説明

画像処理装置及び画像処理方法

【課題】 原画像に存在する、無彩色に近い中彩度色のカラー網点画像のような領域に対して、安定したUCR処理を行い、画質の劣化を防ぐこと。
【解決手段】 UCR処理への入力画像データの画素情報(文字、無彩色、有彩色の各領域への属性)を文字検出回路19、無彩色領域検出回路20、有彩色領域検出回路21の各回路で検出し、検出結果から比較回路16で中彩度文字領域の画素を定め、この中彩度文字領域の画素に対し、統一して色文字又は黒文字のいずれかを選択したUCR処理を適用するための選択信号をUCR回路15に出力する。この動作により、中彩度文字領域の同じ画素のUCR処理後の出力にばらつきが生じる、という従来の問題を解決し、画像の劣化を防ぐ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カラー画像の処理装置に関し、より詳しくは、カラー画像データの出力処理で行う下色除去(UCR)処理において生じる画質の劣化を低減するようにした画像処理装置及び画像処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来からカラー画像処理において、黒文字については、画質向上やトナーの消費量を減らすためにも、黒単色で印刷することが好ましいとして、出力用データが処理される。例えばカラー画像データの色補正後のY(イエロー)、M(マゼンタ)、C(シアン)の各色信号の最小信号MIN(Y,M,C)が所定の閾値以上である黒文字等の画素領域に対しては、Y、M、Cのトナーを使用せず、黒(K)単色で描画している。
しかし、絵柄と文字の混在する原稿の場合、上記条件で処理すると黒文字だけでなく絵柄の部分までも黒単色処理が施され好ましい中間調表現が得られず、画質が劣化する場合がある。絵柄の黒に対しては、通常、適当な下色除去処理(UCR)が好適な画質を得るために用いられる。
【0003】
このようなカラー原稿中から黒文字のみを黒単色で再生する装置の例としては、特許文献1(特許第3153221号公報)に述べられているカラー画像形成装置が知られている。
特許文献1に記載された従来技術においては、黒色で且つドットが文字のように連結した面積率50%付近の網点を黒文字と誤判定してしまい再生画質が著しく劣化すること、また、カラー網点画像では、Y、M、Cのトナーの重なった部分が散在するが、この部分も黒文字領域と誤判定してしまい再生画質が著しく劣化することがある。この問題に対して、黒単色処理に適さないこうした領域に対する処理を防止することで、カラー原稿の高品質な再生画像を得ることを可能としている。
具体的には、カラー原稿より読み取ったカラー画像データにおける文字領域と絵柄領域の分離、白地背景領域の検出、及び無彩色領域と有彩色領域の分離を行い、文字領域かつ白地背景領域かつ無彩色領域である領域に対して黒単色処理を行っている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来技術では、原稿にカラー網点画像として無彩色に近い中彩度色の領域があった場合、無彩色領域と有彩色領域を分離する手段の分離判定結果がこの領域の中で安定せず、無彩色判定領域と有彩色判定領域が入り混じった結果となるケースがある。例えば国土地理院から出版されている地図原稿の中の等高線部分は、彩度の低い茶色系統の色で印刷されているものがある。この領域を対象に有彩、無彩の分離判定を行うと、等高線部分の茶色がその彩度が低いために同じ等高線に対し、部分的に有彩と無彩という違う判定結果が得られ、この結果に従い茶色と黒色でひとつの等高線が描画され、再生画質が著しく劣化してしまうという問題が生じる。
【0005】
本発明は、入力イメージ(原画像)から変換された各色成分値を持つカラー画像データに対する下色除去(UCR)処理において生じる上述の従来技術の問題に鑑みてなされたもので、その目的は、原画像に存在する、無彩色に近い中彩度色のカラー網点画像のような領域に対して、安定したUCR処理を行い、画質の劣化を防ぐことにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、イメージが色分解され得られる各色成分値を画素単位で表す画像データを入力する画像入力手段と、前記画像データから黒文字処理用画素情報を検出する画素情報検出手段と、検出された黒文字処理用画素情報に基づいて設定される処理条件に従い前記画像データの各色成分の処理を行う出力画像処理手段を有する画像処理装置であって、前記画素情報検出手段は、文字領域、無彩色領域、有彩色領域の各領域に属するか否かを検出する手段であり、前記出力画像処理手段は、UCR処理を行う手段を備えるとともに、前記画素情報検出手段によって検出された情報に基づいて、無彩文字領域、中彩度文字領域、他の領域それぞれの領域への各画素の属性を定め、無彩文字領域及び中彩度文字領域に属する画素へ同じ色消去条件で黒文字処理のUCR処理を適用することを特徴とする。
本発明は、イメージが色分解され得られる各色成分値を画素単位で表す画像データを入力する画像入力手段と、前記画像データから黒文字処理用画素情報を検出する画素情報検出手段と、検出された黒文字処理用画素情報に基づいて設定される処理条件に従い前記画像データの各色成分の処理を行う出力画像処理手段を有する画像処理装置であって、入力イメージの種類を指定する原稿種類指定手段を備え、前記画素情報検出手段は、文字領域、無彩色領域、有彩色領域の各領域に属するか否かを検出する手段であり、前記出力画像処理手段は、UCR処理を行う手段を備えるとともに、前記原稿種類指定手段によって指定された入力イメージの種類が所定の種類であるとき、前記画素情報検出手段によって検出された各画素の情報に基づいて、無彩文字領域、中彩度文字領域、他の領域それぞれの領域への各画素の属性を定め、所定画像領域において無彩文字領域に属する画素、中彩度文字領域に属する画素それぞれが占める占有度によって、無彩文字領域及び中彩度文字領域の画素に共通する色消去条件の黒文字処理のUCR処理を選択し適用することを特徴とする。
本発明は、イメージが色分解され得られる各色成分値を画素単位で表す画像データを入力する画像入力手段と、前記画像データから黒文字処理用画素情報を検出する画素情報検出手段と、検出された黒文字処理用画素情報に基づいて設定される処理条件に従い前記画像データの各色成分の処理を行う出力画像処理手段を有する画像処理装置であって、入力イメージの種類を指定する原稿種類指定手段を備え、前記画素情報検出手段は、文字領域、無彩色領域、有彩色領域の各領域に属するか否かを検出する手段であり、前記出力画像処理手段は、UCR処理を行う手段を備えるとともに、前記原稿種類指定手段によって指定された入力イメージの種類が所定の種類であるとき、前記画素情報検出手段によって検出された画素の情報に基づいて、無彩文字領域、中彩度文字領域、他の領域それぞれへの各画素の属性を定め、注目画素の近傍に連なる所定数の画素列領域における中彩度文字領域に属する画素の数が所定値を超えるか否かによって、当該注目画素に色消去条件の異なる黒文字処理のUCR処理を選択し適用することを特徴とする。
