説明

画像処理装置および記録データ生成方法

【課題】画像処理装置において、大きさが異なるドットごとに生成される記録データのデータ量を少なくする。
【解決手段】各記録ヘッドのデータを得るための量子化において、大ドット(5pl)の記録データを1画素当りのビット数が2ビットのデータとし、中、小ドット(2pl、1pl)の記録データを1画素当りのビット数が1ビットのデータとする。これにより、大、中、小ドットの1画素あたりのビット数が一律に2ビットのデータである場合に比べ、1画素当りのデータ量を削減できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像処理装置および記録データ生成方法に関し、詳しくは、大きさの異なるドットを形成して記録を行う記録装置で使用される記録データの生成に関するものである。
【背景技術】
【0002】
記録装置は、プリンタ、複写機、ファクシミリ等で記録を行う装置あるいはコンピュータやワードプロセッサ等を含む複合電子機器やワークステーション等の出力機器として用いられている。これらの記録装置は、画像情報(文字情報等すべての出力情報を含む)に基づいて用紙やプラスチック薄板等の記録媒体に画像等を記録するように構成されている。
【0003】
これらの記録装置の中でも、インクジェット方式の装置は、記録ヘッドから記録媒体にインクを吐出して記録を行うものである。この方式の記録装置は高精細化が容易で高速性、静粛性に優れ、また、安価に製造できるという、種々の利点を有している。インクジェット記録装置では、インク吐出口および液路を複数配列した吐出口列をインク色毎に備えた記録ヘッドが用いられる。そして、吐出口の数を多数配列した記録ヘッドを用いることにより、記録のスループットを向上させている。
【0004】
近年では、カラー記録の需要も高まり、銀塩写真に匹敵する高画質の記録を行うことができるカラーインクジェットプリンタも数多く提供されている。
【0005】
このような高画質記録が可能なインクジェット記録装置における一構成として、一つの色に対し複数の大きさのドットを形成して記録を行うものが知られている(特許文献1)。この構成によれば、画像のハイライト部では相対的に小さいドットを優先的に使用することによって粒状感を低減し、グレー(ダーク)部分では相対的に大きい記録ドットを優先的に使用することにより少ないドットで濃度を向上させることができる。
【0006】
さらに、特許文献2では、こうした複数の大きさのドットの記録データ生成について大きさの異なるドットごとに独立した量子化を行い、これにより、記録品位などに対するドット配置設計の自由度を向上させる提案をしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平10−016251号公報
【特許文献2】特開2002−301815号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献2に記載のように大きさの異なるドットごとに独立に記録データ生成を行う構成では、記録に用いるドットの大きさの種類に応じて生成されあるいは処理されるデータの量が多くなる。特許文献2に記載の例では、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)の各色について大、小の2種類の大きさのドットを用いるが、この場合、量子化によって生成する各色の大、小ドットの記録データは、それぞれ4ビットのデータとして生成される。このように、1つの色でドットの大きさの種類が1つ増すごとに4ビット分データ量が増すことになる。そして、このデータ量が多い場合次のような不都合を生じることがある。
【0009】
例えば、ホスト装置からプリンタに記録データを転送する際に、転送するデータ量が増すことによってプリンタ側の記録速度に転送が間に合わない事態が生じることがある。このように、記録装置の記録速度に対し記録データ転送が間に合わない場合は、記録装置は記録データの受信待ちとなり、記録途中で記録データ待ちが発生するたびに不規則に記録を停止する必要が生じる。その結果、スループットの低下や記録品位の低下を招くことになる。
【0010】
また、ホスト装置で記録データを生成する場合に限らず、記録装置内で記録データを生成する構成にあっても、処理するデータ量が多くなることは好ましくない場合がある。例えば、メモリの容量を記録に用いるドットの大きさの数に応じて大きくする必要があり、その結果、記録装置におけるメモリの使用が制限されるなどの弊害をもたらす。
【0011】
本発明は上記問題点を解消するためになされたものであり、その目的は、大きさが異なるドットごとに生成される記録データのデータ量を少なくすることが可能な画像処理装置および記録データ生成方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
