見やすくする。
【解決手段】 色文字特定部11は、画像データ21において色弱者が識別困難な特定色の色文字を特定する。背景色特定部12は、色文字特定部11により特定された色文字の背景色を特定する。フォントサイズ特定部13は、色文字特定部11により特定された色文字のフォントサイズを特定する。そして、色文字処理部14は、その色文字の背景色が白色であるか否かおよび色文字のフォントサイズに応じた処理を色文字に施す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像処理装置および画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
文字を含む画像について、色覚障害者にとって文字が識別しやすくなるように画像等を処理する装置が提案されている(例えば、特許文献1,2参照)。
【0003】
そのような装置には、背景図形と文字の濃度差や色相差に応じて文字の濃度や色相を変更する装置がある(例えば特許文献1参照)。
【0004】
また、そのような装置には、文字のサイズに応じて、文字に対する処理(縁取りなど)を切り換える装置がある(例えば特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−078325号公報
【特許文献2】特開2006−154982号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、色弱者の場合、識別できる色相が限られているため、上述の方法等で文字の色を変換すると、色変換していない文字との区別がつきにくくなるなど、文字の色変換によってかえって識別しにくくなることもある。
【0007】
本発明は、上記の問題に鑑みてなされたものであり、色弱者が識別しづらい特定色の文字(以下、色文字という)について、背景色およびフォントサイズの両方を考慮して色文字についての対応処理を決定することで、画像内のほとんどすべての色文字を、色弱者にとって区別しやすくかつ見やすくする画像処理装置および画像形成装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために、本発明では以下のようにした。
【0009】
本発明に係る画像処理装置は、画像データにおいて色弱者が識別困難な特定色の色文字を特定する色文字特定部と、色文字特定部により特定された色文字の背景色を特定する背景色特定部と、色文字特定部により特定された色文字のフォントサイズを特定するフォントサイズ特定部と、色文字の背景色が白色であるか否かおよび色文字のフォントサイズに応じた処理を色文字に施す色文字処理部とを備える。
【0010】
これにより、色弱者が識別しづらい色文字について、背景色およびフォントサイズの両方を考慮して対応処理を決定することで、画像内のほとんどすべての色文字が、色弱者にとって区別しやすくかつ見やすくなる。
【0011】
また、本発明に係る画像処理装置は、上記の画像処理装置に加え、次のようにしてもよい。この場合、色文字処理部は、背景色が白色であり、かつ色文字のフォントサイズが所定のフォントサイズより小さい場合には、色弱者が識別可能な色へ色文字の色を変換する色変換処理を行う。
【0012】
また、本発明に係る画像処理装置は、上記の画像処理装置のいずれかに加え、次のようにしてもよい。この場合、色文字処理部は、背景色が白色であり、かつ色文字のフォントサイズが所定のフォントサイズより小さい場合には、さらに、色変換処理後の色文字に下線を付加する処理を行う。
【0013】
また、本発明に係る画像処理装置は、上記の画像処理装置のいずれかに加え、次のようにしてもよい。この場合、色文字処理部は、背景色が白色であり、かつ色文字のフォントサイズが所定のフォントサイズ以上である場合には、色文字に対してハッチングを施す。
【0014】
また、本発明に係る画像処理装置は、上記の画像処理装置のいずれかに加え、次のようにしてもよい。この場合、色文字処理部は、背景色が白色ではなく、かつ色文字のフォントサイズが所定のフォントサイズより小さい場合には、色弱者が識別可能な色へ色文字の色を変換する色変換処理、または背景色との明度差が大きくなるように色文字の明度のみを変換する明度差増加処理を行う。
【0015】
また、本発明に係る画像処理装置は、上記の画像処理装置のいずれかに加え、次のようにしてもよい。この場合、色文字処理部は、背景色が白色ではなく、かつ色文字のフォントサイズが所定のフォントサイズ以上である場合には、色文字に対して縁取り処理を施す。
