説明

画像処理装置及び画像処理方法

【課題】OSD(On Screen Display)合成時のメモリバンド幅を節約可能な構成としたままで、HDR(High Dynamic Range)画像に対してOSD合成が可能な画像処理装置及び画像処理方法を提供する。
【解決手段】画像処理装置において、倍速駆動回路の前にOSD合成回路がある構成をもち、倍速駆動回路がHDR再生機能を有する場合、合成部105の前段にもHDR再生部A202を設ける。HDR再生部A202の出力データとOSD用グラフィック画像データを合成し、合成後の画像データをHDR再生部B203で倍速駆動しながら再生する。これによりHDR再生とOSD合成を効率的に実現する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、階調表現の異なる複数の画像を切り替えて再生することで高ダイナミックレンジの再生機能を有する画像処理装置において、高ダイナミックレンジの再生を行いつつグラフィック合成を可能にする技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
撮影条件として露出の異なる2つの画像がある場合に、各画像の露出、すなわち注目する階調表現を考慮して合成することで、合成後の画像の階調表現を豊かにする高ダイナミックレンジ(High Dynamic Range)と呼ばれる技術がある。以下、高ダイナミックレンジをHDRと略記する。
【0003】
HDR表現を行う際には、画像データを実際に演算処理で合成するのではなく、露出の異なる2つの画像を交互に切り替えて表示させる。これによって、時間積分的な効果により階調表現が向上し、HDR表現を実現可能である。
上記HDR表現を実現する手段についての構成例を図5に示す。なお、図5に示す構成例として、特許文献1に開示された構成が挙げられる。図中の画像生成部106は、階調表現の異なる2つの画像を用意する。以降、露出の異なる画像群を「HDR画像」と呼ぶ。
【0004】
例えば、HDR画像生成部106は外部から入力されたHDR画像のデータをフレームメモリB107に格納する。あるいは、外部から入力された画像データに対し、露出の異なる画像を生成するために異なるγ調整を行うことでHDR画像を生成し、画像データをフレームメモリB107に格納することが考えられる。HDR画像生成部106が用意した2つの画像については、それぞれのデータがフレームメモリB107から、HDR再生部108によって交互に読み出される。読み出された画像データは映像出力部109を経由して外部の表示装置へ出力される。なお、HDR再生部108が階調の異なる画像を交互に表示させるために画像データを読み出す場合、表示上のちらつきの発生を防ぐためにフレームレートを高くすることが望ましい。このため、一般的な倍速駆動回路を利用することが想定される。
【0005】
また図5の構成においてOSD(On Screen Display)合成により画像表示を行う場合、第1及び第2の画像データが合成部105で合成される。第1の画像データは映像入力部101からフレームメモリA102に格納された画像データであり、第2の画像データはグラフィック生成部103で生成した後でグラフィックメモリ104に格納されたOSDグラフィックのデータである。ここで、OSD合成については倍速駆動ではない通常のフレームレートに対応した周波数、例えば60Hzで実施される。OSD合成を通常のフレームレートで実施することにより、OSD合成時にフレームメモリA102やグラフィックメモリ104からデータを読み出す際のメモリバンド幅を、倍速駆動時に比較して低く抑えることが可能になり、システムの実現が容易になる。
【0006】
OSD合成された画像データはフレームメモリB107に一旦格納されてから、HDR再生部108を経由して映像出力部109へ出力される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2008−160591号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上述の構成でHDR画像を再生する場合、HDR画像の再生を行いつつOSD合成を行うことができない。これはHDR画像に係るデータが合成部105を経由しないためである。
