説明

画像処理装置及びプログラム

【課題】コスト低減を図りつつ画像データの出力に係る処理の高速化を図る。
【解決手段】ページ記述言語データから生成されたDLデータに基づいて、複数種類の画像処理(ラスタライズ、重ね合せ、ハーフトーン処理)を実行して印刷データを生成する画像処理装置であって、複数種類の画像処理を予め設定された処理順番で実行するCPU11と、複数種類の画像処理のうち予め設定された画像処理(ハーフトーン処理)が実行可能なDSP18と、を備え、CPUは、DSP想定処理時間とCPU想定処理時間と、を算出し、DSP想定処理時間がCPU想定処理時間よりも短い場合、処理順番を変更して、予め設定された画像処理をDSPに実行させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像処理装置及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、MFP(Multi Function Peripheral)やプリンタ等の画像形成装置においては、一層の低価格化が求められており、コストを低く抑えることを重視した製品の開発の必要性が高まっている。コストを低く抑えるための一手法として、画像形成装置に搭載するCPU(Central Processing Unit)として、安価なものを採用する手法がある。しかし、安価なCPUは、一般に演算性能が低いため、画像形成装置の動作の低速化等の性能低下が生じてしまう。
【0003】
そこで、1回の命令で複数のデータに対する処理を同時に行うSIMD(Single Instruction/Multiple Data)演算が可能なDSP(Digital Signal Processor)等の補助演算処理装置を用いて、CPUの処理負担を軽減することにより処理の高速化を実現する方法が考案されている。
【0004】
例えば、画像形成装置での複数の処理を同時的に実行して処理の実行停滞の発生を防止するためにCPUとDSPとを備えた画像形成装置であって、実行中の画像処理と新たに発生した画像処理との優先度を比較し、優先度の高い画像処理をDSPが実行し、優先度の低い画像処理をCPUが実行する技術が開示されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−221520号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、補助演算処理装置を用いて処理を行う場合、補助演算処理装置で行う処理とは別に、補助演算処理装置の起動及び終了処理、補助演算処理装置内のローカルメモリへのプログラム及びデータ転送等の、補助演算処理装置を用いるための準備処理が必要となる。
【0007】
従って、特許文献1のように、CPUで行なっていた処理をDSPに置き換えることにより高速化を図る場合には、DSPを用いるための準備処理の時間が、CPUでの処理時間とDSPでの処理時間との差の時間よりも短い必要がある。そのため、特許文献1のように、CPU及びDSPにおいて共通のデータを用いて同様の処理を行い、CPUがソフトウェアで行っていた処理を、DSPによる処理に単に置き換えるだけでは、処理の高速化を図ることが実現できないばかりか、処理時間が長くなり低速化する場合がある。
【0008】
本発明の課題は、コスト低減を図りつつ画像データの出力に係る処理の高速化を図ることである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1に記載の発明は、ページ記述言語形式のデータから生成された中間言語形式のデータに基づいて、複数種類の画像処理を実行して印刷用のデータを生成する画像処理装置であって、前記複数種類の画像処理を予め設定された処理順番で実行する主演算処理部と、前記複数種類の画像処理のうち予め設定された画像処理が実行可能な補助演算処理部と、を備え、前記主演算処理部は、前記中間言語形式のデータに対して前記補助演算処理部において実行される前記予め設定された画像処理に要する第1の時間と、前記中間言語形式のデータに対して当該主演算処理部において実行される前記予め設定された画像処理に要する第2の時間と、を算出し、前記第1の時間が前記第2の時間よりも短い場合、前記処理順番を変更して、前記予め設定された画像処理を前記補助演算処理部に実行させること、を特徴とする画像処理装置である。
【0010】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の画像処理装置において、前記複数種類の画像処理には、ラスタライズ処理、重ね合わせ処理、ハーフトーン処理が含まれており、前記予め設定された画像処理は、前記ハーフトーン処理であり、前記処理順番は、前記ラスタライズ処理の後段に前記重ね合わせ処理、前記重ね合わせ処理の後段に前記ハーフトーン処理に設定されており、前記主演算処理部は、前記第1の時間が前記第2の時間よりも短い場合、前記処理順番のうち、前記重ね合わせ処理と前記ハーフトーン処理との順番を入れ替え、前記ハーフトーン処理を前記補助演算処理部に実行させる。
