説明

画像処理装置及び画像検索方法

【課題】 画像の幾何学的な変動に基づく局所特徴量の変動を検定し、変動の大きい局所特徴量を検索時に使わないようにする。
【解決手段】 入力画像に類似する画像を検索する際に、画像の局所的な特徴点を抽出し、抽出された特徴点における局所特徴量を算出する。そして局所特徴量における幾何学的な変動に基づく当該局所特徴量の変動を検定し、検定の結果に基づいて、画像の類似度を算出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、入力された画像に類似する画像を検索する画像処理装置及び画像検索方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
類似画像を検索するための技術が多く提案されている。例えば、画像を複数のブロックに分け、それぞれの画像特徴量(代表色)を用いてパターンマッチングを行うことで色の位置情報を利用して類似画像を検索する方法がある(特許文献1)。しかし、特許文献1に開示された方法の場合、検索時に画像全体から特徴量を計算する必要があるため、例えば画像内の特定オブジェクトが切り取られたり、背景色が変わったりした場合には検索が困難になってしまうという問題があった。
【0003】
そこで、画像全体の特徴量を使うのではなく、画像の局所的な特徴量(局所特徴量)を使って類似画像を検索する方法が提案されている。これらの方法では、まず画像から特徴的な点(局所特徴点)を抽出する。次に、局所特徴点とその近傍の画像情報とから、その局所特徴点に対する特徴量(局所特徴量)を計算する。画像の検索は、局所特徴量同士のマッチングによって行う。
【0004】
上述のような局所特徴量を利用する手法において、局所特徴量を回転不変となる複数の要素で構成される量として定義することにより、画像が回転した場合でも、精度良く検索可能な方法が提案されている(非特許文献1)。また同様に、局所特徴量を回転不変となる複数の要素で構成される量として定義することにより、局所特徴量を画像の位置合わせに利用しているものもある(特許文献2)。
【特許文献1】特開平8−249349号公報
【特許文献2】特開平9−44665号公報
【非特許文献1】C. Schmid and R. Mohr, "Localgray value invariants for image retrieval," IEEE Trans. PAMI., Vol.19, No.5, pp550-534, 1997.
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献2或いは非特許文献1に開示された方法の場合、当該方法で回転不変となるように定義された局所特徴量には、実際には画像回転時のノイズに起因する変動が発生する。図10は、回転不変として定義された局所特徴量の変動の例を示す図である。図10では、非特許文献1で定義された局所特徴量の変動を散布図として示している。即ち、画像を0°〜90°まで15°ずつ回転させた場合に、同一点で計算した7つの局所特徴量の要素をプロットしたものである。図10に見られるような局所特徴量の変動が検索精度を低下させるという問題があった。
【0006】
本発明は、上記課題を解決するためになされたもので、画像の幾何学的な変動に基づく局所特徴量の変動を検定し、変動の大きい局所特徴量を検索時に使わないようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、入力された画像に類似する画像を保持手段に保持された画像から検索する画像処理装置であって、画像の局所的な特徴点を抽出する特徴点抽出手段と、前記抽出された特徴点における局所特徴量を算出する局所特徴量算出手段と、前記画像の幾何学的な変動に基づく当該局所特徴量の変動を検定する局所特徴量検定手段と、前記検定の結果に基づく特徴点を用いて、前記入力された画像と前記保持手段に保持された画像との類似度を算出する類似度算出手段とを有することを特徴とする。
【0008】
また、本発明は、入力された画像に類似する画像を保持手段に保持された画像から検索する画像処理装置にて実行される画像検索方法であって、画像の局所的な特徴点を抽出する特徴点抽出工程と、前記抽出された特徴点における局所特徴量を算出する局所特徴量算出工程と、前記画像の幾何学的な変動に基づく当該局所特徴量の変動を検定する局所特徴量検定工程と、前記検定の結果に基づく特徴点を用いて、前記入力された画像と前記保持手段に保持された画像との類似度を算出する類似度算出工程とを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、画像の幾何学的な変動に基づく局所特徴量の変動を検定し、変動の大きい局所特徴量を検索時に使わないようにすることで、検索精度の低下を抑制することが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、図面を参照しながら発明を実施するための最良の形態について詳細に説明する。