本発明は、イメージが色分解され得られる各色成分値を画素単位で表す画像データを入力する画像入力手段と、前記画像データから黒文字処理用画素情報を検出する画素情報検出手段と、検出された黒文字処理用画素情報に基づいて設定される処理条件に従い前記画像データの各色成分の処理を行う出力画像処理手段を有する画像処理装置であって、入力イメージの種類を指定する原稿種類指定手段を備え、前記画素情報検出手段は、文字領域、無彩色領域、有彩色領域の各領域に属するか否かを検出する手段であり、前記出力画像処理手段は、UCR処理を行う手段を備えるとともに、前記原稿種類指定手段によって指定された入力イメージの種類が所定の種類であるとき、前記画素情報検出手段によって検出された、注目画素周囲にある所定数の画素領域における各画素の情報に基づいて、無彩文字領域、中彩度文字領域、他の領域それぞれへの各画素の属性を定め、中彩度文字領域に属する画素が無彩文字領域に属する画素に囲まれているとき、当該注目画素を無彩文字領域に属する画素に置き換えて黒文字処理のUCR処理を適用することを特徴とする。
本発明は、イメージが色分解され得られる各色成分値を画素単位で表す画像データを入力する画像入力工程、前記画像入力工程で入力された画像データから黒文字処理用画素情報を検出する画素情報検出工程、前記画素情報検出工程で検出された黒文字処理用画素情報に基づいて設定する処理条件を決定する処理条件決定工程及び前記処理条件決定工程で決定された処理条件に従い前記画像データの各色成分の処理を行う出力処理工程の各工程を有する画像処理方法であって、前記画素情報検出工程では、文字領域、無彩色領域、有彩色領域の各領域に属するか否かを表す情報を検出し、前記処理条件決定工程では、文字領域、無彩色領域、有彩色領域の各領域に属するか否かを表す情報に基づいて、文字無彩色領域、文字中彩度色領域、他の領域それぞれへの各画素の属性を定め、文字無彩色領域及び文字中彩度色領域に属する画素へ同じ色消去条件で黒文字処理のUCR処理を行うことを決定することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
原画像に存在する、無彩色に近い中彩度色のカラー網点画像のような領域に対して、安定したUCR処理を行い、画質の劣化を防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の実施形態1に係る画像処理装置の概略構成を示す図である。
【図2】UCR処理A(黒単色処理)とUCR処理B(非黒単色処理)の各色成分信号の量的関係を説明する図である。
【図3】図1に示す画像処理装置の文字検出回路19の回路構成の1例を示す図である。
【図4】黒画素パターンマッチングに用いる基準パターンを示す図である。
【図5】白画素パターンマッチングに用いる基準パターンを示す図である。
【図6】無彩色領域検出における補正方法を説明する図である。
【図7】検出される画素情報(文字領域、無彩色領域、有彩色領域への属性情報)の組み合わせと比較回路の出力の関係を示す表である。
【図8】本発明の実施形態2に係る画像処理装置の概略構成を示す図である。
【図9】検出される画素情報(文字領域、無彩色領域、有彩色領域への属性情報、無彩/有彩計数)の組み合わせと比較回路の出力の関係を示す表である。
【図10】本発明の実施形態3に係る画像処理装置の概略構成を示す図である。
【図11】図10のラインメモリに格納されたラインデータの1例を示す図である。
【図12】パターン検知処理に用いる3×3のマトリクスを示す図である。
【図13】図10のパターン検知回路で処理された各画素の領域への属性データの1例を示す図である。
【図14】検出される画素情報(文字領域、パターン検知結果)の組み合わせと比較回路の出力の関係を示す表である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明に係る画像処理装置の実施形態を説明する。
以下の説明では、入力イメージ(原画像)から変換された各色成分値を持つカラー画像データに対する下色除去(UCR)処理を行う複写機、プリンタ、複合機等の画像処理装置を好適な実施形態とする。ただ、プリント出力に用いる画像データを生成する過程においてUCR処理を行うものであれば、例示した画像処理装置に限らない。また、画像の入力手段も、紙原稿を読み取るいわゆるスキャナに限らず、要するに、イメージが色分解され得られる各色成分値を画素単位で表す画像データを入力する、CCD等のイメージセンサを用いる画像入力手段を有するものであればよい。
無彩色に近い中彩度色の領域に対してUCR処理を行う場合、従来技術によると、[発明が解決しようとする課題]で述べたように、無彩色に近い中彩度色の領域における同じ画素であってもUCR処理後、出力画像の色にばらつきが生じ、画像出力に劣化が生じる。
【0010】
そこで、無彩色に近い中彩度色の領域に対してUCR処理を行う場合、処理後の画像出力に劣化が生じないようにするための手法として、基本的には、上記の問題が生じる中彩度色領域に属する文字画素(以下、「中彩度文字領域の画素」という)を定め、この中彩度文字領域の画素に対し、統一して色文字又は黒文字のいずれかを選択したUCR処理を適用することで、出力にばらつきをなくし、画像の劣化を防ぐ。
中彩度文字領域の画素を定めるために必要な情報として、処理対象の画像データから各画素について、文字領域、無彩色領域、有彩色領域の各領域に属するか否かを画素情報として検出する(後記[実施形態1]で詳述)。
検出されたこの画素情報からどのように中彩度文字領域の画素を定め、また定めた中彩度文字領域の画素に適用するUCR処理をどのように決めるかは、異なる形態で実施可能であり、後記[実施形態1]〜[実施形態3]で詳述する。
また、後述する各実施形態では、処理対象の画像種類(以下では、「原稿種類」ともいう)によって処理条件を変更することが、意図に適う処理を行うために必要になる。このため、処理の対象となるジョブに原稿種類の指定ができるようにする。本実施形態では、ユーザーI/F(インターフェース)としての操作部から通常行われるモード設定(以下の説明では「画質モード」設定、という)の1つとして行う形態で実施する。
【0011】
[実施形態1]
この実施形態は、画素情報(文字領域、無彩色領域、有彩色領域の各領域への属性情報)の検出を前提に、検出した画素情報に基づいて中彩度文字領域の画素を定め、また定めた中彩度文字領域の画素に適用するUCR処理を決める、という処理過程を他の画素と関係なく行える、つまり、各画素の画素情報に基づいて独自に処理を行える、という点で、より基本的な手法によるものである。
なお、上記画素情報の検出処理は、実施形態2及び3に共通の処理であり、この実施形態で説明し、実施形態2及び3では説明を省略する。
【0012】
図1は、実施形態1に係る画像処理装置の概略構成を示す図である。