【0011】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の画像処理装置において、前記中間言語形式のデータはバンド単位で生成され、前記主演算処理部は、前記第1の時間と前記第2の時間とをバンド単位で算出し、当該第1の時間が当該第2の時間よりも短い場合、バンド単位で前記複数種類の画像処理の処理順番を変更し、前記予め設定された画像処理を前記補助演算処理部に実行させる。
【0012】
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の画像処理装置において、前記主演算処理部は、前記第1の時間及び前記第2の時間は、1バンド内の前記中間言語形式のデータのデータサイズに係る情報に基づいて算出する。
【0013】
請求項5に記載の発明は、請求項4に記載の画像処理装置において、前記主演算処理部は、前記第1の時間と前記第2の時間との比較結果に加え、前記印刷用のデータの解像度、1バンドに含まれる前記中間言語形式のデータの数、1バンドに含まれる前記中間言語形式のデータの種類、1バンドに含まれる前記中間言語形式のデータの色数のうち少なくとも一つに基づいて、前記処理順番のうち、前記重ね合わせ処理と前記ハーフトーン処理との順番を入れ替え、前記ハーフトーン処理を前記補助演算処理部に実行させる。
【0014】
請求項6に記載の発明は、コンピュータを、ページ記述言語形式のデータから生成された中間言語形式のデータに基づいて、複数種類の画像処理を予め設定された処理順番で実行して印刷用のデータを生成する主演算処理手段、前記複数種類の画像処理のうち予め設定された画像処理が実行可能な補助演算処理手段、として機能させ、前記主演算処理手段を、前記中間言語形式のデータに対して前記補助演算処理部において実行される前記予め設定された画像処理に要する第1の時間と、前記中間言語形式のデータに対して当該主演算処理手段において実行される前記予め設定された画像処理に要する第2の時間と、を算出し、前記第1の時間が前記第2の時間よりも短い場合、前記処理順番を変更して、前記予め設定された画像処理を前記補助演算処理手段に実行させる手段、として機能させるプログラムである。
【発明の効果】
【0015】
請求項1、6に記載の発明によれば、予め設定された画像処理に要する時間が、主演算処理装置で実行する場合よりも補助演算処理装置で実行した場合の方が短い場合のみ、主演算処理装置が実行する複数の画像処理のうち予め設定された画像処理を補助演算処理装置に実行させて予め設定された画像処理に要する時間を短縮できるため、補助演算処理装置を備えることによるコスト低減と画像データの出力に係る処理の高速化とを実現することができる。
【0016】
請求項2に記載の発明によれば、請求項1と同様の効果を得られるのは勿論のこと、第1の時間が第2の時間よりも短い場合、重ね合わせ処理とハーフトーン処理との順番を入れ替えて、ハーフトーン処理を補助演算処理部に実行させることができるため、ハーフトーン処理に要する時間を短縮でき、高速化を実現できる。
【0017】
請求項3に記載の発明によれば、請求項1又は2と同様の効果を得られるのは勿論のこと、バンド単位で、予め設定された画像処理に要する時間を短縮できる。
【0018】
請求項4に記載の発明によれば、請求項3と同様の効果を得られるのは勿論のこと、第1の時間及び第2の時間を、1バンド内の中間言語形式のデータのデータサイズに係る情報に基づいて算出することができる。
【0019】
請求項5に記載の発明によれば、請求項4と同様の効果を得られるのは勿論のこと、第1の時間と第2の時間との比較結果に加え、印刷用のデータの解像度、1バンドに含まれる中間言語形式のデータの数、1バンドに含まれる中間言語形式のデータの種類、1バンドに含まれる中間言語形式のデータの色数のうち少なくとも一つに基づいて、重ね合わせ処理とハーフトーン処理との順番を入れ替え、ハーフトーン処理を前記補助演算処理部に実行させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】画像処理装置を含むネットワーク構成図である。
【図2】画像処理装置の主要構成図である。
【図3】ジョブデータに基づいて印刷データを生成する処理のフローチャートである。
【図4】描画処理のフローチャートである。
【図5】DSPにおいて実行されるハーフトーン処理のフローチャートである。
【図6】サイズ関連パラメータの例である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図を参照して本発明の実施の形態を詳細に説明する。
