説明

画像処理装置及び方法

【課題】網膜の断層像から網膜層構造を変化させている原因を特定できるようにする。
【解決手段】網膜の厚み方向に沿った断面を含む断層像を、前記断面に直交する方向に沿って複数取得することにより得られた複数の断層像を処理する画像処理装置は、断層像の厚み方向に沿ったラインの画像情報に基づいて、網膜内の所定層の境界位置を検出し、所定層の境界を検出できなかったラインに対しては偽像が存在することを示す偽像属性を付与し、他のラインに対しては偽像が存在しないことを示す偽像属性を付与する。そして、複数の断層像の各ラインの偽像属性を、厚み方向に直交する平面に写像し、当該平面において、偽像が存在することを示す偽像属性が写像されている偽像領域の大きさまたは形状に基づいて、当該偽像の種類を判定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、眼部の画像撮影を支援する画像処理装置及び方法に関し、特に眼部の断層像の処理に好適な画像処理装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
生活習慣病や失明原因の上位を占める疾病の早期診断を目的として、眼部の検査が広く行われている。光干渉断層計(OCT;Optical Coherence Tomography)などの眼部断層像撮像装置は、網膜層内部の状態を3次元的に観察することが可能であるため、疾病の診断に有用である。
【0003】
図14に、OCTで撮影した網膜の黄斑部断層像の模式図を示す。OCTは図14のように複数の断層像からなる3次元画像データを得る。図14において、T1〜Tnは黄斑部の二次元断層像である。また、断層像Tnにおいて、L1は内境界膜とその上部の組織との境界(以下、ILM境界とする)、L2は神経線維層とその下部の層との境界(以下、NFL境界とする)、L2’は神経線維層(以下、NFLとする)を表す。L3は内網状層とその下部の層との境界(以下、IPL境界とする)、L4は外網状層とその下部の層との境界(以下、OPL境界と呼ぶ)を表す。L5は視細胞内節外節接合部とその上部の層との境界(以下、IS/OS境界とする)、L6は網膜色素上皮とその下部の層との境界(以下、RPE境界とする)を表している。
【0004】
OCTを用いた画像診断を行うために、画像解析によって各網膜層の境界を特定する技術の開発が求められている。例えば、図14におけるILM境界(L1)とNFL境界(L2)を特定してNFLの厚みを計測することができれば、緑内障診断における一つの指標となりうる。
【0005】
現在までに様々な網膜層境界特定アルゴリズムが提案されているが、それらに共通の課題として、偽像や病変により層構造が変化したとき、網膜層境界の特定が困難になることが挙げられる。網膜層内に血管や病変などが存在すると、それらより深い位置における輝度が低下したり、網膜層が局所的に膨らんだりするため、単一のアルゴリズムでは網膜層境界の特定が難しい。図15(a)に血管(V1)が存在する断層像、(b)に出血(B1)が存在する断層像、(c)に硝子体皮質(H1)の剥がれとのう胞(C1)が存在する断層像の例を示す。図15(a)、(b)のように、血管V1や出血B1が存在したとき、その下の輝度は低下し、境界線が見えにくくなる。また、(c)のように網膜層の内部・外部に病変が現れることもあり、その場合、輝度は低下しないが、網膜層が全体的に膨らんだり、本来存在するはずの網膜層境界が途切れたりする。このような断層像を解析する際、層構造が変化している領域を特定し、層構造変化の原因に応じて最適な処理に切り換える必要がある。
【0006】
特許文献1では、各A−scanにおいて注目画素の上下の統計特徴量を算出し、特徴量が閾値以下のA−scanには偽像が存在するとしている。また、特許文献2では、眼底画像と断層像を位置合わせし、眼底画像から抽出した血管領域を断層像上に投影することで血管の位置を特定し、断層像内の血管領域では別処理を行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2009−066015号公報
【特許文献2】特開2007−325831号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、従来の技術では以下の課題があった。特許文献1における偽像の特定方法では全ての偽像を血管によるものとしている。そのため、図15(a)のような血管V1による偽像と、図15(b)のような出血B1による偽像の区別を行っていない。例えば偽像領域内で境界線を補間する処理を考えたとき、偽像の原因が血管による場合と出血による場合とでは偽像領域の範囲や層構造の変化度合が違うため、同じ処理では対応することができない。特許文献2の方法では、眼底画像から抽出した血管領域を断層像に投影して処理を切り換えているが、当然、同一患者の眼底画像を用いないと実現することができない。さらに、眼底画像から検出できない病変には対応することができない。図15(c)のように硝子体皮質H1の剥がれやのう胞C1など、眼底画像には現れにくい病変も存在するため、断層像からのみわかる病変などについては対応することができない。
【0009】
本発明は上記の課題に鑑みてなされたものであり、網膜の断層像から網膜層構造を変化させている原因を特定できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の目的を達成するための本発明の一態様による画像処理装置は以下の構成を備える。すなわち、
網膜の厚み方向に沿った断面を含む断層像を、前記断面に直交する方向に沿って複数取得することにより得られた複数の断層像を処理する画像処理装置であって、
前記断層像の前記厚み方向に沿ったラインの画像情報に基づいて、網膜内の所定層の境界位置を検出する検出手段と、