そのために本発明では、第1のサイズのインク滴を吐出可能なノズルが配列された第1ノズル列と、前記第1ノズル列と同色で前記第1のサイズよりも小さい第2のサイズのインク滴を吐出可能なノズルが配列された第2ノズル列と、前記第1及び第2のノズル列と同色で前記第2のサイズよりも小さい第3のサイズのインク滴を吐出可能なノズルが配列された第3ノズル列とを備える記録ヘッドを用いて記録を行うための記録データを生成する画像処理装置において、前記第1ノズル列に対応した第1の記録データと、前記第2ノズルに対応した第2の記録データと、前記第3ノズルに対応した第3の記録データを生成する生成手段を有し、前記生成手段は、前記第1の記録データにおける単位画素に打ち込むインク滴の最大数が、前記第2の記録データにおける前記単位画素に打ち込むインク滴の最大数よりも大きく、且つ、前記第3の記録データにおける前記単位画素に打ち込むインク滴の最大数よりも大きくなるように生成することを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
以上の構成によれば、生成される記録データの全体のデータ量を少なくすることができ、データ転送に要する時間を短くすることや、記録データを格納するためのメモリ領域を小さくすることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の一実施形態に係わるインクジェットプリンタの概容を示す外観斜視図である。
【図2】図1に示したプリンタの制御構成を主に示すブロック図である。
【図3】図1に示したプリンタで用いられる記録ヘッドの詳細を示す模式図である。本発明の実施形態に係るノズル構成を説明するための模式図である。
【図4】図2に示すホスト装置において実行される記録データ生成を含む一連の画像処理の手順を示すフローチャートである。
【図5】本発明の一実施形態に係る色変換テーブルの内容を示す図である。
【図6】(a)は、本発明の第一の実施形態に係わる1画素当りの大、中、小ドットそれぞれの記録データのビット数などを示す図であり、(b)は、比較例に係る同様の図である。
【図7】(a)および(b)は、第一の実施形態に係わるビットデータとドット数との関係を示す図である。
【図8】本発明の第二の実施形態に係わる記録モードと1画素当りのビット数の関係を説明する図である。
【図9】(a)および(b)は、本発明の他の実施形態に関わる記録ヘッドの構成を説明するための模式図である。
【図10】(a)および(b)は、本発明の一実施形態に係わるそれぞれ色補正処理および色変換処理に用いるLUT(ルックアップテーブル)を説明するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を詳細に説明する。
(実施形態1)
インクジェット記録装置の説明
図1は、本発明の一実施形態に係わるインクジェットプリンタを示す外観斜視図である。図1に示すように、記録装置としてのインクジェットプリンタ1は、インクジェット方式に従ってインクを吐出する記録ヘッド3を着脱自在に搭載したキャリッジ2を備える。キャリッジ2は、伝達機構4を介して伝えられるキャリッジモータM1の駆動力をよって、矢印A方向に往復移動することができる。この移動によって、記録ヘッド3は記録紙などの記録媒体P上を走査することができる。そして、この走査の間に記録ヘッド3から記録媒体Pにインクを吐出することにより走査領域に対する記録を行う。この記録ヘッド3の走査領域に対応して、搬送される記録媒体を支持するプラテン(不図示)が設けられている。給紙機構5はこの走査領域に対して記録媒体を給紙する。また、記録媒体の搬送機構は、記録ヘッドの走査ごとに記録媒体を上記走査領域の幅に対応した距離だけ搬送する。このように記録ヘッドの走査と記録媒体の所定量の搬送を繰返すことにより、記録媒体全体に記録を行うことができる。
【0016】
キャリッジ2には、記録ヘッド3のほかこのヘッドに供給するインクを貯留したインクカートリッジ6が同様に着脱自在に装着される。本実施形態では、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)、ブラック(K)のインクをそれぞれ収容した4つのインクカートリッジを搭載している。記録ヘッド3はキャリッジ2に装着される際、双方の接合面が適正に接触して所要の電気的接続を達成維持できるようになっている。記録ヘッド3は、図4等で後述する画像処理によって生成される記録データに応じてインクを吐出する。本実施形態の記録ヘッド3は、熱エネルギーを利用してインクを吐出する方式を採用し、熱エネルギーを発生するための吐出口ごとに電気熱変換体を備える。すなわち、熱エネルギーをインクに与えることによって生じる膜沸騰による気泡の成長、収縮によって生じる圧力変化を利用して、吐出口からインクを吐出するものである。
