説明

画像処理装置及び画像処理方法

【課題】 リアルタイムにディザ処理を行なうと共に、閾値データを格納する格納部の有効活用を図った画像処理装置を提供する。
【解決手段】 入力画像の各画素の階調値を閾値マトリクスを用いたディザ処理により変換すると共に、入力画像の解像度を変換して出力する画像処理装置であって、複数の閾値マトリクスの閾値データを格納する閾値メモリ12と、出力する画像の解像度に応じて、複数の閾値マトリクスの閾値データを複数画素分読み出す読みアドレス制御部11と、複数画素分の複数の閾値マトリクスの閾値データを一時的に格納するバッファ0〜3と、バッファ0〜3から読み出された複数の閾値マトリクスの閾値データを、1画素ごとに格納するバッファ4〜7と、使用する閾値マトリクスの閾値データをバッファ4〜7から選択出力させる第1セレクタ13、第2セレクタ14とを有する構成としている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、閾値マトリクスを用いてディザ処理を行なう画像処理装置及び画像処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
画像処理装置で行われる画像処理の一つの形態として、原画像の階調値を画像出力装置で出力(表現)可能な階調値に変換して擬似的に再現するディザ法が知られている。ディザ法では、原画像を構成する各画素の階調値を、閾値マトリクスに配列された閾値データと比較することにより、出力画像の階調値を決定する。出力画像の階調値が2値となるものは2値ディザ法、多値となるものは多値ディザ法と呼ばれる。
【0003】
図8は従来の画像処理装置の構成例を示す概略図である。図において、アドレス制御部101は、閾値格納メモリ102に対して閾値読み出しのための閾値格納メモリアドレス(以下、単に「アドレス」とも記す)を指定する。閾値格納メモリ102は、ディザ処理に用いられる閾値マトリクスの各位置(マトリクス要素)に対応する閾値データを記憶する。比較部103は、これに入力される入力画像データの各画素の階調値と、これに対応して閾値格納メモリ102から読み出された閾値データとを比較するとともに、この比較結果に基づいて階調変換された出力画像の画素データを生成する。
【0004】
まず、上記ディザ法に基づく処理(ディザ処理)で使用される閾値マトリクス内に配列される閾値データが閾値格納メモリ102に格納される。この場合、閾値格納メモリ102において、1つのアドレスに1つの閾値データを格納することが公知となっている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
そして、実際にディザ処理を行う場合は、所定の周波数のクロックに同期してアドレス制御部101がアドレスを順に指定して閾値格納メモリ102から閾値データを順次読み出すとともに、この読み出した閾値データと入力画像の階調値とを比較部103で比較し、この比較結果に基づいて出力画像の階調値を生成する。これにより、代表的な2値ディザ法である組織的ディザ法では、例えば、原画像を4×4画素や8×8画素のブロックに分割し、各々のブロックごとに、入力画素の階調値がこれに対応するマトリクス位置の閾値データよりも大きい場合は白(1)、小さい場合は黒(0)とすることによって入力画像を2値化する。
【0006】
【特許文献1】特開平4−205675号公報(第4図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、入力画像の解像度(以下、「入力解像度」とも記す)と出力画像の解像度(以下、「出力解像度」とも記す)が同じ場合は、入力画素の数と出力画素の数が1:1の関係となる。そのため、ディザ処理を行う場合は、1つの入力画素を1つの閾値データと比較することになる。したがって、上記クロックに同期してリアルタイムにディザ処理を行うことができる。
【0008】
しかしながら、入力解像度よりも出力解像度が高い場合や、入力画像を複数の画素からなるブロック単位でディザ処理する場合などでは、比較部103で入力画素の階調値と比較される閾値データが複数必要になる。そうした場合、上記従来技術のように1つのアドレス(1ワード分の閾値格納メモリ領域)に1つの閾値データを格納する方式では、閾値格納メモリ102からの閾値の読み出し動作に合わせてリアルタイムにディザ処理を行うことができなくなる。
【0009】