前記検出手段で前記所定層の境界を検出できなかったラインに対しては偽像が存在することを示す偽像属性を付与し、他のラインに対しては偽像が存在しないことを示す偽像属性を付与する付与手段と、
前記複数の断層像の各ラインの前記偽像属性を、前記厚み方向に直交する平面に写像する写像手段と、
前記平面において、偽像が存在することを示す偽像属性が写像されている偽像領域の大きさまたは形状に基づいて、当該偽像の種類を判定する判定手段とを備える。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、精度のよい画像解析を行うために必要である、層構造の変化の原因を、網膜の断層像から特定することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】画像処理システムの機能構成例を示す図。
【図2】画像処理システムの処理の概要を示す図。
【図3】断層像取得装置20の構成例を示す図。
【図4】画像処理装置10の第一実施形態の処理手順を示すフローチャート。
【図5】網膜層構造情報取得部12の第一実施形態の処理手順を示すフローチャート。
【図6】網膜層構造情報解析部14の第一実施形態の処理手順を示すフローチャート。
【図7】黄斑部の断層像中のA−scanにおけるプロファイルを示す図。
【図8】血管や出血を含む断層像でILM境界、IS/OS境界を特定した図。
【図9】マップに偽像の存在するA−scanを写像した図。
【図10】網膜層構造情報解析部14の第二実施形態の処理手順を示すフローチャート。
【図11】硝子体皮質とのう胞を含む黄斑部の断層像の模式図。
【図12】構造情報マップを用いてILM境界の補正処理を行っている図。
【図13】解析結果をC−scan平面と断層像に重畳表示している図。
【図14】黄斑部の断層像の模式図。
【図15】血管と出血による偽像領域を含む黄斑部の断層像の模式図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
[第一実施形態]
本実施形態に係る断層像撮像システムの構成を図1を参照して説明する。本実施形態の断層像撮像システムでは、断層像取得装置20が被検眼の断層像を取得する。画像処理装置10は、断層像取得装置20が取得した断層像のA−scan毎に解析を行い、網膜層構造の情報(以下、構造情報とする)を取得する。次に、画像処理装置10は、取得した構造情報を図14におけるx−y平面の二次元マップに写像する。そして、画像処理装置10は、構造情報が写像された二次元マップを解析し、網膜層構造に変化をもたらす病変や構造物を特定する。
【0014】
画像処理装置10は断層像取得装置20及び保存部30と通信可能に接続されている。断層像取得装置20は不図示の操作者により入力される指示情報を指示取得部21から取得し、取得した指示情報に応じて被検眼の撮影を行い、得られた画像を画像処理装置10及び保存部30に送信する。
【0015】
断層像取得装置20は例えば図3により後述するような光干渉撮像法(OCT;Optical Coherence Tomography)を用いたOCT撮像装置である。このOCT撮像装置は、被写体に対して照射した信号光の被写体における反射光及び散乱光(戻り光)と、参照用物体に照射された参照光の反射光とから干渉光を生成し、干渉光を解析することにより被写体の内部構造(網膜の内部の構造)を画像化する。被写体が層構造を有しているような場合には、各層で反射または散乱した光である戻り光の強度から層構造の画像を形成することができる。OCT撮像装置では網膜上の所定の点に信号光を照射し、その点における深さ方向(図14のz方向)の情報を得る(A−scanという)。すなわち、A−scanとは、網膜の厚み方向に沿った画像情報を得るものである。このA−scanを網膜表面上の所定の線上において所定間隔で行い統合することにより、網膜の厚み方向に沿った断層像(B−scanという)を取得することができる(図14のx−z面の画像)。また、網膜表面上の所定範囲に対してA−scanを行うことにより、複数の断層像を取得することができると共に、それらを再構成して三次元のボリュームデータを得ることができる。たとえば、網膜の厚み方向に沿った断面に直交する方向に沿って、上記の断層像(B−scan)を複数取得することにより、複数のB-scanを取得して、再構成して三次元のボリュームデータを得ることができる。そのため、任意の深さにおける網膜の画像(C−scanという)を取得することもできる(図14のx−y面の画像)。
【0016】
画像処理装置10は、例えば図1に示す各ブロックをそれぞれ回路として有している。また別の例としては周知の電子計算機からなり、ハードウェアとソフトウェアの協働により各ブロックに対応する機能が実現する。具体的には、電子計算機は例えばCPU、ROM、RAM、HDD、マウス、キーボード、ネットワークI/F、表示部を有するものがある。ここで、ROMまたはHDDには、画像処理装置10の各ハードウェアと協働して図1に示す機能を発揮し、後述する図4に示される処理を実現するためのプログラムが格納される。このプログラムが、RAMに展開され、CPUがその命令を実行することで、図1に示す機能が発揮され、図4に示す処理が実現される。
【0017】
画像処理装置10が有する各機能を説明する。画像取得部11は断層像取得装置20から断層画像を取得する。この画像取得部11で取得した画像に対して網膜層構造情報取得部12、網膜層構造情報写像部13、網膜層構造情報解析部14で所定の処理を行い、血管や病変部を特定した後、液晶ディスプレイ等からなる表示部15で表示する。以下、網膜層構造情報取得部12、網膜層構造情報写像部13、網膜層構造情報解析部14、解析結果表示部15をそれぞれ、構造取得部12、写像部13、解析部14、表示部15と表記する。