【0017】
キャリッジ2は、キャリッジモータM1の駆動力を伝達する伝達機構4の駆動ベルト7の一部に連結されており、ガイドシャフト13に沿って矢印A方向に摺動自在に案内支持されている。これにより、キャリッジ2は、キャリッジモータM1の正転および逆転に応じてガイドシャフト13に沿って往復移動することができる。また、キャリッジ2の移動方向(矢印A方向)に沿ってキャリッジ2の位置を検出するためのスケール8が設けられている。本実施形態では、スケール8は透明なPETフィルムに必要なピッチで黒色のバーを印刷したものを用いており、その一方はシャーシ9に固着され、他方は板バネ(不図示)で支持されている。
【0018】
記録媒体Pの搬送機構は次のとおりである。図1において、14は搬送モータM2によって駆動される搬送ローラ、15はバネ(不図示)により記録媒体Pを搬送ローラ14に対して押圧するピンチローラをそれぞれ示す。また、16はピンチローラ15を回転自在に支持するピンチローラホルダ、17は搬送ローラ14の一端に固着された搬送ローラギアを示す。そして、搬送ローラギア17に中間ギア(不図示)を介して伝達された搬送モータM2の回転により、搬送ローラ14が駆動される。また、20は画像が形成された記録媒体Pを記録装置外へ排出するための排出ローラを示し、搬送モータM2によって駆動される。記録媒体Pは排出ローラ20に対してバネ(不図示)の不勢力を有した拍車ローラ(不図示)によって押圧される。22は拍車ローラを回転自在に支持する拍車ホルダを示している。
【0019】
インクジェット記録装置の制御構成
図2は、主に図1に示したプリンタの制御構成を示すブロック図である。
【0020】
図2において、210はプリンタで用いる記録データの供給源となるコンピュータを示し、データ供給源として、以下ではホスト装置と称される。ホスト装置210は、図4に示す画像処理を行って記録データを生成する。ホスト装置210はプリンタ1との間で、インターフェース(I/F)211を介し上記記録データの他、記録処理に関連したコマンド、ステータス信号等を送受信する。なお、ホスト装置は、画像読取り用のリーダやデジタルカメラなどとすることもできる。
【0021】
プリンタ1において、コントローラ200は、ホスト装置210から送られる記録データなどに基づいてプリンタ1における記録動作の制御を行う。具体的には、MPU201が、ROM202に格納されたプログラムに従ってデータ処理ないし各部の制御を実行する。記録データに基づくドットデータの生成は、図4などにて後述されるようにホスト装置210から送られる、量子化された記録データが示す階調値レベルに応じたインデックスパターンを用いて行う。そして、生成されたドットデータはRAM204に展開される。
【0022】
ROM202は上記プログラムの他、所要のテーブル、上記インデックスパターンデータなどの固定データを格納する。RAM204には、記録データの展開領域やプログラム実行のための作業用領域等が設けられる。特殊用途集積回路(ASIC)203は、MPU201の制御に従い、キャリッジモータM1の制御や搬送モータM2の制御、さらには記録ヘッド3の制御のための制御信号を生成する。システムバス205は、MPU201、ASIC203、RAM204を相互に接続してデータの授受を行うためのデータ経路である。また、A/D変換器206は、次に説明するセンサ群からのアナログ信号をA/D変換しその変換されたデジタル信号をMPU201に供給する。ASIC203は、記録ヘッド3による記録走査の際に、RAM204の記憶領域に直接アクセスし、そのドットデータに基づいて、記録ヘッドのドライバに対して電気熱変換体の駆動データを転送する。
【0023】
スイッチ群220は、電源スイッチ221、プリント開始を指令するためのプリントスイッチ222、及び記録ヘッド3のインク吐出性能を良好な状態に維持するための処理(回復処理)の起動を指示するための回復スイッチ223などを有する。これらのスイッチを介して操作者による指令入力を受けることができる。センサ群230は、ホームポジションを検出するためのフォトカプラなどの位置センサ231、環境温度を検出するために記録装置の適宜の箇所に設けられた温度センサ232等を有する。これらのセンサによって装置状態を検出することができる。キャリッジモータドライバ240は、キャリッジ2を矢印A方向に往復走査させるためのキャリッジモータM1の駆動を行う。搬送モータドライバ242は、記録媒体Pを搬送するための搬送モータM2の駆動を行う。
【0024】
記録ヘッド