まず、構成を説明する。
図1に、本実施の形態における画像処理装置1を含むネットワーク構成図を示す。
【0022】
複数の画像処理装置1は、ネットワーク回線3を介して複数の外部装置2と通信可能に接続されている。
ネットワーク回線3は、画像処理装置1及び外部装置2によるネットワークを構成する。ネットワーク回線3は、画像処理装置1及び外部装置2を通信可能に接続するものであればその形態を問わない。例えば、ネットワーク回線3は、イーサネット(登録商標)、同軸ケーブル、光ファイバー等の有線接続回線や、無線通信を実現するための各種規格等、そのいずれか又は複数の組み合わせであってもよい。また、ネットワーク回線3は、LAN(Local Area Network)、インターネット、その他のネットワーク規模を問わない。
【0023】
図2に、画像処理装置1の主要構成図を示す。図1に示す複数の画像処理装置1は、全て同じ構成によるものであり、以下一つの画像処理装置1について説明する。
本実施の形態における画像処理装置1は、読取対象原稿(以下、原稿と称す)から画像を読み取り、読み取った画像を処理対象紙としての枚葉紙等の記録媒体(以下、用紙と称す)に画像形成するコピー機能や、パーソナルコンピュータ等の外部装置2からジョブデータを受信し、受信したジョブデータに基づいて用紙上に画像を形成して出力するプリンタ機能等を備えた画像形成装置としての機能も有する。
【0024】
図2に示すように、画像処理装置1は、CPU(Central Processing Unit)11、RAM(Random Access Memory)12、ROM(Read Only Memory)13、ストレージデバイス14、操作表示部15、プリント部16、通信部17、DSP(Digital Signal Processor)18等を備え、各部は、バス19により接続されている。
【0025】
CPU11は、ROM13内に格納されている各種処理プログラムやデータをRAM12やストレージデバイス14に展開し、当該プログラムに基づいて画像処理装置1の各部の動作を集中制御する主演算処理装置として機能する。例えば、操作表示部15や、通信部17と接続された外部装置2から入力される指示信号に従って、コピーモード、プリントモード、スキャナモードを切り替え、各モードに対する処理プログラムを読み出して、複写、印刷、画像データの読取等の各種制御を行う。
【0026】
また、CPU11は、RAM12、ROM13又はストレージデバイス14との協働により、ポストスクリプト(登録商標)やPCL等の画像データ(以下、PDLデータと称す。)や、PDF(Portable Document Format)やXPS(XML Paper Specification)等の画像データ(以下、PDLデータ及びPDF,XPL等の画像データを総称してページ記述言語データと称す)に基づいて、形式の異なる複数のデータの生成及び保存を行う。
【0027】
詳しくは、CPU11は、まず、ページ記述言語データを解釈して当該ページ記述言語データと印刷用のデータ(以下、印刷データと称す)との間の中間言語形式のデータ(以下、DLデータと称す)をバンド単位で生成してRAM12内に保存させる。
印刷データとしては、例えば、ビットマップ形式等の画像データである。
【0028】
DLデータは、ページ記述言語データに含まれるオブジェクト(テキスト(Text)、グラフィックス(Graphics)、イメージ(Image)等)の特徴に応じた種類毎、色毎に生成される画像データである。例えば、DLデータの種類としては、テキストやグラフィックスのDLデータとしてはベクタ形式のデータ、イメージのDLデータとしてはイメージ形式のデータ、を挙げることができる。
【0029】
更にCPU11は、生成したDLデータに対して複数種類の画像処理(ラスタライズ処理、重ね合せ処理、ハーフトーン処理等)を予め設定された処理順番で実行し、印刷データを生成してRAM12に保存させる。
本実施の形態での処理順番としては、ラスタライズ処理の後段に重ね合わせ処理、重ね合わせ処理の後段にハーフトーン処理、とする。
【0030】
ラスタライズ処理では、DLデータがビットマップ形式の画像データに変換されることによりイメージデータが生成される。
【0031】
重ね合わせ処理は、各DLデータに対してラスタライズ処理後に実行される。重ね合わせ処理では、1バンドの描画領域内において、1つのDLデータに基づいてイメージデータが生成されると、当該イメージデータが当該描画領域内において重ね合わされる。具体的には、まず、1つ目のDLデータのラスタライズ後、当該DLデータが含まれるバンドに対するイメージデータの領域に、1つ目のDLデータのイメージデータが重ね合わされる。次に、2つ目のDLデータのラスタライズ後、1つ目のDLデータのイメージデータが重ね合わされたバンドのイメージデータの領域に、2つ目のDLデータのイメージデータが重ね合わされる。このように、1つのバンド内で、当該バンドに含まれるDLデータのイメージデータが生成される度に、重ね合わせ処理が実行される。