そこで本発明は、OSD合成時のメモリバンド幅を節約可能な構成としたままで、HDR画像に対してOSD合成が可能な画像処理装置及び画像処理方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は上記の課題を解決するために、階調表現の異なる複数の画像を切り替えて表示させるために複数の画像データを出力する機能を有する画像処理装置であって、前記複数の画像データを第1のフレームレートに従って読み出す第1の再生手段と、グラフィック画像のデータ生成を行うグラフィック生成手段と、前記グラフィック生成手段によって生成された画像データと前記第1の再生手段によって読み出された前記複数の画像データを合成して出力する合成手段と、前記合成手段によって合成された画像データを、前記第1のフレームレートよりも高い第2のフレームレートに従って読み出す第2の再生手段と、を備える。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、階調表現の異なる複数の画像データを第1のフレームレートで読み出した後で、該画像データとグラフィック画像のデータを合成し、さらに第2のフレームレートで画像データを読み出して出力する。これによりOSD合成時のメモリバンド幅を節約する構成を維持しつつ、HDR再生時にもOSD合成が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】図2乃至4と併せて本発明に係る一実施形態を説明するために、画像処理装置の構成例を示すブロック図である。
【図2】HDR再生部の動作を説明するために該再生部をスイッチの記号で等価的に示す図である。
【図3】画像フレームの再生イメージを例示した図である。
【図4】HDR再生処理の手順例を示すフローチャートである。
【図5】本発明が解決しようとする課題を説明するために従来の構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1は本発明に係る実施形態について画像処理装置の構成例を示す。なお画像処理装置は、階調表現の異なる複数の画像を切り替えて表示させるために複数の画像データを複数のフレームレートに従って出力する機能を有する。以下ではテレビジョン放送受信装置を例に挙げて説明するが、これに限らず各種の画像再生装置への適用が可能である。
【0013】
まず、放送波に代表される通常の映像信号の流れについて説明する。映像入力部101には、図示しないチューナや外部入力端子等から映像信号が入力され、画像データは第1のフレームメモリ(以下、フレームメモリAとする)102に格納される。フレームメモリA102に格納された画像データはその読み出し後に、第1の再生部(以下、HDR再生部Aとする)202を経由して合成部105へ送られる。このHDR再生部Aについては後述するが、通常の映像再生時にはフレームメモリA102からの画像データを読み取って合成部105へ送るのみである。
【0014】
本装置においてOSD合成を行う場合、グラフィック生成部103がOSD用グラフィックのデータ生成を行い、生成したデータをグラフィックメモリ104に格納する。
【0015】
グラフィックメモリ104から読み出された画像データ及びHDR再生部A202が出力した画像データは、合成部105に入力されて合成される。合成後の画像データは第2のフレームメモリ(以下、フレームメモリBとする)107に格納される。フレームメモリB107に格納された合成後の画像データは、第2の再生部(以下、HDR再生部Bとする)203によって読み出された後、映像出力部109に送られ、表示パネル等の表示装置へ出力される。
【0016】
合成部105の処理までは、第1のフレームレート、例えば60Hzといった通常の周波数に対応するフレームレートで実施される。また画像データがフレームメモリB107から読み出されてHDR再生部B203で再生される際には、第2のフレームレート、例えば周波数120Hzに対応した高フレームレートでの倍速駆動により処理が実施される。通常、フレームレート変換と呼ばれる処理はHDR再生部B203内で可能であるものとする。なお、本願発明に関する限り、HDR再生部Bは倍速駆動が可能な処理部であること以上には関連がないため、フレームレート変換自体の処理内容についての説明は省略する。
【0017】
次に、HDR再生部A202及びHDR再生部B203がHDR再生時に行う処理について説明する。図2に示すように、HDR再生部は、階調表現の異なる2つの画像データを交互に読み出して後段の回路部に出力し、最終的な表示画像にてHDR再生効果を実現する。2つの画像データとしては、例えば同一被写体を異なる露出で撮影した画像群のデータが挙げられ、以下では、第1の画像を「露出H画像」とし、第2の画像を「露出L画像」とする。図2では両画像の切り替え及び読み出しが行われる様子について、スイッチ記号を用いたスイッチング動作によって等価回路で表現している。なお露出の異なる2つの画像はHDR画像生成部201が生成する。