【0018】
図2により本実施形態の概要を説明する。図2において、Tp〜Tqは断層像取得装置で取得した断層像である。まず、断層像中をA−scan方向(A1)に走査して、網膜層のA−scan方向の画像情報から構造情報を取得し、これをA−scan方向に対して垂直な面の二次元マップM1に写像する。詳細は後述するが、図2の二次元マップM1は偽像の存在するA−scanを写像した例である。次に、二次元マップM1上に形成された偽像の存在する領域を解析し、各領域を網膜層内に存在する構造物や病変部に分類する。図2の領域SR1は出血による偽像に、SR2は血管による偽像に分類された例である。最後に、解析して得られた出血による偽像領域BR1、血管による偽像領域BR2、網膜層境界D1(ILM境界)、D5(IS/OS境界)など、特定した網膜層の構造情報を画像に重畳して表示する。
【0019】
図3に断層像取得装置20の機能構成を示す。指示取得部21は、被検眼の眼底に対する2次元の計測範囲及び計測深度を調整する指示情報を取得する。断層像取得装置20は、指示情報を撮像パラメータとしてガルバノミラー駆動機構201を制御し、ガルバノミラー202を駆動する。ハーフミラー204は、低コヒーレンス光源203からの光ビームを、対物レンズ205を経由して被検眼206に向かう信号光と、固定配置された参照ミラー207に向かう参照光とに分割する。そして、ハーフミラー204は、被検眼206及び参照ミラー207によりそれぞれ反射された信号光及び参照光を重畳して干渉光を生成する。回折格子208はこの干渉光を波長λ1〜λnの波長成分に分光し、1次元光センサアレイ209は各波長成分を検出する。1次元光センサアレイ209を構成する各光センサは、検出した波長成分の光強度の検出信号を画像再構成部210に出力する。
【0020】
画像再構成部210は1次元光センサアレイ209から出力された干渉光の各波長成分の検出信号に基づいて、この干渉光についての波長−光強度の関係、すなわち干渉光の光強度分布(波長スペクトル)を求める。そして、画像再構成部210は、求めた干渉光の波長スペクトルをフーリエ変換し、網膜の断層像を再構成する。
【0021】
図4は本実施形態のフローチャートであり、画像処理装置10が実行する具体的な処理手順を、このフローチャートに沿って説明する。
まず、ステップS401において、画像取得部11は、断層像取得装置20で撮像したOCT断層像を取得する。
【0022】
次に、ステップS402において、構造取得部12は、ステップS401で取得したOCT断層像中の各A−scanから構造情報を取得する。本実施形態では、各A−scanについて、「ILM」、「IS/OS」、「硝子体皮質候補の位置」、「偽像の有無」を検出し、これらに基づいて構造情報が生成される。本実施形態では、B−scanによる断層像の厚み方向に沿ったライン(A−ssan)の画像情報に基づいて、網膜内の所定層の境界位置を検出して、これを構造情報とする。そして、所定層を検出できなかったラインに対しては偽像が存在することを示す偽像属性を、所定を検出できたラインに対しては偽像が存在することを示す偽像属性を付与する。本実施形態では、偽像の有無を判定するための所定層の境界としてIS/OS境界を用い、IS/OS境界を検出できなかったラインに、偽像ありを示す偽像属性(ラベル)を付与するものとする。ただし、検出する層の境界は本実施形態で示したものに限られるものではない。構造情報の取得においては、まず、断層像に対して、メディアンフィルタとSobelフィルタをそれぞれ適用して画像を作成する(以下、メディアン画像、Sobel画像とする)。次に、変換したメディアン画像とSobel画像から、A−scan毎にプロファイルを作成する。そして、Sobel画像から作成したプロファイル内のピークを検出する。検出したピークの前後やピーク間に対応するメディアン画像のプロファイルを参照することで、構造情報を取得する。処理の詳細については図5により後述する。
【0023】
ステップS403において、写像部13は、ステップS402で取得した各A−scanの構造情報を図9に示すようにx−y平面(網膜の厚み方向に直行する平面)の二次元マップに写像する。以下、構造情報を写像した二次元マップを構造情報マップと称する。本実施形態では、図9のように構造情報の種類毎に構造情報マップを作成する。つまり、本実施形態が扱う構造情報は「偽像の有無」、「硝子体皮質候補」、「ILM境界」、「IS/OS境界」であるので、4つの構造情報マップが作成される。構造情報マップM1は「偽像の有無」に関して作成したものであり、偽像が存在したA−scanを黒で表わした構造情報マップとなっており、偽像が存在する領域SR1、SR2が示されている。
【0024】
また、構造情報マップM2は「硝子体皮質候補」に関して作成したものである。硝子体皮質候補はA−scan毎に存在の有無(硝子体皮質候補が存在する領域OR1、OR2)に加えて、その位置情報(z座標値)も特定されるため、z座標値が入力された構造情報マップが作成される。「ILM境界」、「IS/OS境界」も同様に、構造情報マップM3に示すような、A−scan毎に特定したILM境界、IS/OS境界の位置情報が入力された構造情報マップが作成される。なお、構造情報はこれらに限定されるものではない。例えばA−scan毎の白斑の有無とその座標値を写像した構造情報マップを作成してもよい。
【0025】
ステップS404において、解析部14はステップS403で作成した構造情報マップを用いて、構造情報の解析を行う。本実施形態では、構造情報マップにおいて、構造情報が作り出す領域の大きさ(面積)及び/または形状、あるいは複数種類の構造情報を組み合わせて、病変の特定や結果の補正を行う。特に、第1実施形態では、偽像のラベルが写像された2次元マップM1における偽像領域の大きさまたは形状に基づいて当該偽像の種類(たとえば血管による偽像か出血による偽像か)を判定する。詳細な処理の一例は図6により後述する。