図1において、原稿読取部11は、原稿のイメージを光電変換するCCD(Charge Coupled Device)イメージセンサ等の光電変換装置を有し、カラー原稿を読み取ってR(赤),G(緑),B(青)の3色の色分解信号を出力する。
A/D変換器12は、カラー原稿を読み取ったR,G,B信号を例えば8ビットのデジタル信号に変換する。Log変換回路13はR,G,Bのデジタル信号を濃度変換し、C(シアン),M(マゼンタ),Y(イエロー)の各色インクの量を表すC1,M1,Y1信号を出力する。マスキング回路14は、原稿読取部11の色分解フィルタの濁り成分やインクの濁り成分を除去するための色修正(マスキング)をC1,M1,Y1信号に施し、C2,M2,Y2信号を出力する。この色修正は例えば次式による。
Y2=K11×Y1+K12×M1+K13×C1
M2=K21×Y1+K22×M1+K23×C1
C2=K31×Y1+K32×M1+K33×C1
(上記式中、K11〜K33は実験により決定される定数である)
【0013】
UCR回路15は、下色除去処理を行う回路であり、C2,M2,Y2信号(インクの量)について、その一部あるいは全部を除去したC3,M3,Y3信号と、除去相当量の黒インクの信号K3を発生する。
ここでは、UCR処理としてUCR処理A(黒単色処理)とUCR処理B(非黒単色処理)を選択可能である。
図2は、UCR処理A(黒単色処理)とUCR処理B(非黒単色処理)の各色成分信号の量的関係を説明する図である。
UCR処理Aは、C,M,Yのインクを打たず(C3,M3,Y3の各信号をゼロ)、黒(K)インクをベタで打つ(K3信号のみ発生)処理で、例えば、図2(a)に示す値のY2,M2,C2信号入力に対し、図2(b)に示すような値のK3信号のみを出力する。なお、このUCR処理Aにおいて、min(C2,M2,Y2)信号の100%の量をC2,M2,Y2信号からそれぞれ減らし、その代わりに相当量のK3信号を発生することも可能である。このいわゆる100%UCR処理の場合、例えば、図2(a)に示す値のY2,M2,C2信号入力に対し、C3,M3,Y3,K3信号は、それぞれ図2(c)のような値となる。
【0014】
UCR処理Bは、min(C2,M2,Y2)の50%の量を各信号から減らしたC3,M3,Y3と、その減らした量に相当するK3信号を発生する、いわゆる50%UCR処理であり、図2(a)の入力データの場合に、Y3,M3,C3,K3信号は図2(d)に示す値となる。
UCR回路15は、比較回路16からの出力信号によって動作が選択される。比較回路16の出力が“1”のとき、即ち、処理対象画素(後述の注目画素)が黒文字領域の画素と判定された時にUCR処理Aを選択し、比較回路16の出力が“0”のとき、即ち、処理対象画素が非黒文字領域と判定された時)にUCR処理Bを選択する。
比較回路16は、文字検出回路19、無彩色領域検出回路20、有彩色領域検出回路21の各回路からの画素の属性を表す出力信号の入力を受け、UCR回路15のUCR処理A/Bを選択する信号を出力する。なお、この入力、出力の関係は、後記で図7を参照して詳述する。
【0015】
文字検出回路19、無彩色領域検出回路20、有彩色領域検出回路21の各回路には、それぞれUCR回路15への入力信号C2,M2,Y2と同じ信号が入力される。文字検出回路19は、カラー原稿上の文字領域の抽出(文字領域/絵柄領域の分離)をする回路である。無彩色領域検出回路20は、カラー原稿上の無彩色領域の抽出をする回路である。また、有彩色領域検出回路21はカラー原稿上の有彩色領域の抽出をする回路である。
また、システム制御部23は、ユーザーI/Fとしての操作部22から原稿種類に対応する複数種類の画質モード(例えば、文字系、写真系など)から選択された種類の画質モードが指示もしくは設定された場合、画質モード等の入力情報を内部のメモリに記憶し、システムの動作や処理に必要な情報として管理し、これらの情報を関係モジュールに通知しシステムを制御する。図1においては、ユーザーによって選択された画質モードを文字検出回路19、無彩色領域検出回路20、有彩色領域検出回路21の各回路に知らせ、後述する検出レベルを各回路で変更するための情報として用い、比較回路16を介しUCR回路15で画質に適した動作を選択する。
【0016】
ディザ回路17は、C3,M3,Y3,K3信号を組織的ディザ法により2値化する回路であり、その出力であるC4,M4,Y4,K4信号は、それぞれ1ビットずつプリンタ部18に送られ、各色のインクドットのオン/オフによってカラー画像が再生(プリント)される。
上記の構成によって、指定された画質モードにおいて、文字と検出した注目画素に対する無彩色領域判定の結果と有彩色領域判定の結果から、中彩度文字領域の画素を定め、定めた中彩度文字領域の画素に対し、UCR回路15により黒文字としてUCR処理Aを選択するか、UCR処理Bを選択するかを決定し、これにより中彩度文字領域に有彩画素と無彩画素が入り混じらないようにする。
【0017】
以下、処理対象の画像データをもとにUCR回路15における処理の選択信号を得る過程、即ち、画素情報(文字領域、無彩色領域、有彩色領域の各領域への属性情報)を検出し、画素情報をもとに中彩度文字領域の画素を定め、また定めた中彩度文字領域の画素に適用するUCR処理を決める過程における処理手法及び処理手段について、詳細に説明する。
文字検出回路19は、文字の一部と文字に連続した白地の一部が共存する画素領域を検出する。図3は、文字検出回路19の回路構成の1例を示す図である。同図に示すように、入力画像C2,M2,Y2は、黒画素、白画素両方のパターンマッチングを2系列の処理で行う。
【0018】
一方の系列は、2値化回路41によって、min(C2,M2,Y2)信号を所定の閾値にて低レベル/非低レベルすなわち黒/非黒(灰または白)に2値化し黒画素パターンマッチング回路42に入力する。この黒画素パターンマッチング回路42では、例えば、注目画素を中心画素とした3×3のマトリックス内の黒/非黒パターンに対するマッチング処理を行う。図4は、このときに用いる基準パターンを示す図である。処理対象の3×3の黒/非黒パターンと図4のパターンのいずれかとがマッチングしたときに、注目画素を文字黒画素(連結黒画素)と判定し、“1”を出力する。計数回路43は黒画素パターンマッチング回路42の“1”出力の個数すなわち文字黒画素の個数を、注目画素を中心とした例えば3×3のマトリックス内について計数し、計数値が一定値(例えば2)以上のとき“1”を出力する。
【0019】
他方の系列は、2値化回路44によって入力画像C2,M2,Y2信号中の最大信号であるmax(C2,N2,Y2)信号を所定の閾値にて高レベル/非高レベルすなわち白/非白(灰または黒)に2値化し、白画素パターンマッチング回路45に入力する。この白画素パターンマッチング回路45では、例えば注目画素を中心とした3×3のマトリックス内の白/非白パターンに対するマッチング処理を行う。図5は、このときに用いる基準パターンを示す図である。処理対象の3×3の白/非白パターンと図5のパターンのいずれかとがマッチングしたときに、注目画素を文字白画素(連結白画素)と判定し“1”を出力する。計数回路46は白画素パターンマッチング回路45の出力より、例えば注目画素を中心とした3×3のマトリックス内について文字白画素の個数を計数し、計数値が一定値(例えば2)以上のとき“1”を出力する。
