説明

画像処理装置及び画像処理システム

【課題】画像領域境界付近での距離誤差を低下させ、立体画像における遠近視認上の違和感を軽減させる画像処理技術を提供する。
【解決手段】立体画像を生成しようとする被写体の2次元画像上でエッジを抽出し、エッジで囲まれた各領域の相互境界QM付近で距離画像の補正を行う。このような領域境界では、遠近競合によって一方の領域CAの距離情報に他方の領域RAの距離情報が混入していることから、領域境界QMに近づくにつれて他方領域の距離情報の値へと変化しようとする傾向になり、それが誤差の原因となる。そのような誤った変化を抑圧すべく、領域境界QMの近くの画素であって、距離情報の変化が大きな画素については、距離情報の変化を抑制するような補正を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像処理装置及び画像処理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、3次元映像技術を取り入れた3次元テレビの普及が拡大してきている。しかし、3次元映像などのコンテンツに関しては、一部の映画やテレビ用の3次元映像のコンテンツが提供されているが、一般ユーザが個人で楽しむには、3次元映像コンテンツが充分な状態とは言えない。そのため、今後、一般ユーザに対し、一般家庭でも簡単に3次元映像を楽しむことが可能なコンテンツを生成し、3次元映像システムの提供を行うことが必要不可欠になる。
【0003】
しかし、単純に2台以上のカメラにより取得した映像を、立体視映像として表示すると、映画館のような固定サイズの表示ディスプレイであれば、特に問題はないが、一般ユーザ向けの立体視映像としては、個々の所有する表示ディスプレイのサイズが異なる可能性が高いことから、使用するディスプレイ次第では、立体感に欠ける映像となることがある。
【0004】
つまり、個々のディスプレイに適した立体感を表示する為の調整を行うために、立体感の調整(視差調整)が重要となる。一般的に視差調整を正確に行う方法としては、各対象領域の距離を計測し、計測データに従って視差量を補正する方法がある。ここで、対象領域の距離計測方法の代表的な方法としては、エリアベースの対応点探索方法がある。
【0005】
例えば、特許文献1では、2種類の対応点探索方法で視差を算出し、それらの差の絶対値が所定の閾値以上である画素は、ミスマッチングが発生していると判定する技術が開示されている。
【0006】
また、特許文献2では、1つの画素に対して複数の対応点が探索された場合、対象画素の周囲にある複数画素の距離値に基づいて、対象画素およびその周囲における被写体形状を算出し、被写体形状との差異が最も小さい対象距離情報を算出した対応点を有効な対応点に決定する技術が提案されている。
【0007】
さらに、特許文献3では、基準となる画像を複数の小領域に分割し、それらの小領域の境界線の視差を領域ベースのステレオ法により推定し、各領域において推定された境界線における視差の頻度分布を解析して領域の視差を推定する。分割された小領域を順次統合していく際に画像の特徴量を用いることで、被写体本来の形状により近い画像分割が可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2009−239485号公報
【特許文献2】特開2009−205193号公報
【特許文献3】特開2005−165969号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献1では、計測点の間違いは分かるものの何れの方法が適切か判別できない。また、特許文献2では、孤立点などのノイズ的な誤対応点に対しては修正可能であるものの、周辺の計測情報が間違っている場合には補正することができないという問題がある。さらに、特許文献3では、境界線の視差の頻度分布を解析して領域の視差を推定するだけでなく、境界線の視差計測方法とその他の計測方法を切り替えるといった複雑な処理が必要となる。
【0010】
また、エリアベースの対応点探索方法においては、設定するエリア内に近距離と遠距離との両方の情報が含まれている場合(遠近競合領域)や、異なる視点による撮影で片方の映像で映っていない場合(オクルージョン領域)などにおいては、正確に視差の計測を行うことが出来ないと言う問題がある。
【0011】
そして、不正確な視差情報を基に、多視点映像を生成し、立体表示を行うと、実際の立体形状より飛び出したり、凹凸感がなかったり、ぼやけたりした立体視映像となり、観察者にとっては遠近感の欠落や対象物の形状の変化により違和感の多い映像となってしまう。
【0012】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、遠近競合領域での距離誤差を低下させ、立体画像における遠近視認上の違和感を軽減させる画像処理技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するために、請求項1の発明は、立体画像処理のための画像処理装置であって、所定の原点位置から被写体各部への距離情報を表現した第1距離画像を取得する第1距離画像取得手段と、前記被写体の2次元画像における前記被写体の複数の領域相互の境界線を抽出する境界線抽出手段と、前記第1距離画像中において、前記2次元画像での前記境界線に対応する位置に仮想境界線を設定するとともに、前記第1距離画像のうち前記仮想境界線をはさんで互いに隣接する領域のうち少なくとも一方を補正範囲としつつ、前記仮想境界線に近づく方向についての距離情報の変化を抑制する補正を前記第1距離画像に対して行うことによって第2距離画像を生成する補正手段と、を備え、前記立体画像処理が、前記第2距離画像に基づいて行われることを特徴とする。
【0014】
また、請求項2の発明は、請求項1に記載の画像処理装置であって、前記補正手段は、前記仮想境界線の位置を基準として、前記補正範囲の設定を行う補正範囲設定手段、を備えることを特徴とする。
【0015】
また、請求項3の発明は、請求項2に記載の画像処理装置であって、前記補正範囲設定手段は、前記補正範囲として、前記第1距離画像において、前記仮想境界線からの平面距離が所定の値以下の画素範囲を設定することを特徴とする。
【0016】
また、請求項4の発明は、請求項2に記載の画像処理装置であって、前記補正範囲設定手段は、前記補正範囲として、前記第1距離画像において、前記仮想境界線の距離情報との相違量が所定の値以下の画素範囲を設定することを特徴とする。
【0017】
また、請求項5の発明は、請求項2乃至請求項4のいずれかに記載の画像処理装置であって、前記補正範囲設定手段は、前記補正範囲として、前記仮想境界線の両側の領域を設定することを特徴とする。
【0018】
また、請求項6の発明は、請求項2に記載の画像処理装置であって、前記補正範囲設定手段は、前記第1距離画像の全体を、前記補正範囲として設定することを特徴とする。
【0019】
また、請求項7の発明は、請求項2乃至請求項6のいずれかに記載の画像処理装置であって、前記補正範囲設定手段は、前記仮想境界線が閉曲線を形成していない領域は、前記補正範囲から除外する例外処理を行うことを特徴とする。
【0020】
また、請求項8の発明は、請求項2乃至請求項7の何れかに記載の画像処理装置であって、前記補正手段は、前記補正範囲内の画素のうち、所定の判定条件を満たす距離情報を持った画素のみを補正対象画素とする補正判定を行う補正判定手段、を備えることを特徴とする。
【0021】
また、請求項9の発明は、請求項8に記載の画像処理装置であって、前記補正判定手段は、前記補正判定を、画素単位で行うことを特徴とする。
【0022】
また、請求項10の発明は、請求項8に記載の画像処理装置であって、前記補正判定手段は、前記補正判定を、2点間を結びかつ前記仮想境界線と交差する画素列を単位として行うことを特徴とする。
【0023】
また、請求項11の発明は、請求項8乃至請求項10のいずれかに記載の画像処理装置であって、前記補正判定条件は、判定対象画素から前記仮想境界線に向かう方向についての、当該判定対象画素の距離情報と、当該判定対象画素に隣接する画素の距離情報との差分の絶対値が、所定値以上となっているという条件であることを特徴とする。
【0024】
また、請求項12の発明は、請求項8乃至請求項10のいずれかに記載の画像処理装置であって、前記補正判定条件は、判定対象画素から前記仮想境界線に向かう方向についての、当該判定対象画素の距離情報の変化率の絶対値が、所定値以上となっているという条件であることを特徴とする。
【0025】
また、請求項13の発明は、請求項1乃至請求項12のいずれかに記載の画像処理装置であって、用語定義として、着目する補正対象画素に関して、「交差画素列」を、当該補正対象画素を通りかつ前記仮想境界線と交差する線分の画素列によって定義し;「外側画素」を、前記交差画素列のうちで、当該補正対象画素よりも前記仮想境界線に近い側において当該補正対象画素に隣接する画素によって定義し;「内側画素」を、前記交差画素列のうちで、当該補正対象画素よりも前記仮想境界線に遠い側において当該補正対象画素に隣接する画素によって定義し;「同一側画素列」を、前記交差画素列のうちで、前記仮想境界線を基準として当該補正対象画素と同じ側にある部分によって定義し;「反対側画素列」を、前記交差画素列のうちで、前記仮想境界線をはさんで当該補正対象画素と反対側にある部分によって定義したとき、前記補正手段は、同一側画素列と反対側画素列とのうち、少なくとも同一側画素列の内側画素の距離情報を用いて、補正対象画素の距離情報の補正を行うこと特徴とする。