図3は、本実施形態の記録ヘッド3の詳細を示す模式図である。図3において、301はシアンインク用の記録ヘッド、302はマゼンタインク用の記録ヘッド、303はイエローインク用の記録ヘッド、304はブラックインク用の記録ヘッドである。図に示すように、これらの記録ヘッドは、それぞれ吐出するインク滴の体積(量)が異なる吐出口(以下、ノズルとも言う)を備える。シアンヘッド301は、5pl(ピコリットル)のノズル(以下、“大ノズル”とも言う)のノズル列301a、2plのノズル(以下“中ノズル”とも言う)のノズル列301b、1plのノズル(以下“小ノズル”とも言う)のノズル列301cを備える。マゼンタヘッド302も、シアンと同様吐出されるインク滴の大きさが5pl、2pl、1plのノズル列を備える。イエローヘッド303およびブラックヘッド304は、それぞれ5plのノズル(大ノズル)と2plのノズル(中ノズル)のノズル列を備える。上記4色の記録ヘッドそれぞれのノズル列は、図3に示すように主走査(x)方向に並ぶ構成である。この記録ヘッド構成により、大、中、小の各ノズルから吐出されるインク滴によって形成されるドットはその大きさについて、それぞれ大ドット、中ドット、小ドットとなる。
【0025】
記録データ生成処理
図4は、ホスト装置210において実行される記録データ生成を含む一連の画像処理の手順を示すフローチャートである。
【0026】
図4において、最初にステップS401で、画像データ(R、G、B)(R:レッド、G:グリーン、B:ブルー)を入力する処理を行う。本実施形態では、この画像データは、1画素あたり、R、G、Bそれぞれが8ビットのデータで構成されている。次に、ステップS402で、画像データ(R、G、B)に対し色補正処理を行いそれぞれ8ビットの画像データ(R’、G’、B’)を得る。この色補正処理によって、上記入力した画像データの表示を行う機器が再現可能な色域から、本プリンタの再現可能な色域への変換を行う。本実施形態では、この色補正処理を、LUT(ルックアップテーブル)を用いて行う。図10(a)は、このLUТを模式的に示す図である。具体的には、LUTにおいて、入力する画像データ(R、G、B)によって定まる補間空間を構成する格子点データを用いて補間演算を行い、画像データ(R’、G’、B’)を求める。
【0027】
次に、ステップS403で色変換処理を行う。この処理は、画像データ(R’、G’、B’)を本プリンタ用いるインク色の記録データに変換する。この色変換処理は、画像データ(R’、G’、B’)の画素単位で行われる。本実施形態では、この色変換処理によって、記録ヘッドにおける大、中、小のノズルそれぞれについて記録データを得る。このように形成されるドットの大きさが異なることに対応して、ドットの大きさごとに記録データを得るような色変換を行う。具体的には、それぞれの色について大、中、小ノズルに対応したデータの組を求める。ここで、シアンについて、図3に示す大、中、小ノズルに対応したデータをそれぞれC、MC、SCとし、マゼンタについても同様、大、中、小ノズルに対応したれデータをそれぞれM、MM、SMとする。また、イエローについては大、中ノズルに対応したデータをそれぞれY、MYとし、ブラックについては大、中ノズルに対応したデータをそれぞれK、MKとする。このとき、本変換処理は、画像データ(R’、G’、B’)が示す色を表現する記録データ(C、M、Y、K、MC、MM、MY、MK、SC、SK)の組を求める処理である。この色変換処理も色補正処理と同様、LUTを用いて行なわれる。
【0028】
図10(b)は、色変換処理に用いるLUТを模式的に示す図である。また、図5は、図10(b)のLUTにおけるWhite−Cyanライン上の色を変換して得られる記録データ(C、M、Y、K、MC、MM、MY、MK、SC、SK)のうち、シアンの大、中、小ドットに対応するデータC、MC、SCの値を示す図である。ここで、縦軸の打ち込み量は、大ドットが2個を形成するときの打ち込み量を「255」としたときの大、中、小それぞれの打ち込み量を表している。この図5に示すようなLUTの内容は、画像データ(R’、G’、B’)が示す色の階調性などを考慮して統一的に定めたものである。従って、色変換によって大、中、小ドットに対応する記録データを個別に生成しそれらに基づいて以下に示すように独立して量子化を行っても、それによって得られるドットデータ基づいて記録される画像は、意図した階調性などの画像とすることができる。
【0029】