【0026】
ステップS405において、特定された構造情報を断層像中、または積算像や存在する場合は眼底画像などに重畳し、表示部15はその画像を表示する。本実施形態では、特定した網膜層の境界線(D1,D5)は図13(a)のようにz方向に平行な面の断層像に重畳される。また、その他の構造情報はz方向に平行な面の断層像や、z方向に垂直な面における積算像に重畳される。図13(a)は、特定した全ての構造情報(ILM境界D1、IS/OS境界D5、出血による偽像の存在する領域BR1)を重畳した断層像を示している。また、図13(b)は、出血による偽像の存在、血管による偽像の存在を示す構造情報を重畳した積算像を示している。また、出血や血管のラベルが付いたA−scanは、図13(a)に示されるBR2のように、色を変えるなどして、他のA−scan特別可能に表示してもよい。図13(b)の積算像中のSR1は出血領域、SR2は血管領域を示している。図13(b)のように、出血や血管など、異なる構造物(異なる原因による偽像)について色を変えるなどして同じ平面上に表示してもよい。
【0027】
このように、各A−scanから取得された構造情報を2次元マップに写像し、網膜層領域全体で構造情報を解析することで、断層像のみから偽像の生じた原因の特定や、構造情報の補正を行うことができる。
【0028】
<網膜層構造情報取得処理>
次に、図5を参照して、ステップS402における網膜層構造情報取得処理の詳細を説明する。まず、ステップS501において、構造取得部12は、ステップS401で取得したOCT断層像に対して画像変換を行う。本実施形態では断層像に対して、メディアンフィルタとSobelフィルタをそれぞれ適用して、メディアン画像とSobel画像を作成する。ここで、画素値は信号の強度が強い場合に大きく、弱い場合に小さくなるとする。
【0029】
本実施形態において、SobelフィルタはA−scanにおける浅い方向(画像の上方)から見て、低い輝度値から高い輝度値への境界を強調するように方向性をもたせている。その理由は以下のとおりである。本件では、網膜層構造が変化したとき、その原因を特定するための構造情報として、各A−scanにおけるILM境界、IS/OS境界、硝子体皮質の位置情報と偽像の有無を用いている。網膜層構造において、ILM境界と硝子体皮質は輝度値の低い硝子体と比較的輝度値の高い網膜組織との境界であり、IS/OS境界も浅い方向に比較的暗い組織と接している。また、偽像が存在した場合、IS/OS境界下の輝度が低下するため、Sobel画像における画素値から偽像の有無を判定することができる。つまり、上記のような方向性をもたせることでILM境界、IS/OS境界、硝子体皮質がより強調され、更には偽像の有無の判定も行える。なお、硝子体皮質においては、網膜層構造情報取得処理よりも後段で最終的に特定処理を行うため、網膜層構造情報取得処理においては硝子体皮質候補として扱う。
【0030】
ステップS502において、構造取得部12は、ステップS501で作成したメディアン画像を用いて、背景(硝子体)の平均輝度値を算出する。本実施形態では、まず、メディアン画像に対してP−tile法による二値化処理を行い、背景領域を特定する。次に、背景領域におけるメディアン画像の輝度値の平均値を算出する。
【0031】
P−tile法による二値化処理とは、処理対象となる画像のヒストグラムを作成し、輝度値の高い方、もしくは低い方から累積して、所定の割合Pに達したときの輝度値を閾値として二値化する方法である。本実施形態では、画像中における網膜領域の割合がおおよそわかっているため、経験的にPの値を、輝度値の高い方から30パーセントとして二値化処理を行い、輝度値が閾値以下の画素を背景画素とする。背景画素を特定したら、背景画素におけるメディアン画像の輝度値を参照し、背景の平均輝度値を算出する。
【0032】
ステップS503において、構造取得部12は、ステップS501で作成した変換画像からプロファイルを作成する。本実施形態では、メディアン画像とSobel画像の両方からA−scan毎にプロファイルを作成する。メディアン画像からプロファイルを作成することで、OCT画像において特に問題となるノイズを抑制し、より輝度値の傾向を把握しやすくなるという効果がある。また、Sobel画像からプロファイルを作成することで、後段で行われる網膜層境界の特定において、網膜層境界の候補点を検出しやすくなるという効果がある。図7に断層像中のA1、A2におけるA−scanのメディアン画像とSobel画像から作成したプロファイルを示す。図7のように、メディアン画像のプロファイルPM1、PM2からは輝度値の傾向が、Sobel画像のプロファイルPS1、PS2からは網膜層境界の候補点が見てとれる。また、必ずしもこれらの変換画像からプロファイルを作成する必要はなく、原画像やその他の変換画像から所定の強さのエッジを検出できればよい。
【0033】
ステップS504において、構造取得部12は、ステップS503で作成したプロファイルから極大点(以下、ピークとする)を検出する。本実施形態では、Sobel画像から作成したプロファイル(たとえばPS1、PS2)におけるピークを検出する。検出には経験的、または画像情報に基づいて定められる閾値を用いる。網膜において、ILM境界下、IS/OS境界下、硝子体皮質は多くの信号を反射または散乱させる。そのため、ステップS501で述べた浅い方向から見て、低い輝度値から高い輝度値への境界を強調するように方向性をもつSobelフィルタを用いれば、強いエッジとして検出し易い。これらの層の他に、この方向性をもつSobelフィルタで検出される強いエッジは病変部以外に存在しないため、閾値を調整することによって、ILM境界、IS/OS境界、硝子体皮質候補を優先的に抽出することができる。