【0026】
また、請求項14の発明は、請求項13に記載の画像処理装置であって、前記補正手段は、同一側画素列に属する補正対象画素の距離情報の値を、当該補正対象画素の内側画素の距離情報の値を用いて一定化する補正を行うことを特徴とする。
【0027】
また、請求項15の発明は、請求項13に記載の画像処理装置であって、前記補正手段は、同一側画素列に属する補正対象画素の距離情報の変化率を、当該補正対象画素の内側画素における距離情報の変化率を用いて一定化する補正を行うことを特徴とする。
【0028】
また、請求項16の発明は、請求項13に記載の画像処理装置であって、前記補正手段は、前記仮想境界線から離れた位置に基準位置を設定し、前記基準位置での距離情報を第1距離情報とし、前記基準位置から前記仮想境界線までの区間内の各補正対象画素について、前記基準位置に関して対称な位置にある画素の距離情報を第2距離情報としたとき、前記補正対象画素についての補正後の距離情報と前記第1距離情報との差が、前記第1距離情報と前記第2距離情報との差の正負符号を反転させた値に比例するように前記補正対象画素についての補正を行うことにより、前記補正対象画素の距離情報の変化を抑制する補正を行うことを特徴とする。
【0029】
また、請求項17の発明は、請求項13に記載の画像処理装置であって、前記補正手段は、前記仮想境界線に近づく方向についての距離情報の変化を段階的に抑制する。
【0030】
また、請求項18の発明は、請求項1ないし請求項17の何れかに記載の画像処理装置と、前記第2距離画像を用いて前記原点位置から見た第1視差画像を生成する第1視差画像生成手段と、前記視差画像生成手段によって生成された第1視差画像に基づいて、前記原点位置とは異なる別位置から前記被写体を観察した距離画像としての第2視点画像を生成する他視点画像生成手段と、を備えることを特徴とする。
【0031】
また、請求項19の発明は、請求項18に記載の画像処理システムであって、前記補正手段は、前記他視点画像生成手段での前記第2視点画像の生成において、視点が前記原点位置から前記別位置へと変化する方向に応じて、前記距離情報の変化の抑制を行う部分を選択することを特徴とする。
【発明の効果】
【0032】
請求項1ないし請求項19の発明によれば、第1距離画像での誤差が大きくなりがちな境界領域を補正範囲として、境界に近づく方向について距離情報の変化を抑制する補正を行うことにより、境界をはさんで一方側の領域の距離情報に他方側の領域の距離情報が混入することに起因する誤差を減少ないしは除去できる。このため、このようにして得た第2距離画像に基づいて立体画像処理の後工程を行うことによって、画像領域境界付近での距離誤差が低下し、立体画像における遠近視認上の違和感を軽減することが可能となる。
【0033】
請求項2ないし請求項7の発明によれば、仮想境界線の位置を基準として、補正範囲の設定を行うことにより、距離情報算出が苦手な領域、すなわち、立体画像における遠近視認上の違和感が生じやすい領域境界線の付近に補正範囲を設定できる。このため、補正の効率化を図ることができる。
【0034】
請求項8ないし請求項12の発明によれば、補正判定を行うことで、距離情報補正を行う必要性が高い画素のみ補正を行うことによって、距離情報補正に要する時間の短縮を図ることができる。
【0035】
請求項13ないし請求項17の発明によれば、同一側画素列と反対側画素列とのうち、少なくとも同一側画素列の内側画素の距離情報を用いて、補正対象画素の距離情報の補正を行うことにより、内側画素の距離情報との連続性を確保しつつ画像領域境界付近での距離誤差を低下させ、立体画像における遠近視認上の違和感を軽減することが可能となる。
【0036】
請求項19の発明によれば、他視点画像生成手段での第2視点画像の生成において、視点が原点位置から別位置へと変化する方向に応じて、距離情報の変化の抑制を行う部分を選択することにより視点移動方向に応じた補正が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明の一実施形態に係る画像処理システムの概略構成を示す図である。
【図2】ステレオカメラによって撮影された画像および得られた距離情報の画像を例示する図である。
【図3】本実施形態に係る画像処理システムの機能構成を示すブロック図を示す。
【図4】本実施形態に係る画像処理システムの機能構成を示すブロック図を示す。
【図5】ステレオカメラの使用形態を説明する図である。
【図6】ステレオカメラを横置きで使用する場合の撮影イメージを示す図である。
【図7】ステレオカメラで得られた画像を示す図である。
【図8】画像境界線抽出方法について説明する図である。
【図9】画像境界線抽出方法について説明する図である。
【図10】画像境界線抽出方法について説明する図である。
【図11】対応点探索処理を説明する概念図である。
【図12】補正範囲の設定方法を説明する概念図である。
【図13】補正範囲の設定方法を説明する概念図である。
【図14】補正判定対象位置について説明する図である。
【図15】補正判定対象位置について説明する図である。
【図16】補正方法について説明する図である。
【図17】補正方法について説明する図である。
【図18】補正方法について説明する図である。
【図19】補正方法について説明する図である。
【図20】補正方法について説明する図である。
【図21】補正方法について説明する図である。
【図22】本実施形態に係る画像処理システムにおいて実現される基本動作を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0038】
<1.用語の定義>
この発明における下記用語は、次のように定義される。
・「画像」の用語は、静止画および動画の双方を包含する概念の用語として使用する。
【0039】
また、着目する補正対象画素に関して、
・「交差画素列」の用語は、当該補正対象画素を通りかつ仮想境界線(後述)と交差する線分の画素列として使用し;
・「外側画素」の用語は、交差画素列のうちで、当該補正対象画素よりも仮想境界線に近い側において当該補正対象画素に隣接する画素として使用し;
・「内側画素」の用語は、交差画素列のうちで、当該補正対象画素よりも仮想境界線に遠い側において当該補正対象画素に隣接する画素として使用し;
・「同一側画素列」の用語は、交差画素列のうちで、仮想境界線を基準として当該補正対象画素と同じ側にある部分として使用し;
・「反対側画素列」の用語は、交差画素列のうちで、仮想境界線をはさんで当該補正対象画素と反対側にある部分として使用する。
【0040】
<2.画像処理システムの概要>
図1は、本発明の一実施形態に係る画像処理システム1の概略構成を示す図である。画像処理システム1は、多視点カメラシステムとして構成されており、撮像部10として2眼のステレオカメラVCを備えるほか、ステレオカメラVCに対してデータの送受信が可能に接続される画像処理装置3を備える。
【0041】
ステレオカメラVCは、主カメラMCおよび副カメラSCの2つの撮像系から構成されている。主カメラMCおよび副カメラSCは、カメラ正面の被写体(撮像の対象体)OBを、同じタイミングで異なる視点から撮像するように構成される。主カメラMCおよび副カメラSCによる同じタイミングの撮像によって得られる2つの画像信号(以下「画像」と略称する)は、データ線CBを介して画像処理装置3に送信される。
【0042】
以下では、主カメラMCの撮像によって取得される画像を「第1撮像画像G1」と称し、副カメラSCの撮像によって取得される画像を「第2撮像画像G2」と称する。つまり、第1および第2撮像画像G1,G2は、同一の被写体OBが異なる視点からそれぞれ捉えられた画像の組を成す。
【0043】
画像処理装置3は、例えばパーソナルコンピュータ(パソコン)のような情報処理装置で構成され、マウスやキーボード等を含む操作部31と、液晶ディスプレイ等で構成されるディスプレイ32と、スピーカ33と、ステレオカメラVCからのデータを受信するインターフェース(I/F)37とを備える。また、画像処理装置3は、記憶装置34と演算制御部36とを有する。
【0044】
記憶装置34は、例えばハードディスク等で構成され、ステレオカメラVCの撮像によって得られる第1および第2撮像画像G1,G2を記憶する。また、記憶装置34には、後述される距離情報補正を行うためのプログラムPG等が格納される。
【0045】
入出力部35は、例えば可搬性ディスクドライブを備えて構成され、光ディスク等の可搬性記憶媒体をセットして、演算制御部36との間でデータの授受を行う。
【0046】
演算制御部36は、プロセッサとして働くCPU36aと、情報を一時的に記憶するメモリ36bとを有し、画像処理装置3の各部を統括的に制御する。演算制御部36では、記憶部34内のプログラムPGが読み込まれて実行されることで、各種機能や各種情報処理等が実現される。なお、メモリ36bには、可搬性記憶媒体に記憶されているプログラムデータを、入出力部35を介して格納させることができる。この格納されたプログラムは、画像処理装置3の動作に適宜反映可能である。
【0047】
演算制御部36は、後述する距離情報補正によって、視差画像および他視点画像を生成し、ディスプレイ32により、特定の被写体OBの画像を可視的に出力する。