【0016】
本発明に係る画像形成装置は、画像データにおいて色弱者が識別困難な特定色の色文字を処理するために、上記の画像処理装置のいずれかを備える。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、色弱者が識別しづらい色文字について、背景色およびフォントサイズの両方を考慮して色文字についての対応処理を決定することで、画像内のほとんどすべての色文字を、色弱者にとって区別しやすくかつ見やすくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】図1は、本発明の実施の形態に係る画像処理装置の構成を示すブロック図である。
【図2】図2は、図1に示す画像処理装置の動作を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図に基づいて本発明の実施の形態を説明する。
【0020】
図1は、本発明の実施の形態に係る画像処理装置の構成を示すブロック図である。
【0021】
この画像処理装置は、プリンタ、コピー機、複合機などの画像形成装置に内蔵され、印刷、表示などの画像出力に使用する画像データ内の、色弱者が識別しづらい色文字について、背景色およびフォントサイズの両方を考慮して色文字についての対応処理を決定し、その対応処理を実行することで、画像内のほとんどすべての色文字を、色弱者にとって区別しやすくかつ見やすくする。
【0022】
図1に示す画像処理装置は、演算処理装置1、およびその演算処理装置1に接続される記憶装置2を備える。
【0023】
演算処理装置1は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)などを含むコンピュータを有し、ROM、記憶装置2などに記憶されているプログラムをRAMにロードしてCPUで実行して各種処理部を実現する。これらの処理部は、処理すべきデータや一時的なデータをRAMに格納しつつ処理を実行する。この演算処理装置1では、色文字特定部11、背景色特定部12、フォントサイズ特定部13、および色文字処理部14が実現される。
【0024】
色文字特定部11は、画像データ21において色弱者が識別困難な特定色の色文字を特定する処理部である。色文字特定部11は、画像データから文字を抽出し、その文字の色を特定し、その色が特定色であれば、その文字を上述の色文字として特定する。
【0025】
色弱者が識別困難な特定色は、一般色覚者とは異なる色として認識されてしまう色であって、背景色との組み合わせによっては文字の存在を認識できないまたはしづらいものとなってしまう色である。そのような色(および色の組み合わせ)は既知であって、色文字特定部11には、その色の値(および色の組み合わせの情報)を予め設定されている。そして、色文字特定部11は、各文字とその背景色(または隣接する文字)との色の組み合わせから、その文字が色弱者が識別困難な特定色を有していれば、その文字を上述の色文字として特定する。
【0026】
背景色特定部12は、画像データ21に基づいて、色文字特定部11により特定された色文字の背景色を特定する処理部である。
【0027】
フォントサイズ特定部13は、画像データ21に基づいて、色文字特定部11により特定された色文字のフォントサイズを特定する処理部である。
【0028】
色文字処理部14は、色文字の前記背景色が白色であるか否かおよび色文字のフォントサイズに応じた処理を色文字に施す処理部である。
【0029】
色文字処理部14は、背景色が白色であり、かつ色文字のフォントサイズが所定のフォントサイズより小さい場合には、色弱者が識別可能な色(上述の識別困難な特定色以外の所定の色)へ色文字の色を変換するとともに、色変換処理後の色文字に下線を付加する処理を行う。色文字処理部14は、背景色が白色であり、かつ色文字のフォントサイズが所定のフォントサイズ以上である場合には、色文字に対してハッチングを施す。
【0030】
一方、色文字処理部14は、背景色が白色ではなく、かつ色文字のフォントサイズが所定のフォントサイズより小さい場合には、色弱者が識別可能な色へ色文字の色を変換する色変換処理、または背景色との明度差が大きくなるように色文字の明度のみを変換する明度差増加処理を行う。また、色文字処理部14は、背景色が白色ではなく、かつ色文字のフォントサイズが所定のフォントサイズ以上である場合には、色文字に対して縁取り処理を施す。