もちろん、この一定値(上記黒画素についても同様)を任意に設定することで文字の検出レベルを変えることも可能である。後述する画質モードに応じた検出レベルの変更をこの値を変更することで実施できる。
【0020】
AND回路47は、計数回路43,46の出力信号の論理積信号を出力する。即ち、注目画素を中心とした3×3のマトリックス内に例えば2個以上の文字黒画素及び例えば2個以上の文字白画素が同時に存在すると、AND回路47は“1”を出力する(注目画素を仮文字画素とする)。文字領域判定回路48は、例えば、注目画素を中心とした5×5のマトリックス内に仮文字画素が一定個数(例えば1個)以上あれば、注目画素または注目画素を含む一定の大きさのブロック(例えば5×5のマトリックス)を文字領域と判定し、“1”を出力する。即ち、文字の輪郭部分には連結白画素及び連結黒画素が同時に一定以上の密度で存在するという性質を利用して、文字領域の抽出(文字領域/絵柄部の分離)をしている。その判定のための範囲の大きさを適切に選ぶことにより、文字内部も含めて文字領域として抽出できる。このような方法は、基本的に微小ノイズの影響を受けにくく、安定な領域抽出が可能である。なお、文字黒画素を検出する際に、注目画素またはそのブロックにおいて「入力画像C2,M2,Y2信号のそれぞれの差のmaxΔ(Y2,M2,C2)が所定の閾値以下である」という条件を加えると、分離精度をさらに高めることができる。また、同様の文字候補領域の検出を、R,G,B信号を入力として行うことも可能である。
【0021】
図1の無彩色領域検出回路20は、入力画像C2,M2,Y2信号(R,G,B信号でもよい)を用いて、注目画素とその近傍から無彩色領域を検出し(有彩色領域/無彩色領域の分離)、無彩色領域で“1”を、有彩色領域で“0”をそれぞれ出力する。ここに、無彩色領域検出回路20では、実際には有彩色領域の検出を行い、有彩色領域でない領域を無彩色領域として検出結果の出力を行う。この処理は有彩色画素検出処理及び2段階の補正処理からなる。まず有彩色画素検出処理で、Y2,M2,C2信号のそれぞれの差の最大値Δ(Y2,M2,C2)が所定の閾値以上である画素を有彩色画素として検出する。
次に、第1段階の補正処理で、注目領域を中心とした所定の大きさのマスクにて、有彩色画素を計数し、その計数値が所定の閾値以上であれば、注目画素またはそのブロックを有彩色候補画素領域とする。もちろん、この計数値を任意に設定することで有彩色の検出レベルを変えることも可能である。後述する画質モードに応じた検出レベルの変更をこの値を変更することで実施できる。
【0022】
さらに、第2段階の補正処理において、第1段階の補正処理の結果、得られる有彩色候補画素領域を考慮した補正を加え、最終的に有彩色領域の画素を定める。図6は、この補正方法を説明する図である。同図に示すように、注目画素Pが有彩色候補画素領域の画素でなくても、注目画素Pの左右の一定距離(所定の画素数)だけ離れた画素A,Bが共に有彩色候補画素領域である場合、注目画素Pまたはそのブロックを有彩色領域とする。この補正により得られる有彩色領域の画素を、先の第1段階の補正により得られる有彩色候補画素領域の画素とともに、出力を“0”にし、そうでない場合は、非有彩色領域即ち無彩色領域として出力を“1”にする。
【0023】
図1の有彩色領域検出回路21は、入力M2,C2,Y2信号(R,G,B信号でもよい)を用いて、注目画素とその近傍から有彩色領域を検出し、有彩色領域で“1”を、無彩色領域と有彩色領域で“0”をそれぞれ出力する。ここに、有彩色領域検出回路21では、実際には無彩色領域の検出を行い、有彩色領域の検出結果の出力を行う。この処理は有彩色画素検出処理及び2段階の補正処理からなる。まず無彩色画素検出処理で、Y2,M2,C2信号のそれぞれの差の最大値Δ(Y2,M2,C2)が所定の閾値以下である画素を無彩色画素として検出する。
次に第1段階の補正処理で、注目領域を中心とした所定の大きさのマスクにて、無彩色画素を計数し、その計数値が所定の閾値以上であれば、注目画素またはそのブロックを無彩色候補画素領域とする。もちろん、この計数値を任意に設定することで無彩色の検出レベルを変えることも可能である。後述する画質モードに応じた検出レベルの変更をこの値を変更することで実施できる。
【0024】
さらに、第2段階の補正処理において、第1段階の補正処理の結果、得られる無彩色候補画素領域を考慮した補正を加え、最終的に無彩色領域の画素を定める。図6は、この補正方法を説明する図である。同図に示すように、注目画素Pが無彩色候補画素領域の画素でなくても、注目画素Pの左右の一定距離(所定の画素数)だけ離れた画素A,Bが共に無彩色候補画素領域である場合、注目画素Pまたはそのブロックを無彩色領域とする。この補正により得られる無彩色領域の画素を、先の第1段階の補正により得られる無彩色候補画素領域の画素とともに、出力を“0”にし、そうでない場合は、非無彩色領域即ち有彩色領域の画素として出力を“1”にする。
【0025】
上記のように、文字検出回路19、無彩色領域検出回路20、有彩色領域検出回路21の各回路から、処理対象の画素(注目画素)の画素情報が検出され、比較回路16に入力される。
比較回路16は、処理対象の画素から検出された画素情報及びシステム制御部23から送られてくる画質モードを基に当該画素が中彩度文字領域の画素に当たると判定されるときに、この画素に対して、統一して色文字又は黒文字のいずれかを選択したUCR処理を適用するための出力をUCR回路15に出力する。
この動作を行うためには、画素情報と中彩度文字領域の画素の属性との関係及び中彩度文字領域の画素の属性と選択するUCR処理との関係を画質モードごとに予め定めておき、処理対象画素の画素情報の検出結果から当該関係に基づいて、選択するUCR処理を決める必要がある。
【0026】
この実施形態では、検出される画素情報、即ち、文字領域、無彩色領域、有彩色領域の各領域への属性を示す情報(上述のように、その領域に属するか否かによって、“1”か“0”の信号で示される)の全ての組み合わせの中、中彩度文字領域の画素の属性に相当する組み合わせを画質モードごとに予め定め、予め定められた当該組み合わせに対して、UCR回路15への比較回路16の出力を統一する。
【0027】
ところで、画質モードについて、説明を加えると、本実施形態では、例えば、ユーザーが原稿の種類を認識し、その種類に適した条件で処理することを求める場合、操作部22を通してユーザーが原稿の種類に対応する動作モードを画質モードとして指示することができる。なお、本実施形態では、この画質モードとして「文字系」又は「写真系」を設定できるようにしている。