【0032】
ハーフトーン処理では、ビットマップ形式の画像データであるイメージデータと、当該イメージデータのオブジェクトの種類、色情報等に応じて個別に設けられたハーフトーンテーブルとに基づいて、中間階調が表現された印刷データが生成される。生成される印刷データは、プリント部16による画像形成処理が可能となるデータである。
【0033】
DLデータに対する複数の画像処理は、バンド単位又はページ単位で行われる。
1ページ分の印刷内容は、複数のバンドによって構成されている。
各バンドは、複数のラインの組によって構成されており、バンドを構成するライン数がバンド幅と称される。ラインとは、画像を構成する画素を所定の一方向(例えば、画像の主走査方向)に配列した画素の集合であり、この一方向に配列された画素数がページ幅と称される。このラインの方向と直交する一方向(例えば、画像の副走査方向)にライン数だけラインを並べて組み合わせることで1バンド分の画像が構成される。
【0034】
また、本実施の形態のCPU11は、RAM12、ROM13又はストレージデバイス14との協働により、バンド単位でDLデータに対するDSP想定処理時間とCPU想定処理時間とを算出する。そして、CPU11は、DSP想定処理時間がCPU想定処理時間よりも短いバンドに対して、重ね合わせ処理とハーフトーン処理との順番を入れ替えて処理順番を変更し、予め設定された画像処理(本実施の形態では、ハーフトーン処理)をDSP18に実行させる。
【0035】
DSP想定処理時間は、生成された1バンド分のDLデータに対してDSP18において実行されるハーフトーン処理に要する時間(第1の時間)である。
CPU想定処理時間は、生成された1バンド分のDLデータに対してCPU11において実行されるハーフトーン処理に要する時間(第2の時間)である。
【0036】
RAM12は、画像形成に係るデータ等、各種プログラムで処理されたデータ等を一時的に記憶する。RAM12に替えて、HDD(Hard Disk Drive)、MRAM(Magnetic Random Access Memory)又はフラッシュメモリなどの読み書き可能な揮発性又は不揮発性記憶媒体を用いてもよい。
【0037】
ROM13は、画像形成に係る各種処理プログラム、画像形成に係るデータ、各種プログラムで処理されたデータ等を記憶する。また、ROM13は、CPU11及びRAM12との協働により本実施の形態の各処理を実現させるためのプログラムやデータを記憶している。ROM13に替えて、例えば、磁気的、光学的記憶媒体又は半導体メモリ等の読み出し可能な不揮発性の記憶媒体を用いてもよい。また、このROM13は、制御基板等に固定的に設けられるもの、若しくは着脱自在に装着するものであっても良い。
【0038】
ストレージデバイス14は、オペレーションプログラムや各種のアプリケーションプログラム及びジョブデータ等の各種データを所定のアドレスと対応付けて記憶する。ストレージデバイス14に替えて、例えば、HDDやCF(Compact Flash)等の読み書き可能な不揮発性の記憶媒体を用いてもよい。
【0039】
操作表示部15は、赤外線式や静電式のタッチパネル及びハードキーから構成される。タッチパネルは、LCD(Liquid Crystal Display)等から構成される表示部に重畳して設けられる。表示部には、画像処理装置1の各種操作画面や各種操作案内が表示される。
【0040】
プリント部16は、電子写真プロセス等により各種の画像形成を行う公知の画像形成機構から構成されるものであり、各色(例えば、イエロー(Y)、マゼンダ(M)、シアン(C)、ブラック(K))の印刷データに基づく画像を用紙等に形成して出力する。
【0041】
通信部17は、画像処理装置1を外部の通信回線(例えば、ネットワーク回線3)と接続させて、外部装置2との通信を可能とする。通信部17は、例えばNIC(Network Interface Card)等であり、通信回線の種類に応じた接続を可能とする装置を用いることができる。
【0042】
DSP18は、例えばASIC(Application Specific Integrated Circuit)等で構成されたハーフトーン処理を行うことが可能なハードウェアであり、補助演算処理装置として機能する。DSP18は、ローカルメモリ18Aを有し、ローカルメモリ18Aの記憶領域を用いてデータの読み出しやハーフトーン処理等を行う。
なお、DSP18は、画像処理装置1に対して着脱可能に設けられてもよく、また、複数のDSP18を一つの画像処理装置1に対して設けてもよい。
【0043】
次に、本実施の形態の動作を説明する。