【0031】
また、記憶装置2は、各種データを記憶する装置である。記憶装置2には、ハードディスクドライブ、半導体メモリなどが使用される。この記憶装置2には、画像データ21が記憶されている。
【0032】
次に、上記装置の動作について説明する。図2は、図1に示す画像処理装置の動作を説明するフローチャートである。
【0033】
まず、色文字特定部11は、画像データ21を読み出し、画像データ21において色弱者が識別困難な特定色の色文字を特定する(ステップS11)。このとき、背景色特定部12は、画像データ21における各文字の背景色を特定し、色文字特定部11は、その背景色と文字自体の色とに基づいて色文字を特定し、背景色特定部12は、その色文字の背景色を特定する。また、フォントサイズ特定部13は、画像データ21に基づいて、色文字特定部11により特定された色文字のフォントサイズを特定する。
【0034】
そして、色文字処理部14は、特定された各色文字について、以下の処理を行う。色文字処理部14は、特定された各色文字について、色文字の背景色が白色であるか否かを判定するとともに(ステップS2)、色文字のフォントサイズが所定のサイズ(例えば、14ポイント、4ミリメートルなど)以上であるか否かを判定する(ステップS3,S4)。
【0035】
背景色が白色であり、かつフォントサイズが所定のサイズ以上である場合、色文字処理部14は、色文字およびそれを含む背景の周辺領域に対してハッチング(網掛け)を施す(ステップS5)。背景色が白色でありフォントサイズが大きい場合には、色文字の存在は認識されるものの、その色は一般色覚者とは異なる色として認識されるため、そのことを色弱者に知らせるために、ハッチングが施される。また、この場合、色変換処理を行わなくても色弱者が識別可能であるので、色変換処理をせず、一般色覚者にも違和感なくこの色文字が認識されるようにする。
【0036】
背景色が白色であり、かつフォントサイズが所定のサイズより小さい場合、色文字処理部14は、色文字に対して色変換処理および下線の付加を行う(ステップS6)。背景色が白色であってもフォントサイズが小さい場合には、色文字の存在が認識されない虞があるため、色変換処理が行われるとともに、その色は一般色覚者とは異なる色として認識されるため、そのことを色弱者に知らせるために、下線が付加される。フォントサイズが小さい場合、ハッチングを行うと、更に認識しにくくなる可能性があるため、ハッチングの代わりに下線(実線、破線、波線など)が付加される。
【0037】
例えば、色変換後の色には、「色覚の多様性に配慮した案内・サイン・図表等用のカラーユニバーサルデザイン推奨配色セット(色のバリアフリーに配慮した色見本)」(http://jfly.iam.u−tokyo.ac.jp/color/CUD_set/)に記載の色が使用される。この文献において、小文字については、赤(JPMA色票F08−50V,マンセル値8.75R 5/12)、黄色(JPMA色票F27−85V,マンセル値7.5Y 8.5/12)、緑(JPMA色票F47−60T,マンセル値7.5G 6/19)、青(JPMA色票F77−40V,マンセル値7.5PB 4/12)などの使用が推奨されているため、この実施の形態では、これらの色のうち、元の色に近い色が、色変換後の色に選択される。
【0038】
背景色が白色ではなく、かつフォントサイズが所定のサイズ以上である場合、色文字処理部14は、色文字に対して縁取り処理を行う(ステップS7)。色文字の色との組み合わせで識別しやすい色で縁取りが行われる。フォントサイズが大きい場合、縁取りを行っても文字が潰れる可能性が少ないため、縁取りにより文字を識別しやすくする。また、この場合、色変換処理を行わなくても色弱者が識別可能であるので、色変換処理をせずに一般色覚者にも違和感なくこの色文字が認識される。
【0039】
背景色が白色ではなく、かつフォントサイズが所定のサイズより小さい場合、色文字処理部14は、色文字に対して明度差増加処理または色変換処理を行う(ステップS8)。フォントサイズが小さい場合には、色文字の存在が認識されない虞があるため、ステップS6と同様の色変換処理、または明度差増加処理が行われる。
【0040】