【0011】
<第1の実施形態>
図1は、第1の実施形態における画像登録装置の構成例を示すブロック図である。図1に示すように、画像登録装置100は、画像入力部102、縮小画像生成部103、局所特徴点抽出部104、局所特徴量算出部105、特徴量登録部106から構成される。
【0012】
画像登録装置100において、縮小画像生成部103が画像入力部102に入力された登録画像101の縮小画像を生成し、局所特徴点抽出部104が縮小画像から局所特徴点を抽出する。そして、局所特徴量算出部105がその局所特徴点の局所特徴量を算出し、特徴量登録部106が入力された登録画像101と算出された局所特徴量とを関連付けて画像特徴データベース107に登録する。尚、画像登録装置100にて実行される画像の登録処理については、更に詳述する。また、画像特徴データベース107は、入力された画像に類似する画像を保持する保持手段である。
【0013】
図2は、第1の実施形態における画像検索装置の構成例を示すブロック図である。図2に示すように、画像検索装置200は、画像入力部202、縮小画像生成部203、局所特徴点抽出部204、局所特徴量算出部205、局所特徴量検定部206、特徴比較部207から構成される。
【0014】
画像検索装置200において、縮小画像生成部203が画像入力部202に入力されたクエリ画像201の縮小画像を生成し、局所特徴点抽出部204が縮小画像から局所特徴点を抽出する。そして、局所特徴量算出部205がその局所特徴点の局所特徴量を算出し、局所特徴量検定部206が局所特徴量を検定する。この検定結果は特徴比較部207に渡され、特徴比較部207が検定結果に基づき、画像特徴データベース107からクエリ画像201に類似した画像を検索し、検索結果208として出力する。尚、画像検索装置200にて実行される画像の検索処理については、更に詳述する。
【0015】
[画像の登録処理]
まず、画像を登録する際に行う各部の動作について説明する。図3は、画像の登録処理の手順を表すフローチャートである。ステップS301で、図1に示す画像入力部102が登録画像101を読み込み、ステップS302で、当該登録画像101から輝度成分を抽出する。そして、抽出した輝度成分に基づき輝度成分画像を生成し、生成した輝度成分画像を縮小画像生成部103に渡す。また、登録画像101を後段の特徴量登録部106に渡す。
【0016】
次に、ステップS303では、縮小画像生成部103が画像入力部102から渡された当該輝度成分画像を倍率pに従って順次縮小し、縮小画像をn枚生成して当該縮小画像を局所特徴点抽出部104に渡す。ただし、倍率p及び縮小画像の枚数nは予め決められているものとする。
【0017】
図4は、縮小画像を生成する縮小画像生成部103の処理の一例を示す図である。図4に示す例は、倍率pが2の−(1/4)乗、縮小画像の枚数nが9の場合である。図4において、401は画像入力部102から渡された輝度成分画像である。402は当該輝度成分画像から倍率pに従って4回縮小された縮小画像である。403は当該輝度成分画像から倍率pに従って8回縮小された縮小画像である。
【0018】
この例では、縮小画像402は画像入力部102から渡された輝度成分画像が1/2に縮小された画像となり、縮小画像403は画像入力部102から渡された輝度成分画像が1/4に縮小された画像となる。尚、画像を縮小する方法は何れの方法でも良く、第1の実施形態では、線形補間による縮小方法により縮小画像を生成するものとする。
【0019】
次に、ステップS304では、局所特徴点抽出部104が、縮小画像生成部103から渡されたn枚の縮小画像の各々に画像の回転があってもロバスト(robust)に抽出されるような局所的な特徴点(局所特徴点)を抽出する。ここで、ロバストな局所特徴点とは、画像を回転するときの画像処理で消えることなく安定的に抽出される、強健で耐性のある局所特徴点を意味する。抽出した局所特徴点は局所特徴量算出部105に渡される。この局所特徴点の抽出方法として、第1の実施形態ではHarris作用素を用いる。C.Harris and M.J. Stephens, "A combined corner and edge detector," In Alvey Vision Conference, pages 147-152, 1988.参照