【0048】
<2−1.計測距離情報の一般的性質と前提事情>
この実施形態における画像処理システム1の詳細を説明する準備として、この実施形態の前提となる計測距離情報の一般的性質と、それに伴って生じる現象、すなわち従来技術で生じていた事情を説明しておく。
【0049】
図2は、ステレオカメラVCによって撮影された画像および得られた距離情報の画像を例示する図である。図2(a)は、主カメラMCの撮像によって取得される第1撮像画像G1を示し、図2(b)は、副カメラSCの撮像によって取得される第2撮像画像G2を示す。なお、ここでは、第1撮像画像G1を基準画像SGとし、第2撮像画像G2を参照画像RGとする。また、図2(c)は、基準画像SGと参照画像RGとの画像から生成される、所定の原点位置(この実施形態ではステレオカメラVCの位置)から被写体各部への距離情報を表現した距離情報画像G3(第1距離画像D1)を示す。
【0050】
図2(c)で示されるように、距離情報画像G3(第1距離画像D1)において、被写体OB1は被写体OB2と比較して所定の原点位置に相当するステレオカメラVCからの距離が相対的に近く表現されているが、近距離領域に相当する被写体OB1と遠距離領域に相当する被写体OB2との領域境界に相当する領域MXは、立体視認が難しい現象が生じる。これは、後述する対応点探索を行う際に生じる誤差によって、境界線をはさんで被写体OB1の領域の近距離情報に被写体OB2の領域の遠距離情報が混入してしまうため、立体視が欠如した画像として表示される事情による。
【0051】
このように、被写体の輪郭部分などの領域境界における距離計測では、遠近競合を含む誤距離計測結果が得られる傾向がある。したがって、この不正確な距離情報に基づいて、立体視画像を生成すると、立体画像における遠近視認上の違和感を生じる結果となってしまう。
【0052】
このような背景の下、本発明では、画像領域境界付近での距離誤差を低下させるような距離情報の補正を行う。
【0053】
<3.画像処理システムの機能構成>
本発明の実施形態の説明に戻る。画像処理装置3において、距離情報の補正を実行するために演算制御部36で実現される機能的な構成について説明する。
【0054】
図3は、本実施形態に係る画像処理システム1の機能構成を示すブロック図を示す。図3で示されるように、ステレオカメラVCの基準カメラMCおよび参照カメラSCにより得た基準画像SGおよび参照画像RGから、距離計測部20により距離計測を実施し、第1距離画像取得部40により所定の原点位置から被写体各部への距離情報を表現した第1距離画像D1を取得する。続いて、境界線抽出部30によって基準画像SGから、被写体の2次元画像における当該被写体の複数の領域相互の境界線を抽出し、抽出された境界線および第1距離画像D1に基づいて、距離情報補正部50によって、距離情報の補正を実施し、第2距離画像生成部60により第2距離画像D2を生成する。そして、補正した距離情報に基づいて、視差画像生成部70によって第1視差画像を生成する。最後に、他視点画像生成部80によって、任意の視点で画像を生成することで、立体視が可能な画像処理を施し、ディスプレイ32に立体視画像を表示する。
【0055】
図4は、本実施形態に係る画像処理システム1(図3参照)における距離情報補正部50で行う内容に特化したブロック図である。図2に示されるように、境界線抽出部30によって抽出された境界線、および、第1距離画像取得部40により得られた第1距離画像に基づいて、補正範囲設定部41によって補正範囲を設定する。この補正範囲に対して、補正判定部42によって補正の必要の有無の判定を実施し、補正が必要という判定結果であれば、距離情報の補正対象とする。
【0056】
最後に、補正距離生成部43により、第1距離画像D1に対して選択した補正を行うことで補正距離を生成する。
【0057】
図3および図4で示されたような演算制御部36の機能的な構成が、プログラムPGの実行によって実現されるものとして説明するが、専用のハードウエア構成で実現されても良い。
【0058】
以降、撮像部10、境界線抽出部30、距離計測部20、第1距離画像取得部40、距離情報補正部50、第2距離画像生成部60、視差画像生成部70および、他視点画像生成部80の各処理についての具体的内容を、図3および図4を参照しながら順次説明する。
【0059】
<3−1.撮像部10>
図5は、撮像部10のステレオカメラVCの具体的配置例を説明する図である。図5(a)および図5(b)に示すステレオカメラVC1では、主カメラMCと副カメラSCとが基線長L分だけ離れて配置された構成を採り、主カメラMCおよび副カメラSCは、カメラ筐体の一辺に平行となるように配列されている。
【0060】
この主カメラMCおよび副カメラSCの配列が、水平面に対して垂直となるようにステレオカメラVC1を配置した状態を縦置きと呼称する(図5(a)参照)。一方、主カメラMCおよび副カメラSCの配列が、水平面に対して平行となるようにステレオカメラVC1を配置した状態を横置きと呼称する(図5(b)参照)。
【0061】
また、図5(c)に示すステレオカメラVC2は、主カメラMCと副カメラSCとが基線長L分だけ離れて配置されている点ではステレオカメラVC1と同じであるが、主カメラMCおよび副カメラSCは、カメラ筐体の何れの辺に対しても斜めとなるように配列されており、この状態を斜め置きと呼称する。なお、上記のような配置状態に対して、上下左右が入れ替わるように配置しても良い。
【0062】
構成例として、例えば、主カメラMCは、高精細画像を撮影できるようなハイビジョン放送対応レンズ(HDTVレンズ)等の高解像度で、焦点可変のいわゆるズームレンズを有したデジタルカメラシステムとし、副カメラSCは、携帯電話等に搭載される小型ユニットカメラや、マイクロカメラユニット(MCU)などの低解像度で、単一焦点のデジタルカメラシステムとすることができる。または、両方ともハイビジョン放送対応レンズ・マイクロカメラユニットでの構成にしても良い。なお、副カメラSCのレンズにはズームレンズを用いても良いが、高解像度は要求されない。このように、2つのレンズユニットはどのような構成を取っても良いが、立体視画像を生成するにあたり、主カメラMC側の画像は、他視点画像として使用されることから、副カメラSCと同レベルのレンズ、若しくは、副カメラSCより性能が良いものを使用する方が望ましい。
【0063】
ステレオカメラVCにより得た画像を、そのまま立体視画像として使用する場合は、横置きに構成される必要があるが、本手法では距離計測を実施し、距離情報を基に、立体視用の画像を新しく生成することから、距離情報と他視点画像とを生成するための基準画像SGを取得できれば良いので、図5(b)の横置きの構成だけでなく、図5(a)の縦置きあるいは図5(c)の斜め置きの構成でも可能となる。ただし、図5(b)の横置きの構成では、副カメラSCで取得した画像に基づいて、他視点画像を生成するようにしてもよい。
【0064】
図6は、ステレオカメラVC1を横置きで使用する場合の撮影状況を示す模式図であり、被写体OBおよび背景BGを上方から見た状況に相当する。図6の縦軸は、主カメラMCの位置を原点としたときの、主カメラMCの光軸方向における被写体OBおよび背景BGまでの距離を示している。また横軸は、主カメラMCと副カメラSCとを結ぶ基線方向(水平方向)の距離を示しており、この方向の撮影可能範囲は、主カメラMCおよび副カメラSCで撮影する場合の水平方向の画角に相当する。主カメラMCにおいては3段階の倍率で撮影を行う例を示しており、最も倍率の低い(最も画角の広い)状態で撮影した画像を第1の主カメラ画像と呼称し、その画角をラインL1で示している。次に倍率の高い状態で撮影した画像を第2の主カメラ画像と呼称し、その画角をラインL2で示している。そして、最も倍率の高い(最も画角の狭い)状態で撮影した画像を第3の主カメラ画像と呼称し、その画角をラインL3で示している。一方、副カメラSCはズーム機能がないので画角は1種類だけであり、その画角をラインL4で示している。
【0065】
図7には、図6に示した撮影イメージで得られた画像を示す。図7(a)には主カメラMCで撮影した第1の主カメラ画像を、図7(b)には主カメラMCで撮影した第2の主カメラ画像を、図7(c)には主カメラMCで撮影した第3の主カメラ画像を示している。
【0066】
また、図7(d)〜図7(f)には、それぞれ図7(a)〜図7(c)の画像を取得した際に、副カメラSCで得られた副カメラ画像を示している。この副カメラ画像は、何れも同じ倍率の画像となる。なお、副カメラSCの光軸は、基線長L分だけ主カメラMCから離れているので、副カメラSCで得られた画像と主カメラMCで得られた画像との間には、視差に伴う観察方向のズレが生じている。
【0067】
以上のように、主カメラMCと副カメラSCとの2つのカメラは同じ被写体OBおよび背景BGを撮像しているが、それぞれの視線とレンズの倍率とが異なるため、被写体OBの大きさや画角が異なった画像が得られることになる。
【0068】
<3−2.境界線抽出部30>