次のステップS404では、上記色変換処理によって得られたC、M、Y、K、MC、MM、MY、MK、SC、SMの各8ビットの記録データに対して量子化処理を行う。なお、量子化処理とは、N(Nは3以上の整数)ビットの記録データをNよりも小さいM(Mは1以上の整数)ビットの記録データに変換する処理をいう。これにより、量子化された記録データCd、Md、Yd、Kd、MCd、MMd、MYd、MKd、SCd、SMdを得る。本発明の実施形態では、以下に説明するように、大、中、小ドットに対応したデータごとに量子化処理を異ならせることにより、量子化によって得られる記録データのビット数を異ならせる。本例では、特に、大ドット用記録データの1画素あたりのビット数を、中、小ドット用記録データの1画素あたりのビット数とは異ならせる。これにより、大ドット用記録データが示す階調数を中、小ドット用記録データが示す階調数とは異ならせる。
【0030】
本実施形態の量子化処理では、大ドットに対応する記録データC、M、Y、Kは2ビットの記録データCd、Md、Yd、Kdに量子化される。また、中、小に対応する記録データMM、MY、MK、SC、SMは、それぞれ1ビットの記録データに量子化される。
【0031】
なお、これらの量子化処理は、ディザ法や誤差拡散法など公知の手法を用いるが、本発明の実施形態では量子化される記録データのビット数に応じて上記量子化の手法が異なることはもちろんである。この場合、図5に示す内容のテーブルにおいて考慮されている階調性などが維持されるようにドットの大きさごとの量子化が行われる。具体的には、図5にて上述したように、本実施形態の色変換テーブルは、600dpi×600dpiのサイズの1画素に対して2個の大ドットを形成するときの打ち込み量が255である。従って、例えばこの打ち込み量によって実現される階調値(濃度値)を基準として、大、中、小ドットそれぞれについてその打ち込み量による階調値を実現するように、ディザ法や誤差拡散法における閾値を定める。
【0032】
図6(a)は、記録ヘッドごとに本実施形態に係わる1画素(600dpi×600dpiのサイズ)当りの大、中、小ドットそれぞれの記録データのビット数などを示す図である。一方、図6(b)は、比較例に係る同様の図である。
【0033】
図6(b)に示す比較例に係る従来の量子化は、大きさの異なるドットについて量子化されたときのデータ量(ビット量)について特に考慮せず一律2ビットとしている。これに対し、本実施形態では、図6(a)に示すように、各記録ヘッドにおいて、記録するドットの大きさを相対的に大きいグループ(5pl)と相対的に小さいグループ(2pl、1pl)に分類する。そして、量子化では、ドットが相対的に大きいグループの1画素当りのビット数を2ビット、記録ドットが相対的に小さいグループの1画素当りのビット数を1ビットとする。
【0034】
これにより、比較例では、1画素当り:2[ビット]×10[色/ドットサイズ]=20[ビット]であるのに対し、本実施形態では、1画素当り:2[ビット]×4[色]+1[ビット]×6[色/ドットサイズ]=14[ビット]となる。このように、本実施形態によれば、比較例に対し1画素当り6ビット分のデータ量削減が可能となる。
【0035】
図7(a)および(b)は、ビットデータとドット数との関係を示す図である。図7(a)は1ビットデータが入力されたときのドット数を、図7(b)は2ビットデータが入力されたドット数をそれぞれ示している。
【0036】
図7(a)の1ビットデータの場合、出力階調は「0」か「1」の2通りである。本実施形態では入力データ「0」のときはドットを0ドット、入力データ「1」のときはドットを1ドット形成することを示している。すなわち、図6(a)に示すように、1ビットデータの場合、出力階調数を2としている。
【0037】
同様に図7(b)の2ビットデータの場合、出力階調は「00」「01」「10」「11」の4通りがある。それぞれの入力データに対する記録ドット数は0ドット、1ドット、2ドット、3ドットとする。すなわち、図6(a)に示すように、2ビットデータの場合、出力階調数を4としている。なお、上述したように、最大打ち込み量「255」に対して大ドットが2ドット形成されることから、これが大ドットの最大ドット数となり、従って、本実施形態では、大ドットが3ドット形成されることはない。
【0038】
以上のように、本実施形態では、同色で相対的に大きなドット(大ドット)よりも、相対的に小さなドット(中ドット、小ドット)のデータ量(ビット量)を少なくする。これにより、相対的に大きなドット(大ドット)よりも、相対的に小さなドット(中ドット、小ドット)の方が、1画素あたりに記録する最大ドット数が少なくなるようにしている。
【0039】
これは、
・大ドットが多いほど同じドット数で最大の打ち込みインク量を多くすることができ、高い濃度を出すのに有利な構成である、
・小ドットを形成する場合ほどつまり吐出量が少なくなるほどインク吐出が外乱に弱くなり、特に短時間に多数のドットを形成しようとすると着弾が乱れやすい、
・吐出量の種類が増してきていることから、吐出量の異なるドット間でのつなぎによる弊害が認識しづらくなっている、