具体的には、Harris作用素を作用させて得られた出力画像H上の画素について、当該画素及び当該画素の8近傍にある画素(合計9画素)の画素値を調べる。そして、当該画素が局所極大になる(当該9画素の中で当該画素の画素値が最大になる)点を局所特徴点として抽出する。ここで、当該画素が局所極大になったときでも、当該画素の値がしきい値以下の場合には局所特徴点として抽出しないようにする。画素値とは、各画素がどれぐらい局所としてふさわしいかを示す値である。
【0020】
尚、局所特徴点を抽出可能な方法であれば、上述のHarris作用素による特徴点抽出方法に限らず、どのような特徴点抽出方法でも局所特徴点抽出部104に適用可能である。
【0021】
次に、ステップS305で、局所特徴量算出部105が、局所特徴点抽出部104から渡された局所特徴点の各々に画像の回転があっても不変となるように定義された特徴量(局所特徴量)を算出する。ここで抽出された局所特徴量は座標情報と関連付けられた上で局所特徴量登録部106に渡される。この局所特徴量の算出方法として、第1の実施形態ではLocal Jet及びそれらの導関数の組み合わせを用いる。J.J.Koenderink and A.J.van Doorn, "Representation of local geometry in the visual system," Riological Cybernetics, vol.55, pp.367-375, 1987.参照
具体的には、以下の式(1)により局所特徴量を算出する。
【0022】
【数1】

【0023】
ただし、式(1)の右辺で用いている記号は、以下に示す式(2)から式(7)で定義される。ここで、式(2)右辺のG(x,y)はガウス関数、I(x,y)は画像の座標(x,y)における画素値であり、“*”は畳み込み演算を表す記号である。また、式(3)は式(2)で定義された変数Lのxに関する偏導関数、式(4)は当該変数Lのyに関する偏導関数である。式(5)は式(3)で定義された変数Lxのyに関する偏導関数、式(6)は式(3)で定義された変数Lxのxに関する偏導関数、式(7)は式(4)で定義されたLyのyに関する偏導関数である。
【0024】
【数2】

【0025】
尚、局所特徴量を算出可能な方法であれば、上述したような特徴量算出方法に限らず、どのような特徴量算出方法でも適用可能である。
【0026】
次に、ステップS306で、特徴量登録部106が局所特徴量算出部105から渡された局所特徴量と画像入力部102から渡された登録画像101とを関連付けて、画像特徴データベース107に登録する。以上で画像の登録処理が終了する。
【0027】
[画像の検索処理]
次に、画像を検索する際に行う各部の動作について説明する。図5は、画像の検索処理の手順を表すフローチャートである。ステップS501で、図2に示す画像入力部202がクエリ画像201を読み込み、ステップS502で、当該クエリ画像201から輝度成分を抽出する。そして、抽出した輝度成分に基づき輝度成分画像を生成し、生成した輝度成分画像を縮小画像生成部203に渡す。
【0028】
次に、ステップS503では、縮小画像生成部203が画像入力部202から渡された当該輝度成分画像を倍率pに従って順次縮小し、縮小画像をn枚生成して当該縮小画像を局所特徴点抽出部204に渡す。ただし、倍率p及び縮小画像の枚数nは上述した画像の登録処理で用いた値と同じ値にする。
【0029】
次に、ステップS504では、局所特徴点抽出部204が、縮小画像生成部203から渡されたn枚の縮小画像の各々に画像の回転があってもロバストに抽出されるような局所的な特徴点(局所特徴点)を抽出する。抽出した局所特徴点は局所特徴量算出部205に渡される。この局所特徴点の抽出方法として、上述の画像の登録処理で用いた方法と同様に、Harris作用素を用いる。
【0030】
具体的には、Harris作用素を作用させて得られた出力画像H上の画素について、当該画素及び当該画素の8近傍にある画素(合計9画素)の画素値を調べる。そして、当該画素が局所極大になる(当該9画素の中で当該画素の画素値が最大になる)点を局所特徴点として抽出する。ここで、当該画素が局所極大になったときでも、当該画素の値がしきい値以下の場合には局所特徴点として抽出しないようにする。
【0031】
尚、局所特徴点を抽出可能な方法であれば、上述のHarris作用素による特徴点抽出方法に限らず、どのような特徴点抽出方法でも局所特徴点抽出部204に適用可能である。
【0032】
次に、ステップS505で、局所特徴量算出部205が、局所特徴点抽出部204から渡された局所特徴点の各々に画像の回転があっても不変となるように定義された特徴量(局所特徴量)を算出する。ここで抽出された局所特徴量は座標情報と関連付けされた上で局所特徴量検定部206に渡される。この局所特徴量の算出方法は、上述した画像の登録処理で用いた方法と同じ方法を使用する。即ち、Local Jet及びそれらの導関数の組み合わせを用い、式(1)により局所特徴量を算出する。