【0034】
ステップS505において、構造取得部12は、ステップS504で検出したピークを数え、その数を基に処理を分岐させる。本実施形態では、本ステップ入力時に網膜層境界や硝子体皮質候補として特定されていないピークが2点以上存在する場合(ステップS505でYes)、A−scanにおいて、浅い方向から順に2つのピークを選ぶ。そして、それぞれ第一ピーク、第二ピークとして、ステップS506へ進む。また、ピークが1つの場合(ステップS505でNo)、一番大きなピークを第一ピークとして、ステップS509に進む。
【0035】
ステップS506において、構造取得部12は、ステップS505で選ばれた2つのピーク間のメディアン画像のプロファイルと背景の平均輝度値に基づいた第一の閾値とを比較する。本実施形態では、まず、第一ピークと第二ピークの間に存在する画素に対して、ステップS502で算出した背景の平均輝度値に係数である1.2を掛けた値を第一の閾値として設定する。次に、この第一の閾値よりも大きい輝度値をもつ画素数から、ピーク間に存在する全画素数に対する数の割合を算出する。なお、この係数は経験的に求めたものであり、これに限定されるものではない。例えば、背景の平均輝度値と背景以外の領域(二値化処理における閾値以上の領域)の平均輝度値との割合などを用いて、画像情報から動的に係数を決定してもよい。
【0036】
ステップS507において、構造取得部12は、ステップS506で算出した割合を基に処理を分岐させる。本実施形態では、算出された割合が1/2より小さいとき(ステップS507でNo)、ピーク間は背景であると判断し、ステップS508へ進む。算出された割合が1/2以上のとき(ステップS507でYes)、ピーク間に網膜組織が存在すると判断し、ステップS509へ進む。なお、本実施形態では、閾値以上の画素の割合から網膜組織であるか、背景であるかを判断しているが、これに限定されるものではない。例えば、プロファイルから特徴量を算出し、それを入力として識別器を用いた判定を行ってもよい。
【0037】
ステップS508において、構造取得部12は、ピークの一つを硝子体皮質候補として特定する。本実施形態では、ステップS507において、ピーク間が背景であると判断された第一ピークと第二ピークについて、硝子体皮質が剥がれている場合、下には背景が存在することから、第一ピークを硝子体皮質候補として特定する。そしてステップS505へ戻り、第二ピークを含めて2点のピークを選び直す。
【0038】
ステップS509において、構造取得部12は、ピークの一つをILM境界(D1)として特定する。本実施形態では、ステップS507において、ピーク間に網膜組織が存在すると判断された第一ピークと第二ピークについて、ILM境界は網膜組織の上端に存在することから、第一ピークをILM境界として特定する。また、ステップS505から分岐されてきた場合も、第一ピークをILM境界として特定する。
【0039】
ステップS510において、構造取得部12は、ステップS509で特定したILM境界よりも、同じA−scan上で深い方向(画像の下方)に第二の閾値以上の特徴点が存在するか調べる。本実施形態では、同じA−scan上で特定したILM境界のピークの大きさに係数である0.8を掛けた値を第二の閾値として設定する。この第二の閾値以上のピークがILM境界よりも深い方向に存在するかを調べる。存在した場合(ステップS510でYes)、ステップS511に進む。存在しなかった場合(ステップS510でNo)、ステップS512に進む。なお、この閾値は経験的に求めたものであり、これに限定されるものではない。例えば、ピークの大きさの他に、ピーク間の距離などを用いてもよい。
【0040】
ステップS511において、構造取得部12は、ステップS510で設定した第二の閾値以上のピークをIS/OS境界として特定する。第二の閾値以上のピークが複数存在した場合、本実施形態では、第二の閾値以上のピーク群の中で一番浅い位置に存在するピークをIS/OS境界とする。他方、ステップS512では、構造取得部12は、IS/OS境界を特定することができなかったとし、当該A−scanに偽像が存在することを表す「偽像」ラベルを付ける。
【0041】
ステップS513において、構造取得部12は、画像中の全てのA−scanにおいて、構造情報を取得したか調べる。全てのA−scanについて処理を行った場合(ステップS513でYes)、処理を終了する。まだ構造情報を取得していないA−scanが存在する場合(ステップS513でNo)、処理はステップS503に戻る。
【0042】
このように、ピーク間にある組織を判定し、その結果に基づいて網膜層の構造情報を取得することにより、構造情報の誤りを減らすことができる。図8に、この方法を用いてILM境界とIS/OS境界を特定した断層像を示す。図中の太い実線で描かれたD1とD5はそれぞれ特定されたILM境界とIS/OS境界である。図8からわかるように、ILM境界は全てのA−scanで特定されている。一方、IS/OS境界を特定できないA−scanも存在し、そのようなA−scanにはステップS512で述べたとおり、「偽像」ラベルが付けられている。例えば、図7のA1のA−scanには「偽像」ラベルが付与されることになる。
【0043】
<網膜層構造情報解析処理>
図6に従い、ステップS404における網膜層構造情報解析処理の詳細を説明する。
【0044】
ステップS601において、解析部14は、ステップS403で作成した構造情報マップ上で領域を作成する。本実施形態では、図9の構造情報マップM1に対して偽像ラベルの付いたA−scanで領域を形成する。図9の構造情報マップM1においては、SR1とSR2の2つの領域が形成されている。