続いて、境界線抽出部30では、撮像部10で取得された基準画像SGの2次元画像における複数の領域相互の境界線を抽出する。すなわち、他視点画像を生成するためのベースとなる基準画像SGに対して、被写体OBや背景BGを構成する複数の領域相互の境界線を抽出する。なお、図3では、主カメラMCで得られた画像G1を基準画像SGとしている。また、ここにおける「領域」とは、画像の中で明度・彩度・色相などがほぼ連続的に変化している空間範囲を指しており、図7のような画像の例では、人物の顔領域、背景にあるそれぞれの樹木の幹の領域、空の領域などである。通常、これらの領域の相互境界は輪郭線となっている。境界線抽出部30によって、画像領域を対象として輪郭(エッジ)が抽出される処理が行われるが、エッジ情報の抽出方法に関しては、特に特殊な方法を使用する必要はなく、一般的な方法により抽出する。例えば、下記記載のような方法が挙げられる。
【0069】
<3−2−1.画像境界線抽出の第1方法>
図8および図9は、画像境界線抽出の第1方法について説明する図である。図8では、主カメラMCで得られた基準画像SGを入力画像として例示し、図9では、この基準画像SGに対して、一般的なエッジ検出用のフィルタ処理を施した図を示す。図9で示されるように、被写体OBや背景BGのエッジ情報により、輪郭情報を領域候補として抽出することができる。
【0070】
<3−2−2.画像境界線抽出の第2方法>
図10は、画像境界線抽出の第2方法について説明する図であり、入力画像は、図8の基準画像SGと同様ではあるが、周辺との色情報または、輝度情報をもとに画像境界線を抽出する方法を説明する図である。具体的には、ある画素の色情報、または輝度情報と、周辺の色情報、または輝度情報との比較を行い、差分値が所定の閾値より小さい場合は、同じ領域として統合し、統合領域の大きさに従って対象領域を抽出し、抽出した後の結果に対して、エッジ検出を実施する。
【0071】
<3−2−3.画像境界線抽出のその他の方法>
上記第1、第2方法以外にも、一般的な領域切り出し方法による領域候補抽出を実施することもできる。例えば、特開2010−122734号公報等で公知の平均値シフト法(Mean Shift法)や特開2010−110556号公報等で公知のグラフカットなどが利用できる。
【0072】
<3−3.距離計測部20および第1距離画像取得部40>
距離計測部20では、所定の原点位置から被写体各部への距離を計測する。そして、その計測距離結果に基づいて、第1距離画像取得部40では、距離情報を表現した第1距離画像D1を取得する。この実施形態では、次のような対応点探索処理によって第1距離画像D1を取得する。
【0073】
一般に、対応点探索処理では、対応点基準画像上の任意の注目点に対応する対応点参照画像像上の点(対応点)を探索して求め、得られた注目点と対応点との関係から視差情報を得た後、当該視差情報から距離情報を取得する。なお、対応点参照画像とは、対応点基準画像に対応する画像である。具体的には、ステレオ画像においては、同時刻に撮像した一対の画像のうち一方が対応点基準画像であり、他方は対応点参照画像である。また、時系列画像においては、同一のカメラで撮影された画像のうち、時間的に前の画像が対応点基準画像であり、時間的に後の画像が対応点参照画像である。この対応点基準画像上の注目点に対してテンプレートが設定され、このテンプレートと対応する対応点参照画像上のウインドウが探索され、この探索されたウインドウから対応点が求められる。
【0074】
図11は、この実施形態での対応点探索処理を説明する概念図である。図11(a)は対応点参照画像CRGとしてサブカメラSCで得られた第2撮像画像G2を示し、図11(b)は対応点基準画像CSGとしてメインカメラMCで得られた第1撮像画像G1を示す。対応点基準画像CSG中の各画素について、対応点参照画像CRGの破線で囲まれた領域CP中の対応画素を求めて行く。なお、対応点基準画像CSGの全体領域は、対応点参照画像CRGの領域CPに対応しており、領域CPが拡大されたものとなっている。
【0075】
このような対応点探索の具体的な方法は公知であり、位相情報により対応点探索を行う方法としては、例えば、下記のような方法が挙げられる。
・位相限定相関法(Phase Only Correlation: POC)を用いた対応点探索
・位相差解析法(Phase Shift Analysis: PSA)を用いた対応点探索
また、輝度情報を基に対応点探索を行う方法としては、例えば、下記のような方法が挙げられる。
・SAD(Sum of Absolute Difference)法を用いた対応点探索
・SSD(Sum of Squared intensity Difference)法を用いた対応点探索
NCC(Normalized Cross Correlation)法を用いた対応点探索
そして、このような対応点探索の結果に基づいてステレオカメラから被写体各部への距離を画素単位で表現した第1距離画像D1を生成する。
【0076】
ステレオカメラを用いた第1距離画像D1の生成において、2つの画像のうち画素数が少ない画像を基準画像として使用するときには、サブピクセル単位での対応点探索が行われる。
【0077】
図11(c)は、対応点基準画像CSGとして図11(a)における第2撮像画像G2を採用し、それにサブピクセルを設定する例を模式的に示す図である。さらに、図11(d)は、画素数が多い方の図11(b)の第1撮像画像G1に相当する画像を対応点基準画像CSGとした例を示す。
【0078】
相関法を用いた対応点探索処理では、対応点基準画像CSG上の注目点に対して対応点参照画像CRG上の対応点を求めるために対応点参照画像CRG上を1画素ずつサンプリングするという処理がなされる。
【0079】
図11(d)で示されるように、対応点基準画像CSGの倍率が高く、対応点参照画像CRGの倍率が低いような場合、すなわち、有効画素数の多い側を対応点基準画像CSGとした場合には、複雑な処理を施すことなく、サブピクセル単位まで対応点探索処理を実施することができる。これに対し、図11(c)で示されるように、対応点基準画像CSGの倍率が低く、対応点参照画像CRGの倍率が高いような場合には、サンプリング間隔が大幅に異なり、対応点参照画像CRGの情報が抜け落ちて精度の良い距離情報の取得が困難となる。後記のような距離情報の補正処理は、領域境界付近での距離情報の誤差の補償を主目的とするが、このようなサブピクセル探索に起因する誤差の補償としても有意義である。
【0080】
図11(c)では、サブピクセル単位まで対応点探索処理を実施するために、1つの画素を横方向に3分割して3つのサブピクセルを設定した例を示しているが、画素の分割はこれに限定されるものではなく、また、さらに細かく分割することも可能である。これにより、対応点基準画像CSGと対応点参照画像CRGとで倍率が異なるような場合でも、サンプリング間隔を一致させることができる。すなわち、注目点OPがサブピクセルレベルの位置である場合に、注目点OPであるサブピクセルSPを中心にして探索用テンプレートTPを設定することになる。
【0081】
なお、サブピクセルの推定方法としては、例えば、特開2001−195597号公報などに、画像間の相関値を算出後、最も相関値の高い位置とその周辺の相関値との位置関係から、画素と画素との間の相関値を直線式または曲線式に当て嵌めることによって補間し、相関値のピーク位置およびピーク値を推定する方法が開示されており、この推定方法を使用することができる。
【0082】
これらの対応点探索法のいずれにおいても、領域境界付近など距離情報算出が不得意な対象領域が存在する。それは、領域の境界線をはさんで一方の領域での対応点探索に、他方の領域の画像情報が混入しやすいことに起因する。これはエッジ付近の画像の不鮮明さという原因だけでなく、異なる視線から被写体を見た2つの画像(あるいは異なる時刻で被写体を見た2つの画像)を比較するのであるから、領域境界の画像情報は視差の影響を受けやすいことにも関係している。
【0083】
このような対応点探索による距離画像の生成だけでなく、後に「変形例」として説明する他の方法によって距離計測を行って距離画像を生成しても、やはり領域境界の付近では距離算出の誤差が生じやすい。
【0084】
そこで、この発明の実施形態では、以下のような距離情報の補正処理を行う。
【0085】
<3−4.距離情報補正部50および第2距離画像生成部60>
第1距離画像取得部40により取得した第1距離画像D1は、図2および上記で説明したように、被写体の輪郭部分などにおいては遠近競合による計測誤差を含む傾向にあるため、距離情報補正部50により補正を行う。その際、まず、第1距離画像D1中において、基準画像SGでの境界線抽出部30で抽出した境界線に対応する位置に仮想境界線を設定する。次に、第1距離画像D1のうち仮想境界線をはさんで互いに隣接する領域のうち少なくとも一方を補正範囲とする。そして、仮想境界線に近づく方向についての距離情報の変化を抑制する補正を第1距離画像D1に対して行い、最終的に、第2距離画像生成部60によって第2距離画像D2が生成される。ただし、ここにおける「抑制」とは、変化をゼロにして完全に平坦とする場合と、変化率の絶対値を減少させる場合との双方を含む概念である。
【0086】
ここで、「仮想境界線」と呼ぶのは次のような理由による。すなわち、第1距離画像D1においては境界付近の誤差が大きいため、第1距離画像D1自身から境界線の位置を特定することは好ましくない。そこで、通常の2次元画像である基準画像SGで検出した境界線を流用して第1距離画像D1での境界線の位置を推定するのであるが、その境界線位置は第1距離画像D1自身から抽出したものではないため、第1距離画像D1にとっては借用した境界線、あるいは仮想的な境界線ということになるためである。