【0033】
次に、ステップS506で、局所特徴量検定部206が、局所特徴量算出部205から渡された各々の局所特徴量の変動を検定する。ここで、これ以降の説明を簡略化するため、局所特徴量算出部205から渡された局所特徴量を局所特徴量(0°)と記載する。
【0034】
第1の実施形態における検定では、45°回転検定を実施する。即ち、局所特徴量算出部105、205で局所特徴量算出に使ったガウスフィルタを45°回転させたフィルタ(45°回転フィルタ)を予め準備しておき、当該45°回転フィルタを使って検定を実施する。ここで、フィルタを45°回転させるとは、所定のフィルタ係数に対して幾何学的に回転変換を施すことを意味する。
【0035】
図7は、ガウスフィルタの一例を示す図である。また、図8は、図7に示すフィルタを45°回転させたガウスフィルタの一例を示す図である。クエリ画像201を回転させるのではなく、ガウスフィルタを回転させている。クエリ画像201を回転させた画像を生成するよりも処理負担が軽減され、以降の検定処理を速やかに実行できる。
【0036】
ここで、第1の実施形態における具体的な検定方法を説明する。図8に示す45°回転フィルタを使い、ステップS505で局所特徴量算出部205が算出した同じ方法により局所特徴量(45°)を算出する。最後に、局所特徴量(0°)と局所特徴量(45°)とのマハラノビス距離を比較し、マハラノビス距離が予め定められたしきい値以下となる場合を検定合格とし、それ以外の場合を不合格とする。つまり、合格となった局所特徴量だけが特徴比較部207に渡される。尚、マハラノビス距離を計算するための分散共分散行列は、予め多くの局所特徴量から求めたものを使用する。
【0037】
このように、第1の実施形態では、回転させたフィルタを使用して局所特徴量の変動の程度を予め検定し、変動の少ない局所特徴量のみで照合を行うようにしているので、精度の良い検索が期待できる。
【0038】
尚、第1の実施形態では、検定時のフィルタ回転度数を45°として、45°回転検定だけを実施する場合を説明したが、45°回転検定だけでなく、例えば0°〜90°までt°単位に回転検定を実施しても良い。ただし、tは予め定められた0<t<90を満たす値である。
【0039】
また、t°づつ回転検定を実施するのでなく、t°以下になるまで、90°から2分割を繰り返して得られる度数のフィルタ回転によって順次回転検定を行うことで、検定対象特徴点の削減を促進するようにしても良い。
【0040】
ここで図5に戻り、ステップS507で、特徴比較部207が局所特徴量検定部206から渡された局所特徴量と画像特徴データベース107に登録されている局所特徴量とを比較する。この比較は、画像特徴データベース107に登録されている登録画像毎に実施され、比較の結果として登録画像毎に類似度を算出する。この類似度算出方法については、更に詳述する。
【0041】
次に、ステップS508で、特徴比較部207は、算出した類似度と当該類似度の算出元となった画像とを関連付けて検索結果リストを作成した後、当該類似度を降順にソートする。その後、類似度が高い画像と当該画像の類似度とをソート順に検索結果208として出力する。
【0042】
[類似度算出方法]
次に、類似度算出方法を説明する。ここで、局所特徴量検定部206から渡された局所特徴量をVq、局所特徴量に関連付けされている局所特徴点をQ,座標をQ(x’,y’)とする。また、画像特徴データベース107に登録されている画像R上に存在する局所特徴量をVs、局所特徴量に関連付けされている局所特徴点をS、座標をS(x,y)とする。
【0043】
図6は、第1の実施形態における類似度の算出手順を示すフローチャートである。類似度の算出は投票処理(計数処理)によって行う。投票数=類似度である。まず、ステップS601で、最大投票数を表す変数VoteMaxを0に初期化する。最大投票数は、複数回投票を行ったうち得られた最大の投票数である。次に、ステップS602で、VqとVsとの特徴量間距離を全ての組み合わせについて計算し、最短距離対応点リストを作成する。即ち、計算した特徴量間の距離がしきい値Tv以下となり、かつ、最短距離となるようなVqとVsとの組み合わせ(対応点)を抽出し、最短距離対応点リストに登録する。
【0044】
これ以降、最短距離対応点リストに登録されたk番目の対応点について、当該対応点の局所特徴量をそれぞれVq(k)とVs(k)と記載する。更にVq(k)とVs(k)に対応付けられている局所特徴点をそれぞれQk、Sk、座標をQk(x’k,y’k)、Sk(xk,yk)などと添え字を合わせて記載する。またステップS602で作成された最短距離対応点リストに登録された対応点の組数をm組とする。
【0045】