また、入力画像の解像度を変換して出力する場合に、2400×600dpi、1200×1200dpiなど複数の出力解像度に対応しなければならない場合がある。この場合、出力解像度に応じて使用する閾値データ数が異なるため、出力解像度が低い時には、使用しない閾値格納メモリ102が出来てしまうという問題がある。
【0010】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、リアルタイムにディザ処理を行なうと共に、閾値データを格納する格納部の有効活用を図った画像処理装置及び画像処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
かかる目的を達成するために本発明の画像処理装置は、入力画像の各画素の階調値を閾値マトリクスを用いたディザ処理により変換すると共に、前記入力画像の解像度を変換して出力する画像処理装置であって、複数の閾値マトリクスの閾値データを格納する閾値メモリと、出力する画像の解像度に応じて、前記複数の閾値マトリクスの閾値データを複数画素分読み出す読み出し手段と、前記複数画素分の前記複数の閾値マトリクスの閾値データを一時的に格納する第1の一時格納手段と、前記第1の一時格納手段から読み出された前記複数の閾値マトリクスの閾値データを、1画素ごとに格納する第2の一時格納手段と、使用する前記閾値マトリクスの閾値データを前記第2の一時格納手段から選択出力させる選択手段とを有する構成としている。
【0012】
このように本発明は、出力する画像の解像度に応じて、複数の閾値マトリクスの閾値データを複数画素分読み出し、第1の一次格納手段と第2の一次格納手段とに順次格納することで、複数の閾値マトリクスの閾値データを、1画素ごとに格納した状態とする。これにより、入力画像に応じて使用する閾値マトリクスの閾値データを選択することができ、使用するスクリーンの枚数をメモリや一次格納手段を増やすことなく増やすことができる。
【0013】
上記の画像処理装置において、前記選択手段によって選択された前記閾値データと、前記入力画素の各画素の階調値と比較し、比較結果を出力する比較手段を有するとよい。
【0014】
選択された閾値データと、入力画素の各画素の階調値と比較して出力することで、閾値マトリクスを用いたディザ処理により入力画像の各画素の階調値を変換することができる。
【0015】
本発明の画像処理方法は、入力画像の各画素の階調値を閾値マトリクスを用いたディザ処理により変換すると共に、前記入力画像の解像度を変換して出力する画像処理方法であって、出力する画像の解像度に応じて、複数の閾値マトリクスの閾値データを複数画素分選択するステップと、前記複数の閾値マトリクスの閾値データを、1画素ごとに格納手段に格納するステップと、使用する前記閾値マトリクスの閾値データを前記格納手段から選択出力するステップと、を有している。
【0016】
このように本発明は、出力する画像の解像度に応じて、複数の閾値マトリクスの閾値データを複数画素分読み出し、複数の閾値マトリクスの閾値データを、1画素ごとに格納した状態とする。これにより、入力画像に応じて使用する閾値マトリクスの閾値データを選択することができ、使用するスクリーンの枚数をメモリや一次格納手段を増やすことなく増やすことができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明は、リアルタイムにディザ処理を行なうことができると共に、メモリの有効活用を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
添付図面を参照しながら本発明の好適な実施例を詳細に説明する。
【実施例1】
【0019】
まず、図1を参照しながら本実施例の構成を説明する。図1において、原稿台1上に載置された原稿2は、光源及び走査ミラー等からなる走査光学系を介して、カラーCCDセンサ3を備えたイメージスキャナによりR(レッド),G(グリーン),B(ブルー)のアナログ画像信号として読み取られる。そして、上記カラーCCDセンサ3によって読み取られたR,G,Bのアナログ画像信号は、画像処理部4によってY(イエロ),M(マゼンタ),C(シアン),K(ブラック)の各色の画像形成ユニット5C,5M,5Y,5KのROS(Raster Output Scanner)7C,7M,7Y,7Kに各色の画像データが順次出力され、これらのROS7C,7M,7Y,7Kから画像データに応じて出射されるレーザビームが、それぞれの感光体ドラム6C,6M,6Y,6Kの表面に走査露光されて静電潜像が形成される。各感光体ドラム6C,6M,6Y,6K上に形成された静電潜像は、現像器8C,8M,8Y,8KによってそれぞれY,M,C,Kの各色のトナー像として現像される。