【0087】
距離情報補正部50では、仮想境界線の位置を基準として、補正範囲の設定を行う補正範囲設定部41と、当該補正範囲内の画素のうち、所定の判定条件を満たす距離情報を持った画素のみを補正対象画素とする補正判定を行う補正判定部42と、補正距離を生成する補正距離生成部43とを備えている(図4参照)。すなわち、この距離情報の補正は、境界線抽出部30で算出されたエッジ情報に基づいて、第1距離画像D1に対して、補正範囲、補正の有無判定および補正方法の設定を行うことで補正を実施する。なお、上述した対応点探索方法と他の距離計測方法とでは、計測誤差が発生する位置が異なるが、距離情報補正部50により問題なく補正することができる。
【0088】
以降、距離情報の補正に関して、図4の補正範囲設定部41、補正判定部42、および、補正距離生成部43のそれぞれの機能について、順次説明する。
【0089】
<3−4−1.補正範囲設定部41>
図12および図13は、第1距離画像D1における補正範囲の設定方法を説明する概念図である。概念図として、図12(a)及び図12(b)の下側に示されるような、近距離領域NDと遠距離領域FDとが重なり合った被写体部分が存在した場合、隣接する2つの領域ND,FDの境界を通る帯状エリアAR内の距離を正確に計測できたとすると、図12(a)の上側で示される距離情報を得ることができる。しかしながら、実際には、図12(b)の上側で示される距離計測結果のように、エリアARの領域境界付近ABに対応した距離情報では、遠近競合の影響による誤距離が発生しやすい。これは、先にも説明したように、エリアARの領域境界付近ABに遠距離と近距離との両方の情報を含んでいるためである。そして、このような領域境界付近ABに対して上述したエリアベースの対応点探索を実施すると、誤距離が発生する可能性が高くなるからである。そこで、このような領域境界を考慮して距離情報を補正するために、補正範囲設定部41では、前述した仮想境界線の位置を基準として、補正範囲の設定を行う。補正範囲の設定方法としては、例えば、下記方法が挙げられる。
【0090】
<3−4−1−1.範囲設定の第1方法>
補正範囲設定部41が、補正範囲として、第1距離画像D1において、仮想境界線からの平面距離が所定の値以下の画素範囲を設定する。すなわち、境界線抽出部30により抽出したエッジ情報を基に、範囲設定を行う。
【0091】
図13は、補正範囲の設定を例示した図である。図13(a)では、基準画像SGにおいて、境界線抽出部30で抽出した近距離領域NDの領域境界線NBと遠距離領域FDの領域境界線FBとを示す。図13(b)では、第1距離画像D1において、基準画像SGでの境界線に対応する位置に近距離領域NDでは仮想境界線NB’を示し、遠距離領域FDでは仮想境界線FB’を示している。図13(c)では、第1距離画像D1のうち仮想境界線NB’,FB’からの平面距離(2次元画像上の距離)が所定の値以下の画素範囲をそれぞれ補正範囲NA,FAと設定することを示した図である。
【0092】
図13で示されるように、エッジ情報を各被写体の領域境界とし、抽出されたエッジ情報上の位置、あるいは、予め指定しておいた範囲の領域に対して、補正処理の範囲を設定する。ここで、指定する範囲の幅としては、各領域境界に対し、一律にしても良いが、図13(c)で示されるように、近距離領域NDの補正範囲NAを規定する帯状領域の幅Wnが、遠距離領域FDの補正範囲FAを規定する帯状領域の幅Wfと比べて大きくなっている。すなわち、第1距離方法画像D1の補正範囲は、仮想境界線FB’,NB’のそれぞれの両側に平面距離Wf/2,Wn/2だけ広げた帯状領域とされるが、その幅、すなわち仮想境界線FB’,NB’から補正範囲の外縁までの平面距離は、当該仮想境界線が囲む領域の距離情報に応じて可変に設定することもできる。
【0093】
例えば、遠距離領域FDの補正範囲FAは、対応点探索を実施する際に設定されるウインドウサイズの領域を補正対象の範囲と設定し、近距離領域NDの補正範囲NAは、距離情報算出結果で得られた被写体各部の視差のうちの最大視差に応じた幅を持つ範囲で実施しても良い。被写体部分が近距離にあるほど視差は大きくなるため、最大視差は、被写体のうちカメラから最も近い部分までの距離を反映しているためである。このような方法で可変にすることで、シーンに応じた最適な補正処理が実施できる。この方法では、例えば、多重解像度変換を行った対応点探索などに効果的である。
【0094】
<3−4−1−2.範囲設定の第2方法>
補正範囲設定部41が、補正範囲として、第1距離画像D1において、仮想境界線の距離情報との相違量が所定の値以下の距離情報を持つ画素範囲を設定する。すなわち、図13の場合では、近距離領域ND(あるいは遠距離領域FD)内の各画素の距離情報と仮想境界線NB’(あるいは仮想境界線FB’)の距離情報とを比べて、両者の距離情報の相違量が所定の閾値以下である画素からなる範囲が、補正範囲FA(あるいは補正範囲NA)として設定される。
【0095】
ここで指標となる「相違量」は、差または比で表現することができる。また、第1の方法と同様に、距離情報の相違量の閾値としては、各領域境界に対し、一律にしても良いが、仮想境界線ごとの距離情報に応じて変更しても良い。
【0096】
<3−4−1−3.範囲設定の第3方法>
補正範囲設定部41が、第1距離画像D1の全体を、補正範囲として設定する。すなわち、補正範囲の設定方法としては、上記のように領域境界の付近に限定せず、全範囲を補正範囲としても良い。この場合も、境界領域が補正範囲に含まれるから、この発明の特徴に対応した「境界領域での補正」という概念に含まれる。
【0097】
以上の第1、第2の設定方法において、補正範囲設定部41は、補正範囲として、仮想境界線の両側の領域を設定する。
【0098】
ただし、第1〜第3の方法において、仮想境界線が閉曲線を形成していない領域は、補正範囲設定部41により当該補正範囲から除外する例外処理が行われる。これは、基準画像中の線状ノイズを輪郭線として扱ってしまうことを防止するためである。ここで言う「閉曲線」とは、折れ線で形成された閉じた図形をも含む概念である。
【0099】
閉曲線を形成するか否かの判断にあたっては、画面範囲の外枠に相当する矩形ラインも輪郭線とみなして閉曲線を抽出することにより、一部のみが画角に入っている被写体領域も補正対象とすることができる。
【0100】
逆に、画面範囲の外枠に相当する矩形ラインを輪郭線としては扱わないことにより、本来の輪郭線に相当する閉曲線のみを補正の対象とすることもできる。通常、主たる被写体部分は画面の中央領域にあるため、輪郭線が画面の端で切れているような領域を補正対象外としても影響は少ない。
【0101】
補正の精緻性を重視する場合には前者を、補正処理の高速性を重視する場合には後者を選択できる。
【0102】
<3−4−2.補正判定部42>
補正判定部42では、補正範囲内の画素のうち、所定の判定条件を満たす距離情報を持った画素のみを補正対象画素とする補正判定を行う。すなわち、補正判定部42により、補正範囲設定部41によって設定された補正範囲内において、補正の実施の有無を決定する。補正判定対象位置、および、補正判定条件の例は以下の通りである。
【0103】
<3−4−2−1.補正判定対象位置:第1設定方法>
図14は、補正判定対象位置の第1設定方法について説明する図である。図14で示されるように、設定された補正範囲内の各画素P単位で、つまり個々の画素に対して、判定が実施される。すなわち、補正判定部42が、補正判定を補正判定対象として画素単位で行う。
【0104】
<3−4−2−2.補正判定対象位置:第2設定方法>
図15は、補正判定対象位置の第2設定方法について説明する図である。図15で示されるように、設定された補正範囲内において、仮想境界線NB’を跨いだ画素P1と画素P2との2点の画素間の間に含まれる画素全てに対して、判定が実施される。ただし、画素P1,P2はそれぞれ、仮想境界線の両側の補正範囲内でそれぞれ選択された画素である。
【0105】
すなわち、補正判定部42が、補正判定を補正判定対象として2点間を結びかつ仮想境界線と交差する画素列を単位として扱い、その画素列のうちの所定個数の画素(あるいは所定割合以上の画素)が下記の補正判定条件を満足すれば、画素P1,P2がそれぞれ属する補正範囲の各画素について補正を行う。
【0106】
<3−4−2−3.補正判定対象位置:第3設定方法>
補正判定部42が、各領域内の全画素に対して判定が実施される。すなわち、図14および図15の場合、近距離領域NDおよび遠距離領域FDの各領域全てに対して、判定が実施される。したがって、この第3設定方法は、既述した「範囲設定の第3方法」との組合せに適している。
【0107】
<3−4−2−4.補正判定条件>
補正判定部42が上記の判定対象画素に対して補正を行うかどうかを判定する。
【0108】
その判定条件として好ましい第1例は、判定対象画素から仮想境界線に向かう方向についての、当該判定対象画素の距離情報をRとしたとき、この距離情報Rと、当該判定対象画素に隣接する画素の距離情報(R+ΔR)との差分の絶対値|ΔR|が、所定の閾値以上となっているという条件である。すなわち、その付近での距離情報の変化が大きいときには、仮想境界線の反対側領域の距離情報の影響を受けていると判断して、補正対象とする。
【0109】