次に、ステップS603で、類似度算出処理の反復カウント数を表す変数Countを0に初期化する。次に、ステップS604で、反復カウント数Countが予め定められた最大反復処理回数Rnを超えていないことを判定する。ここで、超えている場合はステップS618へ進み、最大投票数VoteMaxを出力して、この処理を終了する。
【0046】
また、ステップS604で、反復カウント数Countが最大反復処理回数Rnを超えていない場合はステップS605へ進み、投票数を表す変数Voteを0に初期化する。次に、ステップS606で、当該最短距離対応点リストから対応点の組の座標をランダムに2組抽出する。ここで、これらの座標をQ1(x’1,y’1)、S1(x1,y1)及びQ2(x’2,y’2)、S2(x2,y2)と記載する。次に、ステップS607で、抽出したQ1(x’1,y’1)、S1(x1,y1)及びQ2(x’2,y’2)、S2(x2,y2)が式(8)に示す変換を満たしていると仮定し、式(8)中の変数a〜fを求める。
【0047】
ただし、図6に示すステップS607では、変数a〜dで構成される行列をMで示し、変数e〜fで構成される行列をTで示している。
【0048】
【数3】

【0049】
ここで、第1の実施形態では、簡略化のため、相似変換だけを考える。このとき、上記式(8)は以下の式(9)のように書き換えられる。
【0050】
【数4】

【0051】
このとき、変数a、b、e、fはx’1、y’1、x1、y1、x’2、y’2、x2、y2を使って式(10)から式(13)で表される。
【0052】
【数5】

【0053】
次に、ステップS608で、上述のステップS606で当該最短距離対応点リストからランダムに抽出された2組の点以外の点を選択するために、対応点選択変数kを3に初期化する。そして、ステップS609で、対応点選択変数kが当該最短距離対応点リストに登録されている対応点の組数mを超えていないかを判定する。ここで、超えている場合はステップS615へ処理を移すが、これについては後述する。ステップS609における判定で対応点選択変数kが当該最短距離対応点リストに登録されている対応点の組数mを超えていない場合はステップS610へ処理を移す。
【0054】
このステップS610では、上述のステップS606で当該最短距離対応点リストからランダムに抽出した2組の点S1(x1,y1)及びS2(x2,y2)以外の点を当該最短距離対応点リストから抽出する。第1の実施形態では、抽出された点をSk(xk,yk)と記載する。
【0055】
次に、ステップS611で、Sk(xk,yk)が式(9)を使って移される座標Sk’(x’k,y’k)を求める。
【0056】
その後、ステップS612では、座標Sk’(x’k,y’k)と座標Qk(x’k,y’k)との幾何学的距離をユークリッド距離で計算し、当該ユークリッド距離がしきい値Td以下であるか否かを判定する。当該ユークリッド距離がしきい値Td以下の場合はステップS613へ進み、投票数Voteをインクリメントし、ステップS614へ処理を移す。また、当該ユークリッド距離がしきい値Tdより大きい場合は、何もせずにステップS614へ処理を移す。当該ユークリッド距離がしきい値Td以下の特徴点が、画像間で類似しているとみなす特徴点である。
【0057】
このステップS614では、対応点選択変数kをインクリメントし、ステップS609に戻り、対応点選択変数kが当該最短距離対応点リストに登録されている対応点の組数mを超えるまで、上述の処理を繰り返す。つまり、ステップS606でまた別の2組の点を抽出し、ステップS607で式(9)のパラメータ変数a、b、e、fを求め、ステップS608乃至ステップS612の処理を行い、投票することを繰り返す。
【0058】
次に、ステップS609で、対応点選択変数kが当該最短距離対応点リストに登録されている対応点の組数mを超えた場合の処理であるステップS615を説明する。ステップS615では、投票数Voteの値と最大投票数VoteMaxの値とを比較し、投票数Voteの値が最大投票数VoteMaxの値よりも大きい場合にはステップS616へ処理を移す。
【0059】
このステップS616では、最大投票数VoteMaxの値を投票数Voteの値で置き換えた後、ステップS617で反復カウント数Countをインクリメントし、上述のステップS604に処理を戻す。
【0060】
また、ステップS615で、投票数Voteの値が最大投票数VoteMaxの値以下の場合にはステップS617へ処理を移し、反復カウント数Countをインクリメントし、上述のステップS604に処理を戻す。
【0061】