【0018】
図5で説明した構成では、HDR画像のデータがフレームメモリB107に格納され、HDR再生部108によって高フレームレートで各画像のデータが交互に読み出される。そして映像出力部109から表示パネル等の表示装置に映像信号が送られることでHDR再生効果が得られる。しかしながら、合成部105はHDR再生部108よりも前段にあるため、HDR再生と合成処理を同時には実現できない。
【0019】
そこで本実施形態では、HDR画像生成部201によって生成されるHDR画像のデータを、フレームメモリB107だけでなく、フレームメモリA102にも格納できるように構成する。ただし、OSD合成を行わない場合には、従来通りフレームメモリB107のみにHDR画像のデータを格納することも可能である。
【0020】
フレームメモリA102に格納されたHDR画像は、HDR再生部A202によって合成時のフレームレートに対応した周波数60Hzのタイミングで読み出される。つまり図2において60Hzの周波数に対応するタイミングで、露出H画像と露出L画像の各データが交互に読み出される。よって通常のOSD合成の場合と同様に合成部105でグラフィックデータとの合成処理が行われる。なお、その際には露出H画像と露出L画像の双方に対して同様のグラフィック画像が合成されるものとする。
【0021】
合成部105にてOSD合成されたHDR画像は、フレームメモリB107に格納される。
フレームメモリB107に格納されたOSD合成済みの露出H画像と露出L画像のデータについては、60Hzの周波数に対応するタイミングでそれぞれ格納が完了すると、HDR再生部B203によって読み出される。つまり図2において120Hzの周波数に対応するタイミングで露出H画像と露出L画像の各データが交互に読み出される。そして読み出されたHDR画像のデータは映像出力部109へ出力される。
【0022】
画像フレームの再生イメージを図3に示す。図3の左側には合成部105が出力するHDR画像例を示し、右側にはHDR再生部B203が出力するHDR画像例を示す。図中のH1乃至3は露出H画像のフレームを表し、L1乃至3は露出L画像のフレームを表しており、時間が経過するにつれてH又はLに付した数値が増加する。つまり時間経過の方向を図の上方から下方への向きと定義している。各フレーム内で矩形枠にOSDの文字を付して示す部分はOSDグラフィック画像を表しており、本例では合成された当該画像が時間経過に伴って画面の右上方から左下方へと移動している様子が分かる。
【0023】
上記のように合成部105は画像合成の動作を60Hzの周波数で行う。このため、合成部105の出力についても同様に、60Hzの周波数に対応するタイミングで最初にH1フレーム、次にL1フレーム、続いてH2フレーム、L2フレームといった具合に、順次出力される。
ここで、合成動作としてはH1フレームとL1フレームを一組として、同様のOSDグラフィック画像がH1フレームとL1フレームのそれぞれに合成される。このことは以降のH2及びL2フレーム、H3及びL3フレームについても同様である。
【0024】
H1フレーム、L1フレームのOSD合成が完了し、両フレームの画像データがフレームメモリB107に格納された時点で、HDR再生部B203は60Hzに対して倍速の駆動周波数120HzでHDR再生動作を開始する。具体的には、図3の右側に示すようにH1フレーム、L1フレームを交互に読み出すことで、各フレームの画像データを2回ずつ交互に切り替えて出力する。これ以降のフレーム出力のタイミングとしては、H2フレーム、L2フレームのメモリへの格納が完了した際には、HDR再生部B203の出力処理の対象もH1フレームとL1フレームの組から、H2フレームとL2フレームの組へと切り替わる。
【0025】
フレームの組に対して合成するOSDグラフィックについてはそれらの画像データが同様であることを要するが、フレームの組ごとのOSDグラフィックが同一である必要はなく、グラフィックとして動きのあるアニメーション映像であっても問題はない。例えば、H1フレームとL1フレームについては同様のOSDグラフィックのデータを画像合成する必要がある。これらのフレームに後続するH2フレームとL2フレームに対しては、H1フレーム及びL1フレームの場合とは異なるOSDグラフィックのデータを画像合成しても構わないため、図3に示すようにアニメーション効果を実現可能である。
【0026】
次に図4のフローチャートを用いて、OSD合成を行いながらHDR再生を行う場合の処理例について説明する。