【0020】
図2を参照しながら画像処理部4の構成について説明する。図2に示す画像処理部4は、入力画像データに対してディザ処理を施す処理部であり、入力画像データの解像度を変換して出力することができる。例えば、図2に示す画像処理部4は、解像度600dpi×600dpiの入力画像を、解像度1200dpi×2400dpi、又は1200dpi×1200dpiの出力画像に変換する。
【0021】
画像処理部4は、図2に示すようにアドレス制御部11と、閾値メモリ12と、バッファ0〜3と、バッファ4〜7と、第1セレクタ13と、第2セレクタ14と、比較器15とを備えている。
【0022】
図3に示すタイミングチャートを参照しながら画像処理部4の動作を説明する。図3に示すタイミングチャートにおいて、基準クロックCLKに同期してページシンクPS−i及びラインシンクLS−iが順に立ち上がると、ラインシンクLS−iの立ち上がりタイミングをトリガとして、入力画像の各画素の階調値データDATA−In[7:0]が1クロックCLKごとにバッファ0〜3に順次書き込まれる。アドレス制御部11が閾値メモリ12のアドレスを指定することで、閾値メモリ12の指定されたアドレスの閾値データがバッファ0〜3にそれぞれ記録される。本実施例では、1クロックで8ピクセル分の閾値データが読み出され、バッファ0〜3のいずれかに書き込まれる。すなわち、4クロック(図3に示すバッファ0〜3の書き込み信号)かけてバッファ0〜3に8ピクセル分の閾値データがそれぞれ書き込まれる。
【0023】
バッファ0〜3に書き込まれた閾値データは、1クロックでバッファ4〜7に出力される(図3に示すバッファ4、5、6、7書き込み信号)。この時、バッファ0に書き込まれている閾値データは、バッファ4〜7の第1行目に書き込まれ、バッファ1に書き込まれている閾値データは、バッファ4〜7の第2行目に書き込まれ、バッファ2に書き込まれている閾値データは、バッファ4〜7の第3行目に書き込まれ、バッファ3に書き込まれている閾値データは、バッファ4〜7の第4行目に書き込まれる。
【0024】
第1セレクタ13は、バッファ4〜7を順次選択して、選択したバッファ4〜7に書き込まれた閾値データを読み出す(図3に示すバッファ4、5、6、7読み出し信号)。ある入力画像の1ピクセルをバッファ4に記録した閾値データと比較した場合、次の1ピクセルはバッファ5に記録した閾値データと、その次の1ピクセルはバッファ6に記録した閾値データと順次比較していく。
【0025】
第2セレクタ14は、第1セレクタ13によって選択されたバッファ4〜7の閾値データのうち、比較部15で比較に使用する閾値データだけを選択して比較器14に出力する。例えば、入力画像の解像度が600dpi×600dpiで、解像度を1200dpi×2400dpiに変換する場合、図4(A)に示すように1ピクセルを2×4の閾値データと比較することになるので、バッファ4に書き込まれた閾値データがすべて必要となる。これに対し、入力画像の解像度を1200dpi×1200dpiに変換する場合、図4(B)に示すように1ピクセルを2×2の閾値と比較する。このためバッファ0〜3では、バッファ(0,1)、又は、バッファ(2,3)のいずれか一方を使用すればよいし、バッファ4〜7では、上半分又は下半分を使用すればよい。図5に入力画像の解像度を1200dpi×1200dpiに変換する場合に使用するバッファを示す。
【0026】
比較器15は、入力した画像データと閾値データを比較することでディザ処理を行い、比較結果を出力データとして出力する。
【0027】
従来の画像処理装置では、出力画像の解像度に合わせて、バッファの使用方法を変更することを行っていなかった。このため例えば、文字、線画用と、イメージ用の2つのスクリーンを用意するためには、入力画像の解像度を1200dpi×1200dpiに変換する場合でも、図6に示すように閾値メモリ12と、バッファ0〜3と、バッファ4〜7とをスクリーンの数に合わせてそれぞれ用意しなければなかった。また、閾値メモリ12に一つずつスクリーンを記録しているので、スクリーンの枚数を増やそうとすると、各スクリーンの設定サイズは閾値メモリ12の大きさによって決定されてしまう。
