説明

画像処理装置および表示装置

【課題】 画像生成処理および変換処理における負荷を軽減する画像処理装置および表示装置を提供する。
【解決手段】 画像データの記録および読み出し可能なメモリ110と、画像データを記録可能な記録手段108と、表示対象がディスプレイ面に対して平行な平面オブジェクトである場合に、第1視点においてα値と輝度情報とを含む画像を描画し、他の視点においてα値なしの輝度情報を含む画像を描画して複数視点における画像データを生成し記録手段108に記録する演算手段114と、を備える画像処理装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、画像処理装置および表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、左眼用の画像と右眼用の画像とを左眼と右眼とでそれぞれ見えるようにして、3次元映像を視聴可能とする複数の技術が提案されている。その中で、例えばインテグラル・イメージング方式(以下II方式)は液晶表示装置上にスリットあるいはレンチキュラーレンズシート等を配置して水平方向の視差を制御している。従って、II方式の液晶表示装置は、視点位置の自由度が高く、偏光メガネなしで楽に立体視できるという点で注目されている。
【0003】
3次元映像を視認可能とする表示装置には視差のある画像を複数視点分だけ入力する必要がある。そのため、一般的なコンピュータのハードウェア構成を用いてディスプレイに3次元映像を表示するためには、複数視点の画像生成処理、および、ディスプレイ入力形式への変換処理を行う。
【0004】
また、半透明のオブジェクトを表示する場合にアルファブレンドという技術が知られている。アルファブレンドを行う場合、輝度情報と共にα(アルファ)値が生成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−111096号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来、3次元映像を表示する場合、複数視点分の視差のある画像のそれぞれについて、輝度情報とα値とが必要であった。そのため、3次元映像を表示する際に必要なデータ容量が大きくなり、画像生成処理およびディスプレイ入力形式への変換処理の負荷を軽減することが困難であった。
【0007】
本発明は上記事情を鑑みて成されたものであって、画像生成処理および変換処理における負荷を軽減する画像処理装置および表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
実施形態によれば、画像データの記録および読み出し可能なメモリと、前記画像データを記録可能な記録手段と、表示対象がディスプレイ面に対して平行な平面オブジェクトである場合に、第1視点においてα値と輝度情報とを含む画像を描画し、他の視点においてα値なしの輝度情報を含む画像を描画して複数視点における前記画像データを生成し前記記録手段に記録する演算手段と、を備える画像処理装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】実施形態の画像処理装置の一構成例を説明するための図である。
【図2】実施形態の表示装置の一構成例を説明するための図である。
【図3】3次元映像を表示するための輝度情報の一例について説明するための図である。
【図4】3次元映像を表示するためのα値の一例について説明するための図である。
【図5】実施形態の画像処理装置および表示装置における画像生成処理の一例について説明するための図である。
【図6】実施形態の画像処理装置および表示装置における画像生成処理およびディスプレイ入力形式への変換処理の一例を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、実施形態の画像処理装置および表示装置について、図面を参照して説明する。
図1に実施形態の画像処理装置およびの一構成例を示す。実施形態の画像処理装置100は、中央演算処理装置(CPU:central processing unit)102と、演算手段としてのグラフィクス演算処理装置(GPU:graphics Processing unit)104と、メインメモリ106と、記録手段としてのハードディスクドライブ(HDD:hard disc drive)108と、ビデオRAM(VRAM:video random access memory)110と、I/Oインタフェース112と、を備えている。
【0011】
メインメモリ106には、画像処理装置100を制御するための複数のプログラムが格納されている。
【0012】