最初に、HDR画像生成部201はHDR再生用の複数の階調画像を生成する(S101)。次に、HDR再生用の複数の階調画像はフレームメモリA102に格納される(S102)。続いて、装置にHDR再生が指示されたか否かが判断される(S103)。その結果、HDR再生の指示があった場合、HDR再生部A202は第1のフレームレートでHDR再生を行う(S104)。なお、HDR再生の指示があるまでS103の判定処理が繰り返される。
【0027】
S104の後、装置にOSD合成の指示があったか否かが判断される(S105)。その結果、OSD合成の指示があった場合、グラフィックメモリ104にOSD合成用のグラフィックデータが格納されるのを待つ(S106)。つまり該データのグラフィックメモリ104への格納が完了するまでの間、S106の条件判断処理がなされ、その完了後、異なる階調のHDR再生用画像それぞれに対してOSD合成が行われる(S107)。
【0028】
S105でOSD合成の指示がなかった場合やS107での処理の後、OSD合成されたHDR再生用画像のデータはフレームメモリB107に格納される(S108)。S109ではHDR再生用画像のデータがフレームメモリB107に2フレーム分蓄積されたか否かを判定する処理が行われる。この判定処理は2フレーム分の画像データの蓄積が終了するまで行われた後、S110に進み、ここでHDR再生部B203が第2のフレームレートでHDR再生を行う。
【0029】
本実施形態によれば、上記処理に従ってHDR再生を行うことにより、OSD合成時のメモリバンド幅を節約可能な構成としたままで、HDR画像に対してOSD合成を行える。
【符号の説明】
【0030】
101 映像入力部
102 フレームメモリA
103 グラフィック生成部
104 グラフィックメモリ
105 合成部
107 フレームメモリB
109 映像出力部
201 HDR画像生成部
202 HDR再生部A
203 HDR再生部B


【特許請求の範囲】
【請求項1】
階調表現の異なる複数の画像を切り替えて表示させるために複数の画像データを出力する機能を有する画像処理装置であって、
前記複数の画像データを第1のフレームレートに従って読み出す第1の再生手段と、
グラフィック画像のデータ生成を行うグラフィック生成手段と、
前記グラフィック生成手段によって生成された画像データと前記第1の再生手段によって読み出された前記複数の画像データを合成して出力する合成手段と、
前記合成手段によって合成された画像データを、前記第1のフレームレートよりも高い第2のフレームレートに従って読み出す第2の再生手段と、を備えたことを特徴とする画像処理装置。
【請求項2】
階調表現の異なる複数の画像データを格納する第1のフレームメモリと、
前記グラフィック生成手段によって生成された画像データを格納するグラフィックメモリと、
前記合成手段の出力する画像データを格納する第2のフレームメモリをさらに備え、
前記第1の再生手段は前記第1のフレームメモリから階調表現の異なる複数の画像データを前記第1のフレームレートに従って切り替えて交互に読み出し、
前記第2の再生手段は前記第2のフレームメモリから階調表現の異なる複数の画像データを前記第2のフレームレートに従って切り替えて交互に読み出して出力することを特徴とする、請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項3】
階調表現の異なる前記複数の画像データとして、同一被写体を異なる露出で撮影した画像群のデータを生成する画像生成手段を備えたことを特徴とする、請求項1又は2に記載の画像処理装置。
【請求項4】
階調表現の異なる複数の画像を切り替えて表示させるための画像処理方法であって、
前記複数の画像データを第1のフレームレートに従って切り替えて読み出す第1の再生ステップと、
グラフィック画像のデータ生成を行うグラフィック生成ステップと、
前記グラフィック生成ステップで生成した画像データと前記第1の再生ステップで読み出した前記複数の画像データを合成して出力する合成ステップと、
前記合成ステップで合成した画像データを、前記第1のフレームレートよりも高い第2のフレームレートで切り替えて読み出す第2の再生ステップと、を有することを特徴とする画像処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−268332(P2010−268332A)
【公開日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−119458(P2009−119458)
【出願日】平成21年5月18日(2009.5.18)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】