画質モードが指示された場合、システム制御部23は、文字検出回路19、無彩色領域検出回路20、有彩色領域検出回路21の各回路への検出レベルの設定を変更することによって、画質モード毎に適切なUCR回路15の処理を行わせることができる。例えば、文字系に対しては、文字検出回路19及び無彩色領域検出回路20に対しては、それぞれ検出レベルを高く設定し、有彩色領域検出回路21に対しては、検出レベルを低く設定することで、文字画像品質を重視した設定とする。また、写真系に対しては、前の文字系とは逆に、文字検出回路19および無彩色領域検出回路20に対しては、それぞれ検出レベルを低く設定し、有彩色領域検出回路21に対しては、検出レベルを高く設定することで、写真画像品質を重視した設定にする。また、比較回路16に対しても、指示された画質モードを通知し、UCR回路15への出力を画質モードに応じた設定に変更する。
【0028】
図7は、上述の手法により予め定められた処理対象の画素から検出される画素情報の組み合わせと比較回路16の出力の関係をまとめて示す表である。同図は、「文字系」及び「写真系」の各画質モードにおいて、「文字検出結果」、「無彩色検出結果」及び「有彩色検出結果」として、無彩色領域、有彩色領域の各領域への属性を“1”又は“0”で示し、全ての組み合わせを表すとともに、各組み合わせに対する比較回路16の出力を「比較回路出力」としてまとめたものである。
【0029】
図7の例では、文字系の画質モードにおいて、「文字検出結果=0、無彩色検出結果=0、有彩色検出結果=0」の組み合わせは文字ではなく、且つ、無彩色でもなく、且つ、有彩色でもない、つまり、絵柄部の中彩度色の領域の画素の属性に相当する組み合わせであることを意味している。この場合、比較回路出力としては0としている。即ち、中彩度絵柄領域の画素であるため上述のUCR処理Bが選択されることになる。
また、「文字検出結果=1、無彩色検出結果=0、有彩色検出結果=0」、「文字検出結果=1、無彩色検出結果=1、有彩色検出結果=0」「文字検出結果=1、無彩色検出結果=1、有彩色検出結果=1」の各組み合わせは、中彩度文字領域及び黒文字領域の画素の属性に相当する組み合わせになる。この領域の画素に対しては、従来技術によると出力がばらつく可能性があるので、この結果を招かないように、これらの領域の画素に対して統一して上述のUCR処理Aが選択されるように、出力を定めている。なお、有彩度文字領域の画素である「文字検出結果=1、無彩色検出結果=0、有彩色検出結果=1」については、UCR処理Bが選択される。
また、写真系の画質モードにおいて、「文字検出結果=1、無彩色検出結果=1、有彩色検出結果=0」の各組み合わせのみが、黒文字領域の画素の属性に相当する組み合わせになるので、この領域の画素のみに上述のUCR処理Aが選択されることになる。
【0030】
以上、説明したように、本実施形態によれば、中彩度文字領域に相当する画素を定め、この中彩度文字領域の画素に対し、統一して色文字又は黒文字のいずれかを選択したUCR処理を適用することで、出力にばらつきをなくし、画像の劣化を防ぐことができる。
また、画質モード毎に文字検出と中彩色領域検出の検出レベルを切り替え、また、各文字領域に適用するUCR処理を変更し、その画質モードに適した黒文字処理、或いは絵柄部の処理とすることで、処理をより適正化することができる。
【0031】
[実施形態2]
この実施形態は、文字と絵柄が入り混じっている場合のように、無彩色と有彩色の両方の領域への属性を有する画素が多くを占める画像をUCR処理の対象とする場合に適応して、出力画像の劣化を防ぐようにするものである。
本実施形態においても、上記[実施形態1]と同様に、画素情報(文字領域、無彩色領域、有彩色領域の各領域への属性情報)の検出を前提に、検出した画素情報に基づいて定まる各種領域の画素に適用するUCR処理を決める、という点では同様である。
【0032】
図8は、実施形態2に係る画像処理装置の概略構成を示す図である。
上述のように、本実施形態は、UCR処理の対象画像から検出した画像情報に基づいて適用するUCR処理を決める、という点で上記[実施形態1]と同じであるから、先に図1に示した構成における構成要素と共通の構成要素を有している。
図8において、図1と異なる点は、無彩/有彩計数回路24を設けた点と、図1の構成要素でもある文字検出回路19、無彩色領域検出回路20、有彩色領域検出回路21及び比較回路16と無彩/有彩計数回路24との関連構成である。なお、図8の構成要素の中、図1の構成要素と共通の要素については、図1について先に示した説明を参照することとし、ここでは、説明を省略する。
【0033】
無彩/有彩計数回路24は、無彩色領域検出回路20の出力と有彩色領域検出回路21の出力がどちらも互いに真の検知結果を出力した場合に、その計数処理を行い、その計数値によって決定された出力を比較回路16へ出力するものである。
具体的には、画質モードとして文字と写真が混在している原稿読取画像に適したモード(後述する図9の表、参照)が設定された場合に、文字検出回路19、無彩色領域検出回路20、有彩色領域検出回路21への検出レベルの設定は、画質モードが文字モードの場合と写真モードの場合の中間的な設定となる。このため、一部、無彩色領域と有彩色領域が重なってしまう画素、つまり、無彩色であり有彩色でもある中間的な特性を持つ中彩度領域の画素が発生する。
ここでは、この中彩度領域の画素を無彩/有彩計数回路24で計数処理することにより、その計数値と文字検出回路19の文字検出結果とシステム制御部23から送られてくる画質モードにより、適切な色消去条件の黒文字処理のUCR処理を選択し適用できるようにするものである。
【0034】
具体的な無彩/有彩計数回路24は、無彩色領域検出回路20の出力と有彩色領域検出回路21の出力がどちらも互いに真の検出結果“1”を出力した画素、即ち、中彩度領域に属する画素を単位領域当たりカウントする。
例えば、単位領域として注目画素の近傍に連なる所定数の画素列領域を単位領域とすると、単位領域分の画素に対する中彩度領域の判定結果を保持する必要がある。その際、主走査方向の先行画素と現行の注目画素よりこの領域を定める場合、実時間で処理が可能であるが、後続画素を領域に入れる場合には、時間の遅れが生じる。
【0035】
無彩/有彩計数回路24は、上記のようにしてカウントされる値がある予め定められた所定基準値を超えるか否かを判定し、所定基準値を超え、中彩度領域の属性を有すると判定される場合には“1”を出力し、所定基準値に満たない場合には“0”を比較回路16に出力する。
比較回路16は、無彩/有彩計数回路24からの中彩度領域への属性を示す情報、文字検出回路19で検出された文字検出結果及びシステム制御部23から送られてくる画質モードを基に、当該画素が中彩度文字領域の画素に当たると判定されるときに、この画素に対して、上記で図2を参照して説明したUCR処理Aを選択したUCR処理を適用するための出力をUCR回路15に出力する。
【0036】
この動作を行うためには、画素情報として得られる文字領域への属性の検出結果と中彩度領域への属性の判定結果と、選択するUCR処理との関係を画質モードごとに予め定めておき、処理対象画素の前記検出結果及び判定結果から当該関係に基づいて、選択するUCR処理を決める必要がある。