図3に、受信したジョブデータに基づいて印刷データを生成する処理のフローチャートを示す。図3に示す処理は、CPU11と画像処理装置内の各部との協働により実行されるものである。
【0044】
まず、外部装置2から送信されたジョブデータが通信部17によって受信され(ステップS1)、受信されたジョブデータ対して解析処理が施される(ステップS2)。
【0045】
ステップS2の解析処理では、ジョブデータに含まれるページ記述言語データに基づいてDLデータがバンド単位でオブジェクト毎(種類毎)に生成され、当該生成されたDLデータがRAM12又はストレージデバイス14の記憶領域のうち仮想メモリとして用いられる記憶領域に格納される。この解析処理は、CPU11が解析処理を行うためのプログラム、データ等をROM13又はストレージデバイス14から読み出してRAM12に展開して実行するものである。
【0046】
また、1バンド分のDLデータの生成中に、当該1バンド内の各DLデータに関するサイズ関連パラメータが取得され、仮想メモリに格納される。具体的には、各DLデータが生成される際に、生成されたDLデータのサイズ、種類、解像度及び色情報等が取得され、1バンド毎に仮想メモリに格納される。
従って、各バンドのサイズ関連パラメータには、バンド内のDLデータのデータサイズに係る情報や、当該バンドに基づく画像の解像度、バンド内に含まれるDLデータの数、バンド内に含まれる各DLデータの種類、DLデータの色数等の情報が含まれている。
DLデータのデータサイズに係る情報としては、例えば、1バンド分のページ幅及びバンド幅、各DLデータのサイズ等である。
【0047】
1ページ分のDLデータの生成が完了したか否か、即ち、仮想メモリ内に1ページ分の印刷内容に対応した分のDLデータが格納されたか否かが判別される(ステップS3)。1ページ分のDLデータの生成が完了していない場合(ステップS3;NO)、ステップS2の処理に戻る。なお、1ページ分の印刷内容とは、例えば所定サイズ(例えばA4)の用紙1ページ分の印刷内容等を指す。
【0048】
1ページ分のDLデータの生成が完了した場合(ステップS3;YES)、DLデータに描画処理が施される(ステップS4)。
【0049】
ステップS4の描画処理では、DLデータに基づいてラスタライズ処理、重ね合わせ処理、ハーフトーン処理等の複数種類の画像処理が行われ、印刷データが生成される。
この描画処理は、基本的にはCPU11が各種処理内容に応じたプログラム、データ等をROM13又はストレージデバイス14から読み出してRAM12に展開して実行するものであるが、後述する比較結果に応じて、所定の画像処理(本実施の形態ではハーフトーン処理)をDSP18に実行させるものである。本実施の形態における描画処理の詳細については、後述する。
【0050】
1ページ分の印刷データの生成が完了したか否か、即ち、仮想メモリ内に1ページ分の印刷データが格納されたか否かが判別される(ステップS5)。1ページ分の印刷データの生成が完了していない場合(ステップS5;NO)、ステップS4の処理に戻る。
【0051】
1ページ分の印刷データの生成が完了した場合(ステップS5;YES)、当該印刷データがプリント部16に出力され、1ページ分の画像形成処理が実行される(ステップS6)。プリント部16により、印刷データに基づく画像が用紙に形成され出力される。
プリント部16への印刷データの出力が終了すると、出力された印刷データに係る各種データ等の不要なデータが仮想メモリから削除される(ステップS7)。
【0052】
受信したジョブデータに含まれる全ページに対する印刷データの出力が完了したか否かが判別される(ステップS8)。全ページに対する印刷データの出力が完了していない場合(ステップS8;NO)、ステップS2の処理に戻り、全ページに対する印刷データの出力が完了した場合(ステップS8;YES)、本処理が終了される。このように、受信したジョブデータによる印刷内容が複数ページに渡る場合、ページ数に応じてステップS2の解析処理以降の処理が繰り返される。
【0053】
図4に、ステップS4において実行される描画処理のフローチャートを示す。
図4に示す描画像処理は、CPU11、又は、CPU11及びDSP18と、画像処理装置内の各部との協働により実行されるものである。
【0054】
まず、CPU11は、1バンド分のサイズ関連パラメータに基づいて、当該バンドに対するDSP想定処理時間と、CPU想定処理時間とを算出する(ステップS11)。
【0055】
図6に、サイズ関連パラメータの例を示す。
図6に示すサイズ関連パラメータには、ページ幅、バンド幅、DLデータ数、各DLデータ(DL1〜LD3)の描画領域のサイズ等の情報が含まれている。
【0056】
図6に示すサイズ関連パラメータを用いて、DSP想定処理時間及びCPU想定処理時間の算出例を説明する。