【0045】
ステップS602において、解析部14は、ステップS601で作成した領域毎に特徴量を算出する。本実施形態では、各領域の面積と、各領域におけるx座標の最大値・最小値、y座標の最大値・最小値を通る矩形(すなわち当該領域に外接する矩形)を用意し、矩形領域内における偽像領域の占める割合(以下、充填率とする)を特徴量として算出する。なお、算出される特徴量はこれらに限定されるものではない。例えば、距離変換を用いて領域の線らしさ、面らしさを特徴量として算出してもよい。
【0046】
ステップS603において、解析部14は、ステップS602で算出した特徴量を用いて、各偽像領域が血管によるものであるか、出血によるものであるかを判定する。本実施形態では、特徴量毎に閾値を設定し、領域の面積が所定の値以上、且つ、充填率が所定の値以上の場合(ステップS603でYes)、その領域を出血による偽像領域と見なし、ステップS604へ進む。それ以外の場合(ステップS603でNo)、その領域を血管による偽像領域と見なし、ステップS605へ進む。図9の構造情報マップM1については、領域SR1は出血による偽像領域、SR2は血管による偽像領域と判定される。なお、偽像領域の種別の判定方法はこれに限定されるものではない。例えば、特徴量を入力として識別器を用いた判定を行ってもよい。
【0047】
ステップS604において、解析部14は、ステップS603で出血による偽像と判定された領域の各A−scanについて、「出血」ラベルを付ける。図9の構造情報マップM1については、領域SR1を形成する各A−scanに「出血」ラベルが付与される。他方、ステップS605において、解析部14は、ステップS603で血管による偽像と判定された領域の各A−scanについて、「血管」ラベルを付ける。図9の構造情報マップM1については、領域SR2を形成する各A−scanに「血管」ラベルが付与される。
【0048】
ステップS606において、解析部14は、偽像の構造情報マップ上の領域において、ステップS603の判定を行っていない領域が存在するか調べる。全ての領域について判定を行った場合(ステップS606でYes)、処理を終了する。未判定領域が存在する場合(ステップS606でNo)、ステップS603へ戻り、未判定領域について判定処理を行う。
【0049】
以上のように、第一実施形態によれば、マップ上で網膜層構造を解析することによって、網膜層全体から見た偽像領域の形状を調べることができるので、偽像の原因まで特定することができる。
【0050】
[第二実施形態]
第二実施形態では、第一実施形態のステップS404において、硝子体皮質およびのう胞の特定とILM境界の補正を行う例を説明する。断層像において、図11のように、ILM境界L1の上を剥がれた硝子体皮質H1が浮遊することがある。また、図11のC1のように、網膜層内に穴があいたような構造になる「のう胞」と呼ばれる病変が現れることがある。このような断層像において、第一実施形態のような網膜層構造情報取得処理を行うと、図11のように、硝子体皮質候補(H1)は点線で表わされた結果に、ILM境界(L1)は太い実線で表わされた結果になる。この誤認識は、のう胞領域の平均輝度値が背景(硝子体)と非常に近いため、図11のように、本来ILM境界であるところを硝子体皮質候補、のう胞の下の境界線をILM境界と認識してしまうことに起因する。そこで第二実施形態では、図6の解析処理に代えて、もしくは図6の会席処理に加えて、以下に説明する構造情報マップを用いた硝子体皮質特定処理、のう胞特定処理、ILM境界補正処理を行う。これにより、図11のような断層像においても間違えることなく硝子体皮質、のう胞、ILM境界を特定することが可能となる。
【0051】
第二実施形態において、網膜層構造情報解析処理以外は第一実施形態と共通する。また、装置の構成についても第一実施形態と同様である。ただし、画像処理装置10がソフトウェアの指令に基づき動作する場合には、ROMまたはHDDに格納されたプログラムは、図10の処理を実行し、また、そのための機能を実現するためのプログラムである点が異なっている。以下、図10を参照して、第二実施形態に係るステップS404の網膜層構造情報解析処理の詳細を説明する。
【0052】
第二の実施形態では、断層像の前記厚み方向に沿ったラインの画像情報を解析して、第1の層の境界と第2の層の境界が分離したラインを検出し、分離が検出されたラインを、厚み方向に直交する平面に写像して2次元マップを生成する。そして、この平面の分離が検出されたラインが写像されている領域の境界で、厚み方向において第2の層が不連続であると判定された場合に、当該領域において第1の層の境界と判定された位置を第2の層の境界に補正する。本実施形態では、第1の層の境界として硝子体皮質、第2の層の境界としてILM境界を用いる。また、上記の不連続性の判定に基づいて、網膜内部におけるのう胞の存在が検出される。まず、ステップS1001において、解析部14は、ステップS403で作成した構造情報マップ上で領域を作成する。本実施形態では、硝子体皮質候補の構造情報マップM2(図9)が用いられる。図12は、図9の構造情報マップM2と、B−scan画像との関連を示した図である。以下、硝子体皮質候補が検出された領域VR1とVR2を有する構造情報マップM2が得られた場合を例として、第二実施形態の網膜層構造解析処理を説明する。
【0053】
ステップS1002において、解析部14は、ステップS1001で作成した硝子体皮質候補の領域において、周辺のILM境界との境界線のつながりを調べて、その指標(以下、ILM境界尤度とする)を算出する。本実施形態では、硝子体皮質候補領域VR1,VR2の輪郭線部(図9、図12の構造情報マップM2におけるOL1、OL2)における硝子体皮質候補の位置とILM境界の位置とのそれぞれについて、ILM境界尤度を算出して比較する。なお、硝子体皮質候補の存在する領域VR1、VR2は、硝子体皮質候補が存在するA−scanをx−y面に写像することで得られる。また、硝子体皮質候補が存在する領域は、硝子体皮質とILM境界の分離した領域と考えられる。