尚、第1の実施形態における類似度の算出方法の説明では、相似変換だけを考えて説明したが、アフィン変換などその他の幾何学変換についても、ステップS607でそれぞれに応じた変換行列を求めることにより、対応可能である。例えば、アフィン変換の場合には、まずステップS606で、ランダムに選択する対応点の組の座標数を3とする。次に、ステップS607で、式(9)ではなく式(8)を使うこととし、ステップS606で選択した3組の対応点(合計6点)を使って変数a〜fを求めれば良い。
【0062】
また、第1の実施形態における類似度の算出方法の説明では、ステップS618で類似度として最大投票数VoteMaxを出力する方法を説明したが、本発明はこれに限らず、他の類似度を計算するようにしても良い。即ち、ステップS603以降の処理を行わずに、ステップS602で作成された最短距離対応点リストに登録された対応点の組数mを類似度として出力するようにする。これにより、一定の検索精度を保ちつつ、検索速度を向上させることが可能になる。
【0063】
以上の説明から明らかなように、第1の実施形態の画像検索装置では、クエリ画像から算出された局所特徴量の変動を検定し、変動の大きい局所特徴量を検索時に使わないように構成したので、検索精度の低下を抑制することが可能になる。
【0064】
<第1の実施形態の変形例>
第1の実施形態では、局所特徴量検定部206が回転させたフィルタを使って局所特徴量を検定したが、フィルタを回転させるのではなく、画像自身を回転させた後に局所特徴量を算出し、算出した当該局所特徴量を使って検定しても良い。
【0065】
第1の実施形態と同様に、クエリ画像201から算出した局所特徴量の変動を検定して変動の大きい局所特徴量を検索時に使わないように構成したので、検索精度の低下を抑制することが可能になる。
【0066】
<第2の実施形態>
次に、図面を参照しながら本発明に係る第2の実施形態を詳細に説明する。第2の実施形態では、局所特徴量の検定を画像の登録処理の中でも行うものである。
【0067】
図9は、第2の実施形態における画像登録装置の構成例を示すブロック図である。図9に示すように、第1の実施形態で説明した画像登録装置100の局所特徴量算出部105と特徴量登録部106との間に局所特徴量検定部901を追加した構成である。
【0068】
局所特徴量検定部901は、第1の実施形態の局所特徴量検定部206と同様の処理を行う。即ち、局所特徴量算出部105で局所特徴量の算出に使ったフィルタを45°回転させたフィルタ(45°回転フィルタ)を予め準備しておき、当該45°回転フィルタを使って検定を行う。
【0069】
第2の実施形態における具体的な検定方法を説明する。当該45°回転フィルタを使い、ステップS305で局所特徴量算出部105と同じ方法により、局所特徴量(45°)を算出する。最後に、局所特徴量(0°)と局所特徴量(45°)とのマハラノビス距離を比較する。当該マハラノビス距離が予め定められたしきい値以下となる場合を検定合格とし、それ以外の場合を不合格とする。つまり、合格となった局所特徴量だけが特徴登録部106に渡される。
【0070】
尚、検定時のフィルタ回転度数は45°に限らず、例えば0°〜90°までt°単位に回転度数を変化させて検定しても良い。ただし、tは予め定められた0<t<90を満たす値である。
【0071】
また、t°づつ回転検定を実施するのでなく、t°以下になるまで、90°から2分割を繰り返して得られる度数のフィルタ回転によって順次回転検定を行うことで、検定対象特徴点の削減を促進するようにしても良い。
【0072】
また、フィルタを回転させるのではなく、画像自身を回転させることにより回転検定を実施するようにしても良い。
【0073】
第2の実施形態によれば、画像の登録処理時に登録画像から算出した局所特徴量の変動を検定して変動の大きい局所特徴量を登録しないように構成したので、検索精度の低下を抑制することが可能になる。
【0074】
<変形例>
第1及び第2の実施形態では、局所特徴量の検定処理で全ての局所特徴量に対して一律のしきい値を使って検定処理の合格と不合格とを判定したが、画像毎に検定基準を変化させるようにしても良い。即ち、検定に合格する局所特徴量数が一定数以下の場合は、予め定めた値rを使い、現在のしきい値をr倍した値を新たなしきい値として再設定して再度検定する処理を、検定に合格する特徴点数が一定数以上になるまで繰り返す。
【0075】
このように、画像毎に検定基準を変化させることで、例えば回転に対して変動の大きい局所特徴量だけを持つ画像に対しても局所特徴量が求まるので、検索が可能になる。一方、検定基準を所定のしきい値に設定した場合は、このような画像では局所特徴量が求まらなくなり、検索ができなくなる。
【0076】
また、Harris作用素を作用させて得られた出力画像H上の画素について、当該画素及び当該画素の8近傍にある画素(合計9画素)の画素値を調べ、当該画素が局所極大になる(9画素の中で画素の画素値が最大になる)点を特徴点として抽出する。そして、画素が局所極大になったときでも、画素の値がしきい値以下の場合には特徴点として抽出しないようにする方法について説明した。