なお、DSP18でのハーフトーン処理の想定処理速度を0.005[秒/KByte]、DSPの準備処理に要する時間を0.001[秒/KByte]+0.005[秒]とする。また、CPU11でのハーフトーン処理の想定処理速度を0.01[秒/KByte]とする。
【0057】
DSP18では、1バンド内のDLデータに基づくイメージデータが重ね合わされて生成された1バンド分のイメージデータに対して、ハーフトーン処理が実行される。
従って、1バンド分のイメージデータが入力されることから、DSP18に入力される入力データサイズD1は、ページ幅とバンド幅とによる下記の式(1−1)により510[KByte]と算出される。
D1=5100×100=510[KByte] 式(1−1)
【0058】
従って、DCP想定処理時間T1は、下記の式(1−2)により、3.065[秒]と算出される。
T1=510×0.005+510×0.001+0.005
=3.065[秒] 式(1−2)
【0059】
CPU11では、各DLデータに基づいて生成されたイメージデータ毎にハーフトーン処理が行われるため、CPU11に入力される入力データサイズD2は、一つのバンドに含まれるDLデータのサイズの合計となり、下記の式(2−1)により905[KByte]と算出される。
D2=(4000×90)+(3500×70)+(5000+60)
=905[KByte] 式(2−1)
【0060】
従って、CPU想定処理時間T2は、下記の式(2−2)により、9.05[秒]と算出される。
T2=905×0.01
=9.05[秒] 式(2−2)
【0061】
CPU11は、算出したDSP想定処理時間とCPU想定処理時間とを比較し、当該比較結果に基づいて、1バンド分のDLデータに対して実行する複数の画像処理を行う演算部として、CPU11か、CPU11とDSP18との組み合わせかを決定する(ステップS12)。
【0062】
ステップS12では、DSP想定処理時間がCPU想定処理時間よりも短い場合にはCPU11とDSP18との組み合わせ、DSP想定処理時間がCPU想定処理時間以上の場合にはCPU11、が1バンド分のDLデータに対する複数の画像処理を実行する際に使用する演算部として決定される。
【0063】
図6の例により算出されたDSP想定処理時間とCPU想定処理時間との比較結果によれば、DSP想定処理時間がCPS想定処理時間よりも短い。この場合、ステップS12では、CPU11とDSP18との組み合わせが、1バンド分のDLデータに対して実行する複数の画像処理を行う演算部として決定される。
【0064】
本実施の形態では、DLデータのデータサイズに係る情報(ページ幅、バンド幅、各DLデータのサイズ)により算出されるDSP想定処理時間とCPU想定処理時間との比較結果に基づいて、使用する演算部を決定する例を用いて説明するが、これに限らない。
例えば、当該比較結果に加えて、印刷データの解像度が所定の解像度(例えば、600[dpi])よりも大きい場合、1バンド内のDLデータの数が所定の数(例えば、10個)以上の場合、1バンド内のDLデータの種類が全てイメージデータの場合、1バンド内のDLデータが複数色、のうち少なくとも一つに該当する場合には、1バンド分のDLデータに対して複数の画像処理を行う演算部として、CPU11とDSP18との組み合わせを使用すると決定してもよい。
【0065】
そして、CPU11は、ステップS11において想定処理時間を算出したバンドに含まれる一つのDLデータに対してラスタライズ処理を施し、イメージデータを生成し、生成したイメージデータを仮想メモリに格納する(ステップS13)。
【0066】
ステップS13後、CPU11は、ステップS12で決定した演算部はCPU11か、それともCPU11とDSP18との組み合わせかを判別する(ステップS14)。
【0067】
ステップS12で決定した演算部がCPU11である場合(ステップS14;CPU)、CPU11は、ステップS13において生成したイメージデータに対してハーフトーン処理を実行し、ハーフトーン処理済みのイメージデータ(処理済イメージデータ)を仮想メモリに格納する(ステップS15)。
【0068】
CPU11は、ステップS13において生成された処理済イメージデータを読み出し、当該処理済みイメージデータに対するバンドのイメージデータの領域に対して、当該処理済イメージデータの重ね合わせ処理を施す(ステップS16)。
【0069】
ステップS16後、CPU11は、1バンド内の全てのDLデータのラスタライズ処理が完了したか否かを判別する(ステップS17)。1バンド内の全てのDLデータのラスタライズ処理が完了していない場合(ステップS17;NO)、CPU11は、ステップS13の処理に戻る。
【0070】
1バンド内の全てのDLデータのラスタライズ処理が完了した場合(ステップS17;YES)、1バンド分の印刷データの生成が完了し、生成された印刷データが仮想メモリに格納され、CPU11は、ステップS23の処理に進む。