ことから、1plや2plによる小、中ドットの1画素当りの数(すなわちビット数)を削減することが効果的であるからである。
【0040】
以上のように本実施形態によれば、相対的に小さいドットのための記録データの1画素あたりのビット数を相対的に大きいドットのための記録データの1画素あたりのビット数よりも少なくする。これにより、必要以上に画像品位や記録速度を低下することなく、記録データの量を少なくすることができる。 なお、本実施形態では、記録ドットの大きさを相対的に大きいグループを5pl、相対的に小さいグループを2plと1plとしているが、特にこれに限られないことはもちろんである。例えば、ドットの大きさを相対的に大きいグループを5plと2pl、相対的に小さいグループと1plとしてもよい。いずれの区分けが望ましいかは記録装置に求められる記録速度などから随時決定することができる。また、図7に示した各ビットに対するドット数、すなわち階調数も特に上記例に限定されない。
【0041】
再び図4を参照すると、ステップS404の量子化処理を終了すると、ホスト装置は量子化された記録データをプリンタ1に転送して記録を行わせる。
【0042】
これに対し、プリンタ1では、例えば特許文献2に記載されるようなドット配置を示すインデックスパターン(ドット配置パターン)を用いて、各記録ヘッドに供給するドット(2値)データを生成する。本実施形態では、600dpi×600dpiの解像度の量子化記録データに対して、1画素が1200dpi×1200dpiの解像度の、2画素×2画素のインデックスパターンを用いる。例えば、2ビットデータが示すドット数が2(出力階調値レベルが3)の場合、2画素×2画素のうち所定の2箇所にドットを配置したインデックスパターン(ドット配置パターン)を用いる。また、1ビットデータが示すドット数が1(出力階調値レベルが2)の場合、2画素×2画素のうち所定の1箇所にドットを配置したインデックスパターンを用いる。このインデックスパターンに対応して、本実施形態の各記録ヘッドは、図3に示したように、1200dpiの密度でノズルを配列したものである。また、これらの記録ヘッドの走査ではその走査方向において1200dpiの密度でドットを形成する周波数で記録ヘッドを駆動する。
(実施形態1の変形例)
実施形態1では、図3や図6にて示した通り、同色でサイズの異なる複数種類のドットとして、大ドット、中ドット、小ドットの3種類を用いる場合について説明した。しかし、本発明では上述の3種類に限定されるものではない。
例えば、同色でサイズの異なる複数種類のドットとして、大ドットと小ドットの2種類を用いる形態であってもよい。大ドットと小ドットの2種類を用いる形態の場合、小ドット用の記録データの1画素あたりのビット数を、大ドット用の記録データの1画素あたりのビット数よりも少なくする。
また、別の形態として、同色でサイズの異なる複数種類のドットとして、大ドット(5pl)、中ドット(3pl)、小ドット(1pl)、極小ドット(0.5pl)の4種類を用いる形態であってもよい。この4種類を用いる形態の場合、小ドット、極小ドット用の記録データの1画素あたりのビット数を、大ドット、中ドット用の記録データの1画素あたりのビット数よりも少なくする。
(実施形態2)
上述した実施形態1では、図7(a)に示したように1ビットデータの中ドットや小ドットは600dpiの1画素に対し1ドットまでしか形成できない。しかし、画質向上の点で2ドットまで形成可能な構成が望ましいことがある。例えば、使用し始めでは、中ドットよりも極力小ドットで記録を行ったほうがドットの入りだしを目立たなくさせることができ、粒状感の低減や擬似輪郭発生の抑止が可能となるからである。また、記録速度が遅いほど記録データのデータ量を大きくすることができる。これは、記録速度が遅いほど、その記録の間の記録データの転送速度を遅くすることができるからである。プリンタにおいて、画質の点で「標準」と「きれい」を選択可能な場合、通常、「きれい」モードでは画質を向上させ、その代償に記録速度が「標準」より劣ることが多い。これは、記録における優先度を速度より画質におくからである。
【0043】
本実施形態では、図8に示すように、ホスト装置のプリンタドライバにユーザーが記録モードを選択可能な機能を用意し、プリンタドライバを介して選択された記録モードに応じて記録データ生成時の色毎(ノズル毎)のビット数を切り替える。
【0044】
具体的には、プリントドライバによって選択可能な記録モードを「標準」と「きれい」とする。「標準」モード選択時は、上記実施形態1のように、ドットの大きさが相対的に小さいもののデータ量(ビット量)を小さくする。一方、「きれい」モード選択時は、図6(b)に示したように、総てのドットに対し同じデータ量(ビット量)を割り当て、中、小ドットの出力階調数を3とする。
【0045】