隣接画素間の水平距離は固定されているから、差分ΔRを指標とするという判定基準は、距離情報Rの変化の微分係数を指標とする判定や、距離情報Rの変化の傾斜角度を指標とする判定と等価である。
【0110】
ただし、ノイズによって偶発的に差分が大きくなっている画素を除外する目的で、上記差分ΔRは、当該判定対象画素に隣接する1画素との間の差分だけなく、判定対象画素に隣接して連続する複数の画素との間の差分値の平均などを指標としてもよい。
【0111】
判定条件の他の例は、判定対象画素から仮想境界線に向かう方向についての、当該判定対象画素の距離情報の変化率ΔR/Rの絶対値|ΔR/R|が、所定値以上となっているという条件である。この変化率は、隣接する2画素間での変化率であってもよく、判定対象画素に隣接して連続する3以上の画素間での平均変化率であってもよい。
【0112】
<3−4−3.補正距離生成部43>
上記の補正範囲設定部41によって設定された補正範囲内に対して、補正判定部42が行った補正有無の判定結果に基づいて補正が実施される。
【0113】
このうち、距離情報補正部50は、補正距離生成部43が、同一側画素列と反対側画素列とのうち、少なくとも同一側画素列の内側画素の距離情報を用いて補正距離を生成し、補正対象画素の距離情報の補正を行う。
【0114】
距離情報補正部50で採用される好ましい補正方法の内容は以下の通りである。それにおいて参照される図16以下の各図において、横軸は画素位置を示し、縦軸は距離情報を示す。補正対象領域CAの画素列の両端のうち境界基準位置QMは仮想的境界線上の位置であり、初期基準位置Q1は、補正対象領域CAの画素列の両端のうち、境界基準位置QMではない方の位置である。さらに、下記では仮想的境界線をはさんだ両側の補正対象領域CA,RAのうち一方領域CAのみについて説明するが、他方領域RAについても同様の補正を行うことができる。他方領域RAについての初期基準位置は、境界基準位置QMをはさんで一方領域CAの開始基準位置Q1の反対側に存在する。
【0115】
また、それぞれの図のうち(a)は補正前の距離情報を示し、(b)は補正後の距離情報を示す。記号S(i)は各画素位置についての距離情報値であり、添字「i」を画素位置の識別符号である。
【0116】
<3−4−3−1.第1補正方法>
図16は、第1補正方法について説明する図である。図16(a)は、補正前の同一画素列に属する画素が補正対象領域CAであり、境界基準位置QMを境に、反対側画素列として参照対象画素列RAが存在することを示し、図16(b)は、図16(a)の補正後の画素値(距離情報)を示す。
【0117】
図16で示されるように、第1補正方法では、補正対象である距離情報値S(N)を、外側画素に相当する距離情報値S(N−1)をもって、距離情報値S(N)とする補正を行う。なお、距離情報値S(N)とせず、予め決めておいた固定値による補正でも良い。
【0118】
以上のように、距離情報補正部50は、同一側画素列に属する補正対象画素の距離情報の値を、当該補正対象画素の内側画素の距離情報の値を用いて一定化する補正を行う。
【0119】
<3−4−3−2.第2補正方法>
図17は、第2補正方法について説明する図である。図17(a)は、補正前の同一画素列に属する画素が補正対象領域CAであり、境界基準位置QMを境に、反対側画素列として参照対象領域RAが存在することを示し、図17(b)は、図17(a)の補正後の画素を示す。ここで、各画素位置について、隣接する画素との間の距離情報の変化に対応する傾斜角をθ(i)とする。添字「i」は画素位置の識別符号である。
【0120】
図17で示されるように、第2補正方法では、補正対象位置QNでの傾斜角θ(N)を、外側画素に相当する傾斜角θ(N−1)をもって、傾斜角θ(N)とする補正を行う。なお、傾斜角をθ(N)とせず、予め決めておいた固定値による補正でも良い。
【0121】
以上のように、距離情報補正部50は、同一側画素列に属する補正対象画素の距離情報の変化率を、当該補正対象画素の内側画素における距離情報の変化率を用いて一定化する補正を行う。
【0122】
<3−4−3−3.第3補正方法>
図18は、第3補正方法について説明する図である。この方法では、初期基準位置Q1から仮想境界線(境界基準位置QM)までの区間内にある各補正対象画素Paについて、初期基準位置Q1に関して対称な位置にある画素(対称画素)Pbの距離情報Sbとしたときに、補正対象画素Paについての補正後の距離情報Sa’と初期基準位置Q1での距離情報S0との差が、距離情報S0と距離情報Sbとの差の正負符号を比例するように、補正対象画素Paについての補正を行うことにより、各補正対象画素の距離情報の変化を抑制する。
【0123】
具体的には、
Sa’−S0=Sb −S0
の関係を満足するように補正を行うことになるから、等価的に、
Sa=2×S0−Sb
を、補正対象画素Paの補正後の距離情報値とする。
【0124】
たとえば、
Sa=100; S0=40; Sb=20
(ただし、Saは着目画素Paの補正前の距離情報)の場合には、
Sa’=2×40−20=60
に補正される。
【0125】
より一般的には、所定の比例係数k(ただし、k>0)を用いて
Sa’−S0=k×(Sb −S0)
の比例関係となるように、すなわち
Sa’=(1+k)×S0−k×Sb
によって補正をすることが可能であり、このうちk=1の場合が上記の例に相当する。
【0126】
以上のように、距離情報補正部50は、仮想境界線から離れた位置に基準位置を設定し、基準位置での距離情報を第1距離情報とし、基準位置から仮想境界線までの区間内の各補正対象画素について、基準位置に関して対称な位置にある画素の距離情報を第2距離情報としたとき、補正対象画素についての補正後の距離情報と第1距離情報との差が、第1距離情報と第2距離情報との差の正負符号を反転させた値に比例するように補正対象画素についての補正を行う。
【0127】
<3−4−3−4.第4補正方法>
図19は、第4補正方法について説明する図である。ここでは、補正対象領域CAの画素列の距離情報の変化の傾き(傾斜角度の大きさおよび符号)に応じて、距離情報の補正値を変化させる。たとえば、図19(a)のように境界基準位置QMに向かって距離情報が増加する変化の場合には、その変化の傾き角を小さくするように補正する(図19(b))。一方、図19(c)のように境界基準位置QMに向かって距離情報が減少する変化の場合には、その傾きの符合を逆にするような補正を行う(図19(d))。いずれの場合も、補正前の距離情報の変化と比較して、抑制された距離情報の変化状況となる。
【0128】
以上のように、距離情報補正部50は、同一側画素列に属する補正対象画素の距離情報の変化率(変化の正負符号を含む)を変更して補正を行う。
【0129】
<3−4−3−5.第5補正方法>
図20は、第5補正方法について説明する図である。図20(b)で示されるように、この第5補正方法では、基準点Q1,QM間の補正対象領域CAの各画素の距離情報値が、段階的に変化するように計測距離情報を補正する。
【0130】
具体的には、距離情報の変化率に応じた複数の隣接画素を小集団とし、小集団を単位として段階的に距離情報値を変換させる。変化率が比較的小さい領域では比較的多くの画素(図示例では3個の画素で示している)で小集団を構成し、変化率が比較的大きい領域では比較的少ない画素(図示例では2個の画素で示している)で小集団を構成する。
【0131】
この第5補正方法では、複数の隣接画素からなる小集団のそれぞれの内部で距離情報の変化が抑制されており、「局所的な変化の抑制」の集合としての補正処理となっている。
【0132】
以上のように、距離情報補正部50は、仮想境界線に近づく方向についての距離情報の変化を段階的に抑制する補正を行う。
【0133】
<3−4−3−6.他視点情報を考慮した補正方法>
距離情報補正部50は、後述する他視点画像を生成する際の視線情報によって補正を実施することも可能である。抽出された仮想境界線に対し、予め指定した補正対象領域CAにおいて、2点の基準位置Q’1,Q’2を設定し、後述する他視点画像生成部(第2視点画像生成部)80で設定される視線情報により、傾斜角度が急な傾斜となるように補正するか、あるいは、緩やかな傾斜になるように補正するかを変更し補正する。
【0134】
図21は、他視点情報を考慮した補正方法について説明する図である。図21(a)は、補正前の同一画素列に属する画素の距離情報を示し、図21(b)は、図21(a)の補正後の距離情報を示す。
【0135】
図21(c)のように視点を右側に移動させる場合(被写体を左側に移動させる場合)には、被写体中の遠距離領域のうち右側で近距離領域が接している端部A1では距離情報の変化が急峻となるように、あらかじめ定めた基準位置の間の区間において距離情報を補正し、遠距離領域の反対端部A2では距離情報の変化が緩やかになるように距離情報を補正する。視点の移動方向が逆の場合は、これとは逆の補正となる。
【0136】
すなわち、視点を右側に移動させると、遠距離領域の端部A1には近距離領域の左端部分が入り込んでくるため、図21(b)に示すように、基準位置Q’1,Q’2の間の区間において、遠距離領域の端部A1の距離情報値が近距離領域の距離情報値に早く近づくように急峻な変化へと補正する。これに対して、視点を右側に移動させたときの遠距離領域の端部A2では、近距離領域の右端部分が左へ移動して逃げてしまうため、近距離領域の距離情報値へ移行する変化を緩やかにする。後者は、既述した第1補正方法〜第5補正方法における変化の抑制原理と同じ考え方である。