CPU102は、I/Oインタフェース112から入力された制御信号等に基づいて、メインメモリ106に格納されたプログラムを読み出して実行し、演算結果をHDD108やI/Oインタフェース112へ出力する。
【0013】
GPU104は、3次元グラフィクスの表示に必要な演算処理を行う。GPU104は、HDD108に記録された3次元表示用の映像やI/Oインタフェース112から入力された3次元表示用の映像信号を表示部200で表示するために、複数視点の画像生成処理、および、ディスプレイ入力形式への変換処理を行う。
【0014】
VRAM110は、画像データの記録および読み出しができるRAMである。VRAM110は、GPU104の作業エリアを提供する。
【0015】
I/Oインタフェース112は、通信インタフェース、USBインタフェース、i.Link(登録商標)インタフェース、HDMI(High Definition Multimedia Interface)規格に合致したHDMIインタフェース等である。I/Oインタフェース112を介して入力された映像信号はCPU102およびGPU104により表示可能に処理される。また、入力された映像信号は例えばHDD108に記録されてもよい。
【0016】
本実施形態の表示装置は、上記画像処理装置と表示部と、を備えている。
図2に、本実施形態の表示装置の表示部の一構成例を示す。本実施形態の表示部200は、水平方向1次元インテグラル・イメージング方式立体ディスプレイであって、各視点の投影方法を水平平行垂直透視投影とする。
【0017】
表示部200は、アレイ基板10と、アレイ基板10と対向して配置された対向基板20と、アレイ基板10と対向基板20との間に挟持された液晶層LQと、マトリクス状に配置された表示画素PXを含む表示領域DYPと、一対の偏光板30、40と、光線制御素子50と、を備え、表示領域DYPが対角12インチのノーマリホワイトの液晶表示パネルを含む。
【0018】
光線制御素子50は、例えばレンチキュラーシート(シリンドリカル・レンズ・アレイ)である。レンチキュラーシートは、第1方向D1の断面がユーザ側に凸状となるレンズが第1方向(水平方向)D1に並んだものである。表示領域DYPから出射された光は、レンチキュラーシートのレンズにより集光され、ユーザに視認される。したがって、ユーザはレンチキュラーシートにより拡大される、第2方向(列方向)D2に延びる視認領域の画像を視認することになる。
【0019】
また光線制御素子50はスリット・アレイであってもよい。スリット・アレイは、第2方向D2に延びる複数のスリット(図示せず)を備えている。スリット・アレイのスリットは、第1方向D1に周期的に並んで配置されている。スリットの間の領域では、表示領域DYPからの光が遮られる。ユーザは、スリット・アレイのスリットを通る表示領域DYPから出射された光を視認する。すなわち、ユーザは、スリットを介して第2方向D2に延びる視認領域の画像を視認する。
【0020】
光線制御素子50は、いずれも、第1方向D1において、ユーザが表示領域DYPを視認する位置により見える映像を異ならせる。したがって、例え光線制御素子50の同じ位置を見ていたとしても、ユーザの位置により異なる映像が見える。光線制御素子50は左右視差(水平視差)を与えるものであって、第2方向D2において同一の特性を備えるレンズあるいはスリットが、第1方向D1に並んでいる。
【0021】
アレイ基板10は、表示領域DYPにおいて各表示画素PXに配置された画素電極PEと、画素電極PEが配列する行に沿って延びる走査線Y(Y1、Y2、Y3、…)と、画素電極PEが配列する列に沿って延びる信号線X(X1、X2、X3、…)と、走査線Yと信号線Xとが交差する位置近傍に配置された画素スイッチSWと、を備えている。画素電極PEは、例えばITO(Indium Tin Oxide)等の透明な電極材料により形成されている。
【0022】
画素スイッチSWは例えば薄膜トランジスタを備えている。薄膜トランジスタは、アモルファスシリコンまたはポリシリコンにより形成された半導体層を備える。薄膜トランジスタのゲート電極は対応する走査線Yと電気的に接続されている(あるいは一体に形成されている)。薄膜トランジスタのソース電極は対応する信号線Xと電気的に接続されている(あるいは一体に形成されている)。薄膜トランジスタのドレイン電極は対応する画素電極PEと電気的に接続されている(あるいは一体に形成されている)。
【0023】
複数の走査線Yは、表示領域DYPの周囲に配置された走査線駆動回路(図示せず)と電気的に接続されている。複数の信号線Xは、表示領域DYPの周囲に配置された信号線駆動回路(図示せず)と電気的に接続されている。
【0024】