以上のように本実施形態によれば、記録モードの記録速度に応じてデータ量を変更するため、必要以上に画像品位や記録速度を低下することを回避することが可能となる。
【0046】
なお、本実施形態ではプリンタドライバにより選択可能な記録モードを2種類(「標準」と「きれい」)としているが、特にこれに限定されないことはもちろんである。例えば、選択可能な記録モードの種類は3種類以上であってもよい。本実施形態の意図する効果が得られる限りにおいて、例えばプリンタドライバで選択可能な記録用紙の種類や、用紙サイズによってデータ量を切り替えてもよい。
(実施形態3)
図4に示した一連の画像処理を行うホスト装置(画像処理装置)210とインクジェットプリンタとは、図2のようにインターフェース211を介して接続される。近年のインクジェットプリンタでは多様化したインターフェース(以下、”I/F”とも記載する)の多くに対応するようになって来ている。代表的なI/Fとして、USB(Universal Serial Bus)のようなデータ転送速度が高速なI/Fから、比較的低速なIrDA、さらに低速なBT(BlueTooth)などがある。
【0047】
これらI/Fに関して、上記実施形態1、2を流用しそれらの実施形態と同様の効果を得ることが可能である。低速I/Fを実施形態2の「標準」、高速I/Fを「きれい」と置き換えて考え、低速のI/Fを用いるときは実施形態1のようにドットの大きさが相対的に小さいもののデータ量(ビット量)を小さくする。また、高速I/Fを用いるときは図6(b)のように総てのドットに対し同じデータ量(ビット量)を割り当てる。このように使用されているインターフェースの種類を判別し、インターフェースの種類に応じて生成する記録データのビット数を変えることにより、先の実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0048】
以上のように本実施形態によれば、第1のインターフェース(例えば、USB)よりも転送速度が遅い第2のインターフェース(例えば、BT)が使用されている場合、小ドット用記録データのビット数を大小ドット用記録データのビット数よりも小さくする。
【0049】
また、I/Fに対するデータ生成方法の切り分けは、I/Fによって、特に無線系ではその接続状況によって転送レートが変動するなど、一概に転送レートを決定することができない場合がある。このような場合には、PC(ホストコンピュータ)からプリンタへダミーデータを転送し受信後PCへ情報を返却し、その時間から判定しデータ量をいずれで処理するのが最適化判断するなどの構成も効果的である。
(他の実施形態)
上記各実施形態に示す記録データ生成を含む画像処理は、ホスト装置において実行されるものであるが、本発明の実施形態がこれに限定されないことはもちろんである。プリンタなどの記録装置において実行されてもよく、特に本発明の一実施形態に係る量子化処理が記録装置において実行されてもよい。この場合、当該記録装置が画像処理装置を構成することになる。また、記録装置が画像処理装置として機能する場合、実施形態2で説明した記録モードの選択も記録装置側にて実行可能に構成するのが好ましい。
【0050】
また、上記各実施形態は、同じ色(同じ色相)で大きさが異なるドットを用いる場合について説明したが、本発明の実施形態はこれに限られない。同系色で色材濃度が異なるインク(いわゆる、濃淡インク、濃中淡インク)を用いて記録されるドット(つまり、同系色で濃度が異なるドット)を用いる場合についても、同様に本発明を適用できる。この場合、淡インクで記録される淡ドットのための記録データの1画素あたりのビット数を、濃インクで記録される濃ドットのための記録データの1画素あたりのビット数よりも小さく構成する。
【0051】
さらに、上記実施形態は総て図3に示した記録ヘッドを用いたプリンタに係るものである。しかし、特にこのヘッド構成に限るものではない。例えば図9(a)に示すように同色(同一色相)について少なくとも2つの異なる吐出量をもつ記録ヘッドを用いた記録装置であれば本発明を適用することができる。また、図9(b)のようなシアン、マゼンタ、イエローの5plが2列ずつあるような場合、各色2列を一つの色として処理しても、別のノズル列と処理してもよい。
【0052】
以上の実施形態のように記録データ量を削減することは、ネットワーク上でプリンタを共有設定する場合にも、巨大なプリントデータが送信されるのは望ましくないのでこうした点に対しても効果的である。
(さらに他の実施形態)
本発明は、上述した実施形態の機能を実現する、図4に示した一連の画像処理の一部に相当する量子化処理403を実現するプログラムコード、またはそれを記憶した記憶媒体によっても実現することができる。また、システムあるいは装置のコンピュータ(またはCPUやMPU)が記憶媒体に格納されたプログラムコードを読出し実行することによっても達成される。この場合、記憶媒体から読み出されたプログラムコード自体が前述した実施形態の機能を実現することになり、そのプログラムコードを記憶した記憶媒体は本発明を構成することになる。