【0137】
以上のような動作を実現させるには、他視点画像生成部80から視点の移動方向の情報を受け取り、視点の移動方向に応じて、輪郭線で囲まれた領域の左右両端部のうちの一方については距離情報の変化を急峻に、他方については距離情報の変化をゆるやかにするように、補正距離生成部43により補正を行う。
【0138】
上記の基準位置Q’1,Q’2は、基本的には、既述した第1補正方法〜第5補正方法の基準位置Q1,QMと同様の考え方を基礎とし、視点移動量に応じた修正をして定める。
【0139】
以上を「距離情報の変化の抑制」という観点から見たときには、他視点情報を考慮した補正方法を採用する場合については、視点が原点位置から別位置へと変化する方向に応じて、距離情報の変化の抑制を行う部分を選択し、その選択された部分について距離情報の変化の抑制を行うことになる。
【0140】
<3−5.視差画像生成部(第1視差画像生成部)70>
視差画像生成部(第1視差画像生成部)70では、第2距離画像D2を用いて原点位置から見た第1視差画像を生成する。すなわち、第1視差画像の生成は、距離情報補正部50によって補正された距離情報を用いて実施し、後述する他視点画像生成部80で設定される視線情報によって、更に補正処理を実施する。例えば、想定される視線方向について、隣接する領域の距離情報における差分が所定の閾値より小さくなる場合には、隣接する領域のそれぞれの距離情報の平均値を、それら隣接する領域の双方に与えてそれらの領域を統合した上で、第1視差画像を生成する。
【0141】
<3−6.他視点画像生成部(第2視点画像生成部)80>
他視点画像生成部(第2視点画像生成部)80では、視差画像生成部(第1視差画像生成部)70によって生成された第1視差画像に基づいて、原点位置とは異なる別位置から被写体を観察した距離画像としての第2視点画像を生成する。すなわち、図3で示されるように、外部情報IFを取り入れた他視点画像を生成する。具体的に、第2視点画像に相当する左右画像の作成については、以下の方法が挙げられる。
【0142】
<3−6−1.左右画像作成の第1方法>
他視点画像生成部80は、視差画像生成部70で生成された第1視差画像と基準画像SGとを基に、左右画像(左目用画像と右目用画像)の両方を作成する。具体的には、視差量の半分ずつずらして、左画像及び右画像を作成する。
【0143】
<3−6−2.左右画像作成の第2方法>
他視点画像生成部80は、視差画像生成部70で生成された第1視差画像と基準画像SGとを基に、左右画像の何れか一方を作成する。すなわち、基準画像SGを左画像とすれば、右側の視差情報を作成するよう視差量をずらして右画像を作成することになり、基準画像SGを右画像とすれば、左側の視差情報を作成するよう視差量をずらして左画像を作成することになる。
【0144】
このように、第1及び第2方法ともに、他視点画像生成部80は、基準画像SGおよび第1視差画像を用いて、左右画像の生成が行われ、ステレオ視画像が生成される。そして、得られたステレオ視画像(左右画像)は、液晶画面等のディスプレイ32に与えられ、3次元表示される。なお、ディスプレイ情報を画像に加味し、視差量を変更することで、画像を作成しても良い。
【0145】
また、他視点画像生成部(第2視点画像生成部)80での第2視点画像の生成において、視点が原点位置から別位置へと変化することにより、被写体のいずれの側の画像部分が視野内に新たに出現し、あるいは視野内から消失することがある。このような場合は、距離情報補正部50によって、前述した距離情報の変化についての補正の程度が変更される。
【0146】
<4.画像処理システムの基本動作>
図22は、本実施形態に係る画像処理システム1において実現される基本動作を説明するフローチャートである。既に各部の個別機能の説明は行ったため(図3および図4参照)、ここでは全体の流れのみ説明する。
【0147】
図22に示すように、まず、ステップS1において、撮像部10が、基準画像SGおよび参照画像RGを撮影し、両者の画像を取得する。ここでは、2台のカメラを用いて、基準画像SGは基準カメラMCで得られた画像とし、参照画像RGは参照カメラSCで得られた画像とするが、2台以上のカメラにより、画像の撮影および取得を行ってもよい。
【0148】
ステップS2では、撮像部10によって取得された基準画像SGの2次元画像に対し、境界線抽出部30が、画像の領域境界線を抽出する。
【0149】
ステップS3では、ステップS2と並行して、距離計測部20が、基準画像SG内の範囲に対して基準画像SGと参照画像RGとから対応点探索処理などを施して被写体各部への距離を演算によって求め、それに基づいて第1距離画像取得部40が、第1距離画像D1を取得する。なお、ステップS2の領域境界線を抽出する工程とステップS3の距離を計測する工程とは順次処理しても良い。順番に関しては、先に境界線抽出(ステップS2)を行っても、距離計測(ステップS3)を実施しても何れでも良い。
【0150】
ステップS4では、第1距離画像D1上において、ステップS2で抽出された基準画像SG上の境界線に対応する位置に仮想境界線を設定し、補正範囲設定部41が、当該仮想境界線の位置を基準として第1距離画像D1内に補正範囲を設定する。
【0151】
ステップS5では、補正判定部42が、ステップS4で設定した補正範囲内の画素のうち、計測距離情報の補正有無の判定を実施する。すなわち、所定の判定条件を満たす距離情報を持った画素のみを補正対象画素とする補正判定を行う。
【0152】
ステップS6では、ステップS5で判定した第1距離画像D1内の補正対象画素に対して、補正が実施される。すなわち、補正距離生成部43が、第1距離画像D1内の各補正対象画素に対して補正距離を生成し、第2距離画像生成部60が、第2距離画像D2を生成する。
【0153】
ステップS7では、視差画像生成部70が、ステップS6で補正された距離情報に基づいて、第2距離画像D2を用いて原点位置から見た第1視差画像を生成する。
【0154】
ステップS8では、他視点画像生成部80が、ステップS7で生成された第1視差画像に基づいて、原点位置とは異なる別位置から被写体を観察した距離画像としての第2視点画像(左右画像)を生成する。得られた左右画像は、液晶画面等のディスプレイ32に与えられ、3次元表示される。
【0155】
<5.変形例>
※ 第1距離画像の生成の基礎となる被写体各部までの距離計測は、既述した対応点探索法だけでなく、下記のような方法で取得されてもよい。
【0156】
(1) TOF(Time-of-Flight 距離画像センサ)
TOF方式(例えば、特開2001−304811等で公知技術)では、画像領域内の全画素に対して、距離計測を実施することが難しい。そこで、計測された画素以外の領域に対しては、計測点の補間を行うことが必要となる。補間方法としては、単純に周辺の情報による補間を行う方法があるが、補間を行うだけでなく、エッジ周辺においては、計測誤差が生じやすい。このため、この方法によって得られた第1距離画像について、既述したこの発明の実施形態の補正を行うことに特に意味がある。
【0157】
(2) 距離推定法
これは、2次元画像を3次元画像に変換する為に推定処理により立体視画像を生成する方法である。距離推定を用いた方法として、例えば、下記のような技術を採用することができる。
・3つのシーンモデルにより、撮影シーンを分類し、最も近いモデルにより立体形状を推定した後、画像の輝度情報などを基に前後に視差をずらして立体視画像を生成する技術であり、特開2006−185033号公報や特開2006−186510号公報などに開示されている。
・ 輝度情報を基に、視差の推定を行う技術であり、特開2006−319469号公報などに開示されている。
・時系列情報をベースに距離の推定を行うことで、視差の生成を行う技術であり、特開2000−261828号公報などに開示されている。
【0158】
上記方法においては、実際に距離計測を実施せず、距離を推定により算出していることから、推定に不得意な対象領域が存在する。そこで、既述した補正処理を実施することによってより正しい距離画像が得られる。
【0159】
以上のような距離計測を行う場合には、それによって距離画像が得られるから、距離情報を得るためにステレオカメラを用いる必要はなく、2次元画像としては、既述した実施形態における基準画像SGのみを取得すればよい。
【0160】
※ 本実施形態では、補正判定を実施した後に補正処理を行ったが、これに限られず、下記方法により補正判定と補正処理とを併合して行っても良い。
【0161】
(方法1)
図16で示されるように、設定した初期基準位置Q1の距離情報値S(1)とその内側画素に相当する距離情報値S(2)との差分の値を算出する。この差分の絶対値が、所定の閾値以上の場合は、補正処理を実施する。
【0162】
この処理を領域境界線上の隣接する画素間において位置QMに向かう方向に順次繰り返して実施する。そして、差分の絶対値|S(N)−S(N−1)|が所定の閾値以上の値を示す距離情報値S(N)が出現すれば、外側画素に相当する距離情報値S(N−1)をもって、距離情報値S(N)とする(この新たなS(N)の値をS’(N)と称する)。そして、距離情報値S(N)とその内側画素に相当する距離情報値S(N+1)との差分計算においては、新たに置き換えられた距離情報値S’(N)を用いて、差分の絶対値|S(N+1)−S’(N)|が算出される。
【0163】