走査線駆動回路は複数の走査線Yを順次駆動して、表示画素PXの行毎に対応する画素スイッチSWを閉じてソース電極とドレイン電極との間を導通させる。信号線駆動回路は複数の信号線Xに対応する映像信号を印加して、閉じた画素スイッチSWを介して対応する画素電極PEに映像信号を印加する。
【0025】
表示領域DYPの周囲には、走査線駆動回路および信号線駆動回路へ制御信号を送信する配線や、信号線駆動回路へ映像信号を送信する配線等の各種配線が引き回され、各種配線はアレイ基板10の端部に設けられた接続部12と電気的に接続されている。アレイ基板10の接続部12には、外部と信号を送受信するためのフレキシブル基板(図示せず)の一端が電気的に接続可能である。アレイ基板10にはフレキシブル基板を介して外部信号源からの制御信号や映像信号が入力される。
【0026】
対向基板20は、複数の画素電極PEと対向する対向電極CEを備えている。対向電極CEは、例えばITO等の透明な導電体により形成されている。対向電極CEには図示しない対向電極駆動回路により対向電圧が印加される。
【0027】
液晶層LQはアレイ基板10と対向基板20との間に挟持されている。液晶層LQは、画素電極PEの電位と対向電極CEの電位との電位差により配向状態を制御される液晶分子(図示せず)を備えている。液晶分子の配向状態により、各表示画素PXを透過する偏光の振動方向が制御される。
【0028】
アレイ基板10と対向基板20との液晶層LQと接触する表面には、一対の配向膜10A、20Aが配置されている。配向膜10A、20Aの表面は必要に応じて所定の方向にラビング処理が施されている。アレイ基板10の液晶層LQと反対側の主面には偏光板30が配置されている。対向基板20の液晶層LQと反対側の主面には偏光板40が配置されている。
【0029】
カラー表示タイプの場合、複数の表示画素PXは複数種類の色表示画素、例えば赤(R)を表示する赤色画素、緑(G)を表示する緑色画素、青(B)を表示する青色画素を有している。すなわち、赤色画素は、赤色の主波長の光を透過する赤色カラーフィルタ(図示せず)を備えている。緑色画素は、緑色の主波長の光を透過する緑色カラーフィルタ(図示せず)を備えている。青色画素は、青色の主波長の光を透過する青色カラーフィルタ(図示せず)を備えている。これらカラーフィルタは、アレイ基板10または対向基板20の主面に配置される。
【0030】
続いて、上記表示装置において3次元映像を表示させる場合の動作の一例について説明する。GPU104は、表示部200に出力する複数視点の画像の形式をα値付きのRGB情報とする。
【0031】
図3に、表示部200に出力する輝度情報の一例について説明する図を示す。
図4に、表示部200に出力するα値の一例について説明する図を示す。α値は各画素の透明度を示す値であり、例えば0以上1以下の値である。GPU104は、カラー表示タイプの液晶表示パネルの場合、赤色画素、緑色画素および青色画素それぞれの輝度を8ビットで表した輝度情報と、3色の色画素の透過度を8ビットで表したα値とを、HDD108に保存する。図4に示す図では、例えば黒い部分は背景が透過する部分であり、白い部分は背景が透過しない部分である。図3に示す輝度情報と図4に示すα値とを合わせて表示部200に出力すると、所定の形式で2つのオブジェクトOBJ1、OBJ2が表示領域DYPに表示され、光線制御素子50を介して3次元映像として視認される。
【0032】
ここで、水平方向1次元インテグラル・イメージング方式立体ディスプレイにおいては、水平平行垂直透視投影を用いて表示対象を描画する事が可能であり、水平平行垂直透視投影とは、垂直方向に透視投影、水平方向には平行投影を行う投影方式である。
【0033】
また、水平方向1次元インテグラル・イメージング方式では、各視点の位置は水平方向に略1直線上にある。
【0034】
これらの特徴から、3次元映像を表示するディスプレイ面に平行な平面オブジェクトを複数視点分α値付き画像で描画し、α値のみ抽出して画像を比較すると、同一の画像となる。
【0035】
そこで、本実施形態では、この特徴を利用し、HDD108およびVRAM110に保持するα値を1視点分のみとし、保持データ量を削減している。具体的な処理の流れは次の通りとなる。
【0036】
図6にディスプレイ面に対して平行な平面オブジェクトを表示する際のGPU104の動作の一例を説明するためのフローチャートを示す。GPU104は、I/Oインタフェース112から入力された3次元表示用の映像信号やHDDに保存された映像が、ディスプレイ面に対して平行な平面オブジェクトであるか判断する。例えば、入力された3次元表示用の映像信号が例えば、水平方向、垂直方向および奥行き方向の3次元座標により表されている場合には、GPU104は、表示するオブジェクトが水平方向と垂直方向により規定されるディスプレイ面に対して直交する奥行き方向において、同じ位置にある平面オブジェクトであるか判断する。
