説明

画像処理装置及び同処理方法

【課題】地紋パターンが非円形のドットにより形成された場合であっても、地紋パターンの検出率の低下を抑制できる原稿を出力することができる画像処理装置等を提供する。
【解決手段】情報を埋め込んだ地紋パターンを画像データに重畳する画像処理装置である。情報をドットの配列に変換する配列変換手段5と、前記変換された配列のドットを、短軸と長軸を有する非円形の第1のドット104とこの第1のドットを回転させた第2のドット105を含むものに変換するドット変換手段5と、を備え、前記ドット変換手段5により変換された地紋パターンを画像データに重畳して出力する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、情報を埋め込んだ地紋パターンを画像データに重畳する画像処理装置、及び該装置で実行される画像処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、機密保持の必要のある原稿を取り扱う場合、他人が勝手にコピー等できないように、原稿画像に地紋パターンにより付加情報を埋め込むと共に、埋め込まれた情報に基づいて原稿のコピー動作を制御することが、従来より行われている(例えば特許文献1及び2参照)。
【0003】
このような地紋パターンは、多数のドットの集合により構成され、原稿画像を読み込んだ画像処理装置は前記ドットによるパターンを検出して、埋め込まれた情報を取得するものとなされている。
【特許文献1】特開平6−20027号公報
【特許文献2】特開2004−355387号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、地紋パターンを構成するドットとして非円形のドットが用いられる場合、出力するプリンターの特性によってドットの形状が変化することがある。
【0005】
しかるに、このようなドット形状の変化した地紋パターンが付加された原稿を読み込んだ画像処理装置によっては、ドット形状の変化のために地紋パターンの検出率が低下することがあり、機密文書等のコピー禁止制御を良好に行うことができない場合があるという問題があった。
【0006】
この発明は、このような問題を解消するためになされたものであって、地紋パターンが非円形のドットにより形成された場合であっても、地紋パターンの検出率の低下を抑制できる原稿を出力することができる画像処理装置を提供し、さらに画像処理装置による画像処理方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題は、以下の手段によって解決される。
(1)情報を埋め込んだ地紋パターンを画像データに重畳する画像処理装置において、情報をドットの配列に変換する配列変換手段と、前記変換された配列のドットを、短軸と長軸を有する非円形の第1のドットとこの第1のドットを回転させた第2のドットを含むものに変換するドット変換手段と、を備え、前記ドット変換手段により変換された地紋パターンを画像データに重畳して出力することを特徴とする画像処理装置。
(2)前記第1のドットに対する第2のドットの回転角度は90°である前項1に記載の画像処理装置。
(3)前記ドット変換手段により変換されたドットの濃度が予め決められた間隔で変更されている前項1または2に記載の画像処理装置。
(4)地紋パターンに埋め込まれた情報を検出可能な単位領域毎に、第1のドットかまたは第2のドットが使用されている前項1〜3のいずれかに記載の画像処理装置。
(5)地紋パターンに埋め込まれた情報を検出可能な単位領域毎に、地紋パターンの全体を回転させる前項1〜3のいずれかに記載の画像処理装置。
(6)情報を埋め込んだ地紋パターンを画像データに重畳する、画像処理装置における画像処理方法において、情報をドットの配列に変換するステップと、前記変換された配列のドットを、短軸と長軸を有する非円形の第1のドットとこの第1のドットを回転させた第2のドットを含むものに変換するステップと、を備え、前記ドット変換ステップにより変換された地紋パターンを画像データに重畳して出力することを特徴とする画像処理装置における画像処理方法。
【発明の効果】
【0008】
前項(1)に記載された発明によれば、情報をドットの配列に変換し、変換された配列のドットを、短軸と長軸を有する非円形の第1のドットとこの第1のドットを回転させた第2のドットを含むものに変換し、この変換された地紋パターンを画像データに重畳して出力するから、出力された原稿に付加された地紋パターンは、回転角度の異なる第1のドットと第2のドットを含むものとなる。このため、画像処理装置の特性によって、例えば第1のドットの形状が変化して、これを読み取った画像処理装置が地紋パターンを検出できなくても、第2のドットにより検出効率の低下リスクを補完することができるから、結果的に、地紋パターンの検出率の低下を抑制できる原稿を出力することができる。
【0009】