以上のように、上記実施の形態によれば、色文字特定部11は、画像データ21において色弱者が識別困難な特定色の色文字を特定する。背景色特定部12は、色文字特定部11により特定された色文字の背景色を特定する。フォントサイズ特定部13は、色文字特定部11により特定された色文字のフォントサイズを特定する。そして、色文字処理部14は、その色文字の背景色が白色であるか否かおよび色文字のフォントサイズに応じた処理を色文字に施す。
【0041】
これにより、色弱者が識別しづらい色文字について、背景色およびフォントサイズの両方を考慮して色文字についての対応処理を決定することで、画像内のほとんどすべての色文字が、色弱者にとって区別しやすくかつ見やすくなる。
【0042】
なお、上述の実施の形態は、本発明の好適な例であるが、本発明は、これらに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々の変形、変更が可能である。
【0043】
上記実施の形態では、画像処理装置が画像形成装置に内蔵されているが、その代わりに、パーソナルコンピュータにおいて所定のプログラムを実行させることにより上述の画像処理装置を実現し、PDFファイルなどの各種フォーマットの画像ファイルに対して、上述の色文字処理を行うようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明は、例えば、色弱者用書類の画像データを生成することに適用可能である。
【符号の説明】
【0045】
11 色文字特定部
12 背景色特定部
13 フォントサイズ特定部
14 色文字処理部
21 画像データ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像データにおいて色弱者が識別困難な特定色の色文字を特定する色文字特定部と、
前記色文字特定部により特定された色文字の背景色を特定する背景色特定部と、
前記色文字特定部により特定された色文字のフォントサイズを特定するフォントサイズ特定部と、
前記色文字の前記背景色が白色であるか否かおよび前記色文字のフォントサイズに応じた処理を前記色文字に施す色文字処理部と、
を備えることを特徴とする画像処理装置。
【請求項2】
前記色文字処理部は、前記背景色が白色であり、かつ前記色文字のフォントサイズが所定のフォントサイズより小さい場合には、前記色弱者が識別可能な色へ前記色文字の色を変換する色変換処理を行うことを特徴とする請求項1記載の画像処理装置。
【請求項3】
前記色文字処理部は、前記背景色が白色であり、かつ前記色文字のフォントサイズが所定のフォントサイズより小さい場合には、さらに、前記色変換処理後の前記色文字に下線を付加する処理を行うことを特徴とする請求項2記載の画像処理装置。
【請求項4】
前記色文字処理部は、前記背景色が白色であり、かつ前記色文字のフォントサイズが所定のフォントサイズ以上である場合には、前記色文字に対してハッチングを施すことを特徴とする請求項1から請求項3のうちのいずれか1項記載の画像処理装置。
【請求項5】
前記色文字処理部は、前記背景色が白色ではなく、かつ前記色文字のフォントサイズが所定のフォントサイズより小さい場合には、前記色弱者が識別可能な色へ前記色文字の色を変換する色変換処理、または前記背景色との明度差が大きくなるように前記色文字の明度のみを変換する明度差増加処理を行うことを特徴とする請求項1から請求項4のうちのいずれか1項記載の画像処理装置。
【請求項6】
前記色文字処理部は、前記背景色が白色ではなく、かつ前記色文字のフォントサイズが所定のフォントサイズ以上である場合には、前記色文字に対して縁取り処理を施すことを特徴とする請求項1から請求項5のうちのいずれか1項記載の画像処理装置。
【請求項7】
画像データに基づいて画像を形成し出力する画像形成装置において、
前記画像データにおいて色弱者が識別困難な特定色の色文字を処理するために、請求項1から請求項6のうちのいずれか1項記載の画像処理装置を備えること、
を特徴とする画像形成装置。


【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−97203(P2011−97203A)
【公開日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−247194(P2009−247194)
【出願日】平成21年10月28日(2009.10.28)
【出願人】(000006150)京セラミタ株式会社 (13,173)
【Fターム(参考)】