以上のように、距離情報補正部50は、補正判定と補正処理とを併合して、同一側画素列に属する補正対象画素の距離情報の値を、当該補正対象画素の内側画素の距離情報の値を用いて一定化する補正を行ってもよい。
【0164】
(方法2)
図17で示されるように、設定した初期基準位置Q1の距離情報値S(1)とその内側画素に相当する距離情報値S(2)とを結ぶ直線の傾斜角θ(1)を算出する。この傾斜角が、所定の閾値以上の場合は、補正処理を実施する。この処理を領域境界線上の隣接する画素間において境界基準位置QMに向かう方向に順次繰り返して実施する。そして、傾斜角θ(N)が所定の閾値以上の値を示す位置QNが出現すれば、外側画素に相当する傾斜角θ(N−1)をもって、傾斜角θ(N)とする(この新たな傾斜角θ(N)をθ’(N)と称する)。なお、傾斜角をθ’(N)は、予め決めておいた固定値による補正でも良い。そして、距離情報値S(N+1)と距離情報値S(N+1)とから傾斜角θ(N+1)を計算する際は、新たに置き換えられた距離情報値S’(N)を用いて、傾斜角θ(N+1)が算出される。
【0165】
以上のように、距離情報補正部50は、補正判定と補正処理とを併合して、同一側画素列に属する補正対象画素の距離情報の変化率を、当該補正対象画素の内側画素における距離情報の変化率を用いて一定化する補正を行ってもよい。
【0166】
※ 本実施形態では、動作開始前に、上記第1〜第5補正方法のうち1つを予め選択した上で、補正処理を行ったが、これに限られない。例えば、第1距離画像D1の領域境界付近の状況によって第1距離画像D1の補正に使用する方法を画像部分ごとに切り替えるような場合に、使用する補正方法を選択する機能手段を設けても良い。
【符号の説明】
【0167】
10 撮像部
20 距離計測部
30 境界線抽出部
40 第1距離画像取得部
41 補正範囲設定部
42 補正判定部
43 補正距離生成部
50 距離情報補正部
60 第2距離画像生成部
70 視差画像生成部
80 他視点画像生成部
MC 主カメラ
SC 副カメラ
SG 基準画像
RG 参照画像
D1 第1距離画像
D2 第2距離画像

【特許請求の範囲】
【請求項1】
立体画像処理のための画像処理装置であって、
所定の原点位置から被写体各部への距離情報を表現した第1距離画像を取得する第1距離画像取得手段と、
前記被写体の2次元画像における前記被写体の複数の領域相互の境界線を抽出する境界線抽出手段と、
前記第1距離画像中において、前記2次元画像での前記境界線に対応する位置に仮想境界線を設定するとともに、前記第1距離画像のうち前記仮想境界線をはさんで互いに隣接する領域のうち少なくとも一方を補正範囲としつつ、前記仮想境界線に近づく方向についての距離情報の変化を抑制する補正を前記第1距離画像に対して行うことによって第2距離画像を生成する補正手段と、
を備え、
前記立体画像処理が、前記第2距離画像に基づいて行われることを特徴とする画像処理装置。
【請求項2】
請求項1に記載の画像処理装置であって、
前記補正手段は、
前記仮想境界線の位置を基準として、前記補正範囲の設定を行う補正範囲設定手段、
を備えることを特徴とする画像処理装置。
【請求項3】
請求項2に記載の画像処理装置であって、
前記補正範囲設定手段は、
前記補正範囲として、前記第1距離画像において、前記仮想境界線からの平面距離が所定の値以下の画素範囲を設定することを特徴とする画像処理装置。
【請求項4】
請求項2に記載の画像処理装置であって、
前記補正範囲設定手段は、
前記補正範囲として、前記第1距離画像において、前記仮想境界線の距離情報との相違量が所定の値以下の画素範囲を設定することを特徴とする画像処理装置。
【請求項5】
請求項2乃至請求項4のいずれかに記載の画像処理装置であって、
前記補正範囲設定手段は、
前記補正範囲として、前記仮想境界線の両側の領域を設定することを特徴とする画像処理装置。
【請求項6】
請求項2に記載の画像処理装置であって、
前記補正範囲設定手段は、
前記第1距離画像の全体を、前記補正範囲として設定することを特徴とする画像処理装置。
【請求項7】
請求項2乃至請求項6のいずれかに記載の画像処理装置であって、
前記補正範囲設定手段は、
前記仮想境界線が閉曲線を形成していない領域は、前記補正範囲から除外する例外処理を行うことを特徴とする画像処理装置。
【請求項8】
請求項2乃至請求項7の何れかに記載の画像処理装置であって、
前記補正手段は、
前記補正範囲内の画素のうち、所定の判定条件を満たす距離情報を持った画素のみを補正対象画素とする補正判定を行う補正判定手段、
を備えることを特徴とする画像処理装置。
【請求項9】
請求項8に記載の画像処理装置であって、
前記補正判定手段は、
前記補正判定を、画素単位で行うことを特徴とする画像処理装置。
【請求項10】
請求項8に記載の画像処理装置であって、
前記補正判定手段は、
前記補正判定を、2点間を結びかつ前記仮想境界線と交差する画素列を単位として行うことを特徴とする画像処理装置。
【請求項11】
請求項8乃至請求項10のいずれかに記載の画像処理装置であって、
前記補正判定条件は、
判定対象画素から前記仮想境界線に向かう方向についての、当該判定対象画素の距離情報と、当該判定対象画素に隣接する画素の距離情報との差分の絶対値が、所定値以上となっているという条件であることを特徴とする画像処理装置。
【請求項12】
請求項8乃至請求項10のいずれかに記載の画像処理装置であって、
前記補正判定条件は、
判定対象画素から前記仮想境界線に向かう方向についての、当該判定対象画素の距離情報の変化率の絶対値が、所定値以上となっているという条件であることを特徴とする画像処理装置。
【請求項13】
請求項1乃至請求項12のいずれかに記載の画像処理装置であって、
用語定義として、着目する補正対象画素に関して、
「交差画素列」を、当該補正対象画素を通りかつ前記仮想境界線と交差する線分の画素列によって定義し;
「外側画素」を、前記交差画素列のうちで、当該補正対象画素よりも前記仮想境界線に近い側において当該補正対象画素に隣接する画素によって定義し;
「内側画素」を、前記交差画素列のうちで、当該補正対象画素よりも前記仮想境界線に遠い側において当該補正対象画素に隣接する画素によって定義し;
「同一側画素列」を、前記交差画素列のうちで、前記仮想境界線を基準として当該補正対象画素と同じ側にある部分によって定義し;
「反対側画素列」を、前記交差画素列のうちで、前記仮想境界線をはさんで当該補正対象画素と反対側にある部分によって定義したとき、
前記補正手段は、同一側画素列と反対側画素列とのうち、少なくとも同一側画素列の内側画素の距離情報を用いて、補正対象画素の距離情報の補正を行うこと特徴とする画像処理装置。
【請求項14】
請求項13に記載の画像処理装置であって、
前記補正手段は、
同一側画素列に属する補正対象画素の距離情報の値を、当該補正対象画素の内側画素の距離情報の値を用いて一定化する補正を行うことを特徴とする画像処理装置。
【請求項15】
請求項13に記載の画像処理装置であって、
前記補正手段は、
同一側画素列に属する補正対象画素の距離情報の変化率を、当該補正対象画素の内側画素における距離情報の変化率を用いて一定化する補正を行うことを特徴とする画像処理装置。
【請求項16】
請求項13に記載の画像処理装置であって、
前記補正手段は、
前記仮想境界線から離れた位置に基準位置を設定し、
前記基準位置での距離情報を第1距離情報とし、
前記基準位置から前記仮想境界線までの区間内の各補正対象画素について、前記基準位置に関して対称な位置にある画素の距離情報を第2距離情報としたとき、
前記補正対象画素についての補正後の距離情報と前記第1距離情報との差が、前記第1距離情報と前記第2距離情報との差の正負符号を反転させた値に比例するように前記補正対象画素についての補正を行うことにより、前記補正対象画素の距離情報の変化を抑制する補正を行うことを特徴とする画像処理装置。
【請求項17】
請求項13に記載の画像処理装置であって、
前記補正手段は、
前記仮想境界線に近づく方向についての距離情報の変化を段階的に抑制する補正を行うことを特徴とする画像処理装置。
【請求項18】
請求項1ないし請求項17の何れかに記載の画像処理装置と、
前記第2距離画像を用いて前記原点位置から見た第1視差画像を生成する第1視差画像生成手段と、
前記視差画像生成手段によって生成された第1視差画像に基づいて、前記原点位置とは異なる別位置から前記被写体を観察した距離画像としての第2視点画像を生成する他視点画像生成手段と、
を備えることを特徴とする画像処理システム。
【請求項19】
請求項18に記載の画像処理システムであって、
前記補正手段は、
前記他視点画像生成手段での前記第2視点画像の生成において、視点が前記原点位置から前記別位置へと変化する方向に応じて、前記距離情報の変化の抑制を行う部分を選択することを特徴とする画像処理システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【公開番号】特開2012−79251(P2012−79251A)
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−226358(P2010−226358)
【出願日】平成22年10月6日(2010.10.6)
【出願人】(000001270)コニカミノルタホールディングス株式会社 (4,463)
【Fターム(参考)】