前項(2)に記載された発明によれば、前記第1のドットに対する第2のドットの回転角度を90°に設定することにより、第1のドットと第2のドットによる地紋パターンの検出率低下リスクの補完効果の大きい原稿を出力することができる。
【0010】
前項(3)に記載された発明によれば、ドット変換手段により変換されたドットの濃度が予め決められた間隔で変更されているから、濃度変化によって、ドットの太りや細りが発生するのを防止でき、検出率の低下を抑制することができる。
【0011】
前項(4)に記載された発明によれば、地紋パターンに埋め込まれた情報を検出可能な単位領域毎に、第1のドットかまたは第2のドットが使用されているから、検出可能な単位領域毎に検出率の低下リスクを補完することができる原稿の出力が可能となる。
【0012】
前項(5)に記載された発明によれば、地紋パターンに埋め込まれた情報を検出可能な単位領域毎に、地紋パターンの全体を回転させるから、その回転により第1または第2のドットが回転した状態となる。
【0013】
前項(6)に記載された発明によれば、画像処理装置の特性によって、例えば第1のドットの形状が変化して、これを読み取った画像処理装置が地紋パターンを検出できなくても、第2のドットにより検出効率の低下リスクを補完することができるから、結果的に、地紋パターンの検出率の低下を抑制できる原稿を出力することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
次に、この発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。
【0015】
図1は、この発明の一実施形態に係る画像処理装置を示すブロック図である。この画像処理装置は、図8に示すように、セキュリティコード等のデジタル情報が埋め込まれた地紋101が画像データ(図示せず)に重畳されて付加された原稿100を出力するものであり、多機能デジタル複合機であるMFP(Multi Function peripherals)等の画像形成装置によって構成されている。
【0016】
図1に示す画像処理装置は、アドレス生成手段1と、CPU2と、情報入力手段3と、画像合成手段4と、地紋パターン生成手段5を備えている。
【0017】
前記アドレス生成手段1は、入力画像のサイズから、地紋パターンの打ち込み処理切替のための基準となるアドレスを生成する。
【0018】
CPU2は、情報入力手段3から入力されたセキュリティコード等の地紋パターンに埋め込む情報と、地紋パターンを形成するための打ち込み方法の指示等を地紋パターン生成手段5へ送信する。
【0019】
地紋パターン生成手段5は、送られてきた情報を地紋パターンに変換する。また、同時に送られてきた打ち込み指示方法によって、地紋パターンを構成するドットの回転処理、地紋パターンの回転処理、濃度変更などを行う。
【0020】
また、前記CPU2は、アドレス生成手段1からの入力を元に、予め決められた範囲で、前記ドットの回転、地紋パターンの回転、濃度変更等の各タイミングを決定する。
【0021】
前記画像合成手段4は、入力画像と、情報を埋め込まれた地紋パターンの合成を行う。
【0022】
図2は、デジタル情報を埋め込んだ地紋パターンを原稿に打ち込むときの動作を示すイメージ図である。
【0023】
図2(a)は、地紋が打ち込まれる前の入力画像データを示しており、図2(b)は、デジタル情報の埋め込まれた地紋パターンが入力画像データに重畳された出力原稿を示している。
【0024】
入力されたデジタル情報は、図2(d)に示すようなドットの配列に変換される。しかし、このままだと視認性が悪い(粒状性が低い)ので、ドットが等間隔に並ぶようにダミードットを埋め込む。図2では、ダミードットを斜線で示している。
【0025】
この時、情報を表現する情報ドットとダミードットを区別するために、情報ドットを長軸と短軸を有する非円形の特定形状に変換する。この例では、情報ドットを長軸と短軸を有する楕円ないし長円形に変換した場合を示している。
【0026】
情報ドットを長軸と短軸を有する非円形の特定形状に変換した状態が、図2(e)である。また、図2(f)は、情報ドットとダミードットを分離した状態を表している。
【0027】
本実施形態では、作成された地紋パターンを図2(c)に示すように、一定間隔で回転させて打ち込む。図2(c)は図2(b)の出力原稿における地紋パターンが打ち込まれた部分をして拡大して示すものである。破線で囲まれた領域102、103が、この原稿を読み込んだ画像形成装置が地紋パターンに埋め込まれたデジタル情報を検出可能な単位領域(以下、情報検出単位領域という)を示している。
【0028】
図2(c)の例では、領域102においては、情報ドット104は長軸が水平方向を向いた状態で配列されており、領域103における情報ドット105は、領域102の情報ドット104に対して90度回転されて長軸が垂直方向を向いた情報ドットとなされている。符号106はダミードットである。
【0029】