【0053】
プログラムコードを供給するための記憶媒体としては、例えば、フロッピー(登録商標)ディスク、ハードディスク、光ディスク、光磁気ディスク、CD−ROM、CD−R、磁気テープ、不揮発性のメモリカード、ROMなどを用いることができる。
【0054】
また、コンピュータが読み出したプログラムコードを実行することにより、前述した実施形態の機能が実現されるだけでなく、そのプログラムコードの指示に基づき、コンピュータ上で稼動しているOSが実際の処理の一部または全部を行うものであってもよい。
【0055】
更に、プログラムコードが、コンピュータに挿入された機能拡張ボードやコンピュータに接続された機能拡張ユニットに備わるメモリに書き込まれた後、そのプログラムコードの指示に基づき、CPUなどが実際の処理の一部または全部を行うものであってもよい。
【符号の説明】
【0056】
1 インクジェットプリンタ
3 記録ヘッド
200 コントローラ
201 MPU
202 ROM
204 RAM
210 ホスト装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1のサイズのインク滴を吐出可能なノズルが配列された第1ノズル列と、前記第1ノズル列と同色で前記第1のサイズよりも小さい第2のサイズのインク滴を吐出可能なノズルが配列された第2ノズル列と、前記第1及び第2のノズル列と同色で前記第2のサイズよりも小さい第3のサイズのインク滴を吐出可能なノズルが配列された第3ノズル列とを備える記録ヘッドを用いて記録を行うための記録データを生成する画像処理装置において、
前記第1ノズル列に対応した第1の記録データと、前記第2ノズルに対応した第2の記録データと、前記第3ノズルに対応した第3の記録データを生成する生成手段を有し、
前記生成手段は、前記第1の記録データにおける単位画素に打ち込むインク滴の最大数が、前記第2の記録データにおける前記単位画素に打ち込むインク滴の最大数よりも大きく、且つ、前記第3の記録データにおける前記単位画素に打ち込むインク滴の最大数よりも大きくなるように生成することを特徴とする画像処理装置。
【請求項2】
前記第2の記録データにおいて単位画素に打ち込むインク滴の最大数は1であり、前記第3の記録データにおいて単位画素に打ち込むインク滴の最大数は1であることを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項3】
第1のサイズのインク滴を吐出可能なノズルが配列された第1ノズル列と、前記第1ノズル列と同色で前記第1のサイズよりも小さい第2のサイズのインク滴を吐出可能なノズルが配列された第2ノズル列と、前記第1及び第2のノズル列と同色で前記第2のサイズよりも小さい第3のサイズのインク滴を吐出可能なノズルが配列された第3ノズル列とを備える記録ヘッドを用いて記録を行うための記録データを生成する記録データ生成方法において、
前記第1ノズル列に対応した第1の記録データと、前記第2ノズルに対応した第2の記録データと、前記第3ノズルに対応した第3の記録データを生成する生成工程を有し、
前記生成工程は、前記第1の記録データにおける単位画素に打ち込むインク滴の最大数が、前記第2の記録データにおける前記単位画素に打ち込むインク滴の最大数よりも大きく、且つ、前記第3の記録データにおける前記単位画素に打ち込むインク滴の最大数よりも大きくなるように生成することを特徴とする記録データ生成方法。
【請求項4】
前記第2の記録データにおいて単位画素に打ち込むインク滴の最大数は1であり、前記第3の記録データにおいて単位画素に打ち込むインク滴の最大数は1であることを特徴とする請求項3に記載の記録データ生成方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−207230(P2011−207230A)
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−131603(P2011−131603)
【出願日】平成23年6月13日(2011.6.13)
【分割の表示】特願2006−227179(P2006−227179)の分割
【原出願日】平成18年8月23日(2006.8.23)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.Bluetooth
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】