【0054】
ILM境界尤度の算出について具体的に説明する。まず、図12のように硝子体皮質候補領域の輪郭線外側で、且つ、硝子体皮質候補が存在しないA−scanのILM境界の位置を基準として定める。そして、この基準の位置と輪郭線部のA−scanにおける硝子体皮質候補の位置との差(z座標の差)の絶対値、基準の位置と輪郭線部のA−scanにおけるILM境界の位置との差(z座標の差)の絶対値をそれぞれ算出する。輪郭線を形成するA−scanについて、それぞれの絶対値を算出し、別々に加算していく。そして、こうして得られたz座標の差の合計値が小さいほどILM境界尤度が高いとし、ILM境界らしいと考える(実際の計算では、z座標の差の合計値に−1を掛けた値をILM境界尤度としている)。こうして、硝子体皮質候補の領域VR1、VR2の硝子体皮質候補におけるILM尤度とILM境界におけるILM尤度が算出される。なお、ILM境界尤度の算出方法はこれに限定されるものではない。例えば曲線近似などを用いてILM境界尤度を算出してもよい。
【0055】
ステップS1003において、解析部14は、ステップS1002で算出したILM境界尤度を用いて、ILM境界を補正するか否かを判定する。本実施形態では、硝子体皮質候補について算出したILM境界尤度が、所定の値以上であり、且つ、同じ位置におけるILM境界について算出したILM境界尤度よりも高い場合(ステップS1003でYes)、ILM境界を補正すると判定する。ILM境界を補正すると判定されると、処理はステップS1004へ進む。他方、上記の条件を満たさなかった場合(ステップS1003でNo)、硝子体皮質候補は硝子体皮質であると判定し、ステップS1006へ進む。なお、判定方法はこれに限定されるものではない。例えば、ILM境界尤度を特徴量として識別器による判定を行ってもよい。
【0056】
ステップS1004において、解析部14は、ステップS1003でILMを補正すると判定された硝子体皮質候補領域について、その領域における硝子体皮質候補の位置情報を用いてILM境界を補正する。本実施形態では、ILM境界の情報などは全て構造情報マップに保存されているので、ILM境界の構造情報マップ上の該当領域を硝子体皮質候補の位置情報で書き換えることになる。そして、ステップS1005において、解析部14は、ステップS1004でILM境界を補正した領域について、のう胞が存在するというラベルを付ける。本実施形態では、のう胞についての構造情報マップを新たに作成し、ILMを補正した領域のA−scanに「のう胞」ラベルを付ける。
【0057】
一方、ステップS1006において、解析部14はステップS1003で硝子体皮質であると判定された硝子体皮質候補領域について、その領域を形成するA−scanに「硝子体皮質」ラベルを付ける。
【0058】
ステップS1007において、解析部14は、硝子体皮質候補の構造情報マップ上の領域において、判定処理を行っていない領域が存在するか調べる。全ての領域について判定を行った場合(ステップS1007でYes)、処理を終了する。未判定領域が存在する場合、ステップS1003へ戻り、未判定領域について判定処理を行う。
【0059】
以上のような処理によれば、A−scanにのう胞の有無を示すラベルが付与されるため、図13(c)に示すようなB−scan断層像においてのう胞領域を示すBR3を重畳して示すことができる。また、ILM境界が補正された場合に、補正後のILM境界と補正前のILM境界との間をのう胞部位であるとして、図13(c)に示すようにのう胞C1の部分を識別可能に表示しても良い。また、C−scanの断層像において、図13(d)のように硝子体皮質が浮遊した領域(VR2)を重畳したり、図13(e)のよううにのう胞の領域(VR1)を重畳して表示するようにしても良い。
【0060】
このように、第二実施形態によれば、マップ上で網膜層構造を解析することによって、網膜層構造の連続性を考慮し、誤りを補正することができる。また、硝子体皮質やのう胞の存在の有無など、より詳しく構造情報を特定することができる。
【0061】
また、本発明は、以下の処理を実行することによっても実現される。即ち、上述した実施形態の機能を実現するソフトウェア(プログラム)を、ネットワーク又は各種記憶媒体を介してシステム或いは装置に供給し、そのシステム或いは装置のコンピュータ(またはCPUやMPU等)がプログラムを読み出して実行する処理である。
【0062】
また、上記実施形態は主に本発明をソフトウェアにより実現する実施例を説明したが,本発明の適用はこれに限らない。例えば,先述の機能ブロックを回路で実装しハードウェアで実現することも本発明の属する技術分野における当業者には容易に実施可能である。また、実施例においてプログラムの介在により実行される機能ブロックの一部のみを専用の画像処理ボードとして実装してもよい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
網膜の厚み方向に沿った断面を含む断層像を、前記断面に直交する方向に沿って複数取得することにより得られた複数の断層像を処理する画像処理装置であって、
前記断層像の前記厚み方向に沿ったラインの画像情報に基づいて、網膜内の所定層の境界位置を検出する検出手段と、
前記検出手段で前記所定層の境界を検出できなかったラインに対しては偽像が存在することを示す偽像属性を付与し、他のラインに対しては偽像が存在しないことを示す偽像属性を付与する付与手段と、