なお、情報ドットの向きは、情報検出単位領域毎に変化させるのではなく、1つの単位領域内で変化させても良いが、デジタル情報の検出率向上のためには、情報検出単位領域毎に変化させるのが良い。すなわち、情報ドット104が水平状態に配置された情報検出単位領域102だけで情報の”A”、垂直状態に配置された情報検出単位領域103だけで情報の”B”を表現できる方が検出率は向上する。また、情報検出単位領域102、103ともに同じ情報を書き込むことで、検出率はさらに向上する。
【0030】
なお、情報検出単位領域毎に情報ドットのみを90度回転させるのではなく、地紋パターンそのものを90度回転させることにより、結果的に情報ドットを90度回転させる構成としても、同様の効果が得られる。
【0031】
また、面内変動特性が予め解っているような画像処理装置であれば、その特性に合わせて地紋パターンのドット濃度を変更することで、検出率をさらに向上させることが可能となる。これは、濃度変化によって、ドットの太りや細りが発生するのを防止する効果があるためである。
【0032】
図3〜図5は、情報検出単位領域毎に情報ドットの向きを変えた(回転させた)状態で、複数の地紋パターンが原稿に配置された様子を示す図である。
【0033】
図3〜図5において、情報検出単位領域201は情報Aが埋め込まれ、従って情報Aを検出可能な地紋パターンの領域を示し、情報検出単位領域202は、情報Aを検出可能で、かつ情報検出単位領域201に対して情報ドットが90度回転している地紋パターンの領域を示す。
【0034】
また、情報検出単位領域203は情報Bが埋め込まれ、従って情報Bを検出可能な地紋パターンの領域を示し、情報検出単位領域204は、情報Bを検出可能で、かつ情報検出単位領域203に対して情報ドットが90度回転している地紋パターンの領域を示す。
【0035】
また、情報検出単位領域205は情報Cが埋め込まれ、従って情報Cを検出可能な地紋パターンの領域を示し、情報検出単位領域206は、情報Cを検出可能で、かつ情報検出単位領域205に対して情報ドットが90度回転している地紋パターンの領域を示す。
【0036】
図3は、主走査方向に異なる情報が埋め込まれた地紋パターンの情報検出単位領域201、203、205が配置されると共に、副走査毎の1ライン毎に情報ドットを回転させた情報検出単位領域202、204、206が配置されたものである。このような地紋パターンの配置とすることで、地紋パターンの検出時に、ライン単位で角度検出を行うような検出装置に対して有効となる。
【0037】
図4は、主走査方向に異なる情報が埋め込まれた地紋パターンの情報検出単位領域201、203、205が1つ置きに配置されると共に、各情報検出単位領域の間に、情報ドットを回転させた情報検出単位領域202、204、206が配置され、副走査方向においては、同一の情報が埋め込まれかつ情報ドットを回転させた地紋パターンの情報検出単位領域と回転させていない地紋パターンの情報検出単位領域とが、同一列において交互に配置されたものである。この場合には、原稿を出力する画像処理装置の出力変動が、一方向だけでなく、主走査方向及び副走査方向の両方向において大きい場合に、特に有効となる。
【0038】
図5は、情報ドットの回転角度が異なり同一情報が埋め込まれた地紋パターンの情報検出単位領域が、集中的に配置された例を示している。この例は、対象パターンの情報を周辺パターンから補間可能な検出装置に対して有効である。
【0039】
図6は、画像データの流れに基づいた画像処理装置の機能的構成を示す図である。
【0040】
図6において、前記画像読取部(図示せず)等により入力されたRGB画像データが第1のスキャナ画像処理部21に入力される。第1のスキャナ画像処理部21では、入力された画像データに対して、シェーディング補正、ライン間補正、色収差補正などを行う。
【0041】
第1のスキャナ画像処理部21で処理された画像データは、第2のスキャナ画像処理部22に入力される。第2のスキャナ画像処理部22では、画像データに対して、解像度変換、下地飛ばし処理、領域判別、RGBからYMCKへの変換処理、文字エッジ補正、誤差拡散などを行う。
【0042】
第2のスキャナ画像処理部22で処理された画像データは、コントローラ部23に入力される。コントローラ部23では、画像データに対して、圧縮、伸張処理を行う。
【0043】
コントローラ部23を経た画像データは、プリンタ画像処理部24に入力される。プリンタ画像処理部24は、プリントされる画像データに対して画像補正の処理を行うとともに、前記CPU2の制御のもとで、入力された画像データに、セキュリティコード等が埋め込まれた地紋パターンを合成する合成処理(セキュリティ地紋打ち込み処理)を行ったのち、出力する。
【0044】
一方、第1のスキャナ画像処理部21で処理された画像データは、情報検出部13であるセキュリティ地紋検出部25にも入力される。セキュリティ地紋検出部25では、前記第1のスキャナ画像処理部21を経た画像データに対して、デジタル情報が埋め込まれた地紋102を検出するものであり、解像度変換、前処理、特定パターン検出、情報検出などの各処理がCPU15による制御のもとで実行される。