この実施形態では、検出される文字領域への属性を示す情報(文字領域に属するか否かを、“1”,“0”の信号で示す)の検出結果が“1”であり、且つ中彩度領域への属性の判定の結果(中彩度領域の属性を有するか否かを、“1”,“0”の信号で示す)が“1”であるもののみ、UCR処理Aを選択し、これ以外の組み合わせについては、UCR処理Bを選択する。
【0037】
図9は、上述の手法により予め定められた、処理対象の画素から検出される画素情報の組み合わせ、中彩度領域への属性の判定結果及び比較回路16の出力の関係をまとめて示す表である。同図は、「文字/写真混在系」の画質モードにおいて、「文字検出結果」、「無彩色検出結果」及び「有彩色検出結果」として、無彩色領域、有彩色領域の各領域への属性を“1”又は“0”で示し、全ての組み合わせを表すとともに、各組み合わせに対し、「無彩/有彩係数結果」として、中彩度領域への属性の判定結果及び比較回路16の出力を「比較回路出力」としてまとめたものである。
【0038】
図9の例では、例えば、「文字検出結果=1、無彩/有彩計数結果=1」に示される組み合わせは、注目画素自身が中彩度文字領域の属性を有し、且つ中彩度文字領域への属性を示す画素の多い画像領域の画素であることを意味し、この画素に対し、文字/写真混在系モードにおいては、上述のUCR処理Aが実施されるが、それ以外の画素、例えば、中彩度文字領域への属性(無彩色領域検出と有彩色領域検出のどちらも“1”)を有する画素であっても、「文字検出結果=0、無彩/有彩計数結果=0」の組み合わせに該当する場合には、UCR処理Bが実施されることになる。つまり、無彩画素と有彩画素の判定が同時にされるような中間的な画素に関しては、当該画素の単位領域当たりに占める値に応じて、UCR処理を切り替えることで、無彩領域と有彩領域が単位領域に混じり合うことはない。
【0039】
以上、説明したように、本実施形態によれば、無彩色であり有彩色でもある中間的な特性を持つ中彩度領域の属性を有する画素に対し、当該画素の近傍の単位領域に占める中彩度領域に属する画素数に応じて、UCR処理を切り替えることで、出力に単位領域内で無彩領域と有彩領域が混じり合うことがなくなって、画質劣化が発生することを防ぐことができる。
【0040】
[実施形態3]
この実施形態は、文字、絵柄それぞれが主である場合、或いは文字と絵柄が入り混じっている場合、といったように、多様な原稿画像をUCR処理の対象とする場合にそれぞれに適応して、出力画像の劣化を防ぐようにするものである。
本実施形態においても、上記[実施形態1]と同様に、画素情報(文字領域、無彩色領域、有彩色領域の各領域への属性情報)の検出を前提に、検出した画素情報に基づいて定まる各種領域の画素に適用するUCR処理を決める、という点では同様である。
【0041】
図10は、実施形態3に係る画像処理装置の概略構成を示す図である。
上述のように、本実施形態は、UCR処理の対象画像から検出した画像情報に基づいて適用するUCR処理を決める、という点で上記[実施形態1]と同じであるから、先に図1に示した構成における構成要素と共通の構成要素を有している。
図10において、図1と異なる点は、ラインメモリ25、パターン検知回路26及び遅延調整メモリ27,28を設けた点と、図1の構成要素でもある文字検出回路19、無彩色領域検出回路20、有彩色領域検出回路21及び比較回路16と本実施形態で新たに設けた上記構成要素との関連構成である。なお、図10の構成要素の中、図1の構成要素と共通の要素については、図1について先に示した説明を参照することとし、ここでは、説明を省略する。
【0042】
ラインメモリ25は、例えば、最も簡単な例としてば、UCR処理の対象となる画像データ3ライン分を格納できるメモリである。ラインメモリ25は、FIFO(First-In First-Out)機能があり、常に注目ラインを中心に前後1ライン分のデータが格納され、新しいラインデータが入ってくると古いラインデータが出力される構造になっている。
また、このラインメモリ25は、無彩色領域検出回路20及び有彩色領域検出回路21から入力される画素の各領域への属性を示すデータに対し、データ変換を行いメモリに格納する。入力の際に行うデータ変換は、変換後に「0=無彩色、1=有彩色、2=有彩色/無彩色の両方」の3値で各画素の領域への属性を示す。なお、「2=有彩色/無彩色の両方」とは、無彩色領域検出回路20から無彩色と検出され、且つ有彩色領域検出回路21から有彩と検出されたとき、つまり、無彩色であり有彩色でもある中間的な特性を持つ中彩度領域の画素であることを示すデータ値である。
【0043】
図11は、ラインメモリ25に格納されたラインデータの1例を示す図である。同図の例は、3ライン分のデータを上記3値のデータとして格納したことを示すものである。
また、ラインメモリ25に格納されたデータは、パターン検知回路26からアクセス可能な構成となっている。
文字検出回路19の出力側に設けた遅延調整メモリ27は、ラインメモリ25で発生するライン遅延に対し、文字検出回路19からの検出データと同期をとるための遅延メモリである。同様に、UCR回路15の入力側に設けた遅延調整メモリ28は、処理対象の画像データとの同期を取るために設けられている。
【0044】
パターン検知回路26は、ラインメモリ25に格納されたデータにアクセスし、注目画素と周囲画素データを処理対象データとして取得し、また、取得したデータに対する処理として、周囲画素の有する領域への属性データのあり様(パターン)に応じて、注目画素データを変更する処理を行い、処理結果を比較回路16に出力する。
本実施形態では、注目画素とそれを囲む画素のデータ、即ち、上記「0=無彩色、1=有彩色、2=有彩色/無彩色の両方」の3値で示される画素の領域への属性を示すデータに基づいて、パターン検知を行い、その検知結果に従い、注目画素のデータを置き換える処理を行う。
本実施形態では、図12に示すような、3×3のマトリクスを処理に用いる例を示す。同図に示すように、注目画素を中心に周囲8画素を含む3×3の画素が処理単位となる。
パターン検知回路26は、前記ラインメモリ25に格納された3ライン分の検出データを順次主走査方向に3×3マトリクスでアクセスし、得られるデータに対し次に示す処理を行う。
【0045】
パターン検知回路26が行う処理内容について、次に説明する。
この処理は、注目画素及び周囲画素それぞれの有する領域への属性データ、即ち、図11から3×3マトリクスで切り出されたデータのあり様(パターン)に応じて、注目画素のデータを置き換える処理であり、下記手法(1)〜手法(3)の3態様で実施することができる。なお、下記手法(1)〜手法(3)における、画素の3値は「0=無彩色、1=有彩色、2=有彩色/無彩色の両方」として、画素の各色領域への属性を示すデータである。
手法(1): 注目画素が“0”の場合、周囲8画素の中、6画素が“1”であれば、注目画素を“0”から“1”に置き換える。つまり、有彩領域の中に無彩画素がある場合には、この無彩画素を有彩画素に置き換える。