【0077】
しかし、本発明はこれに限らず、当該画素の値がしきい値以下の場合にも特徴点として抽出し、抽出した全ての当該特徴点から局所特徴量を算出し、当該局所特徴量に検定処理を実施するようにしても良い。
【0078】
即ち、Harris作用素を作用させて得られた出力画像H上の画素が局所極大になったときに当該画素の値がしきい値以下の場合にも特徴点として抽出し、抽出した全ての当該特徴点から局所特徴量を算出し、当該局所特徴量に検定処理を実施する。これにより、今まで特徴点として抽出されなかった点についても、当該特徴点から算出される局所特徴量が検定に合格すれば、検索時に当該局所特徴量も利用されるようになる。
【0079】
一方、今まで特徴点として抽出されていた点については、上述したした方法により影響を受けることはない。即ち、局所特徴量が増えることになり、検索精度を更に向上させることが可能になる。
【0080】
また、局所特徴量の検定処理において、合格となった局所特徴量だけを利用し、不合格の局所特徴量を廃棄する方法について説明したが、検定に不合格の局所特徴量を廃棄するのではなく、検定結果に応じて局所特徴量に重み付けを変更するようにしても良い。この場合、当該重み付けは類似度の算出時に利用する。
【0081】
例えば、局所特徴量の重みWを式(14)のように定める。
【0082】
【数6】

【0083】
ただし、Dは局所特徴量と検定時のフィルタを45°回転させた場合の局所特徴量とのマハラノビス距離である。
【0084】
また、類似度の算出においては、第1の実施形態におけるステップS613で類似度の計算を行っているが、ここを以下の式(15)のような重みを考慮した計算にすれば良い。
【0085】
【数7】

【0086】
尚、ここでは、重み付け算出方法を式(14)のように定義したが、変動の少ない局所特徴量の重み付けを大きくし、変動の多い局所特徴量の重み付けを小さくするような重み付け方法であれば、その方法で代用可能である。
【0087】
即ち、局所特徴量を除去せずに局所特徴量毎に重み付けを行って類似度を計算するようにしたので、例えば回転に対して変動の大きい局所特徴量だけを持つ画像に対しても検索が可能になる。
【0088】
上述した実施形態では、回転に対する検定を実施したが、本発明はこれに限らず、画像の拡大や縮小など他の画像処理に対しても局所特徴量の変動を検定し、変動の大きい局所特徴量を検索時に使わないようにしても良い。これにより、検索対象に回転以外の画像が含まれる場合でも、検索精度の低下を抑制することが可能になる。
【0089】
尚、本発明は複数の機器(例えば、ホストコンピュータ,インターフェース機器,リーダ,プリンタなど)から構成されるシステムに適用しても、1つの機器からなる装置(例えば、複写機,ファクシミリ装置など)に適用しても良い。
【0090】
また、前述した実施形態の機能を実現するソフトウェアのプログラムコードを記録した記録媒体を、システム或いは装置に供給し、そのシステム或いは装置のコンピュータ(CPU若しくはMPU)が記録媒体に格納されたプログラムコードを読出し実行する。これによっても、本発明の目的が達成されることは言うまでもない。
【0091】
この場合、コンピュータ読み取り可能な記録媒体から読出されたプログラムコード自体が前述した実施形態の機能を実現することになり、そのプログラムコードを記憶した記録媒体は本発明を構成することになる。
【0092】
このプログラムコードを供給するための記録媒体として、例えばフレキシブルディスク,ハードディスク,光ディスク,光磁気ディスク,CD−ROM,CD−R,磁気テープ,不揮発性のメモリカード,ROMなどを用いることができる。
【0093】
また、コンピュータが読出したプログラムコードを実行することにより、前述した実施形態の機能が実現されるだけでなく、次の場合も含まれることは言うまでもない。即ち、プログラムコードの指示に基づき、コンピュータ上で稼働しているOS(オペレーティングシステム)などが実際の処理の一部又は全部を行い、その処理により前述した実施形態の機能が実現される場合である。
【0094】
更に、記録媒体から読出されたプログラムコードがコンピュータに挿入された機能拡張ボードやコンピュータに接続された機能拡張ユニットに備わるメモリに書込む。その後、そのプログラムコードの指示に基づき、その機能拡張ボードや機能拡張ユニットに備わるCPUなどが実際の処理の一部又は全部を行い、その処理により前述した実施形態の機能が実現される場合も含まれることは言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0095】