【0045】
図7は、本実施形態に係る画像処理装置で出力された、セキュリティコードの埋め込まれた地紋パターン付原稿を読み込んだときに、画像処理装置の操作パネル14に表示された画面を示すものである。この例では、検出された地紋パターンからセキュリティコードが抽出され、それに対応するパスワードの要求画面が液晶等の表示部14aに表示されており、ユーザが適正なパスワードを入力することで、読み込んだ原稿の出力を許可するものとなされている。
【0046】
なお、図7において、符号14bは操作パネル14が備えているキー入力部、符号20は表示部14aに表示された読み込み画像である。
【0047】
以上、本発明の一実施形態を説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。例えば、情報ドットを長軸と短軸を有する楕円ないし長円形に変換した場合を示したが、長軸と短軸を有する他の形状、例えば菱形等に変換しても良い。また、情報ドットを90度回転させる場合を示したが、90度に限定されることはなく、他の回転角度であっても良い。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】この発明の一実施形態に係る画像処理装置の構成を示すブロック図である。
【図2】デジタル情報を埋め込んだ地紋パターンを原稿に打ち込むときの動作を示すイメージ図である。
【図3】情報検出単位領域毎に情報ドットの向きを変えた(回転させた)状態で、複数の地紋パターンが原稿に配置された一例を示す図である。
【図4】情報検出単位領域毎に情報ドットの向きを変えた(回転させた)状態で、複数の地紋パターンが原稿に配置された他の例を示す図である。
【図5】情報検出単位領域毎に情報ドットの向きを変えた(回転させた)状態で、複数の地紋パターンが原稿に配置されたさらに他の例を示す図である。
【図6】図1に示す画像処理装置の画像データの流れに基づいた機能的構成を示す図である。
【図7】本実施形態に係る画像処理装置で出力された、セキュリティコードの埋め込まれた地紋パターン付原稿を読み込んだときに、画像処理装置の操作パネルに表示された画面を示す図である。
【図8】地紋パターンが付加された原稿の一例を示す図である。
【符号の説明】
【0049】
1 アドレス生成手段
2 CPU
3 情報入力手段
4 画像合成手段
5 地紋パターン生成手段
100 原稿
101 地紋パターン
102 情報検出単位領域
103 情報検出単位領域
104 情報ドット
105 情報ドット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
情報を埋め込んだ地紋パターンを画像データに重畳する画像処理装置において、
情報をドットの配列に変換する配列変換手段と、
前記変換された配列のドットを、短軸と長軸を有する非円形の第1のドットとこの第1のドットを回転させた第2のドットを含むものに変換するドット変換手段と、
を備え、
前記ドット変換手段により変換された地紋パターンを画像データに重畳して出力することを特徴とする画像処理装置。
【請求項2】
前記第1のドットに対する第2のドットの回転角度は90°である請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項3】
前記ドット変換手段により変換されたドットの濃度が予め決められた間隔で変更されている請求項1または2に記載の画像処理装置。
【請求項4】
地紋パターンに埋め込まれた情報を検出可能な単位領域毎に、第1のドットかまたは第2のドットが使用されている請求項1〜3のいずれかに記載の画像処理装置。
【請求項5】
地紋パターンに埋め込まれた情報を検出可能な単位領域毎に、地紋パターンの全体を回転させる請求項1〜3のいずれかに記載の画像処理装置。
【請求項6】
情報を埋め込んだ地紋パターンを画像データに重畳する、画像処理装置における画像処理方法において、
情報をドットの配列に変換するステップと、
前記変換された配列のドットを、短軸と長軸を有する非円形の第1のドットとこの第1のドットを回転させた第2のドットを含むものに変換するステップと、
を備え、
前記ドット変換ステップにより変換された地紋パターンを画像データに重畳することを特徴とする画像処理装置における画像処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−296076(P2009−296076A)
【公開日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−145203(P2008−145203)
【出願日】平成20年6月2日(2008.6.2)
【出願人】(303000372)コニカミノルタビジネステクノロジーズ株式会社 (12,802)
【Fターム(参考)】