【0037】
ディスプレイ面に対して平行な平面オブジェクトである場合には、GPU104は、第1視点での表示対象をα値付きで描画し(ステップ601)、他の視点での表示対象をα値なしで描画する(ステップ602)。
【0038】
図5に、第1視点乃至第N視点での輝度情報とα値との一例を示す。GPU104は第1視点での輝度情報とα値、および、第2視点乃至第N視点での輝度情報を画像データとしてHDD108に保存する(ステップ603)。
【0039】
続いて、GPU104は、HDD108に保存された全視点での画像データをVRAM110へ展開して(ステップ604)、α値を含む第1視点の画像データからα値を抽出する(ステップ605)。
【0040】
GPU104は、第1視点の画像データから抽出したα値を第2視点乃至第N視点の画像データに適用して、表示部200に対応する形式に変換して出力する(ステップ606)。
【0041】
一方、ディスプレイ面に対して平行な平面オブジェクトでない場合には、GPU104は、第1視点乃至第N視点での表示対象をα値付きで描画し、描画した輝度情報とα値とを画像データとしてHDD108に保存する。続いて、GPU104は、HDD108に保存された全視点での画像データをVRAM110へ展開し、表示部200に対応する形式に変換して出力する。
【0042】
上記のように、本実施形態の画像処理装置および表示装置によれば、ディスプレイ面に対して平行な平面オブジェクトを3次元表示する場合に、HDD108およびVRAM110で保持するα値を複数視点のうちの1視点分のみとすることにより、保持するデータ量を削減し、画像生成処理および変換処理における負荷を軽減することができる。その結果、処理速度が遅くなることにより3次元表示の品位が低下することを回避することができる。
【0043】
なお、本実施形態で削減されるデータ量は、1視点分の画像のα値のデータ量×(N−1)となるため画像データを生成する視点の数Nが多いほど効果的であり、9視点以上の画像データを生成する場合に、3次元映像の表示処理における負荷削減の効果が特に大きかった。
【0044】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0045】
D1…第1方向(水平方向)、D2…第2方向(垂直方向)、D3…第3方向(奥行き方向)、PE…画素電極、50…光線制御素子、100…画像処理装置、102…中央演算処理装置(CPU)、104…グラフィクス演算処理装置(GPU)、106…メインメモリ、108…ハードディスクドライブ(HDD)、110…ビデオRAM(VRAM)、112…I/Oインタフェース、200…表示部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像データの記録および読み出し可能なメモリと、
前記画像データを記録可能な記録手段と、
表示対象がディスプレイ面に対して平行な平面オブジェクトである場合に、第1視点においてα値と輝度情報とを含む画像を描画し、他の視点においてα値なしの輝度情報を含む画像を描画して複数視点における前記画像データを生成し前記記録手段に記録する演算手段と、を備える画像処理装置。
【請求項2】
前記演算手段は、前記記録手段に記録された複数視点の前記画像データを読み出して前記メモリへ展開し、前記第1視点における画像データから前記α値を抽出し、前記α値を前記他の視点における画像データに適用して出力する請求項1記載の画像処理装置。
【請求項3】
複数の表示画素を含む表示領域と、前記表示領域と対向して配置され、第2方向における同一特性を前記第2方向と略直交する第1方向に周期的に並べて配置して前記第1方向における視差を与える光線制御素子と、を備えた表示手段と、
画像データの記録および読み出し可能なメモリと、
前記画像データを記録可能な記録手段と、
表示対象がディスプレイ面に対して平行な平面オブジェクトである場合に、第1視点においてα値と輝度情報とを含む画像を描画し、他の視点においてα値なしの輝度情報を含む画像を描画して複数視点の前記画像データを生成し前記記録手段に記録する演算手段と、を備えた表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−257045(P2012−257045A)
【公開日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−128373(P2011−128373)
【出願日】平成23年6月8日(2011.6.8)
【出願人】(302020207)株式会社ジャパンディスプレイセントラル (2,170)
【Fターム(参考)】