【図1】第1の実施形態における画像登録装置の構成例を示すブロック図である。
【図2】第1の実施形態における画像検索装置の構成例を示すブロック図である。
【図3】画像の登録処理の手順を表すフローチャートである。
【図4】縮小画像を生成する縮小画像生成部103の処理の一例を示す図である。
【図5】画像の検索処理の手順を表すフローチャートである。
【図6】第1の実施形態における類似度の算出手順を示すフローチャートである。
【図7】ガウスフィルタの一例を示す図である。
【図8】図7に示すフィルタを45°回転させたガウスフィルタの一例を示す図である。
【図9】第2の実施形態における画像登録装置の構成例を示すブロック図である。
【図10】回転不変として定義された局所特徴量の変動の例を示す図である。
【符号の説明】
【0096】
100 画像登録装置
101 登録画像
102 画像入力部
103 縮小画像生成部
104 局所特徴点抽出部
105 局所特徴量算出部
106 特徴量登録部
107 画像特徴データベース
200 画像検索装置
201 クエリ画像
202 画像入力部
203 縮小画像生成部
204 局所特徴点抽出部
205 局所特徴量算出部
206 局所特徴量検定部
207 特徴比較部
208 検索結果

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力された画像に類似する画像を保持手段に保持された画像から検索する画像処理装置であって、
画像の局所的な特徴点を抽出する特徴点抽出手段と、
前記抽出された特徴点における局所特徴量を算出する局所特徴量算出手段と、
前記画像の幾何学的な変動に基づく当該局所特徴量の変動を検定する局所特徴量検定手段と、
前記検定の結果に基づく特徴点を用いて、前記入力された画像と前記保持手段に保持された画像との類似度を算出する類似度算出手段とを有することを特徴とする画像処理装置。
【請求項2】
前記局所特徴量検定手段は、前記局所特徴量毎に幾何学的な変動を算出し、しきい値に基づいて検定の合格、或いは不合格を判定し、
前記類似度算出手段は、前記局所特徴量算出手段で算出された局所特徴量から前記不合格と判定された局所特徴量を除いて前記類似度を算出することを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項3】
前記幾何学的な変動は、前記画像を回転させた際の前記局所特徴量の変動であることを特徴とする請求項1又は2に記載の画像処理装置。
【請求項4】
前記類似度算出手段は、前記類似度に従って前記保持手段に保持された画像を検索結果として出力することを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載の画像処理装置。
【請求項5】
入力された画像に類似する画像を保持手段に保持された画像から検索する画像処理装置にて実行される画像検索方法であって、
画像の局所的な特徴点を抽出する特徴点抽出工程と、
前記抽出された特徴点における局所特徴量を算出する局所特徴量算出工程と、
前記画像の幾何学的な変動に基づく当該局所特徴量の変動を検定する局所特徴量検定工程と、
前記検定の結果に基づく特徴点を用いて、前記入力された画像と前記保持手段に保持された画像との類似度を算出する類似度算出工程とを有することを特徴とする画像検索方法。
【請求項6】
前記局所特徴量検定工程では、前記局所特徴量毎に幾何学的な変動を算出し、しきい値に基づいて検定の合格、或いは不合格を判定し、
前記類似度算出工程では、前記局所特徴量算出工程で算出された局所特徴量から前記不合格と判定された局所特徴量を除いて前記類似度を算出することを特徴とする請求項5に記載の画像検索方法。
【請求項7】
前記幾何学的な変動は、前記画像を回転させた際の前記局所特徴量の変動であることを特徴とする請求項5又は6に記載の画像検索方法。
【請求項8】
前記類似度算出工程は、前記類似度を算出し、該類似度に従って前記登録画像を検索結果として出力することを特徴とする請求項5乃至7の何れか1項に記載の画像検索方法。
【請求項9】
請求項5乃至8の何れか1項に記載の画像検索方法をコンピュータに実行させるためのプログラム。
【請求項10】
請求項9に記載のプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2008−257469(P2008−257469A)
【公開日】平成20年10月23日(2008.10.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−98683(P2007−98683)
【出願日】平成19年4月4日(2007.4.4)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】