手法(2): 注目画素が“1”の場合、周囲8画素の中、6画素が“0”であれば、注目画素を“1”から“0”に置き換える。つまり、無彩領域の中に有彩画素がある場合には、この有彩画素を無彩画素に置き換える。
手法(3): 注目画素が“2”の場合、周囲8画素の中、6画素が“0”であれば、注目画素を“2”から“0”に置き換える一方、周囲8画素の中、6画素が“1”であれば、注目画素を“2”から“1”に置き換える。つまり、無彩領域の中に中彩度の画素がある場合には無彩画素に、有彩領域の中に中彩度の画素がある場合には有彩画素に置き換える。
【0046】
パターン検知回路26は、ラインメモリ25から3×3マトリクスで切り出された画素の各色領域への属性を示すデータに対し、上記手法(1)〜手法(3)のいずれかの処理を用いて、用いる手法に定められた条件に従って注目画素のデータの置き換え処理を行い、処理を通して得られる注目画素の属性を示すデータを比較回路16に出力する。
図13は、図11に示したラインメモリ25内のデータ(3値で表した各画素の属性データ)をパターン検知回路26で処理した後のデータ(2値で表した各画素の属性データ)の1例を示す図である。
上記手法(1)〜手法(3)のいずれも、無彩と有彩或いはこれらに中彩度が加わり、これらの領域の属性を有する画素が入り混じった画像を無彩、有彩のいずれかの領域に統一する際、占有度の高い領域に統一する意図を持つ手法であるから、パターン検知回路26を通すことにより、単位領域内で無彩領域と有彩領域が混じり合うことを効果的に抑制することができる。
【0047】
比較回路16は、パターン検知回路26からの無彩、有彩のいずれかの領域への属性を示すデータ、文字検出回路19で検出された文字検出結果及びシステム制御部23から送られてくる画質モードを基に、処理対象画素に対して、上記で図2を参照して説明したUCR処理A又はBを選択したUCR処理を適用するための出力をUCR回路15に出力する。
この動作を行うためには、画素情報として得られる文字領域への属性の検出結果と、処理対象画素(注目画素)に対して周囲画素と統一をとるために定められた無彩、有彩のいずれかの領域への属性の判定結果(パターン検知結果)と、選択するUCR処理との関係を画質モードごとに予め定めておき、処理対象画素の前記検出結果及び判定結果から当該関係に基づいて、選択するUCR処理を定める必要がある。
【0048】
この実施形態では、文字系及び写真系において、検出される文字領域への属性を示す情報(文字領域に属するか否かを、“1”、“0”の信号で示す)の検出結果が“1”であり、且つ無彩又は有彩の領域への属性の判定結果(無彩:“0”、有彩:“1”、の信号で示す)が“1”であるもののみ、UCR処理Aを選択する。よって、文字/写真混在系の全ての組み合わせを含め、これ以外の組み合わせについては、UCR処理Bを選択する。ただし、上記の文字系における「文字検出,無彩色検出,有彩色検出」の各検出レベルを「高,高,低」としているのに対して、写真系における同検出レベルは、逆の「低,低,高」としている。
【0049】
図14は、上述の手法により予め定められた、処理対象の画素から検出される文字領域への属性を示す情報、周囲画素と統一をとるために定められた無彩、有彩のいずれかの領域への属性の判定結果(パターン検知結果)及び比較回路16の出力の関係をまとめて示す表である。同図は、「文字系」「写真系」「文字/写真混在系」の各画質モードにおいて、「文字検出結果」及び「パターン検知結果」として、無彩色領域、有彩色領域の各領域への属性を“0”又は“1”で示し、全ての組み合わせに対し、比較回路16の出力を「比較回路出力」としてまとめたものである。
図14の例では、文字/写真混在系の画質モードにおいて、文字検出結果とパターン検知結果の全ての組み合わせでUCR処理Bを選択することで、単位領域内で無彩領域と有彩領域が混じり合うことを効果的に抑制することができる。
【0050】
また、文字系及び写真系でも、「文字検出結果=1、パターン検知結果=1」の組み合わせのみ、上述のUCR処理Aが選択され、それ以外はUCR処理Bを選択することで、単位領域内で無彩領域と有彩領域が混じり合うことを効果的に抑制することができる。
【符号の説明】
【0051】
11・・原稿読取部、15・・UCR回路、16・・比較回路、19・・文字検出回路、20・・無彩色領域検出回路、21・・有彩色領域検出回路、22・・操作部、23・・システム制御部、24・・無彩/有彩計数回路、25・・ラインメモリ、26・・パターン検知回路。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0052】
【特許文献1】特許第3153221号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
イメージが色分解され得られる各色成分値を画素単位で表す画像データを入力する画像入力手段と、前記画像データから黒文字処理用画素情報を検出する画素情報検出手段と、検出された黒文字処理用画素情報に基づいて設定される処理条件に従い前記画像データの各色成分の処理を行う出力画像処理手段を有する画像処理装置であって、
前記画素情報検出手段は、文字領域、無彩色領域、有彩色領域の各領域に属するか否かを検出する手段であり、
前記出力画像処理手段は、UCR処理を行う手段を備えるとともに、前記画素情報検出手段によって検出された情報に基づいて、無彩文字領域、中彩度文字領域、他の領域それぞれの領域への各画素の属性を定め、無彩文字領域及び中彩度文字領域に属する画素へ同じ色消去条件で黒文字処理のUCR処理を適用することを特徴とする画像処理装置。
【請求項2】
請求項1に記載された画像処理装置において、
入力イメージの種類を指定する原稿種類指定手段を備え、
前記出力画像処理手段は、前記原稿種類指定手段によって指定された入力イメージの種類によって、無彩文字領域及び中彩度文字領域に属する画素へ黒文字処理を適用するか、無彩文字領域に属する画素のみへ当該黒文字処理をするかを選択することを特徴とする画像処理装置。
【請求項3】
イメージが色分解され得られる各色成分値を画素単位で表す画像データを入力する画像入力手段と、前記画像データから黒文字処理用画素情報を検出する画素情報検出手段と、検出された黒文字処理用画素情報に基づいて設定される処理条件に従い前記画像データの各色成分の処理を行う出力画像処理手段を有する画像処理装置であって、
入力イメージの種類を指定する原稿種類指定手段を備え、
前記画素情報検出手段は、文字領域、無彩色領域、有彩色領域の各領域に属するか否かを検出する手段であり、
前記出力画像処理手段は、UCR処理を行う手段を備えるとともに、前記原稿種類指定手段によって指定された入力イメージの種類が所定の種類であるとき、前記画素情報検出手段によって検出された各画素の情報に基づいて、無彩文字領域、中彩度文字領域、他の領域それぞれの領域への各画素の属性を定め、所定画像領域において無彩文字領域に属する画素、中彩度文字領域に属する画素それぞれが占める占有度によって、無彩文字領域及び中彩度文字領域の画素に共通する色消去条件の黒文字処理のUCR処理を選択し適用することを特徴とする画像処理装置。