【0071】
ステップS12で決定した演算部がCPU11とDSP18との組み合わせである場合(ステップS14;CPU+DSP)、ステップS13において生成されたイメージデータを読み出し、当該処理済みイメージデータに対するバンドのイメージデータの領域に対して、当該イメージデータの重ね合わせ処理を施す(ステップS18)。
【0072】
CPU11は、1バンド内の全てのDLデータのラスタライズ処理が完了したか否かを判別する(ステップS19)。1バンド内の全てのDLデータのラスタライズ処理が完了していない場合(ステップS19;NO)、CPU11は、ステップS13の処理に戻る。
【0073】
1バンド内の全てのDLデータのラスタライズ処理が完了した場合(ステップS19;YES)、1バンド分の未ハーフトーン処理の印刷データ(未処理印刷データ)が生成される。CPU11は、DSP18のローカルメモリ18Aへ、ハーフトーン処理を実行するプログラム、未処理印刷データ、各種必要なデータ等を転送し、DSP18を用いてハーフトーン処理を実行するための準備処理を行い(ステップS20)、準備処理が完了すると、DSP18を起動させる(ステップS21)。
【0074】
CPU11は、DSP18から入力されるハーフトーン処理の終了通知を待機し(ステップS23)、ハーフトーン処理の終了通知が入力されるとステップS23の処理に進む。
【0075】
ステップS17後又はステップS22後、CPU11は、印刷データが1ページ分生成されたか否か、即ち、仮想メモリ内に1ページ分の印刷データが格納されたか否かを判別する(ステップS23)。1ページ分の印刷データの生成が完了していない場合(ステップS23;NO)、CPU11は、ステップS11の処理に戻る。1ページ分の印刷データの生成が完了した場合(ステップS23;YES)、CPU11は、本処理を終了する。このように、複数のバンドから1ページが構成される場合、バンド数に応じてステップS11以降の処理が繰り返される。
【0076】
図5に、DSP18において実行されるハーフトーン処理のフローチャートを示す。
DSP18は、CPU11からの指示により起動すると(ステップS31)、ローカルメモリ18Aに格納されたプログラム及び各種データ等を用いて、未処理印刷データに対してハーフトーン処理を施し、印刷データを生成する(ステップS32)。
【0077】
DSP18は、生成した印刷データをローカルメモリ18Aから仮想メモリへ書き込み、CPU11へハーフトーン処理の終了を通知する(ステップS33)。
【0078】
以上のように、本実施の形態によれば、予め設定された処理順番でCPU11が実行する複数種類の画像処理(ラスタライズ処理、重ね合わせ処理、ハーフトーン処理等)において、予め設定された画像処理(ハーフトーン処理)がDSP18において実行される時間(DSP想定処理時間)が、CPU11において実行される時間(CPU想定処理時間)より短い場合には、処理順番を変更して複数種類の画像処理のうち予め設定された画像処理をDSP18に実行させることができる。
【0079】
従って、予め設定された画像処理に要する時間が、CPU11で実行する場合よりもDSP18で実行した場合の方が短い場合のみ、CPU11が実行する複数の画像処理のうち予め設定された画像処理をDSP18に実行させることができ、DSP18を備えることによるコスト低減と画像データの出力に係る処理の高速化とを実現することができる。
【0080】
特に、本実施の形態では、DSP想定処理時間がCPU想定処理時間よりも短い場合、重ね合わせ処理とハーフトーン処理との順番を入れ替えて、ハーフトーン処理をDSP18に実行させることができるため、ハーフトーン処理に要する時間を短縮でき、高速化を実現できる。更に、バンド単位で、予め設定された画像処理(ハーフトーン処理)に要する時間を短縮できる。
【0081】
また、DSP想定処理時間及びCPU想定処理時間を、1バンド内のDLデータのデータサイズに係る情報に基づいて算出することができる。
【0082】
更に、DSP想定処理時間とCPU想定処理時間との比較結果に加え、印刷データの解像度、1バンドに含まれるDLデータの数、1バンドに含まれるDLデータの種類、1バンドに含まれるDLデータの色数のうち少なくとも一つに基づいて、重ね合わせ処理とハーフトーン処理との順番を入れ替え、ハーフトーン処理をDSP18に実行させることができる。
【0083】
以上の説明では、本発明に係るプログラムのコンピュータ読み取り可能な媒体として、ROM13又はストレージデバイス14を使用した例を開示したが、この例に限定されない。その他のコンピュータ読み取り可能な媒体として、フラッシュメモリ等の不揮発性メモリ、CD-ROM等の可搬型記録媒体を適用することが可能である。また、本発明に係るプログラムのデータを通信回線を介して提供する媒体として、キャリアウエーブ(搬送波)も本発明に適用される。