【0028】
これに対し本実施例では、入力画像の解像度を1200dpi×1200dpiに変換する場合は図7に示すように複数のスクリーンを閾値メモリ12に格納しておく。本実施例ではスクリーン1とスクリーン2の2種類のスクリーンを閾値メモリ12に記録しておく。アドレス制御部1の制御により、スクリーン1の閾値データをバッファ0とバッファ1に、またスクリーン2の閾値データをバッファ2とバッファ3とに4クロックかけて順に書き込む。そして、4クロックに1回のタイミングでバッファ0〜3の値をすべてバッファ4〜7に書き込み、第2セレクタによってスクリーン1とスクリーン2の使用する方の閾値データを選択する。これにより、入力画像の解像度を1200dpi×1200dpiに変換する場合では、図6に示す構成よりも閾値メモリ12やバッファの数を低減させることができ、閾値メモリ12の構成を変更せずにスクリーンの枚数を増やすことができる。また、閾値メモリ12の大きさを複数のスクリーンを格納可能な大きさにしているので、スクリーンのサイズ設定を自由に設定することができる。
【0029】
上述した実施例は本発明の好適な実施の例である。但し、これに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変形実施可能である。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】画像処理装置の構成を示す図である。
【図2】画像処理部の構成を示すブロック図である。
【図3】画像処理部の動作タイミングを示すタイミングチャートである。
【図4】解像度変換に必要な閾値データを示す図である。
【図5】変換する解像度によって使用しないバッファを示す図である。
【図6】従来の画像処理部の構成を示す図である。
【図7】本実施例の画像処理部の動作を示す図である。
【図8】従来の画像処理部の構成を示す図である。
【符号の説明】
【0031】
1 原稿台 2 原稿
3 カラーCCDセンサ 4 画像処理部
5C,5M,5Y,5K 画像形成ユニット
6C,6M,6Y,6K 感光体ドラム
7C,7M,7Y,7K ROS
8C,8M,8Y,8K 現像器 11 アドレス制御部
12、16 閾値メモリ 13 第1セレクタ
14 第2セレクタ 15 比較器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力画像の各画素の階調値を閾値マトリクスを用いたディザ処理により変換すると共に、前記入力画像の解像度を変換して出力する画像処理装置であって、
複数の閾値マトリクスの閾値データを格納する閾値メモリと、
出力する画像の解像度に応じて、前記複数の閾値マトリクスの閾値データを複数画素分読み出す読み出し手段と、
前記複数画素分の前記複数の閾値マトリクスの閾値データを一時的に格納する第1の一時格納手段と、
前記第1の一時格納手段から読み出された前記複数の閾値マトリクスの閾値データを、1画素ごとに格納する第2の一時格納手段と、
使用する前記閾値マトリクスの閾値データを前記第2の一時格納手段から選択出力させる選択手段と、
を有することを特徴とする画像処理装置。
【請求項2】
前記選択手段によって選択された前記閾値データと、前記入力画素の各画素の階調値と比較し、比較結果を出力する比較手段を有することを特徴とする請求項1記載の画像処理装置。
【請求項3】
入力画像の各画素の階調値を閾値マトリクスを用いたディザ処理により変換すると共に、前記入力画像の解像度を変換して出力する画像処理方法であって、
出力する画像の解像度に応じて、複数の閾値マトリクスの閾値データを複数画素分選択するステップと、
前記複数の閾値マトリクスの閾値データを、1画素ごとに格納手段に格納するステップと、
使用する前記閾値マトリクスの閾値データを前記格納手段から選択出力するステップと、
を有することを特徴とする画像処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−93750(P2006−93750A)
【公開日】平成18年4月6日(2006.4.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−272670(P2004−272670)
【出願日】平成16年9月21日(2004.9.21)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】