【請求項4】
イメージが色分解され得られる各色成分値を画素単位で表す画像データを入力する画像入力手段と、前記画像データから黒文字処理用画素情報を検出する画素情報検出手段と、検出された黒文字処理用画素情報に基づいて設定される処理条件に従い前記画像データの各色成分の処理を行う出力画像処理手段を有する画像処理装置であって、
入力イメージの種類を指定する原稿種類指定手段を備え、
前記画素情報検出手段は、文字領域、無彩色領域、有彩色領域の各領域に属するか否かを検出する手段であり、
前記出力画像処理手段は、UCR処理を行う手段を備えるとともに、前記原稿種類指定手段によって指定された入力イメージの種類が所定の種類であるとき、前記画素情報検出手段によって検出された画素の情報に基づいて、無彩文字領域、中彩度文字領域、他の領域それぞれへの各画素の属性を定め、注目画素の近傍に連なる所定数の画素列領域における中彩度文字領域に属する画素の数が所定値を超えるか否かによって、当該注目画素に色消去条件の異なる黒文字処理のUCR処理を選択し適用することを特徴とする画像処理装置。
【請求項5】
イメージが色分解され得られる各色成分値を画素単位で表す画像データを入力する画像入力手段と、前記画像データから黒文字処理用画素情報を検出する画素情報検出手段と、検出された黒文字処理用画素情報に基づいて設定される処理条件に従い前記画像データの各色成分の処理を行う出力画像処理手段を有する画像処理装置であって、
入力イメージの種類を指定する原稿種類指定手段を備え、
前記画素情報検出手段は、文字領域、無彩色領域、有彩色領域の各領域に属するか否かを検出する手段であり、
前記出力画像処理手段は、UCR処理を行う手段を備えるとともに、前記原稿種類指定手段によって指定された入力イメージの種類が所定の種類であるとき、前記画素情報検出手段によって検出された、注目画素周囲にある所定数の画素領域における各画素の情報に基づいて、無彩文字領域、中彩度文字領域、他の領域それぞれへの各画素の属性を定め、中彩度文字領域に属する画素が無彩文字領域に属する画素に囲まれているとき、当該注目画素を無彩文字領域に属する画素に置き換えて黒文字処理のUCR処理を適用することを特徴とする画像処理装置。
【請求項6】
イメージが色分解され得られる各色成分値を画素単位で表す画像データを入力する画像入力手段と、前記画像データから黒文字処理用画素情報を検出する画素情報検出手段と、検出された黒文字処理用画素情報に基づいて設定される処理条件に従い前記画像データの各色成分の処理を行う出力画像処理手段を有する画像処理装置であって、
入力イメージの種類を指定する原稿種類指定手段を備え、
前記画素情報検出手段は、文字領域、無彩色領域、有彩色領域の各領域に属するか否かを検出する手段であり、
前記出力画像処理手段は、UCR処理を行う手段を備えるとともに、前記原稿種類指定手段によって指定された入力イメージの種類が所定の種類であるとき、前記画素情報検出手段によって検出された、注目画素周囲にある所定数の画素領域における各画素の情報に基づいて、無彩文字領域、中彩度文字領域、他の領域それぞれへの各画素の属性を定め、無彩文字領域に属する画素が中彩度文字領域に属する画素に囲まれているとき、当該注目画素を中彩度文字領域に属する画素に置き換えて黒文字処理のUCR処理を適用しないことを特徴とする画像処理装置。
【請求項7】
イメージが色分解され得られる各色成分値を画素単位で表す画像データを入力する画像入力手段と、前記画像データから黒文字処理用画素情報を検出する画素情報検出手段と、検出された黒文字処理用画素情報に基づいて設定される処理条件に従い前記画像データの各色成分の処理を行う出力画像処理手段を有する画像処理装置であって、
入力イメージの種類を指定する原稿種類指定手段を備え、
前記画素情報検出手段は、文字領域、無彩色領域、有彩色領域の各領域に属するか否かを検出する手段であり、
前記出力画像処理手段は、UCR処理を行う手段を備えるとともに、
前記原稿種類指定手段によって指定された入力イメージの種類が所定の種類であるとき、前記画素情報検出手段によって検出された、注目画素周囲にある所定数の画素領域における各画素の情報に基づいて、無彩文字領域、中彩度文字領域、他の領域それぞれへの各画素の属性を定め、中彩度文字領域に属する画素が無彩文字領域に属する画素に囲まれているとき、当該注目画素を無彩文字領域に属する画素に置き換える一方、分離した無彩文字領域に属する画素が中彩度文字領域に属する画素に囲まれているとき、当該注目画素を中彩度文字領域に属する画素に置き換え、置き換えた画素種類の各領域における占有度によって、当該注目画素に色消去条件の異なる黒文字処理のUCR処理を選択し適用することを特徴とする画像処理装置。
【請求項8】
請求項2乃至7のいずれかに記載された画像処理装置において、
前記出力画像処理手段は、前記原稿種類指定手段によって指定された入力イメージの種類ごとに、無彩文字領域に属する画素の判定レベルの設定を変更するようにしたことを特徴とする画像処理装置。
【請求項9】
請求項2乃至8のいずれかに記載された画像処理装置において、
前記出力画像処理手段は、前記原稿種類指定手段によって指定された入力イメージの種類ごとに、中彩度文字領域に属する画素の判定レベルの設定を変更するようにしたことを特徴とする画像処理装置。
【請求項10】
イメージが色分解され得られる各色成分値を画素単位で表す画像データを入力する画像入力工程、前記画像入力工程で入力された画像データから黒文字処理用画素情報を検出する画素情報検出工程、前記画素情報検出工程で検出された黒文字処理用画素情報に基づいて設定する処理条件を決定する処理条件決定工程及び前記処理条件決定工程で決定された処理条件に従い前記画像データの各色成分の処理を行う出力処理工程の各工程を有する画像処理方法であって、
前記画素情報検出工程では、文字領域、無彩色領域、有彩色領域の各領域に属するか否かを表す情報を検出し、
前記処理条件決定工程では、文字領域、無彩色領域、有彩色領域の各領域に属するか否かを表す情報に基づいて、文字無彩色領域、文字中彩度色領域、他の領域それぞれへの各画素の属性を定め、文字無彩色領域及び文字中彩度色領域に属する画素へ同じ色消去条件で黒文字処理のUCR処理を行うことを決定することを特徴とする画像処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2012−142869(P2012−142869A)
【公開日】平成24年7月26日(2012.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−840(P2011−840)
【出願日】平成23年1月5日(2011.1.5)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】