【0084】
また、本発明は、上記実施の形態の内容に限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0085】
1 画像処理装置
2 外部装置
3 ネットワーク回線
11 CPU
12 RAM
13 ROM
14 ストレージデバイス
15 操作表示部
16 プリント部
17 通信部
18 DSP
18A ローカルメモリ
19 バス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ページ記述言語形式のデータから生成された中間言語形式のデータに基づいて、複数種類の画像処理を実行して印刷用のデータを生成する画像処理装置であって、
前記複数種類の画像処理を予め設定された処理順番で実行する主演算処理部と、
前記複数種類の画像処理のうち予め設定された画像処理が実行可能な補助演算処理部と、
を備え、
前記主演算処理部は、
前記中間言語形式のデータに対して前記補助演算処理部において実行される前記予め設定された画像処理に要する第1の時間と、前記中間言語形式のデータに対して当該主演算処理部において実行される前記予め設定された画像処理に要する第2の時間と、を算出し、前記第1の時間が前記第2の時間よりも短い場合、前記処理順番を変更して、前記予め設定された画像処理を前記補助演算処理部に実行させること、
を特徴とする画像処理装置。
【請求項2】
前記複数種類の画像処理には、ラスタライズ処理、重ね合わせ処理、ハーフトーン処理が含まれており、
前記予め設定された画像処理は、前記ハーフトーン処理であり、
前記処理順番は、前記ラスタライズ処理の後段に前記重ね合わせ処理、前記重ね合わせ処理の後段に前記ハーフトーン処理に設定されており、
前記主演算処理部は、
前記第1の時間が前記第2の時間よりも短い場合、前記処理順番のうち、前記重ね合わせ処理と前記ハーフトーン処理との順番を入れ替え、前記ハーフトーン処理を前記補助演算処理部に実行させること、
を特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項3】
前記中間言語形式のデータはバンド単位で生成され、
前記主演算処理部は、
前記第1の時間と前記第2の時間とをバンド単位で算出し、当該第1の時間が当該第2の時間よりも短い場合、バンド単位で前記複数種類の画像処理の処理順番を変更し、前記予め設定された画像処理を前記補助演算処理部に実行させること、
を特徴とする請求項1又は2に記載の画像処理装置。
【請求項4】
前記主演算処理部は、
前記第1の時間及び前記第2の時間は、1バンド内の前記中間言語形式のデータのデータサイズに係る情報に基づいて算出すること、
を特徴とする請求項3に記載の画像処理装置。
【請求項5】
前記主演算処理部は、
前記第1の時間と前記第2の時間との比較結果に加え、前記印刷用のデータの解像度、1バンドに含まれる前記中間言語形式のデータの数、1バンドに含まれる前記中間言語形式のデータの種類、1バンドに含まれる前記中間言語形式のデータの色数のうち少なくとも一つに基づいて、前記処理順番のうち、前記重ね合わせ処理と前記ハーフトーン処理との順番を入れ替え、前記ハーフトーン処理を前記補助演算処理部に実行させること、
を特徴とする請求項4に記載の画像処理装置。
【請求項6】
コンピュータを、
ページ記述言語形式のデータから生成された中間言語形式のデータに基づいて、複数種類の画像処理を予め設定された処理順番で実行して印刷用のデータを生成する主演算処理手段、
前記複数種類の画像処理のうち予め設定された画像処理が実行可能な補助演算処理手段、
として機能させ、
前記主演算処理手段を、
前記中間言語形式のデータに対して前記補助演算処理部において実行される前記予め設定された画像処理に要する第1の時間と、前記中間言語形式のデータに対して当該主演算処理手段において実行される前記予め設定された画像処理に要する第2の時間と、を算出し、前記第1の時間が前記第2の時間よりも短い場合、前記処理順番を変更して、前記予め設定された画像処理を前記補助演算処理手段に実行させる手段、
として機能させるプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−156672(P2011−156672A)
【公開日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−17880(P2010−17880)
【出願日】平成22年1月29日(2010.1.29)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.COMPACTFLASH
【出願人】(303000372)コニカミノルタビジネステクノロジーズ株式会社 (12,802)
【Fターム(参考)】