前記複数の断層像の各ラインの前記偽像属性を、前記厚み方向に直交する平面に写像する写像手段と、
前記平面において、偽像が存在することを示す偽像属性が写像されている偽像領域の大きさまたは形状に基づいて、当該偽像の種類を判定する判定手段とを備えることを特徴とする画像処理装置。
【請求項2】
前記検出手段は、ラインごとに網膜のILM境界とIS/OS境界とを検出し、
前記付与手段は、前記検出手段が前記IS/OS境界を検出できない場合に、偽像が存在することを示す前記偽像属性を当該ラインに付与することを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項3】
前記判定手段は、前記偽像領域がの面積が所定の値以上であり、且つ、前記偽像領域に外接する矩形領域において当該偽像領域が占める割合が所定の値以上である場合に、前記偽像が出血による偽像であると判定し、その他の場合には前記偽像が血管による偽像であると判定することを特徴とする請求項1または2に記載の画像処理装置。
【請求項4】
前記ラインごとに、前記検出手段により検出された前記所定層の境界の位置を示す構造情報を取得する取得手段と、
前記断層像を表示するとともに、前記ラインごとの前記構造情報によって示される前記境界の位置を前記断層像において識別可能に表示する表示手段とを更に備え、
前記表示手段は、前記断層像の表示において、偽像が存在することを示す前記偽像属性が付与されたラインを、前記判定手段により判定された種類を識別可能に表示することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の画像処理装置。
【請求項5】
前記検出手段は、さらに硝子体皮質と網膜のILM境界をラインごとに検出し、
前記硝子体皮質が検出されたか否かを前記平面に写像することによって得られる、前記硝子体皮質が検出された領域の境界を特定し、前記境界における前記ILM境界の不連続性を検出することにより当該硝子体皮質が検出された領域の網膜内にのう胞が存在するか否かを判定する手段を更に備えることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の画像処理装置。
【請求項6】
網膜の厚み方向に沿った断面を含む断層像を、前記断面に直交する方向に沿って複数取得することにより得られた複数の断層像を処理する画像処理装置であって、
前記断層像の前記厚み方向に沿ったラインの画像情報に基づいて、第1の層の境界と第2の層の境界が分離したラインを検出する検出手段と、
前記分離が検出されたラインを、前記厚み方向に直交する平面に写像する写像手段と、
前記平面の前記分離が検出されたラインが写像されている領域の境界において、前記第2の層の前記厚み方向における連続性を判定する判定手段と、
前記判定手段により前記第2の層の境界が不連続であると判定された場合に、前記領域の前記第1の層の境界を前記第2の層の境界に補正する補正手段とを備えることを特徴とする画像処理装置。
【請求項7】
前記第1の層の境界が硝子体皮質であり、前記第2の層の境界が網膜のILM境界であり、
前記検出手段は、前記硝子体皮質と前記ILM境界が分離して存在するラインを検出し、
前記判定手段により前記ILM境界が不連続であると判定された場合に、前記領域の網膜内部にのう胞が存在すると判断する判断手段を更に備えることを特徴とする請求項6に記載の画像処理装置。
【請求項8】
網膜の厚み方向に沿った断面を含む断層像を、前記断面に直交する方向に沿って複数取得することにより得られた複数の断層像を処理する画像処理装置の画像処理方法であって、
検出手段が、前記断層像の前記厚み方向に沿ったラインの画像情報に基づいて、網膜内の所定層の境界位置を検出する検出工程と、
付与手段が、前記検出工程で前記所定層の境界を検出できなかったラインに対しては偽像が存在することを示す偽像属性を付与し、他のラインに対しては偽像が存在しないことを示す偽像属性を付与する付与工程と、
写像手段が、前記複数の断層像の各ラインの前記偽像属性を、前記厚み方向に直交する平面に写像する写像工程と、
判定手段が、前記平面において、偽像が存在することを示す偽像属性が写像されている偽像領域の大きさまたは形状に基づいて、当該偽像の種類を判定する判定工程とを有することを特徴とする画像処理方法。
【請求項9】
網膜の厚み方向に沿った断面を含む断層像を、前記断面に直交する方向に沿って複数取得することにより得られた複数の断層像を処理する画像処理装置の画像処理方法であって、
検出手段が、前記断層像の前記厚み方向に沿ったラインの画像情報に基づいて、第1の層の境界と第2の層の境界が分離したラインを検出する検出工程と、
写像手段が、前記分離が検出されたラインを、前記厚み方向に直交する平面に写像する写像工程と、
判定手段が、前記平面の前記分離が検出されたラインが写像されている領域の境界において、前記第2の層の前記厚み方向における連続性を判定する判定工程と、
補正手段が、前記判定工程により前記第2の層の境界が不連続であると判定された場合に、前記領域の前記第1の層の境界を前記第2の層の境界に補正する補正工程とを有することを特徴とする画像処理方法。
【請求項10】
請求項1乃至6のいずれか1項に記載のされた画像処理装置の各手段としてコンピュータを機能させるためのプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−110618(P2012−110618A)
【公開日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−264294(P2010−264294)
【出願日】平成22年11月26日(2010.11.26)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】